ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2371 金バッジの価値 前編
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ankoss
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『金バッジの価値 前編』 23KB
虐待 観察 自業自得 差別・格差 実験 ペットショップ 都会 もう短くするのは諦めた
・いつも通り過去作品の登場人物や世界観が出ますが読んでなくても大丈夫です。
「おねがいだよおおおお!れいむをかいゆっくりにしてねえええええ!
れいむはきんばっちさんだよおおおおおお!えらばらたゆっくりなんだよおおおお!
ゆああああ!どじでむしするのおおおおおおおお!」
町を歩いていると、道端で必死に自分を飼いゆっくりにしてくれと叫んでいるボロボロのれいむが目に入った。
何やら自分は金バッチゆっくりであるとわめいているようだ。
そして、なるほど。確かにその言葉に違わず、叫んでいるれいむのお飾りのリボンには、金色に光るバッジが付いている。
どうやらあのれいむが金バッジだというのは本当のようだ。
だがしかしそんな金バッチれいむを、ある人は完全に無視し、またある人は不快な顔をしながら通り過ぎ、
またある人はやや気の毒そうな顔をしつつもやはり無視して素通りしていく。
「なんでええええ!れいむはきんばっじなのにいいいいいい!
れいむはかちのあるゆっくりなんだよおおおおお!きんばっちはたいせつにしなきゃいけないんだよおおおお!
ゆがあああああ!れいむをかいゆっくりにして、ゆっくりさせろおおおおおお!」
なおも騒ぎ続けるれいむ。
そう、たしかにれいむの言うとおり、金バッジゆっくりが異様なまでにもてはやされ、その価値がはね上がった時期は確かにあった。
だがそれも今は昔の話だ。
今ではたとえ金バッチゆっくりだったとしても、それが無条件で優秀で価値のあるゆっくりの証明とはならないのだ。
そしてその事実は、ちょっとゆっくりに詳しい人ならばもはや常識とさえいえる。
だからあのれいむが自身を金バッジだとアッピールすることは、まったくのムダなのだ。
「ゆううう!どじでえええええ!
……ゆゆ!おにいさん!れいむをかいゆっくりにしてくれるのおおおおおお!」
と、そんなことを考えながられいむを眺めていると、なんと突然振り向いたれいむと偶然目が合ってしまった。
そして、何を勘違いしたのか私の方に向かって飛び跳ねてくるれいむ。
変にからまれても面倒だと思った私は、くるりと方向転換をし、さっさと先を急ぐ事にする。
「ゆがああああああ!どこにいくのおおおおおおおお!
れいむをかいゆっくりにしてくれるんじゃなかったのおおおおおお!
まっでねえええええ!れいむはきんばっじいいいいいいい!
かいゆにし……、ゆべえええ!いだいいいい!」
必死に追いかけてこようとしたれいむだが、どうやら盛大にスッ転んだようだ。
まったく、よく何もないところで転べるものだ。恐らくあのれいむは室内飼いメインで育てられ、ろくに長距離移動したことすらないのだろう。
だから少し跳ねただけで転んでしまうのだ。わかってはいたことだが、あの様子では恐らくれいむの金バッジランクはCかDだろう。
いや、もしかしたら販売価値無しのEランクなのかもしれない。
処分されるところを逃げてきたと考えれば、金バッチが付けっぱなしになっているのも納得できる。
となるとあのれいむはそこそこの年齢の可能性もあるわけだ。まあどうでもいいことだが。
そんなことを考えながら歩いているとやがて私が目指している目的地が見えて来た。
その場所とは大型のペットゆっくり専門店。
しかし私は別にペットゆっくりを買いにきた客というわけではない。
では何故店に入る必要があるのか?答えは簡単だ。
この店は私の店だからだ。私はゆっくり専門のペットショップの店長なのだ。
「よぉ!店長!景気はどうだい?」
所用でバイトに任せていた店内に入ると、見知った客が私に手を上げ挨拶してきた。
「ああ。まあボチボチやってますよ」
そんな男に対し、私は適当に答える。
この挨拶してきた男の素性は、ゆっくりを専門にあつかっている国営機関の人間だ。
私は仕事柄、こういった立場の人たちとも結構付き合いがある。
特彼ともう一人の女性には、ペットショップを開く際には随分と世話になったりしたものだ。
「今日はまたいつものゆっくりフードをお買い上げですか?」
私は質問する。
この男は、だいぶ前にゆっくりぱちゅりーを飼うことになったらしく、それ以来たまに私の店にゆっくりフードを買いに来ているのだ。
最近の企業物のゆっくりフードは、味に変な細工をしてあり、一度そのゆっくりフードを食べたら、他のものを受け付けなくなるような悪質な物が多い。
その点、私の店の自家製ゆっくりフードは、自慢じゃないが無添加、無着色で健康にも安全安心な代物だ。
ゆっくりのプロである男のお眼鏡にかなった一品というわけだ。
「ああそうね。いつものを二つもらうよ」
「二つ?あまり買い置きは、おすすめできませんよ?」
そう私は注意する。
私の作っているゆっくりフードは、あまり日にちが持たないという欠点がある。
そのため、注意書きとして、なるべくはやくご賞味下さいと箱にでかでかと書いてある。
そのことを男が理解してないはずはないのだが。
「うん、わかってる。いや、実はもう一匹増えたもんでね」
「へえそうだったんですか。ちなみにどの種族のゆっくりを飼うことになったんですか?」
「ああ、ぬ……じゃなかった。ええっと、その、れいむ……かな」
何となく歯切れが悪そうに言う男。この男にしては珍しいことだ。
ひょっとしたらなにか事情があるのかもしれない。
だがまあ、深く突っ込むのは止めておこう。こっちは売り上げが増えて、悪いことは一つもないのだから。
「そういえばさ…」
話題を変えるように男がしゃべりだす。
「最近の飼いゆっくり市場はどんな感じなんだ?今ではもうだいぶ落ち着いてきたのか?」
男はカウンターに肘をつく。
「ええ、まあだいぶ安定してきましたね。一時期はほんと酷かったですから。
その辺の野良や野生と大差ないような金バッチゆっくりが量産されたりして、ほんと滅茶苦茶でした。
でも今じゃそういうのはほとんどなくなってきましたね。
消費者側が賢くなって、クズみたいな金バッチはすぐ雑誌とかで酷評されるからほとんど市場に出回らなくなったんです。
まあ、たまに素人さんが間違えて、質の悪い金バッチを買ったりしてしまうことはあるらしですけど」
「ああ、うん。そうみたいね」
男は心当たりがあるのか、やや遠い目をする。
「私の店ではそういった品質の悪いゆっくりは、一切入荷しないようにしてるんです。
でもそれだとどうしても、金バッジの入荷量が限られてしまいましてね。今も丁度、店内では銀バッチしかい状況なんですよ。
どうです?なんとか貴方とのところの金バッジゆっくりを回して貰えませんかね?」
だめもとで私は男にお願いしてみる。
「そりゃ無理だな。飼いゆっくりは俺の担当じゃないし、ウチの連中はそういうことにはやたら厳しいんだよ。
他のところでは割とてきとーなのにな」
そう男にきっぱりと断られてしまう。
まあ、多分そう言われるだろうと思って、対して期待はしてなかった。
国営機関の金バッジゆっくりは、いつだって品薄状態だ。ウチは先日入荷したばかりだから、
次の順番が回ってくるまで数ヶ月かかるだろう。
その間は何とか他の企業の金バッジゆっくりで間に合わせなければならない。
企業の金バッジは安価だが優秀な個体の見極めが非常に難しい。まったく骨の折れる仕事だ。
そんな風に憂鬱な気分になっていると、男が立ち上がり、
「そんじゃま、そろそろ俺は行くわ。また森の群れの視察回りしなきゃならないからさ」
「あ、はい。ありがとうございました。またのおこしをお待ちしています」
私はそういっておじぎをする。
男が会計を済ませ、カウンターを離れようとしたその時、ドン!という鈍い音が聞こえた。
「?」
私は疑問に思い、音のした方へ視線を向けてみる。
すると何と、私の店のゆっくりが外に向けて展示してあるショーウィンドに一匹の野良れいむが体当たりしているではないか。
「ーーーー!ーーーー!」
れいむは凄まじい形相で何事か叫びながらドン!ドン!と体当たりを続けている。
ショーウィンドの中にいるゆっくりたちは、野良れいむの尋常ではない様子にすっかり怯えてしまっているようだ。
というかあの野良れいむ、よく見るとさっき飼いゆっくりにしてくれてと叫んでいた金バッジの奴じゃないか?
どうやら私は後をつけられていたらしい。まったくなんてことだ。
ひょっとすると、あの金バッジ野良れいむの頭の中では、既に私が飼い主ということになっていて、
このペットショップを自分のおうちだと思い込んでいるのかもしれない。
頭の悪いゆっくりは、しばしばそういった突拍子のない自分に都合のいい発想、妄想をよくするのだ。
まあ真相のほどはよくわからないが、きっとろくな理由ではないことは確実だろう。
「なんじゃありゃ」
私の隣にいた男が呟く。
それは私が聞きたい。本当になんじゃありゃだ。
野良金バッジれいむがどれだけ体当たりしても、ショーウィンドが破られることは絶対にありえないだろう。
だが中にいる店のゆっくりが怯えている以上、放っておくわけにはいかない。
「さっき町で見かけた野良が、どうやら私についてきてしまったみたいです。ちょっと追い払ってきますね」
「なるほどそういうことか。じゃあ、オレが適当に処理しておくわ」
カウンターを離れようとする私を手で制し、出口へ向かってく男。
男が行ってくれるなら大丈夫だろう。彼はゆっくりのプロだ、きっと適切な処理をしてくれるはずだ。
私はフゥと、安堵の息を吐き、カウンターに持たれかかる。
「まったく近頃は本当に元金バッジの野良ゆが増えたもんだ。一昔前はこんなことなかったのに…」
思わずそう私はぼやくのであった。
昔々の話。
ペットゆっくりというものが認知され始めた初期の初期の頃の話。
その時期には、ゆっくのバッジといえば一つしか存在しなかった。すなわち国のゆっくり専門機関が発行するバッジのことである。
これらのバッジは、一応国が発行しているものであり、万一間違いがあってはならないということで、
バッジの審査は、ゆっくりのプロともいえる者が厳しい目で厳重に行っていた。
特に金バッチの飼いゆっくりともなると、難易度の高い試験を幾つもクリアしなければならず、
その品質は文句なしに最高ということができた。
そして、国有機関が売り出すペットゆっくりが非常に優秀だったことや、
まだその当時はペットゆっくり自体が物珍しかったことから、ペットゆっくりの需要は徐々に増えてくことになっていった。
需要あるところに供給あり。ゆっくりは新たなビジネスチャンスに繋がるということを知った各企業たちは、
こぞってペットゆっくり市場に参入を始めた。
何せゆっくりの元手は「ただ」みたいなものなのだ。
そんなゆっくりたちに国営機関の金バッチというものが付属するだけで、高値で売ることが出来る。
しかも需要が高まってきており、出せば即完売といった状況だ。こんなおいしい話に企業が飛びつかないわけがない。
そんなわけで各企業間では如何にして時間と労力を費やさずに、国営機関の金バッチを取得できるゆっくりを量産できるかという試みが一斉に始まったのであった。
さて、所変わってここはとある施設の一室。
「ゆっくりしていってね!」
「「「「「ゆっくちしていっちぇね!!!」」」」」
一匹の大きな身体のゆっくりれいむの呼びかけに対して、複数の小さな身体の赤ゆっくりたちが元気よく応える。
言うまでもなく、親ゆっくりと、赤ゆっくりの挨拶の風景であろう。
だがしかし、一件ありきたりなように見えるこの光景は、野生ではまず起こりえないことであった。
何故なら、親れいむの呼びかけに応える赤ゆっくりたちの種族がてんでばらばらだったからだ。
通常ならばゆっくりの子どもは、自分とつがいの二種類しかいないはずである。
しかし、いま親れいむの前で元気よく返事をしているのゆっくりたちの種類はれいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょんと、
まあ要するに基本種と呼ばれている全てのゆっくりが揃っていた。
また、その総数も一介の野生の家族が育てるにしては多すぎる。全種族あわせて30匹はいるだろう。
いくら多産のゆっくりといえこの数は多すぎる。どう考えても食料不足に陥るのは必至と言える状況である。
にも関わらず、親ゆっくりをはじめとする全てのゆっくりたちは、にっこり笑顔で、ぷっくりまん丸と程よい体型を維持している。
とても飢えているようには見えない。
そんな中、突然時ビー!という機械音が周囲に鳴り響いた。
「ゆゆ!ごはんさんのじかんだね!おちびちゃんたち!いちれつにならんでね!おぎょうぎよくするんだよ!」
「「「「ゆー!」」」
そう言いながら赤ゆっくりたちに指示をする親れいむ。赤ゆたちは素直に並び始める。
しばらくすると、どこからともなく人間が現れた。手にはゆっくりフードを持っている。
親れいむは人間の姿を認めると、ペコリと頭を下げてこう言った。
「ゆゆ!にんげんさん!いつもごはんさんをありがとうございます!ほら!おちびちゃんたちも!」
「「「「ありがちょうごじゃいます!」」」」
親れいむに促され一斉に挨拶する赤ゆっくりたち。まだ赤ゆなために若干舌足らずだが、きちんと挨拶をしている。
その様子を見て人間は、うんと頷くと親れいむの前にゆっくりフードを置いた。
「今日の分の食料だ。しっかり分けて食べるように」
それだけを簡潔に述べると、人間はすぐに去っていった。
「さあおちびちゃんたち!ごはんさんだよ!みんなでいっしょにむしゃむしゃしようね!
みんなにおなじりょうだけくばるからじゅんばんにとりにきてね!」
「「「「「ゆー!」」」」」
元気よく返事する赤ゆっくりたちであった。
さて、今ここで行われている一連の様子は一体どういうことなのだろうか?
その答えはある企業による、金バッチ量産計画の試みの一つであった。
先に説明した通り、今企業間ではいかに時間と労力を費やさずに、国営機関の金バッチを取得できるゆっくりを量産するかが最大の課題となっていた。
そこである企業が考えだした方法は、ゆっくりにゆっくりの教育をさせればいいじゃないかということだった。
なるほど、確かにそれが可能ならばなかなかの妙案である。企業で一番金がかかるのは人件費だ。
逆に言えばそこが一番削減しやすいところでもある。ゆっくりにゆっくりを教育させることが可能ならば、かかる費用は餌代くらいでほぼタダ。
そして、スペースが許す限り一気に大量の飼育が可能となるのである。
そんなわけで、この企業では試験的にゆっくりによる、ゆっくりの教育を行っていたのだ。
一匹の親れいむに対して、大量ので複数の種族のゆっくりが育てられているのはこういった理由である。
無論親役のゆっくりは、このれいむ一匹だけではなく、他の場所では、まりさやありすなどのほかの親ゆっくりが子育てをしている。
つまりここと同じような環境の部屋が、施設内に幾つも存在しているのだ。
ちなみに係りの者とおぼしき人間がほとんどゆっくりたちと口をきかなかったのは、なるべくゆっくりのみで育てたデータが欲しいからだ。
人間の手を借りて、金バッジゆっくりを育てても仕方がない。だから、実験中はなるべく人間の接触が最低限になるように、係りの者は義務付けられていた。
最終的には人間は餌以外の全てをゆっくりに委ねるようにし、特に何もしなくても餌だけやってれば、
勝手に金バッチゆっくりが量産されていくシステムを作り出すこと。
これがこの企業が目指すべき目標であった。
「さあじゅんばんに、ごはんさんをくばろうね!」
そう言いながら並んでいる赤ゆたちに平等に同じ量だけゆっくりフードを配分していく親れいむ。
このれいむをはじめてとした教育係りのゆっくりは、企業が親ゆっくりになるように特別に金をかけて育てたゆっくりであった。
赤ゆの時から最高の環境と最高の食料と最高の教育を受けてきただけあって、まあそこそこに優秀な個体である。
それが証拠に、この親れいむ、自分と同じれいむ種の赤ゆだけ露骨に差別をしたりはしていなかった。
今行っている食料の分配も、あくまで全種族平等に行っている。
この親れいむにとってはここにいる全てのゆっくりが、かわいいおちびちゃんも同然なのだ。
「ゆゆ!さあつぎのおちびちゃんのばんだね!」
笑顔で食料を配分する親れいむ。
「ゆっくちありがとね!」
食料を貰うと、素直に礼を言い列から離れてく赤ゆたち。
「ゆふふふ!いいんだよ、おちびちゃんは、とくべつなゆっくりなんだからね………」
その後ろ姿を眺めながら、親れいむは誰にも聞こえないような声でそっと呟いたのだった。
さて、そんなこんなで今は様々な企業が、様々な方法で金バッジゆっくりを大量生産しようともがいている状況であった。
が、しかしそのどれもが思うような結果を上げられずにいたのである。
企業は独自の方法で教育したゆっくりたちを、大量に金バッジ試験にへと送り込むものの、
そのゆっくりたちはことごとく不合格となってつき返されていったのである。
大体100匹送り出したとして、金バッチを取得できるのは精々その中の一、二匹だけ。
後はほとんど銀か銅。酷いものになると銅バッチすら取得することができなかった。
一応100匹全員が金バッチ用の教育を受けているにも関わらずである。
何故こんなことになったのか?
理由はもちろん沢山ある。
が、その中で最も重要な要因を上げろと問われれば、それはやはり企業側のゆっくりに対する理解不足にあると言えるだろう。
そもそもゆっくりは基本的に我侭で自分勝手なナマモノなのだ。
それを優秀で価値のある金バッチゆっくりにしたてあげるには、並大抵の労力では無理である。
それにゆっくりの資質の面も大きい。
同じゆっくりに見えても、優秀な個体、従順な個体、ゲス化しやすい個体、レイパー化しやすい個体、などなど、
様々なゆっくりが存在する。
その中でも特に優秀な個体を見極めて適切な教育を施さなければ、金バッチを取得することはできないのだ。
つまるところ、ゲス個体をいくら時間を掛けて教育しても時間の無駄というわけだ。
それらを見分けるためには、ゆっくりのプロの経験による眼力が必要不可欠であり、ゆっくりに対してのノウハウがまったくない
一企業が容易に実行できるものではなかったのだ。
ここに来てようやく各企業は、金バッチゆっくりを量産することは非常に困難であるということに気づき始める。
中には金バッチ取得を諦め、銅や銀バッチのみに狙いを定めて出荷する企業もぼつぼつ出始めた。
そんなわけで、金バッチゆっくりはその供給に対して大きく需要を減らしていくことになる。
供給に対して需要が減るとどういう現象が起きるか?
答えは簡単。金バッチゆっくりの値段が急激に上昇しはじめたのである。
人は品薄と知ればそれに大きな価値を認めるものだ、流行っていると聞けば多くの人はそれを気にせずにはいられない。
そしてさらに品薄が品薄を呼び、値段は天井知らずに上昇していく。
そう、今ゆっくり市場は小バブル状態へと突入したのである。
バブルと聞いて多くの人は何を思い浮かべるであろうか?
恐らく土地関係をイメージすることが多いだろう。
ゆっくりでバブルなんて、そんなことが起こるはずがないと思うかもしれない。
日本では特に失われた十年のイメージが余りに強すぎるせいで、バブル=土地の問題と考える人が多い。
だがしかし、実際はあらゆる物がバブルの対象となりうる。
むしろ小規模なバブルは世界中でちょくちょく起こってははじけているのだ。
ちなみに記録に残っている世界で始めてのバブルはチューリップだというのは有名な話である。
ゆっくりでバブルというのもあながちありえない話しではなかった。
所変わって、再びとある企業のゆっくり飼育室。
今では前回見たときには赤ゆだったゆっくりたちも、今では子ゆっくり程度に成長していた。
「ゆゆ!おちびちゃんたち!ゆっくりきいてね!」
部屋に散らばって思い思いにゆっくりしていた子ゆっくりたちに、親れいむが呼びかける
「きょうからおちびちゃんたちは、きんばっじさんをめざして、ほんかくてきなきょうっいくをはじめるよ」
「ゆゆ?きんばっちさんってなに?ゆっくりできるの?」
親れいむの口から発せられた金バッジという聞きなれない言葉に対して、疑問を口にする子ゆっくりたち。
「もちろん!とってもゆっくりできるよ!
きんばっちさんは、とってもゆっくりしたゆっくりのみつけることができる、とくべつなばっちさんなんだよ!
このばっちをつけていると、みんながゆっくりさせてくれるんだよ!
それにきんばっちゆっくりは、いまはとっても『かち』があるからみんなからたいせつにされるんだよ!」
親れいむが得意げに答える。
「ゆゆ!ほんと!まりさきんばっちになるよ!」
「れいむも!れいむも!」
「わかるよー!きんばっちさんはとってもゆっくりできるんだねー!」
「むきゅ!けんじゃなぱちぇにはきんばっちこそがふさわしいわ!」
口々に騒ぎ出す子ゆっくりたち。
「ゆゆ!はやまっちゃいけないよおちびちゃんたち!きんばっちさんになるのはとってもむずかしいんだよ!
そのために、たっくさんおべんきょうしなきゃならないんだ!つらいひびになるかもしれないけど、がまんできるかな?」
親れいむは真剣な眼差しで子ゆっくりたちを見回す。
「ゆう?れいむきんばっじさんになれないの?」
一匹の子れいむが不安そうに親れいむを見上げる。
「だいっじょうぶ!おべんきょうはつらいけど、おかあさんのいうとおりにしてれば、ぜったいにきんばっちになれるよ!
なんったておちびちゃんたちは、きんばっじになるためにえらばられた、とくべつなゆっくりだからね!」
「「「「ゆゆー!!!」」」」
親れいむの言う事を聞いて勉強すれば金バッジになれると聞いて目を輝かせだす子ゆっくりたち。
「それじゃさっそくはじめるよおおお!まずはうんうんたいそうからだよおおおお!」
「「「「「ゆー!」」」」」
親れいむの動きに合わせて、のーびーのーびーし始める子ゆっくりたち。
子ゆっくりたちはみな笑顔でとても楽しそうだ、これのどこが辛いお勉強なのだろうか?
実は、親れいむは人間から教育を受けた際に、子ゆっくりたちにうんうん体操をさせろなんていう指示はまったく受けていない。
言うまでもなく、うんうん体操などの訓練をいくらしたところで、国営機関の金バッジ試験に合格することなどできないからだ。
では何故親れいむは、こんな無駄なことを子ゆっくりたちに教育しているのか?
そこには親れいむ独自の思い込みがあった。
親れいむの考えでは金バッチはとってもゆっくりしたゆっくりに与えられる称号なのであり、
人間に教わったような厳しい教育方法では、ゆっくりはゆっくりできなくなってしまい、
結果として金バッチを取得できないと勝手に結論していたのだ。
ゆえに、自分が幼少時代に人間から叩き込まれた教育方をそのまま子ゆっくりたちに施すような事はせず、
自分独自の方法で教育方法を試みることにしたのだ。
(人間さんの教育方法は間違ってるよ!あんなん厳しい教育じゃ、おちびちゃんたちがゆっくりできなくなったちゃうよ!
れいむは、れいむのやり方でおちびちゃんたちを、とってもゆっくりした金バッチさんにしてみせるよ!)
れいむは硬い決意を胸に、金バッジ取得には何の役にもたたない、うんうん体操をおちびちゃんたちに教え続けるのであった。
さて、子ゆっくりたちが呑気にうんうん体操をしている間にも、日々ゆっくり市場はめまぐるしく変化してゆく。
ゆっくりバブルの影響で金バッチゆっくりの価値が天井知らずに上昇していく中、多くの企業は歯がゆい思いをしていた。
現にモノ(ゆっくり)は手元に大量にあるのだ。にも関わらずそれが金バッチを取得できないという理由で高値で売り出すことができない。
そんな企業にとって、ゆっくりできない状況が続く中、ある企業は一つの別の結論に行き着くことになる。
こんな大儲けのチャンスをみすみす見逃すわけにはいかない!そうだ!国営機関の金バッチが取得できないのならば、
いっそのこと自社で独自の金バッチを作ってしまえばいいじゃないか!
それを自社ブランドとして売り出せばいいんだ!
こうして生まれたのが、企業独自の金バッジゆっくりであり、
初の国営機関以外の金バッチゆっくりの誕生の瞬間であった。
当然そのゆっくりたちは、国営機関の金バッチよりは色々な面で劣っていた。
だがそこは値段を若干下げることにより(バブルの影響でそれでも十分高かったが)国営の金バッジとは差別化を図ったのだ。
そしてこの試みは見事大成功を収めることになる。
金バッチが供給不足だったことや、まだこのときは一般人がゆっくりについて疎く、
同じ金バッチならば対して変わらないだろうと考えていたことが大きくプラスに働くことになり、
金バッチの独自ブランドを立ち上げた企業は莫大な利益を上げることとなった。
こうなると、後の展開は容易に予想がつくであろう。
国営機関の金バッチでなくても売れるということに気づいた各企業は、一斉に金と時間のかかる金バッチ試験への対策をやめ、
代わりに次々に自社の独自ブランド金バッチを作成し始めたのだ。
こうしてゆっくり市場は、様々な企業の金バッチが入り乱れるカオスな状態へと突入したのであった。
「ゆゆん!まりささまは、きんばっちなのぜえええ!」
「ゆっへん!れいむはきんばっちだよ!えらいんだよ!」
「んほおおおおおお!なんてとかいはなばっちなのかしらあああ!われながらほれぼれするわあああ!」
「わかるよー!これでゆっくりしほうだいなんだねー!」
再びある企業の飼育場のゆっくりたち。
そこで親れいむによって飼育されていたほとんどのゆっくりたちは、もう成体並みの大きさに成長していた。
が、それとは別に大きな変化が見られた。親れいむをはじめとする全てのゆっくりが、お飾りに金バッチをつけているのだ。
みな努力の甲斐あって国営機関の金バッチ試験にパスすることができたのだろうか?
いやいやそんなはずはない。このゆっくりたちが付けている金バッチは全てこの企業の独自のものである。
現在の市場変化に倣って、この企業もまた国営機関の金バッチ大量取得は無理と判断し、自社ブランド金バッチ商法に切り替えたのだ。
そのことにより、いままで試験的に飼育していた全てのゆっくりたちに、ほぼ無条件で金バッチが与えられたのだ。
もちろん中には、というかほとんどのゆっくりが国営機関基準で銀バッジにすら満たないような駄ゆっくりだったのだが、
この企業は調子に乗って少々手広くゆっくりを飼育しすぎたため、その埋め合わせの意味でももはやもはやなりふりかまっていられない状況にあったのだ。
「ゆゆーん!みんなとってもゆっくりした、きんばっじさんだよおおおおおおお!」
自身が教育したゆっくりたちを眺めながら、感極まった様子で叫ぶ親れいむ。
やはり自分の教育方針は間違ってなかったのだ。どのおちびちゃんたちも、みんな見事に金バッチを取得し、
こうしてとってもゆっくりしている。
さらには、こうして見事おちびちゃんたちを育て上げた功績として、今や自分にも金バッチが付けられている。
本来金バッチを取得するために必要な試験を受けずに、何故突然自分やおちびちゃんたちが金バッチになれたのか?
そのことを親れいむは別段深く考えなかった。
あのとんでもなくゆっくりしたおちびちゃんたちの様子を見れば、わざわざ試験をするまでもないと思っていたからだ。
「ゆふふふ!むずかしいといわれてるきんばっちさんも、れいむがこそだてすればこのとおりだよ!
やっぱりにんげんさんのやりかたじゃ、だめだめだったね!
ゆっふっふっふ!こそだてじょうずすぎちゃってごめんねええええええー!」
自身の心地よい妄想に埋もれながら、親れいむは最高にゆっくりしていた。
後編へ続く。
虐待 観察 自業自得 差別・格差 実験 ペットショップ 都会 もう短くするのは諦めた
・いつも通り過去作品の登場人物や世界観が出ますが読んでなくても大丈夫です。
「おねがいだよおおおお!れいむをかいゆっくりにしてねえええええ!
れいむはきんばっちさんだよおおおおおお!えらばらたゆっくりなんだよおおおお!
ゆああああ!どじでむしするのおおおおおおおお!」
町を歩いていると、道端で必死に自分を飼いゆっくりにしてくれと叫んでいるボロボロのれいむが目に入った。
何やら自分は金バッチゆっくりであるとわめいているようだ。
そして、なるほど。確かにその言葉に違わず、叫んでいるれいむのお飾りのリボンには、金色に光るバッジが付いている。
どうやらあのれいむが金バッジだというのは本当のようだ。
だがしかしそんな金バッチれいむを、ある人は完全に無視し、またある人は不快な顔をしながら通り過ぎ、
またある人はやや気の毒そうな顔をしつつもやはり無視して素通りしていく。
「なんでええええ!れいむはきんばっじなのにいいいいいい!
れいむはかちのあるゆっくりなんだよおおおおお!きんばっちはたいせつにしなきゃいけないんだよおおおお!
ゆがあああああ!れいむをかいゆっくりにして、ゆっくりさせろおおおおおお!」
なおも騒ぎ続けるれいむ。
そう、たしかにれいむの言うとおり、金バッジゆっくりが異様なまでにもてはやされ、その価値がはね上がった時期は確かにあった。
だがそれも今は昔の話だ。
今ではたとえ金バッチゆっくりだったとしても、それが無条件で優秀で価値のあるゆっくりの証明とはならないのだ。
そしてその事実は、ちょっとゆっくりに詳しい人ならばもはや常識とさえいえる。
だからあのれいむが自身を金バッジだとアッピールすることは、まったくのムダなのだ。
「ゆううう!どじでえええええ!
……ゆゆ!おにいさん!れいむをかいゆっくりにしてくれるのおおおおおお!」
と、そんなことを考えながられいむを眺めていると、なんと突然振り向いたれいむと偶然目が合ってしまった。
そして、何を勘違いしたのか私の方に向かって飛び跳ねてくるれいむ。
変にからまれても面倒だと思った私は、くるりと方向転換をし、さっさと先を急ぐ事にする。
「ゆがああああああ!どこにいくのおおおおおおおお!
れいむをかいゆっくりにしてくれるんじゃなかったのおおおおおお!
まっでねえええええ!れいむはきんばっじいいいいいいい!
かいゆにし……、ゆべえええ!いだいいいい!」
必死に追いかけてこようとしたれいむだが、どうやら盛大にスッ転んだようだ。
まったく、よく何もないところで転べるものだ。恐らくあのれいむは室内飼いメインで育てられ、ろくに長距離移動したことすらないのだろう。
だから少し跳ねただけで転んでしまうのだ。わかってはいたことだが、あの様子では恐らくれいむの金バッジランクはCかDだろう。
いや、もしかしたら販売価値無しのEランクなのかもしれない。
処分されるところを逃げてきたと考えれば、金バッチが付けっぱなしになっているのも納得できる。
となるとあのれいむはそこそこの年齢の可能性もあるわけだ。まあどうでもいいことだが。
そんなことを考えながら歩いているとやがて私が目指している目的地が見えて来た。
その場所とは大型のペットゆっくり専門店。
しかし私は別にペットゆっくりを買いにきた客というわけではない。
では何故店に入る必要があるのか?答えは簡単だ。
この店は私の店だからだ。私はゆっくり専門のペットショップの店長なのだ。
「よぉ!店長!景気はどうだい?」
所用でバイトに任せていた店内に入ると、見知った客が私に手を上げ挨拶してきた。
「ああ。まあボチボチやってますよ」
そんな男に対し、私は適当に答える。
この挨拶してきた男の素性は、ゆっくりを専門にあつかっている国営機関の人間だ。
私は仕事柄、こういった立場の人たちとも結構付き合いがある。
特彼ともう一人の女性には、ペットショップを開く際には随分と世話になったりしたものだ。
「今日はまたいつものゆっくりフードをお買い上げですか?」
私は質問する。
この男は、だいぶ前にゆっくりぱちゅりーを飼うことになったらしく、それ以来たまに私の店にゆっくりフードを買いに来ているのだ。
最近の企業物のゆっくりフードは、味に変な細工をしてあり、一度そのゆっくりフードを食べたら、他のものを受け付けなくなるような悪質な物が多い。
その点、私の店の自家製ゆっくりフードは、自慢じゃないが無添加、無着色で健康にも安全安心な代物だ。
ゆっくりのプロである男のお眼鏡にかなった一品というわけだ。
「ああそうね。いつものを二つもらうよ」
「二つ?あまり買い置きは、おすすめできませんよ?」
そう私は注意する。
私の作っているゆっくりフードは、あまり日にちが持たないという欠点がある。
そのため、注意書きとして、なるべくはやくご賞味下さいと箱にでかでかと書いてある。
そのことを男が理解してないはずはないのだが。
「うん、わかってる。いや、実はもう一匹増えたもんでね」
「へえそうだったんですか。ちなみにどの種族のゆっくりを飼うことになったんですか?」
「ああ、ぬ……じゃなかった。ええっと、その、れいむ……かな」
何となく歯切れが悪そうに言う男。この男にしては珍しいことだ。
ひょっとしたらなにか事情があるのかもしれない。
だがまあ、深く突っ込むのは止めておこう。こっちは売り上げが増えて、悪いことは一つもないのだから。
「そういえばさ…」
話題を変えるように男がしゃべりだす。
「最近の飼いゆっくり市場はどんな感じなんだ?今ではもうだいぶ落ち着いてきたのか?」
男はカウンターに肘をつく。
「ええ、まあだいぶ安定してきましたね。一時期はほんと酷かったですから。
その辺の野良や野生と大差ないような金バッチゆっくりが量産されたりして、ほんと滅茶苦茶でした。
でも今じゃそういうのはほとんどなくなってきましたね。
消費者側が賢くなって、クズみたいな金バッチはすぐ雑誌とかで酷評されるからほとんど市場に出回らなくなったんです。
まあ、たまに素人さんが間違えて、質の悪い金バッチを買ったりしてしまうことはあるらしですけど」
「ああ、うん。そうみたいね」
男は心当たりがあるのか、やや遠い目をする。
「私の店ではそういった品質の悪いゆっくりは、一切入荷しないようにしてるんです。
でもそれだとどうしても、金バッジの入荷量が限られてしまいましてね。今も丁度、店内では銀バッチしかい状況なんですよ。
どうです?なんとか貴方とのところの金バッジゆっくりを回して貰えませんかね?」
だめもとで私は男にお願いしてみる。
「そりゃ無理だな。飼いゆっくりは俺の担当じゃないし、ウチの連中はそういうことにはやたら厳しいんだよ。
他のところでは割とてきとーなのにな」
そう男にきっぱりと断られてしまう。
まあ、多分そう言われるだろうと思って、対して期待はしてなかった。
国営機関の金バッジゆっくりは、いつだって品薄状態だ。ウチは先日入荷したばかりだから、
次の順番が回ってくるまで数ヶ月かかるだろう。
その間は何とか他の企業の金バッジゆっくりで間に合わせなければならない。
企業の金バッジは安価だが優秀な個体の見極めが非常に難しい。まったく骨の折れる仕事だ。
そんな風に憂鬱な気分になっていると、男が立ち上がり、
「そんじゃま、そろそろ俺は行くわ。また森の群れの視察回りしなきゃならないからさ」
「あ、はい。ありがとうございました。またのおこしをお待ちしています」
私はそういっておじぎをする。
男が会計を済ませ、カウンターを離れようとしたその時、ドン!という鈍い音が聞こえた。
「?」
私は疑問に思い、音のした方へ視線を向けてみる。
すると何と、私の店のゆっくりが外に向けて展示してあるショーウィンドに一匹の野良れいむが体当たりしているではないか。
「ーーーー!ーーーー!」
れいむは凄まじい形相で何事か叫びながらドン!ドン!と体当たりを続けている。
ショーウィンドの中にいるゆっくりたちは、野良れいむの尋常ではない様子にすっかり怯えてしまっているようだ。
というかあの野良れいむ、よく見るとさっき飼いゆっくりにしてくれてと叫んでいた金バッジの奴じゃないか?
どうやら私は後をつけられていたらしい。まったくなんてことだ。
ひょっとすると、あの金バッジ野良れいむの頭の中では、既に私が飼い主ということになっていて、
このペットショップを自分のおうちだと思い込んでいるのかもしれない。
頭の悪いゆっくりは、しばしばそういった突拍子のない自分に都合のいい発想、妄想をよくするのだ。
まあ真相のほどはよくわからないが、きっとろくな理由ではないことは確実だろう。
「なんじゃありゃ」
私の隣にいた男が呟く。
それは私が聞きたい。本当になんじゃありゃだ。
野良金バッジれいむがどれだけ体当たりしても、ショーウィンドが破られることは絶対にありえないだろう。
だが中にいる店のゆっくりが怯えている以上、放っておくわけにはいかない。
「さっき町で見かけた野良が、どうやら私についてきてしまったみたいです。ちょっと追い払ってきますね」
「なるほどそういうことか。じゃあ、オレが適当に処理しておくわ」
カウンターを離れようとする私を手で制し、出口へ向かってく男。
男が行ってくれるなら大丈夫だろう。彼はゆっくりのプロだ、きっと適切な処理をしてくれるはずだ。
私はフゥと、安堵の息を吐き、カウンターに持たれかかる。
「まったく近頃は本当に元金バッジの野良ゆが増えたもんだ。一昔前はこんなことなかったのに…」
思わずそう私はぼやくのであった。
昔々の話。
ペットゆっくりというものが認知され始めた初期の初期の頃の話。
その時期には、ゆっくのバッジといえば一つしか存在しなかった。すなわち国のゆっくり専門機関が発行するバッジのことである。
これらのバッジは、一応国が発行しているものであり、万一間違いがあってはならないということで、
バッジの審査は、ゆっくりのプロともいえる者が厳しい目で厳重に行っていた。
特に金バッチの飼いゆっくりともなると、難易度の高い試験を幾つもクリアしなければならず、
その品質は文句なしに最高ということができた。
そして、国有機関が売り出すペットゆっくりが非常に優秀だったことや、
まだその当時はペットゆっくり自体が物珍しかったことから、ペットゆっくりの需要は徐々に増えてくことになっていった。
需要あるところに供給あり。ゆっくりは新たなビジネスチャンスに繋がるということを知った各企業たちは、
こぞってペットゆっくり市場に参入を始めた。
何せゆっくりの元手は「ただ」みたいなものなのだ。
そんなゆっくりたちに国営機関の金バッチというものが付属するだけで、高値で売ることが出来る。
しかも需要が高まってきており、出せば即完売といった状況だ。こんなおいしい話に企業が飛びつかないわけがない。
そんなわけで各企業間では如何にして時間と労力を費やさずに、国営機関の金バッチを取得できるゆっくりを量産できるかという試みが一斉に始まったのであった。
さて、所変わってここはとある施設の一室。
「ゆっくりしていってね!」
「「「「「ゆっくちしていっちぇね!!!」」」」」
一匹の大きな身体のゆっくりれいむの呼びかけに対して、複数の小さな身体の赤ゆっくりたちが元気よく応える。
言うまでもなく、親ゆっくりと、赤ゆっくりの挨拶の風景であろう。
だがしかし、一件ありきたりなように見えるこの光景は、野生ではまず起こりえないことであった。
何故なら、親れいむの呼びかけに応える赤ゆっくりたちの種族がてんでばらばらだったからだ。
通常ならばゆっくりの子どもは、自分とつがいの二種類しかいないはずである。
しかし、いま親れいむの前で元気よく返事をしているのゆっくりたちの種類はれいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょんと、
まあ要するに基本種と呼ばれている全てのゆっくりが揃っていた。
また、その総数も一介の野生の家族が育てるにしては多すぎる。全種族あわせて30匹はいるだろう。
いくら多産のゆっくりといえこの数は多すぎる。どう考えても食料不足に陥るのは必至と言える状況である。
にも関わらず、親ゆっくりをはじめとする全てのゆっくりたちは、にっこり笑顔で、ぷっくりまん丸と程よい体型を維持している。
とても飢えているようには見えない。
そんな中、突然時ビー!という機械音が周囲に鳴り響いた。
「ゆゆ!ごはんさんのじかんだね!おちびちゃんたち!いちれつにならんでね!おぎょうぎよくするんだよ!」
「「「「ゆー!」」」
そう言いながら赤ゆっくりたちに指示をする親れいむ。赤ゆたちは素直に並び始める。
しばらくすると、どこからともなく人間が現れた。手にはゆっくりフードを持っている。
親れいむは人間の姿を認めると、ペコリと頭を下げてこう言った。
「ゆゆ!にんげんさん!いつもごはんさんをありがとうございます!ほら!おちびちゃんたちも!」
「「「「ありがちょうごじゃいます!」」」」
親れいむに促され一斉に挨拶する赤ゆっくりたち。まだ赤ゆなために若干舌足らずだが、きちんと挨拶をしている。
その様子を見て人間は、うんと頷くと親れいむの前にゆっくりフードを置いた。
「今日の分の食料だ。しっかり分けて食べるように」
それだけを簡潔に述べると、人間はすぐに去っていった。
「さあおちびちゃんたち!ごはんさんだよ!みんなでいっしょにむしゃむしゃしようね!
みんなにおなじりょうだけくばるからじゅんばんにとりにきてね!」
「「「「「ゆー!」」」」」
元気よく返事する赤ゆっくりたちであった。
さて、今ここで行われている一連の様子は一体どういうことなのだろうか?
その答えはある企業による、金バッチ量産計画の試みの一つであった。
先に説明した通り、今企業間ではいかに時間と労力を費やさずに、国営機関の金バッチを取得できるゆっくりを量産するかが最大の課題となっていた。
そこである企業が考えだした方法は、ゆっくりにゆっくりの教育をさせればいいじゃないかということだった。
なるほど、確かにそれが可能ならばなかなかの妙案である。企業で一番金がかかるのは人件費だ。
逆に言えばそこが一番削減しやすいところでもある。ゆっくりにゆっくりを教育させることが可能ならば、かかる費用は餌代くらいでほぼタダ。
そして、スペースが許す限り一気に大量の飼育が可能となるのである。
そんなわけで、この企業では試験的にゆっくりによる、ゆっくりの教育を行っていたのだ。
一匹の親れいむに対して、大量ので複数の種族のゆっくりが育てられているのはこういった理由である。
無論親役のゆっくりは、このれいむ一匹だけではなく、他の場所では、まりさやありすなどのほかの親ゆっくりが子育てをしている。
つまりここと同じような環境の部屋が、施設内に幾つも存在しているのだ。
ちなみに係りの者とおぼしき人間がほとんどゆっくりたちと口をきかなかったのは、なるべくゆっくりのみで育てたデータが欲しいからだ。
人間の手を借りて、金バッジゆっくりを育てても仕方がない。だから、実験中はなるべく人間の接触が最低限になるように、係りの者は義務付けられていた。
最終的には人間は餌以外の全てをゆっくりに委ねるようにし、特に何もしなくても餌だけやってれば、
勝手に金バッチゆっくりが量産されていくシステムを作り出すこと。
これがこの企業が目指すべき目標であった。
「さあじゅんばんに、ごはんさんをくばろうね!」
そう言いながら並んでいる赤ゆたちに平等に同じ量だけゆっくりフードを配分していく親れいむ。
このれいむをはじめてとした教育係りのゆっくりは、企業が親ゆっくりになるように特別に金をかけて育てたゆっくりであった。
赤ゆの時から最高の環境と最高の食料と最高の教育を受けてきただけあって、まあそこそこに優秀な個体である。
それが証拠に、この親れいむ、自分と同じれいむ種の赤ゆだけ露骨に差別をしたりはしていなかった。
今行っている食料の分配も、あくまで全種族平等に行っている。
この親れいむにとってはここにいる全てのゆっくりが、かわいいおちびちゃんも同然なのだ。
「ゆゆ!さあつぎのおちびちゃんのばんだね!」
笑顔で食料を配分する親れいむ。
「ゆっくちありがとね!」
食料を貰うと、素直に礼を言い列から離れてく赤ゆたち。
「ゆふふふ!いいんだよ、おちびちゃんは、とくべつなゆっくりなんだからね………」
その後ろ姿を眺めながら、親れいむは誰にも聞こえないような声でそっと呟いたのだった。
さて、そんなこんなで今は様々な企業が、様々な方法で金バッジゆっくりを大量生産しようともがいている状況であった。
が、しかしそのどれもが思うような結果を上げられずにいたのである。
企業は独自の方法で教育したゆっくりたちを、大量に金バッジ試験にへと送り込むものの、
そのゆっくりたちはことごとく不合格となってつき返されていったのである。
大体100匹送り出したとして、金バッチを取得できるのは精々その中の一、二匹だけ。
後はほとんど銀か銅。酷いものになると銅バッチすら取得することができなかった。
一応100匹全員が金バッチ用の教育を受けているにも関わらずである。
何故こんなことになったのか?
理由はもちろん沢山ある。
が、その中で最も重要な要因を上げろと問われれば、それはやはり企業側のゆっくりに対する理解不足にあると言えるだろう。
そもそもゆっくりは基本的に我侭で自分勝手なナマモノなのだ。
それを優秀で価値のある金バッチゆっくりにしたてあげるには、並大抵の労力では無理である。
それにゆっくりの資質の面も大きい。
同じゆっくりに見えても、優秀な個体、従順な個体、ゲス化しやすい個体、レイパー化しやすい個体、などなど、
様々なゆっくりが存在する。
その中でも特に優秀な個体を見極めて適切な教育を施さなければ、金バッチを取得することはできないのだ。
つまるところ、ゲス個体をいくら時間を掛けて教育しても時間の無駄というわけだ。
それらを見分けるためには、ゆっくりのプロの経験による眼力が必要不可欠であり、ゆっくりに対してのノウハウがまったくない
一企業が容易に実行できるものではなかったのだ。
ここに来てようやく各企業は、金バッチゆっくりを量産することは非常に困難であるということに気づき始める。
中には金バッチ取得を諦め、銅や銀バッチのみに狙いを定めて出荷する企業もぼつぼつ出始めた。
そんなわけで、金バッチゆっくりはその供給に対して大きく需要を減らしていくことになる。
供給に対して需要が減るとどういう現象が起きるか?
答えは簡単。金バッチゆっくりの値段が急激に上昇しはじめたのである。
人は品薄と知ればそれに大きな価値を認めるものだ、流行っていると聞けば多くの人はそれを気にせずにはいられない。
そしてさらに品薄が品薄を呼び、値段は天井知らずに上昇していく。
そう、今ゆっくり市場は小バブル状態へと突入したのである。
バブルと聞いて多くの人は何を思い浮かべるであろうか?
恐らく土地関係をイメージすることが多いだろう。
ゆっくりでバブルなんて、そんなことが起こるはずがないと思うかもしれない。
日本では特に失われた十年のイメージが余りに強すぎるせいで、バブル=土地の問題と考える人が多い。
だがしかし、実際はあらゆる物がバブルの対象となりうる。
むしろ小規模なバブルは世界中でちょくちょく起こってははじけているのだ。
ちなみに記録に残っている世界で始めてのバブルはチューリップだというのは有名な話である。
ゆっくりでバブルというのもあながちありえない話しではなかった。
所変わって、再びとある企業のゆっくり飼育室。
今では前回見たときには赤ゆだったゆっくりたちも、今では子ゆっくり程度に成長していた。
「ゆゆ!おちびちゃんたち!ゆっくりきいてね!」
部屋に散らばって思い思いにゆっくりしていた子ゆっくりたちに、親れいむが呼びかける
「きょうからおちびちゃんたちは、きんばっじさんをめざして、ほんかくてきなきょうっいくをはじめるよ」
「ゆゆ?きんばっちさんってなに?ゆっくりできるの?」
親れいむの口から発せられた金バッジという聞きなれない言葉に対して、疑問を口にする子ゆっくりたち。
「もちろん!とってもゆっくりできるよ!
きんばっちさんは、とってもゆっくりしたゆっくりのみつけることができる、とくべつなばっちさんなんだよ!
このばっちをつけていると、みんながゆっくりさせてくれるんだよ!
それにきんばっちゆっくりは、いまはとっても『かち』があるからみんなからたいせつにされるんだよ!」
親れいむが得意げに答える。
「ゆゆ!ほんと!まりさきんばっちになるよ!」
「れいむも!れいむも!」
「わかるよー!きんばっちさんはとってもゆっくりできるんだねー!」
「むきゅ!けんじゃなぱちぇにはきんばっちこそがふさわしいわ!」
口々に騒ぎ出す子ゆっくりたち。
「ゆゆ!はやまっちゃいけないよおちびちゃんたち!きんばっちさんになるのはとってもむずかしいんだよ!
そのために、たっくさんおべんきょうしなきゃならないんだ!つらいひびになるかもしれないけど、がまんできるかな?」
親れいむは真剣な眼差しで子ゆっくりたちを見回す。
「ゆう?れいむきんばっじさんになれないの?」
一匹の子れいむが不安そうに親れいむを見上げる。
「だいっじょうぶ!おべんきょうはつらいけど、おかあさんのいうとおりにしてれば、ぜったいにきんばっちになれるよ!
なんったておちびちゃんたちは、きんばっじになるためにえらばられた、とくべつなゆっくりだからね!」
「「「「ゆゆー!!!」」」」
親れいむの言う事を聞いて勉強すれば金バッジになれると聞いて目を輝かせだす子ゆっくりたち。
「それじゃさっそくはじめるよおおお!まずはうんうんたいそうからだよおおおお!」
「「「「「ゆー!」」」」」
親れいむの動きに合わせて、のーびーのーびーし始める子ゆっくりたち。
子ゆっくりたちはみな笑顔でとても楽しそうだ、これのどこが辛いお勉強なのだろうか?
実は、親れいむは人間から教育を受けた際に、子ゆっくりたちにうんうん体操をさせろなんていう指示はまったく受けていない。
言うまでもなく、うんうん体操などの訓練をいくらしたところで、国営機関の金バッジ試験に合格することなどできないからだ。
では何故親れいむは、こんな無駄なことを子ゆっくりたちに教育しているのか?
そこには親れいむ独自の思い込みがあった。
親れいむの考えでは金バッチはとってもゆっくりしたゆっくりに与えられる称号なのであり、
人間に教わったような厳しい教育方法では、ゆっくりはゆっくりできなくなってしまい、
結果として金バッチを取得できないと勝手に結論していたのだ。
ゆえに、自分が幼少時代に人間から叩き込まれた教育方をそのまま子ゆっくりたちに施すような事はせず、
自分独自の方法で教育方法を試みることにしたのだ。
(人間さんの教育方法は間違ってるよ!あんなん厳しい教育じゃ、おちびちゃんたちがゆっくりできなくなったちゃうよ!
れいむは、れいむのやり方でおちびちゃんたちを、とってもゆっくりした金バッチさんにしてみせるよ!)
れいむは硬い決意を胸に、金バッジ取得には何の役にもたたない、うんうん体操をおちびちゃんたちに教え続けるのであった。
さて、子ゆっくりたちが呑気にうんうん体操をしている間にも、日々ゆっくり市場はめまぐるしく変化してゆく。
ゆっくりバブルの影響で金バッチゆっくりの価値が天井知らずに上昇していく中、多くの企業は歯がゆい思いをしていた。
現にモノ(ゆっくり)は手元に大量にあるのだ。にも関わらずそれが金バッチを取得できないという理由で高値で売り出すことができない。
そんな企業にとって、ゆっくりできない状況が続く中、ある企業は一つの別の結論に行き着くことになる。
こんな大儲けのチャンスをみすみす見逃すわけにはいかない!そうだ!国営機関の金バッチが取得できないのならば、
いっそのこと自社で独自の金バッチを作ってしまえばいいじゃないか!
それを自社ブランドとして売り出せばいいんだ!
こうして生まれたのが、企業独自の金バッジゆっくりであり、
初の国営機関以外の金バッチゆっくりの誕生の瞬間であった。
当然そのゆっくりたちは、国営機関の金バッチよりは色々な面で劣っていた。
だがそこは値段を若干下げることにより(バブルの影響でそれでも十分高かったが)国営の金バッジとは差別化を図ったのだ。
そしてこの試みは見事大成功を収めることになる。
金バッチが供給不足だったことや、まだこのときは一般人がゆっくりについて疎く、
同じ金バッチならば対して変わらないだろうと考えていたことが大きくプラスに働くことになり、
金バッチの独自ブランドを立ち上げた企業は莫大な利益を上げることとなった。
こうなると、後の展開は容易に予想がつくであろう。
国営機関の金バッチでなくても売れるということに気づいた各企業は、一斉に金と時間のかかる金バッチ試験への対策をやめ、
代わりに次々に自社の独自ブランド金バッチを作成し始めたのだ。
こうしてゆっくり市場は、様々な企業の金バッチが入り乱れるカオスな状態へと突入したのであった。
「ゆゆん!まりささまは、きんばっちなのぜえええ!」
「ゆっへん!れいむはきんばっちだよ!えらいんだよ!」
「んほおおおおおお!なんてとかいはなばっちなのかしらあああ!われながらほれぼれするわあああ!」
「わかるよー!これでゆっくりしほうだいなんだねー!」
再びある企業の飼育場のゆっくりたち。
そこで親れいむによって飼育されていたほとんどのゆっくりたちは、もう成体並みの大きさに成長していた。
が、それとは別に大きな変化が見られた。親れいむをはじめとする全てのゆっくりが、お飾りに金バッチをつけているのだ。
みな努力の甲斐あって国営機関の金バッチ試験にパスすることができたのだろうか?
いやいやそんなはずはない。このゆっくりたちが付けている金バッチは全てこの企業の独自のものである。
現在の市場変化に倣って、この企業もまた国営機関の金バッチ大量取得は無理と判断し、自社ブランド金バッチ商法に切り替えたのだ。
そのことにより、いままで試験的に飼育していた全てのゆっくりたちに、ほぼ無条件で金バッチが与えられたのだ。
もちろん中には、というかほとんどのゆっくりが国営機関基準で銀バッジにすら満たないような駄ゆっくりだったのだが、
この企業は調子に乗って少々手広くゆっくりを飼育しすぎたため、その埋め合わせの意味でももはやもはやなりふりかまっていられない状況にあったのだ。
「ゆゆーん!みんなとってもゆっくりした、きんばっじさんだよおおおおおおお!」
自身が教育したゆっくりたちを眺めながら、感極まった様子で叫ぶ親れいむ。
やはり自分の教育方針は間違ってなかったのだ。どのおちびちゃんたちも、みんな見事に金バッチを取得し、
こうしてとってもゆっくりしている。
さらには、こうして見事おちびちゃんたちを育て上げた功績として、今や自分にも金バッチが付けられている。
本来金バッチを取得するために必要な試験を受けずに、何故突然自分やおちびちゃんたちが金バッチになれたのか?
そのことを親れいむは別段深く考えなかった。
あのとんでもなくゆっくりしたおちびちゃんたちの様子を見れば、わざわざ試験をするまでもないと思っていたからだ。
「ゆふふふ!むずかしいといわれてるきんばっちさんも、れいむがこそだてすればこのとおりだよ!
やっぱりにんげんさんのやりかたじゃ、だめだめだったね!
ゆっふっふっふ!こそだてじょうずすぎちゃってごめんねええええええー!」
自身の心地よい妄想に埋もれながら、親れいむは最高にゆっくりしていた。
後編へ続く。