ひたぎクラブ/とうまブレイク/■■■アーチャー/???ウィッチ ◆0zvBiGoI0k



結論から言って、上条当麻の右腕は切断されずに済んだ。

「当たり前だ!」

何故か条件反射的に叫んでしまった。

「いきなり何を叫んでるのかしら上条君。とうとう妄想癖が幻覚幻聴を起こすほどに進行してしまったのかしら?
昔からさぞ周りから冷ややかな目で見られていたのでしょうね。同情するわ。周りの人に」

そしていともたやすく紡がれるえげつない暴言。
くそ、油断した。この状況でこんな奇行をすればどんな罵りを受けるかなど分かっていた筈だというのに!

「っ違う!今のは俺のせいじゃ―――って、そうだ待て戦場々原!」

反論をしようと―――したところで効果がないのは分かっているが―――戦場々原に詰め寄った所で、本来の目的を思い出し踏みとどまる。

「なにかしら上条君、今は貴方の妄想漫才に付き合う気はないわよ。
私は早く駅で圧死しているかもしれない阿良々木君に会いに行かなければならないのだから。
……って今のもツッコミに含まれるのかしら。困ったわね。弓兵(ゆみへい)さんの言った通り感染毒を撒き散らしているんじゃないかしら、貴方」

「持ってねえ!漫才する気もねえ!あと話を逸らすな!そしてゆみへいって誰だ!俺はちょっと落ち着けってお前に―――」

「その言葉は鏡の前で言ってなさい。どう見ても説得力というのがないわよ。
私は冷静よ。冷静に情報を理解して吟味した上で行動に移っているわ。貴方と違ってね。」

「ぐっ」

そう言われて言葉を喉につまらせてしまう当麻。緊迫した状況においては妙に口が回るが日常生活においてそれが役立つことは余りない。

「それに愛しい人が死の危機に瀕してるかもしれないというのに落ち着いているのも人としてどうなのかしら。
すぐさまその人の下へ馳せ参じたいと思うのが自然だと思うのだけれど」

相も変わらずの毒舌を撒く戦場々原。だが当麻の言う通りにその心中は穏やかでなかった。



消失した聖骸布に割と真剣な怒りを抱いたアーチャーだが
「少なくとも腕一本分の働きをして見せろ」と代償行為を求めた所でひとまず矛を収め、改めて情報交換に踏み切った4人。
アーチャーの持ち帰った情報の価値はそれなりといった程度だが、
ただ1人戦場々原にとってはとても重要なものであった。というより最優先事項であったといっていい。



D-6駅に阿良々木暦がいる事、その駅に神原駿河が合流しにきたこと。
自分の捜している人物が2人同時に見つかったのだ。それもかなりの近くで。

どちらもわたしにとって大事な人。特に阿良々木君。一刻も早く彼に会いたい衝動に駆られる。
咆哮癖のうえ妄想癖まである上条君なんかよりよっぽど頼りに……は、どうでしょうね。
芯はあるけど基本ヘタレなのは両者共通だし。ひょっとして2人出会ったら意外と気が合う?
まずいわね、上条君には私及び阿良々木君の半径5000キロメートルは近づかないように脅迫しておかないと。
やたら叫んで妄想に耽り込む阿良々木君なんて見たくないわ。2つとも素養は持ってそうな辺り特に。
え?神原?……そうね、まあ可愛い後輩ね。生きているならそれに越したことはないけど、私より先に阿良々木君に会うというのは少々癪ね。
泥棒猫の様な真似はしないだろうけど、吊り橋効果というのもあるし、ちょっと心配ね。
まあそんなことになっていたら2人を殺して私も死ぬけどね。

とまあ長々と心情解釈したが、要するに阿良々木暦も神原駿河も戦場々原ひたぎにとってはとても大切な存在であるということだ。

だからそこが暴走電車に突っ込まれて瓦礫の山と化したと聞いたときは、自分の中に亀裂が生じた音がした、ような気がした。
その後のアーチャーの補足を話し終えた途端に席を立ち外へ出ようとしたら上条に呼び止められた所で現在の状況に至る。


「とにかくそちらも落ち着きたまえ戦場々原ひたぎ。今回ばかりはこいつが正しい、業腹なことにな」

悔しそうに、本当に悔しそうに当麻を肯定するアーチャー。「何でそんなに残念そうなんだ!」という声を無視して。

「わざわざフルネームで呼ばないで下さい露出狂さん。そもそもあなたが報告を後回しにした事が原因じゃない。
意地の張り合いをして肝心なことを忘れ挙句男に脱がされて興奮してるなんて、物事の順序が逆ではないかしら。
理性よりも下半身の欲求を優先するなんて猿並の行動理念ね」

「……判断のミスは認めよう。だが先も言ったとおり状況はさほど絶望的ではない。
駅には私が知る限り参加者の中でも腕が立つ者がいる筈だし、私が遭った別行動中の者達も今頃駅についている頃だ。
余程襲撃者が強大か、余程運が悪くない限り阿良々木暦が死亡している可能性はまだ少ない」

節々の暴言には目を瞑りつつ諫めるアーチャー。事実あの駅で最悪の事態になっている確率は低い。

ヒトの領分を越えたサーヴァントにおいても最優と称えられる騎士、セイバー
直にまみえ、その剣を受けた自分は彼女の強さを知っている。
彼女の身体能力、未来余地にも等しい直感を以ってすれば突然の襲撃にも対応できるだろう。
そして彼女が彼女である限り目の前の命をみすみす死なせる真似はしない筈だ。
それに自分が情報を交換した3人組は時間的にもう駅に着いてる頃だ。更にもう1組別行動をした者もいるという。
数の差では圧倒的に優位であることは間違いない。
つまりは初撃―――電車の突撃を凌ぎさえすれば危険性は幾分落ちることになるのだ。
無論、それが一番難しい事なのだが。



襲撃犯はライダーの可能性が高い。線路の破損で運休状態の電車を動かすなんてのは自殺行為でしかないが、
騎兵の名の通り最高の騎乗スキルを持つライダーならばあるいは、と考えていた。
単独でそんなあからさまに目を付く行為をする以上衝突する場に誰がいろうと撃破する自信があるのだろう。
強力な支給品か、それとも協力者を得たのか。



―――ちなみに現在のアーチャーは上着の聖骸布を当麻の幻想殺し≪イマジンブレイカー≫によって僅かな布を残して消され、
腰にも聖骸布が巻き付かれてあったが上着が消えた今は取り外している。
投影魔術を駆使すれば新しい物を構成することは出来るのだがこの会場ではせいぜい2時間程度しか維持できないので控えることにしている。
服装は袖のない模様の入った黒服と同じく黒のズボンという先程とは一転の黒一色だ。
その際「露出狂」「視覚的陵辱」と戦場々原に散々罵声を浴びせられたのは言うまでもない。



「可能性がある、という点で十分だわ。
そもそも私の現時点での目的は阿良々木君に会うこと。そしてそこに阿良々木君がいるというのなら私はそこに向かうだけ。
危ないから行くな?そこまで貴方に行動を制限されるいわれはないわよ。
どこにいたって危険なのは変わりないでしょう。同じ死ならせめて阿良々木君と一緒に死にたいわ。

それじゃあごきげんよう。……ああ、それと。阿良々木君の居場所を教えてくれたことだけは感謝します、アーチャーさん」

一応、彼女なりに正直な感謝の言葉を伝えて玄関に手をかける。
が、そこから先の動きが止まる。正確には止められる。今まで蚊帳の外にいた当麻の右腕に。

「待てよ戦場々原、何でお前が1人で駅に行くって前提になってんだ」

腕を掴む当麻にすかさず右手から仕込んでいたシャーペンを取り出し男の目へ突き出す戦場々原。
当然芯は出ている。

「許可なく腕を掴まないでくれないかしら、痣になるでしょ」

「っ……聞いてんのは俺だぜ。質問に質問で答えるなよ」

「私の言ったことをそのまま引用するなんて、貴方オウムぐらいにしか知能がないの?
それに今のは質問じゃないわ、命令よ」

眼球から数ミリあるかないかの距離に凶器を突き立てられているが、当麻は怯まない。
ここで折れたら一生後悔することになると自分の一番根っこの部分が騒いでいる。
一応話は聞く姿勢を取ってくれるらしいので、手は離す。向こうはまだ構えたままだが。

「……それじゃ改めて聞くけど、何でまたいきなり戦場々原さんは1人で行動しようとしたわけですか?」

「あら、ようやく同じ性癖の持ち主に会えてベストフレンドになれていたる所に水をさすほど私は無粋じゃないわよ」

「どこをどう見て俺とアイツがベストフレンドに見えるんですか!?」

「顔」

「即答!?見た目で人を判断しちゃいけません!」

「それは違うわね上条君。あなたは無精髭にだらしなく背広を着ている男を会社に採用する?
髪を染めて顔中にピアスを開けている女性が清楚に思える?
身だしなみが良くなければこの不景気まともに就職になんてありつけないわよ?」

「話を逸らすな!そんなのは今はどうでもいいだろ!」

ツッコミという名の咆哮と共に前に踏み出しそうになるがそのまま進んじゃうと右目にブスリなのでギリギリ踏み止まる。



「言っただろ!阿良々木って奴を探してやるからお前も俺に協力しろって!」

それは上条当麻と戦場々原ひたぎとの最初の邂逅の際に交わした協定。大それたものでもないが2人の行動指針を決めた言葉。

「あなた如きが阿良々木君を呼び捨てにしないでちょうだい。それとさっきの会話を聞いてなかったの?
阿良々木君を見つけたのはそこの突然現れた元・赤い変人さん、今は黒い露出狂のアーチャーさんじゃない。
つまり約束は無効というわけよ。
彼から情報を聞かなければ今頃駅にてスプラッタと化していることにも気付かずいもしない阿良々木君を探し回って
昼の放送でそれを聞かされ絶望のあまりこの殺し合いに乗って手始めに貴方を殺してしまうことになるかもしれないというのに。
……ああ、そういう点ではあなたも彼に感謝しておくべきでしょうね」

と冗談でもないことを口にする。……本当に、冗談ではないのだろ。
確かに阿良々木暦の所在を見つけたのは共にいた当麻でなく今し方出遭ったばかりのアーチャー。
ならばここで2人の関係も終わることになるのか?

「ああ、そうだな。けどそれでハイサヨウナラなんて別れられると思ってんのか?
そんな見捨てるような真似が出来ると思ってんのか!?それにもう一つの約束はまだ間に合うだろ!」

「……もう一つって何かしら」

訊ねる戦場々原。阿良々木くんと会わせる以外にそんなものを交わした覚えはないけど。

「お前と阿良々木くん、どっちも絶対に守るって約束だよ。覚えてねえのか?」

一瞬、戦場々原の瞳が揺れる。
ああ、そのことか。
駅にて食事中にポツリと漏らした一言。だが少なくとも彼にとってはこの上ない決意の表れ。

本気だったんだ。てっきり独り言のようなものだと思ってたのに。というか私は何も返してないのに、
それって約束っていうのかしら?

「お前も阿良々木くんも殺させない。もちろんお前が誰かを殺すのも許さねえ。
大切な誰かが殺されて、そのために誰かを殺して、その誰かの仇を討とうとまた誰かが殺して、そんなの何の意味のねえ!
俺はそんな堂々巡りにお前を、この会場にいる奴を巻き込ませたくねえんだよ!
もう死んじまった奴はどうにもならないけど、お前なら、阿良々木くんならまだ間に合うかもしれないだろ!
いいか、もう一回言うぜ戦場々原。

―――お前も阿良々木くんも、絶対に殺させない。」




「―――――――――」

暫くの沈黙の後、戦場々原は凶器を持っていた手を引く。
ようやくこの暴虐女王サマもキチンと人の話を聞き入れてくれたか―――なんて安心している上条の額に、ひどく女性的な笑みで戦場々原は、



引いた手を、大きく戻した。



「あだあーーーーーーーーーーーーーーーー!!?」

眉間に出来た第3の目を押さえ今日何度か目とも知れぬ絶叫を上げる。そんな当麻を尻目に戦場々原は言葉を紡ぐ。



「二度も三度も恥ずかしいセリフを吐かないでちょうだい、
阿良々木君ならともかくあなたにそんなこと言われても怖気が走るわ。
……まあ、それだけ大層な言葉を言ったのならお言葉に甘えさせてもらおうかしらね。ブラックコーヒーの糖度位には」

棘は抜けないものの、それは当麻との同伴を認めた証。額を押さえながらも上条は満足げに笑みをこぼす。

「―――ああ、男の約束だ。二言はねえ」

「一時代前のセリフね、御幣のバリエーションの少なさが知れるわ」


◇――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ソファに横たわる御坂美琴の遺体にシーツをかける。死者に対してこれだけの施ししか出来ないことに僅かに歯噛みする。

「ちょっとだけ待っててくれ御坂。こんなくだらないこと、すぐに終わらせて連れ帰ってやるからさ」

死人に口なし。死者は生者には何も伝えられない。ただ眠るように、柔らかな笑みを返すのみだ。

振り返らずにドアを開ける。外には既に出ていた3人と、天上にまで達した太陽が当麻を待っていた。

「別れは済ませたか」

アーチャーは問う。

「別れじゃねーよ。後で連れ帰るからな」

玄関に、目印として適当に部屋にあった帽子をかける。

「……そうだったな」

簡潔だが意志のこもった当麻の言葉に、アーチャーは何を思ったか。
御坂美琴の遺体についてはアーチャーはあれ以上追求しない。
上条の意を認めたのか、この場で言い合おうとも意味のないものとしたのか、それは本人しか知り得ぬことだろう。



4人で手早く協議をした結果、まずアーチャーとC.C.が先に駅へ向かい、状況を把握、
その後を当麻と戦場々原が追うという形に落ち着いた。
4人まとまって行動しても、駅の襲撃犯と鉢合わせする可能性があるからだ。

上条当麻は異能を打ち消す異能以外には一般的な学生に過ぎない。それでも打たれ強さは人並み以上だが。

戦場々原ひたぎはかつては陸上部のエースとして名を馳せていたがそれでも達人というわけではないし戦闘経験などあろうはずもない。

C.C.は不死であることを除けば身体能力は常人のそれだ。そしてその不死性もこの場ではあまり意味を成さない。

身体能力においてはこの中で最も優れたアーチャーが先行するのは自然ともいえた。
もともとC.C.を彼女の知り合いがいる駅へ送り届けるつもりだったし、
アーチャーも対主催の拠点となりつつあった駅を失うのは良い事態とはいえない。


散り散りになった者達と合流して、態勢を整える膳立て位はしておくか。

「まったく、何が悲しくて中年男に抱えられなくちゃならないんだか」

「あら、よくお似合いよ。そのまま付き合っちゃえばどうかしら。応援するわよ」

「茶々はそれ位にしておきたまえ。あと私は中年ではない、付き合う事も一切ない」

ちなみにC.C.が同伴する理由は、もともとアーチャーと共に行動していた、
上条1人では下手人相手に2人を守ることは出来ない(アーチャー談)、あと2人ともあまり相性が良くない、
ストレスで上条の胃に穴が開く危険がある(口には出さないが)、等々色々ある。

「ああ、ソレはしまっておけ。持ったままでは運べんぞ」

ソレ、とはC.C.の抱えるハロのこと。C.C.は明らかに不満そうな顔をするが、アーチャーに睨まれしぶしぶデイパックに詰める。

「ナニヲスルキサマー!ナニヲスルキサマー!」

「ちょっとだけ我慢してろ。すぐに出してやるから」

「ヌワーーッッ!ぬ」

全身が飲み込まれたところで途端に声が途絶える。底なし沼に落ちたみたいで、なんか怖い。最後だけ親父臭かったのは気のせいだろうか?

「さて、では私達は先に行かせてもらう。この一帯は調べたが危険がないという保証はない。襲撃も充分にあり得る。
気付けば救援に向かってやるが、見栄でも誓うといったのだ。目の前の女くらいは守り抜いてみせろ」

「―――ああ、言われるまでもねえよ」

アーチャーの皮肉な笑みに、当麻もまた皮肉に笑う。信頼というには程遠いがお互いに感じ入るものがあるようだ。
無論、性的な意味は全く無い。

「それじゃあ僅かな間とはいえお別れだ。運悪く襲われないことを祈るとしよう」

「魔女に祈られても不幸しか起きなさそうなので結構よ。
けれどグゥレイトォなマッチョ中年に抱きかかえられて衆人に見世物にされるのは同情するわ」

「さっきは祝福するとかいってなかったか?まあいい、労いの言葉として受け取って於こう」

結局、お互いの名を呼ぶことなく別れる二人。この先また合流した後でも名前で呼び合うことにはなりそうにない。



「―――では行くぞ、つかまっていろ」

C.C.を肩に抱え、一足飛びで家の屋根へと登る。そのまま家々を飛び越えて走り出す。
人一人背負っているというのに速さに衰えがない。いや、衰えてもあれ程と表現すべきか。
駆け出した黒と碧の二つの影は瞬く間に小さくなっていった。

「……マジかよ」

高い身体能力を持っているとは思っていたが、まさかあそこまでとは思わなかった。
室内での一件を思い出す。あの時自分がどれだけ手加減を受けていたか今さらに思い知った。
あんな自分よりも遥かに強い奴が他にもいて、それが殺し合いに乗っている。



―――――――――それが、どうした。



自分の矮小さなど百も承知。今までだって、自分が相手にしてきた奴は自分なんかの手に届かない奴ばかりだった。
そんな相手に自分がしてきたことは何だ。そう、この右の拳をそいつにぶちかますことだけだ。
記憶にはなくても、体にはしっかりと憶え込まれている。

「やってやろうじゃねえか……」

1人、静かに呟く。
非力と無力は違う。右腕を振るうしか出来ない自分にも、出来ることはあるんだ。

それでも足りないなら、借りればいい。アーチャーに、戦場々原にC.C.にまだ見ぬこの殺し合いを壊そうとする者達に。
俺は、俺に出来ることを、全力でやり遂げるだけだ。

「なにブツクサいってるのかしら上条君、どうでもいいけどこの仔たち持っててくれない」

決意を固めてるところにに戦場々原から抱き上げていた猫を手渡される。
猫は名残惜しそうににゃーにゃーと鳴いている。くそ、三毛猫、お前もか。

「ああ、私が抱いてたからって臭い嗅いだりしないでね。気持ち悪いから。その仔たちだって嫌がるでしょう」

両手が自由になった戦場々原は何をするのかというと、髪を上げ、足を伸ばしたりと何故か準備運動をしてる。

「あの、戦場々原さん?」

「上条くん、さっきのを見てなかったのかしら?あの分じゃあの人たち、あっという間に駅に着いてしまうわよ。
徒歩で向かう人のことを考えて欲しいわね。まあそういうわけで私たちも少し急ごうと思うのよ。
いい運動にもなるし、何より阿良々木くんにも早く会いたいし」

色々いってるが一番の理由は最後の一文だろう。まあずっと探していた恋人の居場所がわかったのだから気持ちは分からないでもないが、

「なあ戦場々原、それは構わないんだけど俺はこいつらを抱えて―――」

「あ、これも持ってて。邪魔だから」

デイパックを投げつけてくる。確かに長距離走をする以上余計な荷物は外しておくべきだが
それはつまり、自分がその余計な荷物を持つことになるわけで―――



「おいだから戦場々原―――」

「それと上条君、自慢するつもりじゃないけど私昔は陸上部でエースって呼ばれてたから。
実力は―――参考までに私の知り合いは毎朝10キロダッシュ2本やってるそうよ。
まあそのコと陸上勝負したことは一度もないけど」

「―――――――――」

これは、つまり、あれか。




手荷物2つとこいつら(猫3匹)抱えて駅まで走れと―――――――――?




「あら、私を守ってくれる―――とかカッコイイことを言ってくれた気がしたのだけれど気のせいかしら。
そのまま突っ立ってたら一人走り出した私は孤立して悪い人に出遭ってしまい
成す術なく殺されてしまうことになるのだけれど、それでいいのかしら」

そう思ってるなら走ろうと思うな!

戦場々原にとって、結末は分かりきっている。
上条当麻では彼女には追いつけない。
デイパックを二つも背負い、手に猫を抱えている男に駅まで走り切ることなど出来ない。

自分の勘は正しい。
溜めに溜めた疲労は俺自身を裁くだろう。

だというのに、その背中は、




“―――――――ついて来れるかしら”




蔑むように、哀れむように、

俺の到達を、強制していた。






「       ―――――――ついて来れるか、じゃねえ」

視界が燃える。
何も感じなかった体にありったけの熱を込める。
肺は、大気を巻き込むかの如く酸素を集め、




「頼むから、全力疾走はなしにしてくれ―――――!」

渾身の力を篭めて、桃色の背中に咆哮した。





【E-5/市街地 一軒家/一日目/昼】

戦場ヶ原ひたぎ@化物語】
[状態]:疲労(小)ポニーテール 疾走中
[服装]:直江津高校女子制服
[装備]:文房具一式を隠し持っている、ヘアゴム
[道具]:なし(駅に着いたら上条に返してもらいます)
[思考]
基本:阿良々木暦と合流。二人で無事に生還する。主催者の甘言は信用しない。
 0:―――――――ついて来れるかしら
 1:上条当麻に協力。D-6駅に向かい阿良々木暦、神原駿河に会いに行く。 もしくは生死を確かめる。
 2:ギャンブル船にはとりあえず行かない。未確認の近くにある施設から回ることにする。
 3:正直、C.C.とは相性が悪いと思う
 [備考]
 ※登場時期はアニメ12話の後。
 ※安藤から帝愛の情報を聞き、完全に主催者の事を信用しない事にしました。
 ※安藤の死亡によりギャンブル船に参加者が集められているかは怪しいと考えています。
 ※ヘアゴムは民家から拝借しました。

上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康 疾走中
[服装]:学校の制服
[装備]: スフィンクス@とある魔術の禁書目録、
    アーサー@コードギアス 反逆のルルーシュR2、あずにゃん2号@けいおん!
[道具]:支給品一式 X2 不明支給品(1~3、確認済) 、バールのようなもの@現地調達
[思考]
基本:インデックスを助け出す。殺し合いには乗らない。御坂の遺体は必ず連れて帰る。
 0:頼むから、全力疾走はなしにしてくれ―――――!
 1:戦場ヶ原ひたぎに同行。D-6駅に向かい阿良々木暦と会う。戦場ヶ原ひたぎと3匹の猫の安全を確保する
 2:インデックスの所へ行く方法を考える。会場内を散策し、情報収集。
 3:壇上の子の『家族』を助けたい 。
 4:そういえば……海原って、どっちだ……?
[備考]
※参戦時期は、アニメ本編終了後。正体不明編終了後です。

【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:疲労(中)、傷修復完了(健康)
[服装]:血まみれの拘束服
[装備]:
[道具]:基本支給品一式 阿良々木暦のマジックテープ式の財布(小銭残り34枚)@化物語
    ピザ(残り60枚)@コードギアス 反逆のルルーシュR2 オレンジハロ@機動戦記ガンダム00
[思考]
基本:ルルーシュと共に、この世界から脱出。
   不老不死のコードを譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる――?
1:アーチャーと共にD-6駅に向かう。 スザクには会っておくか
2:ルルーシュと合流する
3:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない
4:正直、ひたぎとは相性が悪いと思う
[備考]
※参戦時期は、TURN 4『逆襲 の 処刑台』からTURN 13『過去 から の 刺客』の間。
※制限によりコードの力が弱まっています。 常人よりは多少頑丈ですが不死ではなく、再生も遅いです。


【アーチャー@Fate/stay night】
[状態]:健康 魔力消費(小)
[服装]:赤い外套なし、hollowスタイル
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1(確認済み)、臙条家の鍵@空の境界、虎竹刀@Fate/stay night 、聖骸布X2@Fate/stay night
[思考]
基本:本当の“答え”を見つけ出す。
1:C.C.を連れて先にD-6駅へ向かう。周囲を警戒しておく。
2:この場において過去の改竄は無駄。
3:単独行動を取り情報を集めながら衛宮士郎を捜し出す。【絶望の城】を優先的に調べる。
4:3の過程でルルーシュ、アーニャ、ユーフェミア、を見付けたら12時までならD-6駅、3回目の放送なら象の像へ集うよう伝える。
5:臙条家の鍵の合う場所を探す。
6:荒耶、赤毛の男(サーシェス)に対し敵意。
[備考]
※参戦時期は衛宮士郎と同じ第12話『空を裂く』の直後から
※凛の令呪の効果は途切れています
※参加者は平行世界。またはそれに類する異界から集められたと考えています。
※デイパックの容量に限界が無いことに気付きました。
※「絶望の城」は殺し合いを促進させるための舞台と考えています。
※「臙条家の鍵」は何らかの重要施設、武器が隠されている扉を開けるものと考えています。
※スザク、幸村、暦、セイバー、デュオ、式の六人がチームを組んでいることを知りました。
※スザク、駿河、レイと情報交換を行いました。「絶望の城」については伏せてあります。
※駿河の左腕のレイニーデビルに気付きました。名称や詳細は知りませんが暴走の危険性はないものとひとまず判断しました。
※聖骸布の上着が幻想殺しによって壊れました。 一応布自体はまだ残っています。
※上条達とは一端別れC.C.と先にD-6駅に向かっています。助けにいける程度に距離は保っています。

【聖骸布@Fate/stay night】
アーチャーの赤い外套。上着と腰着(?)の2セット。
ある聖人の聖骸布で作られており、外敵ではなく外界に対する一級品の守りの概念武装らしいが
詳しい効果はわしにもわからん……


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150:神浄の恋せぬ幻想郷(後編) アーチャー 183:飽く迄も愛してくれる?
150:神浄の恋せぬ幻想郷(後編) C.C. 183:飽く迄も愛してくれる?
150:神浄の恋せぬ幻想郷(後編) 戦場ヶ原ひたぎ 194:命短し恋せよ乙女(前編)
150:神浄の恋せぬ幻想郷(後編) 上条当麻 194:命短し恋せよ乙女(前編)


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最終更新:2010年02月09日 09:20