「ーーーーー全部、失っちまったな……」
松雪集は、夜空を見上げて呟いた。
夜空、というのにはもう明るすぎるかもしれない。黎明の時間帯になっている。
仲間たちはもう二人だけ。あの"リーダー"が生き残っているかさえ疑わしい。
自分の右手から、令呪と呼ばれる刻印が消えていた。それが、自分のサーヴァント、
セイバーの死亡を意味しているのは明白だった。当然だ。あの怪物の黒い翼に滅茶苦茶に潰されたのだから、いくら英霊とはいえ耐え抜くのは不可能だろう。
すべてを失い、残ったのは血塗れの刀のみ。
何を迷うというのか。もう後戻りなどはできないのだ。三人を殺めたその罪は決して赦されない。待ち受けるのは死か生か。集の運命は一つしかないのだ。
ーーーそう、例え目の前に体中から闇を放ち続ける少女が居たとしても。
彼には『殺す』しか道はないのだ。
「………ハァッ、ハアッ」
秋山澪の息はあがっていた。
ランサーの『ゲイ・ボルク』を受けて異常増強した生命力をほとんど奪われ、今は本来以下の生命力しかない。残念ながら、いくら歪んだ力を振りかざしたとしても、全力の
殺し合いを生き抜くのは不可能であっただろう。
集は無言で斬りかかる。
闇が鞭のようにしなり、集に進むが『九字兼定』に無慈悲にも切り裂かれる。
魔術的な意味を多く秘めた名刀の前には、破滅さえ無力であった。
斜め一直線に、澪の胴体が切り裂かれた。
血が噴出し、闇と絡み合って得体の知れない色となる。
「ぎゃああああああああああああっ!!」
澪の断末魔が響くが、それでは終わらなかった。
体から噴き出す闇に支えられ、集に再び襲いかかりーーーーーー、
背後から現れた剣の雨に肉体を複数箇所貫かれ、澪は今度こそ絶命した。
微塵の救いもない、バッドエンドのシナリオを辿った結果である。
集は攻撃の主ーーーギルガメッシュに向き直ると、再び刀を構える。
「人間には惜しい宝具だな。我の全力を以て手に入れさせて貰おう」
「言ってろ、化け物」
「天地廻離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)」
九字兼定は確かに宝具級の名刀だ。しかし、それでも『エア』との格は違いすぎた。
鍔迫り合いにすらならない内に、その刀身が砕け散り、集の肉体を勢いよく差し貫いた。集はそれでも、最後まで英雄王の顔を睨み続けていた。
「…見事な迄の闘志。その生命、我が友により終わらせることができ光栄だな」
英雄王は往く。
◆
暗くなっていく。ああ、この熱いのは…俺の血か…
はっ、あいつのこと言えた義理じゃねえな。俺には、間違った方法しかできなかった。
もしも。この罪を償って来世を生きられるなら。
「また……あいつらと…一緒に……」
【秋山澪@けいおん!】
【松雪集@あの花】 死亡
【残り8/45人】
最終更新:2011年07月17日 00:36