ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2165 面の皮があつい
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「ゆっくりの皮、うめえ」
「カリッとするまで炙って醤油最高」
「こないだカレーつけたらかなりイケたぜ」
「けっこう皮好き多いよな」
「加工所で働いてるって言ったら、それならゆっくりの皮手に入らないか、って聞かれた
わ」
「でも、あいつら大部分餡子だからなあ、けっこう皮って貴重だよね」
「うん、だからおれたちだけで食っちゃう」
「もっと皮のあついゆっくりが作れたらなあ」
「文字通り、面の皮のあついゆっくりか」
そんな、加工所職員たちの会話がきっかけだったという。
その話を聞いた開発部門の人間が乗り出して、最初は片手間だったが次第に実現の可能
性が見えてきたところで上層部に打診したところ、上も乗り気になった。
ゆっくりの皮愛好家は多い、という認識を、彼らもまた持っていたのだ。
ゆっくりを食品にする際には、やはりなんといってもその大部分を占める餡子が利用さ
れる。
ゆっくり食品といえば餡子、餡子といえば甘い。
ゆえに、ゆっくりを食べ物として愛好するものは甘味好きというのが当然であった。
しかし、皮だけを大量に作ることができたら……。
ゆっくりの皮は、小麦粉を水で溶いて乾かしたものに非常によく似た……というかほと
んどそのまんまである。
それ自体にはそれほど味は無い。
だが、それゆえに甘いものでも辛いものでもつけて食べられるのだ。
これは新たな客層を開拓できると踏んで、ゴーサインが出た。
そして――。
「ゆっきゅちぃぃぃぃ!」
「ゆきゅ! ゆきゅ! ゆきゅぅ!」
「ゆっく! ゆっく! ちぃぃぃ!」
ここは、発売開始後またたくまに人気商品となった「ゆっくり皮」の製造部門。
固定され、頭に栄養剤を注入する管と、それとは別にもう一本、計二本の管をつけられ
た母体ゆっくりたちが一様に感情の無い目で、産み落とされていく我が子を見つめている。
「ゆっくりしていってね!」
その中で数匹だけが、愛情をこめて子供に声をかける。
昨日、ここに来たばかりの、ここでの出産が初めてのものたちだ。
「ど、どぼじでええええ!」
「おぢびぢゃん……ゆ、ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね! ……どぼじでちゃんと言えないの
ぉぉぉぉぉ!」
新入りの母体たちは泣き叫んだ。
我が子が一匹としてまともに挨拶を返さないのだ。
「ゆきゅ! ゆきゅきゅきゅ!」
「ゆぴ! ぴぴぴぃ!」
「ゆぴゃぴゃぴゃ!」
それは、明らかにいわゆる未熟ゆと呼ばれる「足りない」ゆっくりであった。
それを見て、前からいる既に感情の磨耗しきった母体ゆっくりたちは、やはり全く無感
情であった。
「ゆっきゅちちていっちぇね!」
「ゆっくりしていってね!」
その中で、その場に似つかわしくない声が上がった。
「ゆっくりしていってね! まりさがおかあさんだよ!」
その母体のまりさは、十匹の子供を産み落としていた。
そのうちの九匹が足りない子であったが、最後に生まれたまりさ種だけはきちんと挨拶
をできたのだ。
「きゃわいいまりしゃがうまれたのじぇ! おきゃあしゃんといーっぱいゆっくちちゅる
んだじぇ!」
と、母まりさが泣いて喜ぶことを言う子まりさ。
それを見て、全ての子が足りない子だった他の何匹かの新入りたちが羨ましそうな顔を
する。
以前よりの母体たちは……やはり、無感情であった。
知っているのだ。
足りない子であろうと、そうでない子であろうと、自分たちが産んだ子たちはすぐに奪
われることを……。
ほら、あの音が聞こえてきた。
ういーん、ういーん。
その音が聞こえてきたら、もうこの子たちとはおさらばだ。
子供たちが落ちたふわふわの地面さんが少しずつ動いていく。
「ゆゆ!?」
新入りたちは驚いて横にスライドしていく我が子たちを目で追う。
「お、おちびぢゃあああああああああん!」
「ゆ!? ゆぴゃあああ! おきゃしゃん、にゃんでいっちゃうんだじぇぇぇぇ!」
「おちびぢゃん、いがないでえええええ! おぢびぢゃああああん!」
ただ一匹、まともな子まりさを産んだまりさは特に大声で泣き叫んだが、他の新入りた
ちも、足りないとはいえ我が子が離れていくのに戸惑っていた。
「ゆえーん、ゆえーん、おきゃあじゃんがいにゃくなっちゃったのじぇぇぇ!」
子まりさは泣いていた。
だが、泣いているのは子まりさだけで、姉妹や他の子ゆっくりたちは愉快そうに笑って
いる。
「「「ゆきゃきゃ! ゆっきゅぅ!」」」
言うまでもないことだが、足りてないのでそもそもあそこにいたのが自分の母親である
とかそういうことすら理解できていないのだ。
これもまた言うまでもないが、この子たちがこうなのは、特殊な薬品によって皮をあつ
くされているため、その分、中身の餡子が生存が可能なギリギリまで抑えられているから
である。
あの、母体の頭に刺さっていた二本の管のうち栄養剤のそれではない方が、その薬品を
流し込むためのものだったのだ。
「ゆぅぅぅ、みんなゆっきゅちちてないのじぇ、ゆっくちちてるのはまりしゃだけなのじ
ぇ」
周りのものがみんなまともではないことを知った子まりさは、不安そうに言った。
「ゆっ! まりしゃだけゆっくちちてるのじぇ! ゆっくち!」
だが、すぐにその不安は自分だけがまともでゆっくりしているという優越感に変わった。
「ゆぅぅぅ、はやくきょんなきもちわりゅいやちゅらからはなれちゃいのじぇ」
狂ったように笑っている他の子たちからできるだけ距離をとって、子まりさは蔑視もあ
らわの目をしていた。
「……」
ひょい、と一人の人間が無言のまま、子まりさを摘み上げた。
「ゆっ! おしょらをとんでるみちゃいなのじぇ~」
驚いた子まりさだが、その浮遊感にゆっくりした。
「ほい」
そして、置かれたのはとある透明の箱だ。
「ゆっ!」
そこには、れいむ種、ありす種、そして同じまりさ種の三匹の子ゆっくりがいた。
「ゆっきゅちちていっちぇね!」
「「「ゆっきゅちちていっちぇね!」」」
三匹が、きちんと挨拶してくれたのに子まりさは安堵する。この子たちは、あいつらと
違ってちゃんとゆっくりしているようだ。
早速、四匹はあれこれと話し合う。
他の三匹もやはり産まれてすぐに母親と離れてしまい、まわりはゆっくりしていない子
ばかりという状況から人間さんに救い上げられてここに入れられたらしい。
そこからゆっくり導き出された結論は、まりさたちは他の連中と違ってゆっくりしてい
るから別にされたのであろうということだった。
だから、そのうちにおかあさんとも会えるし、ゆっくりできるに違いない、というそこ
は生まれたばかりの子ゆっくりであるから際限なく薔薇色のゆん生を期待していた。
しかし、ここは、面の皮のあついゆっくりの製造をしているところなのである。
そう……このちゃんとしたゆっくりであるこの四匹は失敗作なのである。だから弾かれ
たのだ。
人間がまりさたちの入った箱を持ち上げた。
「ゆゆ!」
「ゆっくちちていっちぇね!」
「ゆーん、まりしゃおにゃかがすいちゃのじぇ」
「あみゃあみゃちょうらいね!」
人間は、それらの失敗作の言葉を無視して、箱を持ったまま歩いていく。
「はいこれ」
「おお」
そして、別の部屋へとやってくると、そこにいた同じ服を着た人間に箱を渡した。
四匹は、その新たな人間にやはり挨拶したり空腹を訴えたり食べ物をねだったりしたが、
これもまた完全に無視された。
「ゆっくちちてね! ゆっくち!」
「にゃんでれいみゅのいうこちょむちちゅるの!」
「まりしゃ、おにゃかがぺーこぺーこなんだじぇ!」
「はやくごはんちょうらいね!」
何を言っても無視された。
しばらくすると、箱が置かれた位置から見える部屋に、たくさんの子ゆっくりが入った
箱を持った人間がやってきた。
「ゆ!? あ、あいちゅらだよ!」
その箱に入っていたのは、さっきのゆっくりしていない連中であった。
四匹とも、相変わらずのゆっくりしてなさを心底軽蔑しきって嘲笑った。
あの連中を見ていると、自分たちがとてもゆっくりしているように思え、そしてこんな
にゆっくりしているのだから、この先もゆっくりできると確信できるのだった。
「「「ゆきゅ! ゆきゅ! ゆきゅきゅ!」」」
嬉しそうな奴らの声が聞こえてくる。
「ゆぅ……」
「ゆゆ、きもちよちゃそう……」
ゆっくりしてない連中がいる部屋の床は、どうやらふわふわの毛布が敷いてあるらしく、
みんな気持ちよさそうに転がったりしている。
「ゆぅ……にゃんでまりしゃたちのほうはかたいじめんしゃんなのじぇ……」
まりさは不平満々であった。他の三匹ももちろん同感だ。
そして、それでは終わらなかった。
「むーちゃ、むーちゃ、ゆっきゅぅぅぅ!」
「ゆきゅ! ゆきゅ!」
「うめ、うめ、うめええええ!」
おいしそうなごはんを貪り喰らって嬉しそうにするゆっくりしていない奴ら。
「……ゆぅ」
「おにゃかすいちゃよぉ……」
「ごはんたべちゃいよ……」
「にゃんで……にゃんであいちゅらがむーちゃむーちゃちてりゅのに……」
一方の失敗作どもには何も与えられない。
羨ましそうに、奴らの不当な(と当然まりさたちは思っていた)ゆっくりぶりを見てい
るだけだ。
一週間後――。
「ゆっ、ゆっ、ゆっきゅぅ」
「ゆぴぴぴ」
「ゆぴゃ、ぴゃぴゃ」
連中は、やはりゆっくりしていた。
ふわふわの毛布においしいごはん。
体も成体サイズに近い。
だが、たっぷりとゆっくりし、食事をしているとはいえ、その成長ペースは明らかに早
すぎた。
だが、答えは簡単、ごはんに、強力な成長促進剤が入っているのだ。
時々、人間がやってきてつついたり触ったりしていく。
「よし、よし、ゆっくりしていってね」
「「「ゆきゅきゅ、ちぇね!」」」
人間は優しそうに呼びかけ、みんな嬉しそうに答える。
そして、それを箱の中から眺めている四匹は、あからさまにやつれていた。
体のサイズは成体に近くなっているが、これは一日一本、人間から栄養剤と成長促進剤
を注射されているためだ。
注射の仕方は乱暴で、所かまわずに注射針を打ち込むので痛くてしょうがない。
「ゆぐ……ゆぐ……」
まりさは右目から涙を流していた。
左目は無い。
注射される際に嫌がって暴れたために左目に刺さってしまったのだ。
人間は構わずに押し込んでそこから注射した。
そして、左目の激痛を訴える子まりさを一瞥すると、注射針をもう一度左目に指して目
玉をほじくり出してしまった。
それからは、みんな注射される時も暴れずにおとなしくされるようになった。
「ゆぐぅ、ゆぐぅ、なんで、なんで……」
「れいむだぢ、ゆっぐりじでたのに……なんで」
「なんで、ありずだぢがこんなゆっぐりでぎてないのに……あいづらだけ……」
「おがじいのぜ……ぜっっっだい、おがじいのぜ……」
そんな酷い目にあいつつ、見下ろし蔑視していた連中のゆっくりした様子を見せ付けら
れて四匹とも凄まじいストレスを感じていた。
さぞや、その中身の餡子は甘くなっていることだろう。
ゆっくりの餡子は、苦痛やストレスなどのマイナスの要素を与えることにより甘味を増
すという特徴があることはよく知られたことである。
では、皮はどうかというと、これがもうゆっくりしていればいるほど弾力のあるもちも
ち皮になるのだ。
とてもゆっくりと暮らしている飼いゆっくりなどは肌はきれいでもちもちしているが、
中身の餡子はとても食べられたものではない。
もちろん、飼い主に愛されて暮らす飼いゆっくりの中身が美味しい必要など無いのでそ
れでいいのだ。
このゆっくり皮の素材となるゆっくりたちも、そのためにとてもゆっくりとした環境で
育てられる。
成長促進剤も注射した方が効果が大きいのだが、注射針が刺さった時の苦痛が皮に悪い
影響を与えるので餌に混ぜている。
「よーし、ここの奴ら、もう加工部門に出すぞー」
「「はーい」」
先ほど、皮をつついたり触ったりしていた人間が言うと、その部下らしい二人の人間が
動き出す。
一人は、例の失敗作が入ってる箱へと向かった。
「「「「ゆひぃ!」」」」
もう人間を見るだけで恐怖するようになった四匹だったが、そのうちの一匹のれいむの
髪の毛を乱暴に掴んで引っ張り上げた。
「ゆあああああ、やべでね! やべでね!」
れいむは、底の深い大きな皿の上に乗せられた。
「ゆ、ゆ、ゆっぐり、ぶべ!」
じでね、と続けようとしたのだろうが、人間が振り下ろしたハンマーによってそれは遮
られた。
頭頂部を思い切り叩き潰されたれいむは、ゆ゛っ、ゆ゛っ、と呻くばかりになった。こ
うなっては時間の問題だろう。
「「「ゆひゃあああああ!」」」
残りの三匹はより一層震えた。
今まで酷い目にあってきたまりさたちだったが、人間たちが自分たちを殺さないように
していたのにはなんとなく気付いていた。
殺されはしない、というのが、どれだけこの酷い生活の中であまりにも淡い希望となっ
ていたことか。
しかし、その常識は覆された。
次はありすだ。
全く同じ。
次はもう一匹のまりさ。
やることは変わらない。
そして、最後に残ったまりさもまた、皿に乗せられた。
ぐにぐにと底部を動かすが人間の左手が押さえつけているため微動だにできない。
そして、右手が振り下ろされ――。
「ゆ゛っぐりぃぃぃぃ!」
もう一人は、部屋から出ていたが、失敗作が全部死んだ頃に一本のボンベを持って戻っ
てきた。
そのボンベからはホースが伸びていた。
「あー、ちょっとまってなー」
失敗作を処理した人間が、その成れの果てが乗った皿をゆっくりたちの部屋に入れる。
「「「ゆきゅきゅ!」」」
そのきついぐらいに甘ったるい臭いに反応したゆっくりたちは、すぐさまそれにかぶり
ついた。
この最後の食事となる極上のあまあまによってその皮は完成する。
その食事が終わったと見ると、ボンベを持ってきた男がゆっくりたちがいる小部屋が密
閉されていることを確認し、壁から突き出た突起を掴んでそれを右に動かした。
小さい正方形の壁がスライドして、そこには小さな穴が現れる。
ボンベから伸びるホースの先端をそこに突っ込むとぴったりとはまった。
「ガス入れまーす」
ボンベを操作して、中身を小部屋に注入する。
「ゆ、きゅぅ……」
「ゆっ、く……」
「ゆぴぃ……」
ボンベに入っていたのはゆっくりに効果のある睡眠ガスだ。今まで食べたことのないよ
うなあまあまを食べて、ただでさえ眠たくなっていたゆっくりたちを眠りに誘うには十分
すぎる。
「よし、出すぞー」
「「はーい」」
すっかり熟睡した面の皮のあついゆっくりたちは、ちょっとやそっとの刺激では目覚め
ない。
それをぼんぼんと箱に詰めていく。
「よし、いくぞ」
「「はーい」」
箱を乗せた台車が移動し始める。
この後、加工部門へと搬入され、ゆっくりたちは真っ二つにされて乏しい中枢餡を破壊
されてそうとも気付かずに死を迎える。
その後、彼らの皮は薄く削ったり、四角く加工されたりして出荷されるのだ。
一生をゆっくりしていたその皮は弾力に富み、それ自体が強烈な味を持っていないため
に色んな料理に使用することができた。
特殊な薬品を使い、その薬品は加工所が特許を持っていたためにほぼ独占状態であった。
「おーし、次来るぞー、選別だ」
「「はーい」」
その日もまた、人気商品の素がベルトコンベアーに乗ってやってきた。
「おきゃあしゃあああああん! ゆっくち! ゆっくち!」
「お……」
ゆきゅきゅ、と笑っている「合格品」に混じって、母親を求めてゆぐゆぐ泣くれいむが
いた。
そのれいむは、肌も髪もかなり美しく、生まれるところが違えばブリーダーにまたとな
い素材と認められ、ペットゆっくりへの道を歩んだかもしれなかった。
だが、ここは、ゆっくり皮の製造部門。
面の皮のあついゆっくり以外は――。
「こいつは、失敗作か」
終わり
書いたのははじめて加工所もの書けて嬉しいのるまあき。
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「カリッとするまで炙って醤油最高」
「こないだカレーつけたらかなりイケたぜ」
「けっこう皮好き多いよな」
「加工所で働いてるって言ったら、それならゆっくりの皮手に入らないか、って聞かれた
わ」
「でも、あいつら大部分餡子だからなあ、けっこう皮って貴重だよね」
「うん、だからおれたちだけで食っちゃう」
「もっと皮のあついゆっくりが作れたらなあ」
「文字通り、面の皮のあついゆっくりか」
そんな、加工所職員たちの会話がきっかけだったという。
その話を聞いた開発部門の人間が乗り出して、最初は片手間だったが次第に実現の可能
性が見えてきたところで上層部に打診したところ、上も乗り気になった。
ゆっくりの皮愛好家は多い、という認識を、彼らもまた持っていたのだ。
ゆっくりを食品にする際には、やはりなんといってもその大部分を占める餡子が利用さ
れる。
ゆっくり食品といえば餡子、餡子といえば甘い。
ゆえに、ゆっくりを食べ物として愛好するものは甘味好きというのが当然であった。
しかし、皮だけを大量に作ることができたら……。
ゆっくりの皮は、小麦粉を水で溶いて乾かしたものに非常によく似た……というかほと
んどそのまんまである。
それ自体にはそれほど味は無い。
だが、それゆえに甘いものでも辛いものでもつけて食べられるのだ。
これは新たな客層を開拓できると踏んで、ゴーサインが出た。
そして――。
「ゆっきゅちぃぃぃぃ!」
「ゆきゅ! ゆきゅ! ゆきゅぅ!」
「ゆっく! ゆっく! ちぃぃぃ!」
ここは、発売開始後またたくまに人気商品となった「ゆっくり皮」の製造部門。
固定され、頭に栄養剤を注入する管と、それとは別にもう一本、計二本の管をつけられ
た母体ゆっくりたちが一様に感情の無い目で、産み落とされていく我が子を見つめている。
「ゆっくりしていってね!」
その中で数匹だけが、愛情をこめて子供に声をかける。
昨日、ここに来たばかりの、ここでの出産が初めてのものたちだ。
「ど、どぼじでええええ!」
「おぢびぢゃん……ゆ、ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね! ……どぼじでちゃんと言えないの
ぉぉぉぉぉ!」
新入りの母体たちは泣き叫んだ。
我が子が一匹としてまともに挨拶を返さないのだ。
「ゆきゅ! ゆきゅきゅきゅ!」
「ゆぴ! ぴぴぴぃ!」
「ゆぴゃぴゃぴゃ!」
それは、明らかにいわゆる未熟ゆと呼ばれる「足りない」ゆっくりであった。
それを見て、前からいる既に感情の磨耗しきった母体ゆっくりたちは、やはり全く無感
情であった。
「ゆっきゅちちていっちぇね!」
「ゆっくりしていってね!」
その中で、その場に似つかわしくない声が上がった。
「ゆっくりしていってね! まりさがおかあさんだよ!」
その母体のまりさは、十匹の子供を産み落としていた。
そのうちの九匹が足りない子であったが、最後に生まれたまりさ種だけはきちんと挨拶
をできたのだ。
「きゃわいいまりしゃがうまれたのじぇ! おきゃあしゃんといーっぱいゆっくちちゅる
んだじぇ!」
と、母まりさが泣いて喜ぶことを言う子まりさ。
それを見て、全ての子が足りない子だった他の何匹かの新入りたちが羨ましそうな顔を
する。
以前よりの母体たちは……やはり、無感情であった。
知っているのだ。
足りない子であろうと、そうでない子であろうと、自分たちが産んだ子たちはすぐに奪
われることを……。
ほら、あの音が聞こえてきた。
ういーん、ういーん。
その音が聞こえてきたら、もうこの子たちとはおさらばだ。
子供たちが落ちたふわふわの地面さんが少しずつ動いていく。
「ゆゆ!?」
新入りたちは驚いて横にスライドしていく我が子たちを目で追う。
「お、おちびぢゃあああああああああん!」
「ゆ!? ゆぴゃあああ! おきゃしゃん、にゃんでいっちゃうんだじぇぇぇぇ!」
「おちびぢゃん、いがないでえええええ! おぢびぢゃああああん!」
ただ一匹、まともな子まりさを産んだまりさは特に大声で泣き叫んだが、他の新入りた
ちも、足りないとはいえ我が子が離れていくのに戸惑っていた。
「ゆえーん、ゆえーん、おきゃあじゃんがいにゃくなっちゃったのじぇぇぇ!」
子まりさは泣いていた。
だが、泣いているのは子まりさだけで、姉妹や他の子ゆっくりたちは愉快そうに笑って
いる。
「「「ゆきゃきゃ! ゆっきゅぅ!」」」
言うまでもないことだが、足りてないのでそもそもあそこにいたのが自分の母親である
とかそういうことすら理解できていないのだ。
これもまた言うまでもないが、この子たちがこうなのは、特殊な薬品によって皮をあつ
くされているため、その分、中身の餡子が生存が可能なギリギリまで抑えられているから
である。
あの、母体の頭に刺さっていた二本の管のうち栄養剤のそれではない方が、その薬品を
流し込むためのものだったのだ。
「ゆぅぅぅ、みんなゆっきゅちちてないのじぇ、ゆっくちちてるのはまりしゃだけなのじ
ぇ」
周りのものがみんなまともではないことを知った子まりさは、不安そうに言った。
「ゆっ! まりしゃだけゆっくちちてるのじぇ! ゆっくち!」
だが、すぐにその不安は自分だけがまともでゆっくりしているという優越感に変わった。
「ゆぅぅぅ、はやくきょんなきもちわりゅいやちゅらからはなれちゃいのじぇ」
狂ったように笑っている他の子たちからできるだけ距離をとって、子まりさは蔑視もあ
らわの目をしていた。
「……」
ひょい、と一人の人間が無言のまま、子まりさを摘み上げた。
「ゆっ! おしょらをとんでるみちゃいなのじぇ~」
驚いた子まりさだが、その浮遊感にゆっくりした。
「ほい」
そして、置かれたのはとある透明の箱だ。
「ゆっ!」
そこには、れいむ種、ありす種、そして同じまりさ種の三匹の子ゆっくりがいた。
「ゆっきゅちちていっちぇね!」
「「「ゆっきゅちちていっちぇね!」」」
三匹が、きちんと挨拶してくれたのに子まりさは安堵する。この子たちは、あいつらと
違ってちゃんとゆっくりしているようだ。
早速、四匹はあれこれと話し合う。
他の三匹もやはり産まれてすぐに母親と離れてしまい、まわりはゆっくりしていない子
ばかりという状況から人間さんに救い上げられてここに入れられたらしい。
そこからゆっくり導き出された結論は、まりさたちは他の連中と違ってゆっくりしてい
るから別にされたのであろうということだった。
だから、そのうちにおかあさんとも会えるし、ゆっくりできるに違いない、というそこ
は生まれたばかりの子ゆっくりであるから際限なく薔薇色のゆん生を期待していた。
しかし、ここは、面の皮のあついゆっくりの製造をしているところなのである。
そう……このちゃんとしたゆっくりであるこの四匹は失敗作なのである。だから弾かれ
たのだ。
人間がまりさたちの入った箱を持ち上げた。
「ゆゆ!」
「ゆっくちちていっちぇね!」
「ゆーん、まりしゃおにゃかがすいちゃのじぇ」
「あみゃあみゃちょうらいね!」
人間は、それらの失敗作の言葉を無視して、箱を持ったまま歩いていく。
「はいこれ」
「おお」
そして、別の部屋へとやってくると、そこにいた同じ服を着た人間に箱を渡した。
四匹は、その新たな人間にやはり挨拶したり空腹を訴えたり食べ物をねだったりしたが、
これもまた完全に無視された。
「ゆっくちちてね! ゆっくち!」
「にゃんでれいみゅのいうこちょむちちゅるの!」
「まりしゃ、おにゃかがぺーこぺーこなんだじぇ!」
「はやくごはんちょうらいね!」
何を言っても無視された。
しばらくすると、箱が置かれた位置から見える部屋に、たくさんの子ゆっくりが入った
箱を持った人間がやってきた。
「ゆ!? あ、あいちゅらだよ!」
その箱に入っていたのは、さっきのゆっくりしていない連中であった。
四匹とも、相変わらずのゆっくりしてなさを心底軽蔑しきって嘲笑った。
あの連中を見ていると、自分たちがとてもゆっくりしているように思え、そしてこんな
にゆっくりしているのだから、この先もゆっくりできると確信できるのだった。
「「「ゆきゅ! ゆきゅ! ゆきゅきゅ!」」」
嬉しそうな奴らの声が聞こえてくる。
「ゆぅ……」
「ゆゆ、きもちよちゃそう……」
ゆっくりしてない連中がいる部屋の床は、どうやらふわふわの毛布が敷いてあるらしく、
みんな気持ちよさそうに転がったりしている。
「ゆぅ……にゃんでまりしゃたちのほうはかたいじめんしゃんなのじぇ……」
まりさは不平満々であった。他の三匹ももちろん同感だ。
そして、それでは終わらなかった。
「むーちゃ、むーちゃ、ゆっきゅぅぅぅ!」
「ゆきゅ! ゆきゅ!」
「うめ、うめ、うめええええ!」
おいしそうなごはんを貪り喰らって嬉しそうにするゆっくりしていない奴ら。
「……ゆぅ」
「おにゃかすいちゃよぉ……」
「ごはんたべちゃいよ……」
「にゃんで……にゃんであいちゅらがむーちゃむーちゃちてりゅのに……」
一方の失敗作どもには何も与えられない。
羨ましそうに、奴らの不当な(と当然まりさたちは思っていた)ゆっくりぶりを見てい
るだけだ。
一週間後――。
「ゆっ、ゆっ、ゆっきゅぅ」
「ゆぴぴぴ」
「ゆぴゃ、ぴゃぴゃ」
連中は、やはりゆっくりしていた。
ふわふわの毛布においしいごはん。
体も成体サイズに近い。
だが、たっぷりとゆっくりし、食事をしているとはいえ、その成長ペースは明らかに早
すぎた。
だが、答えは簡単、ごはんに、強力な成長促進剤が入っているのだ。
時々、人間がやってきてつついたり触ったりしていく。
「よし、よし、ゆっくりしていってね」
「「「ゆきゅきゅ、ちぇね!」」」
人間は優しそうに呼びかけ、みんな嬉しそうに答える。
そして、それを箱の中から眺めている四匹は、あからさまにやつれていた。
体のサイズは成体に近くなっているが、これは一日一本、人間から栄養剤と成長促進剤
を注射されているためだ。
注射の仕方は乱暴で、所かまわずに注射針を打ち込むので痛くてしょうがない。
「ゆぐ……ゆぐ……」
まりさは右目から涙を流していた。
左目は無い。
注射される際に嫌がって暴れたために左目に刺さってしまったのだ。
人間は構わずに押し込んでそこから注射した。
そして、左目の激痛を訴える子まりさを一瞥すると、注射針をもう一度左目に指して目
玉をほじくり出してしまった。
それからは、みんな注射される時も暴れずにおとなしくされるようになった。
「ゆぐぅ、ゆぐぅ、なんで、なんで……」
「れいむだぢ、ゆっぐりじでたのに……なんで」
「なんで、ありずだぢがこんなゆっぐりでぎてないのに……あいづらだけ……」
「おがじいのぜ……ぜっっっだい、おがじいのぜ……」
そんな酷い目にあいつつ、見下ろし蔑視していた連中のゆっくりした様子を見せ付けら
れて四匹とも凄まじいストレスを感じていた。
さぞや、その中身の餡子は甘くなっていることだろう。
ゆっくりの餡子は、苦痛やストレスなどのマイナスの要素を与えることにより甘味を増
すという特徴があることはよく知られたことである。
では、皮はどうかというと、これがもうゆっくりしていればいるほど弾力のあるもちも
ち皮になるのだ。
とてもゆっくりと暮らしている飼いゆっくりなどは肌はきれいでもちもちしているが、
中身の餡子はとても食べられたものではない。
もちろん、飼い主に愛されて暮らす飼いゆっくりの中身が美味しい必要など無いのでそ
れでいいのだ。
このゆっくり皮の素材となるゆっくりたちも、そのためにとてもゆっくりとした環境で
育てられる。
成長促進剤も注射した方が効果が大きいのだが、注射針が刺さった時の苦痛が皮に悪い
影響を与えるので餌に混ぜている。
「よーし、ここの奴ら、もう加工部門に出すぞー」
「「はーい」」
先ほど、皮をつついたり触ったりしていた人間が言うと、その部下らしい二人の人間が
動き出す。
一人は、例の失敗作が入ってる箱へと向かった。
「「「「ゆひぃ!」」」」
もう人間を見るだけで恐怖するようになった四匹だったが、そのうちの一匹のれいむの
髪の毛を乱暴に掴んで引っ張り上げた。
「ゆあああああ、やべでね! やべでね!」
れいむは、底の深い大きな皿の上に乗せられた。
「ゆ、ゆ、ゆっぐり、ぶべ!」
じでね、と続けようとしたのだろうが、人間が振り下ろしたハンマーによってそれは遮
られた。
頭頂部を思い切り叩き潰されたれいむは、ゆ゛っ、ゆ゛っ、と呻くばかりになった。こ
うなっては時間の問題だろう。
「「「ゆひゃあああああ!」」」
残りの三匹はより一層震えた。
今まで酷い目にあってきたまりさたちだったが、人間たちが自分たちを殺さないように
していたのにはなんとなく気付いていた。
殺されはしない、というのが、どれだけこの酷い生活の中であまりにも淡い希望となっ
ていたことか。
しかし、その常識は覆された。
次はありすだ。
全く同じ。
次はもう一匹のまりさ。
やることは変わらない。
そして、最後に残ったまりさもまた、皿に乗せられた。
ぐにぐにと底部を動かすが人間の左手が押さえつけているため微動だにできない。
そして、右手が振り下ろされ――。
「ゆ゛っぐりぃぃぃぃ!」
もう一人は、部屋から出ていたが、失敗作が全部死んだ頃に一本のボンベを持って戻っ
てきた。
そのボンベからはホースが伸びていた。
「あー、ちょっとまってなー」
失敗作を処理した人間が、その成れの果てが乗った皿をゆっくりたちの部屋に入れる。
「「「ゆきゅきゅ!」」」
そのきついぐらいに甘ったるい臭いに反応したゆっくりたちは、すぐさまそれにかぶり
ついた。
この最後の食事となる極上のあまあまによってその皮は完成する。
その食事が終わったと見ると、ボンベを持ってきた男がゆっくりたちがいる小部屋が密
閉されていることを確認し、壁から突き出た突起を掴んでそれを右に動かした。
小さい正方形の壁がスライドして、そこには小さな穴が現れる。
ボンベから伸びるホースの先端をそこに突っ込むとぴったりとはまった。
「ガス入れまーす」
ボンベを操作して、中身を小部屋に注入する。
「ゆ、きゅぅ……」
「ゆっ、く……」
「ゆぴぃ……」
ボンベに入っていたのはゆっくりに効果のある睡眠ガスだ。今まで食べたことのないよ
うなあまあまを食べて、ただでさえ眠たくなっていたゆっくりたちを眠りに誘うには十分
すぎる。
「よし、出すぞー」
「「はーい」」
すっかり熟睡した面の皮のあついゆっくりたちは、ちょっとやそっとの刺激では目覚め
ない。
それをぼんぼんと箱に詰めていく。
「よし、いくぞ」
「「はーい」」
箱を乗せた台車が移動し始める。
この後、加工部門へと搬入され、ゆっくりたちは真っ二つにされて乏しい中枢餡を破壊
されてそうとも気付かずに死を迎える。
その後、彼らの皮は薄く削ったり、四角く加工されたりして出荷されるのだ。
一生をゆっくりしていたその皮は弾力に富み、それ自体が強烈な味を持っていないため
に色んな料理に使用することができた。
特殊な薬品を使い、その薬品は加工所が特許を持っていたためにほぼ独占状態であった。
「おーし、次来るぞー、選別だ」
「「はーい」」
その日もまた、人気商品の素がベルトコンベアーに乗ってやってきた。
「おきゃあしゃあああああん! ゆっくち! ゆっくち!」
「お……」
ゆきゅきゅ、と笑っている「合格品」に混じって、母親を求めてゆぐゆぐ泣くれいむが
いた。
そのれいむは、肌も髪もかなり美しく、生まれるところが違えばブリーダーにまたとな
い素材と認められ、ペットゆっくりへの道を歩んだかもしれなかった。
だが、ここは、ゆっくり皮の製造部門。
面の皮のあついゆっくり以外は――。
「こいつは、失敗作か」
終わり
書いたのははじめて加工所もの書けて嬉しいのるまあき。
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