からまりからまわり ◆426sm6XlJo



朝日が眩しい。僕――阿良々木暦は一人、街の中にいた。
そよぐ風は爽やかで、散歩をするのにちょうどいい天気だ。
でも、千石撫子は死んだ。
この暖かい日差しをもう感じることも出来ない。

真田のように、「千石が死んだ」なんて有り得ない、放送は嘘だと言ってしまいたかった。
信じたくなかった。
しかし、セイバーが言ったように放送は本当だ。【おくりびと】も、嘘偽り無く真実。
なぜなら僕の目の前には、【おくりびと】で顔を知った誰かの、もの言わぬ死体があったのだから――

◆ ◆ ◆ 

さっきの放送を聞き、【おくりびと】を見て分かったことは三つ。
千石撫子が死んだ。
八九寺真宵の近くで一人死んだ。
平沢憂の近くで二人死んだ。

つまり――
千石撫子は誰かに殺されたかもしれない。
八九寺真宵が一人を殺したかもしれない。
平沢憂が二人を殺したかもしれない。

自分の知り合いと、ここで出会った少女。
彼女たちに起こったこと。
それらは急に抱え込むには、少し重過ぎる。だから僕はちょっとだけ一人になりたかった。

セイバーたちにはトイレに行くといったが、薄暗くて寒い所にいたら自分の気分まで暗くなってしまいそうで、結局外を歩くことにした。
危ないことは分かっている。明智光秀織田信長のような人物にいつ出会うか分からない。
でも、それでも今は一人でいたかった。

「僕ってこんなに情けない奴だったっけ……」

セイバーが探していた少女、プリシラは死んでしまった。それでもセイバーは放送の真偽について冷静に考えられるほど落ち着いていた。
それなのに僕は。

でもまあ、原因はわかっている。
【おくりびと】――誰かの命が消える瞬間、そのすぐ近くにいた参加者――の中に、八九寺と憂ちゃんがいたからだ。
誰かを看取った【おくりびと】。
誰かが死にゆく、その場にたまたま居合わせただけの【おくりびと】。
誰かの命をその手で絶った【おくりびと】。
彼女たちはこの中のどれなのだろう。十分な裏付けが取れない今は、何ともいえない。
それでも疑ってしまうのだ。彼女たちが、三番目の【おくりびと】だと。

特に憂ちゃん。僕は彼女に襲われた。たまたま運がよかっただけで、うっかりしたら僕はさっきの放送で名前を呼ばれていたかもしれない。
でも大丈夫。僕は憂ちゃんのお姉さんを見つけてくると約束した。
今考えてみると、仲間を殺されてあんなことをすると決めてしまったのかもしれない。
ならばますます急がないと。
八九寺は――きっと人を殺すなんてしないだろう。人の生死について、身をもって知っている彼女なら。
それでも早く、合流したい。
戦場ヶ原とも、神原とも。

千石のように……もう二度と会えなくなるのは嫌だから。


さて、そろそろ戻らないと。時計を見ると放送が終わってから三十分以上経っている。
駅からずいぶん歩いてきたみたいだ。
そう思っていたとき、見つけてしまった。


――一瞬、誰かがうつ伏せで寝ているのかと思った。
でもよく見たら、その太った男性の首からは真っ赤な血が流れていて。その周りは真っ赤に染まっていて。
ぴくりとも動かない。

「……マジかよ」

すぐに駆け寄ってその人を仰向けにする。
当然というか予想通りというか……もう、息をしていない。そしてこの顔、この人は――憂ちゃんに「おくられた」人だ。
何が起こったか分からない、という表情。
きっと急に襲われて、そのままだったのだろう。

「……埋めてあげないとな」

スコップは持っていたので、道具には困らない。一応武器のつもりで持ってきたのに、まさか正しい使い方をするとはな。

 ◆

思っていた以上に人一人が入るだけの穴を掘るのは重労働だった。せめてショベルだったらもう少し楽なのだろうけど。
そういえば、この人は首から血が出ていた。つまり考えるまでも無く首を刺されたのだろう――と、

「……っ!」

仰向けになっていたままの男性を、うつ伏せにする。
その首には凶器はなく、刺し傷、そして抉った跡があった。
それは、つまり――

『この男性は至近距離にいた人物に殺された』

凶器がない、つまり誰かが抜き去ったということ。
刺し傷、つまり誰かが刃物で刺したということ。
抉った跡、つまり刃物を刺してそのままでは無かったということ。

もし刃物を投げたのだとすれば、抉った跡を説明できない。
誰かの不意打ちだとすれば、同行者を生かしてはいけないと追うはずだ。
いや、そんなのを考えなくても一番近くにいたのは――憂ちゃんだ。
そしてもうひとつ――

『この傷は僕が刺されたナイフとは違う』

僕は憂ちゃんの武器を預かっている。あの時彼女が持っていたのは、黒いナイフだけ。

結論。
僕がしたことは何も意味は無く、憂ちゃんは今でも姉の為に、誰かを殺そうとしている。

【D-7/安藤守の遺体近く/1日目/朝】

【阿良々木暦@化物語】
[状態]:疲労(小)、精神的疲労
[服装]:直江津高校男子制服
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、ギー太@けいおん!、
 エトペン@咲-Saki-、ゲコ太のストラップ@とある魔術の禁書目録、
 スコップ@現実(会場調達) 竹箒@現実(会場調達) 、
 トラウィスカルパンテクウトリの槍@とある魔術の禁書目録、
  スクール水着@化物語、【第1回放送までのおくりびと】のメモ
[思考] 誰も殺させないし殺さないでゲームから脱出。
基本:知り合いと合流、保護する。
1:僕は何を……
2:戦場ヶ原、八九寺、神原と合流したい。他にも知り合いがいるならそれも探す。
3:憂の姉を見つけたら、憂の下に連れて行く。
4:……死んだあの子の言っていた「家族」も出来れば助けてあげたい。
5:支給品をそれぞれ持ち主(もしくはその関係者)に会えれば渡す。
[備考]
※アニメ最終回(12話)終了後よりの参戦です。
※回復力は制限されていませんが、時間経過により吸血鬼の血が薄くなることによって低下します。
※憂から情報を訊いていません。




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117:おくりびと/燃える火のように 阿良々木暦 134:幸村ああああああああああああああっ!!(前編)


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最終更新:2010年01月25日 21:19