ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0580 やさしいまち
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ankoss
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※虐待描写ほとんどなし
※愛で率多め
街の広場には楽しげな歓声が沸いていた。
「ゆっ、ゆっ、ゆ~っ!」
ゆっくりれいむの歌うおうたは、その辺で物乞いをしてる野良ゆっくりが歌っているそ
れとは全く別物だ。少し聞いただけで、それがちゃんと訓練を受けたものだということが
わかる。
そのおうたに合わせて、一匹のゆっくりまりさがリズムを取っている。
帽子のツバが上下に揺れる。
そして、そこには、一匹のゆっくりちぇん、まだ小さな子ちぇんが乗っていた。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ」
れいむのおうたが、短い間隔になってくる。
まりさもそれに合わせて小刻みに帽子を揺らす。
ゆっくりらしからぬ緊張感に、それを見物していた人間たちも声を出さずに静かにそれ
を見守っていた。
「ゆっ!」
まりさが、大きく帽子を跳ね上げた。
「ゆっっっ!」
子ちぇんが帽子のツバに跳ね上げられて飛ぶ。
空中でくるくると回転し、ふかふかの柔らかい毛布の上に着地する。
ころころころと転がって最後にぴょんと一飛び。
二本の尻尾で器用に帽子を挟んで、それを顔の前に掲げてゆっくりと顔を下に向けて一
礼する。
見物人たちから歓声が上がった。
「すごい」
「かわいい」
「ゆっくりしてる」
最後のは、人間が連れてきた飼いゆっくりのものだ。
その広場では、他にも色々なゆっくりが芸を見せて歓声を浴びていた。
「うー、おいしいおいしいやきそばだどぉ」
屋台も出ていたが、なんとそこでやきそばを焼いているのは胴付きのれみりゃだった。
具の野菜を切っているのは口にナイフをくわえたゆっくりみょんたちだ。
ありすがプラスチックの容器にやきそばを入れて、れいむがそれに紅しょうがを乗せて
お客に渡す。その度にみんなで
「ゆっくり食べてね!」
と言えば、お客の人間さんはとてもゆっくりした顔で笑う。
中には、小さな包みを代金とは別に渡す客もいる。
この小さな包みは、中に甘いお菓子が入っていて、ここに入場する時に買うことができ
る。持ち込んだ食べ物を中のゆっくりに与えることは禁じられていて、芸を見た時などの
ゆっくりできた時に、ゆっくりに渡すのはこの小さな包みだ。いわばチップの代わりのよ
うなものであった。
れみりゃのやきそば屋に限らず、広場にはゆっくりふらんなどの捕食種もいるが、他の
ゆっくりたちをいじめたり食べたりすることはなく、みんな仲良くやっている。
人間さんたちは、それを見てとても微笑ましく思いゆっくりできる。
他の動物でも、例えば本来敵同士に思われている猫と鼠が仲良くしていたりするとわざ
わざテレビ番組に取り上げられたりする。それと似たようなものであった。
「あと五分で、広場中央の池で、まりさの水上レースが始まります」
というアナウンスが流れると、そこにいた客たちの半分ほどが池の周りに集まった。
「ゆっゆっ!」
「ゆゆーん!」
「まりさがいちばんだぜ!」
帽子を水に浮かべたまりさたちが一列に並んで水に浮いている。
司会者のお兄さんが、端から一匹ずつこれまでの戦績や、これがデビュー戦の場合はデ
ビュー前の訓練の時の逸話などを紹介する。
「よーい……スタート!」
号砲を合図に、まりさたちは口にくわえたオールで水を漕ぐ。
「ゆゆーん! やったのぜー!」
トップを取ったのは、これまでも圧倒的な勝率で勝っているまりさだった。
「ゆぅ~ん、またまりさが勝ったよ! おじいさん!」
「おうおう、あのまりさは強いのぅ」
観客の中に、ゆっくりれいむを抱いた老人がいた。
「ゆぅぅぅ、まりさかっこいいよぉ~」
ぽわーんとしたゆっくり顔でまりさを見つめるれいむ。
「……」
それを見ていた老人が何かを決意したかのように力強く頷いた。
「ゆっ、あ、あのれいむまた来てるんだぜ」
まりさの方でもれいむに気付いていた。あのれいむとおじいさんはよく来るのだ。
「……ゆゆぅ、まりさに惚れてるのぜ。や、や、や、やめとくんだぜ、やけどするのぜ」
とか言いつつ、かなり満更ではなさそうなまりさであった。
言うのが遅れたがもう大方の読者諸兄にはお察しがついていよう。
ここは、とある街である。
そしてこの街には、人気のゆっくり園があった。
芸を見せたり屋台をやっているゆっくりたちは当然、全員が金バッチ持ちである。
華やかで人間さんたちから喝采を浴びる表舞台の裏には、いつかその表舞台に立ちたい
と願うゆっくりたちの餡のにじむ訓練の日々があった。
広場にいるゆっくりたちはエリート中のエリートであった。
そもそも、この園のゆっくりになるための試験の受験資格が金バッチなのである。金持
ちが大前提になっている世界なのだ。
それゆえに、合格すればもはやゆっくりしたゆん生は約束されたようなものだ。
後進に道を譲って引退する際も、ペットとしての買い手がすぐさまつく。買いたいとい
う人間が多い売り手市場なのだから、その人間の調査吟味も詳細に行われ隠れ虐待趣味者
などに引き取られることもない。
そして、ひとつの花道がいわば寿退社である。
「ゆゆっ、れ、れいむ!」
まりさは、係員に連れてこられた部屋で驚きの声を上げた。
あの、飼い主のおじいさんとよくまりさの水上レースを見に来ていたれいむがそこにい
たのだ。
「ゆ、ゆゆぅ、ゆ、ゆっくりはじめまして! れいむは、れいむだよ!」
「ゆっ! ま、まりさはまりさだぜ!」
はじめはぎこちなかった二匹だが、れいむがいつも水上を駆けるまりさの勇姿に感動し
ていたことを告げ、まりさもよく見に来ているれいむのことを意識していたことを打ち明
けると、すぐに打ち解けることができた。
それを、係員とれいむの飼い主のおじいさんが嬉しそうに眺めている。
当のまりさとれいむには知らされていなかったが、これはお見合いであった。
れいむがまりさのことを好きになっていることを悟った飼い主が、園に申し出て一席を
設けたのだ。
むろん、話は二匹がそのつもりになってからだが、もしも話がそのように運んだ場合は、
飼い主が金を出して園からまりさを買い取ることになる。
水上レースの花形まりさなので決して安い金額ではないが、飼い主は裕福だったのでそ
れを承諾した。
やがて、何度も会っているうちに、いよいよ打ち解ける二匹。
ある日の帰り道、おじいさんがれいむに言った。
「れいむや、あのまりさのこと好きかい?」
同じ頃、まりさは係員に言われていた。
「まりさ、あのれいむのこと好きかい?」
答えは、同じだった。
「「ゆっ! す、す、好きだよ、ゆっくり大好きだよ!」」
話はとんとん拍子に進み、まりさは引き取られ、二匹は晴れて結婚することになった。
「ゆっくりしあわせーになれよー!」
まりさと親しかった係員が祝福する。
「ゆっくりおめでとう!」
「ゆっくりしていってね!」
「まりさ、ときどき遊びに来てね!」
「うー、やきそばごちそうするどぉー」
仲間たちも祝福する。
「わー、結婚式だってー」
「へえ、こりゃいい日に来たなあ」
「れいむもまりさもかわいいぃぃぃ」
「カメラカメラ、カメラどこやったかな」
居合わせた客たちも、このめでたいイベントに大喜びだ。
祝福、また祝福。
とってもゆっくりと見送られたまりさは、この後れいむと子供を産んで家族を作り、ゆ
っくりとしたゆん生を送った。
だからこの街は、ゆっくりにやさしいまちと呼ばれていた。
「ゆぅ、ゆぅ、ゆぅ、つ、ついたよー!」
「ゆっくりつかれたよ!」
「ゆわぁぁぁ、ここがゆっくりできるまちなんだね!」
「そうだよ、ここはね、人間さんたちにゆっくりにやさしいまち、って呼ばれてるんだよ」
「それはゆっくりできそうだね!」
「ゆっきゅちできりゅね!」
「ゆわぁい、ゆっきゅち! ゆっきゅち!」
「ゆっくりしないでいそいでよかったね!」
それは、れいむやらまりさやらありすらの集団であった。
子ゆっくりや親の頭に乗っている赤ゆっくりまで含めると全部で三十匹はいる、ちょっ
とした群れだ。
隣町に住んでいた野良ゆっくりたちである。とある公園で必死に生きていたが、とうと
う人間が公園のゆっくり駆除を決定。
愛護派というほどではないが、それほどゆっくりたちを嫌ってはいなかった近所の人間
に警告を受けて、ゆっくりたちは泣く泣く公園を出ることにした。
途方にくれたゆっくりたちを哀れに思ったのか、何人かの人間が教えてくれた。
ゆっくりにやさしいまち
の存在を。
そこに行けばゆっくりできる。
道々、人間に話を聞くと、その確信はさらに強まった。
「ああ、あそこはゆっくりできるぞ」
「ぜったいに行くべきだ。あそこはゆっくりにやさしいから」
「いじめられてるゆっくりなんか一匹もいないよ」
とてもゆっくりできそうな話ばかりだった。
そして今、野良ゆっくりたちはようやくゆっくりできる場所へ到着した。
近付いて行くと、門が見えた。
ゆっくり園 ゆっくりしていってね!
と、アーチ状の門に取り付けられた看板の文字を見て、ゆっくりたちはゆっくりした。
いかにもゆっくりできそうなところだ。
「ゆゆ! なんか、とってもゆっくりした声が聞こえるよ!」
「ゆゆ?」
「しーっ、しずかにしてね! ほら……」
ゆっくりたちが口を噤む。
すると、微かに門の向こう側の声が聞こえてきた。
「ゆっゆっゆ~、ゆゆっ、ゆゆ~っ」
「ママ、あのれいむ、おうたがうまいね」
「そうねえ、すごいわねえ」
「ゆっゆっゆっ! わかるよー!」
「うわー、あのちぇん、すごいなー」
「かっわいいよー、ちぇん飼いたいぃぃぃ」
「うーん、マジで飼っちゃおうか、ちぇん」
「ゆっきゅちちていっちぇね!」
「あの赤ちゃんれいむとまりさ可愛いねえ」
「あーもー、かわいいー、あたしあまあまあげてくるー」
もう、とてつもなくゆっくりできそうな声ばかりである。
「「「ゆわわわわわああああ!」」」
「「「ゆ、ゆっくりできそうだねえええええ!」」」
「「「ゆっきゅちぃぃぃぃぃ!」」」
「「「ゆっくりしないではやく中にはいろうね!」」」
明日をも知れぬ境遇で生きてきた野良ゆっくりたちに、興奮するなというのが無理な話
だ。
「お、野良か」
いざゆっくりできる楽園へ、と野良ゆっくりが跳ねていくと、門のところにいた係員が
それに気付いて外に出てきて、ゆっくりたちを阻んだ。
ゆっくりにやさしい、という話が広まると、この場所こそが真のゆっくりプレイスと思
い込んだ野良ゆっくりがよくやってくるようになったので、係員には見慣れた光景であっ
た。どうも野良ゆっくりを追っ払うためにここのことを天国のようにゆっくりに吹き込む
人間もいるようで困ったものである。
「はーい、ゆっくりゆっくり」
「ゆゆ? おにいさん、邪魔しないでね」
「そうよ、ありすたち、とってもとかいはなここに入りたいのよ」
「ここはとってもゆっくりできるんだよ、だから中に入れてね」
「ゆっきゅちちたいよぉぉぉ、いれちぇよ!」
「うん、でも君たち、ちょっと中に入れるには汚いねえ」
「「「ゆぅ……」」」
ゆっくりたちがしょげ返る。
「だから、まず入る前に体を洗ってぴかぴかにしないとね」
係員はそう言って、もう一人の別の係員に、
「ちょっとここ頼むわ。おれはこいつらを連れてくから」
「おう」
「さあ、ほら、こっちおいでー」
「ゆゆ!?」
「ほら、こっち、洗って上げるから、おいで」
「ゆゆゆゆ!?」
「あらってきれーきれーになったら、中に入っていいの?」
「うん」
「ゆわああああい!」
「ごーしごーししてきれーきれーになろうね!」
「ゆっくりおねがいするわね、とかいはなお兄さん!」
「ゆわーい、ごーちごーちできれーきれーしようにぇ!」
「そうちたらゆっきゅちできりゅんだね!」
一時はどうなることかと思ったゆっくりたちは大喜びだ。
ゆっくりたちは、裏手にあった建物の一室に招じ入れられた。
「野良だよ、頼むわ」
「はい」
「えっと、はじめてだっけか」
「ええ……」
「そんな深く考えるな。苦しむことはないんだ」
「……はい、やります。やりますよ」
「ああ、それじゃ頼むぞ」
ここまでゆっくりたちを連れてきた係員は、そこにいた別の係員とそんな会話を交わす
と出て行った。
「……はーい、ほら、そこのお湯で体を洗ってね」
その係員は、一度深呼吸をしてから言った。
「ゆわわ、あったかいおみずしゃんがありゅよ!」
「これはおゆだよ! ゆっくりできるよ!」
「ゆぅぅぅ、これがうわさに聞いてたおふろなんだね!」
「おふろに入るのなんてうまれてはじめてだよ!」
ゆっくりたちは床が窪んでいる部分に溜まったお湯に、ざんぶとつかってとてもゆっく
りした。
長湯は死に繋がるので、少しつかると外に出て、体をすーりすーりさせる。
もう一度お湯につかると、ずっと野良暮らしをしていたため、お湯が真っ黒になった。
「ゆわあ、まっくろだにぇ!」
「おゆさんがこんなに黒くなったってことは、これでれいむたちはきれーきれーになった
んだよ!」
「さっぱりしたんだぜ! おふろはゆっくりできるんだぜ」
「きれーになっちゃら、ゆっきゅちしたところに入れるにぇ!」
「ゆわーい、ゆっきゅちちようにぇ!」
「ゆぅ……でも、なんかゆっくりねむたくなってきたよ」
「ゆぅ……そういわれると、ありすもなんだか……」
「ま、まりさも、ね、ね、ねむいんだぜ……」
「「「ゆぴぃ~」」」
「ゆゆぅ、赤ちゃんたち、もうおねむしてるよ~」
係員が、眠たそうにしているゆっくりたちに声をかけた。
「ほら、ここで、少しおひるねするといい。ここに来るのに疲れたんだろう」
係員が指し示す床は、そこだけふわふわの毛布になっていてゆっくりできそうだった。
「ゆぅぅ、そうだね、おひるねしようか」
「ゆぅ、それが、いいんだぜ、ねむいんだぜ」
「ゆぅぅぅぅ」
「ゆぴぃ~」
「赤ちゃんをおくちでくわえてはこぼうね……」
やがて、全てのゆっくりがふわふわの床の上に乗り、眠ってしまった。
「……よし」
それを確認すると係員は、深呼吸をして、壁についていたスイッチを押した。
ういいいいん
と機械の作動音がして、ゆっくりたちが幸せに眠る床が真ん中から割れた。
「「「ゆぴぃ~」」」
ゆっくりたちは床が割れて開いてできた穴から落ちていくが、それでも目を覚まさない。
先ほど体を洗ったお湯にゆっくりに効果がある睡眠剤が入っていて、それを体全体で吸
収し、湯気を吸い込んだゆっくりたちは決して目覚めることはない。
ゆっくりと惰眠を貪りながら、ゆっくりとした夢を見ながら、ゆっくりとした寝顔のま
ま落ちていった。
最後の最後で、希望に満ちたゆっくりを手に入れた野良ゆっくりたちは、みんな幸せそ
うだった。
「……ふう」
係員は、階段を下りていく。
「……」
無言で、それを見つめた。
山盛りの餡子とカスタードが混ざったもの。
山盛りの皮。
リボン、帽子、カチューシャ。
これに、慣れないといけない。
せめて最後までゆっくりしていたのだからと思うしかなかった。
普通の処理場やら加工所ならば、問答無用で泣き叫ぶゆっくりをミキサーにかけている
だろう。
しかしここでは、せめてゆっくりと死なせてやるためというだけの理由で、ゆっくり用
の睡眠剤のコストを許容していた。その結果できたものを利用するといっても、正直、採
算的に言うと、やや赤字である。
だからこの街は、ゆっくりにやさしいまちと呼ばれていた
終わり
油断すると愛で派の本性が出ちまうな。
過去作品
ふたば系ゆっくりいじめ 340 ゆっくりほいくえん
ふたば系ゆっくりいじめ 396 つむりとおねえさん
ふたば系ゆっくりいじめ 444 ドスハンター
※愛で率多め
街の広場には楽しげな歓声が沸いていた。
「ゆっ、ゆっ、ゆ~っ!」
ゆっくりれいむの歌うおうたは、その辺で物乞いをしてる野良ゆっくりが歌っているそ
れとは全く別物だ。少し聞いただけで、それがちゃんと訓練を受けたものだということが
わかる。
そのおうたに合わせて、一匹のゆっくりまりさがリズムを取っている。
帽子のツバが上下に揺れる。
そして、そこには、一匹のゆっくりちぇん、まだ小さな子ちぇんが乗っていた。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ」
れいむのおうたが、短い間隔になってくる。
まりさもそれに合わせて小刻みに帽子を揺らす。
ゆっくりらしからぬ緊張感に、それを見物していた人間たちも声を出さずに静かにそれ
を見守っていた。
「ゆっ!」
まりさが、大きく帽子を跳ね上げた。
「ゆっっっ!」
子ちぇんが帽子のツバに跳ね上げられて飛ぶ。
空中でくるくると回転し、ふかふかの柔らかい毛布の上に着地する。
ころころころと転がって最後にぴょんと一飛び。
二本の尻尾で器用に帽子を挟んで、それを顔の前に掲げてゆっくりと顔を下に向けて一
礼する。
見物人たちから歓声が上がった。
「すごい」
「かわいい」
「ゆっくりしてる」
最後のは、人間が連れてきた飼いゆっくりのものだ。
その広場では、他にも色々なゆっくりが芸を見せて歓声を浴びていた。
「うー、おいしいおいしいやきそばだどぉ」
屋台も出ていたが、なんとそこでやきそばを焼いているのは胴付きのれみりゃだった。
具の野菜を切っているのは口にナイフをくわえたゆっくりみょんたちだ。
ありすがプラスチックの容器にやきそばを入れて、れいむがそれに紅しょうがを乗せて
お客に渡す。その度にみんなで
「ゆっくり食べてね!」
と言えば、お客の人間さんはとてもゆっくりした顔で笑う。
中には、小さな包みを代金とは別に渡す客もいる。
この小さな包みは、中に甘いお菓子が入っていて、ここに入場する時に買うことができ
る。持ち込んだ食べ物を中のゆっくりに与えることは禁じられていて、芸を見た時などの
ゆっくりできた時に、ゆっくりに渡すのはこの小さな包みだ。いわばチップの代わりのよ
うなものであった。
れみりゃのやきそば屋に限らず、広場にはゆっくりふらんなどの捕食種もいるが、他の
ゆっくりたちをいじめたり食べたりすることはなく、みんな仲良くやっている。
人間さんたちは、それを見てとても微笑ましく思いゆっくりできる。
他の動物でも、例えば本来敵同士に思われている猫と鼠が仲良くしていたりするとわざ
わざテレビ番組に取り上げられたりする。それと似たようなものであった。
「あと五分で、広場中央の池で、まりさの水上レースが始まります」
というアナウンスが流れると、そこにいた客たちの半分ほどが池の周りに集まった。
「ゆっゆっ!」
「ゆゆーん!」
「まりさがいちばんだぜ!」
帽子を水に浮かべたまりさたちが一列に並んで水に浮いている。
司会者のお兄さんが、端から一匹ずつこれまでの戦績や、これがデビュー戦の場合はデ
ビュー前の訓練の時の逸話などを紹介する。
「よーい……スタート!」
号砲を合図に、まりさたちは口にくわえたオールで水を漕ぐ。
「ゆゆーん! やったのぜー!」
トップを取ったのは、これまでも圧倒的な勝率で勝っているまりさだった。
「ゆぅ~ん、またまりさが勝ったよ! おじいさん!」
「おうおう、あのまりさは強いのぅ」
観客の中に、ゆっくりれいむを抱いた老人がいた。
「ゆぅぅぅ、まりさかっこいいよぉ~」
ぽわーんとしたゆっくり顔でまりさを見つめるれいむ。
「……」
それを見ていた老人が何かを決意したかのように力強く頷いた。
「ゆっ、あ、あのれいむまた来てるんだぜ」
まりさの方でもれいむに気付いていた。あのれいむとおじいさんはよく来るのだ。
「……ゆゆぅ、まりさに惚れてるのぜ。や、や、や、やめとくんだぜ、やけどするのぜ」
とか言いつつ、かなり満更ではなさそうなまりさであった。
言うのが遅れたがもう大方の読者諸兄にはお察しがついていよう。
ここは、とある街である。
そしてこの街には、人気のゆっくり園があった。
芸を見せたり屋台をやっているゆっくりたちは当然、全員が金バッチ持ちである。
華やかで人間さんたちから喝采を浴びる表舞台の裏には、いつかその表舞台に立ちたい
と願うゆっくりたちの餡のにじむ訓練の日々があった。
広場にいるゆっくりたちはエリート中のエリートであった。
そもそも、この園のゆっくりになるための試験の受験資格が金バッチなのである。金持
ちが大前提になっている世界なのだ。
それゆえに、合格すればもはやゆっくりしたゆん生は約束されたようなものだ。
後進に道を譲って引退する際も、ペットとしての買い手がすぐさまつく。買いたいとい
う人間が多い売り手市場なのだから、その人間の調査吟味も詳細に行われ隠れ虐待趣味者
などに引き取られることもない。
そして、ひとつの花道がいわば寿退社である。
「ゆゆっ、れ、れいむ!」
まりさは、係員に連れてこられた部屋で驚きの声を上げた。
あの、飼い主のおじいさんとよくまりさの水上レースを見に来ていたれいむがそこにい
たのだ。
「ゆ、ゆゆぅ、ゆ、ゆっくりはじめまして! れいむは、れいむだよ!」
「ゆっ! ま、まりさはまりさだぜ!」
はじめはぎこちなかった二匹だが、れいむがいつも水上を駆けるまりさの勇姿に感動し
ていたことを告げ、まりさもよく見に来ているれいむのことを意識していたことを打ち明
けると、すぐに打ち解けることができた。
それを、係員とれいむの飼い主のおじいさんが嬉しそうに眺めている。
当のまりさとれいむには知らされていなかったが、これはお見合いであった。
れいむがまりさのことを好きになっていることを悟った飼い主が、園に申し出て一席を
設けたのだ。
むろん、話は二匹がそのつもりになってからだが、もしも話がそのように運んだ場合は、
飼い主が金を出して園からまりさを買い取ることになる。
水上レースの花形まりさなので決して安い金額ではないが、飼い主は裕福だったのでそ
れを承諾した。
やがて、何度も会っているうちに、いよいよ打ち解ける二匹。
ある日の帰り道、おじいさんがれいむに言った。
「れいむや、あのまりさのこと好きかい?」
同じ頃、まりさは係員に言われていた。
「まりさ、あのれいむのこと好きかい?」
答えは、同じだった。
「「ゆっ! す、す、好きだよ、ゆっくり大好きだよ!」」
話はとんとん拍子に進み、まりさは引き取られ、二匹は晴れて結婚することになった。
「ゆっくりしあわせーになれよー!」
まりさと親しかった係員が祝福する。
「ゆっくりおめでとう!」
「ゆっくりしていってね!」
「まりさ、ときどき遊びに来てね!」
「うー、やきそばごちそうするどぉー」
仲間たちも祝福する。
「わー、結婚式だってー」
「へえ、こりゃいい日に来たなあ」
「れいむもまりさもかわいいぃぃぃ」
「カメラカメラ、カメラどこやったかな」
居合わせた客たちも、このめでたいイベントに大喜びだ。
祝福、また祝福。
とってもゆっくりと見送られたまりさは、この後れいむと子供を産んで家族を作り、ゆ
っくりとしたゆん生を送った。
だからこの街は、ゆっくりにやさしいまちと呼ばれていた。
「ゆぅ、ゆぅ、ゆぅ、つ、ついたよー!」
「ゆっくりつかれたよ!」
「ゆわぁぁぁ、ここがゆっくりできるまちなんだね!」
「そうだよ、ここはね、人間さんたちにゆっくりにやさしいまち、って呼ばれてるんだよ」
「それはゆっくりできそうだね!」
「ゆっきゅちできりゅね!」
「ゆわぁい、ゆっきゅち! ゆっきゅち!」
「ゆっくりしないでいそいでよかったね!」
それは、れいむやらまりさやらありすらの集団であった。
子ゆっくりや親の頭に乗っている赤ゆっくりまで含めると全部で三十匹はいる、ちょっ
とした群れだ。
隣町に住んでいた野良ゆっくりたちである。とある公園で必死に生きていたが、とうと
う人間が公園のゆっくり駆除を決定。
愛護派というほどではないが、それほどゆっくりたちを嫌ってはいなかった近所の人間
に警告を受けて、ゆっくりたちは泣く泣く公園を出ることにした。
途方にくれたゆっくりたちを哀れに思ったのか、何人かの人間が教えてくれた。
ゆっくりにやさしいまち
の存在を。
そこに行けばゆっくりできる。
道々、人間に話を聞くと、その確信はさらに強まった。
「ああ、あそこはゆっくりできるぞ」
「ぜったいに行くべきだ。あそこはゆっくりにやさしいから」
「いじめられてるゆっくりなんか一匹もいないよ」
とてもゆっくりできそうな話ばかりだった。
そして今、野良ゆっくりたちはようやくゆっくりできる場所へ到着した。
近付いて行くと、門が見えた。
ゆっくり園 ゆっくりしていってね!
と、アーチ状の門に取り付けられた看板の文字を見て、ゆっくりたちはゆっくりした。
いかにもゆっくりできそうなところだ。
「ゆゆ! なんか、とってもゆっくりした声が聞こえるよ!」
「ゆゆ?」
「しーっ、しずかにしてね! ほら……」
ゆっくりたちが口を噤む。
すると、微かに門の向こう側の声が聞こえてきた。
「ゆっゆっゆ~、ゆゆっ、ゆゆ~っ」
「ママ、あのれいむ、おうたがうまいね」
「そうねえ、すごいわねえ」
「ゆっゆっゆっ! わかるよー!」
「うわー、あのちぇん、すごいなー」
「かっわいいよー、ちぇん飼いたいぃぃぃ」
「うーん、マジで飼っちゃおうか、ちぇん」
「ゆっきゅちちていっちぇね!」
「あの赤ちゃんれいむとまりさ可愛いねえ」
「あーもー、かわいいー、あたしあまあまあげてくるー」
もう、とてつもなくゆっくりできそうな声ばかりである。
「「「ゆわわわわわああああ!」」」
「「「ゆ、ゆっくりできそうだねえええええ!」」」
「「「ゆっきゅちぃぃぃぃぃ!」」」
「「「ゆっくりしないではやく中にはいろうね!」」」
明日をも知れぬ境遇で生きてきた野良ゆっくりたちに、興奮するなというのが無理な話
だ。
「お、野良か」
いざゆっくりできる楽園へ、と野良ゆっくりが跳ねていくと、門のところにいた係員が
それに気付いて外に出てきて、ゆっくりたちを阻んだ。
ゆっくりにやさしい、という話が広まると、この場所こそが真のゆっくりプレイスと思
い込んだ野良ゆっくりがよくやってくるようになったので、係員には見慣れた光景であっ
た。どうも野良ゆっくりを追っ払うためにここのことを天国のようにゆっくりに吹き込む
人間もいるようで困ったものである。
「はーい、ゆっくりゆっくり」
「ゆゆ? おにいさん、邪魔しないでね」
「そうよ、ありすたち、とってもとかいはなここに入りたいのよ」
「ここはとってもゆっくりできるんだよ、だから中に入れてね」
「ゆっきゅちちたいよぉぉぉ、いれちぇよ!」
「うん、でも君たち、ちょっと中に入れるには汚いねえ」
「「「ゆぅ……」」」
ゆっくりたちがしょげ返る。
「だから、まず入る前に体を洗ってぴかぴかにしないとね」
係員はそう言って、もう一人の別の係員に、
「ちょっとここ頼むわ。おれはこいつらを連れてくから」
「おう」
「さあ、ほら、こっちおいでー」
「ゆゆ!?」
「ほら、こっち、洗って上げるから、おいで」
「ゆゆゆゆ!?」
「あらってきれーきれーになったら、中に入っていいの?」
「うん」
「ゆわああああい!」
「ごーしごーししてきれーきれーになろうね!」
「ゆっくりおねがいするわね、とかいはなお兄さん!」
「ゆわーい、ごーちごーちできれーきれーしようにぇ!」
「そうちたらゆっきゅちできりゅんだね!」
一時はどうなることかと思ったゆっくりたちは大喜びだ。
ゆっくりたちは、裏手にあった建物の一室に招じ入れられた。
「野良だよ、頼むわ」
「はい」
「えっと、はじめてだっけか」
「ええ……」
「そんな深く考えるな。苦しむことはないんだ」
「……はい、やります。やりますよ」
「ああ、それじゃ頼むぞ」
ここまでゆっくりたちを連れてきた係員は、そこにいた別の係員とそんな会話を交わす
と出て行った。
「……はーい、ほら、そこのお湯で体を洗ってね」
その係員は、一度深呼吸をしてから言った。
「ゆわわ、あったかいおみずしゃんがありゅよ!」
「これはおゆだよ! ゆっくりできるよ!」
「ゆぅぅぅ、これがうわさに聞いてたおふろなんだね!」
「おふろに入るのなんてうまれてはじめてだよ!」
ゆっくりたちは床が窪んでいる部分に溜まったお湯に、ざんぶとつかってとてもゆっく
りした。
長湯は死に繋がるので、少しつかると外に出て、体をすーりすーりさせる。
もう一度お湯につかると、ずっと野良暮らしをしていたため、お湯が真っ黒になった。
「ゆわあ、まっくろだにぇ!」
「おゆさんがこんなに黒くなったってことは、これでれいむたちはきれーきれーになった
んだよ!」
「さっぱりしたんだぜ! おふろはゆっくりできるんだぜ」
「きれーになっちゃら、ゆっきゅちしたところに入れるにぇ!」
「ゆわーい、ゆっきゅちちようにぇ!」
「ゆぅ……でも、なんかゆっくりねむたくなってきたよ」
「ゆぅ……そういわれると、ありすもなんだか……」
「ま、まりさも、ね、ね、ねむいんだぜ……」
「「「ゆぴぃ~」」」
「ゆゆぅ、赤ちゃんたち、もうおねむしてるよ~」
係員が、眠たそうにしているゆっくりたちに声をかけた。
「ほら、ここで、少しおひるねするといい。ここに来るのに疲れたんだろう」
係員が指し示す床は、そこだけふわふわの毛布になっていてゆっくりできそうだった。
「ゆぅぅ、そうだね、おひるねしようか」
「ゆぅ、それが、いいんだぜ、ねむいんだぜ」
「ゆぅぅぅぅ」
「ゆぴぃ~」
「赤ちゃんをおくちでくわえてはこぼうね……」
やがて、全てのゆっくりがふわふわの床の上に乗り、眠ってしまった。
「……よし」
それを確認すると係員は、深呼吸をして、壁についていたスイッチを押した。
ういいいいん
と機械の作動音がして、ゆっくりたちが幸せに眠る床が真ん中から割れた。
「「「ゆぴぃ~」」」
ゆっくりたちは床が割れて開いてできた穴から落ちていくが、それでも目を覚まさない。
先ほど体を洗ったお湯にゆっくりに効果がある睡眠剤が入っていて、それを体全体で吸
収し、湯気を吸い込んだゆっくりたちは決して目覚めることはない。
ゆっくりと惰眠を貪りながら、ゆっくりとした夢を見ながら、ゆっくりとした寝顔のま
ま落ちていった。
最後の最後で、希望に満ちたゆっくりを手に入れた野良ゆっくりたちは、みんな幸せそ
うだった。
「……ふう」
係員は、階段を下りていく。
「……」
無言で、それを見つめた。
山盛りの餡子とカスタードが混ざったもの。
山盛りの皮。
リボン、帽子、カチューシャ。
これに、慣れないといけない。
せめて最後までゆっくりしていたのだからと思うしかなかった。
普通の処理場やら加工所ならば、問答無用で泣き叫ぶゆっくりをミキサーにかけている
だろう。
しかしここでは、せめてゆっくりと死なせてやるためというだけの理由で、ゆっくり用
の睡眠剤のコストを許容していた。その結果できたものを利用するといっても、正直、採
算的に言うと、やや赤字である。
だからこの街は、ゆっくりにやさしいまちと呼ばれていた
終わり
油断すると愛で派の本性が出ちまうな。
過去作品
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