9話 神も救いもあるかもしれないね
【0】
自己犠牲?なんてきれいな言葉だろうな。
【1】
「はぁ……はぁ……な、なんなの……あの子、早いとかいう問題じゃない…」
三瀬笑子は研究所の裏口付近で座っていた。
息を切らしていて、言葉からも逃げていたのが分かる。
その目には、焼き付けられた恐怖におびえていた。
彼女の唯一と言っていい能力…完全記憶能力。
一度覚えたことは忘れない、そんな能力なのだ。
彼女はこの能力に苦しめられてきた。
虐待してきた父の記憶。
無視され続けた母の記憶。
私に絡んできた悪い人達の記憶。
暗記ができるからいいだろう…なんて思うかもしれない。
この能力は、恐怖が焼きつけられたらおしまいなのだ。
一生忘れられないトラウマとなる。
一長一短…などと言うがそれどころの話ではない。
一長十短、と言った方がいい。
でも、その記憶を消すような人が現れた。
そう…古川正人のことである。
彼は彼女を守ると誓ってくれた。
そして、いつも守ってくれていた。
例え…こんなときでも考えてしまう。
「正人なら、私を守ってくれる」
まるで騎士の様な言い草である。
まあ、「守る」という点では変わりないのだが。
「……早く、来てくれないかなぁ…」
呟いても一人…である。
……いや、一人…ではない。
彼女、三瀬笑子の後ろには……。
死んだ目をした、女が立っていた。
三瀬笑子はまだ気づいていない。
一歩…一歩…と女は近付いてくる。
三瀬笑子は気付く気配もない。
女は無表情のまま…サーベルを構えた。
そこで、三瀬笑子は気付いた。
後ろにいる不気味な存在に。
「ひ、あ…きゃああああああああああああ!!!」
「……黙れぇぇ!!」
サーベルが三瀬笑子に襲いかかる。
三瀬笑子は、反応したおかげか踵に思いきり力を入れ後転した。
サーベルが空を斬り、その場には静寂が残る。
「なんで私は不幸になるの…?」
「……?」
襲撃者は涙を流しながら語り出す。
少しずつ三瀬笑子に近寄りながら…。
「私は正義の味方なんかじゃない…自分の幸せを求めるなんてさ…
つまるところ、私は幸せをつかみたいのよ…。
皆は幸せになってるのにさ…なんで私だけ……なんでよ…
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」
三瀬笑子は恐怖を覚えた。
これはもう精神がどうこうとか言う問題じゃない。
親に殴られた時の恐怖なんかより。
周りに罵詈雑言を吐かれた時より。
いや、そう言った恐怖なんかじゃない。
心の内側から刺されたような。
心の内側から掴まれたような。
そういう恐怖なのだ。
心の外側でなく、心の内側。
頭で覚えるのではない。
心に植えつけられる。
心に刻まれる。
一生忘れる事が出来ない…。
心の、傷
「だからさ…私は考えたわけよ」
「…………」
「ん?ああ、自己紹介がまだだった?私は美樹さやか…魔法少女よ」
「……?」
魔法少女…彼女はこう言った。
正直な事を言うと、魔法少女と言うと正義の味方というイメージがある。
でも、彼女は現に私を斬ろうとした。
しかも、杖とかそういうものじゃなく…剣で。
そんな魔法少女がいるのかって言う話だ。
「信じなくてもいいわよ、どうせバカみたいな話だし」
「……」
「で、さっきの続きね……私は考えたのよ」
「私が不幸になるのなら、みーんな不幸になっちゃえばいいんだってさ」
「……なんでそんなひどいことを」
「酷い?酷いのはどっちよ…私ばかりこんな目にあって、何が酷いよ」
「不幸になっているのが貴方だけだと思ったら大間違いよ!」
「ッ……!」
「私だって不幸な目にあったよ!親に捨てられて!周りからいじめられて!
それでも私は目の前の小さな幸せを見つけた!
だから私は救われたんだよ!なのに貴方は幸せを見ようとしない!
自分は不幸?そんなのは逃げるための言葉でしかないでしょ!?」
「だ、黙れええええええええええええええええええええええええ
ええええええええええええええええええええええええええええ
えええええええええええええええええええ!!!!!!!!!」
サーベルが高く振り上げられた。
それでも三瀬笑子は揺るがなかった。
ただ、願いながら声を喉の奥から出した。
「正人おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ガキィ、金属と金属が擦れ合う音が響く。
目の前に立っているのは、守ってくれるといった
ヒーローだ。
ただ、こちらを向いて笑った。
これで私がすることは、ただ彼が無事であることを願うだけだ。
【2】
少なくとも、何故こんなことになってるのかってのは知りたい。
どうして笑子が殺されそうになっているのか。
どうして目の前の女が
殺し合いに乗っているのかとか。
まあ、正直今はどっちでもいいのかもしれない。
理由なんて簡単だ、笑子を守るのを優先するからだ。
「う、おらぁあ!」
思いっきりラグネルで相手を斬りつける。
容赦なくやったはず…なのだが……。
「なっ…嘘だろ」
「そんなんで勝とうと思ったの?甘いわ、ねっ!」
細いサーベルで弾き飛ばされる。
あの女のどこからそんな力が出るのか。
筋肉の質が異常なことにでもなってるのか、と言う訳はない。
あんな細い腕のどこに筋肉があるってんだよ。
それこそまさに筋肉革命…なんでもない。
しかし、本気でやらなきゃ殺されるというのは分かっている。
「う、らああああああああああああああああ!」
こちらのリーチに入って来た女を俺は斬りつける。
まあそんなのが当たる訳が無い。
が、何故か勢いでもう一度剣を振ってしまった。
そこで何故か、刀から衝撃波が生まれた。
その衝撃波は目にもとまらぬスピードで女に向かう。
剣から衝撃波が出るなんて思っていなかったからか、向こうはもろに食らった。
俺はその隙を見逃さず、相手を斬りにかかった。
あの衝撃波に殺傷能力は無く、ダメージを与える程度だったらしい。
「食らえええええええええええええええ!!!」
俺は心の底から叫んだ。
喉に痛みが生じるほどの大声で叫んだ。
ふと、一瞬視界に入った。
彼女が、悲しそうな眼をしていた。
そして、こう呟いていた。
「恭介」
それがだれかは分からないし知りたくもない。
しかし、何故だろうか。
何かの因果か…分からないが。
俺は、そいつを殺すのをやめていた。
「……殺しなさいよ」
「どっか行け…命まではとらねぇさ」
「じゃあ、私が殺すわよ……」
「だったら、今すぐ殺すまでだよ」
「……」
「大事な奴が、いるんだろう」
「……関係ない、でしょ」
「まあな」
なんておせっかいと言うのか。
甘い、甘すぎるよ。
本当に大馬鹿だよな、俺。
今まで何度騙されたのか。
今まで何度絶望してきたか。
分かってはいるつもりだ。
でも、信じてしまう。
それが、善人気どりの悪い癖だ。
「……気が変わらないうちに行け」
「…………」
向こうは黙って行ってしまった。
疲れた、と思ったが表には出さないでおこう。
すぐ近くに彼女もいることだし。
「正人!」
「うおっ……大丈夫だったか?あと抱きつくのはやめろ」
「大丈夫だよ、別に良いじゃん減るもんじゃないし~」
「はぁ……まったく」
疲れるけど、この疲れは心地が良い。
まあ、こいつの気がすんだら研究所で何か探すとするか。
【3】
「……」
負けた、ただの一般人に。
魔法少女の力があっても負けてしまった。
あの武器の力が強いとはいえ、負けは負けだ。
その上、情けまでかけられた。
「………次は、殺してやる」
サーベルを一度振り、鞘の様な物の中に入れる。
もう容赦しない、もう何も恐れない。
彼女は間違いを認めず、自分の道を進んだ。
そんな彼女の運命は…。
【真昼/E-3研究所付近】
【美樹さやか@
魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]体にダメージ(中・修復中)
[装備]サーベル、ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[所持品]基本支給品
[思考・行動]
基本:皆不幸になっちゃえばいいんだ。
1:どこかに向かう。
2:あの男は絶対に殺す。
[備考]
※アニメ版で魔女化する寸前からの参戦です。
【4】
「……怪しすぎじゃね?この研究所」
「だね…変な薬が」
ここは研究所の中…なのだが。
どうみてもただの怪しい施設です、ありがとうございました。
とでも言ってしまいそうな場所である。
「……とりあえず、調べてみるか…」
「そうだね…心配だけど、大丈夫だよね?」
「まぁ、よほど大丈夫じゃない?怪しい薬と言っても危ない薬はなさそうだし」
「怪しいと危ないって同じじゃないの?」
「さぁ」
そんなことはどうでもいいので、二人は別れて探索を進めることにした。
「うーん…危なさそうだなぁ、怖いなぁ…」
三瀬笑子は研究所の2階にいた。
古川が1階を探しているので仕方なく2階を探しているのだ。
しかしあるのは怪しい薬だけだ。
「……胸が大きくなる薬とかないかなぁ」
ついつい本音が出てしまうが、そんな薬がある訳が無い。
科学的がどうこうとか言う問題でもない。
もうそれは普通に無理だというのだ。
「はぁ……でも何かそういう非科学的な物でもあればなぁ…………」
『ぅゎぁぁぁぁ……』
「!?さ、叫び声…1階からってことは……」
少し顔が青くなったが、すぐに下に向かった。
流石に死ぬなんてことはないと思うが、心配なのだ。
下についた彼女の目に入った物は……。
【5】
「……なんつーか、分からねぇ」
古川が研究所1階を見回って思ったことだ。
残念ながら彼に薬の知識は無い。
なので見て回ろうとは行ったが何も見つけられていない。
せめて簡単な物でもあればいいと思うのだが…。
「なんでないのかなぁ簡単な物…薬って難しい」
ちなみにこの研究所は薬剤師でも分からないような薬が集まっている。
つまり、彼なんかでは分かる訳が無い。
しかし、彼は一つある物を見つけた。
黄色の液体…容れ物には「重要薬」と書かれていた。
重要薬と言っても何か分からないので飲む訳に行かない。
しかし少しその薬を見るとこんなことが書いてあります。
『飲むなよ!絶対に飲むなよ!』
何か誘ってんのかよ。
そう古川は思いながら薬を机に置こうとした。
が、手が滑って飲んでしまった。
あくまで手が滑っただけです。
そうなんです、手が滑ったんです。
「……なんだ、なにも起きな、いっ!?」
体に激痛が走る。
殴られたとかそういう比じゃないような痛み。
うずくまってしまう、そして、意識がどんどんなくなって…。
「ってぇー…」
古川は少し経って目を覚ました。
周りを見渡す、何か広くなったような研究所。
そして何故か肌を包む服の感じがおかしい。
その他もろもろだが…まあ気にしないでおこう。
「……あれ?」
何やら声がおかしい。
いつもより内側からでも聞こえる声が高い。
いや、と言うか全部がおかしい。
恐る恐る鏡を見てみる。
そこに映っていたのは、自分ではなかった。
いや、自分ではあるが自分に見えなかっただな。
つまるところあれだ…うん。
俺は、小さな女の子になっていた。
「うわああああああああああああああああ!!!」
気付いたら俺は叫んでいた。
そして、そこに……。
【6】
「……」
「……」
沈黙、ただそれが広がっていた。
なんというか、笑子は時が止まっているかのように静止している。
そういう俺も訳が分からずに静止している。
そこで、始めて笑子が喋り出した。
「か、可愛い」
「……え?」
「きゃあああああああ!!可愛い!何この子!え…まさか参加者…ってそれより正人は…」
「…………俺なんだけど」
「え?」
「いや、だから俺…古川正人なんだけど」
「…………」
「ええええええええええええええええ!!!!?」
「いや、叫ぶなって…人来たらどうするんだよ」
「え!?嘘……?」
「いや本当だって……」
会話がつながらないのでカットするよ。
「えーと…つまり、薬を間違えて飲んじゃって小さくなったの?」
「小さくなっただけじゃなく女になっちまったよ、どうしよう」
「で、でも…刀とか持てるよね?」
「さぁ…筋肉は落ちてるはずだし」
筋肉は少なくなって腕が異常に細くなっている。
それどころか背丈もすごく減っている。
このまま戦えば普通に笑子の方が強いだろう。
「んー…どうやって戻るんだろう、分かんないかな」
「……さぁ?薬の説明書でもないの?」
「そんな便利な物、あるわけ」
「あったよ」
「嘘だろ」
笑子が何やら冊子を持っている。
それがいわゆる説明書と言うものであった。
で、そこに書かれている内容は…と。
「幼体化は3時間で直ります、しかし性別変換は1週間しないと治りません…だって」
「だってじゃないよね?それ大変だよね?」
自分で飲んでおいてあれだが大変なことになった。
しかし、服が大きくて着ているというより羽織っている状態だ。
これをもし変態が見ていたらどうする?
ロリコンに限らずどんな年齢もバッチコイな男がいたら…。
「……みぃーつけた」
背筋が震えた。
危険だと俺の体は察知している。
急いでラグネルを持って構える。
……しかし重くて構えられない。
あれ?これって異常なほどのピンチじゃない?
「笑子!小さい刀ないか!?包丁でもいい!」
「え、ちょっと待って……あ、これなら大丈夫!?」
そう言って笑子が取り出したのは刀身が細い剣。
何故かピンク色だが気にしないでおこう。
「分かった…それを貸して」
「え…逃げないの!?危ないよ!」
「言っただろ、守るって」
「………」
「外に出てろ、俺が出てこなかったらどこかに行ってくれ」
「……ごめんね」
「何謝ってんだよ、約束しただろ」
「……」
笑子が外に行ったのを確認して、剣を構えた。
相手は不気味に笑っている。
「いいのか?1対2の方がいいんじゃないのか?」
「お前の考えが読めるんだが…もういいわ、俺はお前を殺すつもりでかかるぞ」
「ただのガキがそんな口を叩いていいのか?」
「……じゃあ、やってみるか?」
「そうだな」
古川は一気に長谷川に近づく。
長谷川は落ち着いて古川を蹴り飛ばして距離をとる。
「っ痛…テメェ、容赦なさ過ぎだなぁ」
「殺すつもりで来るんだろう?」
「そうだな…」
古川はここで考える。
どうすれば倒せるのか。
単純な筋力差では勝ち目は0だ。
腕を掴まれればお終い、ゲームオーバーだ。
「……一か、八かっ!」
再び相手に突進する。
しかし今度は細身の剣を構えて、だ。
長谷川も次で決着をつけようと身を乗り出した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「はあああああああああああああああああ!!!!!」
二人が交錯する。
そして、決着がつく。
その場に立っていたのは………。
【7】
「……正人、大丈夫かな?」
三瀬笑子は言われた通り正面入り口前で待っていた。
待っている時間は長いもので、5分が1時間に感じる。
しかも、恋人の命がかかっているのだから。
ガチャ
後ろから戸が空く音が聞こえた。
体が固まって、後ろを向けなかった。
信じたいが、怖い。
死んでしまっていたら、私は酷い目に会う。
「待たせたな、笑子」
彼は、いや彼女は後ろから声をかけてくれた。
いつも通りの、あの笑顔で。
私はうれしくて再び抱きついてしまいました。
「だーかーらー!抱きつくなよ!」
彼の声はもう聞こえていません。
だって私の心は幸せいっぱいなんだから。
助けに来てくれた。
約束を守ってくれた。
それだけで、すごいうれしいから。
【長谷川祐治@オリキャラ 死亡】
【残り 78人】
【真昼/E-3研究所前】
【古川正人@オリキャラ】
[状態]幼体化&性別変化
[装備]必殺255の細身の剣@ファイアーエムブレム蒼炎の軌跡
[所持品]基本支給品、ラグネル@ファイアーエムブレム蒼炎の軌跡、不明支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:さっさと帰りたい。
1:笑子を守る。
2:師匠とアイクと言う人を見つける。
[備考]
※DOL2nd参戦前からの参戦です。
※薬品により幼体化&性別変化しています。
幼体化(残り3時間)
性別変化(残り1週間)
※ラグネルの衝撃波は出せるが殺傷能力は一切ありません。
【三瀬笑子@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]
[所持品]基本支給品、不明支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:死にたくない。
1:正人と行動する。
[備考]
※DOL2nd参戦前からの参戦です。
最終更新:2011年09月23日 20:05