ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2791 ゆっくり火刑の刑
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『ゆっくり火刑の刑』 38KB
虐待 制裁 自業自得 家族崩壊 同族殺し 駆除 番い 群れ 野良ゆ 姉妹 赤ゆ 子ゆ ゲス 希少種 自然界 現代 即興のつもりでかいたら、何故かこんな長く・・・ あけましておめでとうございます!ゆっくりしていってくれると嬉しいですよ!
「うっがあああ~っ!!
ここからはなせ!ゆっくりさせろぉ!」
「おとーしゃんたしゅけちぇえ!!」
「ゆっゆぅぅ~!まりさぁ!」
五月蝿い・・・・・・
耳障り以外の何物でもない悲鳴が頭を直撃させる。
その剣呑な空気を感じてか、今までは少し見渡せば必ず目に入ったゆっくりの姿が一切見えない。
足元に転がる騒音の元凶。
何処にでも居る、れいむ、まりさの番、そしてその赤ゆっくりである子れいむ3匹と子まりさ2匹がネズミ捕り用のトリモチに引っ付いて無様な様を晒している。
いや、この内まりさとれいむの一匹ずつは他の赤ゆと比べて大きいから後に生まれた子ゆと言ったところだろうか。
こいつらの巣の前にこのトリモチを仕掛けていた成果がこれだ。
「なんでこんなことするのぉ!?
まりさたちはただゆっくりかりをしていただけだよぉ!にんげんさんにはなにも…」
「だまれ!!」
ガァン
「ゆっひゃあぁ!!!」
「きょ、きょわいぃい~・・・・・・」
手に持った火バサミでゆっくり共の近くのコンクリを叩く。
金切り声にも似た火バサミの音と吼えるような人間の怒声に、思わず縮み上がり恐ろしーしーを洩らす子ゆっくり達。
親も派手に洩らしてこそ無いものの、ぷしっという軽い音と共にしーしーを吹き上げていた。
「お前等が住んでいたゆっくりぷれいすとやらな・・・あの巣穴、一体誰のものだと思っているんだよ・・・」
「あ、あれはまりさたちのものなんだぜぇ!にんげんにとやかくいわれるおぼえはないんだぜ!」
怒りを孕ませながら問う人間に、まりさは脅えながらもしっかりとした意思を持って言い返した。
番や子供の前でという事もあるが、ここで下手に出ては舐められる。舐められたら終わりだ、と、餡子脳なりに考えをだした結論である。
「前等・・・お前等が住んでいたあの巣穴な・・・・・・一昨日…いや、ゆっくりにゃそんな事言っても憶えていないかもしれないがな・・・黒帽子や赤りぼんじゃなく、ゆうかが住んでいただろが・・・」
静かに、しかしドスをきかせた低い声は、それを聞く者を少なからず戸惑わせるだろう。
「そんなことしらないんだぜぇ!! にんげんはさっさとまりさたちをかいっほうするのぜぇ!!
そのあとしゃざいにあまあまをようきゅうするんだぜ!これはせいっとうなけんりっなんだぜ!!」
しかし、ゆっくりにはそんな事などお構い無しだった。
いや、剣呑な雰囲気などという微細な感情の変化を捉えるという事は出来るはずも無く、人間が静かに声を発した事で、逆に脅えて下手に出たと考えているのだろう。
「ゆうかが住んでいただろうと聞いてるんだよ!!!」
ガァン
「ゆっぎゃああああ~!!!」
再び上がる轟音、それと共にゆっくり達の悲鳴も重なって響きをあげる。
「あっああぁあ~!!ま、まりさのもっちもちのほっぺがぁあ~!!!」
しかし、今度は火バサミはコンクリートの床を叩いただけではなく、まりさの頬を薄く引っ掛けたらしい。
逃れようの無い激痛に、動けぬ身でありながら全身を躍動させて痛みを表現している。
「も、もうやじゃあ~!おうちっ!おうちかえる!!」
「なんじぇこんにゃこちょにぃ~!おかーしゃんおちゃーしゃん!れいみゅをたしゅけちぇにぇええ~!!」
「にんげんさん!もうやめてあげてね!れいむたちはなにもわるいことしてないよ!」
「またそれか!
お前等に聞いているのはそんな事じゃねぇんだよ!!
そこにいる子ゆ!てめえ等が言ってただろうが!ゲスなゆうかを制裁しておうちを奪い返したってな!」
腹をトリモチにくっつけてお尻をブリブリと振っている子ゆっくりに火バサミを向けて激昂する。
「ああ、この周りにいるゆっくり共の五月蝿い声には散々腹も立てていたが、それでもお前等も生きているから・・・と、大目にも見ていたさ・・・。 けどな!!」
ガアン!と怒号を表したかのように上がる火バサミの音に、ゆっくり達は再び短い嗚咽を上げて引き攣った。
ガタガタと震え、今度はしーしーだけでなく涙までが滝の様に流れ出る。
逃げようにも反撃しようにも身動きも取れない、その事実が更に恐怖を増大させていく。
「あの巣穴を作って住み着いたゆうかは、お前等が言う様にゲスでもなんでもねぇ!
奪い返しただぁ? ふざけるな!てめえ等が逆にゆうかの作った巣穴を奪って、挙句に殺したんだろうが!!」
顔を真っ赤にしてガンガンとコンクリートの床を叩く人間の姿はとてもゆっくりなどしておらず、まりさ達にはまさしく昔話にでてくる鬼に見えただろう。
「な・・・・・・なななにを・・・ま、まままりさたちは・・・げすなゆうかのことなんて・・・し、しし、しらないんだぜぇ・・・」
それでも、勇気を振り絞って人間に訴えかけようとするまりさ。
このまま黙っていても不当に殺されてしまうと思ってのことだったが、その背景には、動けないから人間が脅威なのであって、動けるなら自分たちの方が強いという自信があったからだろう。
声が震えながらでも、その様は未だふてぶてしいままだ。
「ほお・・・・・・」
その答えを聞いて、人間はその熱を急激に冷ませたように静かに呻いた様な声を上げた。
しかし、その双眸は相変わらず剣呑な光を宿したままだ、いや、その光は確実に大きくなっている。
「ゆっぐじ!!?」
「おっおちびちゃぁん!!」
突然目の前に突き立った先が真っ黒に変色した棒は、先ほどまで人間が耳障りな騒音を奏でていたものだった。
それが、目の前の大泣きしていた赤れいむを挟んでいる。
「なっなにをするんだぜにんげん!!おちびをはなすんだぜぇ!!!」
「今朝な・・・巣穴で留守番しているこいつ等に聞いてんだよ・・・。ここにゆっくりが居た筈だって・・・。
そうしたらこいつら・・・意気揚々とお父さんや群の皆で悪いゆうかを制裁してゆっくりプレイスとやらを取り戻したって言いやがったんだよ・・・。
知らないって何だよ、子供でも覚えている事を忘れているとは言わせねぇぞ・・・」
低い声でまりさに問いかけ続けながら赤れいむを挟んだ火バサミを徐々に引き上げていく。
それに堪らないのは当の赤れいむである。
「ゆぎぃいいっ!!やっやべちぇにぇぇえ!!!」
「おっおちびちゃぁん!!」
「ゆっぴぃぃ~!きょっきょわいい~!!」
「おちびい!!やっやめるんだぜぇ!やめろぉ!!」
声の限り叫びを上げるものの、それでどうにかなるはずも無い、そして、トリモチに引っ付いていた赤れいむは、その底部からブチブチと皮が剥がれていく。
ドブネズミですら引き剥がす事の出来ない粘着力、そんなモノから引き剥がそうとする力に赤ゆっくり如きが耐えられるはずも無く、どんどんと致命的な裂傷が傷口を大きく広げ饅頭皮に筋を作っていく。
ブチィン
「ゆっぎゃああああああああああああっ!!!」
鈍い音を残す訳でもなく、間の抜けた音と共にあっさりと赤れいむの底部は引きちぎられてしまった。
底部であるあんよは、そのままトリモチに引っ付いて、今もその苦しみを表現するかのように小さくうごめいている。
「あああああああああ!!お、おちびいぃ!!!」
「れいむのかわいいれいむにのあかちゃんがぁああ!!!」
「まりしゃのいもおとがぁ!!」
「きょ、きょわいよぉおお~!!」
「ゆっゆっゆっ」と小さく呻く赤れいむ。
飛べ出るほど引ん剥いた双眸は焦点が定まってなく、まるで今際の麻痺の様にも見えるが、ゆっくりにとっては、まだ底の皮が剥がれただけである。
その穴から餡子が致命となるまで溢れ出ない限り死んでしまうことは無い。
赤れいむは、その余りの痛みにショック状態に陥っていたが、それも安静にしてしっかり栄養を取りさえすれば回復するだろう、元と同じ様に歩けるようになるかは別だが・・・。
「ゆうかは確かに何かに押しつぶされて死んでたんだよ、それこそ丁度ゆっくりの様な大きさの丸い物でな。
チビ共の話を聞かなくても、ゆうかが居なくなった直後にそこに居るお前等が怪しいのは一目瞭然だけれどな・・・。
それでもしっかりとした確証が欲しかったんだよ・・・。
ゆうかを殺したゆっくりがそのままのさばってなんかいたら、またそんな馬鹿をやるゆっくりが出るだろうからな。
だから、質問にはきっちり答えろ・・・。
誤魔化しも嘘も許さん、そんな事をしたら・・・」
目の前にかざされた赤れいむの姿を見て、声を失っていたまりさ達であったが、赤れいむがゆっくり火バサミに挟まれたまま持ち上げられていく先に不穏な気配を感じ、声を上げた。
「な、なにをするつもりなんだぜぇ!!?」
赤れいむが持っていかれた先にあるのは、アウトドア用品売り場でよく見かけるバーベキューセット。
四脚の脚で長方形の本体を支える金属の箱の中には、赤々と燃える炭が山と詰まれていた。
トリモチに掛かっていたゆっくり達がギャーギャーと騒いでいる間に用意されていたものである。
まりさ達は目の前の脅威に精一杯で気付くことはなく、赤れいむがその頭上に掲げられた今、その禍々しい存在をやっと認識した。
「こうなる。 しっかり見ておけ」
人間がまりさ達を凝視し、言い聞かせるように言葉を紡いだ瞬間、赤ゆっくりを掴んでいた火バサミが開かれ、拘束の意味を無くす。
そして、赤れいむは煙すら上げる事が無くなった、赤々と燃える墨の中に一直線に引き込まれていった。
「ゆっぎゃぃいいいいいいいいいいいいいいぃっ!!!」
先ほどまで弱々しく呻いていたとは思えない絶叫が上がった。
ジュッという短くも間抜けな音とともに、赤れいむの裂けて無くなっていた底部が炭の上で焼かれる。
その一瞬で炭化した餡子の一部は、それ以上、赤れいむから餡子を洩らさせない蓋となった。
「あっじゅぅっ!!ちゅめたっ!!ちゅめたいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」
飛び出たように引ん剥いた目を更にひん剥いて涙とともに暴れる赤れいむ。
その涙はろくに頬を滑る事無く、下半身に到達したと同時にジュワジュワと弾け、あっという間に水蒸気と化していく。
底部がなくなった事で派手に暴れない事もあってか、叫びとは裏腹にその場で上半身をくねらせるばかりだ。
熱い、から身を切り裂く冷たさに感覚が切り替わる。
底はその身を裂くほどの冷気を感じるというのに、その直ぐ上のお腹の辺りは激痛を伴う熱。
少しでもその熱気と、冷たさから逃れようとぼーびのびを狂った速さで数回繰り返した後、その命と同じほど大切なリボンと共に・・・いや、それを含めた髪の毛、腹部の皮と共に一気に炎が上がる。
「たしゅけりょおおおおおぉぉぉぉぉぉ―――――・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
窒息寸前に叫び声を上げたかのような絶叫の後、ビクビクっと小さく麻痺をし、そのまま動かなくなった赤れいむは、しばらくもせず、見開いた双眸からグツグツと煮えたぎる濁ったカラメル状の粘ついた涙を流し、目玉がポンっと鈍い音を立てて弾けた。
蒸気らしき白い湯気が一瞬口から上がったと思うと、グジグジというような音を立てて静かに前のめりに伏せるように体勢を崩していき、炭の上に横たわるようにしてその身体を同化させていく・・・。
グジュグジュと泡立ちながら、独特の甘くて香ばしい臭いと共に、次第に水分もなくなり硬くなっていく様を、まりさ達は声も上げれず見守っていた。
「あ・・・あが・・・・・・・・・・れ、れいむのあかちゃんがぁ・・・・・・・」
ガタガタと震える一家の中で、最初に声をあげたのは親れいむだった。
しかし、だからといって言葉として成立しているかと問われると怪しい、単なる呻きに等しいものだったが・・・。
「な・・・ななに・・・なにをしやがるんだぜゲスにんげんんーーっ!!!」
憤怒の表情で搾り出すかのように怒号を張り上げるまりさ。
しかし、それを浴びせた人間はそれを全く意に介せず、赤れいむの成れの果てを火バサミで突っつきながら、原型すら怪しくなってしまった赤れいむを、さらにグズグズに崩れさせていく。
「ゆわっ!ゆわわーーっ!!やめっ!やめるんだぜぇ!!」
「こいつらなぁ・・・得意げに言いやがったんだよ・・・。
お父さんと一緒にゲスなゆうかの子供を制裁したんだぜってなぁ・・・。
お前等、同じゆっくりだろうが・・・何でそれだけ自分の子供の為に涙を流せて、他人やその子供は笑いながら殺す事ができるんだよ?」
「とうっぜん!なんだぜぇ!! げすなゆうかなんかとまりさのおちびちゃんがおなじきじゅんでかんがえることじたいばかばかしいんだぜぇ!!
そんなこともわからないばかでゲスなにんげんはしねぇ!!!」
口を引き裂かんばかりに叫ぶまりさを冷めた目で見下ろしながら、人間はガタガタと震えながらも睨んでいるれいむを向き質問する。
「なあ、お前も同じ意見なのか?
自分の子供が他の子供殺しててよ、平気だったのか?」
「ゆっがあああああああああ!!むしするんじゃ「うるさい」ゆぎゃ!!!」
食って掛かろうとするまりさに、れいむから視線を逸らす事すらなく火バサミを突き立てる。
それは、頬をかするように抉っていたがゆえに致命傷となる事は無かったが、先ほどまで火の中に突っ込んでいたものである、その熱せられた鉄が容赦なくまりさの中身である餡子を焼き始める。
「あっ!!あがぁあああああっ!!!あがっあ!!!」
「まっまりさああああ!!!」
「ひっ・・・! ひっく!! ・・・お・・・おちょうしゃぁん・・・・・・」
やけに静かだと思っていたら、子まりさをのぞく他の子供たちは余りの惨状に気を失っているらしい。
どうにか意識を保てている子まりさも、言葉を紡ぐのにも苦労するほど嗚咽を洩らし引き攣っている。
「五月蝿い・・・・・・。これ以上騒げばこのまま抉る・・・。
他の子供や番も抉った後、あの赤リボンと同じ様に燃やしてやる・・・嫌なら黙れ」
静かながらハッキリと聞こえてくる声。
それは、今の言葉に嘘偽りが無い事をゆっくりにさえ分からせる迫力だった。
「質問をする。
お前もこの黒帽子と同じ意見か? ゆうかはゲスで殺されても当然。その子供も殺されて当然。
自分の子供たちにも同じ様にゆうかを制裁させても良い訳か?」
「れ、れいむはれいむだよ!あかりぼんでもおまえでもないし、まりさはまりさだよ!くろぼうしなんてなまえじゃ・・・」
「やかましい!! 何がれいむはれいむだ!害獣なんかにご立派な名前なんていらねぇんだよ!!」
「ゆううううっ!!?」
れいむには訳が分からない、真面目に質問に答えないとは言っていないし、正しい事を主張しただけである。
それでも、それさえも目の前の人間は跳ね付ける。
この人間はゆっくりしていない、分かっている事だが、想像以上にゆっくりしていない。
コレはダメだ。
こんな身動きが出来ない状態でなければ、強い強いまりさが制裁してくれるのに・・・。
ベタベタさんは意地悪しないでゆっくりせずに剥がれてね!
という事を、思ったついでに口に出していた。
「・・・・・・・・・・なるほどなぁ・・・自分本位で思い上がりが激しく、人間にすら馬鹿にして掛かるほど馬鹿だとは聞いていたが、コレほどまで馬鹿だったとは・・・」
呆れ果てたように言い捨てるたあと、まりさに突き立てていた火バサミを引き抜く。
「ゆ・・・?ゆゆっ・・・!
に、にんげんさんはやっとじぶんのひをみとめたんだね!いまならあまあまたくさんとこのべたべたをはがしたあとちりょうして、にんげんさんのゆっくりぷれいすをよこしてね!
そうすればゆるしてあげるよ!!」
胸を張ってれいむは宣言する。
そう、この人間は自分の言葉に心打たれ、自らの非を認めることができたのだ。
流石れいむだ、他のゆっくりとは次元が違う。
「そんなれいむのおちびちゃんをころしたつみはおもいんだよ!
ゆるされないことなんだよ! ばかばかいうにんげんさんのほうがばかだってわかったでしょ!?
だったらゆっくりせずに、おもいおもいおちびちゃんのいのちととうかちのゆうぐうをれいむたちに…」
「ぐっぐううううううううう・・・そ、そんなんじゃぁ、まりささまのたまのおはだをきずつけたむくいははれないんだぜぇ・・・せいっさいしてやるんだぜぇ・・・」
「ゆっ!そうだよ!!おいにんげん!おまえはこれからどれいとしてこきつかってやって、しんだほうがいいってくらいれいむたちにほうししたあと、じぶんでじぶんをせいっさいしてしんでね!
それがむくいとうやつだよ!!」
「しょ・・・しょーだしょーだ!! いもうちょをかえちぇー!」
ドス
「ゆっ・・・?」
再び鈍い音がした後、黒い棒が目の前に聳え立つ。
その下にあるのは気を失っている我が子たちだという事に、暫くして気が付くだろう。
が、その前に、嫌でもそれを理解させる悲鳴が響く。
「ゆ・・・ちゃあああああああああああっ!!!」
「お、おちびちゃん!!」
「まりちゃのいもうちょがああああああああああああああ!!」
「なっなにするんだぜぇ!?くそにんげんんんんんっ!!」
「お前等・・・本当に聞いているこっちが哀しくなるくらい馬鹿なのな・・・。
三歩歩いたら忘れる鳥頭の方がマシに思えてくるわ・・・。
少なくともあいつ等は脅威になる存在くらいは認識できるからな・・・」
僅かな怒りの中に哀れみさえ含んだ呆れ顔で気絶していた赤まりさを摘み上げる。
火バサミで掴み上げられているのがまりさとれいむの違いはあるものの、まるでデジャビュの様な光景。
いや、憤怒に彩られていた人間の顔が、すっかり冷めてしまっているという違いは大きいものだろうが、当のゆっくり達にそんな事が関係あるはずは無い。
しかも、今度は何も躊躇する事無く、流れるような仕草で赤まりさを燃え盛る炭の中に投入した。
「ぴっぎゅああああああああああああああああああああああっ!!!」
「おっおちびぃいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」
「れいむのおちびちゃんがぁあああああああああああああっ!!!」
「まりちゃのいもうちょがあああああああああああああっ!!!」
「まあ、分かった事があるよ。
お前たちは一切の慈悲を与える存在じゃないってこと・・・」
赤まりさの絶叫や、それを見守る家族の絶叫すらしていないかのように、淡々と人間は気絶している赤ゆっくりをトリモチから剥ぎ取り、火の中に投入していく。
「与えたら与えただけ増長して、自分のためには他人の命すらゴミの様にあつかい、それが当たり前、感謝どころかそれを見下す・・・」
「あっああああああああああああああああああああっ!!!さいごのれいむにのかわいいかわいいおちびちゃんがぁああああああああああああああっ!!!」
「おちびぃいいいいいいいいいいいいいっ!!!」
「れ、れいみゅがあああああああああああああっ!!!」
「同属も結局の所、自分の利になるから協力し合っているように見えるが、必要とあらば自分の為に殺して悪びれる事すらないんだろうな、このクソガキ共みたいによ。
よってたかっていたぶり殺して、挙句、子供のおもちゃにしておいて英雄気取りか・・・。
はは・・・すげえよお前等・・・人も結構黒い歴史を綴っているけど、お前等みたいな黒歴史の塊じゃねぇって思わせるところは凄いわ・・・」
パチパチと火の粉が弾ける真っ赤な炭の山で、絶叫とともに赤ゆっくりの輪舞が繰り返される。
その動きは酷く短く、しかしそれは余りにも濃密な、ゆっくりとはかけ離れた激流の様な輪舞。
炭と触れたところは焼きついて離れなくなり、そこを支点に狂ったように身体を振る。
底部を焼き付けたものは、赤れいむと同じように頭をグルグルと円を描くように振り回し、涙とともに目玉を破裂させカルメラ状の濁った内容物を振りまく。
頭や顔を下に焼け付いたものはお尻を振り回しながらしーしーやうんうんを垂れ流し噴出する。
背中を焼き付けたものは絶叫を上げながら尺取虫の様に腹部をうねらせ流動させる。
どれもが呪われたかのように激しい動きだ。
「ゆっくりしたかった」とも、「なんでこんなめに」とも言葉に出きる事無く、その命を変わりに宿った炎と共に散らしていく。
地獄を切り取ったような光景は、得てして短いものだが、その中にはこの世の全ての苦痛が存在しているのではないかというほど燦々たるものだった。
「なっなんでこんなことをおおおおおおおおおおおおおっ!!ゆるさないよ!!れいむがいかにじぼのようなこころをもっていてもゆるせることじゃないよ!!」
「ゲスにんげんがぁあああああああああああ!!!」
「まりちゃのいもうちょをかえちぇえええええええええええっ!!!」
いつの間にか、ここにいるのは相変わらずトリモチに引っ付いて喚く親れいむと親まりさ、そして子まりさの三匹だけになっていた。
ガタガタとふるえながらも、怒りの方が上回っているのか、その双眸に怒りの炎を宿らせ人間に向かって吼える。
「言っても無駄だと思うがな・・・一応聞いておいてやる。
お前等と同じ様にゆうかも怒ったり泣いたりしていただろ・・・・・・なんで可哀相とか思わなかったんだ?
自分の身内の事はそれだけ怒れるのにさ・・・」
「そんなことしるかだぜぇ!!!まりさたちにゆうかがなにかかんけいしているんだぜ!?
おはなやおうちをひとりじめにするゆうかなんてゆっくりのかざかみにもおけないんだぜ!!
あんなのころされてとうぜんなんだぜ!!」
「そうだよ!!
ゆうかはおはながたくさんあるのにれいむたちにちっともわけてくれないんだよ!!
おはなさんはかってにはえてくるのに!!」
「しょうだしょうだ!!せいっしゃいしゃれてとうっぜんなんだじぇっ!!!」
「OK お前達の言い分はよぉ・・・っく理解できた」
ジュ
「ゆ・・・・・・・・・・・・・・?」
怒声を吐き出すために大きく開けた親れいむの口、そこから酷く間抜けな音が聞こえた。
火バサミで掴んだ握り拳大の真っ赤な炭の塊を親れいむの口に捻じ込んだのだ。
「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!!!」
「れ、れいぶうっ!!!」
「おきゃーしゃん!!!」
舌の上に乗った激痛と熱さの根源を吐き出そうと舌を忙しなく動かすが、それが災いし、口の中を次々と焼いていく。
炭の塊は取れる所か、ますます口の中に焼け付き、霊夢の口を焼け付かせて開けなくしていく。
「ちょっちぇぇっ!!これちょっ・・・ちょっちぇぇえええええええ・・・・・・・・・・」
次第に呂律すら怪しくなって、その口は煙を上げる噴火口の様になってしまった。
こうなってはもはや喋る事さえままならない。
「れ、れいぶ!!れぇいぶぅううううううううう!!!」
「おきゃーしゃんのおくちぎゃああああああああああああああああっ!!!」
最初は吐き出そうと下を向いていたれいむも、その上がってくる熱に耐え切れず、自然と熱を逃がすように上を向く。
もくもく上がる煙は、その流れる涙と反比例するかのように増していき、最後には噴火するかのように火柱を上げて燃え始めた。
「れいぶ!れいぶぅ!!れい・・ゆ・・・?あっつ!!あつつっあっついんだぜぇええええええええ!!
れいぶ!!はなれてぇええええええええええっ!!!」
「おきゃーしゃ・・・あつっあっつ!!!あちゅいんだじぇぇええええええええっ!!!
おきゃーしゃんむきょういけっ!!!」
ぼんぽんっと音を立てながら破裂する眼球は、周りのまりさ親子に降りかかり、更なる熱の責め苦を与える。
霊夢の身体はその中身の餡子を燃料にし、益々その炎を強めていた。
そのあにゃるからは、熱く溶け出した餡子が洩れ、下にのトリモチのシートとコンクリートを汚していく。
限界を迎えたその身体は、隣の親まりさに、まるで助けてくれといわんばかりに寄りかかるようにして倒れてきた。
「あっああああああああああああああああああああ!!!
これとって!!これっとてよぉおおおおおおおお!!!おちび!これちょってぇえええええええ!!!」
「おかーしゃん!やめちぇにぇえええ!!まりちゃもおちょーしゃんもあちゅがってるでしょおおおおおおおおおっ!!!まりちゃがかわいくないのおおおおおおおおお!!?」
いくら姉妹や子供が焼かれるという凄惨な光景を見せられていたとしても、今まではトリモチに引っ付いているとはいえ安全な所から見ていただけだ。
それが、今や目の前に阿鼻叫喚の地獄絵図が現れている。しかも、親れいむの姿を借りて。
「あがあああああああああああああっついいいいいいいいいいいいいっ!!!
なんでっ!!なんでまりさがこんなめにぃぃいいいいいいいっ!!
ぐぞにんげんんんんんっ!!まりささまがなにをしたあああああああああああっ!!?」
「やれやれ、またかよ・・・。
自分の事はすぐに理由を聞きたがるのな、他人のいう事なんて聞きゃしないのによ。オマケに自分の番がそんな目に合っているのに追い詰められると自分の事しか言いやがらねぇ・・・。
ま、良いさ、興が乗った・・・冥土の土産に教えてやるよ。
とは言っても、傍から見たら至極当たり前のことで、お前たちと同じく勝手な理由だ」
まりさ親子の地獄絵図を見ながら、まるで興味が無いような、心底どうでも良い目で見ていた人間が口を開く。
それでも、さもどうでも良いという姿勢だけは崩さずに・・・。それがまりさには気に入らない、自分がこんなに熱く苦しい思いをしているのに、何故この人間は平気で見ていられるんだ、と。
そんなまりさの心情を分かっていないのか、人間はそのまま言葉を綴る。
まあ、この人間に言わせれば、まりさの心境など、単純明快な憎悪にすぎない事など分かっているが、あえてそれを分かりたくも無かったというのが正しいだろう。
「ゆうかはな・・・こんな田舎にとっては益饅頭なんだよ、お前等害饅頭とちがってな。
古い話では、幸運を齎す、その家に居付いたら代々家が途絶える事は無い、とか言われているくらいもてはやされていてな・・・。
まあ、それだけの事を言い伝えても大切にしようというという事だな。
それだけ農家のためになる事をしてくれるんだ、ゆっくりゆうかってのはな・・・」
ゆうかは希少種に分類されるゆっくりだ。
そしてご存知のとおり、その生態は花を育てる事でゆっくりを得るというゆっくりらしい不思議な生態を持っている。
そんな生態が故、農家の利となる事が多く、人間との共存関係はとても良好になるのは自然の理といえる。
害虫や雑草を進んで駆逐し、肥沃な土地を人が手を加えずとも維持させ、捨てられた土地も雑木林と化すことは無くなる。
自分で育てたお花畑を譲りたがらないという欠点となりうる特徴も、ゆうかに土地を管理してもらう変わりにおの一部を使って花を植えさせるだけで満足する。
そうでなくとも、他のゆっくりと違って、ちゃんと話が成立するというのは大きな利点である。
落とし所をお互いにつけ合い、昔から良好な関係を築いていたといえる。
「ゆっゆううううううううううっ!!なんにゃにょしょれぇええええええええええ!!?
まりちゃだっちぇゆっくりしているでしょぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!?」
その物言いに納得できないのは、子まりちゃである。
自分もふくめ、家族はどんなゆっくりよりゆっくりしていた自負がある。
ましてや、あのゆっくりしていないゆうかなど、比べるべくも無い。
なのに、この人間はそんなゆうかをの事でまりしゃ達をこんな目に合わせたと言うのか?
「はぢをちりぇええええええええええええええっ!!まりちゃを・・・まりちゃちゃまをっ!ゆっくりさしぇりょぉおおおおおおおおおっ!!!」
「そのくせ・・・なんだてめえ等ゆっくりれいむだのまりさだのいう害獣共はよ・・・。
農作物は勝手に生えてくるからと荒らしまくるわ、人のテリトリーに勝手に踏み込んで自分のものだと言い張るわ・・・やりたい放題じゃねぇか・・・」
こちらも、お分かりの通り、通常種と呼ばれるゆっくりには、こんな人との共存関係が成り立っているはずなどなく、それが農家になれば尚更である。
「ここは農村とは少し離れた山の中だからよ・・・まあ、少々のゆっくりが居ついたところで目くじらを立てる事は無いって思ってたが・・・よりによって、せっかく居付いたゆうかを殺しやがって・・・。
こんな山のなか、雑草を処理するのにどれだけの手間が掛かると思ってんだよ・・・。
ゆうかが居れば、ある程度は勝手にやってくれるっていうのに・・・。
お前等れいむだのまりさだのに代表される通常種共は、人が必要なものばかり選んで食い漁って雑草は苦いって喰わねぇだろ・・・。
それでも駆除しなかったのは、ある程度は雑草や蟲を食って駆除するからまあ、ほおって置いたんだよ。
家の周りで遠慮なく大声上げるから五月蝿いわ、おうち宣言かますから安心して外出できねえわっていうマイナス面も大きかったが、駆除してしまうほどじゃないってな・・・。お前等喋るし・・・」
「だからどうちたああああああああああああああっ!!!まりちゃがゆっくりしてればいいだりょうがあああああっ!!!」
「まあ、そういう答えが返って来るとは思っていたよ。思っていたより悪いのがゆっくりらしいがな。
ほれ、親まりさが燃えて喋るどころじゃないってよ。助けなくて良いのか?」
「ゆっ?ゆあああああああああっ!!おちょうしゃ・・・ゆっ!?ゆああああああああああっ!!!
ま、まりちゃのおぼうちしゃんがあああああああああっ!!!」
子まりちゃが喋るのに夢中になっている内に、ついに親れいむ、おやまりさ共々炎に焼かれ、息絶えたようである。
しかし、息絶えたからといって、それに宿った炎まで消える訳ではない。
子まりちゃのとんがり帽子の先に火が付き、赤々と燃え上がった。
泣き喚きながら身体を前後に振りながら炎を消そうとするが、そんな事で消えるものではなく、それどころか更に酸素を含み、燃え盛っていく。
「これっこれけしちぇえええっ!!けしぇぇえええええええ!!にんげんんんんん!!!
まりちゃちゃまがしんじゃったりゃ、しぇかいのしょんしつだりょうがああああああああっ!!!」
「・・・・・・ひでぇなぁ・・・まったく・・・。
ほら・・よっ!!」
ボグッ
「 ゆ”!!? 」
しゃがみ込んで傍観していた人間が突然立ち上がり、まりちゃの横を掠めるように火バサミを振るう。
その速度は子ゆっくりに捉えられるものではないが、それが放った音はしっかりと耳に届いていた。
そして感じる熱さが徐々に収まっていく。
その異変をたっぷり1分はかかって察知すると、両親が居た方に振り返るまりちゃ。
そこには底を残し、吹き飛んだ両親の姿があった。
「ゆっ・・・ゆゆっ!! いじわるするあついあついがいなくなっちぇるよ!!
おぼうしさんのひさんもきえてるよ!!まりちゃがかわいいからおねがいをきいてくりぇたんだにぇ!!」
「・・・・・・予想はしてたが、いざ目の前でそれが展開させると酷いもんだな・・・」
両親が吹き飛んだというのに得意げに仰け反り、帽子の火が消えた事も自分が可愛いからという。
そんなまりちゃを、まるで汚いものでも見るかのような視線を向けた後、まりちゃが乗っかっているトリモチシートを火バサミで掴んで持ち上げた。
「ゆっ!! ゆふふふふ・・・ついにまりちゃはとりになっちゃんだよ・・・。ゆうしゅうでごめんにぇぇ・・・」
ぷるぷると震えながら得意げなドヤ顔を披露する子まりちゃ。
それを見ながら、こうつ、正気か?と訝しげに視線を送りながら、庭先まで移動する人間。
「ゆっ!? ゆゆ!? おいにんげん!このおしょらまでしはいしたまりちゃちゃまに・・・」
「そんなに自分が特別だって思うんなら・・・・・・ほらよ!他のゆっくりに助けてもらえ!!」
「ゆびゃあっ!!!」
火バサミで摘んだトリモチシートを、フリスビーの様に投げる。
クルクルと回りながら軟着陸する子まりちゃのシート。
その先には、少し高台になった丘の縁に掘られたゆっくりの巣穴があった。
「ゆゆ!? ゆっくりしてないゆっくりがきたよ!」
そこから聞こえてきた声に、子まりちゃの顔が険しくなる。
自分は選ばれたゆっくり、空まで支配し、あの凶悪な人間を平伏させて来たのだ、ゆっくりしてないとは何事か!と。
「なにをいっちぇるんだじぇええ!!まりちゃちゃまがうごけないんだじぇ!ちゃっちゃとこのべたべたをとりぇええ!!!」
「ゆゆっ!?なまいきなこまりさだよ・・・・・・。かぞくごと、ぶざまにゆっくりしてないにんげんさんにころされて、なにをいってるの」
のそりと巣穴から顔を覗けたのは自分の母親であったれいむより一回りも大きいれいむであった。
しかし、子まりちゃは動じない。なぜなら、あんな怖い思いをした地獄から生還したのだ。それだけでまりちゃには一騎当千の力が宿っていると本気で信じ込んでいるのだから。
「まりちゃはちがうんだじぇ!まりちゃはゆうしゃなんじゃよ!!あがめたてまつらなきゃだめなんじゃよ!!」
「おぼうしもかけたへんなゆっくりがなまいきいうなぁああっ!!」
「ゆっ・・・!? そっそれをいうなだじぇえええ!!」
今一番言われたくない事実、それを思い出させる言葉に、まりちゃは涙目になりながら反論する。
それに答えるかのように、その巣穴の奥から声がした。
「ゆうう。おかーしゃんをわるくいうげすはちんでにぇ!!」
「しょーだしょーだ!ちねっ!ちねちねぇ!!」
そんな汚い言葉を吐きながら出てきたのはまりちゃと同じ大きさの子ゆっくり達。
子まりさが1匹に子れいむが4匹である。まだ赤ゆを卒業したばかりといったところだろう。
「ゆっ・・・!?ゆううううううっ!??」
その言葉を聞いてびっくりしたのは子まりちゃである。
自分はとても怖い地獄から生還した勇者なのに、皆揃って罵倒を浴びせてくる。これは何なのだ、と・・・。
「ま、まりちゃはゆうしゃなんじゃ「うるさいよ!!!」ゆっ!ゆううっ!?」
言葉の途中で遮られる。
そのゆっくりできない出来事の連続に、子まりちゃの頭はパンク寸前だった。
「かぞくがころされているのに、とくいげにじぶんがゆうしゃなんてよくいえたよね!
そのおかざりとおなじでとてもみにくいこゆっくりだね!!」
「しょうだしょうだ!このげしゅ!!」
「ゆっゆうううううっ!!?」
「くじゅ!おやごろちい!!」
「ゆうううううっ!!?」
違う、自分は両親を殺してなどいない!悪いのはあのゆっくりしていない人間だ。
そんな人間を振り払い、生還したのだから、それに対して労ってくれても良いじゃないか。
それが子まりちゃの言い分だった。
しかし、ゆっくりでなくとも、傍から見れば両親や姉妹を殺されたというのに、得意げになっているなど正気の沙汰ではない。
ゆっくりできない事を忘却の彼方に追いやり、都合の良い様に改竄するのは、ゆっくりらしいといえばらしいが、そんな事など当の本ゆん以外関係ないことだった。
まあ、冷静に考えなくとも、まりちゃが言っている事はゲス行為以外の何物でもないという事だ。
「かじょくをみしゅてるにゃんてげしゅのやるこちょだよ!!そんにゃゆっくりはゆっくりせずにしにぇえええっ!!」
そんな子まりちゃに業を煮やしたのが一番小さなまりさである。
一応赤ゆより大きいというくらいで、言葉遣いから分かるとおり、まだまだ小さい。
けど、流石まりさ種といったところか、血気だけは一人前のようである。
「ゆべっ!!!」
しかし、勇敢と蛮勇は似ているようで全く異なるものだ。
果敢に跳ねて突撃したは良いものの、子まりちゃが乗っかっているトリモチシートに引っ付き、思いっきり前のめりに倒れこんだ。
この時点で、この子まりさの運命は尽きたといえる。
ゆっくりの力では引き剥がす事など夢物語、たとえ引き剥がしたとしても前半分の皮が全部持っていかれ、餡子をこぼしつくして終わりだろう・・・。
「ゆ・・・? まりさ・・・?」
末っ子の家族のアイドルが前のめりに倒れたまま、うんともすんとも言わない。
それにゆっくりできない雰囲気を感じて、母れいむが声を掛ける。
他の子供たちも、すぐに起き上がって、目の前のゲスを制裁するだろうと思っていたのだが、それとはかけ離れた結果になったせいで思考停止を起していた。
よく見れば小さく呻きながら背中の部分をグネグネと蠢かしているのだが、そんな変化などゆっくりには分からない。
いや、普段見ることの無い動きゆえ、理解が追いついていない。
「まりしゃがしんじゃったぁあああああああっ!!!」
子れいむ達の中の誰かが大声で泣き始めた。
それにつられるようにして他の子れいむも泣き始める。
小さい末っ子ではあったが、唯一のまりさ種という事もあり、姉妹のなかでももてはやされ、頼りにされていたのだ。
そんな子まりさが動かなくなった。それだけでこの子れいむ達にとっては大事件である。
「よ、よくもれいむのこどもをおおぉっ!!家族のアイドルをおおおおおおおっ!!!」
目を血走らせながら吼える親れいむの迫力に脅え、涙を溢れさせながらイヤイヤと首を振る子まりちゃ。
自分にも何が起こったのか分からない。突然小さなまりさが飛びかかかって来たと思ったら目の前で倒れたのである。
この場に居るゆっくり達の中で、子まりちゃにはその理由が唯一理解できるゆっくりであったのだろうが、それすら混乱によって忘却の彼方に追いやっていた。
今、どうして動けないのか?と聞かれたら、そういえば動けないんだぜ!とさも初めて気が付いたとばかりに叫ぶだろう。
「ゆっくりできないげすは、ゆっくりせずにしねぇえええええええええっ!!!」
「ゆべぇっ!!!」
鬼の様な形相をしながら飛び上がった親れいむに、身体の一部を押しつぶされて唸りを上げる子まりちゃ。
親れいむは完全に潰そうと飛び上がったのだろうが、そこはゆっくり、完全に狙いを逸らしていた。
そのお陰で子まりちゃは命拾いをした訳だが、それが子まりちゃにとって良い結果かどうかは分からない。
むしろ一思いに潰されていた方がましだっただろう、この後の事を思えば・・・。
「ゆっ・・・ゆべええええええええええっ!!いちゃいいいいいいいいいいっ!!!」
「ゆゆっ!? げすのくせにしぶといまりさだね! いまこのれいむがせいっさいして・・・・・・なっなんでうごけないのぉおおおおおおお~っ!!?」
トリモチシートにがっちりとあんよを食い込ませた親れいむは、もう二度とそのあんよで地を踏む事は無いだろう。
ドブネズミ用の大きなトリモチシートは、尚も驚異的な粘着力を宿らせている。いくら大きな親れいむとてどうにもならないだろう。
「いぢゃいいいいいいいいいいいっ!!たすけちぇおとーしゃぁん!おかーしゃぁん!!れいみゅぅうううっ!!!」
家族の名前を声の限り張り上げる子まりちゃ。
それに苛立ちを感じたのは親れいむである。
「うるさいよおおおおおおおおっ!!げすのくせにしんだかぞくのなまえなんてさけぶんじゃないよぉおおっ!!!」
「しよーだしょーだ!!まりちゃのかちゃきい!!!ぶべっ!!」
「おっおちびちゃああん!!れいむにのかわいいおちびちゃんがあああっ!!!」
泣きながらも末っ子まりさの仇を打とうと果敢に突っ込んできた子れいむも、例外なくトリモチの中にダイブし動けなくなった。
それに混乱したのは母親と残された姉妹である。
「あっあああああああああああっあっあーーっ!!れいむのおちびちゃんがぁ!!れいむにのかわいいかわいいおちびちゃんがあああっ!!」
必死になりながら突っ込んできた子れいむを助けようとするも、その身体は前後左右に伸びるだけである。
「ゆわああああああああああっ!!もう、もうやなのじぇぇええ!!もうおうちかえるっ!!!」
相変わらず子まりちゃは潰された頬の痛みに身体をよじりながら泣き叫び、叶わぬ夢を叫んでいた。
「なっなにごとなんだぜぇ!!?」
阿鼻叫喚の中で響く声、一瞬皆がその声で静まり返り、視線を向ける。
その先には、親れいむほどの大きさのまりさが驚愕に顔を引き攣らせていた。
それを見て笑顔を取り戻す子れいむ達。その表情には希望が満ちている。
「おとーしゃん!!このまりちゃが!このまりちゃが、かぞくのあいどるのまりちゃをころちちゃったぁああっ!!」
「ゆっ!!? なっなんだってーっ!!?」
「まりさ!このげすをせいっさいしてほしいよ!!れいむはこのげすのさくりゃくでうごけないんだよ!!」
「ゆっゆわあああああああああん!!!まりちゃはなにもわりゅくないんだじぇえええっ!!!」
再び声の限り泣き出す子まりちゃ、しかし、そんな子まりちゃとは裏腹に、この一家の視線は冷たく重い。
「こっこのげすが!このげすがまりさのかわいいこどもたちをおおおおっ!!ゆっくりせずにしねぇええっ!!!」
親まりさの怒号と共に繰り出されるストンピング。しかし…
「ゆべっっっ!!!」
べしゃっという鈍い音と共に、飛び上がったまりさは餡子の花を咲かせ、弾かれたように吹っ飛んだ。
そのまま地面に接触、べしゃっという音と共に放射線状に餡子を飛び散らせ、ピクピクと何度か麻痺した後、二度と動かなくなった。
「手にずっしり来る重さはあったが、案外脆いのな」
その場にいるゆっくり全てが完全に硬直している中、振り上げた火バサミをゆっくりと下ろす人間の姿があった。
その姿を皆が視界に入れても動こうとしない、いや、何が起こったのか分からず、硬直が解けない。
そんなゆっくりなど眼中に無いかのように人間は群がっている子れいむの傍まで歩みを進め、そのまま火バサミでなぎ払った。
パンっという小気味良い音が場違いに感じるほどの静寂。
親れいむはそれにビクッと一度身体を揺らしただけだ。
ゆっくり達の硬直が解けないまま、人間は更に火バサミを振るい、立て続けに2匹の子れいむを餡子の花に変えていく。
「なっなにをするの!!?にんげっぶべええええっ!!!」
硬直が解け、叫ぼうとした直後、親れいむも伴侶と子供たちの後を追った。
その様を茫然自失で見ていた子まりちゃは、親れいむの返り餡子を浴びながら、完全に呆けていた。
何が起こったのか分からない・・・いや、分かりたくない・・・・・・。
そもそも何だ、この人間は・・・・・・そうだ、この人間がまりちゃ達をゆっくりさせなくしたんだ・・・・・・。
そして、今も、いくら憎いゲスゆっくり達とはいえ、容赦なくゆっくりできなくした・・・。
なんで・・・?なんでまりちゃがこんな目に・・・・・・。
「あー・・・もう良いや・・・。やっぱお前等、見ていて胸糞悪くなる・・・。
もう、この辺りのゆっくり全部潰すわ」
あっけらかんと答えた人間は、さもめんどくさそうに頭を掻いていた。餡子にまみれた火バサミを振りながら。
「なんで・・・・・・なんでにゃにょ・・・・・・?」
「ん・・・?」
「にゃんでこんにゃことしゅるにょおおおおおっ!!? まりちゃたちはゆっくりしてただけでしょぉおおおおおおっ!!!」
ガタガタ震えながら、顔を真っ青にし声を張り上げる。
怖い。この人間の行動が理解できない。
まりちゃの中では、人間はどうしようもない困った存在という認識から、人間は不気味だ、に切り替わっていた。
なぜこんな事をするのか理解できない、説明できないから怖い。
傍から見たらそんな問い掛けなど、一目瞭然な答えが出るのだが、当の子まりちゃには理解できない。
いや、まあ、出来の悪いゆっくりにしてはこれでも上出来と褒めるべきだろうか・・・。
「お前、こんな経験しておいてよく言えるなそんな事・・・・・・。
いや、自分のやったことも未だに分かっていないみたいだし・・・まあ、そのザマじゃ当然といえば当然か・・・。
じゃあ、逆に聞くが、周りの声、聞こえないのか?」
「 ゆっ・・・・・・? 」
子まりちゃは、人間の言われるまま、その視線が向かう方を見る。
そして暫くの時間を経て聞こえてくる微かな声・・・・・・。
「ゆっくりしてないまりさがいるよ・・・。あのままにんげんにせいっさいされちゃえばいいのにね・・・」
「ゆううう・・・あのまりさ、こどものくせになにかんがえているんだろうね・・・?にんげんにさからってかぞくみんなころされてじぶんはにんげんにたちむかいもしないなんて・・・。
ゆっくりしていないのはおかざりだけじゃないんだね・・・」
「せいっさいしようよ・・・」
「そうだね。にんげんがいなくなったらせいっさいするべきだね」
「うん、にんげんはばかだけどめんどうくさいからね・・・・・・あとにするべきだね・・・」
「ゆっゆううううううううううっ!!?」
風に乗って流れてくるのは、この丘に無数に穿たれたゆっくり達の巣穴からであった。
呪詛そのものの呟きは、一切まりちゃに同情的な声は無い。
聞こえてきた声をまりちゃは認めたくなかった、けれど、未だ、その声が無情にも風に乗ってやってくる。
「いやじゃいやじゃいやじゃぁああっ!!まりちゃは、まりちゃはわるくにゃいいいいっ!!!」
首をブンブン振りながらその声を否定し、自分を肯定しようとも、聞こえてくる声が変わる事は無い。
「ここまで人間なめきってるのも問題だが、その思考がすでに反吐が出るわ・・・・・・。
こんな存在の中に、いくら脆弱で害が無いからっていっても居たくねぇよ・・・。
すげえよ、ゆっくりって・・・人間をここまで嫌悪させる生物、他に思いあたらねぇよ・・・。
ここまで同じゆっくりでも違うもんか? あの居つこうとしていたゆうかは、もっと話が通じたがなぁ・・・」
やれやれという様に溜め息を吐き、眉を顰めながら声のする丘を睨みつける人間の目は、完全にゴキブリを見るような目だった。
いや、ゴキブリに嫌悪感を感じても、殺意まで抱かせるなど稀だろう、そういう意味では違っている。
「まあ、丁度良いわ・・・・・・。
お前置いていたらゆっくり共が制裁しにやってくるだろうから、使えるまで使ってやる。
これからゆっくり駆除に付き合え、拒否はゆるさねぇ」
「いっ・・・・・・・・・いやじゃあああああああああああああああっ!!!」
あんなゆっくりしていない事が繰り返される。
同属に辛い目に合ったと慰めてもらえる訳はなく、その口から出てくるのはゆっくりしていない家族を見捨てたゆっくり・・・。お飾りがゆっくりしていないゆっくり・・・・・・。
制裁制裁・・・・・・家族を殺されたまりちゃに同情するゆっくりはいなく、変わりに憎悪を持って潰しにくるゆっくりばかり・・・。そして、目の前で同属を叩き潰される。
そんなゆっくりしていない出来事の連続の中、同属の手で潰されるのが先か、ゆっくりできないせいで精神が壊れるのが先か、それがこのまりちゃの遠くない決定した未来である。
虐待 制裁 自業自得 家族崩壊 同族殺し 駆除 番い 群れ 野良ゆ 姉妹 赤ゆ 子ゆ ゲス 希少種 自然界 現代 即興のつもりでかいたら、何故かこんな長く・・・ あけましておめでとうございます!ゆっくりしていってくれると嬉しいですよ!
「うっがあああ~っ!!
ここからはなせ!ゆっくりさせろぉ!」
「おとーしゃんたしゅけちぇえ!!」
「ゆっゆぅぅ~!まりさぁ!」
五月蝿い・・・・・・
耳障り以外の何物でもない悲鳴が頭を直撃させる。
その剣呑な空気を感じてか、今までは少し見渡せば必ず目に入ったゆっくりの姿が一切見えない。
足元に転がる騒音の元凶。
何処にでも居る、れいむ、まりさの番、そしてその赤ゆっくりである子れいむ3匹と子まりさ2匹がネズミ捕り用のトリモチに引っ付いて無様な様を晒している。
いや、この内まりさとれいむの一匹ずつは他の赤ゆと比べて大きいから後に生まれた子ゆと言ったところだろうか。
こいつらの巣の前にこのトリモチを仕掛けていた成果がこれだ。
「なんでこんなことするのぉ!?
まりさたちはただゆっくりかりをしていただけだよぉ!にんげんさんにはなにも…」
「だまれ!!」
ガァン
「ゆっひゃあぁ!!!」
「きょ、きょわいぃい~・・・・・・」
手に持った火バサミでゆっくり共の近くのコンクリを叩く。
金切り声にも似た火バサミの音と吼えるような人間の怒声に、思わず縮み上がり恐ろしーしーを洩らす子ゆっくり達。
親も派手に洩らしてこそ無いものの、ぷしっという軽い音と共にしーしーを吹き上げていた。
「お前等が住んでいたゆっくりぷれいすとやらな・・・あの巣穴、一体誰のものだと思っているんだよ・・・」
「あ、あれはまりさたちのものなんだぜぇ!にんげんにとやかくいわれるおぼえはないんだぜ!」
怒りを孕ませながら問う人間に、まりさは脅えながらもしっかりとした意思を持って言い返した。
番や子供の前でという事もあるが、ここで下手に出ては舐められる。舐められたら終わりだ、と、餡子脳なりに考えをだした結論である。
「前等・・・お前等が住んでいたあの巣穴な・・・・・・一昨日…いや、ゆっくりにゃそんな事言っても憶えていないかもしれないがな・・・黒帽子や赤りぼんじゃなく、ゆうかが住んでいただろが・・・」
静かに、しかしドスをきかせた低い声は、それを聞く者を少なからず戸惑わせるだろう。
「そんなことしらないんだぜぇ!! にんげんはさっさとまりさたちをかいっほうするのぜぇ!!
そのあとしゃざいにあまあまをようきゅうするんだぜ!これはせいっとうなけんりっなんだぜ!!」
しかし、ゆっくりにはそんな事などお構い無しだった。
いや、剣呑な雰囲気などという微細な感情の変化を捉えるという事は出来るはずも無く、人間が静かに声を発した事で、逆に脅えて下手に出たと考えているのだろう。
「ゆうかが住んでいただろうと聞いてるんだよ!!!」
ガァン
「ゆっぎゃああああ~!!!」
再び上がる轟音、それと共にゆっくり達の悲鳴も重なって響きをあげる。
「あっああぁあ~!!ま、まりさのもっちもちのほっぺがぁあ~!!!」
しかし、今度は火バサミはコンクリートの床を叩いただけではなく、まりさの頬を薄く引っ掛けたらしい。
逃れようの無い激痛に、動けぬ身でありながら全身を躍動させて痛みを表現している。
「も、もうやじゃあ~!おうちっ!おうちかえる!!」
「なんじぇこんにゃこちょにぃ~!おかーしゃんおちゃーしゃん!れいみゅをたしゅけちぇにぇええ~!!」
「にんげんさん!もうやめてあげてね!れいむたちはなにもわるいことしてないよ!」
「またそれか!
お前等に聞いているのはそんな事じゃねぇんだよ!!
そこにいる子ゆ!てめえ等が言ってただろうが!ゲスなゆうかを制裁しておうちを奪い返したってな!」
腹をトリモチにくっつけてお尻をブリブリと振っている子ゆっくりに火バサミを向けて激昂する。
「ああ、この周りにいるゆっくり共の五月蝿い声には散々腹も立てていたが、それでもお前等も生きているから・・・と、大目にも見ていたさ・・・。 けどな!!」
ガアン!と怒号を表したかのように上がる火バサミの音に、ゆっくり達は再び短い嗚咽を上げて引き攣った。
ガタガタと震え、今度はしーしーだけでなく涙までが滝の様に流れ出る。
逃げようにも反撃しようにも身動きも取れない、その事実が更に恐怖を増大させていく。
「あの巣穴を作って住み着いたゆうかは、お前等が言う様にゲスでもなんでもねぇ!
奪い返しただぁ? ふざけるな!てめえ等が逆にゆうかの作った巣穴を奪って、挙句に殺したんだろうが!!」
顔を真っ赤にしてガンガンとコンクリートの床を叩く人間の姿はとてもゆっくりなどしておらず、まりさ達にはまさしく昔話にでてくる鬼に見えただろう。
「な・・・・・・なななにを・・・ま、まままりさたちは・・・げすなゆうかのことなんて・・・し、しし、しらないんだぜぇ・・・」
それでも、勇気を振り絞って人間に訴えかけようとするまりさ。
このまま黙っていても不当に殺されてしまうと思ってのことだったが、その背景には、動けないから人間が脅威なのであって、動けるなら自分たちの方が強いという自信があったからだろう。
声が震えながらでも、その様は未だふてぶてしいままだ。
「ほお・・・・・・」
その答えを聞いて、人間はその熱を急激に冷ませたように静かに呻いた様な声を上げた。
しかし、その双眸は相変わらず剣呑な光を宿したままだ、いや、その光は確実に大きくなっている。
「ゆっぐじ!!?」
「おっおちびちゃぁん!!」
突然目の前に突き立った先が真っ黒に変色した棒は、先ほどまで人間が耳障りな騒音を奏でていたものだった。
それが、目の前の大泣きしていた赤れいむを挟んでいる。
「なっなにをするんだぜにんげん!!おちびをはなすんだぜぇ!!!」
「今朝な・・・巣穴で留守番しているこいつ等に聞いてんだよ・・・。ここにゆっくりが居た筈だって・・・。
そうしたらこいつら・・・意気揚々とお父さんや群の皆で悪いゆうかを制裁してゆっくりプレイスとやらを取り戻したって言いやがったんだよ・・・。
知らないって何だよ、子供でも覚えている事を忘れているとは言わせねぇぞ・・・」
低い声でまりさに問いかけ続けながら赤れいむを挟んだ火バサミを徐々に引き上げていく。
それに堪らないのは当の赤れいむである。
「ゆぎぃいいっ!!やっやべちぇにぇぇえ!!!」
「おっおちびちゃぁん!!」
「ゆっぴぃぃ~!きょっきょわいい~!!」
「おちびい!!やっやめるんだぜぇ!やめろぉ!!」
声の限り叫びを上げるものの、それでどうにかなるはずも無い、そして、トリモチに引っ付いていた赤れいむは、その底部からブチブチと皮が剥がれていく。
ドブネズミですら引き剥がす事の出来ない粘着力、そんなモノから引き剥がそうとする力に赤ゆっくり如きが耐えられるはずも無く、どんどんと致命的な裂傷が傷口を大きく広げ饅頭皮に筋を作っていく。
ブチィン
「ゆっぎゃああああああああああああっ!!!」
鈍い音を残す訳でもなく、間の抜けた音と共にあっさりと赤れいむの底部は引きちぎられてしまった。
底部であるあんよは、そのままトリモチに引っ付いて、今もその苦しみを表現するかのように小さくうごめいている。
「あああああああああ!!お、おちびいぃ!!!」
「れいむのかわいいれいむにのあかちゃんがぁああ!!!」
「まりしゃのいもおとがぁ!!」
「きょ、きょわいよぉおお~!!」
「ゆっゆっゆっ」と小さく呻く赤れいむ。
飛べ出るほど引ん剥いた双眸は焦点が定まってなく、まるで今際の麻痺の様にも見えるが、ゆっくりにとっては、まだ底の皮が剥がれただけである。
その穴から餡子が致命となるまで溢れ出ない限り死んでしまうことは無い。
赤れいむは、その余りの痛みにショック状態に陥っていたが、それも安静にしてしっかり栄養を取りさえすれば回復するだろう、元と同じ様に歩けるようになるかは別だが・・・。
「ゆうかは確かに何かに押しつぶされて死んでたんだよ、それこそ丁度ゆっくりの様な大きさの丸い物でな。
チビ共の話を聞かなくても、ゆうかが居なくなった直後にそこに居るお前等が怪しいのは一目瞭然だけれどな・・・。
それでもしっかりとした確証が欲しかったんだよ・・・。
ゆうかを殺したゆっくりがそのままのさばってなんかいたら、またそんな馬鹿をやるゆっくりが出るだろうからな。
だから、質問にはきっちり答えろ・・・。
誤魔化しも嘘も許さん、そんな事をしたら・・・」
目の前にかざされた赤れいむの姿を見て、声を失っていたまりさ達であったが、赤れいむがゆっくり火バサミに挟まれたまま持ち上げられていく先に不穏な気配を感じ、声を上げた。
「な、なにをするつもりなんだぜぇ!!?」
赤れいむが持っていかれた先にあるのは、アウトドア用品売り場でよく見かけるバーベキューセット。
四脚の脚で長方形の本体を支える金属の箱の中には、赤々と燃える炭が山と詰まれていた。
トリモチに掛かっていたゆっくり達がギャーギャーと騒いでいる間に用意されていたものである。
まりさ達は目の前の脅威に精一杯で気付くことはなく、赤れいむがその頭上に掲げられた今、その禍々しい存在をやっと認識した。
「こうなる。 しっかり見ておけ」
人間がまりさ達を凝視し、言い聞かせるように言葉を紡いだ瞬間、赤ゆっくりを掴んでいた火バサミが開かれ、拘束の意味を無くす。
そして、赤れいむは煙すら上げる事が無くなった、赤々と燃える墨の中に一直線に引き込まれていった。
「ゆっぎゃぃいいいいいいいいいいいいいいぃっ!!!」
先ほどまで弱々しく呻いていたとは思えない絶叫が上がった。
ジュッという短くも間抜けな音とともに、赤れいむの裂けて無くなっていた底部が炭の上で焼かれる。
その一瞬で炭化した餡子の一部は、それ以上、赤れいむから餡子を洩らさせない蓋となった。
「あっじゅぅっ!!ちゅめたっ!!ちゅめたいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」
飛び出たように引ん剥いた目を更にひん剥いて涙とともに暴れる赤れいむ。
その涙はろくに頬を滑る事無く、下半身に到達したと同時にジュワジュワと弾け、あっという間に水蒸気と化していく。
底部がなくなった事で派手に暴れない事もあってか、叫びとは裏腹にその場で上半身をくねらせるばかりだ。
熱い、から身を切り裂く冷たさに感覚が切り替わる。
底はその身を裂くほどの冷気を感じるというのに、その直ぐ上のお腹の辺りは激痛を伴う熱。
少しでもその熱気と、冷たさから逃れようとぼーびのびを狂った速さで数回繰り返した後、その命と同じほど大切なリボンと共に・・・いや、それを含めた髪の毛、腹部の皮と共に一気に炎が上がる。
「たしゅけりょおおおおおぉぉぉぉぉぉ―――――・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
窒息寸前に叫び声を上げたかのような絶叫の後、ビクビクっと小さく麻痺をし、そのまま動かなくなった赤れいむは、しばらくもせず、見開いた双眸からグツグツと煮えたぎる濁ったカラメル状の粘ついた涙を流し、目玉がポンっと鈍い音を立てて弾けた。
蒸気らしき白い湯気が一瞬口から上がったと思うと、グジグジというような音を立てて静かに前のめりに伏せるように体勢を崩していき、炭の上に横たわるようにしてその身体を同化させていく・・・。
グジュグジュと泡立ちながら、独特の甘くて香ばしい臭いと共に、次第に水分もなくなり硬くなっていく様を、まりさ達は声も上げれず見守っていた。
「あ・・・あが・・・・・・・・・・れ、れいむのあかちゃんがぁ・・・・・・・」
ガタガタと震える一家の中で、最初に声をあげたのは親れいむだった。
しかし、だからといって言葉として成立しているかと問われると怪しい、単なる呻きに等しいものだったが・・・。
「な・・・ななに・・・なにをしやがるんだぜゲスにんげんんーーっ!!!」
憤怒の表情で搾り出すかのように怒号を張り上げるまりさ。
しかし、それを浴びせた人間はそれを全く意に介せず、赤れいむの成れの果てを火バサミで突っつきながら、原型すら怪しくなってしまった赤れいむを、さらにグズグズに崩れさせていく。
「ゆわっ!ゆわわーーっ!!やめっ!やめるんだぜぇ!!」
「こいつらなぁ・・・得意げに言いやがったんだよ・・・。
お父さんと一緒にゲスなゆうかの子供を制裁したんだぜってなぁ・・・。
お前等、同じゆっくりだろうが・・・何でそれだけ自分の子供の為に涙を流せて、他人やその子供は笑いながら殺す事ができるんだよ?」
「とうっぜん!なんだぜぇ!! げすなゆうかなんかとまりさのおちびちゃんがおなじきじゅんでかんがえることじたいばかばかしいんだぜぇ!!
そんなこともわからないばかでゲスなにんげんはしねぇ!!!」
口を引き裂かんばかりに叫ぶまりさを冷めた目で見下ろしながら、人間はガタガタと震えながらも睨んでいるれいむを向き質問する。
「なあ、お前も同じ意見なのか?
自分の子供が他の子供殺しててよ、平気だったのか?」
「ゆっがあああああああああ!!むしするんじゃ「うるさい」ゆぎゃ!!!」
食って掛かろうとするまりさに、れいむから視線を逸らす事すらなく火バサミを突き立てる。
それは、頬をかするように抉っていたがゆえに致命傷となる事は無かったが、先ほどまで火の中に突っ込んでいたものである、その熱せられた鉄が容赦なくまりさの中身である餡子を焼き始める。
「あっ!!あがぁあああああっ!!!あがっあ!!!」
「まっまりさああああ!!!」
「ひっ・・・! ひっく!! ・・・お・・・おちょうしゃぁん・・・・・・」
やけに静かだと思っていたら、子まりさをのぞく他の子供たちは余りの惨状に気を失っているらしい。
どうにか意識を保てている子まりさも、言葉を紡ぐのにも苦労するほど嗚咽を洩らし引き攣っている。
「五月蝿い・・・・・・。これ以上騒げばこのまま抉る・・・。
他の子供や番も抉った後、あの赤リボンと同じ様に燃やしてやる・・・嫌なら黙れ」
静かながらハッキリと聞こえてくる声。
それは、今の言葉に嘘偽りが無い事をゆっくりにさえ分からせる迫力だった。
「質問をする。
お前もこの黒帽子と同じ意見か? ゆうかはゲスで殺されても当然。その子供も殺されて当然。
自分の子供たちにも同じ様にゆうかを制裁させても良い訳か?」
「れ、れいむはれいむだよ!あかりぼんでもおまえでもないし、まりさはまりさだよ!くろぼうしなんてなまえじゃ・・・」
「やかましい!! 何がれいむはれいむだ!害獣なんかにご立派な名前なんていらねぇんだよ!!」
「ゆううううっ!!?」
れいむには訳が分からない、真面目に質問に答えないとは言っていないし、正しい事を主張しただけである。
それでも、それさえも目の前の人間は跳ね付ける。
この人間はゆっくりしていない、分かっている事だが、想像以上にゆっくりしていない。
コレはダメだ。
こんな身動きが出来ない状態でなければ、強い強いまりさが制裁してくれるのに・・・。
ベタベタさんは意地悪しないでゆっくりせずに剥がれてね!
という事を、思ったついでに口に出していた。
「・・・・・・・・・・なるほどなぁ・・・自分本位で思い上がりが激しく、人間にすら馬鹿にして掛かるほど馬鹿だとは聞いていたが、コレほどまで馬鹿だったとは・・・」
呆れ果てたように言い捨てるたあと、まりさに突き立てていた火バサミを引き抜く。
「ゆ・・・?ゆゆっ・・・!
に、にんげんさんはやっとじぶんのひをみとめたんだね!いまならあまあまたくさんとこのべたべたをはがしたあとちりょうして、にんげんさんのゆっくりぷれいすをよこしてね!
そうすればゆるしてあげるよ!!」
胸を張ってれいむは宣言する。
そう、この人間は自分の言葉に心打たれ、自らの非を認めることができたのだ。
流石れいむだ、他のゆっくりとは次元が違う。
「そんなれいむのおちびちゃんをころしたつみはおもいんだよ!
ゆるされないことなんだよ! ばかばかいうにんげんさんのほうがばかだってわかったでしょ!?
だったらゆっくりせずに、おもいおもいおちびちゃんのいのちととうかちのゆうぐうをれいむたちに…」
「ぐっぐううううううううう・・・そ、そんなんじゃぁ、まりささまのたまのおはだをきずつけたむくいははれないんだぜぇ・・・せいっさいしてやるんだぜぇ・・・」
「ゆっ!そうだよ!!おいにんげん!おまえはこれからどれいとしてこきつかってやって、しんだほうがいいってくらいれいむたちにほうししたあと、じぶんでじぶんをせいっさいしてしんでね!
それがむくいとうやつだよ!!」
「しょ・・・しょーだしょーだ!! いもうちょをかえちぇー!」
ドス
「ゆっ・・・?」
再び鈍い音がした後、黒い棒が目の前に聳え立つ。
その下にあるのは気を失っている我が子たちだという事に、暫くして気が付くだろう。
が、その前に、嫌でもそれを理解させる悲鳴が響く。
「ゆ・・・ちゃあああああああああああっ!!!」
「お、おちびちゃん!!」
「まりちゃのいもうちょがああああああああああああああ!!」
「なっなにするんだぜぇ!?くそにんげんんんんんっ!!」
「お前等・・・本当に聞いているこっちが哀しくなるくらい馬鹿なのな・・・。
三歩歩いたら忘れる鳥頭の方がマシに思えてくるわ・・・。
少なくともあいつ等は脅威になる存在くらいは認識できるからな・・・」
僅かな怒りの中に哀れみさえ含んだ呆れ顔で気絶していた赤まりさを摘み上げる。
火バサミで掴み上げられているのがまりさとれいむの違いはあるものの、まるでデジャビュの様な光景。
いや、憤怒に彩られていた人間の顔が、すっかり冷めてしまっているという違いは大きいものだろうが、当のゆっくり達にそんな事が関係あるはずは無い。
しかも、今度は何も躊躇する事無く、流れるような仕草で赤まりさを燃え盛る炭の中に投入した。
「ぴっぎゅああああああああああああああああああああああっ!!!」
「おっおちびぃいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」
「れいむのおちびちゃんがぁあああああああああああああっ!!!」
「まりちゃのいもうちょがあああああああああああああっ!!!」
「まあ、分かった事があるよ。
お前たちは一切の慈悲を与える存在じゃないってこと・・・」
赤まりさの絶叫や、それを見守る家族の絶叫すらしていないかのように、淡々と人間は気絶している赤ゆっくりをトリモチから剥ぎ取り、火の中に投入していく。
「与えたら与えただけ増長して、自分のためには他人の命すらゴミの様にあつかい、それが当たり前、感謝どころかそれを見下す・・・」
「あっああああああああああああああああああああっ!!!さいごのれいむにのかわいいかわいいおちびちゃんがぁああああああああああああああっ!!!」
「おちびぃいいいいいいいいいいいいいっ!!!」
「れ、れいみゅがあああああああああああああっ!!!」
「同属も結局の所、自分の利になるから協力し合っているように見えるが、必要とあらば自分の為に殺して悪びれる事すらないんだろうな、このクソガキ共みたいによ。
よってたかっていたぶり殺して、挙句、子供のおもちゃにしておいて英雄気取りか・・・。
はは・・・すげえよお前等・・・人も結構黒い歴史を綴っているけど、お前等みたいな黒歴史の塊じゃねぇって思わせるところは凄いわ・・・」
パチパチと火の粉が弾ける真っ赤な炭の山で、絶叫とともに赤ゆっくりの輪舞が繰り返される。
その動きは酷く短く、しかしそれは余りにも濃密な、ゆっくりとはかけ離れた激流の様な輪舞。
炭と触れたところは焼きついて離れなくなり、そこを支点に狂ったように身体を振る。
底部を焼き付けたものは、赤れいむと同じように頭をグルグルと円を描くように振り回し、涙とともに目玉を破裂させカルメラ状の濁った内容物を振りまく。
頭や顔を下に焼け付いたものはお尻を振り回しながらしーしーやうんうんを垂れ流し噴出する。
背中を焼き付けたものは絶叫を上げながら尺取虫の様に腹部をうねらせ流動させる。
どれもが呪われたかのように激しい動きだ。
「ゆっくりしたかった」とも、「なんでこんなめに」とも言葉に出きる事無く、その命を変わりに宿った炎と共に散らしていく。
地獄を切り取ったような光景は、得てして短いものだが、その中にはこの世の全ての苦痛が存在しているのではないかというほど燦々たるものだった。
「なっなんでこんなことをおおおおおおおおおおおおおっ!!ゆるさないよ!!れいむがいかにじぼのようなこころをもっていてもゆるせることじゃないよ!!」
「ゲスにんげんがぁあああああああああああ!!!」
「まりちゃのいもうちょをかえちぇえええええええええええっ!!!」
いつの間にか、ここにいるのは相変わらずトリモチに引っ付いて喚く親れいむと親まりさ、そして子まりさの三匹だけになっていた。
ガタガタとふるえながらも、怒りの方が上回っているのか、その双眸に怒りの炎を宿らせ人間に向かって吼える。
「言っても無駄だと思うがな・・・一応聞いておいてやる。
お前等と同じ様にゆうかも怒ったり泣いたりしていただろ・・・・・・なんで可哀相とか思わなかったんだ?
自分の身内の事はそれだけ怒れるのにさ・・・」
「そんなことしるかだぜぇ!!!まりさたちにゆうかがなにかかんけいしているんだぜ!?
おはなやおうちをひとりじめにするゆうかなんてゆっくりのかざかみにもおけないんだぜ!!
あんなのころされてとうぜんなんだぜ!!」
「そうだよ!!
ゆうかはおはながたくさんあるのにれいむたちにちっともわけてくれないんだよ!!
おはなさんはかってにはえてくるのに!!」
「しょうだしょうだ!!せいっしゃいしゃれてとうっぜんなんだじぇっ!!!」
「OK お前達の言い分はよぉ・・・っく理解できた」
ジュ
「ゆ・・・・・・・・・・・・・・?」
怒声を吐き出すために大きく開けた親れいむの口、そこから酷く間抜けな音が聞こえた。
火バサミで掴んだ握り拳大の真っ赤な炭の塊を親れいむの口に捻じ込んだのだ。
「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!!!」
「れ、れいぶうっ!!!」
「おきゃーしゃん!!!」
舌の上に乗った激痛と熱さの根源を吐き出そうと舌を忙しなく動かすが、それが災いし、口の中を次々と焼いていく。
炭の塊は取れる所か、ますます口の中に焼け付き、霊夢の口を焼け付かせて開けなくしていく。
「ちょっちぇぇっ!!これちょっ・・・ちょっちぇぇえええええええ・・・・・・・・・・」
次第に呂律すら怪しくなって、その口は煙を上げる噴火口の様になってしまった。
こうなってはもはや喋る事さえままならない。
「れ、れいぶ!!れぇいぶぅううううううううう!!!」
「おきゃーしゃんのおくちぎゃああああああああああああああああっ!!!」
最初は吐き出そうと下を向いていたれいむも、その上がってくる熱に耐え切れず、自然と熱を逃がすように上を向く。
もくもく上がる煙は、その流れる涙と反比例するかのように増していき、最後には噴火するかのように火柱を上げて燃え始めた。
「れいぶ!れいぶぅ!!れい・・ゆ・・・?あっつ!!あつつっあっついんだぜぇええええええええ!!
れいぶ!!はなれてぇええええええええええっ!!!」
「おきゃーしゃ・・・あつっあっつ!!!あちゅいんだじぇぇええええええええっ!!!
おきゃーしゃんむきょういけっ!!!」
ぼんぽんっと音を立てながら破裂する眼球は、周りのまりさ親子に降りかかり、更なる熱の責め苦を与える。
霊夢の身体はその中身の餡子を燃料にし、益々その炎を強めていた。
そのあにゃるからは、熱く溶け出した餡子が洩れ、下にのトリモチのシートとコンクリートを汚していく。
限界を迎えたその身体は、隣の親まりさに、まるで助けてくれといわんばかりに寄りかかるようにして倒れてきた。
「あっああああああああああああああああああああ!!!
これとって!!これっとてよぉおおおおおおおお!!!おちび!これちょってぇえええええええ!!!」
「おかーしゃん!やめちぇにぇえええ!!まりちゃもおちょーしゃんもあちゅがってるでしょおおおおおおおおおっ!!!まりちゃがかわいくないのおおおおおおおおお!!?」
いくら姉妹や子供が焼かれるという凄惨な光景を見せられていたとしても、今まではトリモチに引っ付いているとはいえ安全な所から見ていただけだ。
それが、今や目の前に阿鼻叫喚の地獄絵図が現れている。しかも、親れいむの姿を借りて。
「あがあああああああああああああっついいいいいいいいいいいいいっ!!!
なんでっ!!なんでまりさがこんなめにぃぃいいいいいいいっ!!
ぐぞにんげんんんんんっ!!まりささまがなにをしたあああああああああああっ!!?」
「やれやれ、またかよ・・・。
自分の事はすぐに理由を聞きたがるのな、他人のいう事なんて聞きゃしないのによ。オマケに自分の番がそんな目に合っているのに追い詰められると自分の事しか言いやがらねぇ・・・。
ま、良いさ、興が乗った・・・冥土の土産に教えてやるよ。
とは言っても、傍から見たら至極当たり前のことで、お前たちと同じく勝手な理由だ」
まりさ親子の地獄絵図を見ながら、まるで興味が無いような、心底どうでも良い目で見ていた人間が口を開く。
それでも、さもどうでも良いという姿勢だけは崩さずに・・・。それがまりさには気に入らない、自分がこんなに熱く苦しい思いをしているのに、何故この人間は平気で見ていられるんだ、と。
そんなまりさの心情を分かっていないのか、人間はそのまま言葉を綴る。
まあ、この人間に言わせれば、まりさの心境など、単純明快な憎悪にすぎない事など分かっているが、あえてそれを分かりたくも無かったというのが正しいだろう。
「ゆうかはな・・・こんな田舎にとっては益饅頭なんだよ、お前等害饅頭とちがってな。
古い話では、幸運を齎す、その家に居付いたら代々家が途絶える事は無い、とか言われているくらいもてはやされていてな・・・。
まあ、それだけの事を言い伝えても大切にしようというという事だな。
それだけ農家のためになる事をしてくれるんだ、ゆっくりゆうかってのはな・・・」
ゆうかは希少種に分類されるゆっくりだ。
そしてご存知のとおり、その生態は花を育てる事でゆっくりを得るというゆっくりらしい不思議な生態を持っている。
そんな生態が故、農家の利となる事が多く、人間との共存関係はとても良好になるのは自然の理といえる。
害虫や雑草を進んで駆逐し、肥沃な土地を人が手を加えずとも維持させ、捨てられた土地も雑木林と化すことは無くなる。
自分で育てたお花畑を譲りたがらないという欠点となりうる特徴も、ゆうかに土地を管理してもらう変わりにおの一部を使って花を植えさせるだけで満足する。
そうでなくとも、他のゆっくりと違って、ちゃんと話が成立するというのは大きな利点である。
落とし所をお互いにつけ合い、昔から良好な関係を築いていたといえる。
「ゆっゆううううううううううっ!!なんにゃにょしょれぇええええええええええ!!?
まりちゃだっちぇゆっくりしているでしょぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!?」
その物言いに納得できないのは、子まりちゃである。
自分もふくめ、家族はどんなゆっくりよりゆっくりしていた自負がある。
ましてや、あのゆっくりしていないゆうかなど、比べるべくも無い。
なのに、この人間はそんなゆうかをの事でまりしゃ達をこんな目に合わせたと言うのか?
「はぢをちりぇええええええええええええええっ!!まりちゃを・・・まりちゃちゃまをっ!ゆっくりさしぇりょぉおおおおおおおおおっ!!!」
「そのくせ・・・なんだてめえ等ゆっくりれいむだのまりさだのいう害獣共はよ・・・。
農作物は勝手に生えてくるからと荒らしまくるわ、人のテリトリーに勝手に踏み込んで自分のものだと言い張るわ・・・やりたい放題じゃねぇか・・・」
こちらも、お分かりの通り、通常種と呼ばれるゆっくりには、こんな人との共存関係が成り立っているはずなどなく、それが農家になれば尚更である。
「ここは農村とは少し離れた山の中だからよ・・・まあ、少々のゆっくりが居ついたところで目くじらを立てる事は無いって思ってたが・・・よりによって、せっかく居付いたゆうかを殺しやがって・・・。
こんな山のなか、雑草を処理するのにどれだけの手間が掛かると思ってんだよ・・・。
ゆうかが居れば、ある程度は勝手にやってくれるっていうのに・・・。
お前等れいむだのまりさだのに代表される通常種共は、人が必要なものばかり選んで食い漁って雑草は苦いって喰わねぇだろ・・・。
それでも駆除しなかったのは、ある程度は雑草や蟲を食って駆除するからまあ、ほおって置いたんだよ。
家の周りで遠慮なく大声上げるから五月蝿いわ、おうち宣言かますから安心して外出できねえわっていうマイナス面も大きかったが、駆除してしまうほどじゃないってな・・・。お前等喋るし・・・」
「だからどうちたああああああああああああああっ!!!まりちゃがゆっくりしてればいいだりょうがあああああっ!!!」
「まあ、そういう答えが返って来るとは思っていたよ。思っていたより悪いのがゆっくりらしいがな。
ほれ、親まりさが燃えて喋るどころじゃないってよ。助けなくて良いのか?」
「ゆっ?ゆあああああああああっ!!おちょうしゃ・・・ゆっ!?ゆああああああああああっ!!!
ま、まりちゃのおぼうちしゃんがあああああああああっ!!!」
子まりちゃが喋るのに夢中になっている内に、ついに親れいむ、おやまりさ共々炎に焼かれ、息絶えたようである。
しかし、息絶えたからといって、それに宿った炎まで消える訳ではない。
子まりちゃのとんがり帽子の先に火が付き、赤々と燃え上がった。
泣き喚きながら身体を前後に振りながら炎を消そうとするが、そんな事で消えるものではなく、それどころか更に酸素を含み、燃え盛っていく。
「これっこれけしちぇえええっ!!けしぇぇえええええええ!!にんげんんんんん!!!
まりちゃちゃまがしんじゃったりゃ、しぇかいのしょんしつだりょうがああああああああっ!!!」
「・・・・・・ひでぇなぁ・・・まったく・・・。
ほら・・よっ!!」
ボグッ
「 ゆ”!!? 」
しゃがみ込んで傍観していた人間が突然立ち上がり、まりちゃの横を掠めるように火バサミを振るう。
その速度は子ゆっくりに捉えられるものではないが、それが放った音はしっかりと耳に届いていた。
そして感じる熱さが徐々に収まっていく。
その異変をたっぷり1分はかかって察知すると、両親が居た方に振り返るまりちゃ。
そこには底を残し、吹き飛んだ両親の姿があった。
「ゆっ・・・ゆゆっ!! いじわるするあついあついがいなくなっちぇるよ!!
おぼうしさんのひさんもきえてるよ!!まりちゃがかわいいからおねがいをきいてくりぇたんだにぇ!!」
「・・・・・・予想はしてたが、いざ目の前でそれが展開させると酷いもんだな・・・」
両親が吹き飛んだというのに得意げに仰け反り、帽子の火が消えた事も自分が可愛いからという。
そんなまりちゃを、まるで汚いものでも見るかのような視線を向けた後、まりちゃが乗っかっているトリモチシートを火バサミで掴んで持ち上げた。
「ゆっ!! ゆふふふふ・・・ついにまりちゃはとりになっちゃんだよ・・・。ゆうしゅうでごめんにぇぇ・・・」
ぷるぷると震えながら得意げなドヤ顔を披露する子まりちゃ。
それを見ながら、こうつ、正気か?と訝しげに視線を送りながら、庭先まで移動する人間。
「ゆっ!? ゆゆ!? おいにんげん!このおしょらまでしはいしたまりちゃちゃまに・・・」
「そんなに自分が特別だって思うんなら・・・・・・ほらよ!他のゆっくりに助けてもらえ!!」
「ゆびゃあっ!!!」
火バサミで摘んだトリモチシートを、フリスビーの様に投げる。
クルクルと回りながら軟着陸する子まりちゃのシート。
その先には、少し高台になった丘の縁に掘られたゆっくりの巣穴があった。
「ゆゆ!? ゆっくりしてないゆっくりがきたよ!」
そこから聞こえてきた声に、子まりちゃの顔が険しくなる。
自分は選ばれたゆっくり、空まで支配し、あの凶悪な人間を平伏させて来たのだ、ゆっくりしてないとは何事か!と。
「なにをいっちぇるんだじぇええ!!まりちゃちゃまがうごけないんだじぇ!ちゃっちゃとこのべたべたをとりぇええ!!!」
「ゆゆっ!?なまいきなこまりさだよ・・・・・・。かぞくごと、ぶざまにゆっくりしてないにんげんさんにころされて、なにをいってるの」
のそりと巣穴から顔を覗けたのは自分の母親であったれいむより一回りも大きいれいむであった。
しかし、子まりちゃは動じない。なぜなら、あんな怖い思いをした地獄から生還したのだ。それだけでまりちゃには一騎当千の力が宿っていると本気で信じ込んでいるのだから。
「まりちゃはちがうんだじぇ!まりちゃはゆうしゃなんじゃよ!!あがめたてまつらなきゃだめなんじゃよ!!」
「おぼうしもかけたへんなゆっくりがなまいきいうなぁああっ!!」
「ゆっ・・・!? そっそれをいうなだじぇえええ!!」
今一番言われたくない事実、それを思い出させる言葉に、まりちゃは涙目になりながら反論する。
それに答えるかのように、その巣穴の奥から声がした。
「ゆうう。おかーしゃんをわるくいうげすはちんでにぇ!!」
「しょーだしょーだ!ちねっ!ちねちねぇ!!」
そんな汚い言葉を吐きながら出てきたのはまりちゃと同じ大きさの子ゆっくり達。
子まりさが1匹に子れいむが4匹である。まだ赤ゆを卒業したばかりといったところだろう。
「ゆっ・・・!?ゆううううううっ!??」
その言葉を聞いてびっくりしたのは子まりちゃである。
自分はとても怖い地獄から生還した勇者なのに、皆揃って罵倒を浴びせてくる。これは何なのだ、と・・・。
「ま、まりちゃはゆうしゃなんじゃ「うるさいよ!!!」ゆっ!ゆううっ!?」
言葉の途中で遮られる。
そのゆっくりできない出来事の連続に、子まりちゃの頭はパンク寸前だった。
「かぞくがころされているのに、とくいげにじぶんがゆうしゃなんてよくいえたよね!
そのおかざりとおなじでとてもみにくいこゆっくりだね!!」
「しょうだしょうだ!このげしゅ!!」
「ゆっゆうううううっ!!?」
「くじゅ!おやごろちい!!」
「ゆうううううっ!!?」
違う、自分は両親を殺してなどいない!悪いのはあのゆっくりしていない人間だ。
そんな人間を振り払い、生還したのだから、それに対して労ってくれても良いじゃないか。
それが子まりちゃの言い分だった。
しかし、ゆっくりでなくとも、傍から見れば両親や姉妹を殺されたというのに、得意げになっているなど正気の沙汰ではない。
ゆっくりできない事を忘却の彼方に追いやり、都合の良い様に改竄するのは、ゆっくりらしいといえばらしいが、そんな事など当の本ゆん以外関係ないことだった。
まあ、冷静に考えなくとも、まりちゃが言っている事はゲス行為以外の何物でもないという事だ。
「かじょくをみしゅてるにゃんてげしゅのやるこちょだよ!!そんにゃゆっくりはゆっくりせずにしにぇえええっ!!」
そんな子まりちゃに業を煮やしたのが一番小さなまりさである。
一応赤ゆより大きいというくらいで、言葉遣いから分かるとおり、まだまだ小さい。
けど、流石まりさ種といったところか、血気だけは一人前のようである。
「ゆべっ!!!」
しかし、勇敢と蛮勇は似ているようで全く異なるものだ。
果敢に跳ねて突撃したは良いものの、子まりちゃが乗っかっているトリモチシートに引っ付き、思いっきり前のめりに倒れこんだ。
この時点で、この子まりさの運命は尽きたといえる。
ゆっくりの力では引き剥がす事など夢物語、たとえ引き剥がしたとしても前半分の皮が全部持っていかれ、餡子をこぼしつくして終わりだろう・・・。
「ゆ・・・? まりさ・・・?」
末っ子の家族のアイドルが前のめりに倒れたまま、うんともすんとも言わない。
それにゆっくりできない雰囲気を感じて、母れいむが声を掛ける。
他の子供たちも、すぐに起き上がって、目の前のゲスを制裁するだろうと思っていたのだが、それとはかけ離れた結果になったせいで思考停止を起していた。
よく見れば小さく呻きながら背中の部分をグネグネと蠢かしているのだが、そんな変化などゆっくりには分からない。
いや、普段見ることの無い動きゆえ、理解が追いついていない。
「まりしゃがしんじゃったぁあああああああっ!!!」
子れいむ達の中の誰かが大声で泣き始めた。
それにつられるようにして他の子れいむも泣き始める。
小さい末っ子ではあったが、唯一のまりさ種という事もあり、姉妹のなかでももてはやされ、頼りにされていたのだ。
そんな子まりさが動かなくなった。それだけでこの子れいむ達にとっては大事件である。
「よ、よくもれいむのこどもをおおぉっ!!家族のアイドルをおおおおおおおっ!!!」
目を血走らせながら吼える親れいむの迫力に脅え、涙を溢れさせながらイヤイヤと首を振る子まりちゃ。
自分にも何が起こったのか分からない。突然小さなまりさが飛びかかかって来たと思ったら目の前で倒れたのである。
この場に居るゆっくり達の中で、子まりちゃにはその理由が唯一理解できるゆっくりであったのだろうが、それすら混乱によって忘却の彼方に追いやっていた。
今、どうして動けないのか?と聞かれたら、そういえば動けないんだぜ!とさも初めて気が付いたとばかりに叫ぶだろう。
「ゆっくりできないげすは、ゆっくりせずにしねぇえええええええええっ!!!」
「ゆべぇっ!!!」
鬼の様な形相をしながら飛び上がった親れいむに、身体の一部を押しつぶされて唸りを上げる子まりちゃ。
親れいむは完全に潰そうと飛び上がったのだろうが、そこはゆっくり、完全に狙いを逸らしていた。
そのお陰で子まりちゃは命拾いをした訳だが、それが子まりちゃにとって良い結果かどうかは分からない。
むしろ一思いに潰されていた方がましだっただろう、この後の事を思えば・・・。
「ゆっ・・・ゆべええええええええええっ!!いちゃいいいいいいいいいいっ!!!」
「ゆゆっ!? げすのくせにしぶといまりさだね! いまこのれいむがせいっさいして・・・・・・なっなんでうごけないのぉおおおおおおお~っ!!?」
トリモチシートにがっちりとあんよを食い込ませた親れいむは、もう二度とそのあんよで地を踏む事は無いだろう。
ドブネズミ用の大きなトリモチシートは、尚も驚異的な粘着力を宿らせている。いくら大きな親れいむとてどうにもならないだろう。
「いぢゃいいいいいいいいいいいっ!!たすけちぇおとーしゃぁん!おかーしゃぁん!!れいみゅぅうううっ!!!」
家族の名前を声の限り張り上げる子まりちゃ。
それに苛立ちを感じたのは親れいむである。
「うるさいよおおおおおおおおっ!!げすのくせにしんだかぞくのなまえなんてさけぶんじゃないよぉおおっ!!!」
「しよーだしょーだ!!まりちゃのかちゃきい!!!ぶべっ!!」
「おっおちびちゃああん!!れいむにのかわいいおちびちゃんがあああっ!!!」
泣きながらも末っ子まりさの仇を打とうと果敢に突っ込んできた子れいむも、例外なくトリモチの中にダイブし動けなくなった。
それに混乱したのは母親と残された姉妹である。
「あっあああああああああああっあっあーーっ!!れいむのおちびちゃんがぁ!!れいむにのかわいいかわいいおちびちゃんがあああっ!!」
必死になりながら突っ込んできた子れいむを助けようとするも、その身体は前後左右に伸びるだけである。
「ゆわああああああああああっ!!もう、もうやなのじぇぇええ!!もうおうちかえるっ!!!」
相変わらず子まりちゃは潰された頬の痛みに身体をよじりながら泣き叫び、叶わぬ夢を叫んでいた。
「なっなにごとなんだぜぇ!!?」
阿鼻叫喚の中で響く声、一瞬皆がその声で静まり返り、視線を向ける。
その先には、親れいむほどの大きさのまりさが驚愕に顔を引き攣らせていた。
それを見て笑顔を取り戻す子れいむ達。その表情には希望が満ちている。
「おとーしゃん!!このまりちゃが!このまりちゃが、かぞくのあいどるのまりちゃをころちちゃったぁああっ!!」
「ゆっ!!? なっなんだってーっ!!?」
「まりさ!このげすをせいっさいしてほしいよ!!れいむはこのげすのさくりゃくでうごけないんだよ!!」
「ゆっゆわあああああああああん!!!まりちゃはなにもわりゅくないんだじぇえええっ!!!」
再び声の限り泣き出す子まりちゃ、しかし、そんな子まりちゃとは裏腹に、この一家の視線は冷たく重い。
「こっこのげすが!このげすがまりさのかわいいこどもたちをおおおおっ!!ゆっくりせずにしねぇええっ!!!」
親まりさの怒号と共に繰り出されるストンピング。しかし…
「ゆべっっっ!!!」
べしゃっという鈍い音と共に、飛び上がったまりさは餡子の花を咲かせ、弾かれたように吹っ飛んだ。
そのまま地面に接触、べしゃっという音と共に放射線状に餡子を飛び散らせ、ピクピクと何度か麻痺した後、二度と動かなくなった。
「手にずっしり来る重さはあったが、案外脆いのな」
その場にいるゆっくり全てが完全に硬直している中、振り上げた火バサミをゆっくりと下ろす人間の姿があった。
その姿を皆が視界に入れても動こうとしない、いや、何が起こったのか分からず、硬直が解けない。
そんなゆっくりなど眼中に無いかのように人間は群がっている子れいむの傍まで歩みを進め、そのまま火バサミでなぎ払った。
パンっという小気味良い音が場違いに感じるほどの静寂。
親れいむはそれにビクッと一度身体を揺らしただけだ。
ゆっくり達の硬直が解けないまま、人間は更に火バサミを振るい、立て続けに2匹の子れいむを餡子の花に変えていく。
「なっなにをするの!!?にんげっぶべええええっ!!!」
硬直が解け、叫ぼうとした直後、親れいむも伴侶と子供たちの後を追った。
その様を茫然自失で見ていた子まりちゃは、親れいむの返り餡子を浴びながら、完全に呆けていた。
何が起こったのか分からない・・・いや、分かりたくない・・・・・・。
そもそも何だ、この人間は・・・・・・そうだ、この人間がまりちゃ達をゆっくりさせなくしたんだ・・・・・・。
そして、今も、いくら憎いゲスゆっくり達とはいえ、容赦なくゆっくりできなくした・・・。
なんで・・・?なんでまりちゃがこんな目に・・・・・・。
「あー・・・もう良いや・・・。やっぱお前等、見ていて胸糞悪くなる・・・。
もう、この辺りのゆっくり全部潰すわ」
あっけらかんと答えた人間は、さもめんどくさそうに頭を掻いていた。餡子にまみれた火バサミを振りながら。
「なんで・・・・・・なんでにゃにょ・・・・・・?」
「ん・・・?」
「にゃんでこんにゃことしゅるにょおおおおおっ!!? まりちゃたちはゆっくりしてただけでしょぉおおおおおおっ!!!」
ガタガタ震えながら、顔を真っ青にし声を張り上げる。
怖い。この人間の行動が理解できない。
まりちゃの中では、人間はどうしようもない困った存在という認識から、人間は不気味だ、に切り替わっていた。
なぜこんな事をするのか理解できない、説明できないから怖い。
傍から見たらそんな問い掛けなど、一目瞭然な答えが出るのだが、当の子まりちゃには理解できない。
いや、まあ、出来の悪いゆっくりにしてはこれでも上出来と褒めるべきだろうか・・・。
「お前、こんな経験しておいてよく言えるなそんな事・・・・・・。
いや、自分のやったことも未だに分かっていないみたいだし・・・まあ、そのザマじゃ当然といえば当然か・・・。
じゃあ、逆に聞くが、周りの声、聞こえないのか?」
「 ゆっ・・・・・・? 」
子まりちゃは、人間の言われるまま、その視線が向かう方を見る。
そして暫くの時間を経て聞こえてくる微かな声・・・・・・。
「ゆっくりしてないまりさがいるよ・・・。あのままにんげんにせいっさいされちゃえばいいのにね・・・」
「ゆううう・・・あのまりさ、こどものくせになにかんがえているんだろうね・・・?にんげんにさからってかぞくみんなころされてじぶんはにんげんにたちむかいもしないなんて・・・。
ゆっくりしていないのはおかざりだけじゃないんだね・・・」
「せいっさいしようよ・・・」
「そうだね。にんげんがいなくなったらせいっさいするべきだね」
「うん、にんげんはばかだけどめんどうくさいからね・・・・・・あとにするべきだね・・・」
「ゆっゆううううううううううっ!!?」
風に乗って流れてくるのは、この丘に無数に穿たれたゆっくり達の巣穴からであった。
呪詛そのものの呟きは、一切まりちゃに同情的な声は無い。
聞こえてきた声をまりちゃは認めたくなかった、けれど、未だ、その声が無情にも風に乗ってやってくる。
「いやじゃいやじゃいやじゃぁああっ!!まりちゃは、まりちゃはわるくにゃいいいいっ!!!」
首をブンブン振りながらその声を否定し、自分を肯定しようとも、聞こえてくる声が変わる事は無い。
「ここまで人間なめきってるのも問題だが、その思考がすでに反吐が出るわ・・・・・・。
こんな存在の中に、いくら脆弱で害が無いからっていっても居たくねぇよ・・・。
すげえよ、ゆっくりって・・・人間をここまで嫌悪させる生物、他に思いあたらねぇよ・・・。
ここまで同じゆっくりでも違うもんか? あの居つこうとしていたゆうかは、もっと話が通じたがなぁ・・・」
やれやれという様に溜め息を吐き、眉を顰めながら声のする丘を睨みつける人間の目は、完全にゴキブリを見るような目だった。
いや、ゴキブリに嫌悪感を感じても、殺意まで抱かせるなど稀だろう、そういう意味では違っている。
「まあ、丁度良いわ・・・・・・。
お前置いていたらゆっくり共が制裁しにやってくるだろうから、使えるまで使ってやる。
これからゆっくり駆除に付き合え、拒否はゆるさねぇ」
「いっ・・・・・・・・・いやじゃあああああああああああああああっ!!!」
あんなゆっくりしていない事が繰り返される。
同属に辛い目に合ったと慰めてもらえる訳はなく、その口から出てくるのはゆっくりしていない家族を見捨てたゆっくり・・・。お飾りがゆっくりしていないゆっくり・・・・・・。
制裁制裁・・・・・・家族を殺されたまりちゃに同情するゆっくりはいなく、変わりに憎悪を持って潰しにくるゆっくりばかり・・・。そして、目の前で同属を叩き潰される。
そんなゆっくりしていない出来事の連続の中、同属の手で潰されるのが先か、ゆっくりできないせいで精神が壊れるのが先か、それがこのまりちゃの遠くない決定した未来である。