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そういう人は真っ先に

「君、女の子だよね? どうして学ランなの?」
一瞬、こいつは馬鹿なのかと思った。だけど次の瞬間、これは使えるとも思った。




意味のわからないゲームに巻き込まれて、早数十分経過。僕に配られた支給品とやらは、ポケットに入る程度の小さな短刀。とりあえずポケットにしまっておく。
さっきいた教室に、知っている顔が何人かいた。そしてその中には兄さんの姿もあった。それでたまらなく安心したんだけど、僕から兄さんを探そうとは思わない。
だって兄さんは僕と違ってとても優秀だ。僕がいたら寧ろ足手まといになってしまう。兄さんから探しに来てくれることを願うしかない。

……さて、どうしようかと思っていたところで、背後からさっきの声をかけられた。思わず盛大に肩が跳ねる。……吃驚した。
僕はもとから女顔で、女に間違われることも度々あった。流石にこんな状況でまで女と間違われるとは思ってなかったんだけれど(だって学ランだぜ?)、……まあいい、これは使える。

「じ、実は私……両性具有なんです」
恥らう演技をしてみる。最初は女で通そうかとも思ったが、後に矛盾が出てくることを考えて両性具有で落ち着かせた。声は低くないし、身長も170センチない。
そのうえにしばしば「美少女」と称される僕の容姿は(「少年」でないあたりが非常に不名誉だが)、こういうときに役立つらしい。
「そうなのか?」
「ええ、そうなんです」
……割と普通に反応するもんだな。驚けよ少しは。

兄さんは優秀。そんな彼を探す必要はない。だけど僕は死にたくない。だから僕がすることは一つ。兄さんに見つけてもらうまで生き延びる。それだけ。
そのためにはどうするか? ……答えは簡単だ。

「あの、私、「美緒」っていうんですけど、女の子みたいでしょう? だから私は自分のこと女の子だと思ってて、そのせいで性格も女の子みたいで。……だから」
「だから学ラン着せられてショックだった?」
「……はい」
ばーか、嘘だよ。これは口に出さないけど。今の話の中で本当なのって、名前くらいじゃね? うわ、僕って実は嘘つくの得意なのかもしれない。
「そっか、俺は安藤裕一。よろしくな」
にっこりと人のよさそうな笑みを浮かべて、ユウイチは手を差し伸べてきた。握手するつもりらしい。ああ、こいつ殴りたい。
いい人って、絶対裏があるか、いい人自身がだまされるかどっちかなんだ。……まあとりあえず握手はしておいた。
握手してないほうの手(左手なんだけど)、をぐっと握ってみたけれど、いつもみたいな力が出なかった。……あれ? ……そうか、これがか。

僕の住んでいた島(カゼハナというんだ。間違ってもこんな沖木島とかいう島じゃない)の住民は、皆その身体に不思議な力を宿していた。
僕たちはそれを「能力」と呼んでいたのだが……そうか、これが柚希の言っていた能力制限か。くそ。
僕には身体に似合わず(だってほら、女に間違われるくらいだから)、物体操作能力という力を持っていて(人外レベルの怪力だと思ってくれたら話は早い)。
それさえ使えれば大分有利だと思ったんだけど……。ダメか。

「あ、そうだ。ミオちゃんの武器は何?」
「へ?」
何を聞いてるんだこの馬鹿は。今のところは僕のことを殺す気はないんだろうけど……。
悩んでると、ユウイチは苦笑した。
「あ、ごめん。あのね、俺はさ、脱出を考えているんだ」
「脱出?」
「うん、この島から」
……こいつはそんなことを実現できるほど頭が良いのか? 兄さんみたいだったら尊敬できるんだけど。
でもまあ、とりあえず「すごいですね!」と褒めておく。
「ありがと。それでさ、なるべく人を集めて、同盟を組もうと思ってるんだ」
「同盟?」
「そうそう。多分もう二つくらいはどっかで出来てると思うんだけど、「脱出したい」って人を集めて、その人たちの知識を集めて脱出するんだ。
人数を集めれば集めるほど脱出できる確率は上がるんだからね」
「ああ! それはすごい案ですね!」
「嬉しいよ。でさ、ミオちゃんは殺し合いに乗ってないみたいだから、俺と同盟を組んで欲しいんだ」
「本当ですか!?」
「おう! それで、ミオちゃんの武器とか教えてほしいんだ。勿論俺のも見せるよ。それで、戦力を考えて行動しよう」
ああ、なるほど、だからか。
「なるほど……ですけど、ここじゃちょっと……」
「ああ、そうだよね、道のど真ん中だもんね。他の人に見られてたら大変だ。移動しよう」
「……ありがとうございます」
とりあえずはユウイチについていくことにした。ぺこりと頭を下げれば、ユウイチは僕の頭をぽんぽんとなでた。
その手には優しさがこもっていて……こいつ本当に良い人なのか?

なるべく静かに草むらの中へ向かう。うん、草むらなら人目にもつかない。
「そろそろかな」
「ここでいい? じゃあ――――」
ユウイチの声は途中で途切れた。
だって。

僕が彼を刺したんだから。


「へえ、こんなんでも心臓に届くもんだね。肋骨に当たらなくてよかった」
心臓に刺した短刀を抜く。よかった、僕に返り血はついてない。この短刀は勿論さっきまでポケットに入っていたものだ。

「うん、ごめんね、最初から同盟なんて組む気なかったから」
表面だけで謝罪して、ユウイチのデイパックはいただくことにする。
……さて。この場面を誰かに見られると困るから、早々に失礼しようと思う。短刀は残り三本。とりあえずこの短刀は拭いとかなくちゃ。
とりあえず手近な彼のワイシャツで拭っておく(だって学ランは固いもの)。


じゃね、ありがと。君はだまされ易いいい人だったよ。
そういう人は真っ先に。

――死ぬんだ。


【7-D/茂み/一日目-午前】
 【真田美緒@亡國ノ村】
 [状態]:健康
 [装備]:短刀@革命(土御門伊織の武器)
 [持物]:基本支給品+裕一から強奪した支給品(武器もあるが、未確認)
 [方針/目的]
  基本方針:何をしてでも生き残る
  1:とりあえず自分の身優先(裕一は足手まといになるとふんだので殺しましたが、使えそうな人にはついていきます)
  2:裕一を殺したことは内緒

 [備考]
 ※ 両性具有と偽りましたが、れっきとした男性です。ただし外見上は相当の美少女。つまり美形です。



【安藤 裕一@Rondo:死亡】
【残り62名】



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安藤裕一

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最終更新:2012年12月18日 10:45
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