f-2エリアの廃倉庫にて、仲村ゆりに撃破された阿万音鈴羽は目を覚ました。
腹部に受けた衝撃で気絶していたらしい。防弾チョッキを着ておいてよかった、と鈴羽は心の底から思う。
しかし、周りには二人の人影があった。
「宿海さん!目を覚ましましたよ!」
「おっ、気がついたか?倒れたから、ひとまず安全なところに運んでおいたぞ」
鈴羽は呆然となった。この
殺し合いは疑心暗鬼と欲望が渦巻くものだと思っていただけに、防弾チョッキを着て倒れているいかにもな女を助けようとするとは。
「君、いい人だね」
心の底からの感想だった。SERNに支配された世界を知っている鈴羽は滅多に人をいい人だとは言わない。
そして、続いて笑顔のままもう一言言った。
「でもね、こういうときには命取りだよ」
「ーーーーーぇ」
パァン。
乾いた音がした。阿万音鈴羽が仲村ゆりとの戦いにおいて投擲ナイフを用いたのは単純な理由で、音がしないことから不意打ちに向いていると思ったからに過ぎない。
鈴羽の右手には古めかしいデザインの小銃が握られ、銃口からは硝煙が立ち上っていた。そしてその銃口は、古河渚に向けられていた。
心臓に弾を受けた際に先ほどの声。
古河渚は死んだ。
「お前……っ!よくも古河を!」
「…ごめん。君に恨みはないけど、死んで貰うよ」
しかし、弾は吐き出されなかった。引き金を引くより早く、極東の聖人・神裂火織の体当たりが、鈴羽の体を突き飛ばしていた。
◆
数分前。
神裂と芽衣子は、更なる仲間を探すために探索をしていた。
聖人・神裂のように超人的な体力を芽衣子が持ち合わせているとは思えなかったため、少し休憩をするために廃倉庫を訪れようとしたとき、銃声が響いた。
「行くの、かおりん?殺したりしたら、」
「心配は要りませんよ。拘束はさせていただきますが。めんまはここに居て下さい」
◆
「…へえ。君、強いね」
「紛いなりにも聖痕を持つ者です。おとなしく降伏すれば手荒には致しません」
当然。鈴羽は銃口を神裂に向けた。
神裂ならば、発射される弾を動体視力で避けることも可能ではあったが、鈴羽はどちらかといえば科学よりの人間だ。常識として弾を避けるのは不可能と断じていた。
が。神裂が弾を避けることも、鈴羽が引き金を引くこともまた無かった。
背後から出現した一本の剣が、鈴羽の肺を背後から串刺しにしていた。
「(あ、私、死ぬのか…)」
鈴羽の思考は死に際にあってもどこか冷静であった。
ただ一つの悔いを持って。
「(せめて、もう一度父さんに会いたかったなあ)」
阿万音鈴羽は、その壮絶な生涯の幕を閉じた。
「貴方は…ッ」
神裂は鈴羽を殺した相手を睨みつける。奇しくもそれは、彼女が最初に戦った相手。
人類最古の英雄王ギルガメッシュであった。
神裂は脇差を構える。天草式の術式を用いて極限まで強化して、一切の妥協をしないことで彼女の愛刀、七天七刀と同じクラスの強度を再現したのだ。
ギルガメッシュを殺す。
神裂火織は、最悪の害悪に向けて最大の力を使う。
◆
英雄王の背後から再び無数の宝剣が出現する。容赦無く地上を蹂躙するが、神裂は自らに降り注ぐ剣を叩き落としていく。
英雄王との距離をじりじりと詰めていく。
疾風の如く駆け、目指すのはその首。人類最古の英霊の首をめがけ、駆ける。
しかし。その進撃は止まる。
ギルガメッシュの周りから鎖が現れ、神裂を拘束した。
『天の鎖』。彼の数多の宝具の一つであり、まともな英霊では対処できない代物。
英雄王の手に、ドリルのような形の剣が現れた。
彼の最強の宝具であり、最強と言われた
セイバーでも対処できない。
「『天地廻離す開闢の星(エヌマ・エリス)』ーーー!」
神裂の心臓を一突きにする。いくら聖人とはいえ、『刺殺』は神の子の処刑のイメージ、つまり聖人を葬るのには最高の兵器なのだ。
「逃げなさい、めんま!」
叫び声のすぐ後に、神裂火織は絶命した。
◆
「めんまーーーーーーーー!?」
そのニックネームに該当する人物は仁太の記憶には一人しかいない。
本間芽衣子。仁太の大切な仲間である。
バッ!と外へ走り出す。そこに居たのは、もう失ってしまった、親友。
仁太と目が合った直後、芽衣子は満面の笑顔でーーーー、
パァン、という乾いた音がした。
芽衣子の腹に、赤い染みができていた。背後には、惨劇を終えたばかりの黄金のサーヴァント、英雄王ギルガメッシュが不満気に小銃を向けていた。
「この時代の銃器はこの程度の性能か。期待外れだが、次はそこの小僧。あの女剣士の脇差の威力を剪定させてもらーーーーー、」
バゴォォォオオオン!と、ギルガメッシュの肉体が廃倉庫の中にまで吹き飛ばされた。
立っていたのは、ハンマーを持った魔法少女。
桜高軽音部部長、田井中律だった。
「逃げろ!あいつはたぶん今のくらいじゃ死んでないぞ」
言葉を発した直後、律は倉庫内へと入っていく。ギルガメッシュを倒すために。
勝率は1パーセント以下。だが、田井中律は挑む。それが、魔法少女だった。
◆
「ーーーくそっ!めんま、しっかりしろよ!」
木の下。腹からの出血が止まる様子の無い芽衣子を見て、涙を流しながら仁太は叫ぶ。
芽衣子は、明らかに瀕死の状態であった。仁太の言葉のように、理想の展開にはならない。本間芽衣子の命はもう助からない。
それでも、笑って見せた。超平和バスターズの大好きな『めんま』として。
「じんたん…、大丈夫だよ。めんまは、生まれ変わってまた必ず、みんなのところに帰ってくるから。だから、ぽっぽも、ゆきあつも、助けてあげてね」
こんな時くらい自分の心配をしろよ!と仁太は叫ぶ。
助けられないのだ。自分はまたしても、芽衣子を救うことはできないのだ。
めんまと会話できる時間はもう尽きる。
本当の終わりに、いや、あるいは始まりに、芽衣子は笑顔でこう言った。
「ーーーーーだいすき」
芽衣子は二度と目を開かなかった。f-2に、仁太の叫びが木霊した。
【深夜/f-2】
【宿海仁太@あの花】
基本:このゲームを終わらせる。
1:めんま…。
◆
「ごめんな、澪」
同時刻。
倉庫内でも全てが終わっていた。
無数の剣に肉体を貫かれ、律の肉体はソウルジェムごと破壊された。
「ーーー興が削げたわ」
宿海仁太を追おうとはしなかった。
そこに意図があったのかは分からないが、英雄王は次なる参加者を探して歩きだした。
【古河渚@CLANNAD】
【阿万音鈴羽@Steins;Gate】
【神裂火織@とある魔術の禁書目録】
【本間芽衣子@あの花】
【田井中律@けいおん!】 死亡
【残り23/40人】
【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
基本:生き残る。その暁には主催者を殺す。
1:騎士王(セイバー)を探して殺したい。
最終更新:2011年07月16日 01:11