魔王再臨 ◆1U4psLoLQg
エリアE-2に在る学校の視聴覚室。
二つ有るカーテンの内、片方が取り外されている以外、何の変哲もないただの部屋。
カーテンが無い側の窓から見える太陽が、室内の半面を明るく照らしている。
だが、もう半面は暗い、片方残った遮光カーテンによって、日光が遮られているためだ。
光と闇とに分けられた室内。
その闇の中に、黒きオーラを纏う一人の男の姿が合った。
廊下側の壁に背中を預け、深き眠りへとその身を委ねている。
男の前には、一本の刀が突き刺さっていた。
やがて、時間の経過と共に、太陽はその位置を変えていく。
光が、徐々に室内全体を照らしていき、男と刀にも迫っていく。
突き立てられた刃が、降り注ぐ日光を反射する。
はたして、それが合図だったのだろうか、男はその目をカッと見開らいた。
「時は、来たれり」
男は悠然と立ち上がり、床から己の刀を引き抜く。
そしておもむろに窓へと近づくと、残っていた遮光カーテンを毟り取り、続いて刀を一閃した。
弾け飛ぶ窓ガラス、太陽の光をただ一身に浴びながら、男は咆哮する。
男――織田信長は断言した。
我こそは魔王だ、と。
既に、この身は鎧と銃器を失い、臣下の一人も在りはしない。
刀一本と、在り合わせの外套のみとなった己の姿を省みて、
それでも尚、万端の自信を持って断言する。
見栄えなど関係ない。
たとえ、己が身一つになろうとも、この魂は魔王の器なり、と。
校内の視察を終えた信長は、最初に入った視聴覚室の中で、しばしの休息をとっていた。
だが、それもこれまで。
極限まで達していた疲労も、睡眠をとることによって、ようやく回復した。
ひとしきり校内を見回しても、特にめぼしいものは無い。
転がっていた女の惨死体も、特に信長の気を引かなかった。戦場ではあれ位の死体の損壊は珍しくも無い。
充分な休息を終えた今、最早この場に用は無し。
信長は次の目的地に向かって、視聴覚室の窓から飛び出していった。
■
数十分後
信長はエリアE-1、そこにそびえ立つショッピングモールを見上げていた。
ここへやって来た理由は視察、および武器調達。
『廃墟ビル』へ向かえと言う、マリアンヌの言葉に従うつもりはもう無かった。
当然の話だ、裏切り者の進言など今更考慮に入れるはずも無い。
だが、正しき言葉もあった。
『今は体を休め、兵と武器を集める時』
確かにその通りだ。
体力の回復は済ませた、とはいえ自身の戦闘能力が著しく低下している事は自覚できる。
兵は必ずしも必要ではない。
だが武器が無いことは問題だ、戦うにはいささか不便すぎる。
『ショッピングモール』がどのような場所であるか、信長は知らない。
だが、廃ビルの付近にあって、マリアンヌはこれを『殺し合いには不要な施設』とは言わなかった。
なら逆に言えば、殺し合いに有用な物が存在する。
その公算が高いと判断できる。
「城……か?」
信長はショッピングモールを城の一種だと推定した。
彼は元居た戦国時代で、このような建物を見た事が無い。
だから、その大きさ、形状をもってそれが何であるかを判断づける。
信長の常識において、城の中には将と兵が居る。そして財宝、武器がある。
彼は今まで何十もの城を攻略してきた。
そして、その度に敵兵の命や財を奪っていった。
ならば今回とて同じこと。
この城の中には何があるのか。
強大な敵が居るのか、危険な罠があるのか、信長の望む物は果たしてあるのか。
どうであろうが変わらない、この男はただ壊し、潰し、殺しつくすのみ。
この城を攻め落とし、その中に在る命、財、全てを奪う。ただそれだけ。
「城攻めか――是非も無し!!」
そう叫び。
信長は、ショッピングモールの入り口に向かって駆け出した。
体力を取り戻した信長の走り。速度はまさしく人外のそれである。
数秒の内に、入り口は彼の目の前にあるだろう。
襲撃される百貨店の運命。
それは、悲惨なものとなるだろう。
これより、魔王による人生初の「おかいもの」が開始される。
■
ショッピングモールの入り口に、自動ドア。
そういう物がある。
扉を押したり引いたりする、そんな手間が省ける文明の利器だ。
透明なガラス扉であり、扉の前で人が足を止めれば勝手に開く。
そんな事は普通説明するまでも無い事、現代の常識、だが信長はその常識を知らなかった。
しかし、知っていようが知っていまいが、そんな事は彼には関係ない事。
短距離走の世界記録を遥かに上回る速度をもって、彼は自動ドアへと突っ込んでいく。
足を止める筈が無い。
この薄っぺらい、城門とは到底呼べぬ脆過ぎる仕掛け戸で、この男の足並みが、一瞬足りとて止まる事などありえない。
人の接近をセンサーが感知し、ゆっくりと扉が開かれ始める。
だが遅い。
魔王が通過するまでに開ききれない愚鈍な扉など、その一撃の下に粉砕されるが道理であろう。
「散れぃ!」
黒い闘気をまといし『物干し竿』の刀身が、矮小なガラス扉に叩きつけられた。
吹き飛ぶ自動ドア、舞い散る硝子の中を尚も疾走する黒影。
更に二枚目の自動ドアも吹き飛ばす。
散華する硝子の雨と共に、信長はショッピングモール内部へと突入した。
それでもまだ、彼の足は止まらない。
モールの最奥に向かって一直線に走り続ける。
敵を皆殺しにするか、敵が居ないと分かるまで。
城門を正面から破ったというのに、敵が出てくる気配が無い。
どこかで罠を張り、待ち構えているのか。
それとも、攻める期を伺っているのか。
「フン、この信長を恐れたか?」
どちらでもかまわない。
敵が出てくるならば殺す、潜んでいるならば見つけ出して殺す。
コソコソ隠れて出てこないのなら、隠れる場所を無くすまで。
――この城を廃墟へと変えてやる。
漆黒のマントが唸りを上げて旋回する。
ショッピングモール内部の商品、備品、設備、それら全てを吹き飛ばしながら、ひたすら前へ前へと突き進む。
走り続ける信長の前に、この施設に取り付けられている案内ロボットが、三体近づいてきた。
縦に長い筒状の形をしている。
学園都市の技術によって作られたそれは、本来清掃機能がメインである。
しかし、警備用としての機能もまた備えていた。
『ショッピングモールへようこそ、他のお客様の迷惑になりますので、店内はお静かにお願いいたします』
「邪魔だ、どけい!我が眼中に無し!」
有無を言わさず切り捨てる。
信長の一振りで、三体全てが横に真っ二つとなっていた。
眼前の全てを、叩き潰し、切り刻み、ぶち壊しながら、猛進する。
その冗談の様な破壊力は、最早災害の領域。
人の形をした竜巻が、内側からショッピングモールを蹂躙しているかのようだった。
暴虐の限りを尽くすその疾走が止まったのは、モール1階をあらかた破壊し尽くした後である。
「……ん?」
そろそろ2階に上がろうかと考えていた矢先、信長はやっと目当ての物の一つを見つけた。
『五月人形、鎧、兜、鯉のぼりのお店』
そう書かれた店の前で、信長はようやくその足を止める。
そしてゆっくりと、しかし力強い歩みで店内へと進んでいった。
店中ガラスケースに入れられた鎧や兜でいっぱいだった。
それなりに上等なものが揃っている。
そして、その中でも一際信長の目を引く鎧があった。
「ほお、これはなかなかのものか……」
店内の最奥、そこに展示されている一つの鎧。
その特徴を述べるのは実に簡単だ。
一言でいうと『金ぴか』
上から下まですべて金色で統一された派手すぎる鎧だった。
しかし、信長はその派手さだけにに目を引かれたわけではない。
長年様々な鎧を見てきた彼には直感で分かる。
これはいい物だと。
「いいだろう、我が使ってやろうぞ」
信長はケースの中に腕をつっこみ、黄金に輝く鎧を引きずり出した。
■
ひとしきりショッピングモール内を暴れ周り、破壊しつくした信長は、最上階のフードコートに腰を下ろしていた。
やはり制限のせいか、体力の消耗が早い。
一時の休息と、腹ごしらえとして、ハンバーガーに食らいつきながら戦利品の数々を弄くっている。
若干の物足りなさを感じながら。
結局、最後まで敵兵も敵将も現れなかった。
恐れをなして逃げ出していたのか、最初から誰も居なかったのか。
「見立て道理、なかなかの一品よ、やはり我の目に狂いは無かったわ」
着込んだ鎧に手を当てながら呟く。
それは実際、今回の戦利品の中で一番価値の在る物だった。
次に信長は片手に掴んだ銃器を見やる。
鎧を触っていた時とは違い、その顔にはありありと不満の色が浮かんでいた。
「これはただのガラクタか?このような玩具使えもせん」
一見、強力そうなマシンガンに見えるが、注意深く見ればただの電動エアガンである事がわかる。
それは『玩具店』で見つけた物だ。
目潰し程度の効果は有るかもしれない、しかし殺傷能力はゼロに等しいだろう。
このような玩具で闘うなど到底考えてもいない、しかし無いよりは形だけでも有った方がいいだろうという考えだ。
当然、いずれはちゃんとした銃器を手に入れるつもりで居た。
その他にも、戦いに使えると判断したものを幾つか手に入れている。
『日曜大工店』で見つけた電動ノコギリやトンカチなどが代表的か。
信長は己の腹を充分に満たした後、ようやく席を立つ。
そして、この城の攻略を完了とする為、屋上へと向かった。
■
「ここを我が城とする」
ショッピングモール屋上からの景色を眺めながら、彼はそう決定した。
これ以降は、このショッピングモールを拠点に行動する。
しかし、それはたんなる帰還場所の選定だ。
これ以降も彼の行動にさしたる変化は無い。
すべて壊し、すべて殺す。
余程の事が無ければ、臣下を持つ気も最早無い。
それがあり得るとすれば、首輪を外せる見込みの有る者か、この信長を楽しませてくれる者だろうか。
だが、はたしてそのような人間が、この島に居るのだろうか。
■
「今行くぞ、虫ケラども……」
ショッピングモールを後にして、信長は次の戦場へと走り出す。
彼が通った後に残るものは、破壊と絶望だけだろう。
内部を滅茶苦茶にされたショッピングモールがその前例か。
「我が前に立つもの、全て塵と化す!」
言い切るその言葉に、嘘偽りは無い。
かくして、戦の準備は整った。
この島に集いし全ての者達よ、心せよ。
これより戦場に赴くは、戦国の覇者。
相対する全ての敵に、恐怖と死を与える殺戮の化身。
今此処に、魔王再臨せり。
【E-1/ショッピングモール付近/一日目/昼】
【織田信長@戦国BASARA】
[状態]:健康、全身に裂傷、満腹
[服装]:ギルガメッシュの鎧、黒のマント
[装備]:物干し竿@Fate/stay night、マシンガン(エアガン)@現実
[道具]:基本支給品一式、予備マガジン91本(合計100本×各30発)、予備の遮光カーテンx1 、マント用こいのぼりx1
電動ノコギリ@現実 トンカチ@現実、その他戦いに使えそうな物x?
[思考]
基本:皆殺し。
1:いざ戦場へ ……。
2:目につく人間を殺す。油断も慢心もしない。
3:信長に弓を引いた光秀も殺す。
4:首輪を外す。
5:もっと強い武器を集める。
6:ちゃんとした銃器を探す。
8:高速の移動手段として馬を探す。
9:余程の事が無ければ臣下を作る気は無い。
[備考]
※光秀が本能寺で謀反を起こしたor起こそうとしていることを知っている時期からの参戦。
※ルルーシュやスザク、
C.C.の容姿と能力をマリアンヌから聞きました。どこまで聞いたかは不明です。
※視聴覚室の遮光カーテンをマント代わりにしました。
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最終更新:2010年01月24日 22:40