バイクに乗った
張五飛は予定していた次の目的地に到着しました。
彼のいる場所はE-7の学校です。
学校の作りは今どき珍しい木造建築で、1階建ての簡素な作り。昭和のにおいを感じさせます。
五飛は不安になりながら、学校へ入ることにしました。
「ここも俺に収穫を与えてくれるのだろうか」
五飛が話している収穫とは、ホールにあったような参加者へのお助け要素のことです。
ホールには5つの部屋があったことは、みなさんもご存知でしょう。
五飛はあの5つの部屋のすべてを開放させるために、この島にある施設を調査することにしました。
ホールで
荒耶宗蓮に襲われたので、慎重に行動することを選んだのです。
もし、五飛がこのまま順調に施設の調査をするとどんな利益が手に入るのでしょう。
それはホールの第一の間である『平和の広間』の開放がぐっとしやすくなるのです。
だって施設で身を潜めている人を助けてあげれば、その人から協力をえられるかもしれません。
『参加者を一人も殺害していない者のみ入室可能、ただし同行者が2人以上必要』 の条件クリアに大きく貢献できます。
それだけではありません。
五飛の調査はもうひとつホールの部屋を開放できる要素を持っているのです。
その広間とはホールの五番目の広間。通称『連荘の広間』です。
『地図に名前入りで記載されている施設を8ヶ所以上通った者のみ入室可能』という条件を持っています。
この島を満喫した人だけが美味しい思いをできるんです。隠れている人には一生無理です。
探検した時間を無駄にさせない、なんという親切機能でしょう。
五飛はすでにタワー、ホール、学校とこれで三連荘で施設をまわっています。
「人の気配がしない。こんな偏狭の地こそ隠れるには打ってつけだと思ったが、読みが外れたか」
どうやら今回は誰も見つけることが出来なかったようです。
人を探すことが最優先事項、というわけではないのですが、学校は五飛を満足させる情報を持っていないみたいです。
「何か見落としていたとしても、今の俺にはそれを見つけるだけの情報がない。
ホールのようにわかりやすい手がかりが無い以上、ここに留まるのは時間の浪費だ」
五飛は気持ちを切り替えて次の目的地を目指すためにバイクに乗ります。
「ム」
このとき五飛に電流が走ったようです。
「調査に時間がかかりそうだから、と後回しにした展示場まで戻るべきか」
実は五飛はまだ展示場の調査をしていません。彼は時間のかからなそうなホールを優先したのです。
しかし短い時間で調査を終えるはずだったホールは、予想以上の大きさと収穫を持っていた。
それがここにきて彼を迷わせます。
「それとも公園、政庁、円形闘技場、薬局と一周したあとに行こうか」
五飛は仕方なくバイクを西へ進ませませることにしました。
○ ○ ○
「すっきりしたぜ」
アリー・アル・サーシェスはまだデパートの中にいました。
彼はさっきまで市販の薬用クリームでひげを剃っていました。今はあごに手をあてながら鏡を見ています。
一見すると早朝の男のたしなみのように思われますが、彼の狙いは別にあります。
それは変装です。
キャスターや
アーチャーと戦ったサーシェスは、彼らとの再戦を願いながらも会いたくないとも思っています。
サーシェスは自分が彼らを討ち取るほどの武器や装備を持っていません。
こんな状態で再戦しても結果を変えることは出来ない。今、彼らと再会は避けたい。
彼らと会ったときの格好をサーシェスは捨てることにしました。
「あまり劇的にチェンジすると、ゼクスに怪しまれるかもな。奴に会う前に姿形を変えとくんだった」
私服は処分され、デパートにあった安物のトレーナーとズボンと靴に着替えています。しま○ら価格です。
ガンダム搭乗時のスーツとまでは行きませんが、比較的動きやすい服装でしょう。
「ゼクスが俺の姿形を話すんなら、このへんが限界だろう」
コンセプトはアーチャーたちが遠目で見たら勘違いするようにということらしいです。
トレードマークの髭も綺麗に剃っています。ぼさぼさだった髪も少し切りました。
本来の姿形にかけ離れないように考えたのでしょうか。
「さてと。使えそうな物は適当に集めたが『魔法』に勝てるかってーと、いまひとつだな」
デパートで手に入れた品物がディバッグに入っているのを確認しながら、サーシェスは目的地を探します。
南は赤い剣士(アーチャー)がいますし、西は魔法使い(キャスター)がいます。彼らとの遭遇は避けたいところ。
サーシェスは地図に指を走らせて、自分のルートを書きはじめました。
「ん!? なんだ今の音は」
その時です。デパートの外でとてつもない音がしました。
サーシェスは窓から下の様子をのぞきます。
「あの砂煙は駅だな。電車のトラブルでもおきたか!? 」
サーシェスが聞いた音は、D-6の駅で
セイバーと
真田幸村が暴走した列車を止めた音だったのです。
いくらサーシェスでも、
ライダーのせいで電車が暴走していたことは夢にも思っていないでしょう。
もうもうと上がる煙と、何かと何かがぶつかりあう音が、駅の異常事態を表しています。
「誰かが無茶をしやがったかな? 」
サーシェスは意気揚々とデパートの階段へ走り始めました。
「行ってみますかね」
どうやらD-6の駅に向かうようです。
騒ぎが起こるところに人あり。戦争が起こるところに人あり。
サーシェスは情報搾取の手がかりをてっとり早く見つけようとしているのでしょう。
○ ○ ○
『凶がれっ! 凶がれっ! 凶がれええええええええっ!!』
『曲がらんっ! 曲がらんっ! 曲がらあああああああんっ!!』
地平線にまで届きそうな叫び声。
駅から離れたサーシェスにも充分に聞こえています。
デパートで仕入れた望遠鏡で覗いてやっと見える距離なのですから驚きです。
「なーるほど。こいつはやべぇ。今すぐ駅に向かうのはヤメだ」
駅の幸村組VS藤乃組の戦闘を目の当たりにしたら、誰だってそう思います。
彼らが異能の力を持っているのは事実です。
どちらが先に戦闘をしかけたのかはわかりませんが、彼らと関わるのは危険です。迂闊な接触は命を落とします。
「とりあえずあの男と女2人は後回しだな。それよか駅から逃げた兄ちゃんと鎧のお嬢さん。冷静っつーか戦い慣れてやがる。
戦場で無謀な奴は、戦うたびに心の底から楽しめるんだが長生きしねぇ。
俺が会いたいのは戦場で謙虚な奴だ。話ぐらいは聞かせてくれるだろうよ。会っといて悪くねぇ――」
サーシェスは駅から逃げた2人(セイバーと暦)に追い付くために北に向かうことにしました。
『うおおおおおおお!』
「すげー叫び声だな。いちいち叫ばなきゃ戦えねーのかよおい」
『うおおおおおおおおおおおお!』
「はいはいわかったわかった」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
「あ? 」
サーシェスは後ろを振り返りました。
彼が鬱陶しく思っていた叫び声が段々近づいてきているような気がしたからです。
それは本物でした。彼が聞いていた叫び声は幸村と藤乃のものでは無かったのです。
窓から顔を出して大声をあげながらバイクを運転している男のものだったのです!
「アーッ!? 」
断っておきますが、サーシェスはバイクのエンジン音を聞き逃していたわけではありません。
むしろやってくるバイクにヒッチハイクでも頼もうか、という可能性も考えていたくらいです。
まさかバイクが自分のところに突っ込んでくるとは予想していなかったのです。
「どこ見てるんだ! 」
サーシェスは咄嗟に回避できました。ちょっとでもタイミングが遅れていたら轢かれていたでしょう。
バイクは勢い余って店に突っ込んでいきました。
運転手はかろうじて座席から飛び降りて受身をとったようです。死んでいません。
「……」
「……」
二人の目と目が合いました。お互い、黙ったまま見つめ合ってます。
「あ、失礼。私はアリー・アル・サーシェス。しがない傭兵です。これは一体どういうことでしょうか」
先に口火を切ったのはサーシェスです。口調とは裏腹に非常に苛立っています。
「張五飛。これは事故だ」
相手の青年はバツが悪そうに話していますが。サーシェスを見ようとはしません。謝る様子もありません。
「張五飛! あなたはひょっとして、あの
ゼクス・マーキスのお知り合いで? 」
「――! ゼクス・マーキスだと……奴を知っているのか! 」
サーシェスが譲歩して接しているのに、五飛はまるで自己本位的です。
サーシェスは必死に感情を抑えながら、人(ゼクス)と人(五飛)とのつながりの調査を優先しました。
「ええ、先ほどそこのデパートで彼から対主催戦力の収集を依頼されまして。
あなたがゼクスさんと知り合いなのは承知です。出来ることなら、あなたから彼について詳しい話を聞かせてほしい」
「奴について話すことなどない! 組織を裏切って寝返るような男など、俺の眼中には入らん」
五飛はゼクスがOZという組織に一員でありながら、自分を同士として引き抜こうとしたことを怒っているようです。
実はゼクスはすでにOZの一員として生きるつもりは無かったのですが、融通の利かない五飛に誤解されてしまったのです。
「へぇ、しかしゼクスさんは色々と私に話をしてくれましたがね。自分のことも。あなたのことも」
「戯言を! あいつなんぞに俺たちの何がわかる! 」
真実は別にありますが、このチャンスをサーシェスが見逃すはずがありません。
「じゃあ、教 え て く れ ま せ ん か ね。私の聞いた話がどこまで嘘で本当なのか」
「見ず知らずの貴様に話すことなどあるか」
「そこを頼みますよ。ゼクスさんの話だけでいいんで。雇われの身は、上の素性を知りたくなるもんです」
「…………フン」
五飛はゼクスについて知っていることを、悪意まじりにサーシェスに話しました。
ゼクスの意外な生い立ちにサーシェスは少し驚きましたが、彼は満足していました。
ゼクスの話と五飛の話には食い違いが見られましたが、それはお互いの知る人物像の違いについてだけです。
つまり、彼らが住む世界については何の違いも見られなかったのです。
サーシェスはゼクスの言葉が真実味をおび始めていることに、少し焦りを感じました。
(OZとかアフター・コロニーとか、こいつも大真面目に話してやがる。口裏を合わしているのか?
いや待て待て。だったら敵対するフリ必要がない。これも帝愛さんの仕業ってやつかねぇ?
ま、ゼクスが食わせ物だってのがわかれば充分だ。それに新手のガンダム・マイスターがわかったしな)
サーシェスはゼクス・マーキス、張五飛とガンダムで殺しあう日が、いつか来ることを期待しているようです。
そんな感情をまったく表に出すことなく、サーシェスは五飛に手を差し伸べます。
「危うく死にかけたが、あなたとお近づきになれたのは幸いだ」
「勘違いするな。俺は馴れ合うつもりはない」
「でも、あれが壊れてしまったら、あんたはどうするんです?」
サーシェスは住居に突っ込んだバイクに向かって指を刺します。
「…………」
五飛は何も答えません。
「さっき私の所に突っ込んできたのは、ハンドルが利かなかったからでしょ? 何があったんです」
眉間に手をあてながら、五飛はため息をしています。
「線路を横切ろうとした」
五飛は手に力を込めています。そうとう怒っているのでしょう
「横からやってきた電車がいきなり脱線したから、とっさにハンドルを切った。衝突を避けるために」
「そいつは危なかったですね――あれ?」
「しかしどうだ。電車は自分から線路戻ったんだ」
「は、はぁ? 」
サーシェスは首をかしげて、思わず間抜けな声を出してしまいました。
「気がついたら電車に追いかけられながら線路の上を走っていた」
電車を見事に裁いたライダーの運転技術は、人知れず迷惑をかけていたようです。
五飛はE-6の公園を目指すはずが、ノーマークだった電車のせいで進路変更をせざる得なかったのです。
かわいそうな五飛。
「結局、駅のそばで脱線しやがって。そのせいでこっちは電車に弾かれてしまったがな!」
五飛のバイクのハンドルが利かなくなった理由は、どさくさで電車の事故に巻き込まれたからでしょう。
五飛本人がこうして何事もなく会話をしていること事態が奇跡です。
「……デパートの駐車場で見つけた車とかあるんですけど」
駅に向かわなくてよかった、とサーシェスは痛感しました。
いまさらデパートに戻るつもりはなかったのですが、サーシェスは話しておいたほうがいいと判断したようです。
「よかったら使います?」
彼に恩を売るために。
【D-6/中央部/一日目/午前】
【張五飛@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:健康
[服装]:マリーメイア軍の軍服
[装備]:ラッキー・ザ・ルーレットの二丁拳銃(4/6)@ガン×ソード、干将・莫耶@Fate/stay night、防弾チョッキ@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、
ファサリナの三節棍@ガン×ソード、ゼロの仮面とマント@コードギアス、USBメモリー@現実
[思考]
1: バイクを捨てるか、デパートに行くか、それとも……
2:トレーズの存在と『魔法』に対する疑念
3:人間の本質は……戦おうとしない者と弱い者への怒り
4:MSの可能性がある施設を探す (地図に名前が載っている施設(展示場も含む)はなるべくよりたい)
5: 扉を開く条件を満たしたらまたホールに戻りたい
※参戦時期はEndless Waltz三巻、衛星軌道上でヒイロを待ち構えている所です。
基本:オレが参加者の脅威となる!
1:殺し合いに乗ったものは倒す。
2:ゼロとして『戦う意思』のない者達を追い詰める。……それでも『戦う意思』を持たなければ――
※サーシェスにガンダムWの世界観を話しました(サーシェスがゼクスから聞いた話を大まかに事実と認めました)。
※ハンドルが故障した刹那のバイク@機動戦士ガンダム00が住居につっこんでいます。
修理可能なのかは後の書き手さんにお任せします。
【ホールについて】
内部に五つの広間を有する巨大な施設、各広間にはそれぞれ入場条件がある。
右の扉から順に
1『平和の広間:参加者を一人も殺害していない者のみ入室可能、ただし同行者が2人以上必要』
2『四暗の広間:参加者を四人以上殺害した者のみ入室可能』
3『一発の広間:ゲーム開始から6時間以内のみ入室可能、6時間経過後に室内に居る者の首輪は爆破される』
4『国士の広間:第六回放送後のみ入室可能』
5『連荘の広間:地図に名前ありで記載された施設を8ヶ所以上立ち寄った者が入室可能』
条件を満たした者に同行していれば、誰でも入室可能?
扉の内部では謎の機械音が響いている。
『一発の広間』は一番小規模な広間で、机が一つとアイテムが三つ有るだけの部屋、アイテムは現在、五飛がすべて回収済み。
それ以外の広間の中身は後の書き手さんにお任せします。
【アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:疲労(中)、腹部にダメージ、髭をそった、髪を少し切ってイメチェン
[服装]:安物の服とズボンと靴(動きやすさは抜群)
[装備]:ガトリングガン@戦国BASARA 残弾数50% 果物ナイフ@現実 作業用ドライバー数本@現実
[道具]:基本支給品一式、 ガトリングガンの予備弾装(3回分) ショットガンの予備弾丸×78 文化包丁@現実
[思考]
基本:この戦争を勝ち上がり、帝愛を雇い主にする。
1:更に周辺を見て回り、できれば組める相手を見つける。 それが最適な選択になるならば、組んだ相手を騙すことも。
2:殺し合いをより楽しむ為に強力な武器を手に入れる。
3:ゼクスは胡散臭いが、彼の知り合いに接触する価値はある。 恩を売っておきたい。
余裕があればセイバー、暦に接触してみたい。幸村&藤乃&ライダーは少し警戒。
4:アーチャーとの決着をいずれつける。
【備考】
※セカンドシーズン第九話、刹那達との交戦後からの参戦です。
※五飛からガンダムWの世界の情報を取得(ゼクスに関してはやや誤解あり。ゼクス=裏切りもの?)。真偽は保留にしています。
情報収集のためにヒイロ、トレーズ、デュオ、
一方通行、
伊達政宗、
神原駿河と接触する方針を続行。
※この世界の違和感(言語の問題等)は帝愛のせい、ということで納得しているようです。
※D-6のデパートには駐車場(車あり)があるようです。