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なまえをよんで Make a Little Wish(後編) - (2007/02/25 (日) 03:29:03) のソース
*なまえをよんで Make a Little Wish(後編) ◆2kGkudiwr6 ■ 「安心して、いい……ゲイナー、君は、ちゃんと置いてきた、から……」 「そんなんじゃ……そんなんじゃない!」 タチコマが最初に言い出したことは、そんなことで。 思わず、私は怒鳴っていた。なんで、タチコマは分からないんだろう。 「なんて……なんて馬鹿なことを……!」 「だからさ……言ったろ、僕は半不死だって……」 その言葉に、前にした会話を思い出す。 自分が機械だから、メモリを移せばいい。それがタチコマが言っていたこと。 だけど、そんなのおかしい……! 「けど……ここにいるタチコマは……ここにしかいないじゃない!」 私は、思わず叫んでいた。 正真正銘、胸のうちから出した言葉だった。 私の体は私のものじゃない。母さんの娘、アリシア・テスタロッサのものだ。 だけど、私はアリシアじゃない。だから、母さんに捨てられた。だから、なのはに会えた。 体が同じだからって、中にある心が同じだ、なんてことはきっとない。 私の声に、タチコマは何か疑問を持ったみたいで。 何か、言おうとして。 けれでも、その言葉が紡がれることはなかった。 答えを、知ることはなかった。 もう一度、爆発音。 あの子が、なのはを殺した奴が、何の感慨もなく、タチコマにとどめを刺していた。 「あ……!」 炎が上がる。煙が出る。地面が抉れる。伸ばした手は、届かない。 いつか母さんに伸ばした手と同じように、届かない。 タチコマは何の言葉も発しない。もう、ただの残骸でしかないから。 民家の瓦礫を押しのけながら出てきた相手の左腕は、変な方向に曲がっていた。 口からは血を吐いている。リンコーコアに異常をきたし始めたのか。 だけど、戦いをやめる様子は微塵も無い。 ボロボロの体で、再びグラーフアイゼンを振り上げようとしていた。 「そこまで、して殺したい、んだ」 もう、涙さえ流せない。 タチコマは私を庇って死んだ。私が甘いから。 もう誰も、敵でさえ決して死なせないようにしようと思ったのに。なのはのために。 結果はどうだ。どれだけ追い込んでも相手は立ち上がる。命を削って。 そうして、また失った。 なんて、愚か。 カルラさんを、殺しておいて。また、目の前で、人を死なせた。 ――今の私は、たった、一人。 「ゆる、せ、ない」 言葉が冷えていく。表情が死んでいく。自分の、大切な世界が毀れていく。 そんな中でそんな言葉を言っていた。こんな言葉しか、言えなかった。 許せないのは甘かった自分か、非道な相手か、それともどちらともか。分からない。 分かるのは。これから私は、あいつを殺すということだけだ。 きっと、君は怒るよね、なのは。 人殺しなんか駄目だって。ちゃんとお話聞いてあげなきゃ駄目だって。 (だけど――私は。君達を殺したコイツを、絶対に許せない――!) ――そのためだったら、ただの人形にも戻る。 「バルディッシュ、物理設定に」 『……Yes, sir』 バルディッシュが帯びていた魔力が変わっていく。 目の前には、理性の欠片もない野蛮な笑みを浮かべた敵がいる。 そう、敵だ。殺すべき相手だ。私は無貌のまま、空へ飛び上がって、呪文を紡いだ。 「アルカス・クルタス・エイギアス――」 光が走る。 S2Uとバルディッシュ、二つのデバイスが共鳴し、雷光を生み出していく。 「――ダブルサンダースマッシャー、ファイア!」 ■ 二つの雷光は、ルイズの全身に深い火傷を負わせていた。 それでも、彼女は止まらない。フェイトを殺そうと前進する。 フェイトの表情は変わらない。彼女にも分かりきったことだ。 誘き寄せるように……いや、真実誘き寄せるためにフェイトは飛び上がった。 もちろん、ルイズはそれを追っていく。 次の戦いの場は、ビルの屋上。 月光を背に、フェイトは静かに佇んでいた。 「……満月」 ぽつりと、そうフェイトは呟いていた。 手入れの行き届いた髪と黒いマント――バリアジャケット・ライトニングフォームをなびかせて、 屋上のフェンスの上に、まるで自分の存在を誇示するかのように。 その瞬間、後ろからルイズが現れた。 「……狂ってる割に、頭は働くんだね。でも」 そう呟いて、フェイトは横へ跳ぶ。当然、ルイズは追おうとして…… 瞬間、魔法で編み上げられた縄に絡め取られていた。 ディレイドバインド。範囲内に侵入した相手を拘束する設置型の補助魔法。 猪突猛進な相手には、何より効果を発揮する。 「レイデン・イリカル・クロルフル――」 悶えるルイズを尻目に唱える言葉は義兄の呪文。反応するのはS2U。 蒼き光弾がその先端に生み出される。 「――疾風なりし天神よ、今導きのもと撃ちかかれ」 暴れる敵を抑えて唱える呪文は自分の言葉。反応するのはバルディッシュ。 黄金の電撃がその先端に宿る。 リンカーコアが脈動し、術者の意志が外に出ようと暴れ出す。 それを抑え込みながら、フェイトは二つの杖を掲げた。 「スティンガースナイプ――」 S2Uから放たれるのは蒼き光弾。 だが、ルイズも黙って見ているわけではない。 バインドを振りほどき、スティンガースナイプを迎撃する。 刹那……スティンガースナイプが上空へ飛び上がった。 「プラズマランサー――」 フェイトの前方に、黄金の槍が具現化する。 同時に、スティンガースナイプはルイズの後ろへ回りこむ。 ここに来て、ルイズもフェイトの意図を理解した。 フェイトの狙いはただ一つ…… とっさに飛び上がろうとするルイズ、それを遅いと言わんばかりに。 「スナイプ・ショット――ブリッツラッシュ!!!」 蒼い光弾と、黄金の槍が加速する。 二つの光弾がルイズを足を貫き、切断し、鮮血が迸る。 それでも二人の少女の表情は変わらない。 ルイズは笑い、フェイトは無表情で。 『Schwalbefliegen』 足を失ってなお、ルイズが魔法を行使する。 強烈な爆発。月夜に生まれる赤い光。 二人ごとビルの屋上が吹き飛び、二人はその中に落ちていく。 どちらも脱出をしようとはしない。ただ墜ちるだけ。 ただし、二人の間に大きな違いがある。 フェイトは攻撃に集中するために脱出しようとせず、墜ちながらも魔法を紡ぎ。 ルイズは全身の傷で動けず、ただ墜ちるだけ。 それでも、ルイズは笑う。 サイトが、近くに見えてきていたから。 ■ 私が一階部分に軟着陸するのと、相手が同じ階に墜落したのは全く同時だった。 「バルディッシュ?」 『……まだ、生きています』 「そう」 デバイスからの報告は、驚きべきものだったけど予想していたもの。 最期まで油断しない。敵が生きていると言うのなら、完全に跡形も無くすまで安心しない。 今の私にすべきことは、それだけ。それ以外は考えられない。 悲しげなバルディッシュの声も、気にならない。 今はそれを考えるべき時ではないから。 「バルエル・ザルエル・ブラウゼル――」 『Stinger Blade Execution Shift』 『Thunder Blade』 再び、二つのデバイスが唱和して。 瞬間。 突如、周囲一体が雷光に包まれた。 光源は、魔力によって生み出された雷の剣……サンダーブレイド。 だが……その数、通常のサンダーブレイドの比ではない。 S2Uに登録された魔法に、スティンガーブレイド・エクスキューションシフトと言うものがある。 大量の魔力剣を虚空に浮かべ、敵へ向けて放つ魔法だ。 そして私は、スティンガーブレイドの代わりにサンダーブレイド――雷で編み上げた剣を配置した。 私の狙いは、最初からコレだ。 サンダースマッシャーを二つ放った時から、もうこの魔法を構築すべく呪文を紡いでいた。 ……この魔法が、この相手には一番いい。 無数の剣が宙に浮かび、常世とは思えない光で世界を満たす。 その光景があの子にはどう見えていたのか。 「これが私の全力全開―― 怯えればいい。後悔してもいい。謝ってもいい。勝手にすればいい。だけど」 私はそう、無表情のまま告げる。 黒衣を広げ、太陽の光以上に輝く雷光に照らされながら。 ――その瞳に、黒い泥のような感情を燃え滾らせて。 「どんなことをしても、どれくらい謝っても、どんなに償おうとしても! あなたは……もう許さない!」 ありったけの殺意を込めて、手を掲げる。人はこれを、死神の宣告だとさえ思うだろう。 それと同時に、殺すために降り注ぐ無限の剣。 回避も防御も相殺も、何もかもが間に合わない。間に合わせない。 まるで墓標のように、十を越える雷剣が相手に突き刺さる。 「あ、あは……」 それでもなお、あの子は生きていた。 簡単だ。私は急所を外していた。 助けるためではなく……苦しめて殺すために。 なのはの苦しみを教えるために。タチコマの痛みを教えるために。私の悲しみを晴らすために。 ……それなのに。あの子は苦しもうとしなかった。 「あははははははははははははははは!!!」 笑う。嗤う。哂う。嘲笑う。狂人はただ、異常な笑みを浮かべるのみ。 明らかに異常な光景だった。そもそも、今の相手の体自体も異常だ。 全身を剣で貫かれ、皮膚は焼けただれ、周囲には異臭が満ちている。 それでもゾンビのように動き出そうとするあの子に、私は、一瞬顔をしかめた。 しかめただけだった。しかめて。 「ファイア」 冷たく呟いて、バルディッシュを掲げた。 無表情のまま、憎き相手が死んでいくのを「観察」していく。 どれほど痛いだろうと、どれほど後悔するだろうかと。 なのに。 「サイトとぉ……」 痛みを見せない。後悔もしない。苦しまない。笑っている。 更に剣が突き刺さっていく。 無限に。容赦なく。罪人を裁くかのように。 それなのに。 「ずっとぉ……」 もはや言葉さえ不明瞭。 明らかに痛覚は肉体の許容量を超えた痛みを感じさせているはず。 流れていく血は意識をバラバラにしていっているはず。 それなのに。 ――なんで、哂って、いるの? 「っ…………!」 許せない。 許せない許せない許せない。 なのはを殺して、タチコマを殺したコイツが、苦しまないのが許せない――! ――シンデ、シマエ。 「ファイアッ……!」 残る全ての剣を相手に突き刺した。 脳漿に眼球に臓物に四肢に関節に 特に喉は念入りに。なのはの苦しみを思い知らせてやるために。 どこまでも無慈悲に、どこまでも冷酷に。 「い、しょ、にぃ……」 「ブレイク」 それが、最期のキーワード。 私の言葉と共に百を越える剣は全てが雷光へ還り。 相手の体を、跡形も無く吹き飛ばす。 それを私は、じっと見ていた。 気持ちは晴れるだろうかと思って。何か変わりはしないかと思って。 なんにも、変わりはしなかった。 なのはは死んだままで。 タチコマは帰ってこなくて。 気持ちは、晴れないで。 そのまま、その場に膝を付いていた。 小さく音がした。見れば、S2Uが砕けていた。 まるで、私を見限ったかのように。 ただ、酷使に耐え切れずに壊れただけ。そう理性で分かっていても、見限られたかのようにしか思えなかった。 「わた、し……」 俯いた。 こんなはずじゃなかった世界なんて、見たくなかった。 なのはがいない世界なんて、考えたくもなかった。 手を差し伸べてくれるものは、もう、いなかった。 ■ ただ一つだけ分かったことがある。 自分がさっきまで、ただ一つの目的に機械のように集中できたのは。 壊れないように、ただ一つのことだけを見て。 現実と向き合わずに済むための、自衛の策だったんだ、って。 【D-6 ビル内 夜中】 【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】 [状態]:全身に中程度の傷、背中に打撲、魔力大消費 [装備]:バルディッシュ・アサルト(アサルトフォーム・カートリッジ一発消費)、バリアジャケット、双眼鏡 [道具]:支給品一式、西瓜1個@スクライド [思考・状況] 激しい虚脱感 【E-6 駅周辺 夜】 【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】 [状態]:風邪の初期症状、頭にたんこぶ、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い [装備]:なし [道具]:支給品一式、ロープ [思考・状況] 1:なんでこんな人と!? 2:フェイトのなのは捜索に同行させてもらう。 3:寒い。タチコマの後部ポッドに戻りたい。 4:二人の信頼を得て、首輪解除手段の取っかかりを掴む。 5:さっさと帰りたい。 [備考] ※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。 ※タチコマの操縦機構、また義体や電脳化などのタチコマに関連する事項を理解しました。 【レヴィ@BLACK LAGOON】 [状態]:腹部に軽傷、頭に大きなタンコブ、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い、相変わらずイライラ [装備]:イングラムM10サブマシンガン、ベレッタM92F(残弾16、マガジン15発、マガジン14発) NTW20対物ライフル@攻殻機動隊S.A.C(弾数3/3)、ぬけ穴ライト@ドラえもん [道具]:支給品一式、予備弾薬(イングラム用、残弾数不明)、バカルディ(ラム酒)1本@BLACK LAGOON、割れた酒瓶(凶器として使える) 西瓜1個@スクライド [思考・状況] 1 :ゲイナーから用心棒代でもせびるか。 2 :どうやったらあのガキ共に思い知らせられるかねえ…… 3 :カズマ? 借りは返す! 4 :ロック? まぁあいつなら大丈夫だろ。 5 :気に入らない奴はブッ殺す! [備考] ※双子の名前は知りません。 ※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。 &color(red){【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔 死亡】} &color(red){【高町なのは@魔法少女リリカルなのはA's 死亡】} &color(red){【タチコマ@攻殻機動隊S.A.C 死亡】} ※三人の所持品はそれぞれ遺体の側に置かれています。 ただし、タチコマとルイズの所持品は破損している可能性もあります。 *時系列順で読む Back:[[なまえをよんで Make a Little Wish(前編)]] Next:[[]] *投下順で読む Back:[[なまえをよんで Make a Little Wish(前編)]] Next:[[]] |215:[[なまえをよんで Make a Little Wish(前編)]]|フェイト・T・ハラオウン|| |215:[[なまえをよんで Make a Little Wish(前編)]]|ゲイナー・サンガ|| |215:[[なまえをよんで Make a Little Wish(前編)]]|レヴィ|| |215:[[なまえをよんで Make a Little Wish(前編)]]|&color(red){ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール}|| |215:[[なまえをよんで Make a Little Wish(前編)]]|&color(red){高町なのは}|| |215:[[なまえをよんで Make a Little Wish(前編)]]|&color(red){タチコマ}||