ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0286 そして家族の崩壊
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ankoss
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このお話しは
ふたば系ゆっくりいじめ 53 そんなに我侭いうなら自分で生きてね!
ふたば系ゆっくりいじめ 90 私は鬼にはなりきれないのだ
ふたば系ゆっくりいじめ 190 子まりさはゆっくりできない
ふたば系ゆっくりいじめ 194 おいまりさ、涙の味はおいしいか?
の4作品と繋がっています
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父まりさは悩んでいた。
一家の大黒柱として、悩まない日は一日としてなかったが、今までは家族への愛情ゆえになんとか耐えてきた。
だが、今回ばかりは耐え難い悩みが父まりさを襲っていた。
父まりさを悩ませるものは一つや二つではない。 その一つは、家族の食糧問題だ。
父まりさがおうちを提供してもらって庭に住まわせてもらっている人間から配給されるご飯の量は、
家族が生きていくには足りなすぎる。
元々、父まりさと、母れいむと、今は居ない子まりさ、姉まりさのそれぞれの分しかご飯は貰えない取り決めだった。
だが、父まりさと母れいむはつい、すっきりー!して子供をさらに作ってしまい、新たに4匹の赤ゆっくりが追加された。
それに対する人間の食料配給は、増やしてはもらえなかった。
仕方なく、姉まりさと両親の配分からさらに少しずつを分けて、赤ゆっくり達に食べさせる事にしたが、やはり足りない。
母れいむは自分の餡子を吐いてそれを赤ゆっくりに与えるという献身までしてどうにか子らの命をつないで居たが、
そんなギリギリの生活がいつまでも続くはずもない。
ついにというべきか、姉まりさは自分の食べられるはずのご飯が妹たちに分け与えられるのと、
今まで愛情を独占できていた自分が、親が赤ゆっくりを優先しだした事による不満で騒動を起こし、妹の一匹を殺してしまった。
一家の大黒柱として、悩まない日は一日としてなかったが、今までは家族への愛情ゆえになんとか耐えてきた。
だが、今回ばかりは耐え難い悩みが父まりさを襲っていた。
父まりさを悩ませるものは一つや二つではない。 その一つは、家族の食糧問題だ。
父まりさがおうちを提供してもらって庭に住まわせてもらっている人間から配給されるご飯の量は、
家族が生きていくには足りなすぎる。
元々、父まりさと、母れいむと、今は居ない子まりさ、姉まりさのそれぞれの分しかご飯は貰えない取り決めだった。
だが、父まりさと母れいむはつい、すっきりー!して子供をさらに作ってしまい、新たに4匹の赤ゆっくりが追加された。
それに対する人間の食料配給は、増やしてはもらえなかった。
仕方なく、姉まりさと両親の配分からさらに少しずつを分けて、赤ゆっくり達に食べさせる事にしたが、やはり足りない。
母れいむは自分の餡子を吐いてそれを赤ゆっくりに与えるという献身までしてどうにか子らの命をつないで居たが、
そんなギリギリの生活がいつまでも続くはずもない。
ついにというべきか、姉まりさは自分の食べられるはずのご飯が妹たちに分け与えられるのと、
今まで愛情を独占できていた自分が、親が赤ゆっくりを優先しだした事による不満で騒動を起こし、妹の一匹を殺してしまった。
姉まりさは家を追放され、後に妹らを襲って両親に攻撃されて命を落とす。
だが問題は、それだけでは済まなかった。
だが問題は、それだけでは済まなかった。
姉まりさはしばらくの間、人間におうちを提供されてご飯も与えられ、庭の片隅で生活していたのだが
一家は子まりさが抜けた分、ご飯の配給量が少なくなってしまったのだ。
当然、3匹になったとはいえ赤ゆっくりへの配分は両親の分から分けなければならない。
そのためしばらくは困窮が続いた。 両親は時折庭の草花を食べて、不足分を補う事もあった。
だがそれは、庭の持ち主である人間には許可を得てない行為である。
見つかれば、咎められ制裁を受けるかもしれないと怯えながらの行動でもあった。
一家は子まりさが抜けた分、ご飯の配給量が少なくなってしまったのだ。
当然、3匹になったとはいえ赤ゆっくりへの配分は両親の分から分けなければならない。
そのためしばらくは困窮が続いた。 両親は時折庭の草花を食べて、不足分を補う事もあった。
だがそれは、庭の持ち主である人間には許可を得てない行為である。
見つかれば、咎められ制裁を受けるかもしれないと怯えながらの行動でもあった。
そのうち、赤ゆっくりたちは子ゆっくりに成長した。
そこでまた、事件が起こる。 3匹の子ゆっくりのうち1匹の子まりさ、妹まりさが人間に反抗的な行動をし、制裁されたのである。
幸い命までは取られずに住んだ。 が、結局その子もおうちから追放しなければならなかった。
今回はどちらかというと、人間に強要されて処分を下した感の方が強かった。
今、妹まりさは生前の姉まりさが住まわされていたおうちで単独生活を送っている。
接近禁止を言い渡された父まりさと母まりさは、遠くから妹まりさが毎日苦い草を食んで飢えを凌いでいる姿を見て涙を流している。
だが、助けるのも禁止されているし、何より家族には食料の余裕などもないため助けてあげる事は出来ない。
それに、子が一匹減ったという事で食料配分が少し楽になったというのも事実だった。
両親の分から子れいむ二匹への分を分けてやるのは、さほど難しい事ではない。
父まりさと母まりさがそれぞれ、ほんの少し我慢すればいいだけの話だ。
そして、子れいむ姉妹は大分聞き分けがよく、今までのまりさの子よりは我慢強い所もあった。
そこでまた、事件が起こる。 3匹の子ゆっくりのうち1匹の子まりさ、妹まりさが人間に反抗的な行動をし、制裁されたのである。
幸い命までは取られずに住んだ。 が、結局その子もおうちから追放しなければならなかった。
今回はどちらかというと、人間に強要されて処分を下した感の方が強かった。
今、妹まりさは生前の姉まりさが住まわされていたおうちで単独生活を送っている。
接近禁止を言い渡された父まりさと母まりさは、遠くから妹まりさが毎日苦い草を食んで飢えを凌いでいる姿を見て涙を流している。
だが、助けるのも禁止されているし、何より家族には食料の余裕などもないため助けてあげる事は出来ない。
それに、子が一匹減ったという事で食料配分が少し楽になったというのも事実だった。
両親の分から子れいむ二匹への分を分けてやるのは、さほど難しい事ではない。
父まりさと母まりさがそれぞれ、ほんの少し我慢すればいいだけの話だ。
そして、子れいむ姉妹は大分聞き分けがよく、今までのまりさの子よりは我慢強い所もあった。
ここで、父まりさに冒頭の悩みが持ち上がる。
それは、人間に持ちかけられた取引が発端だった。
それは、人間に持ちかけられた取引が発端だった。
「むーしゃむーしゃ! しあわしぇー!」
「ちあわせ~♪」
「ゆうう、よかったよ! これでちびちゃんたちがおなか空かないですむね!」
「ゆう…そうだね…」
何時もより割合多めに配分された粒状のゆっくりフードのご飯を幸せそうに食べる子れいむたちを見て、
母れいむは何日かぶりに安堵の笑顔を浮かべた。
子供らが飢えずにすむのはとてもゆっくりできる事だ。
それは愛情深い母れいむには、なによりのゆっくりだった。
だが、父まりさは少々浮かない顔だった。 おうちの隅の方をチラチラと見て、気にしている。
その視線の先には、薄汚れたブサイクな子ゆっくり、キモまりさがいた。
母れいむは何日かぶりに安堵の笑顔を浮かべた。
子供らが飢えずにすむのはとてもゆっくりできる事だ。
それは愛情深い母れいむには、なによりのゆっくりだった。
だが、父まりさは少々浮かない顔だった。 おうちの隅の方をチラチラと見て、気にしている。
その視線の先には、薄汚れたブサイクな子ゆっくり、キモまりさがいた。
キモまりさは、人間が養子として寄越した子ゆっくりであり、父まりさと母まりさの子ではない。
当初、父まりさはこの養子押し付けを相当に嫌がった。 誰が自分の子でもない子ゆっくりを育てたいものか。
親が居ないかわいそうな孤児だから面倒を見ろといってもお断りだろう。
特に、野良出身の父まりさと母れいむには、そんな慈善活動をするなんて発想はない。
だいたい、ただでさえ家族はご飯が足りないのだ。 余計な食い扶持を増やす余裕はないのである。
しかし、それに関しては父まりさは随分と下手に、そして婉曲かつ機嫌をうかがうような言い回しで人間に告げた。
元々、配給量は決まってるのに勝手に子供を増やして困窮しているのは父まりさと母れいむの自業自得だし、
住む所とご飯を貰っている立場では強く出られない。
元はといえば、人間の家に不法侵入しようとして制裁され、怪我を負って、お情けで庭に住まわせてもらっている家族なのである。
当初、父まりさはこの養子押し付けを相当に嫌がった。 誰が自分の子でもない子ゆっくりを育てたいものか。
親が居ないかわいそうな孤児だから面倒を見ろといってもお断りだろう。
特に、野良出身の父まりさと母れいむには、そんな慈善活動をするなんて発想はない。
だいたい、ただでさえ家族はご飯が足りないのだ。 余計な食い扶持を増やす余裕はないのである。
しかし、それに関しては父まりさは随分と下手に、そして婉曲かつ機嫌をうかがうような言い回しで人間に告げた。
元々、配給量は決まってるのに勝手に子供を増やして困窮しているのは父まりさと母れいむの自業自得だし、
住む所とご飯を貰っている立場では強く出られない。
元はといえば、人間の家に不法侵入しようとして制裁され、怪我を負って、お情けで庭に住まわせてもらっている家族なのである。
だが、人間は代わりにキモまりさの分のご飯を配給に加える事を条件に出した。
これには、父まりさも母まりさも飛びついた。
配給されるご飯が増えれば、多少なりとも困窮状態が幾分か楽になるからだ。
なあに、養子でしかも汚いキモまりさのご飯は取り上げて、それを自分らの子らに与えればいい。
両親ともそう考え、そして実際にそうした。
ご飯の量が増えて家族が幸せそうにゆっくりご飯を食べている間、キモまりさは俯いて床に涙をポロポロと零したのだった。
これには、父まりさも母まりさも飛びついた。
配給されるご飯が増えれば、多少なりとも困窮状態が幾分か楽になるからだ。
なあに、養子でしかも汚いキモまりさのご飯は取り上げて、それを自分らの子らに与えればいい。
両親ともそう考え、そして実際にそうした。
ご飯の量が増えて家族が幸せそうにゆっくりご飯を食べている間、キモまりさは俯いて床に涙をポロポロと零したのだった。
「ゆぅ… ごはん… ゆぅぅ…」
「よそのこにあげるごはんはないよ! れいむたちがごはんたべるのをそこでみててね!」
キモまりさは自分の分のはずのご飯を取り上げられ、どんなに泣いて訴えても養父母がご飯をくれないので
悲しくて一人孤独にすすり泣いていた。
元々孤児で、優しくしてくれる誰かも愛してくれる誰かもいない。
たった一人きり、公園で暮らしてきたのだ。 意地悪される事も一度や二度ではない。
毎日がゆっくりできない事の連続だった。
悲しくて一人孤独にすすり泣いていた。
元々孤児で、優しくしてくれる誰かも愛してくれる誰かもいない。
たった一人きり、公園で暮らしてきたのだ。 意地悪される事も一度や二度ではない。
毎日がゆっくりできない事の連続だった。
だが、こんな風に目の前で他の誰かが、家族とご飯があって、幸せにゆっくりできていて、自分はそうではないというのを
見せ付けられる心の痛みにはいつまで経ってもなれる事は出来ない。
どうして自分が不幸なのか、どうして自分だけが孤独なのか、そればかりを自問する。
見せ付けられる心の痛みにはいつまで経ってもなれる事は出来ない。
どうして自分が不幸なのか、どうして自分だけが孤独なのか、そればかりを自問する。
そんなキモまりさを、父まりさは何故だかとてもゆっくりできない思いを抱きながら、時折視線を向けていた。
家族はゆっくり出来ている。 子れいむたちはご飯が食べられる。
何も心配する事はないのに、久しぶりにご飯がゆっくりできるのに、理由のわからないモヤモヤが父まりさを悩ませていた。
家族はゆっくり出来ている。 子れいむたちはご飯が食べられる。
何も心配する事はないのに、久しぶりにご飯がゆっくりできるのに、理由のわからないモヤモヤが父まりさを悩ませていた。
「おかあしゃん…さむいよ…さみしいよ……」
星達も凍えるような寒空の下、子まりさはゴミ捨て場にいた。
ゴミ捨て場には食べ物が、わずかだけれどもあった。
毎日汚いゴミの山の中に潜り、食べられるものを探して飢えを凌いだ。
だが、夜になれば凍て付く寒さが子まりさを刺した。
生まれたときから孤児だった子まりさは、もし居たらこんな時に暖めて守ってくれるだろう、母親の存在を求めて泣いた。
ゴミ捨て場には食べ物が、わずかだけれどもあった。
毎日汚いゴミの山の中に潜り、食べられるものを探して飢えを凌いだ。
だが、夜になれば凍て付く寒さが子まりさを刺した。
生まれたときから孤児だった子まりさは、もし居たらこんな時に暖めて守ってくれるだろう、母親の存在を求めて泣いた。
「おかーしゃん…みつけた…!
ゆっくち! ゆっくち…! まりしゃだよ!
いっしょにゆっくちしようにぇ! おかーしゃん!」
ゆっくち! ゆっくち…! まりしゃだよ!
いっしょにゆっくちしようにぇ! おかーしゃん!」
ゴミ捨て場に投げ捨てられた大きな黒いビニールのゴミ袋。
今時、透明でない中身の見えないゴミ袋で捨てる非常識な人間がいなかったら、子まりさはそれに出会わなかっただろう。
自分の黒いお帽子と同じ色をしていて、大きくて、まんまるで…
子まりさはそれを、自分の求めていた母親なのだと思った。 そしてゴミ袋に縋りついて、頬をすーりすーりと擦った。
今時、透明でない中身の見えないゴミ袋で捨てる非常識な人間がいなかったら、子まりさはそれに出会わなかっただろう。
自分の黒いお帽子と同じ色をしていて、大きくて、まんまるで…
子まりさはそれを、自分の求めていた母親なのだと思った。 そしてゴミ袋に縋りついて、頬をすーりすーりと擦った。
「どおしちぇ…お返事してくれにゃいの…?
おかーしゃん…? まりしゃだよ…?
おかーしゃんのこどものまりしゃだよ…! おかーしゃ…」
おかーしゃん…? まりしゃだよ…?
おかーしゃんのこどものまりしゃだよ…! おかーしゃ…」
大きなゴミ袋は何も応えなかった。 声を掛けてくれることもなかったし、ご飯を与えてくれる事もなかった。
ほお擦りしても、ガサガサという音を立てるだけだった。 ただ、そこに聳え立っていた。
それでも良かった。 大きなゴミ袋に寄り添っていれば、夜でも幾らかは寒さから庇ってくれた。
温もりを与えてくれるだけで、子まりさはほんの少しゆっくりできた。
ほお擦りしても、ガサガサという音を立てるだけだった。 ただ、そこに聳え立っていた。
それでも良かった。 大きなゴミ袋に寄り添っていれば、夜でも幾らかは寒さから庇ってくれた。
温もりを与えてくれるだけで、子まりさはほんの少しゆっくりできた。
「ゆぁぁぁぁぁん! おかーしゃん! おかーしゃん!
おかーしゃんをつれてゆかにゃいでぇぇぇぇぇ! まりしゃのおかーしゃんにゃのぉぉぉぉ!」
おかーしゃんをつれてゆかにゃいでぇぇぇぇぇ! まりしゃのおかーしゃんにゃのぉぉぉぉ!」
ゴミ捨て場に回収車がやってきて、積まれたゴミ袋を投げ入れ始めた。
黒いゴミ袋は回収する事が出来ない決まりになっていたので、清掃員の人間は一旦持ち上げてしかめっ面をしたあと、また元の場所に投げ捨てた。
だがそんな事は知らない子まりさは母親が連れて行かれると思って泣き叫ぶ。
その声は、回収車のアイドリングの騒音に掻き消されて清掃員には聞こえなかった。
子まりさは、ゴミ袋の下に押しつぶされた。
黒いゴミ袋は回収する事が出来ない決まりになっていたので、清掃員の人間は一旦持ち上げてしかめっ面をしたあと、また元の場所に投げ捨てた。
だがそんな事は知らない子まりさは母親が連れて行かれると思って泣き叫ぶ。
その声は、回収車のアイドリングの騒音に掻き消されて清掃員には聞こえなかった。
子まりさは、ゴミ袋の下に押しつぶされた。
「ゆっ… ゆっ… おきゃあしゃ…
はっとして父まりさは目を覚ました。
側に寄り添っているのは母れいむで、間には子れいむたちが擦り寄ってゆぴーゆぴーと寝息を立てていた。
ここはおうちの中だった。 ゴミ捨て場ではない。
夢…か、と気付いて、今まで見ていたのが自分の子ゆっくり時代の記憶であると思い出した。
寒くはない。 ダンボールのおうちは冷え込む日でなければ最低限快適だし、はっぱのお布団も敷いてある。
隣にはいつも家族の誰かがいて、温もりを感じる。
寂しかった孤児時代とは違うのだ。 今の自分は、一人きりではない。
ほっとして一息つくと、視界の中にキモまりさが入った。
おうちの隅のほうに蹲って、寒そうに震えている。 寄り添う誰かもいないので、暖めてくれる事もない。
ふん、と鼻を鳴らして、父まりさはもう一度眠りに就こうとした。
側に寄り添っているのは母れいむで、間には子れいむたちが擦り寄ってゆぴーゆぴーと寝息を立てていた。
ここはおうちの中だった。 ゴミ捨て場ではない。
夢…か、と気付いて、今まで見ていたのが自分の子ゆっくり時代の記憶であると思い出した。
寒くはない。 ダンボールのおうちは冷え込む日でなければ最低限快適だし、はっぱのお布団も敷いてある。
隣にはいつも家族の誰かがいて、温もりを感じる。
寂しかった孤児時代とは違うのだ。 今の自分は、一人きりではない。
ほっとして一息つくと、視界の中にキモまりさが入った。
おうちの隅のほうに蹲って、寒そうに震えている。 寄り添う誰かもいないので、暖めてくれる事もない。
ふん、と鼻を鳴らして、父まりさはもう一度眠りに就こうとした。
「………」
「おかーしゃ… まりしゃだよ…」
呟きに目を開けると、声の元はキモまりさの寝言だった。
何の夢を見ながら眠っているのか知らないが、キモまりさの顔を伝う涙は、ゆっくりできる夢を見れているとは思えない。
父まりさは、先ほどの夢を思い出した。 孤児で、ずっと野良として生きてきた自分のゆん生も。
キモまりさも、孤児だ。 母親の温もりなんか、知らないに違いない。 ずっと一人で生きてきたんだろう。
おそらくこれからも。 毎日見つかるか見つからないかわからないご飯を探し、何日も飢えて過ごし、
そして夜に寒くて寂しくても暖めてくれる誰かも居ない。
父まりさもそうだった。
何の夢を見ながら眠っているのか知らないが、キモまりさの顔を伝う涙は、ゆっくりできる夢を見れているとは思えない。
父まりさは、先ほどの夢を思い出した。 孤児で、ずっと野良として生きてきた自分のゆん生も。
キモまりさも、孤児だ。 母親の温もりなんか、知らないに違いない。 ずっと一人で生きてきたんだろう。
おそらくこれからも。 毎日見つかるか見つからないかわからないご飯を探し、何日も飢えて過ごし、
そして夜に寒くて寂しくても暖めてくれる誰かも居ない。
父まりさもそうだった。
父まりさはそっと寝床を離れると、おうちの隅に這って行った。
眠っているキモまりさをそっと小突く。
眠っているキモまりさをそっと小突く。
「ゆぅ… ゆっ?」
「おいで…いっしょにねていいよ」
目を覚ましたキモまりさを自分らの寝床に招き、自分の隣に座らせる。
何を思ってそうしたのか、どうしてそんな事をしたのか、父まりさには理由がわからない。
だが、自分の左となりに我が子らと妻を、右となりにキモまりさを寄り添わせて眠るのは、何故だかとても暖かかった。
そして少しだけ、悩ませていたモヤモヤが晴れたような気がした。
何を思ってそうしたのか、どうしてそんな事をしたのか、父まりさには理由がわからない。
だが、自分の左となりに我が子らと妻を、右となりにキモまりさを寄り添わせて眠るのは、何故だかとても暖かかった。
そして少しだけ、悩ませていたモヤモヤが晴れたような気がした。
翌朝、母れいむは父まりさの申し出に眼を丸くして驚いた。
その日も父まりさは人間に土下座して餌を与えられ、地面から拾い集めておうちの中へと持ち運んだ。
だがその配分を、キモまりさにも分け与えると言いはじめたのだ。
その日も父まりさは人間に土下座して餌を与えられ、地面から拾い集めておうちの中へと持ち運んだ。
だがその配分を、キモまりさにも分け与えると言いはじめたのだ。
「まりさ! よそのこなんかにごはんあげたら、ちびちゃんたちのぶんがすくなくなるでしょお!?
れいむはそんなことしたくないよ! はんたいだよ!
せっかくちびちゃんたちがおなかすかなくなってゆっくりできるのに!」
れいむはそんなことしたくないよ! はんたいだよ!
せっかくちびちゃんたちがおなかすかなくなってゆっくりできるのに!」
「わかってるよ…ちびちゃんたちのごはんはへらすつもりはないよ!
まりさのたべるぶんからさらに分けて、あのこにあげるんだよ!
それならもんくないでしょ?」
まりさのたべるぶんからさらに分けて、あのこにあげるんだよ!
それならもんくないでしょ?」
「そんなことしたら、まりさのたべるごはんがもっとすくなくなっちゃうでしょおおおお!?
ばがなの!? うえじにしたいの!? どおじでそんなごどするのおおおおお!?」
ばがなの!? うえじにしたいの!? どおじでそんなごどするのおおおおお!?」
現在の家族のご飯の配分は、本来キモまりさへの分のご飯(子ゆ1匹分)を子れいむ2匹に等分した上で、
さらに父まりさと母れいむの分から子れいむに分けて、子ら2匹分の量を確保するという計算になっている。
だが、父まりさはその上で、キモまりさに自分の分を分けると言うのである。
そんな事をすれば、父まりさの食べる分はいよいよ少なくなる。
母れいむには理解しがたかった。
さらに父まりさと母れいむの分から子れいむに分けて、子ら2匹分の量を確保するという計算になっている。
だが、父まりさはその上で、キモまりさに自分の分を分けると言うのである。
そんな事をすれば、父まりさの食べる分はいよいよ少なくなる。
母れいむには理解しがたかった。
「まりさはもうきめたんだよ! あのこはこじで、おかーさんがいないんだよ!
まりさもちいさいころは、おかーさんがいなかったよ! あのこがさびしくしてると、ゆっくりできないでいると、
まりさはそれをゆるすことができないんだ! あんこのおくがモヤモヤして、ゆっくりできないよ!
だから、まりさはおちびちゃんたちだけじゃなくて、あのこもまりさのちびちゃんみたいにゆっくりさせてあげることにしたよ!!」
まりさもちいさいころは、おかーさんがいなかったよ! あのこがさびしくしてると、ゆっくりできないでいると、
まりさはそれをゆるすことができないんだ! あんこのおくがモヤモヤして、ゆっくりできないよ!
だから、まりさはおちびちゃんたちだけじゃなくて、あのこもまりさのちびちゃんみたいにゆっくりさせてあげることにしたよ!!」
それは、同情だったのかもしれない。 孤児という同じ境遇が、共感を呼んだのかもしれない。
幼少時代の自分の不幸と孤独をキモまりさにかさね合わせて、キモまりさに優しくしてあげる事で
埋められなかった自分の幼少時代の欠損を、埋め合わせしようとしているのかもしれない。
何にせよ、野良のゆっくりには珍しい事だった。
赤の他人を気遣うなんて発想は、余程恵まれている環境に居るゆっくりでもなければ、滅多にない事なのだから。
幼少時代の自分の不幸と孤独をキモまりさにかさね合わせて、キモまりさに優しくしてあげる事で
埋められなかった自分の幼少時代の欠損を、埋め合わせしようとしているのかもしれない。
何にせよ、野良のゆっくりには珍しい事だった。
赤の他人を気遣うなんて発想は、余程恵まれている環境に居るゆっくりでもなければ、滅多にない事なのだから。
結局、母れいむは折れた。 というより、説得しても無駄だと諦めたのだ。
父れいむの頑固な所はよく知っていたし、子供らへの配分は減らないのだ。
どうせ、自分の分が減ってお腹が空くのに耐えられなくなれば発言を翻してキモまりさの面倒を見ることを投げ出すだろう、とも思った。
父れいむの頑固な所はよく知っていたし、子供らへの配分は減らないのだ。
どうせ、自分の分が減ってお腹が空くのに耐えられなくなれば発言を翻してキモまりさの面倒を見ることを投げ出すだろう、とも思った。
数日がたった。
子れいむ姉妹のうち、姉れいむは不満だった。
耐水性ダンボールのおうちの中で姉妹と共に生まれ育ち、つい子の間まで両親どちらにも愛情を注がれていた。
母れいむは毎日素敵なおうたを歌ってくれたし、父まりさはお外に連れ出して帽子の上に乗せてお散歩してくれた。
姉れいむはどちらかと言えばお父さんっ子で、父まりさの方にくっ付いてよく遊んだ。
妹まりさと父まりさのお腹の上で地震ごっこをしてもらうのが特にお気に入りだった。
だが、最近になって父まりさは妹まりさを追い出し、家族に知らない他所の子まりさを入れた。
子まりさのためにわざわざご飯を用意し、子まりさを隣に座らせて眠り、子まりさに優しく頬すりをし、子まりさも一緒に遊びに連れ出した。
姉れいむのさらに下の、妹れいむはそんなに気にしてないようで、他所の子まりさとも仲良く打ち解けているようだが
あの薄汚くてブサイクな子まりさを、姉れいむはなんとなく好きになれなかった。
なんだか、自分たち「父まりさと母れいむの子」だけで独占できていた両親の愛情を、他所の子に横取りされたような気分になったのだ。
子れいむ姉妹のうち、姉れいむは不満だった。
耐水性ダンボールのおうちの中で姉妹と共に生まれ育ち、つい子の間まで両親どちらにも愛情を注がれていた。
母れいむは毎日素敵なおうたを歌ってくれたし、父まりさはお外に連れ出して帽子の上に乗せてお散歩してくれた。
姉れいむはどちらかと言えばお父さんっ子で、父まりさの方にくっ付いてよく遊んだ。
妹まりさと父まりさのお腹の上で地震ごっこをしてもらうのが特にお気に入りだった。
だが、最近になって父まりさは妹まりさを追い出し、家族に知らない他所の子まりさを入れた。
子まりさのためにわざわざご飯を用意し、子まりさを隣に座らせて眠り、子まりさに優しく頬すりをし、子まりさも一緒に遊びに連れ出した。
姉れいむのさらに下の、妹れいむはそんなに気にしてないようで、他所の子まりさとも仲良く打ち解けているようだが
あの薄汚くてブサイクな子まりさを、姉れいむはなんとなく好きになれなかった。
なんだか、自分たち「父まりさと母れいむの子」だけで独占できていた両親の愛情を、他所の子に横取りされたような気分になったのだ。
父まりさがお帽子に自分たちと、他所の子を並べて乗せているのは嫌だった。
子まりさは下ろしてくれればいいのに、といつも思った。
お腹の上で地震ごっこを、子まりさも交えてやってくれるのは嫌だった。
だから、自分は頼んで別々にやってもらった。
草の上を這っているかたつむりを見つけて観察している時も、父・妹・他所の子の三匹の輪に入りたくなかった。
なので1匹でちょうちょさんを追いかけていた。
それがとても、つまらなく感じた。 なんだか説明の付かないモヤモヤが姉れいむを襲った。
そしてそんな時、妹まりさが居てくれれば、と思った。
あの汚い変な子じゃなくて、仲の良かった妹まりさがいてくれればいいのに。
子まりさは下ろしてくれればいいのに、といつも思った。
お腹の上で地震ごっこを、子まりさも交えてやってくれるのは嫌だった。
だから、自分は頼んで別々にやってもらった。
草の上を這っているかたつむりを見つけて観察している時も、父・妹・他所の子の三匹の輪に入りたくなかった。
なので1匹でちょうちょさんを追いかけていた。
それがとても、つまらなく感じた。 なんだか説明の付かないモヤモヤが姉れいむを襲った。
そしてそんな時、妹まりさが居てくれれば、と思った。
あの汚い変な子じゃなくて、仲の良かった妹まりさがいてくれればいいのに。
妹まりさとは、近づかないように両親にも人間にも言い含められている。
近づいたら、お仕置きをされるのだ。
どうして妹まりさが家を追い出される事にならなきゃいけないのか、姉れいむは理解できなかった。
悪い事をしたからだ、と説明されたが、何が悪いことなのか姉れいむはよくわからなかった。
近づいたら、お仕置きをされるのだ。
どうして妹まりさが家を追い出される事にならなきゃいけないのか、姉れいむは理解できなかった。
悪い事をしたからだ、と説明されたが、何が悪いことなのか姉れいむはよくわからなかった。
だから、時々家族の目を盗んで妹まりさに会いに行った。
手土産にこっそり食べずに隠していたご飯の何粒かを持って。
手土産にこっそり食べずに隠していたご飯の何粒かを持って。
「まりさ! ゆっくりあそびにきたよ!」
「ゆっ!? れいむ、あいたかったよ! ゆっくりしていってね!」
「ゆぅ…うらやましいよ… まりさもおとーさんにあそんでもらいたいよ… おとーさんにあいたいよ…!」
姉れいむの話を聞いた妹まりさは心底寂しげな表情をした。
両親と引き離されてもう何日になるだろう。
近づいたら人間にゆっくりできなくさせられると脅されているので、家族の遊ぶ様子や、歌う様子を遠くから眺めるばかりだ。
家族に嫌われているわけではない、時々心配そうにこちらの様子を遠くから窺っている両親の姿を目にすることも、拍車をかけた。
自分の行動が招いた事とはいえ、逢いたいのに逢えない切なさは日ごとに妹まりさの身を切り刻み、ゆっくりできなくさせる。
おうちの中には自分で集めた小石や木の棒、大きな葉っぱ、何処からか飛んできた綿毛、姉れいむがお土産に持ってきた紙くず、
それに黒いお帽子といった宝物が並べられて、それなりに独身生活に適応しているようだったが、やはりまだ子ゆっくりの身では家族の愛に飢えている。
ひとり立ちするには早すぎるのだ。
それに、妹まりさも元々かなりのお父さんっ子である。 父親の愛情が他所の子に注がれていると聞かされて、張り裂ける思いがした。
両親と引き離されてもう何日になるだろう。
近づいたら人間にゆっくりできなくさせられると脅されているので、家族の遊ぶ様子や、歌う様子を遠くから眺めるばかりだ。
家族に嫌われているわけではない、時々心配そうにこちらの様子を遠くから窺っている両親の姿を目にすることも、拍車をかけた。
自分の行動が招いた事とはいえ、逢いたいのに逢えない切なさは日ごとに妹まりさの身を切り刻み、ゆっくりできなくさせる。
おうちの中には自分で集めた小石や木の棒、大きな葉っぱ、何処からか飛んできた綿毛、姉れいむがお土産に持ってきた紙くず、
それに黒いお帽子といった宝物が並べられて、それなりに独身生活に適応しているようだったが、やはりまだ子ゆっくりの身では家族の愛に飢えている。
ひとり立ちするには早すぎるのだ。
それに、妹まりさも元々かなりのお父さんっ子である。 父親の愛情が他所の子に注がれていると聞かされて、張り裂ける思いがした。
「れいむも、まりさといっしょがいいよ… またいっしょにあそびたいよ!」
「ゆう…でも、まりさはもうにどと、あのおうちにはもどれないよ…にんげんさんがゆるしてくれないよ…」
それはかなわぬ夢である。 強くて恐ろしくて厳しい、庭の主である人間の決定には逆らえない。
妹まりさはつい先日、その怖さを自分でもって思い知っている。
そこで姉れいむは、無い餡子脳を絞って一計を案じた。
妹まりさはつい先日、その怖さを自分でもって思い知っている。
そこで姉れいむは、無い餡子脳を絞って一計を案じた。
「ゆー… ゆっ! いいかんがえがあるよ! まりさと、あのよそのこをおとりかえずるんだよ!」
「ゆっ…? どうやって!?」
姉れいむはひーそひーそと耳打ちして妹まりさに自分の計画を伝えた。
それは一見、上手く行きそうな内容に思えた。
そして姉妹は顔を見合わせ、頷きあい、にっこり笑いあうとゆーっ!と体をちぢこませて「溜め」を作り
次の瞬間ばねのように弾んでその場で同時にジャンプして叫んだ。
それは一見、上手く行きそうな内容に思えた。
そして姉妹は顔を見合わせ、頷きあい、にっこり笑いあうとゆーっ!と体をちぢこませて「溜め」を作り
次の瞬間ばねのように弾んでその場で同時にジャンプして叫んだ。
「「ゆっくりしていってね!!」」
ゴチンゴチン!
おうちの中で思いっきりジャンプした二匹は、仲良く天井に頭を打ち付けて、そのまま落ちてきて目を回したのだった。
「まりさ、いっしょにあそぼうよ!」
「ゆっ…?」
そう言って姉れいむがキモまりさを連れ出したのは次の日のことだ。
いつもどこか自分に対して余所余所しい姉れいむが自分に声を掛け、誘ってくれたのでキモまりさは嬉しく思った。
父まりさに、そして妹れいむには既に仲良くしてもらっている。
家族にだんだん受け入れられている気がする、とキモまりさは思った。
今までは孤児で、寂しく生きてきたけど、最初は少し意地悪もされたけど、こうして少しずつ打ち解けられていけば、
そのうち本当の家族に迎え入れてくれるかもしれない、と期待し始めていた。
いつもどこか自分に対して余所余所しい姉れいむが自分に声を掛け、誘ってくれたのでキモまりさは嬉しく思った。
父まりさに、そして妹れいむには既に仲良くしてもらっている。
家族にだんだん受け入れられている気がする、とキモまりさは思った。
今までは孤児で、寂しく生きてきたけど、最初は少し意地悪もされたけど、こうして少しずつ打ち解けられていけば、
そのうち本当の家族に迎え入れてくれるかもしれない、と期待し始めていた。
父まりさの方を見ると、末のれいむと一緒にお昼寝をしていた。
キモまりさの分のご飯を分けるために最近は食事量が少なく、その上子供たちと一緒に遊んでいるために父まりさも疲労が溜まっている。
キモまりさも父まりさのそんな気遣いを感じ取っているので、お昼寝をさせてあげて、自分と姉れいむとで遊ぶ事にした。
キモまりさの分のご飯を分けるために最近は食事量が少なく、その上子供たちと一緒に遊んでいるために父まりさも疲労が溜まっている。
キモまりさも父まりさのそんな気遣いを感じ取っているので、お昼寝をさせてあげて、自分と姉れいむとで遊ぶ事にした。
「ゆっ、ゆっ! れーみゅ、どこまでいくの?」
「こっちだよ! こっちについてきてね!」
姉れいむはそうやってキモまりさを父まりさたちから遠くへ、庭の隅のほうへ、と招き寄せる。
キモまりさは疑いもせずに付いて行った。 ただ少し、姉れいむが跳ねるのが早いな、と思った。
気付けば、おうちから大分離れてしまっている。
庭の草も少々背の高い、子ゆっくりにとってはちょっとした茂みの様な場所に入っていた。
キモまりさは少し心配になり始め、前を行く姉れいむの後姿に呼びかける。
キモまりさは疑いもせずに付いて行った。 ただ少し、姉れいむが跳ねるのが早いな、と思った。
気付けば、おうちから大分離れてしまっている。
庭の草も少々背の高い、子ゆっくりにとってはちょっとした茂みの様な場所に入っていた。
キモまりさは少し心配になり始め、前を行く姉れいむの後姿に呼びかける。
「ゆ…れーみゅ、あんまりとおくにいっちゃら、みんにゃしんぱいするよ?」
「だいじょうぶだよ! こっちには、れいむのおねーちゃんがいるからね!」
姉れいむがキモまりさの方を振りかえってニッコリわらった次の瞬間、茂みの中から黒い何かが飛び出して、キモまりさを突き飛ばした。
「おねーちゃ…? ゆーっ!?」
突き飛ばされ転がされたキモまりさは唐突な事に何が起こったのかわからず、目を回す。
気が付いて起き上がったときには、自分の頭の上に大事なお帽子がないことに気が付いた。
気が付いて起き上がったときには、自分の頭の上に大事なお帽子がないことに気が付いた。
「ゆっ…まりしゃのおぼうち…! おぼうち…! ゆゆっ!?」
「やったねまりさ! うまくいったね!」
「ゆふん! これでまりさはまた、おとーさんのこだよ!」
お帽子を探して辺りを見回すキモまりさが目にしたのは、自分のお帽子を被っている見知らぬ子まりさと、
それを喜んでいる姉れいむの姿だった。
キモまりさは、自分のお帽子を奪われたのだ、姉れいむに騙されたのだ、という事を理解した。
それを喜んでいる姉れいむの姿だった。
キモまりさは、自分のお帽子を奪われたのだ、姉れいむに騙されたのだ、という事を理解した。
「まりしゃのおぼうちぃぃぃぃ! かえしちぇよぉぉぉぉ!
どおしちぇこんにゃことしゅるのぉぉぉぉ!?」
どおしちぇこんにゃことしゅるのぉぉぉぉ!?」
「ゆー! かえさないよ! このおぼうしで、まりさはおうちにもどるんだよ!
そしたらまた、おとーさんとおかーさんとゆっくりできるよ!」
そしたらまた、おとーさんとおかーさんとゆっくりできるよ!」
「おぼうしのない、しらないこはゆっくりできないね! ちかづかないでね!
いーきみだよ! れいむたちのおとーさんをとろうとするからだよ! このどろぼーねこ!!」
いーきみだよ! れいむたちのおとーさんをとろうとするからだよ! このどろぼーねこ!!」
泣きながら猛然と抗議し、跳ねて向かってゆくキモまりさだったが、二匹に阻まれて取り返すことは適わない。
逆に、体当たりを受けて転がされ、痛みと帽子を盗まれた悲しみに泣き喚くしかできなかった。
そんなキモまりさを、姉れいむと妹まりさはニヤニヤしながら眺める。
逆に、体当たりを受けて転がされ、痛みと帽子を盗まれた悲しみに泣き喚くしかできなかった。
そんなキモまりさを、姉れいむと妹まりさはニヤニヤしながら眺める。
「ゆぇぇぇぇぇん! まりしゃのおぼうち…! おぼうち…!」
「…うるさいよ れいむ、こいつどうしようか? おぼうしとったら、ようずみでしょ?」
「ゆーん、うざいからだまらせることにするよ! ゆんっ!」
「ゆぴぃぃぃぃぃっ!?」
夕暮れ、父まりさと末れいむが目を覚ます頃、姉れいむとキモまりさに成りすました妹まりさはおうちまで戻ってきた。
二匹とも心なしか、弾んだ表情をしている。 歌まで歌って、上機嫌だった。
二匹とも心なしか、弾んだ表情をしている。 歌まで歌って、上機嫌だった。
「ゆっゆっゆ~♪」
「ゆーっくりして~いってね~♪」
「ゆっ! おちびちゃんたち! どこいってたの!? もうすぐよるだからゆっくりおうちにかえろう…ね…
ゆゆ…?」
ゆゆ…?」
こちらへ跳ねてくる二匹を見つけた父まりさは、まだウトウト目の末れいむをお帽子の上に乗せて声を掛けた。
が、言葉の語尾が疑問系に変わる。
そんな父まりさの様子を気に留めもせず、姉れいむは上機嫌で応えた。
キモまりさになりきっている妹まりさもにこやかに言葉を合わせる。
が、言葉の語尾が疑問系に変わる。
そんな父まりさの様子を気に留めもせず、姉れいむは上機嫌で応えた。
キモまりさになりきっている妹まりさもにこやかに言葉を合わせる。
「ゆっ! まりさとゆっくりあそんでたよ! おとーさん、くらくなるまえにおうちにかえろうね!」
「ゆっ、たのしかったよ! はやくおかーさんのおうちにかえろうね!」
父まりさの片眉が釣りあがる。
何となく、目の前の二匹のちびちゃんだちに、違和感を感じたのだ。
それが何なのか、父まりさにはよく解らない。 だが、どうにもゆっくりできない気がする。
気になって、父まりさは二匹の子ゆっくりをまじまじと見つめた。
何となく、目の前の二匹のちびちゃんだちに、違和感を感じたのだ。
それが何なのか、父まりさにはよく解らない。 だが、どうにもゆっくりできない気がする。
気になって、父まりさは二匹の子ゆっくりをまじまじと見つめた。
「ゆ…? おとーさん、どうしたの? れいむのかおになにか付いてる?」
冷や汗を流しながら、れいむは父の顔を見返す。
ゆっくりはお帽子やリボンで個体認識をしている。 それを取り替えれば、家族でも個体の見分けが付かなくなる。
れいむをまりさ、まりさをれいむと思う事だって簡単に起こる。
お帽子やリボンの無い子がいたら、もっと大変だ。
親子同士でさえ相手が誰なのか判らない上に、お飾りが無いのはゆっくりできないと言って、攻撃される。
でも大丈夫、妹まりさはちゃんとキモまりさから奪ったお帽子を付けている。
父まりさは妹まりさをキモまりさだと思うはずだ。 そうすれば、妹まりさはまた家族としておうちの中に入れてもらえる…
ゆっくりはお帽子やリボンで個体認識をしている。 それを取り替えれば、家族でも個体の見分けが付かなくなる。
れいむをまりさ、まりさをれいむと思う事だって簡単に起こる。
お帽子やリボンの無い子がいたら、もっと大変だ。
親子同士でさえ相手が誰なのか判らない上に、お飾りが無いのはゆっくりできないと言って、攻撃される。
でも大丈夫、妹まりさはちゃんとキモまりさから奪ったお帽子を付けている。
父まりさは妹まりさをキモまりさだと思うはずだ。 そうすれば、妹まりさはまた家族としておうちの中に入れてもらえる…
が、しかし
「ゆ…? ゆゆ…? ゆゆゆっ!?」
父まりさの、子を思う愛情と絆は
「なんで…どおして… どういうごどなのお!?」
並大抵のものではなかったようだ。
「どおじでまりさのちびちゃんが、あのこのおぼうしかぶってるのおおおおおお!?
というか、あのごはどごいっだのおおおおおお!?」
というか、あのごはどごいっだのおおおおおお!?」
「ゆゆゆっ!? ま、まりさはまりさじゃないよ!! まりさだよ!!」
「そうだよ、おとーさん! まりさはまりさじゃないよ! おぼうしをおとりかえなんか、してないよ!?」
「うそつくなあああああ!! おとーさんは、じぶんのちびちゃんのみわけがつかないような、ふしあなさんじゃないよ!
おぼうしがなかったり、とりかえっこしてても、ちゃんとじぶんのちびちゃんがだれなのかぐらいわかるよ!!
みそこなわないでね!! ぷんぷん!!」
おぼうしがなかったり、とりかえっこしてても、ちゃんとじぶんのちびちゃんがだれなのかぐらいわかるよ!!
みそこなわないでね!! ぷんぷん!!」
早くも擬装を見破られてしまった姉れいむと妹まりさは目をまん丸に見開いて驚愕し、うろたえた。
ゆっくりの中には、ごく近しい間柄ならば帽子が無かったり、交換しててもちゃんと個体認識ができる場合もある。
父まりさの場合、それに該当するようだった。
全く計算違いの事態に、姉れいむと妹まりさは計画が崩れ去ってしまい、右往左往する。
ゆっくりの中には、ごく近しい間柄ならば帽子が無かったり、交換しててもちゃんと個体認識ができる場合もある。
父まりさの場合、それに該当するようだった。
全く計算違いの事態に、姉れいむと妹まりさは計画が崩れ去ってしまい、右往左往する。
「ゆうううううう!? どうするの、どうしゅるのれいみゅううううう!!
おとーしゃんにばれちゃったよおおおおお!!」
おとーしゃんにばれちゃったよおおおおお!!」
「わがんないよおおおおお!! どおじでおどーざんはまりさのごどわがるのおおおおお!?」
その時、外の騒ぎを聞きつけて母れいむもやって来た。
「ゆっゆっ! どうしたの、まりさ!? おちびちゃんたち!?
ゆ……? ゆわあああああああ!? どおじでれいむのおちびちゃんが、まりさがここにいるのおおおお!?
なんであのきたないこのおぼうじなんかかぶっでるのおおおおおおおお!? なんなのごれはああああ!!」
ゆ……? ゆわあああああああ!? どおじでれいむのおちびちゃんが、まりさがここにいるのおおおお!?
なんであのきたないこのおぼうじなんかかぶっでるのおおおおおおおお!? なんなのごれはああああ!!」
母れいむも、お帽子に関係なく子供の識別が出来るようだ。
姉れいむと妹まりさは口をあんぐり開けて硬直し、父まりさは憤慨し、母れいむは驚愕のあまりパニックを起こし始め、
末のれいむは父まりさのお帽子の上で「ゆ~ん、もうたべられにゃいよ」とまどろんでいる。
姉れいむと妹まりさは口をあんぐり開けて硬直し、父まりさは憤慨し、母れいむは驚愕のあまりパニックを起こし始め、
末のれいむは父まりさのお帽子の上で「ゆ~ん、もうたべられにゃいよ」とまどろんでいる。
「…おい、何の騒ぎだ?」
後方頭上から掛けられた声に父まりさが振り返り、見上げると人間さんが腕組みをしてゆっくり一家を見下ろしていた。
「ゆぇぇぇぇぇん! こわかっちゃよぉぉぉぉぉ!!」
数分後、キモまりさは無事に閉じ込められていた妹まりさのおうちから救出され、すぐさま父まりさのお腹にポスンと飛び込んだ。
父まりさは、キモまりさにもう大丈夫だよ、と優しく声を掛ける。
父まりさは、キモまりさにもう大丈夫だよ、と優しく声を掛ける。
「ゆっ! しょーだ、まりしゃのおぼうち! おぼうち…!」
「ほら、お前のお帽子だ」
一安心してお帽子の事を思い出したキモまりさの頭に、人間がそっとお帽子を載せてやる。
数時間ぶりに大事なお帽子と再会したキモまりさは「ゆぇぇぇぇん!」と歓喜の涙を流した。
一方、母れいむの足元で並んでうなだれているのは今回の事件の主犯である、姉れいむと妹まりさ。
特に妹まりさは以前自分が起こした騒動の経験から、今度はどんな制裁が来るのかで恐ろしいのか
ガクガクと震え、しーしーを軽く漏らしている。
はあ、とため息一つついて、人間はゆっくりの家族を見回した。
数時間ぶりに大事なお帽子と再会したキモまりさは「ゆぇぇぇぇん!」と歓喜の涙を流した。
一方、母れいむの足元で並んでうなだれているのは今回の事件の主犯である、姉れいむと妹まりさ。
特に妹まりさは以前自分が起こした騒動の経験から、今度はどんな制裁が来るのかで恐ろしいのか
ガクガクと震え、しーしーを軽く漏らしている。
はあ、とため息一つついて、人間はゆっくりの家族を見回した。
「…さて、だいたいの経緯は把握したが。 おい、子まりさ」
「ひゃいいいいいいい! ごべんなじゃい! ごべんなじゃい! まりしゃがわりゅがったでずぅぅぅぅ!!
ゆるじでぐだじゃいぃぃぃ!! もうでごぴんどちくちくはいやでずぅぅぅぅ!!」
ゆるじでぐだじゃいぃぃぃ!! もうでごぴんどちくちくはいやでずぅぅぅぅ!!」
「別に今回は俺に刃向かったわけじゃないから、俺からの罰は無いぞ。
だが、一つ聞きたい事がある。 おまえ、両親に逢いたかったからこんな事をしたんだよな?
この孤児まりさのお帽子を奪って成りすませば、おうちに入れると。
まあ、親まりさがこいつを気に入って可愛がってたからな…」
だが、一つ聞きたい事がある。 おまえ、両親に逢いたかったからこんな事をしたんだよな?
この孤児まりさのお帽子を奪って成りすませば、おうちに入れると。
まあ、親まりさがこいつを気に入って可愛がってたからな…」
「しょうでずぅぅぅ!!」
「でも、お前…お前の母親は、孤児まりさを嫌ってたのは考えたか?
父親には、孤児まりさと認識されて可愛がってもらえるかもしれないけど、
母親には、お前はお前として認識されなければ、冷たくされるだけだと思うぞ?
そういう事は考えなかったか?」
父親には、孤児まりさと認識されて可愛がってもらえるかもしれないけど、
母親には、お前はお前として認識されなければ、冷たくされるだけだと思うぞ?
そういう事は考えなかったか?」
人間にそう指摘され、妹まりさと姉れいむは揃ってポカンとしてあっけに取られた表情をする。
完全に、考えの埒外だったようだ。 はあ、と人間はまたため息を付く。
計画した姉れいむも、聞いた妹まりさも、成りすましで父まりさには受け入れてもらえても母れいむにはそうでない、
というぐらいの事さえ思考が及ばなかったようだが、所詮はゆっくりの餡子脳、それも子ゆっくりの知恵だ。
そんなものと言えばそんな物かもしれない。
完全に、考えの埒外だったようだ。 はあ、と人間はまたため息を付く。
計画した姉れいむも、聞いた妹まりさも、成りすましで父まりさには受け入れてもらえても母れいむにはそうでない、
というぐらいの事さえ思考が及ばなかったようだが、所詮はゆっくりの餡子脳、それも子ゆっくりの知恵だ。
そんなものと言えばそんな物かもしれない。
「大体、家には入れるようになるかもしれないが、成りすましで入れたんじゃあくまでも、成りすましだ。
おまえ自身として家族に迎え入れられるわけじゃない。
そこの所を……まあ言っても理解できないか」
おまえ自身として家族に迎え入れられるわけじゃない。
そこの所を……まあ言っても理解できないか」
「おにーさん! でもれいむは、ちびちゃんたちのことを、ちゃんとわかるよ!
おぼうしとりかえても、まちがえたりしないよ!!」
おぼうしとりかえても、まちがえたりしないよ!!」
人間は母れいむの主張はとりあえず手で制して、言葉を続けた。
「ああ、だからこの計画は最初から成功するはずが無かったんだろうよ。
成功しても、それは幸せとはいえない。 むしろ失敗して正解だったかもな。
あと、孤児まりさを、お前のおうちに閉じ込めておいても、俺は俺で毎日餌をやりに来るんだからそっちでバレるだろう。
だからその選択も失敗だ。 結果的には、孤児まりさが殺されてなくて良かったと言えるが」
成功しても、それは幸せとはいえない。 むしろ失敗して正解だったかもな。
あと、孤児まりさを、お前のおうちに閉じ込めておいても、俺は俺で毎日餌をやりに来るんだからそっちでバレるだろう。
だからその選択も失敗だ。 結果的には、孤児まりさが殺されてなくて良かったと言えるが」
「ほんとだよ…そうなってたらゆっくりできなくなってたよ…!」
父まりさはそう言って、姉れいむと妹まりさをキッと睨みつける。
二匹とも、父親の視線と表情から逃れるようにして顔を背けた。
代わりに母れいむが心配そうな顔を人間に向ける。 れいむの懸念は一つだった。
こんな事をしでかした子ゆっくりたちへの処分である。
二匹とも、父親の視線と表情から逃れるようにして顔を背けた。
代わりに母れいむが心配そうな顔を人間に向ける。 れいむの懸念は一つだった。
こんな事をしでかした子ゆっくりたちへの処分である。
「それで、あの…おにーさん…ちびちゃんたちは…」
「言っただろ、今回俺は何もされて無い。 だからお前らが決める事だ。
まあ、今までどおりってわけにも行かないだろう。 親まりさは、俺との取引どおり孤児まりさを預かっただけだ。
そして子ゆっくりどもがやったのは、家庭内不和。 どうするかはお前らが話し合って決めろ。
まあ、今までどおりってわけにも行かないだろう。 親まりさは、俺との取引どおり孤児まりさを預かっただけだ。
そして子ゆっくりどもがやったのは、家庭内不和。 どうするかはお前らが話し合って決めろ。
でも、だいたいわかってるよな? どうするのか」
「「ゆう…!」」
父まりさと母れいむは、同時にがっくりと首(?)を下ろした。
結局の所、この家族は分裂してしまった。
姉れいむは例によっておうちを追放され、妹まりさと一緒に生活する事に決まった。
妹は家族と再び住みたがっていたし、姉も仲良しの妹と一緒に居られて幸せだろう。
もちろん、ご飯の配給は無いので自分らで雑草を集めて食べるしかない。
本当は、妹れいむは家族との接触禁止を破ったのでその処分を下さなくてはならないのだが、
人間はあえて目を瞑って忘れたふりをした。
姉れいむは例によっておうちを追放され、妹まりさと一緒に生活する事に決まった。
妹は家族と再び住みたがっていたし、姉も仲良しの妹と一緒に居られて幸せだろう。
もちろん、ご飯の配給は無いので自分らで雑草を集めて食べるしかない。
本当は、妹れいむは家族との接触禁止を破ったのでその処分を下さなくてはならないのだが、
人間はあえて目を瞑って忘れたふりをした。
母れいむは、子らが二匹も自分らから引き離されて苦しい単独生活をさせられなければならなくなった原因を
父まりさと、キモまりさに求めたために、夫婦仲がこじれてしまい、離婚という事になった。
今は、親権を主張して勝ち取った末の子れいむと一緒に、人間から別のおうちを与えられて庭の離れた所に棲んでいる。
父まりさとの接触禁止は特に無いが、自分から近づきたいとは思っていない。
ご飯の配給は自分のだけなので、子と分け合っているようだ。
なお、末の子れいむは父まりさとキモまりさの元にちょくちょく通っている。
それを母れいむはあまりいい顔をしていないようだが…
父まりさと、キモまりさに求めたために、夫婦仲がこじれてしまい、離婚という事になった。
今は、親権を主張して勝ち取った末の子れいむと一緒に、人間から別のおうちを与えられて庭の離れた所に棲んでいる。
父まりさとの接触禁止は特に無いが、自分から近づきたいとは思っていない。
ご飯の配給は自分のだけなので、子と分け合っているようだ。
なお、末の子れいむは父まりさとキモまりさの元にちょくちょく通っている。
それを母れいむはあまりいい顔をしていないようだが…
父まりさとキモまりさは、元のおうちのまま2匹で仲良くやっている。
当初、全く予想が付かなかった事だが、父まりさが自分の子でも無い孤児に対して母性を表すという意外な結果になった。
情にほだされたのか。 孤児同士気の通じる所があったのか。
あるいは、まったく利己的な感情で、親の愛を受けられなかった自分の代替としてキモまりさに愛情を注いでいるのか。
それはわからない。
ただ、ご飯の配給は父まりさとキモまりさの分で、足りないという事も無い。
一番恵まれている組み合わせだろう。
当初、全く予想が付かなかった事だが、父まりさが自分の子でも無い孤児に対して母性を表すという意外な結果になった。
情にほだされたのか。 孤児同士気の通じる所があったのか。
あるいは、まったく利己的な感情で、親の愛を受けられなかった自分の代替としてキモまりさに愛情を注いでいるのか。
それはわからない。
ただ、ご飯の配給は父まりさとキモまりさの分で、足りないという事も無い。
一番恵まれている組み合わせだろう。
そして、キモまりさは最近、父まりさの事を「おかーしゃん」と呼び始めたようだ。
父まりさもまんざらでも無いようで、これからは母まりさとでも改称した方がいいだろうか?
しかし、この関係がいつまでも続くという保障もまた、無い。
父まりさもまんざらでも無いようで、これからは母まりさとでも改称した方がいいだろうか?
しかし、この関係がいつまでも続くという保障もまた、無い。
ゆっくりの幸せや家族愛なんて、容易に壊れてしまうものだから。
挿絵:M1