ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1535 れいむにありがとう
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ankoss
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「ここはちょっときたないけど、きにいったよ!ここをれいむのおうちにするよ!」
「あら?なにかしらこれは?」
お家宣言。
それが、れいむと彼女の出会いだった。
「ゆゆ?!うすぎたないじじいがきたよ!れいむのきれいなおかおをみたんだから、あまあまをたくさんちょうだいね!」
「うるせー糞饅頭!お前に会いに来たんじゃねー!ったく、何でこんなの面倒見てるんだか……」
老人を見上げ得意げの顔で出迎えるれいむ。
ふてぶてしい態度とでっぷり太った外見が、このれいむが何なのかを物語っていた。
老人はそんなれいむを冷ややかな目で見つめる。
「あらあら、誰かと思ったら隣の爺さんですか…飽きもせずによく来ますね…」
「ふん…まあ、そのなんだ…隣人としての安否確認だよ」
老人は照れ臭そうにそう言う。
彼女はそんな老人を見つめ、嬉しそうに目を細める。
れいむはそんな様子を面白くなさそうに見ていた。
「くそじじい!そんなことはどうでもいいよ!さっさとあまあまもってきてね!ばばあでもかまわないよ!」
老人はれいむを睨みつけるが、当のれいむはそんな事を気にする様子もなくニヤついていた。
この老人は、かつては鬼威参と呼ばれていた男だった。
老人はれいむを見る度に「ヒャッハァァァァ!」しそうになっていた。
だか、今日も老人はそんな思いを心の奥底に押し込める。
老人には彼女がれいむの面倒を見ている理由が解らなかった。
「ふふふ…相変わらず楽しそうですね」
彼女は老人とれいむのやり取りを見て嬉しそうに微笑むのだった。
「おい!くそばばあ!れいむはおなかがすいたよ!あやくあまあまもってきてね!」
「ああ、ごめんねゆっくりちゃん…今用意するよ」
「ゆふふ…ばばあはれいむのどれいになれたことに、たくさんかんしゃしてね!」
このれいむは何時も彼女に対して我侭三昧、完全に自分の奴隷だと思っていた。
だが、彼女はそんなれいむを咎めるような事はしなかった。
「ふふふ、とっても感謝しているよ………だから、私を一人にしないでね」
「ゆふふ!それはばばあしだいだよ!だから、これからもれいむのめいれいをちゃんときいてね!」
彼女はこのれいむを過剰は程に甘やかしていた。
故にれいむは日に日に増徴していった。
「やい!くそばばあ!またとなりのくそじじいがきているよ!」
「うるせー!くそれいむ!少しは黙らんか!…ったく、口の中消毒してやろうか?!」
「おぉ、こわいこわい!じじいがおこったよ!」
「あらあら…今日も来てくれたんですか?」
「ん?あぁ……ちょっと通りかかってな…」
この老人は毎日の様に彼女の元にやって来た。
彼女にとっては少ない茶飲み友達。
口が悪くてれいむと何時も怒鳴りあっているが、そんな様子が彼の元気な証でもある。
日々を淡々と過ごす彼女にとっては有り難い存在だった。
良く日の当たる縁側でお茶を飲む二人。
これは何時もの日課になっていた。
れいむは庭を好き放題駆け回り、うんうん、しーしーを撒き散らしたり、雑音を奏でていたりした。
そんな醜悪なれいむの姿を見た老人は思わず呟く。
「なあ…前から気になっていたんだが…どうしてあんな五月蝿いれいむを飼っているんだ?」
「何て言うか……一人だと寂しくて…」
彼女はそう言うと遠くを見つめる。
その横顔は消えてしまいそうな程はかなく見える。
老人は何かを言おうとしたが、言葉を飲み込む。
「……それなら、ほかにも良いゆっくりは沢山いるだろうに…よりによってあんなゲス…いや、でいぶか…」
「私は…あの子じゃないと駄目なんですよ」
「優秀な胴付だっているだろうに…」
「そうですね…でも…あの子といると、誰かを思い出しそうなんですよ」
そう言うと彼女は足元で喚いているれいむを見る。
その顔は親しい人を見つめる様な、とても優しい顔をしていた。
それは親?兄弟?それとも……そんな思いが老人の頭をよぎる。
だがそんな思いをすぐに自分の胸に収めた。
彼女がれいむを可愛がる理由が、少し解った気がする老人だった。
「おい、くそばばあ!れいむはぷりんがたべたいよ!はやくよういしてね!」
「ごめんね、ゆっくりちゃん。今日は用意してなくてね」
「つかえないばばあだね!だったらさっさとかってくればいいでしょ!」
「なんだ、今日もやっているのか…まったく、余計なことばかり覚えよってからに…」
今日も老人が彼女を訪ねると、何時もの様にれいむが我侭を言っていた。
老人はそんなれいむをウンザリしたような顔で見つめる。
れいむは腹立たしい顔でニヤついていた。
「そうだね…じゃあ、今から買いに行くから爺さんと一緒に待っててね」
「ゆふふふ!さすがれいむのどれいだよ!りかいがはやいね!ゆっくりいそいでね!」
「そこまで甘やかさんでも良いだろう?そんな態度じゃ、この馬鹿はどんどん調子に乗るぞ!」
彼女とれいむの態度を見ていて思わずそういう老人。
このれいむが彼女の飼いゆっくりでなければ、ここで潰していただろう。
れいむの態度は、彼の中に眠っている鬼の血を呼び覚ますには十分過ぎるほどだった。
だか、そんな老人を悲しそうな目で彼女は見ていた。
「いいんですよ…私が好きでやっているんですから…今日はなんだか機嫌が悪いみたいですね…
悪いけど、また明日会いましょう」
「ばーか!ばーか!くそじじいはさっさとおうちにかえってね!」
彼女にそう言われては何も仕様がない。
老人はれいむを潰したくなる衝動をグッと押さえ、家に帰っていった。
「ここをまりささまたちの、ゆっくりぷれいすにするのぜ!きたないれいむは、さっさとでていくのぜ!!」
「ゆぷぷ!きちゃないれいみゅがいるのじぇ!おちょーしゃん、はやくやっつけちぇね!」
「なにいってるの!ここはれいむのおうちだよ!ばかなまりさたちはさっさとどこかにいってね!!」
そんな声が聞こえるので老人は慌てて庭に出てみる。
野良ゆっくりのお家宣言に備えて、ゆっくり撃退用に購入したガスガンを携帯して様子を伺う。
声はどうやらとなりから聞こえてくるようだ。
老人は塀から隣の庭を覗き込む、庭にはれいむとまりさ親子がいた。
「やっぱりばかなれいむなのぜ!はやくどこかにいかないと、いたいめみるのぜ!!」
「なまいきなまりさだね!せいさいしてあげるよ!!」
「ばーきゃ!ばーきゃ!おとーしゃんはつよいのじぇー!あのよでこうきゃいするのじぇー!」
睨み罵声を浴びせあっていた二匹はついに行動に出た。
お互いが助走をつけて体当たりを繰り出した。
ぶつかり合った二匹の饅頭は、形を変えて両者ともに吹っ飛んだ。
「ゆぎゃん!いだいぃぃぃぃ!れいむのかわいいおかおがぁぁぁぁ!!」
「ゆびゃい!ゆぎぶぶぶ!まりさのだんでぃーなおかおがぁぁぁぁぁ!」
「ゆぶちゃ!ゆ…が…ぎぎ……おちょーしゃ…ぎぎ…おもいのじぇ……ががが…」
必要以上にオーバーアクションで痛がる二匹、れいむは涙を流し転げ回る。
まりさの方は吹っ飛んだ先に子まりさが居た様で、親まりさに潰され餡子を吐き出していた。
「ゆわぁぁぁぁ!おちびちゃんがぁぁぁぁ!!」
「ゆびびび!いだだだ………ゆぷぷぷ!いいきみだよ!れいむにさからうから、こうなるんだよ!」
れいむは得意そうに笑いながら、我が子を潰して泣いている親まりさを見る。
親まりさは痛みと我が子を潰してしまったショックで泣き続けた。
「そろそろれいむがとどめをさしてあげるよ!」
れいむはそう言うと縁側によじ登り、そこから親まりさ目掛けて勢いよく飛んだ。
「くずなまりさはしね!! 『ボフッ!』 ゆぼっ?!……いだいぃぃぃぃぃぃ!!ゆがぁぁぁぁ!!」
れいむは重すぎたせいで親まりさの手前で地面とちゅっちゅする事になった。
痛みに泣き喚くれいむを、親まりさは憎しみを込めた目で睨みつける。
「おまえのせいで……まりさのだいじな……おちびちゃんがぁぁぁぁぁ!ゆるさないのぜぇぇぇぇ!!」
親まりさはそう叫ぶと、帽子の中から木の枝を取り出し口に咥えた。
そしてそのままれいむ目掛けて突き刺そうとする。
「げすなれいむはゆくりしねぇぇぇぇ… 『パスパスパスパス…』 ゆががががが?!…いだいのぜ?!…
ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ!までぃざのおがおがぁぁぁぁぁ!!」
親まりさがれいむに襲い掛かるよりも早く、老人がガスガンをおやまりさに向けて撃った。
BB弾とはいえども、ゆっくりには効果絶大。
あっという間に蜂の巣にされた親まりさは、痛みに耐えられず餡を撒き散らしながら転げ回った。
「ゆび…ゆび…どぼじで…までぃ…がごんなめに……もっど……ゆっく…しだがっ………」
「おちょーしゃ…ぎぎ…ゆびぇぇぇ……ごぼっ!…ゆげぼっ!…み…みみ…み…み……」
「ゆがぁぁぁ…いだだだ……ゆゆゆ??ゆぷぷぷぷ!おろかなまりさたちが、みじめにしんでるよ!
れいむにさからうから、こうなるんだよ!おぉ、あわれ、あわれ!!」
まりさ親子は苦悶の表情を浮かべて死んでいった。
れいむはそれを見て楽しそうに笑った。
「まさかゆっくりを助ける事になろうとは……それにしても、醜悪な奴だな……まったく…」
老人はそう呟くと家の中に入っていった。
その日の夕方、彼女がれいむを連れて老人の家を訪れた。
「今日はゆっくりちゃんを助けて貰ったみたいで、ありがとうございます。ほら、ゆっくりちゃんもお礼を言って」
「ゆゆ?なにいってるの?どうしてれいむが、おれいをいわないといけないの?ばかなの?しぬの?」
「こらこら、ちゃんとお礼を言わないと駄目でしょ?」
「あぁ、良いんだよ。どうせそんな奴から礼の言葉など聴けると思っておらんしな…」
彼女はそれから何度も老人に頭を下げてお礼を言った。
ゆっくりを助けて、お礼を言われるなんて思ってもいなかった老人。
複雑な気持ちで彼女からお礼のしなを受け取った。
「おや、このプリンはあの有名な洋菓子屋の………まさか、あのれいむにも食べさせているのか?ゆっくりには勿体無いな」
老人はプリンを食べながら、ますますれいむに苛立ちを覚えていた。
その日も彼女はいつもと変わらない生活をしていた。
「ゆっくりちゃん、ごはんですよ」
「はやくもってきてね!れいむは、おなかがすいているんだよ!」
「ふふふ…たくさんたべてね」
「いわれなくても、たくさんたべるよ!むーしゃむーしゃ………それなりー!もっとおいしいものをもってきてね!」
彼女はいつもゆっくりフードに蜂蜜をたっぷり掛けていた。
れいむに言われるままに、彼女はいつも過度に甘い食事やおやつを与えていたのだ。
だが贅沢三昧で舌が肥えてしまったれいむには、もうそんな食事では満足出来なくなっていたのだ。
「ごめんね…今日はそれしか用意してないのよ」
「よういしてないなら、いまからよういしてね!まったくむのうなどれいだね!ゆっくりできないよ!!」
増徴したれいむの暴言に困り顔の彼女だった。
れいむはそんな彼女をふてぶてしい顔で睨みつけていた。
ふと、彼女の視界が歪む。
急な目眩が彼女を襲った。
「あら?……なにかしら?」
彼女は思わずその場に座り込んでしまう。
そんな彼女を見て、れいむは不満を爆発させる。
「ゆがぁぁぁ!なにしてるの?れいむはおなかがすいているんだよ!!さっさとうごけぇぇぇぇ!!」
「ごめんね、ゆっくりちゃん…今……う…………」
彼女はそのまま眠るように、その場に倒れてしまった。
「なにしてるの?!ごはんがまだだよ!かってにねないでね!!」
れいむがいくら喚いても、彼女は目を開けることはなかった。
病院の待合室に老人がれいむの入った透明な箱を抱えて座っていた。
れいむは箱の中で何か騒いでいる様だったが、防音加工の箱のおかげで何も聞こえてこなかった。
れいむが喚いている内容はなんとなく想像が出来るが、老人はそれ所ではなかった。
こんなに緊張しているのは何年ぶりだろうか…
これでは箱の中のれいむと同じではないか…
老人は喚き暴れるれいむをじっと見つめる。
まさかこんな形でこの箱が役に立つとは思ってもいなかった。
何時もより時間の流れが遅く感じる。
彼女との出会いは何時だっただろうか?
長い間空き家だった隣の家に彼女は引っ越してきた。
何かの事故で記憶を失ったらしく、昔の事は良く覚えていないとの事だった。
そんな彼女に身内がいなくなった自分を重ねてみたのか、色々と彼女の事を気にかけるようになった。
始めは言葉数の少なかった彼女も、段々と自分に心を開いてくれたのか、
いつの間にか茶のみ友達になっていた。
「ねえ、こんなものが家の中居たんだけど…」
彼女は少し困ったような顔をしてそれを持ってきた。
得意そうにニヤ着く薄汚れた大きな饅頭。
その顔を見た時、眠らせたはずの鬼が目覚めた気がした。
彼女はゆっくりと言う者を知らなかったのか、忘れていたのか、自分の説明に興味深そうに耳を傾けていた。
そしてこの薄汚いれいむを飼いたいと言ったのだった。
当然自分は猛反対した、殺した方が良いと言ったが彼女は可哀想だと言った。
結局彼女はれいむを飼い始めた。
自分はゆっくりに対しての接し方や、飼育方法を教えた。
飼いゆっくりのマナーや躾の仕方も教えたが、れいむは相変わらずだった。
「くそじじい!なにしてるの?れいむのおうちにはってにはいらないでね!」
「?!うわ!びっくりした…なんだ、ゆっくりか…脅かしやがって…」
「おいあんた!そこで何をしているんだ?」
「あ!いえ…ちょっと通りかかったもので…さよなら!」
「ふん…通りかかった奴がわざわざ人の家の庭に入ってくるものか…それにしても、少しは役に立っているのか?」
「ゆゆ?いつものじじいだよ!あまあまちょうだいね!」
「………やっぱり気に入らん奴だ」
れいむはたまに番犬代わりにもなっている様だったが、それでも老人には完全に許せる存在にはならなかった。
だが、隣人の飼いゆっくりなので特に手を出すような事もなく、れいむは幸せに暮らしていた。
そして今日…
「じじい!じじい!くそじじい!ゆっくりしてないでさっさとでてきてね!れいむはおこってるんだよ!」
「まったく…いったいなんだんだ、やかましいくそゆっくりめ!………何だくそれいむ?!なにかようか?」
「れいむはうんうんじゃないよ!くそじじいはれいむにあやまってね!あと、あまあまもってきてね!」
「何だ?そんな事が言いたくて騒いでいたのか?迷惑な奴だ…」
「ゆっぎぃぃぃぃ!れいむはおなかがすいているんだよ!れいむのどれいのばばあは、ごはんをくれないでねちゃったよ! だかられいむはどれいのじじいに、あまあまをもらうんだよ?りかいできる?」
「何でそんな事せにゃならんのだ?理解できんわ!…なんだ?お前の飼い主は具合が悪いのか?」
「ゆがぁぁぁぁ!あたまのわるいじじいだね!くそばばあはねてるんだよ!れいむがせいさいしてもおきないよ!
だからじじいがかわりに、おいしいあまあまをよういしてね!たくさんでいいよ!」
「ん?何?………なんだと?……………まさか!」
その後倒れている彼女を病院まで運んで現在に至る。
まさかれいむがこんな形で役に立つとは思わなかった。
れいむが居なければ彼女はあのまま………
老人は改めて箱の中のれいむを見る。
れいむは騒ぎ疲れたのか、憎たらしい顔で眠っていた。
こんな時にも可愛げの無いれいむ。
だがそんなれいむを見ると、なんだか不思議と安心できる気がした。
老人は少しだけれいむに感謝した。
目を開けると見慣れない部屋にいた。
独特の匂いがする。
見知らぬ白衣を着た人…
しばらくして部屋に入ってくる年老いた友人。
友人に抱えられている同居人。
「良かった…只の疲労だそうじゃないか…」
友人は嬉しそうに笑う。
「つかえないどれいが、めをさましたよ!はやくあまあまちょうだいね!」
同居人が得意そうにそう言う。
「何でそんなに疲れが溜まっていたのかは知らないが、あまり無理はするんじゃないぞ…」
「どれいのくせに、かってにいなくなったらこまるよ!ゆっくりはんせいしてね!」
「黙れ、この糞饅頭が!お前がストレスを与えていたんじゃないのか?」
「れいむはくそまんじゅうじゃないよ!じじいはゆっくりりかいしてね!」
長い間会っていなかった訳でもないのに、なんだかとっても懐かしい感じがする。
見慣れた筈のやり取りなのに、なんだかとっても安心できる。
「二人ともありがとう」
自然に笑みがこぼれる。
友人は照れくさそうに、頭をかいて目をそらす。
同居人は得意そうにニヤついた。
その後友人から自分がここに連れて来られた経緯を聞いた。
手間のかかるこの憎らしくも愛らしい、ゆっくりと言うものに改めて感謝した。
このめぐり合わせに改めて感謝した。
「れいむ…ありがとう」
自然に口から出た言葉。
れいむはもう一度、憎たらしく笑った。
「ん?今、コイツの事をれいむって言わなかったか?」
「ゆゆ?なにいってるの?れいむはれいむだよ!」
「あら?………」
「何時もは『ゆっくりちゃん』とか言ってなかったか?」
急に頭が痛くなる。
思わず頭を抱えてしまう。
「おい!どうした?!大丈夫か?!今医者を呼んでやるぞ!!」
そう叫ぶ友人の腕を掴む。
自分は大丈夫だと。
友人はそんな私を不安そうに見つめる。
そう、自分は大丈夫。
むしろ気分が良いくらいだ。
今まで忘れていた記憶が頭の中で蘇る。
「ふふふふふ…あははははは!はっはっはっ!」
「おい、どうしたんだ?おかしくなっちまったのか?」
「大丈夫よ、ちょっと可笑しくってね…ふふふふ」
そう、私は可笑しくて笑っていた。
記憶を失っていたとはいえ、まさか…
「こんな糞袋と一緒に生活していたなんて…ふふふ…」
「は?何を言って…」
「ゆゆ?どれいはなにがおかしいの?れいむにつかえることができて、しあわすぎてわらっているの?」
「爺さん、今まで色々世話になったわね…おかげで記憶が戻ったみたい。いえこれもこの糞ゆっくり…れいむのおかげかしら?」
「何言って…え?!それは本当か?思い出したのか?」
それまで不安そうな顔をしていた友人が嬉しそうに笑う。
糞ゆっくりと言われたれいむはなにやら騒いでいるが、どうでも良いだろう。
「今まで本当にありがとう、とっても助かったわ。それと…これからも茶飲みの友達で居てくれるかしら?」
「ふん!何を言って…お前さんはずーッと友人だよ………でも、本当に良かったなぁ」
改めて御礼を言うと顔を赤くする友人。
彼とはこれからも長く付き合っていけそうだ。
そして…
「貴方にももう一度お礼を言わないとね、れいむ、本当にありがとう!そして………」
『これからもよろしく!』
「ゆぎぃぃぃ!このくそばば…………
ゆ?…………
ゆっひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
何かに気がついたのか、れいむは笑う私の顔を見て悲鳴を上げた。
「よう!今日は休みか?」
「ええ、上がっていって」
あれから数ヵ月たった。
彼女は仕事に復帰したが、たまに休日を見計らって老人が遊びに来ていた。
「それにしても、まさかあんたがゆっくり駆除の仕事をしていたとはな…」
「えぇ、それが事故で記憶をなくしてれいむを飼うなんてね…」
「道理でれいむを見て懐かしそうにしていた訳だ…」
「でも、そのおかげで記憶が戻ったんですからね………まあ、ストレスで病院に運ばれたりもしましたが…」
楽しそうに縁側に座り語らう二人。
その二人に寄り添うように透明な箱が置かれている。
箱の中には苦悶の表情を浮かべ、歯をガチガチ鳴らすれいむがいた。
「で、そのれいむはどうだ?更生は出来そうなのか?」
「まあ、元々ドスとかの更生も行ってましたから、時間は掛かると思いますけど、
このれいむが死にまでには何とかなるでしょう」
そう言うと彼女は箱かられいむを取り出す。
れいむは彼女に触れられると、一瞬ビクッと反応するが特に何も言わずただ震えるだけだった。
そんなれいむの頭を彼女は優しく撫でる。
「ゆっひぃぃぃぃ!ごごごごっごめんなさいぃぃぃぃ!いきててごめんなざいぃぃぃ!!
れいむはごみです、れいむはくずですぅぅぅぅぅ!!」
「ほら、れいむ、おじいさんにご挨拶は?」
「ゆびっ?!…すてきなおじいさん、こんにちははははは…ゆっくりしていってくださいいいい!!」
「ほう…」
老人は感心したように声をあげる。
このれいむ、恐怖に怯えてはいるものの、かつての傲慢で高圧的な態度は一切見られなかった。
「たいしたもんだ、あのれいむをここまで怯えさせるとは…」
「でも、まだ怯えているだけですから、更生させる為の再教育はここからですね」
「いやいや、それでも凄いさ、鬼威参と呼ばれる者でも、これだけでいぶを怯えさせる事が出来る者は少ないさ。
一応は人間が…あんたが恐ろしいっ事を理解しているみたいだしな」
「あら、その言い方だと、まるで私が鬼みたいじゃないですか」
「ゆっひぃぃぃぃぃぃ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくり………」
二人は顔を見合わせ笑った。
れいむは彼女の膝の上でゆっくり出来ていない顔で何度も「ゆっくりしていってね!」を連呼していた。
「れいむ、貴方には世話になったからね…こんな形でしか恩返しが出来ないけど、
立派なゆっくりに生まれ変わらせてあげるからね」
「ゆわわわわ…ガチガチガチガチガチガチガチガチガチ………」
彼女はれいむを見つめ、優しく微笑むとそっと呟いた。
ずっとゆっくりしていってね………
完
「あら?なにかしらこれは?」
お家宣言。
それが、れいむと彼女の出会いだった。
「ゆゆ?!うすぎたないじじいがきたよ!れいむのきれいなおかおをみたんだから、あまあまをたくさんちょうだいね!」
「うるせー糞饅頭!お前に会いに来たんじゃねー!ったく、何でこんなの面倒見てるんだか……」
老人を見上げ得意げの顔で出迎えるれいむ。
ふてぶてしい態度とでっぷり太った外見が、このれいむが何なのかを物語っていた。
老人はそんなれいむを冷ややかな目で見つめる。
「あらあら、誰かと思ったら隣の爺さんですか…飽きもせずによく来ますね…」
「ふん…まあ、そのなんだ…隣人としての安否確認だよ」
老人は照れ臭そうにそう言う。
彼女はそんな老人を見つめ、嬉しそうに目を細める。
れいむはそんな様子を面白くなさそうに見ていた。
「くそじじい!そんなことはどうでもいいよ!さっさとあまあまもってきてね!ばばあでもかまわないよ!」
老人はれいむを睨みつけるが、当のれいむはそんな事を気にする様子もなくニヤついていた。
この老人は、かつては鬼威参と呼ばれていた男だった。
老人はれいむを見る度に「ヒャッハァァァァ!」しそうになっていた。
だか、今日も老人はそんな思いを心の奥底に押し込める。
老人には彼女がれいむの面倒を見ている理由が解らなかった。
「ふふふ…相変わらず楽しそうですね」
彼女は老人とれいむのやり取りを見て嬉しそうに微笑むのだった。
「おい!くそばばあ!れいむはおなかがすいたよ!あやくあまあまもってきてね!」
「ああ、ごめんねゆっくりちゃん…今用意するよ」
「ゆふふ…ばばあはれいむのどれいになれたことに、たくさんかんしゃしてね!」
このれいむは何時も彼女に対して我侭三昧、完全に自分の奴隷だと思っていた。
だが、彼女はそんなれいむを咎めるような事はしなかった。
「ふふふ、とっても感謝しているよ………だから、私を一人にしないでね」
「ゆふふ!それはばばあしだいだよ!だから、これからもれいむのめいれいをちゃんときいてね!」
彼女はこのれいむを過剰は程に甘やかしていた。
故にれいむは日に日に増徴していった。
「やい!くそばばあ!またとなりのくそじじいがきているよ!」
「うるせー!くそれいむ!少しは黙らんか!…ったく、口の中消毒してやろうか?!」
「おぉ、こわいこわい!じじいがおこったよ!」
「あらあら…今日も来てくれたんですか?」
「ん?あぁ……ちょっと通りかかってな…」
この老人は毎日の様に彼女の元にやって来た。
彼女にとっては少ない茶飲み友達。
口が悪くてれいむと何時も怒鳴りあっているが、そんな様子が彼の元気な証でもある。
日々を淡々と過ごす彼女にとっては有り難い存在だった。
良く日の当たる縁側でお茶を飲む二人。
これは何時もの日課になっていた。
れいむは庭を好き放題駆け回り、うんうん、しーしーを撒き散らしたり、雑音を奏でていたりした。
そんな醜悪なれいむの姿を見た老人は思わず呟く。
「なあ…前から気になっていたんだが…どうしてあんな五月蝿いれいむを飼っているんだ?」
「何て言うか……一人だと寂しくて…」
彼女はそう言うと遠くを見つめる。
その横顔は消えてしまいそうな程はかなく見える。
老人は何かを言おうとしたが、言葉を飲み込む。
「……それなら、ほかにも良いゆっくりは沢山いるだろうに…よりによってあんなゲス…いや、でいぶか…」
「私は…あの子じゃないと駄目なんですよ」
「優秀な胴付だっているだろうに…」
「そうですね…でも…あの子といると、誰かを思い出しそうなんですよ」
そう言うと彼女は足元で喚いているれいむを見る。
その顔は親しい人を見つめる様な、とても優しい顔をしていた。
それは親?兄弟?それとも……そんな思いが老人の頭をよぎる。
だがそんな思いをすぐに自分の胸に収めた。
彼女がれいむを可愛がる理由が、少し解った気がする老人だった。
「おい、くそばばあ!れいむはぷりんがたべたいよ!はやくよういしてね!」
「ごめんね、ゆっくりちゃん。今日は用意してなくてね」
「つかえないばばあだね!だったらさっさとかってくればいいでしょ!」
「なんだ、今日もやっているのか…まったく、余計なことばかり覚えよってからに…」
今日も老人が彼女を訪ねると、何時もの様にれいむが我侭を言っていた。
老人はそんなれいむをウンザリしたような顔で見つめる。
れいむは腹立たしい顔でニヤついていた。
「そうだね…じゃあ、今から買いに行くから爺さんと一緒に待っててね」
「ゆふふふ!さすがれいむのどれいだよ!りかいがはやいね!ゆっくりいそいでね!」
「そこまで甘やかさんでも良いだろう?そんな態度じゃ、この馬鹿はどんどん調子に乗るぞ!」
彼女とれいむの態度を見ていて思わずそういう老人。
このれいむが彼女の飼いゆっくりでなければ、ここで潰していただろう。
れいむの態度は、彼の中に眠っている鬼の血を呼び覚ますには十分過ぎるほどだった。
だか、そんな老人を悲しそうな目で彼女は見ていた。
「いいんですよ…私が好きでやっているんですから…今日はなんだか機嫌が悪いみたいですね…
悪いけど、また明日会いましょう」
「ばーか!ばーか!くそじじいはさっさとおうちにかえってね!」
彼女にそう言われては何も仕様がない。
老人はれいむを潰したくなる衝動をグッと押さえ、家に帰っていった。
「ここをまりささまたちの、ゆっくりぷれいすにするのぜ!きたないれいむは、さっさとでていくのぜ!!」
「ゆぷぷ!きちゃないれいみゅがいるのじぇ!おちょーしゃん、はやくやっつけちぇね!」
「なにいってるの!ここはれいむのおうちだよ!ばかなまりさたちはさっさとどこかにいってね!!」
そんな声が聞こえるので老人は慌てて庭に出てみる。
野良ゆっくりのお家宣言に備えて、ゆっくり撃退用に購入したガスガンを携帯して様子を伺う。
声はどうやらとなりから聞こえてくるようだ。
老人は塀から隣の庭を覗き込む、庭にはれいむとまりさ親子がいた。
「やっぱりばかなれいむなのぜ!はやくどこかにいかないと、いたいめみるのぜ!!」
「なまいきなまりさだね!せいさいしてあげるよ!!」
「ばーきゃ!ばーきゃ!おとーしゃんはつよいのじぇー!あのよでこうきゃいするのじぇー!」
睨み罵声を浴びせあっていた二匹はついに行動に出た。
お互いが助走をつけて体当たりを繰り出した。
ぶつかり合った二匹の饅頭は、形を変えて両者ともに吹っ飛んだ。
「ゆぎゃん!いだいぃぃぃぃ!れいむのかわいいおかおがぁぁぁぁ!!」
「ゆびゃい!ゆぎぶぶぶ!まりさのだんでぃーなおかおがぁぁぁぁぁ!」
「ゆぶちゃ!ゆ…が…ぎぎ……おちょーしゃ…ぎぎ…おもいのじぇ……ががが…」
必要以上にオーバーアクションで痛がる二匹、れいむは涙を流し転げ回る。
まりさの方は吹っ飛んだ先に子まりさが居た様で、親まりさに潰され餡子を吐き出していた。
「ゆわぁぁぁぁ!おちびちゃんがぁぁぁぁ!!」
「ゆびびび!いだだだ………ゆぷぷぷ!いいきみだよ!れいむにさからうから、こうなるんだよ!」
れいむは得意そうに笑いながら、我が子を潰して泣いている親まりさを見る。
親まりさは痛みと我が子を潰してしまったショックで泣き続けた。
「そろそろれいむがとどめをさしてあげるよ!」
れいむはそう言うと縁側によじ登り、そこから親まりさ目掛けて勢いよく飛んだ。
「くずなまりさはしね!! 『ボフッ!』 ゆぼっ?!……いだいぃぃぃぃぃぃ!!ゆがぁぁぁぁ!!」
れいむは重すぎたせいで親まりさの手前で地面とちゅっちゅする事になった。
痛みに泣き喚くれいむを、親まりさは憎しみを込めた目で睨みつける。
「おまえのせいで……まりさのだいじな……おちびちゃんがぁぁぁぁぁ!ゆるさないのぜぇぇぇぇ!!」
親まりさはそう叫ぶと、帽子の中から木の枝を取り出し口に咥えた。
そしてそのままれいむ目掛けて突き刺そうとする。
「げすなれいむはゆくりしねぇぇぇぇ… 『パスパスパスパス…』 ゆががががが?!…いだいのぜ?!…
ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ!までぃざのおがおがぁぁぁぁぁ!!」
親まりさがれいむに襲い掛かるよりも早く、老人がガスガンをおやまりさに向けて撃った。
BB弾とはいえども、ゆっくりには効果絶大。
あっという間に蜂の巣にされた親まりさは、痛みに耐えられず餡を撒き散らしながら転げ回った。
「ゆび…ゆび…どぼじで…までぃ…がごんなめに……もっど……ゆっく…しだがっ………」
「おちょーしゃ…ぎぎ…ゆびぇぇぇ……ごぼっ!…ゆげぼっ!…み…みみ…み…み……」
「ゆがぁぁぁ…いだだだ……ゆゆゆ??ゆぷぷぷぷ!おろかなまりさたちが、みじめにしんでるよ!
れいむにさからうから、こうなるんだよ!おぉ、あわれ、あわれ!!」
まりさ親子は苦悶の表情を浮かべて死んでいった。
れいむはそれを見て楽しそうに笑った。
「まさかゆっくりを助ける事になろうとは……それにしても、醜悪な奴だな……まったく…」
老人はそう呟くと家の中に入っていった。
その日の夕方、彼女がれいむを連れて老人の家を訪れた。
「今日はゆっくりちゃんを助けて貰ったみたいで、ありがとうございます。ほら、ゆっくりちゃんもお礼を言って」
「ゆゆ?なにいってるの?どうしてれいむが、おれいをいわないといけないの?ばかなの?しぬの?」
「こらこら、ちゃんとお礼を言わないと駄目でしょ?」
「あぁ、良いんだよ。どうせそんな奴から礼の言葉など聴けると思っておらんしな…」
彼女はそれから何度も老人に頭を下げてお礼を言った。
ゆっくりを助けて、お礼を言われるなんて思ってもいなかった老人。
複雑な気持ちで彼女からお礼のしなを受け取った。
「おや、このプリンはあの有名な洋菓子屋の………まさか、あのれいむにも食べさせているのか?ゆっくりには勿体無いな」
老人はプリンを食べながら、ますますれいむに苛立ちを覚えていた。
その日も彼女はいつもと変わらない生活をしていた。
「ゆっくりちゃん、ごはんですよ」
「はやくもってきてね!れいむは、おなかがすいているんだよ!」
「ふふふ…たくさんたべてね」
「いわれなくても、たくさんたべるよ!むーしゃむーしゃ………それなりー!もっとおいしいものをもってきてね!」
彼女はいつもゆっくりフードに蜂蜜をたっぷり掛けていた。
れいむに言われるままに、彼女はいつも過度に甘い食事やおやつを与えていたのだ。
だが贅沢三昧で舌が肥えてしまったれいむには、もうそんな食事では満足出来なくなっていたのだ。
「ごめんね…今日はそれしか用意してないのよ」
「よういしてないなら、いまからよういしてね!まったくむのうなどれいだね!ゆっくりできないよ!!」
増徴したれいむの暴言に困り顔の彼女だった。
れいむはそんな彼女をふてぶてしい顔で睨みつけていた。
ふと、彼女の視界が歪む。
急な目眩が彼女を襲った。
「あら?……なにかしら?」
彼女は思わずその場に座り込んでしまう。
そんな彼女を見て、れいむは不満を爆発させる。
「ゆがぁぁぁ!なにしてるの?れいむはおなかがすいているんだよ!!さっさとうごけぇぇぇぇ!!」
「ごめんね、ゆっくりちゃん…今……う…………」
彼女はそのまま眠るように、その場に倒れてしまった。
「なにしてるの?!ごはんがまだだよ!かってにねないでね!!」
れいむがいくら喚いても、彼女は目を開けることはなかった。
病院の待合室に老人がれいむの入った透明な箱を抱えて座っていた。
れいむは箱の中で何か騒いでいる様だったが、防音加工の箱のおかげで何も聞こえてこなかった。
れいむが喚いている内容はなんとなく想像が出来るが、老人はそれ所ではなかった。
こんなに緊張しているのは何年ぶりだろうか…
これでは箱の中のれいむと同じではないか…
老人は喚き暴れるれいむをじっと見つめる。
まさかこんな形でこの箱が役に立つとは思ってもいなかった。
何時もより時間の流れが遅く感じる。
彼女との出会いは何時だっただろうか?
長い間空き家だった隣の家に彼女は引っ越してきた。
何かの事故で記憶を失ったらしく、昔の事は良く覚えていないとの事だった。
そんな彼女に身内がいなくなった自分を重ねてみたのか、色々と彼女の事を気にかけるようになった。
始めは言葉数の少なかった彼女も、段々と自分に心を開いてくれたのか、
いつの間にか茶のみ友達になっていた。
「ねえ、こんなものが家の中居たんだけど…」
彼女は少し困ったような顔をしてそれを持ってきた。
得意そうにニヤ着く薄汚れた大きな饅頭。
その顔を見た時、眠らせたはずの鬼が目覚めた気がした。
彼女はゆっくりと言う者を知らなかったのか、忘れていたのか、自分の説明に興味深そうに耳を傾けていた。
そしてこの薄汚いれいむを飼いたいと言ったのだった。
当然自分は猛反対した、殺した方が良いと言ったが彼女は可哀想だと言った。
結局彼女はれいむを飼い始めた。
自分はゆっくりに対しての接し方や、飼育方法を教えた。
飼いゆっくりのマナーや躾の仕方も教えたが、れいむは相変わらずだった。
「くそじじい!なにしてるの?れいむのおうちにはってにはいらないでね!」
「?!うわ!びっくりした…なんだ、ゆっくりか…脅かしやがって…」
「おいあんた!そこで何をしているんだ?」
「あ!いえ…ちょっと通りかかったもので…さよなら!」
「ふん…通りかかった奴がわざわざ人の家の庭に入ってくるものか…それにしても、少しは役に立っているのか?」
「ゆゆ?いつものじじいだよ!あまあまちょうだいね!」
「………やっぱり気に入らん奴だ」
れいむはたまに番犬代わりにもなっている様だったが、それでも老人には完全に許せる存在にはならなかった。
だが、隣人の飼いゆっくりなので特に手を出すような事もなく、れいむは幸せに暮らしていた。
そして今日…
「じじい!じじい!くそじじい!ゆっくりしてないでさっさとでてきてね!れいむはおこってるんだよ!」
「まったく…いったいなんだんだ、やかましいくそゆっくりめ!………何だくそれいむ?!なにかようか?」
「れいむはうんうんじゃないよ!くそじじいはれいむにあやまってね!あと、あまあまもってきてね!」
「何だ?そんな事が言いたくて騒いでいたのか?迷惑な奴だ…」
「ゆっぎぃぃぃぃ!れいむはおなかがすいているんだよ!れいむのどれいのばばあは、ごはんをくれないでねちゃったよ! だかられいむはどれいのじじいに、あまあまをもらうんだよ?りかいできる?」
「何でそんな事せにゃならんのだ?理解できんわ!…なんだ?お前の飼い主は具合が悪いのか?」
「ゆがぁぁぁぁ!あたまのわるいじじいだね!くそばばあはねてるんだよ!れいむがせいさいしてもおきないよ!
だからじじいがかわりに、おいしいあまあまをよういしてね!たくさんでいいよ!」
「ん?何?………なんだと?……………まさか!」
その後倒れている彼女を病院まで運んで現在に至る。
まさかれいむがこんな形で役に立つとは思わなかった。
れいむが居なければ彼女はあのまま………
老人は改めて箱の中のれいむを見る。
れいむは騒ぎ疲れたのか、憎たらしい顔で眠っていた。
こんな時にも可愛げの無いれいむ。
だがそんなれいむを見ると、なんだか不思議と安心できる気がした。
老人は少しだけれいむに感謝した。
目を開けると見慣れない部屋にいた。
独特の匂いがする。
見知らぬ白衣を着た人…
しばらくして部屋に入ってくる年老いた友人。
友人に抱えられている同居人。
「良かった…只の疲労だそうじゃないか…」
友人は嬉しそうに笑う。
「つかえないどれいが、めをさましたよ!はやくあまあまちょうだいね!」
同居人が得意そうにそう言う。
「何でそんなに疲れが溜まっていたのかは知らないが、あまり無理はするんじゃないぞ…」
「どれいのくせに、かってにいなくなったらこまるよ!ゆっくりはんせいしてね!」
「黙れ、この糞饅頭が!お前がストレスを与えていたんじゃないのか?」
「れいむはくそまんじゅうじゃないよ!じじいはゆっくりりかいしてね!」
長い間会っていなかった訳でもないのに、なんだかとっても懐かしい感じがする。
見慣れた筈のやり取りなのに、なんだかとっても安心できる。
「二人ともありがとう」
自然に笑みがこぼれる。
友人は照れくさそうに、頭をかいて目をそらす。
同居人は得意そうにニヤついた。
その後友人から自分がここに連れて来られた経緯を聞いた。
手間のかかるこの憎らしくも愛らしい、ゆっくりと言うものに改めて感謝した。
このめぐり合わせに改めて感謝した。
「れいむ…ありがとう」
自然に口から出た言葉。
れいむはもう一度、憎たらしく笑った。
「ん?今、コイツの事をれいむって言わなかったか?」
「ゆゆ?なにいってるの?れいむはれいむだよ!」
「あら?………」
「何時もは『ゆっくりちゃん』とか言ってなかったか?」
急に頭が痛くなる。
思わず頭を抱えてしまう。
「おい!どうした?!大丈夫か?!今医者を呼んでやるぞ!!」
そう叫ぶ友人の腕を掴む。
自分は大丈夫だと。
友人はそんな私を不安そうに見つめる。
そう、自分は大丈夫。
むしろ気分が良いくらいだ。
今まで忘れていた記憶が頭の中で蘇る。
「ふふふふふ…あははははは!はっはっはっ!」
「おい、どうしたんだ?おかしくなっちまったのか?」
「大丈夫よ、ちょっと可笑しくってね…ふふふふ」
そう、私は可笑しくて笑っていた。
記憶を失っていたとはいえ、まさか…
「こんな糞袋と一緒に生活していたなんて…ふふふ…」
「は?何を言って…」
「ゆゆ?どれいはなにがおかしいの?れいむにつかえることができて、しあわすぎてわらっているの?」
「爺さん、今まで色々世話になったわね…おかげで記憶が戻ったみたい。いえこれもこの糞ゆっくり…れいむのおかげかしら?」
「何言って…え?!それは本当か?思い出したのか?」
それまで不安そうな顔をしていた友人が嬉しそうに笑う。
糞ゆっくりと言われたれいむはなにやら騒いでいるが、どうでも良いだろう。
「今まで本当にありがとう、とっても助かったわ。それと…これからも茶飲みの友達で居てくれるかしら?」
「ふん!何を言って…お前さんはずーッと友人だよ………でも、本当に良かったなぁ」
改めて御礼を言うと顔を赤くする友人。
彼とはこれからも長く付き合っていけそうだ。
そして…
「貴方にももう一度お礼を言わないとね、れいむ、本当にありがとう!そして………」
『これからもよろしく!』
「ゆぎぃぃぃ!このくそばば…………
ゆ?…………
ゆっひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
何かに気がついたのか、れいむは笑う私の顔を見て悲鳴を上げた。
「よう!今日は休みか?」
「ええ、上がっていって」
あれから数ヵ月たった。
彼女は仕事に復帰したが、たまに休日を見計らって老人が遊びに来ていた。
「それにしても、まさかあんたがゆっくり駆除の仕事をしていたとはな…」
「えぇ、それが事故で記憶をなくしてれいむを飼うなんてね…」
「道理でれいむを見て懐かしそうにしていた訳だ…」
「でも、そのおかげで記憶が戻ったんですからね………まあ、ストレスで病院に運ばれたりもしましたが…」
楽しそうに縁側に座り語らう二人。
その二人に寄り添うように透明な箱が置かれている。
箱の中には苦悶の表情を浮かべ、歯をガチガチ鳴らすれいむがいた。
「で、そのれいむはどうだ?更生は出来そうなのか?」
「まあ、元々ドスとかの更生も行ってましたから、時間は掛かると思いますけど、
このれいむが死にまでには何とかなるでしょう」
そう言うと彼女は箱かられいむを取り出す。
れいむは彼女に触れられると、一瞬ビクッと反応するが特に何も言わずただ震えるだけだった。
そんなれいむの頭を彼女は優しく撫でる。
「ゆっひぃぃぃぃ!ごごごごっごめんなさいぃぃぃぃ!いきててごめんなざいぃぃぃ!!
れいむはごみです、れいむはくずですぅぅぅぅぅ!!」
「ほら、れいむ、おじいさんにご挨拶は?」
「ゆびっ?!…すてきなおじいさん、こんにちははははは…ゆっくりしていってくださいいいい!!」
「ほう…」
老人は感心したように声をあげる。
このれいむ、恐怖に怯えてはいるものの、かつての傲慢で高圧的な態度は一切見られなかった。
「たいしたもんだ、あのれいむをここまで怯えさせるとは…」
「でも、まだ怯えているだけですから、更生させる為の再教育はここからですね」
「いやいや、それでも凄いさ、鬼威参と呼ばれる者でも、これだけでいぶを怯えさせる事が出来る者は少ないさ。
一応は人間が…あんたが恐ろしいっ事を理解しているみたいだしな」
「あら、その言い方だと、まるで私が鬼みたいじゃないですか」
「ゆっひぃぃぃぃぃぃ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくり………」
二人は顔を見合わせ笑った。
れいむは彼女の膝の上でゆっくり出来ていない顔で何度も「ゆっくりしていってね!」を連呼していた。
「れいむ、貴方には世話になったからね…こんな形でしか恩返しが出来ないけど、
立派なゆっくりに生まれ変わらせてあげるからね」
「ゆわわわわ…ガチガチガチガチガチガチガチガチガチ………」
彼女はれいむを見つめ、優しく微笑むとそっと呟いた。
ずっとゆっくりしていってね………
完