ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1536 僕は友達が少ない
最終更新:
ankoss
-
view
[餡子ンペ10春]出展作品
―――
「はぁ…」
木々の間から差し込む木漏れ日を受け、1人の人間が背もたれ付きのベンチに座っている。
その左手には、コンビニで買った菓子パンとミルクティーの入った袋。
右手には筆記用具等が入った鞄がある。
ため息をついたその人物以外、周りに人影は見られない。
此処は、○○県にある某大学。
時刻は、正午を少し過ぎたところだ。
キャンパス内のあちこちでは人が数人で集まり、昼食の準備をしている。
あるグループは持ち寄ったお弁当を仲良く摘み合い、
あるグループは馬鹿話をしながら学生食堂に走りだし、
またあるグループは、寝ることで食欲を抑える旨を仲間内で話していた。
各々が楽しそうに午後の休憩時間を過ごす中、この人間だけは違っていた。
一見すると、他の学生とは大した違いを見受けられない。
外見もそうだが、性格も至って普通。ならば何故、1人だけ孤立しているのだろうか。
それは、この人物の第一印象が原因であった。
「趣味は、ゆっくりの虐待と苦悶に呻く表情を見るところです。」
春学期の最初の講義の時間。自己紹介の場で言った一言が、今の自分の立場を作っていた。
敢えて虐待人間としての自分を公に明かすことで、
同士を見つけて充実した大学生活を送ろうとしたのだ。
ゆっくり。
数年程前に突如として地球上にその姿を現した彼らを前に、我々人間は戸惑った。
人の生首のような見た目。不敵に笑みを浮かべる面構え。
新種の生物?生体兵器?機械仕掛け?と、
考えられうる全てのケースを想定して研究されたが、結論は実にシンプルである。
大きさを除いて、何の変哲もない饅頭であると結論付けられた。
その後、種類も複数いるらしく、その種類ごとに饅頭の中身が違うことも明らかとなる。
知能指数もそう高くなく、人語を解する以外は特別な点を見受けられない。
全貌が明らかになったことで、人々はゆっくりを活かせないかを模索した。
結果それは、食料となり、愛玩動物となり、そして有害生物として見なされていった。
人語を解することで共生出来ると一部の人々から思われていたが、結果はこんなものだ。
むしろ、下手に人語を解し会話が出来るだけに、他の有害生物以上に世間からは冷たい目を向けられている。
一部の愛玩用や、社会に貢献している種類を除いて、ではあるが。
以上の事が一般常識として認識されているだけに、この人間にとっては別段特別なことではない。
しかし、結果はご覧の有様。昼食を共にする友人すらいないのが現状だ。
『真剣に思いを伝えれば、相手も真剣に接してくれる』
それが信条だったこの人間にとって、今おかれている状況は決して甘んじていいものではなかった。
しかし、一度固定されてしまった印象は、そう簡単に変わることはない。
その事も理解しているからこそ、この人間は酷く落ち込んでいるのだ。
「はぁ…なんであんな事言っちゃったんだろう…。」
再びため息をつき、首を項垂れながら独り言を呟く。
『口にしていないだけで、絶対同士はいるはずなんだ!』
そう根拠のない理論で確信しても、現状を打破する力には成り得ないのだ。
もはやこの大学で、この人間を理解しつつ普通に接してくれる学生は1人だけだった。
その1人も、お昼時には他の人からの誘いがあるので、共に食事をすることも出来ない。
講義中はまだしも、昼食は確実に独りになってしまうのであった。
「まぁ、アイツみたいに隠してたのが正解だったんだろうな…はぁ…。」
再三のため息と同時に胃が空腹を訴えたので、昼食にしようと袋を漁る。
―――
「ゆっくりしていってね!」
人間がミルクティーを口に含み、喉を潤わせつつ菓子パンの封を開けようとしていると、
一匹のゆっくりが目前に現れた。
黒い髪の毛に赤いリボン、左右に揉み上げがついている。一般的にゆっくりれいむと言われる種だ。
黒い帽子に金髪、一本のおさげがあるゆっくりまりさと言われる種と並んで、
最も多く確認されている固体である。
そのゆっくり――れいむは、人間が無反応だった為、聞こえていないのだと思い、もう一度声を発した。
「ゆっくりしていってね!!」
この言葉、人間における挨拶のようなものだと捉えてもらっていい。
ゆっくりとは、ゆっくりしていることが一番価値があり重要だと考えているので、
この挨拶は、お互いにゆっくりを共有しようという意味である。
尤も、現在このような意味でこの挨拶が使われることは少ない。
ペットショップ等で一流の教育を受けたゆっくりであれば、
現在もこの意味を失うことなく使用しているであろう。
しかし、野良においてはほぼ皆無と言っても間違いではない。
野良のゆっくりにとって、他人はさておき自分さえゆっくりしていればそれでいいのだから。
「……はぁ。」
ベンチに座った人間が、再度の挨拶をしたれいむを見つつ、ため息を漏らす。
おそらく、
『昼食を食べる相手はいないのに、ゆっくりは寄ってくるんだなぁ』
という自嘲気味のため息だったのであろう。
自分の顔を見てため息を疲れたので、れいむは少し不機嫌気味に、再三の挨拶を口にする。
「ゆっくり、していってね!!!」
「…はいはい、ゆっくりゆっくり。」
このまま騒がれて折角の昼食の時間を邪魔されたくないのか、人間はおざなりに挨拶を口にする。
「ゆっ!ゆっくり、ゆっくり!!」
挨拶をされたのがよほど嬉しいのか、れいむはその場でぽよんぽよんと跳ねる。
そして、突然跳ねるのを止めたかと思うと、
「にんげんさん!ゆっくりできたなら、
はやくそのたべものさんとのみものさんをちょうだいね!ぜんぶでいいよ!!」
キリッ、っとした目をして、そう催促するれいむ。
その言葉を聞いた人間は、「あぁ、またか…」と半ば呆れていた。
先程、他の有害生物以上に冷たい目で見られていると言った原因は、『人語を解し、会話する』以外にこれがある。
会話が出来るということで、ゆっくり達は我々人間と自分達ゆっくりは対等なものであると初めに認識する。
続いて、ゆっくりの最大の価値観とも言える【ゆっくりしているかどうか】で、更に細かく序列を決めるのだ。
人間には一週間の概念があり、平日と定められている日は学業や労働に日々を費やしている。
そして休日には思う存分休む、これが大半の人間の一週間、日常であろう。
それに比べてゆっくりはどうだろうか。
一週間という概念も無く、ただただ日々を【ゆっくりすること】に費やす。
食事の為に動く事こそあれど、人間のそれと比べて労働時間は限りなく短い。
そうなれば、ゆっくり視点で【どちらがよりゆっくりしているか】など、火を見るよりも明らかだ。
自分達はゆっくりしている、同じ言葉を話せる人間などよりもだ。
ならば、自分達ゆっくりこそが、ヒエラルキーの最上位なのではないか?いや、そうに違いない。
故に、人間は自分達ゆっくりに仕え、奉仕すべきなのだ。
滑稽にも程がある三段論法により、ゆっくりは人間を奴隷の様な存在だと意識しているのだ。
無論、これもペットショップでの教育で矯正出来るものであり、
大抵の愛玩ゆっくりや善良な野良は、この考えを愚かなものだと理解している。
そして、野良の中でも質の悪いもの――主に『ゲス』と呼ばれる固体が、
この概念を妄信している。
「さっさとちょうだいね!ゆっくりしているれいむをみてゆっくりできたなら、
しゃれいをわたすのはとうっぜんっでしょお?!そんなこともりかいできないの?
ばかなの?しぬの?あんこのうなの?」
当然、その辺の野良らしきゲスゆっくりが、矯正されているはずがない。
そしてこの、『れいむによこすのがあたりまえでしょ!』
と信じて疑わない馬鹿面は―――“でいぶ”だろう。ゲスよりもなお性質が悪い。
こうして、ゆっくりの無能さに思いを馳せている間に、当の人間は言われ放題だ。
(無視するにしろ潰すにしろ、まずは昼食を済ませよう。ながら作業は嫌いだ。)
そう頭で結論付けると、人間はれいむを無視してパンに齧り付いた。
口の中を甘いイチゴジャムの味と、柔らかいパンの感触で満たされる。
ある程度口内の食べ物が消えると、ペットボトルのキャップに口を付ける。
市販品ではあるが、それにしては中々の苦味と甘味が広がり、思わず「ほぅ」とため息を付く。
「ゆがあああああ!!むしするなあああああ!!!」
挨拶以降、完全にいないものとして扱われているれいむが吠える。
それを無視して人間は食べる、たべる、タベル。
人間が一つ目のパンを食べ終わり、次のパンの袋を開けようとしたと同時に、
れいむが閃いたとばかりに嫌らしいニヤケ面をしながら、挑発しだした。
「ゆぷぷぷ!かしこいれいむはわかっちゃったんだよ!!
にんげんはおともだちがいなくてはなしたことがないから、はなしかたがわからないんだね!!!
おお、あわれあわれ!!ゆっくりできないにんげんだから、しかたないね!!げらげらげらげら!!!」
れいむのミスは3つあった。
1つは、人間に対して喧嘩を売ってしまったこと。
1つは、人間が丁度食事を終え、行動の節目であること。
そして最後の1つは―――この人間が前述通り、虐待人間であったことだ。
―――
バキバキッ。
その音は、人間の右手―――握られたペットボトル―――から聞こえた。
握りつぶされたペットボトルは、キャップで密封されているため、すぐに元通りの形に戻る。
自分の笑いが遮られた事と、突如大きな音がしたため、れいむはビクリとして人間を見上げた。
しかし、それも一瞬。すぐにれいむは先程までの小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「ゆぷぷぷ!!にんげんはれいむにかてないから、
のみものさんにせいっさいっするしかできないんだね!!!
かわいくってごめんね!!つよくってもっとごめんね!!!げらげらげらげら!!!」
再び笑い続けるれいむは気付けなかった、その人間が鞄から何かを取り出したのを。
そして人間は、素早く何かを握った左手をれいむに差し出した。
「げらげらげ<サクッ>ら…?……ゆ…ゆ、ぎゃああああああああ!!!!
れいむのすべすべしたおはださんがああぁぁぁぁ!!!!!」
数拍遅れて、れいむが自らの左頬を見つめながら絶叫した。
叫んだかと思えば、痛みに身を捩じらせて、目の前を転がっている。
人間が差し出した左手、その手に握られていたものは万年筆であった。
この人間が大学に入学した際、父から記念に貰った物だ。
まだ二ヶ月と使っていないが、ボールペンとは違う筆跡が残せるので、気に入っている。
「あーあ、やっちゃった…メンテナンス大変なのに…。」
そう愚痴りつつ、れいむから万年筆を引き抜く。
ペン先には、べっとりと汚らわしい餡子が付いている。
「まぁ、仕方ないかな。今回ばかりは我慢できなかったし。
なぁれいむ、君が悪いんだぞ?僕の触れてはいけない話題に触れたから。」
ティッシュを取り出し、ペン先を丁寧に拭き取りながら、人間がれいむに話しかける。
一方のれいむはそれどころではない。
決して負けるはずの無いと思っている人間に、頬を鋭利なもので刺されたのだ。
身体とプライドを立て直すことに夢中で、話を聞いているどころではない。
「おかしいよ、れいむはかんっぺきっでさいっきょうっのはずなのに、
どうしてこんなくずにんげんなんかにまけないといけないの?
まえのかいぬしのときはさからわずにあまあまもってきたのに、
どうしてこのにんげんはれいむにはんこうするの?
れいむはこんなにかわいいのに!!さからうことなんてあっちゃいけないのに!!!」
考えていることを口に出してしまうのは、ゆっくりの――低脳な野良ゆっくりの悲しい性か。
人間はそれを聞き、複雑な笑みを浮かべる。
「なるほどね、君は元飼いゆっくりか。随分甘やかされて育ったんだな。
君が元来のでいぶか、それとも飼い主によるものか、はてさて…。」
でいぶという単語が自分に向けて言われたものだと知り、頬の痛みも忘れて反論する。
「ゆはああぁぁ!?れいむがでいぶなわけないでしょおぉぉぉ!!
そのおめめさんはかざりなのおぉぉ?!」
「どこからどう見てもでいぶだし、あいにく視力は良い方だよ。
さて、と。改めて虐待――いや、駆除させてもらうよ。僕の精神衛生の為にね。」
―――
言うが早いか、再び人間は鞄――の中にある筆箱――を漁り、道具を取り出す。
次に取り出したものは、鋏だった。それを左手で切る様にではなく、刺すように持つ。
右手のペットボトルをベンチに置き、二個目のパンを袋から取り出すと、それも横に置く。
そして袋に手を突っ込み、袋越しにれいむの頭を押さえつけた。
頬から餡子が漏れることも気にせず、抵抗すべく暴れるれいむ。
「ゆがあぁぁぁ!!きたないてでれいむにさわるなあぁぁぁ!!!
きぬさんのようなれいむのかみのけがよごれるでしょおぉぉぉ!!!??」
「はいはい、きたないきたない。」
相槌を打ちつつ、れいむを後ろに転がす。勿論、身体を押さえつけるのを忘れない。
そして、ゆっくりの足とも言える底部――あんよを鋏で刺した。
「ゆっ、ぎゃああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!
でいぶのうづぐじいあんよざんがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
一度で終わらず、何度でも刺す、刺す、刺す。
あんよがその機能を果たせなくなるまで、それは続く。
…数十回刺した結果、うねうねとした気持ち悪い動きも、勢いが無くなった。
穿たれた穴からは、餡子が漏れ出ている。
「ぼうやべろおお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!でいぶにふれるなあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「もう終わったよ、これで逃げられないだろうし。
吠えるだけの元気があるなら、まだまだ大丈夫そうだね。」
怒りを向けられようと、人間は飄々とした態度でそれを流す。
「ぐぞにんげんんんん!!!!ざっざどれいぶのあんよをもどにもどぜえぇぇぇぇ!!!」
「刺した本人が戻すわけ無いでしょ?馬鹿なの?死ぬの?
餡子脳だから仕方ないよね、分かるよー。」
「ゆがああぁぁぁぁぁ!!ぜったいにせいっさいっしてやるうぅぅぅ!!!!」
「制裁されるのは君だよ、分かれよー。」
そして人間は、再び鋏を構え、刺した。
しかし、今度はあんよではなく、左目のすぐ下の部分を。
「せいっさいっだあああああああ!!!
せいっさ…ゆぎえ゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!いだいいいぃぃぃ!!!!」
再び身体に異物を挿入された痛みに、制裁コールから悲鳴へと鳴き声はシフトされる。
ずぶずぶ、という湿った音をさせながら、刃先はどんどん身体に沈み込んでいく。
「ゆぎががががが…!!」
罵倒する為に口を動かすだけでも身体が痛むのだろう、れいむは呻き声を漏らすだけである。
「ふむ…」
十分に鋏を差し込めたと判断したのか、
人間は持ち手部分を下に下げ、れいむに刺さっている刃部分を上に上げる。
すると――
「ゆぎゃあぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!
でいぶのぎらぎらががやぐおべべざんがあぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
ポロッと、てこの原理であっけなくれいむの左目は身体と泣き別れした。
人間は鋏をれいむから抜き取り、ティッシュで丁寧に刃先を拭き取る。
れいむの穿たれた目からは、少しずつ餡子が外部に漏れ出している。
「放っておいてもまだ死なないだろうけど…塞ぎますか。」
抉り出した目玉を指で弄びながら、人間は鼻歌交じりに再び筆箱を漁りだした。
―――
カチッ、カチッ、カチッ、カチッ。
右手でれいむを押さえつけつつ、左手をしきりに動かす。
「いだいいだいいだいい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」
「うん、とりあえずこれでいいだろう。」
「いいわげないだろお゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!
はやぐこのはりをぬけえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」
人間が取り出したもの、それはホッチキスだった。
紙の束を歯の間に挟みこみ、顎(あぎと)を閉じることでそれを綴じる道具。
掌に収まるほどの大きさにもかかわらず、それは見事に仕事を果たしてくれた。
「しかしまぁ、初めて使うのがレジュメでもレポートでもなく、ゆっくりとはね。
今日は道具を酷使しすぎだなぁ、これからは労ってあげよう。」
うんうん、と1人頷きつつ、ホッチキスを筆箱にしまう人間。
「おばえはなにをいっでるんだぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!
そんなれいむにいたいことしたげすじゃなく、れいむをいたわるべきでしょおぉぉぉ!!?
れいむはだれよりもゆっぐりじでるんだあぁぁぁ!!だからやさしくしろおぉぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!」
裂かれた頬、穿たれた左目をホッチキスで止められた身体を揺さぶり、れいむが口汚く人間を罵る。
逃げられない為に、あんよだけはそのまま放置している。
出餡は少しずつ治まっているのか、今ではそれ程漏れ出していない。
「しかしまぁ、これだけ力の違いを見せ付けたのに、まだ懲りないのかな。
いくら馬鹿なゆっくりとはいえ、そろそろ理解してもいいだろうに。」
「ゆがああぁぁぁぁ!!ごろじでやる!!ごろじでやるうぅぅ!!!
れいむをゆっくりさせないげすはせいっさいっしてやるううぅぅぅ!!!」
「おお、怖い怖い。殺されるのは怖いから、先手を打たせてもらうよ。
あぁ、安心してね。もう片方の目は残してあげるから。惨めな姿を見れるようにね。」
そして人間は、右手に被せていた袋を左手に被せ、
右足でれいむの右側の揉み上げ踏みつけて、次の準備をした。
「やべろお゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!
でいぶのもみあげざんがらあじをどげろお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!」
(口にもホッチキスをすればよかったか…)
内心そう思いつつも、それでは悲鳴が聞こえないという事に気付き、考え直した。
袋を被せた左手越しに、左側の揉み上げを掴み――
「<ブチィ>ゆびゃああ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!
でいぶのざらざらじだもみあげざ<ブチッ>ゆいぎゃああ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
一気に上に引っ張って千切る。
そして右足で素早く本体を蹴り飛ばして180度回転させ、
痛みに喘いで動きを止めているうちに、右側の揉み上げも引き千切った。
「ふぅ…」
良い仕事をした、とばかりに爽やかに笑う人間。
「あがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!ぎがあぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
対照的に、ゆっくり特有の「ゆ」という言葉すら吐けずに悶える饅頭。
5分後。散々喚き疲れたのか、ようやく大人しくなったれいむが口を開く。
「ゆぅ……う、がぁ……れいむのもみあげさんが……ぺーろぺーろ……」
舐めれば治るとでも思っているのか、揉み上げを舐め続けるれいむ。
「後はメインの髪の毛とリボンだね。さぁ、大人しくするんだぞ。」
残りの部位を破壊すべく、左手を上にかざす。
足は勿論、今から引き抜かれる髪の上に。
「もうこれいじょうれいむをいじめるなあぁぁぁぁ!!!
ゆっくりさせろおおぉぉぉ!!!こっちくるなああぁぁぁ!!!」
満身創痍でありながら、残りの髪の毛も同じ末路を辿る事を悟ったのか、
嫌らしい目を改めず、威嚇するれいむ。
無論、そのような抵抗が通じるはずなく――
「<バリバリバリッ>―――ッ!?!?!?!
ゆぎゃあああぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!でいぶのざいごのがみのげざんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「ゆっくりのひ~♪さっぱりのひ~♪つるつるのひ~♪」
鼻歌まじりに、一気に髪を毟られたのであった。
―――
チョキチョキチョキ
「うーん、他に何が出来るかな…」
チョキチョキチョキ
「ゆがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!でいぶのおりぼんざんがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
再び取り出した鋏でリボンを切りつつ、人間は考える。
その間も、あんよを傷つけたままとはいえ安心出来ず、足でれいむの頭を踏みつけている。
(身体は殆ど痛めつけた。ただし、さほど餡子は吐いていない。
精神面では、髪の毛やお飾りを台無しにしたことで、もう十分だろうし。
なら……吐かせますか。)
そして、鋏で弄んでいたリボンをベンチに放り投げつつ、行動に移した。
「いやー、れいむ。すまなかったね、色々と酷い事をして。
お詫びに、僕の残りのパンをあげよう。」
そう言って、人間はれいむの身体から足を離す。
「でいぶのおりぼんざあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!………ゆ?
やっとにんげんはれいむのいだいさにきづいたんだね!!ゆっくりしすぎだよ!!!
はやくちょうだいね!!ぐずはきらいだよ!!!」
あげる、という言葉に反応し、即座に出会ったばかりのでいぶの態度に戻った禿饅頭。
それに対して、予想外だとばかりに、人間は僅かに驚く。
お飾りは命の次に大事で、なければゆっくり出来ないとは基本知識だと思っていた。
が、このでいぶはお飾りへの執着よりも、食欲が勝ったようだ。
『れいむはとくべつなゆっくりなんだよ!!だからおかざりがなくてもゆっくりしてるんだよ!!!』
とでも考えているのだろう、などと人間は推測しながら、パンの封を開けた。
それを半分に割り、中の具が零れ落ちそうになるように指で少し外周部を押さえ、れいむの上に持って行く。
「ぐずにんげんはさっさとたべものをよこすんだよ!!
びゆっくりのれいむにたべさせるけんりをもらえてうれしいでしょ?こうえいでしょ?
たべさせたらとくべつにれいむのどれいにしてあげるよ!!!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり。
ほら、早く口を開けなよ。」
それを流しつつ、口を開くように催促する。
「わかってるよ!!どれいのくせにめいれいしないでね!!!」
悪態をつきながらも、「ゆあーん」と言いながら口を開けるれいむ。
そして、次に起こる事を想像してほくそえむ人間。
(たっぷり味わっていってね!)
パンを持っていた手を逆さまにし、
パンそのものを直接落とすのではなく、中身だけをれいむの口の中に落とした。
半固体のような塊が、ゆっくりとれいむの口に――入った。
「むーしゃむーしゃ!…ごっくん!これじゃぜんぜんたりないよ!!
どれいはさっさとつぎをたべさせ………ゆっ!ゆげええ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!」
食べかすを飛び散らかしながら文句を言っていたのも束の間。
突如、身体を震わせて餡子を吐き出すれいむ。
「あっはっはっは!散々痛めつけた人間を信じるなんて、全くもって愚かだね!」
吐き続けるれいむを尻目に、先程のパンに齧り付く人間。
人間が手にしていたパンは、カレーパンであった。
『のうかりんの具沢山カレーパン ~農家の怒りの激辛味~』
と袋にプリントされているように、かなりの辛さを誇るパンだ。
人間が食べても余りの辛さに腹痛をおこすものを、
ゆっくりが食べればどうなるかなど、このれいむの姿を見てもらえれば一目瞭然であろう。
「ゆげえええ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!ゆぐっ、げえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!!」
「こんなに美味しいのに吐き出すなんて、分からないよー。
むーしゃむーしゃ、幸せー!!」
「ゆがあぁ゛ぁ゛ぁ゛!!げえぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!
でいぶのまねをするなあぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!ゆげええぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」
反論しなければ少しは楽だろうに、それでも反応するれいむ。
ふとれいむの後ろを見ると、そこからも餡子が漏れている。
どうやら飲み込んでしまったことで、あにゃるからも激痛と共に餡子を放出しているらしい。
「しかしこれは…見ていて楽しいが、後始末が大変だなぁ。
おーい、自分の餡子を食べて処理…は、この様子だと無理かな。はぁ…」
肩を落としつつ、もう半分のパンを食べる人間。
こうして、嫌いと言いつつ『ながら』作業をしながら、食事を終えた。
―――
「さて、そろそろかな…?」
口直しをするべく、ペットボトルに口を付けつつ、人間はひとりごちた。
目の前には、餡子を体外に放出し過ぎた事によって、若干痙攣しているれいむがいる。
「なぁ、れいむ。十分楽しませてもらったし、僕は今から君を潰すよ。
生きてても仕方ない禿饅頭だけど、何か言い残す事はあるかな?」
足蹴にしつつ、れいむの反応を待つ。
やがて、少しずつではあるが、れいむが口を開き言葉を紡ぐ。
「れい…むを…ゆっぐり……させない…にんげんは………しね……」
その反応に対して、人間はため息をこぼす。
「はぁ……いいかい、でいぶ。君が根っからのでいぶか、飼い主のせいかはこの際どうでもいい。
ただ、僕の前に立って『ゆっくりしていってね!』って言ったままの態度だったら、
僕だってここまで君を追い詰めるつもりは無かったんだ。
真正のでいぶなら、出会い頭に僕を奴隷と言って、すぐに罵倒したはずだ。
だけど、君は『ゆっくりしていってね!』って言えたじゃないか。
『にんげんさん!れいむにすこしでいいからわけてほしいよ!
おれいに、ゆっくりしてもらえるように、なにかするよ!!』
くらい言えれば、僕だって分けてやったさ。善良ならば野良もそこまで嫌いじゃないからね。」
理解できたかは分からないが、れいむは苦しそうに口を開く。
「ゆ……ぐぅ…じゃあ、もし、おねがい…して、たら……たべ、ものさん……くれたの……?」
「あぁ、素直にお願いしていれば、ね。
それに、君は番もいないし子どももいない。ある意味では…」
――僕の仲間だからね。
その一言を飲み込みつつ、この話はこれまでだとばかりに、宣言する。
「でいぶに説教なんて、らしくないなぁ…。
それじゃあお別れだ。さよなら、“れいむ”」
「れい…むは…かんっぺきっで…ただしいんだよ…
やさしく……しない…と……いけない…のに……
れいむは……まちがって……ないのに…………
ゆ…ぐぐううぅぅ……ゆううぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!」
死ぬのが怖いのか、それとも自分の行動を悔いているのか、れいむが泣き出す。
しかし、時既に遅し。この世に、たられば、は存在しない。
そして人間が足を持ち上げた時、小さな声でれいむが呟いた。
「もっと……ゆっく…」
その言葉を聴いた途端、人間は靴の踵でれいむの頭の中心――中枢餡を踏み抜いた。
この人間が長々説教をしてまで聞きたかった言葉。
それは、
「もっとゆっくりしたかった」
である。
自分は特別な存在で、誰も自分に敵うはずは無いという根拠の無い自信。
その挙句、今際の時には「もっとゆっくりしたかった」などという戯言。
害悪でしかない野良が、尚も迷惑を掛けてゆっくりしたかったという
無念の言葉を言うことが、この人間には許せなかったのだ。
「このれいむは間違いなく“でいぶ”だったけど、まだ更生の余地はあったかもしれないね。
9割のゲスが表に出ず、残り1割が表に出てれば生きられただろうに…なんて。
さて、さっさと片付けますか。」
苦笑混じりに呟き、れいむだったモノを袋に詰め始めた。
「…またやってたの?せめて学校では我慢しなよ…」
片付けていた人間の背中に声を掛けたのは、
快活という言葉が良く似合う、幼さが少し残る青年であった。
「なんだよー。1人寂しくご飯食べてたんだし、これくらい楽しんでも良いだろー!
どうせ友達の多い弟には分からないだろうけどさ…」
それに対し、人間は腰に手を当て、心外だとばかりに抗議する。
「はぁ……そういうことばっかりしてるから、今も1人なんだよ――
―――姉さん。」
両手を軽く肩まで上げ、やれやれとばかりに首を振る弟。
「大体おかしいでしょう!弟も虐待好きなのに友達いっぱいいるなんて!
双子なのに!一緒に生まれてきたのに!なんでなのよー!!」
「俺はオープンにしてないからね、そんな事したら今の姉さんみたいになっちゃうよ。
理解したら早く教室に行こうね、次の講義は遅れたらレポート出さないといけないよ?
じゃ、先行ってるね。」
「ちょ、ちょっと!どぼじでまっでぐれないのお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」
結局、姉は予想以上に散らかった餡子の後片付けに時間が掛かり、
後日レポート提出をさせられるのであった。
完
―――
「はぁ…」
木々の間から差し込む木漏れ日を受け、1人の人間が背もたれ付きのベンチに座っている。
その左手には、コンビニで買った菓子パンとミルクティーの入った袋。
右手には筆記用具等が入った鞄がある。
ため息をついたその人物以外、周りに人影は見られない。
此処は、○○県にある某大学。
時刻は、正午を少し過ぎたところだ。
キャンパス内のあちこちでは人が数人で集まり、昼食の準備をしている。
あるグループは持ち寄ったお弁当を仲良く摘み合い、
あるグループは馬鹿話をしながら学生食堂に走りだし、
またあるグループは、寝ることで食欲を抑える旨を仲間内で話していた。
各々が楽しそうに午後の休憩時間を過ごす中、この人間だけは違っていた。
一見すると、他の学生とは大した違いを見受けられない。
外見もそうだが、性格も至って普通。ならば何故、1人だけ孤立しているのだろうか。
それは、この人物の第一印象が原因であった。
「趣味は、ゆっくりの虐待と苦悶に呻く表情を見るところです。」
春学期の最初の講義の時間。自己紹介の場で言った一言が、今の自分の立場を作っていた。
敢えて虐待人間としての自分を公に明かすことで、
同士を見つけて充実した大学生活を送ろうとしたのだ。
ゆっくり。
数年程前に突如として地球上にその姿を現した彼らを前に、我々人間は戸惑った。
人の生首のような見た目。不敵に笑みを浮かべる面構え。
新種の生物?生体兵器?機械仕掛け?と、
考えられうる全てのケースを想定して研究されたが、結論は実にシンプルである。
大きさを除いて、何の変哲もない饅頭であると結論付けられた。
その後、種類も複数いるらしく、その種類ごとに饅頭の中身が違うことも明らかとなる。
知能指数もそう高くなく、人語を解する以外は特別な点を見受けられない。
全貌が明らかになったことで、人々はゆっくりを活かせないかを模索した。
結果それは、食料となり、愛玩動物となり、そして有害生物として見なされていった。
人語を解することで共生出来ると一部の人々から思われていたが、結果はこんなものだ。
むしろ、下手に人語を解し会話が出来るだけに、他の有害生物以上に世間からは冷たい目を向けられている。
一部の愛玩用や、社会に貢献している種類を除いて、ではあるが。
以上の事が一般常識として認識されているだけに、この人間にとっては別段特別なことではない。
しかし、結果はご覧の有様。昼食を共にする友人すらいないのが現状だ。
『真剣に思いを伝えれば、相手も真剣に接してくれる』
それが信条だったこの人間にとって、今おかれている状況は決して甘んじていいものではなかった。
しかし、一度固定されてしまった印象は、そう簡単に変わることはない。
その事も理解しているからこそ、この人間は酷く落ち込んでいるのだ。
「はぁ…なんであんな事言っちゃったんだろう…。」
再びため息をつき、首を項垂れながら独り言を呟く。
『口にしていないだけで、絶対同士はいるはずなんだ!』
そう根拠のない理論で確信しても、現状を打破する力には成り得ないのだ。
もはやこの大学で、この人間を理解しつつ普通に接してくれる学生は1人だけだった。
その1人も、お昼時には他の人からの誘いがあるので、共に食事をすることも出来ない。
講義中はまだしも、昼食は確実に独りになってしまうのであった。
「まぁ、アイツみたいに隠してたのが正解だったんだろうな…はぁ…。」
再三のため息と同時に胃が空腹を訴えたので、昼食にしようと袋を漁る。
―――
「ゆっくりしていってね!」
人間がミルクティーを口に含み、喉を潤わせつつ菓子パンの封を開けようとしていると、
一匹のゆっくりが目前に現れた。
黒い髪の毛に赤いリボン、左右に揉み上げがついている。一般的にゆっくりれいむと言われる種だ。
黒い帽子に金髪、一本のおさげがあるゆっくりまりさと言われる種と並んで、
最も多く確認されている固体である。
そのゆっくり――れいむは、人間が無反応だった為、聞こえていないのだと思い、もう一度声を発した。
「ゆっくりしていってね!!」
この言葉、人間における挨拶のようなものだと捉えてもらっていい。
ゆっくりとは、ゆっくりしていることが一番価値があり重要だと考えているので、
この挨拶は、お互いにゆっくりを共有しようという意味である。
尤も、現在このような意味でこの挨拶が使われることは少ない。
ペットショップ等で一流の教育を受けたゆっくりであれば、
現在もこの意味を失うことなく使用しているであろう。
しかし、野良においてはほぼ皆無と言っても間違いではない。
野良のゆっくりにとって、他人はさておき自分さえゆっくりしていればそれでいいのだから。
「……はぁ。」
ベンチに座った人間が、再度の挨拶をしたれいむを見つつ、ため息を漏らす。
おそらく、
『昼食を食べる相手はいないのに、ゆっくりは寄ってくるんだなぁ』
という自嘲気味のため息だったのであろう。
自分の顔を見てため息を疲れたので、れいむは少し不機嫌気味に、再三の挨拶を口にする。
「ゆっくり、していってね!!!」
「…はいはい、ゆっくりゆっくり。」
このまま騒がれて折角の昼食の時間を邪魔されたくないのか、人間はおざなりに挨拶を口にする。
「ゆっ!ゆっくり、ゆっくり!!」
挨拶をされたのがよほど嬉しいのか、れいむはその場でぽよんぽよんと跳ねる。
そして、突然跳ねるのを止めたかと思うと、
「にんげんさん!ゆっくりできたなら、
はやくそのたべものさんとのみものさんをちょうだいね!ぜんぶでいいよ!!」
キリッ、っとした目をして、そう催促するれいむ。
その言葉を聞いた人間は、「あぁ、またか…」と半ば呆れていた。
先程、他の有害生物以上に冷たい目で見られていると言った原因は、『人語を解し、会話する』以外にこれがある。
会話が出来るということで、ゆっくり達は我々人間と自分達ゆっくりは対等なものであると初めに認識する。
続いて、ゆっくりの最大の価値観とも言える【ゆっくりしているかどうか】で、更に細かく序列を決めるのだ。
人間には一週間の概念があり、平日と定められている日は学業や労働に日々を費やしている。
そして休日には思う存分休む、これが大半の人間の一週間、日常であろう。
それに比べてゆっくりはどうだろうか。
一週間という概念も無く、ただただ日々を【ゆっくりすること】に費やす。
食事の為に動く事こそあれど、人間のそれと比べて労働時間は限りなく短い。
そうなれば、ゆっくり視点で【どちらがよりゆっくりしているか】など、火を見るよりも明らかだ。
自分達はゆっくりしている、同じ言葉を話せる人間などよりもだ。
ならば、自分達ゆっくりこそが、ヒエラルキーの最上位なのではないか?いや、そうに違いない。
故に、人間は自分達ゆっくりに仕え、奉仕すべきなのだ。
滑稽にも程がある三段論法により、ゆっくりは人間を奴隷の様な存在だと意識しているのだ。
無論、これもペットショップでの教育で矯正出来るものであり、
大抵の愛玩ゆっくりや善良な野良は、この考えを愚かなものだと理解している。
そして、野良の中でも質の悪いもの――主に『ゲス』と呼ばれる固体が、
この概念を妄信している。
「さっさとちょうだいね!ゆっくりしているれいむをみてゆっくりできたなら、
しゃれいをわたすのはとうっぜんっでしょお?!そんなこともりかいできないの?
ばかなの?しぬの?あんこのうなの?」
当然、その辺の野良らしきゲスゆっくりが、矯正されているはずがない。
そしてこの、『れいむによこすのがあたりまえでしょ!』
と信じて疑わない馬鹿面は―――“でいぶ”だろう。ゲスよりもなお性質が悪い。
こうして、ゆっくりの無能さに思いを馳せている間に、当の人間は言われ放題だ。
(無視するにしろ潰すにしろ、まずは昼食を済ませよう。ながら作業は嫌いだ。)
そう頭で結論付けると、人間はれいむを無視してパンに齧り付いた。
口の中を甘いイチゴジャムの味と、柔らかいパンの感触で満たされる。
ある程度口内の食べ物が消えると、ペットボトルのキャップに口を付ける。
市販品ではあるが、それにしては中々の苦味と甘味が広がり、思わず「ほぅ」とため息を付く。
「ゆがあああああ!!むしするなあああああ!!!」
挨拶以降、完全にいないものとして扱われているれいむが吠える。
それを無視して人間は食べる、たべる、タベル。
人間が一つ目のパンを食べ終わり、次のパンの袋を開けようとしたと同時に、
れいむが閃いたとばかりに嫌らしいニヤケ面をしながら、挑発しだした。
「ゆぷぷぷ!かしこいれいむはわかっちゃったんだよ!!
にんげんはおともだちがいなくてはなしたことがないから、はなしかたがわからないんだね!!!
おお、あわれあわれ!!ゆっくりできないにんげんだから、しかたないね!!げらげらげらげら!!!」
れいむのミスは3つあった。
1つは、人間に対して喧嘩を売ってしまったこと。
1つは、人間が丁度食事を終え、行動の節目であること。
そして最後の1つは―――この人間が前述通り、虐待人間であったことだ。
―――
バキバキッ。
その音は、人間の右手―――握られたペットボトル―――から聞こえた。
握りつぶされたペットボトルは、キャップで密封されているため、すぐに元通りの形に戻る。
自分の笑いが遮られた事と、突如大きな音がしたため、れいむはビクリとして人間を見上げた。
しかし、それも一瞬。すぐにれいむは先程までの小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「ゆぷぷぷ!!にんげんはれいむにかてないから、
のみものさんにせいっさいっするしかできないんだね!!!
かわいくってごめんね!!つよくってもっとごめんね!!!げらげらげらげら!!!」
再び笑い続けるれいむは気付けなかった、その人間が鞄から何かを取り出したのを。
そして人間は、素早く何かを握った左手をれいむに差し出した。
「げらげらげ<サクッ>ら…?……ゆ…ゆ、ぎゃああああああああ!!!!
れいむのすべすべしたおはださんがああぁぁぁぁ!!!!!」
数拍遅れて、れいむが自らの左頬を見つめながら絶叫した。
叫んだかと思えば、痛みに身を捩じらせて、目の前を転がっている。
人間が差し出した左手、その手に握られていたものは万年筆であった。
この人間が大学に入学した際、父から記念に貰った物だ。
まだ二ヶ月と使っていないが、ボールペンとは違う筆跡が残せるので、気に入っている。
「あーあ、やっちゃった…メンテナンス大変なのに…。」
そう愚痴りつつ、れいむから万年筆を引き抜く。
ペン先には、べっとりと汚らわしい餡子が付いている。
「まぁ、仕方ないかな。今回ばかりは我慢できなかったし。
なぁれいむ、君が悪いんだぞ?僕の触れてはいけない話題に触れたから。」
ティッシュを取り出し、ペン先を丁寧に拭き取りながら、人間がれいむに話しかける。
一方のれいむはそれどころではない。
決して負けるはずの無いと思っている人間に、頬を鋭利なもので刺されたのだ。
身体とプライドを立て直すことに夢中で、話を聞いているどころではない。
「おかしいよ、れいむはかんっぺきっでさいっきょうっのはずなのに、
どうしてこんなくずにんげんなんかにまけないといけないの?
まえのかいぬしのときはさからわずにあまあまもってきたのに、
どうしてこのにんげんはれいむにはんこうするの?
れいむはこんなにかわいいのに!!さからうことなんてあっちゃいけないのに!!!」
考えていることを口に出してしまうのは、ゆっくりの――低脳な野良ゆっくりの悲しい性か。
人間はそれを聞き、複雑な笑みを浮かべる。
「なるほどね、君は元飼いゆっくりか。随分甘やかされて育ったんだな。
君が元来のでいぶか、それとも飼い主によるものか、はてさて…。」
でいぶという単語が自分に向けて言われたものだと知り、頬の痛みも忘れて反論する。
「ゆはああぁぁ!?れいむがでいぶなわけないでしょおぉぉぉ!!
そのおめめさんはかざりなのおぉぉ?!」
「どこからどう見てもでいぶだし、あいにく視力は良い方だよ。
さて、と。改めて虐待――いや、駆除させてもらうよ。僕の精神衛生の為にね。」
―――
言うが早いか、再び人間は鞄――の中にある筆箱――を漁り、道具を取り出す。
次に取り出したものは、鋏だった。それを左手で切る様にではなく、刺すように持つ。
右手のペットボトルをベンチに置き、二個目のパンを袋から取り出すと、それも横に置く。
そして袋に手を突っ込み、袋越しにれいむの頭を押さえつけた。
頬から餡子が漏れることも気にせず、抵抗すべく暴れるれいむ。
「ゆがあぁぁぁ!!きたないてでれいむにさわるなあぁぁぁ!!!
きぬさんのようなれいむのかみのけがよごれるでしょおぉぉぉ!!!??」
「はいはい、きたないきたない。」
相槌を打ちつつ、れいむを後ろに転がす。勿論、身体を押さえつけるのを忘れない。
そして、ゆっくりの足とも言える底部――あんよを鋏で刺した。
「ゆっ、ぎゃああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!
でいぶのうづぐじいあんよざんがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
一度で終わらず、何度でも刺す、刺す、刺す。
あんよがその機能を果たせなくなるまで、それは続く。
…数十回刺した結果、うねうねとした気持ち悪い動きも、勢いが無くなった。
穿たれた穴からは、餡子が漏れ出ている。
「ぼうやべろおお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!でいぶにふれるなあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「もう終わったよ、これで逃げられないだろうし。
吠えるだけの元気があるなら、まだまだ大丈夫そうだね。」
怒りを向けられようと、人間は飄々とした態度でそれを流す。
「ぐぞにんげんんんん!!!!ざっざどれいぶのあんよをもどにもどぜえぇぇぇぇ!!!」
「刺した本人が戻すわけ無いでしょ?馬鹿なの?死ぬの?
餡子脳だから仕方ないよね、分かるよー。」
「ゆがああぁぁぁぁぁ!!ぜったいにせいっさいっしてやるうぅぅぅ!!!!」
「制裁されるのは君だよ、分かれよー。」
そして人間は、再び鋏を構え、刺した。
しかし、今度はあんよではなく、左目のすぐ下の部分を。
「せいっさいっだあああああああ!!!
せいっさ…ゆぎえ゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!いだいいいぃぃぃ!!!!」
再び身体に異物を挿入された痛みに、制裁コールから悲鳴へと鳴き声はシフトされる。
ずぶずぶ、という湿った音をさせながら、刃先はどんどん身体に沈み込んでいく。
「ゆぎががががが…!!」
罵倒する為に口を動かすだけでも身体が痛むのだろう、れいむは呻き声を漏らすだけである。
「ふむ…」
十分に鋏を差し込めたと判断したのか、
人間は持ち手部分を下に下げ、れいむに刺さっている刃部分を上に上げる。
すると――
「ゆぎゃあぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!
でいぶのぎらぎらががやぐおべべざんがあぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
ポロッと、てこの原理であっけなくれいむの左目は身体と泣き別れした。
人間は鋏をれいむから抜き取り、ティッシュで丁寧に刃先を拭き取る。
れいむの穿たれた目からは、少しずつ餡子が外部に漏れ出している。
「放っておいてもまだ死なないだろうけど…塞ぎますか。」
抉り出した目玉を指で弄びながら、人間は鼻歌交じりに再び筆箱を漁りだした。
―――
カチッ、カチッ、カチッ、カチッ。
右手でれいむを押さえつけつつ、左手をしきりに動かす。
「いだいいだいいだいい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」
「うん、とりあえずこれでいいだろう。」
「いいわげないだろお゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!
はやぐこのはりをぬけえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」
人間が取り出したもの、それはホッチキスだった。
紙の束を歯の間に挟みこみ、顎(あぎと)を閉じることでそれを綴じる道具。
掌に収まるほどの大きさにもかかわらず、それは見事に仕事を果たしてくれた。
「しかしまぁ、初めて使うのがレジュメでもレポートでもなく、ゆっくりとはね。
今日は道具を酷使しすぎだなぁ、これからは労ってあげよう。」
うんうん、と1人頷きつつ、ホッチキスを筆箱にしまう人間。
「おばえはなにをいっでるんだぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!
そんなれいむにいたいことしたげすじゃなく、れいむをいたわるべきでしょおぉぉぉ!!?
れいむはだれよりもゆっぐりじでるんだあぁぁぁ!!だからやさしくしろおぉぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!」
裂かれた頬、穿たれた左目をホッチキスで止められた身体を揺さぶり、れいむが口汚く人間を罵る。
逃げられない為に、あんよだけはそのまま放置している。
出餡は少しずつ治まっているのか、今ではそれ程漏れ出していない。
「しかしまぁ、これだけ力の違いを見せ付けたのに、まだ懲りないのかな。
いくら馬鹿なゆっくりとはいえ、そろそろ理解してもいいだろうに。」
「ゆがああぁぁぁぁ!!ごろじでやる!!ごろじでやるうぅぅ!!!
れいむをゆっくりさせないげすはせいっさいっしてやるううぅぅぅ!!!」
「おお、怖い怖い。殺されるのは怖いから、先手を打たせてもらうよ。
あぁ、安心してね。もう片方の目は残してあげるから。惨めな姿を見れるようにね。」
そして人間は、右手に被せていた袋を左手に被せ、
右足でれいむの右側の揉み上げ踏みつけて、次の準備をした。
「やべろお゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!
でいぶのもみあげざんがらあじをどげろお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!」
(口にもホッチキスをすればよかったか…)
内心そう思いつつも、それでは悲鳴が聞こえないという事に気付き、考え直した。
袋を被せた左手越しに、左側の揉み上げを掴み――
「<ブチィ>ゆびゃああ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!
でいぶのざらざらじだもみあげざ<ブチッ>ゆいぎゃああ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
一気に上に引っ張って千切る。
そして右足で素早く本体を蹴り飛ばして180度回転させ、
痛みに喘いで動きを止めているうちに、右側の揉み上げも引き千切った。
「ふぅ…」
良い仕事をした、とばかりに爽やかに笑う人間。
「あがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!ぎがあぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
対照的に、ゆっくり特有の「ゆ」という言葉すら吐けずに悶える饅頭。
5分後。散々喚き疲れたのか、ようやく大人しくなったれいむが口を開く。
「ゆぅ……う、がぁ……れいむのもみあげさんが……ぺーろぺーろ……」
舐めれば治るとでも思っているのか、揉み上げを舐め続けるれいむ。
「後はメインの髪の毛とリボンだね。さぁ、大人しくするんだぞ。」
残りの部位を破壊すべく、左手を上にかざす。
足は勿論、今から引き抜かれる髪の上に。
「もうこれいじょうれいむをいじめるなあぁぁぁぁ!!!
ゆっくりさせろおおぉぉぉ!!!こっちくるなああぁぁぁ!!!」
満身創痍でありながら、残りの髪の毛も同じ末路を辿る事を悟ったのか、
嫌らしい目を改めず、威嚇するれいむ。
無論、そのような抵抗が通じるはずなく――
「<バリバリバリッ>―――ッ!?!?!?!
ゆぎゃあああぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!でいぶのざいごのがみのげざんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「ゆっくりのひ~♪さっぱりのひ~♪つるつるのひ~♪」
鼻歌まじりに、一気に髪を毟られたのであった。
―――
チョキチョキチョキ
「うーん、他に何が出来るかな…」
チョキチョキチョキ
「ゆがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!でいぶのおりぼんざんがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
再び取り出した鋏でリボンを切りつつ、人間は考える。
その間も、あんよを傷つけたままとはいえ安心出来ず、足でれいむの頭を踏みつけている。
(身体は殆ど痛めつけた。ただし、さほど餡子は吐いていない。
精神面では、髪の毛やお飾りを台無しにしたことで、もう十分だろうし。
なら……吐かせますか。)
そして、鋏で弄んでいたリボンをベンチに放り投げつつ、行動に移した。
「いやー、れいむ。すまなかったね、色々と酷い事をして。
お詫びに、僕の残りのパンをあげよう。」
そう言って、人間はれいむの身体から足を離す。
「でいぶのおりぼんざあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!………ゆ?
やっとにんげんはれいむのいだいさにきづいたんだね!!ゆっくりしすぎだよ!!!
はやくちょうだいね!!ぐずはきらいだよ!!!」
あげる、という言葉に反応し、即座に出会ったばかりのでいぶの態度に戻った禿饅頭。
それに対して、予想外だとばかりに、人間は僅かに驚く。
お飾りは命の次に大事で、なければゆっくり出来ないとは基本知識だと思っていた。
が、このでいぶはお飾りへの執着よりも、食欲が勝ったようだ。
『れいむはとくべつなゆっくりなんだよ!!だからおかざりがなくてもゆっくりしてるんだよ!!!』
とでも考えているのだろう、などと人間は推測しながら、パンの封を開けた。
それを半分に割り、中の具が零れ落ちそうになるように指で少し外周部を押さえ、れいむの上に持って行く。
「ぐずにんげんはさっさとたべものをよこすんだよ!!
びゆっくりのれいむにたべさせるけんりをもらえてうれしいでしょ?こうえいでしょ?
たべさせたらとくべつにれいむのどれいにしてあげるよ!!!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり。
ほら、早く口を開けなよ。」
それを流しつつ、口を開くように催促する。
「わかってるよ!!どれいのくせにめいれいしないでね!!!」
悪態をつきながらも、「ゆあーん」と言いながら口を開けるれいむ。
そして、次に起こる事を想像してほくそえむ人間。
(たっぷり味わっていってね!)
パンを持っていた手を逆さまにし、
パンそのものを直接落とすのではなく、中身だけをれいむの口の中に落とした。
半固体のような塊が、ゆっくりとれいむの口に――入った。
「むーしゃむーしゃ!…ごっくん!これじゃぜんぜんたりないよ!!
どれいはさっさとつぎをたべさせ………ゆっ!ゆげええ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!」
食べかすを飛び散らかしながら文句を言っていたのも束の間。
突如、身体を震わせて餡子を吐き出すれいむ。
「あっはっはっは!散々痛めつけた人間を信じるなんて、全くもって愚かだね!」
吐き続けるれいむを尻目に、先程のパンに齧り付く人間。
人間が手にしていたパンは、カレーパンであった。
『のうかりんの具沢山カレーパン ~農家の怒りの激辛味~』
と袋にプリントされているように、かなりの辛さを誇るパンだ。
人間が食べても余りの辛さに腹痛をおこすものを、
ゆっくりが食べればどうなるかなど、このれいむの姿を見てもらえれば一目瞭然であろう。
「ゆげえええ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!ゆぐっ、げえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!!」
「こんなに美味しいのに吐き出すなんて、分からないよー。
むーしゃむーしゃ、幸せー!!」
「ゆがあぁ゛ぁ゛ぁ゛!!げえぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!
でいぶのまねをするなあぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!ゆげええぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」
反論しなければ少しは楽だろうに、それでも反応するれいむ。
ふとれいむの後ろを見ると、そこからも餡子が漏れている。
どうやら飲み込んでしまったことで、あにゃるからも激痛と共に餡子を放出しているらしい。
「しかしこれは…見ていて楽しいが、後始末が大変だなぁ。
おーい、自分の餡子を食べて処理…は、この様子だと無理かな。はぁ…」
肩を落としつつ、もう半分のパンを食べる人間。
こうして、嫌いと言いつつ『ながら』作業をしながら、食事を終えた。
―――
「さて、そろそろかな…?」
口直しをするべく、ペットボトルに口を付けつつ、人間はひとりごちた。
目の前には、餡子を体外に放出し過ぎた事によって、若干痙攣しているれいむがいる。
「なぁ、れいむ。十分楽しませてもらったし、僕は今から君を潰すよ。
生きてても仕方ない禿饅頭だけど、何か言い残す事はあるかな?」
足蹴にしつつ、れいむの反応を待つ。
やがて、少しずつではあるが、れいむが口を開き言葉を紡ぐ。
「れい…むを…ゆっぐり……させない…にんげんは………しね……」
その反応に対して、人間はため息をこぼす。
「はぁ……いいかい、でいぶ。君が根っからのでいぶか、飼い主のせいかはこの際どうでもいい。
ただ、僕の前に立って『ゆっくりしていってね!』って言ったままの態度だったら、
僕だってここまで君を追い詰めるつもりは無かったんだ。
真正のでいぶなら、出会い頭に僕を奴隷と言って、すぐに罵倒したはずだ。
だけど、君は『ゆっくりしていってね!』って言えたじゃないか。
『にんげんさん!れいむにすこしでいいからわけてほしいよ!
おれいに、ゆっくりしてもらえるように、なにかするよ!!』
くらい言えれば、僕だって分けてやったさ。善良ならば野良もそこまで嫌いじゃないからね。」
理解できたかは分からないが、れいむは苦しそうに口を開く。
「ゆ……ぐぅ…じゃあ、もし、おねがい…して、たら……たべ、ものさん……くれたの……?」
「あぁ、素直にお願いしていれば、ね。
それに、君は番もいないし子どももいない。ある意味では…」
――僕の仲間だからね。
その一言を飲み込みつつ、この話はこれまでだとばかりに、宣言する。
「でいぶに説教なんて、らしくないなぁ…。
それじゃあお別れだ。さよなら、“れいむ”」
「れい…むは…かんっぺきっで…ただしいんだよ…
やさしく……しない…と……いけない…のに……
れいむは……まちがって……ないのに…………
ゆ…ぐぐううぅぅ……ゆううぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!」
死ぬのが怖いのか、それとも自分の行動を悔いているのか、れいむが泣き出す。
しかし、時既に遅し。この世に、たられば、は存在しない。
そして人間が足を持ち上げた時、小さな声でれいむが呟いた。
「もっと……ゆっく…」
その言葉を聴いた途端、人間は靴の踵でれいむの頭の中心――中枢餡を踏み抜いた。
この人間が長々説教をしてまで聞きたかった言葉。
それは、
「もっとゆっくりしたかった」
である。
自分は特別な存在で、誰も自分に敵うはずは無いという根拠の無い自信。
その挙句、今際の時には「もっとゆっくりしたかった」などという戯言。
害悪でしかない野良が、尚も迷惑を掛けてゆっくりしたかったという
無念の言葉を言うことが、この人間には許せなかったのだ。
「このれいむは間違いなく“でいぶ”だったけど、まだ更生の余地はあったかもしれないね。
9割のゲスが表に出ず、残り1割が表に出てれば生きられただろうに…なんて。
さて、さっさと片付けますか。」
苦笑混じりに呟き、れいむだったモノを袋に詰め始めた。
「…またやってたの?せめて学校では我慢しなよ…」
片付けていた人間の背中に声を掛けたのは、
快活という言葉が良く似合う、幼さが少し残る青年であった。
「なんだよー。1人寂しくご飯食べてたんだし、これくらい楽しんでも良いだろー!
どうせ友達の多い弟には分からないだろうけどさ…」
それに対し、人間は腰に手を当て、心外だとばかりに抗議する。
「はぁ……そういうことばっかりしてるから、今も1人なんだよ――
―――姉さん。」
両手を軽く肩まで上げ、やれやれとばかりに首を振る弟。
「大体おかしいでしょう!弟も虐待好きなのに友達いっぱいいるなんて!
双子なのに!一緒に生まれてきたのに!なんでなのよー!!」
「俺はオープンにしてないからね、そんな事したら今の姉さんみたいになっちゃうよ。
理解したら早く教室に行こうね、次の講義は遅れたらレポート出さないといけないよ?
じゃ、先行ってるね。」
「ちょ、ちょっと!どぼじでまっでぐれないのお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」
結局、姉は予想以上に散らかった餡子の後片付けに時間が掛かり、
後日レポート提出をさせられるのであった。
完