ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0923 家出まりさの反省
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ankoss
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・『ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ』で登場した元飼いまりさが主役です
とはいっても前作は読まなくても問題ないと思います
・本作で出てくるのうかりんは、全員媚薬を飲まされてローターを入れられています
そんなそぶりを見せずに働くのうかりんに萌えて下さい
『家出まりさの反省』
D.O
「はぁ・・・、困ったわ。」
人通りの多い町中で特大の溜息をついているのは、
湯栗町に校舎を構える学校、湯栗学園小等部の英語教師、美鈴先生だ。あだ名はめーりん先生。
彼女の溜息の原因は、小5の頃にはDカップを超えていた、この大きな胸が邪魔で邪魔で・・・
というわけではなく、右手に提げているペットキャリーバッグ、その中にいる、彼女の飼いゆっくりだ。
「ゆぅん!さっさとだして、あまあまよこすんだぜ!このくそばばぁ!!」
「あーあ。なんでこんなになっちゃったんだろ・・・。」
このまりさだが、無論元からこんな態度だったではなかった。
ゆっくりには定評のある虹浦町でも最大手のゆっくりショップで買ってきた、正真正銘の銀バッジ赤まりさだったのである。
元気過ぎる点はあったものの、人懐っこく素直で可愛かったまりさ。それがなぜ?
彼女とまりさの出会いは今から2か月ほど前にさかのぼる。
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「あぁ~・・・うらやましいわぁ。」
ここは湯栗学園の敷地内にある合宿所・・・のはずが、なぜか職員寮になってしまった建物。
めーりん先生は、その窓のカーテンの隙間から、中にいる人影を熱心にのぞきこんでいた。
視線の先の人物は、学校管理を任される公務ゆっくり、ゆうかりんとふらんちゃん以外で、
唯一この職員寮に住んでいる家庭科教師・優宇河先生だ。
教師内では最年少に近い二人、年の差も一年、バストサイズではめーりん先生がやや優勢。
密かに学園内の人気を二分しているライバル、とめーりん先生が一方的に思い込んでいる相手だったりする。
ちなみに生徒からはそれぞれ『めーりんちゃん』、『優宇河先生』と呼ばれている。
『優宇河先生、さようなら!』
『めーりん、じゃーなー!』
などとあいさつされるたび、めーりん先生は自分の方が生徒と仲良くなれていると思っていたようだが、
両者のキャラクターやら受ける尊敬の度合やらの違いは、これだけでもわかってもらえると思う。
脱線してしまったが、そんな彼女が今羨ましがっているのは、
優宇河先生がぺにぺにを指で弾いて遊んでいる、2匹のまりさについてであった。
「ああ、ゆっくりってあんなに可愛かったのね。
ゆうかりんやふらんちゃんが特別優秀だと思ってたけど、あのまりさ達なんて、拾ってきたって言ってたわ。
生徒たちより言うことよく聞くし、素直でいい子なのよねぇ。ああー、私も欲しわぁ。」
と、いうわけで、その日の夕方ゆっくりショップに駆け込んだめーりん先生は、
くりくりとした瞳のとてもきれいな赤まりさを、給料の1割をはたいて購入したのであった。
「おにぇーしゃんがまりしゃのかいぬししゃんなのじぇ!?ゆっくりおねがいしましゅのじぇ!」
「きゃー!やっぱりかわいいわー!よろしくね、まりさ。」
「・・・ぇすので、銀バッジと言っても、大きくなるまではきちんと躾を・・・あの、聞いてます?」
めーりん先生は、思い違いをしていた。
ゆうかりんやふらんちゃんは特別優秀な上に厳しい訓練と選別を受けてきた、一流の公務ゆっくりなわけだが、
まりさ達にしても生粋の野良としての経験と、その厳しい世界で代々生き延びた賢明さを併せ持った、これまた特別製であったのだ。
加えて言うと、優宇河先生との指導者としての個性の違いにも気づいていなかった。
そして現在。
めーりん先生がすっかり成長したまりさを連れてきたのは、まりさを購入したゆっくりショップである。
「くそばばぁ!とっととだすのぜ!いたいおもいしないとわからないのぜ!?」
「という感じで・・・。」
「いやー、またずいぶんと調子に乗らせましたね。ウチで販売した中じゃ、ちょっと珍しいくらいですよ。」
まりさのお帽子にかつてつけられていた銀バッジはもうない。
銀バッジ登録の更新試験に落ちてしまったためだ。
バッジのあった場所にはうっすらと傷がある以外、なにも存在しない。
「・・・それで、お値段なんですけど。」
「えー、この状態から銀バッジの再調教となりますと、2週間で15万3千円になります。」
「うぇっ!嘘ぉ!」
「赤ゆっくりをゼロから調教するなら、大した手間ではないんですが、もう成体ですしねぇ。
一度人間をなめてしまうと、よほどのトラウマを植え付けないと元の関係は築けないんですよ。」
「いや、だからってこの金額は・・・。」
「それに、調教師だって再調教を専門とする者は少なくて。
相当高度な虐た・・・調教技術がないと心身に、目に見えるような傷を残すこともありますし。
調教を受けるゆっくりの可愛さと命を保証するための、必要な経費だと思ってください。」
「うーーーーん・・・。ちょっと考えます。」
「・・・弱った。いくらなんでも教員がポンと出せる金額じゃないわ。」
「すぴぃー、すぴぴぃー!ゆっくりさせろぉ・・・」
「寝言もゆっくりしてないわね。」
金の問題はもちろんあるが、だからと言ってこのまま放置するわけにもいかなかった。
実は昨日も、食事の用意を少し遅れただけで、授業計画やら教科書解説書やらをうんうんまみれにされたのだ。
その前は携帯電話を浴槽に放り込まれ、、さらに前は優宇河先生の生着替え写真に歯形をつけられた。
「らじぇ・・・らじぇ・・・」
「ん・・・ああ、ウチのまりさにもこんな時期があったわねぇ。・・・らじぇまりさ、5万・・・?」
ゆっくりショップのショーウィンドウには、気の優しそうな赤ゆっくり、しかも帽子に輝くのはキラキラの金バッジだ。
今のまりさより値段は張るが、再調教代ほどではなく、ましてこれから起こるであろう悪行による損害額も考えるとややお得。
そもそもめーりん先生は、ゆっくりに対して癒しを求めていたので、
ゲスまりさからの被害はこれ以上ごめんこうむるところだった。
めーりん先生の頭にはこの時、いくつかの選択肢が浮かんだ。
1.躾失敗の責任は果たすべき。まりさ再調教に15万払う。
2.ゲス化したまりさはこの際諦める。ゲスまりさは保健所行きにして、らじぇまりさ購入。
3.もうゆっくりは飼わない。ゲスまりさはおいしく料理の素材にする。
4.いっそ胴付きとかの賢い希少種を購入してみる
・・・・・・。
めーりん先生は、結局どれも選べず、一番やっかいな道を選んでしまった。
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めーりんお姉さんの選んだ道、それは、まりさは飼いつつ、らじぇまりさも購入、という物であった。
とりあえず、ゲス化したまりさの方は自分でしっかり教育しなおすとして、
自分の癒しのために、らじぇまりさを購入。
らじぇまりさの素直な行動を見本にしてもらって、まりさにも反省してもらおうと言う計画でもあった。
そんなもの、上手く行きっこないのだが・・・
これに面白くないのはまりさである。
「らじぇ!らじぇ!」
「ほーら、いい子ねー!あまあまあげるからね!」
「らじぇ!!」
「(ゆぎぃぃぃぃ・・・あまあまはぜんぶまりさのなのにぃぃいぃ!!)」
「はーい!ボールさん投げるから、取ってくるのよー!『ぽーい!』」
「らじぇ!らじぇ!」
お姉さんが放り投げたピンポン玉を、ぽにょぽにょと跳ねて追いかけるらじぇまりさ。
その前に、まりさが立ちはだかる。
「ゆぎぃぃいいい!!このぼーるさんは、まりさのおもちゃなのぜぇぇええ!!」
「らじぇぇぇ!?」
「こらっ!まりさ!オモチャを独り占めしちゃだめでしょ!!」
「なんでそんなこというのぜぇぇえええ!?」
夜寝る時も、これまではまりさの定位置だった、めーりんお姉さんの胸元にはらじぇまりさがいる。
「そこはまりさのすーやすーやぷれいすなのぜ!!さっさとどくのぜぇぇ!!」
「らじぇぇぇ!?らじぇ・・・」
「こらっ!!まりさはお姉さんなんだから、自分のベッドで寝なさい!」
「ゆぎぃぃぃぃいいいい!!」
これまで、自分の言う事を聞く奴隷だったお姉さんが、今では新入りの赤まりさの奴隷になってしまった。
しかも、自分だけのあまあまも、自分だけのおもちゃも、自分だけのゆっくりプレイスも、全部侵略されていく。
まりさの中に蓄積されていく不満、不安。
そしてある日、そんな生活はついに破局を迎えたのであった。
パリンッ!!
「ゆぴぃぃぃぃいいい!!」
「ゆゆっ!?なんなのぜ!?」
らじぇまりさが子ゆっくりサイズにまで成長した頃、その事件は起こった。
らじぇまりさが、花瓶を倒して割ってしまい、その破片であんよを切ってしまったのである。
らじぇまりさも赤ゆっくりの頃はさほど行動的でもなかったが、子ゆっくりまで育った事で、
家の中全体を歩き回れるほどの体力もつき、好奇心もそれに合わせて大きくなっていっていた。
ゆっくりの飼い主が一番怪我に気をつけなければいけない時期である。
行動範囲が広がったことではしゃぎまわる子ゆっくりは、家の中の家具でも物でも、何でもいじりまわす。
その危険性を一つ一つ教えてやり、危ない目に合わないように教育することは、飼い主の重要な仕事の一つなのだ。
「らじぇぇぇぇ・・・いぢゃいのじぇぇぇ・・・」
「ゆわぁぁ。いたそうなのぜぇ。ぺーろぺーろ。」
日頃の恨みはともかく置いておき、傷をなめてやるまりさ。
そこに、騒ぎを聞いためーりんお姉さんが駆けつけてきた。
「うわっ!まりさ、何やってるの!」
「ゆゆっ!?このちびが、かびんさんをわったのぜ!けがしてるのぜ!」
割れた花瓶、あんよを切ったらじぇまりさ、側にいるまりさ・・・
残念ながら、めーりんお姉さんの出した結論は、まりさにとって最悪の物であった。
「嘘ついちゃだめでしょ!!まりさはおねえさんなのに、おちびちゃんのせいにするの!?」
「・・・ゆぎぃぃいいいい!!なんでしんじないのぜぇぇえええ!!」
自業自得ではあるが、少々酷な仕打ちではあった。
そしてこのめーりんお姉さんの態度は、不満をため込んでいたまりさに対して、最後のひと押しとなってしまったのであった。
「ゆぎぃぃぃいいい!!!もうがまんできないのぜぇぇええ!!」
「まりさ!?」
「どれいのばばぁがどんなにあやまっても、もうゆるさないのぜぇええ!!もうにどとかおもみたくないのぜぇぇええ!!」
「ちょっ・・・まりさ!!」
まりさはそう叫ぶと、たまたま半開きにしてあった、庭に面した窓から外に飛び出していった。
ちなみに、不用意に窓を開け放しておかないのは、ゆっくりのみならずペットの飼い主の基本的な注意点である。
「まりさ、待って・・・!!」
めーりんお姉さんも庭に飛び出したが、
まりさはすでに、庭の生け垣の隙間から外に飛び出しており、姿を完全に消していた。
周囲を見渡しても、まりさの気配はすでにない。
「・・・どうしよ・・・」
こうして、まりさはめーりんお姉さんを見放し、自分は自由な外の世界へと羽ばたいていくことにしたのであった。
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まりさは、おうちを飛び出すと、好奇心の赴くままに町中を練り歩いた。
これまでペットキャリーバッグの中から見ていた景色。
それが今では自分のあんよの届く場所にあるのだ。
それにしても、と思う。
「ゆふーん。まりさがいちばんゆっくりしてるのぜ!どいつもこいつもゆっくりしてないのぜ!」
町中は、ゆっくりで溢れていた。
電柱の影に、裏通りに、ビルの隙間に、どこを向いても、どこの行っても視界にゆっくりが存在しないことは無い。
だが、その一匹として、まりさのゆっくりっぷりにかなうものはいなかった。
薄汚れたリボン、虫や草のクズがついたお帽子、あんよは黒ずみ肌は黒ずみ汚れている。
生まれたての赤ゆっくりですら、まりさの清潔さにはかなわないであろう。
まりさは、それが飼い主の保護と努力によるものであることを気付いてはいない。
町中を歩いているうちに、小さな広場にたどり着く。
そこにもまた、ゆっくり出来ていない野良ありすの一団がいた。
「みゅほぉぉ!!みゅほぉぉぉ!!」
「おちびちゃん!それじゃあとかいはになれないわよ!!」
「ゆぅん。むぢゅかしいわぁ。」
「よくみててね!・・・むほぉぉぉぉおおおお!!!」
「しゅ、しゅごいわ・・・おにぇーしゃん、とってもとかいはにぇ・・・」
「(なにやってるのぜ・・・きもちわるいのぜ。)」
一方、都会派教育中のありす達もまりさに気がつく。
「ゆぅ、あのまりしゃ、とってもとかいはにぇ!しゅっきりしちゃいわ!!」
「・・・だめよ。あのまりさはゆっくりできないわ。」
「ゆぅぅ?どうしちぇ?」
「あのまりさ、きれいすぎるわ・・・きっと『すてられゆっくり』よ!」
「ゆぅぅぅ?」
「うふふ。おちびちゃんにも、そのうちわかるわ。でも、これだけはおぼえておいてね。
『すてられゆっくり』は、とってもゆっくりできないのよ。」
「わきゃらにゃいわぁ・・・」
その会話は、まりさの耳(?)にも届いている。
「ゆっくりしてない『のら』が、なにいってるのぜ!へんなこといってたら、ゆっくりできなくしてやるのぜ!!」
「ゆぁぁあああん!ゆっくちできにゃいわぁぁ!!」
「おちびちゃん、もういきましょう。ゆっくりできなくなるわよ。」
都会派ありすは赤ありすを連れて広場を去りながらも、まりさの方をチラリ、と一瞥した。
都会派ありすだけではなく、野良の成体ゆっくりは皆知っている。
飼いゆっくりは、野良とは比較にならないほど清潔な肌と飾りを持っていることを。
だが、飼い主を連れずに町を歩いている、飾りにバッジをつけていないゆっくりは、『捨てられゆっくり』であることを。
『捨てられゆっくり』は、初めのうちは美ゆっくりだが、無能で、ゲスで、人間さんにもゆっくりにも迷惑ばかりかける。
下手に近づくと、自分達だってロクな目に合わない。
だから野良ゆっくりは、『捨てられゆっくり』からなるべく距離を取り、無視するようになったということを。
まりさはそんなことなど、うかがい知るはずもない。
先ほどまでありす達がぺにぺにをしごいていた土管の上で日向ぼっこをしながら、
新しい奴隷になる人間を探さなければ、などとぼんやり考えていた。
まりさは、運がよいゆっくりだったのであろう。
本来はまずあり得ないほどの希少なチャンスが、この、昼寝中のまりさの元に転がり込んできたのであった。
「お、野良にしちゃ、キレイなゆっくりだな。」
「ゆぅん!とってもゆっくりしてるね!!」
「すーや、すーや・・・ゆゆっ!?なんなのぜ!」
突然日陰になったのを不審に思って目を開けると、まりさの前には一匹のれいむを連れた、
眠そうな顔をした人間さんが立っていた。
「お前、野良?」
「ゆゆっ!?まりさをそこらののらといっしょにすんななのぜ!!」
「ふーん?まあ、どうでもいいか。バッジ無えし。」
「なにいってるのぜ?」
「いやな、ウチのれいむが一匹じゃ寂しいってな。お前、このれいむと結婚するなら飼ってやるけど。どうだ。」
「れいむも・・・かっこいいまりさと、ずっとゆっくりしたいよぉ。」
「・・・・・・。(ゆぅぅ、まぬけそうなにんげんさんなのぜ。このれいむもばかそうなのぜ。ちょうどよかったのぜ。)」
「・・・ダメならいいや。じゃあな。」
「ま、まつのぜ!ゆふん!そんなにまりさをかいたかったら、かわせてやってもいいのぜ。」
「ゆっくりー!まりさ、ずっとゆっくりしようね!」
「ゆん!なかなかゆっくりしたれいむだから、とくべつにすっきりしてやってもいいのぜ。」
「・・・なんでもいいや。んじゃ、俺の家に行くぞ。」
こうしてまりさは、野良生活に堕ちない最後のチャンスを手に入れたのであった。
「ゆぅぅ~!とってもはやくてきもちいいのぜ~。」
自転車に乗せられて、人間さんの家までの快適な旅を終えたまりさは、
広大な畑の端にある林に囲まれた、古風な木造家屋の庭に案内された。
庭はゆっくりにとってはなかなか広く、草は短く刈り込まれ、庭の柵の向こうには林も広がっている。
まりさも先祖をたどれば、森や山の中で生活していたゆっくりである。
自然に近い環境に囲まれ、何やら胸躍る物を感じていた。
「ゆふぅぅうん!とってもゆっくりしてるのぜ~!きにいったのぜ!」
「そうか。なら良かった。んじゃ、れいむと仲良くやってくれ。」
なんだかんだ言っても、新生活に不安のあったまりさであったが、
あまりにもすんなり事が運んだので、増長するのも早かった。
「ゆぅ~ん、まりさ。すーり、すーり。」
「ゆへぇぇ!いいからとっととまむまむをむけるのぜぇ!『ぼよぉぉおん!』」
「『ごろんっ』ゆぅ!?もっとゆっくりしてぇ!」
「しったこっちゃないのぜ!まりさのぺにぺにをおみまいしてやるのぜぇ!!」
ずぼぉっ!ずっぽずっぽずっぽずっぽ・・・
「ゆぁーん、いだいぃぃぃい!らんぼうすぎるよぉ。もっと、ゆっぐりぃ!」
「ゆっふっ!ゆっゆっゆっゆっゆっゆっすっきりぃぃぃいいい!」
「ずっぎりぃぃ。」
まりさにとっても初体験である。
れいむは野良程薄汚れていなかったこともあり、まりさから見てもそこそこ美ゆっくりだった。
かねてから興味のあった『すっきりー』の味は、なかなか満足できた。
ともあれ、これで初すっきりーも終え、まりさとれいむは立派なつがい(笑)。
まりさも晴れて飼いゆっくりに復帰である。
「ひどいよまりさ・・・」
「ゆふぅ。ひとしごとおわっておなかがすいたのぜ。にんげんさん、とっととごはんをもってくるんだぜ!」
まりさは、奴隷である人間さんに、当然の権利としてご飯を要求する。
だが、人間さんの態度は、まりさの望むものではなかった。
「その辺のを適当に食え。」
「ゆゆ!?なにいってるのぜ。ゆっくりふーどさんなんて、どこにもないのぜ。」
「草があるだろ。」
「な・・・なにいってるのぜぇぇ!くささんはごはんじゃないのぜ!
ふーどさんがないならけーきさんでもいいのぜ!はやくもってくるのぜ、くそじじぃ!」
「ゆぅ。なにいってるの?おにーさんにあやまってね。くささんはおいしいよ。むーしゃむーしゃ。」
伴侶のれいむは、当然と言うようにそこらの雑草をむしゃむしゃ食っている。
「ゆぎぃぃぃいい!もういいのぜ!はやくおうちにいれるのぜ!べっどですーやすーやするのぜ!」
「そこに家ならあるだろ。」
「な・・・なにいってるのぜぇ!これはごみばこさんなのぜ!くさくてきたないのぜ!」
「ひ、ひどいよまりさ!おにーさんがれいむにくれた、ゆっくりできるおうちだよ!
それに、れいむがいっしょうけんめいおそうじしたんだよ!ゆっくりあやまってね!」
伴侶のれいむは何の違和感も持たずに、
まりさが以前住んでいためーりんお姉さんのおうちでは生ゴミ用のポリバケツとして使われていた、
文字通りのポリバケツの中にモソモソと潜り込む。
まりさの態度に、人間さんの表情も曇る。
人間さんにとってゆっくりと言えば、文句を言わずに生ゴミを食べ、
花壇用の肥料としてうんうんを生産するコンポストなのだから、それも当然だろう。
この時点ですでにまりさは、人間さんにとって有益な『コンポスト』から、必要のない『モノ』になり下がっていた。
「・・・いいよ別に。文句があるなら勝手に出ていけば。」
「ゆふん!まったく、ばかなじじぃとゆっくりしてないごみれいむのほうが、このおうちからでていくのぜ!
ゆっくりしたまりささまが、とくべつにこのおうちをつかってやるのぜ!」
だが、まりさは、その人間さんの空気の変化に気付かない。
当然と言わんばかりに人間のおうち明け渡しを要求する。
以前の飼い主であるお姉さんの時は、カッとなって自分からおうちを出ていってしまったが、
考えてみれば、まりさがおうちから出ていくというのはおかしいのだ。
「ふーん・・・。れいむ、どうやら一緒に暮らすのは無理そうだが。」
「ゆぅぅぅぅ・・・ゆっくりできないまりさだよぉ。」
「おぼうしかえしてね!まりさのおぼうし・・・ゆぁぁああ!!おぼうしなげないでぇぇぇえ!!」
「子供は大事に使ってやる。二度と帰ってくんなよ。じゃあな。」
ぽーい・・・
「おぼうしさん、ゆっぐりおりでぎでぇぇぇぇ・・・・・・」
まりさがおうち強奪宣言をして2分後、人間さんはまりさのお帽子を取り上げ、フリスビーの要領で畑に放り投げた。
そして、まりさがお帽子にたどり着いた頃には、人間さんのおうちの玄関は固く閉ざされていたのであった。
それは、まりさが、今度こそ本当の意味で『捨てられゆっくり』になった瞬間であった。
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だが、まりさは人間さんのおうちの玄関が閉ざされたことを確認する機会はなかった。
なぜなら、まりさがお帽子に追いついた、作物も収穫済みの畑のど真ん中で、
ちょうど森から下りて来たのであろうゲスゆっくりの集団に鉢合わせしていたからである。
「いいからだしてるわぁ。」
「おぼうしもぴかぴかだよー。」
「ちょうどたまってたみょん。」
集団は、ゲスありす、ゲスちぇん、ゲスみょん。
その視線は、いずれもまりさを品定めするように、お飾りからあんよまで舐め回すように動いている。
「な、なんなのぜ!まりささまにたてつくきなのぜ?」
だが、まりさの虚勢など何の意味も持たなかった。
「ゆっぎ『わかるよー』はなすのぜぇ!はな『うごいたら、いたいいたいだみょん。』ゆっぎゅぅぅ・・・。」
背後からありすとちぇんに抑えつけられ、みょんには鼻先(?)に棒を突き付けられた。
これまで甘い世界で言うことをなんでも聞く人間さんに守られていたまりさの抵抗など、
有能無能問わず、野生に生きるゆっくりにとって何の意味も持たなかった。
そして、
「むほぉ。きれいなまむまむねぇ。ありすがとかいはのあいをあげるわぁ!」
「ゆっへっへぇ、わかるよー。ちぇんたちにものこしてねー。」
「たっぷりかわいがってやるみょーん。」
「やべでぇぇぇええ『ずぷっ!』ゆぴぃぃぃいいいい!!」
「むほぉぉぉぉおおお!!とってもとかいはな、まむまむねぇぇえええ!!ずっぎりいいい!!」
「ゆひぃぃぃ!ずっぎりぃぃぃぃ・・・」
「とってもとかいはなすっきりーだったわ!まりさったらとってもいんらんね!」
「まりさのばーじんがぁぁ・・・ゆぁぁ・・・」
こうしてまりさの、まむまむによる初すっきりーは、まりさ自身がれいむに対して行ったのと同様、
ムードとは無縁の物となった。
そして、望まぬすっきりーにより、にんっしんしたまりさは瞬く間にボテ腹になる。
「ゆぅぅ・・・まりさのおちびちゃん・・・」
だが、れいぱーによるれいぽぅが、この程度で終わるはずもない。
「むほぉぉおお!!2かいめよぉぉぉおお!!」
「や、やべでぇぇぇええ!!おぢびぢゃん、ゆっぐりぢぢゃうぅぅぅううう!!」
どすっ!!
「むほびゅぅっ!!」
そのとき、ありすの側頭部に突然衝撃が走った。
衝撃により吹き飛ばされたありすは、まりさのまむまむにぺにぺにを残して、
2メートルほど先まで転がり、失われたぺにぺにの付け根を眺めて茫然としている。
そこには一人のお兄さんがいた。
人間から見れば、とてもお兄さんとは言えない。
おそらく50代ではあろう、頭髪がすっかりはげ上がり、
無精ひげがうっすらと伸びる顔には深いしわが刻まれている。
服装もスーツがすっかりくたびれて、猫背気味の姿勢と合わせて疲れたような印象を受ける。
お兄さんは、丸見えになったありすのあんよに容赦なくつま先蹴りを浴びせる。
ドスッドスッドスッドスッドスッドスッ!
「ゆぴぇ!び!ぴゅ!ぶ!びゅ!びっ!」
しゃべらせる暇も与えず、しかも殺してしまわないように蹴り続ける。
3分ほどひたすら蹴る音と、ありすの『げびゅっ!』という叫び声だけが響き続けた。
お兄さんの足が止まった頃には、微かにうめき震えるボロ饅頭となったありす。
レイプを邪魔されたと思ったらこの有様で、何が起きているのか理解できずに、残る2匹のゲスはそれを茫然と見ていた。
そして、それは明らかな失敗であった・・・
お兄さんはありすの処置を終えて2匹の方を振り向くと、
「ゆ・・・ゆっくりしていってねー・・・」
「ゆっくりしてみょーん・・・」
表情一つ変えることなく、
残り2匹にもありすと同じ仕打ちを与えたのであった。
「びゅ・・・ぴぅ・・・・・・」
10分後、あんよをぐしゃぐしゃに蹴り潰された3匹のゲスが、まりさの目の前に転がされていた。
お兄さんは、虫の息の饅頭達から飾りを取ると、両手でぐしゃぐしゃと丸め、靴にこびりついた餡子をふき取り、
ゲスありすの元ぺにぺにの傷跡にねじ込んで、まりさの方を振り返った。
「あ・・・ありがとうなのぜ、おにいさん・・・。」
お兄さんと呼ばれたオッサンは、表情一つ浮かべずまりさを眺めていたが、
やがてまりさを両手で抱えると、一言も発することなく自分の家へと帰って行ったのであった。
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「ゆぅ~・・・こわかったのぜぇ・・・。」
お兄さんのおうちの地下は、広さ8畳ほど、打ちっぱなしコンクリートの壁と床で、天井には照明1つ、
机が一台あるだけの、簡素な部屋であった。
「でも、やっぱりまりさはえらばれたゆっくりなのぜ!」
お兄さんは、まりさが手も足も(?)出なかったゲス達をボロ饅頭に変えてしまった恐ろしい人間さんだったが、
まりさを助けてくれたということは、どうやらまりさの奴隷希望ということらしい。
「ゆっくりできないすっきりーだったけど・・・おちびちゃん・・・」
すっかり大きくなってしまった自分のお腹を眺めるまりさ。
まりさは父親になることが望みであったので、2重の意味でショックだったが、
そうは言っても、にんっしんした以上、おちびちゃんに罪は無い。
まりさは自分が腹を痛めて産む以上、おちびちゃんをゆっくりと育てる決心をしていた。
このあたり、まりさは飼いゆっくりとして品種改良された、良餡のゆっくりではあった。
「ゆぁぁぁ、おぢびぢゃん、うばれるぅぅぅうううう!!」
それから2時間後。
早くもまりさは産気づいた。
通常であれば、にんっしん期間の短い植物型出産でも数日はかかるのだが、
れいぽぅされた場合極端ににんっしん期間が短くなるという性質がゆっくりにはある。
望まぬすっきりーによって異物と判断された精子餡を、一刻も早く体外に出そうとする防衛機能によるものと言われているが、
実際のところはよくわかっていない。
「ゆっぎっぎっぎっぎぃぃぃぃいいい!!ゆっぐぢうまれでねぇぇえええ!!ゆっ!」
しゅぽーん!べしょっ!!
「ゆ、ゆ、ゆぅ、・・・ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」
「ゆぅぅぅううう!!ゆっぐぢぢでいっでねぇぇ!!」
こうして、胎生にんっしんにしては早すぎる出産ではあったが、
新しい命、一匹の赤まりさが誕生したのであった。
「ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!!ゆっくち!ゆっくち!」
「すーり、すーり!しあわせー!」
「しゅーりしゅーり!ちあわちぇー!」
ぎいっ・・・。
「「ゆゆっ?」」
そのときちょうどよく、お兄さんが部屋に入ってきた。
「おにーさん!まりさのおちびちゃんがうまれたのぜ!おいわいにあまあまをもってくるのぜ!たくさんでいいのぜ!」
「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」
だが、お兄さんの返事は無かった。
返事の代わりにまりさ親子に向けられたのは、お兄さんの両手。
その両手は、そっとまりさ親子のお帽子を掴むと、しゅぽんっと頭からお帽子を奪った。
「ゆ・・・くち?」
「ゆ!?やめるのぜ!まりさとおちびちゃんのおぼうし・・・」
返事は無い。
お兄さんは、机の上に赤まりさのお帽子を置くと、まりさの大きなお帽子を両手で持ち、
・・・びりっびりびり・・・
その黒く美しく輝くお帽子を、真っ二つに引き裂いた。
「ゆっ?ゆっ、ゆっ・・・ゆぁぁあああああ!!おぼうじがぁぁあああ!!」
・・・びりっ・・・
真っ二つに裂かれたお帽子は、さらに縦に引き裂かれ、4本になる。
「ゆぁぁあああ!!」
・・・びりっ・・・びりっ・・・
4本に裂かれたお帽子は、さらに縦に引き裂かれ、8本、16本の短冊になっていった。
「ゆっ・・・ぎ・・・」
「ゆぁーん、おきゃーしゃんのおぼうちー。」
まりさの目の前に置かれたのは、もはやお帽子であったかどうかもわからない、短冊状の黒い布。
ついさっきまでゆっくりしていた、まりさの黒く輝くお帽子は、永遠にその姿を失ったのであった。
「おぼうし・・・ゆっぐぢ・・・」
まりさは必死で組み立て、元の形にしようとするが、当然治るはずはない。
そして・・・
「ゆぁーん!まりしゃのおぼうち、ゆっくちさせちぇー!」
・・・びりびりびり・・・びりびり・・びり・・・・
赤まりさのお帽子も、まりさのお帽子と同じ運命をたどった。
「おぼうしさん、ゆっぐぢ・・・ゆっぐ・・」
「ぺーりょ、ぺーりょ・・・どうしちぇ・・・」
必死で組み立て直し、ぺーろぺーろしてくっつけようとがんばっても、
そんな方法で破れたお帽子が元に戻るはずもなく、はらりと崩れ、元の黒い紐になる。
お兄さんは、そんなまりさ達の姿を机に腰掛けてしばらく眺めていたが、
やがて腰を上げ、まりさ達の元に戻ってきた。
「じじぃ・・・ゆっぐぢ、おぼうじ・・・もどにもどぜぇ・・・」
「ゆぁーん、ゆっくちさせちぇー。」
その声を聞き入れたのか、お兄さんは、まずまりさのお帽子だった黒い紐をまとめて拾い上げる。
だが、その後とった行動は、まりさが奴隷に命令した通りのものではなかった。
・・・しゅるっ・・ぎゅっ!・・・しゅる・・・
「な、・・・なにしてるのぜ?」
まりさの目の前で、黒い紐の束は先端同士を結び付けられ、一本の細長い紐になっていった。
「そんなのいいから、さっさともとにもどすのぜぇぇええ!!」
ぽよん、ぽよん、とお兄さんの足に体当たりするが、全く反応は無い。
やがてまりさのお帽子が一本の長い紐に変わり、赤まりさのお帽子も、同じく一本の長い紐になった。
「ゆぅぅ・・どうしちぇ・・・」
「ゆがぁぁあああ!!もどにもどぜぇぇええ!!」
ぽよんっ!ぽよんっ!
そして、お兄さんの足に体当たりするまりさと、ひたすら泣き続ける赤まりさの目の前で、
まりさの帽子であった紐の先端に、ライターで火がつけられた。
「ゆびゃぁぁああああ!!ゆっぐぢぎえでね!ゆっぐぢぎえでぇぇええ!!」
とっさにあんよで火を踏み、もみ消すまりさ。
じゅっ!!
「ゆびぃっ!!」
火は消えたが、あんよの一部は焼け、饅頭皮の焦げるにおいが部屋に広がる。
そして、火が消えた次の瞬間には、帽子紐の反対側の先端に、ライターで火がつけられていた。
じゅぅ!「ゆぴぃっ!」じゅっ!「ゆぁぁっ!!」じゅぅ!「ゆぎぃぃ!!」
一方の先端の火を踏み消すたびに、反対側の先端に火がつけられる。
あんよはみるみる焼け焦げていき、歩行能力は失われていく。
そして、まりさがもはや這うことしか出来なくなった頃、まりさのお帽子を材料とした長い紐は、
床に一筋残された煤以外、跡かたもなく焼き尽くされたのであった。
「ゆ・・・あ・・・まり、さの・・・おぼうぢ・・・」
そして、赤まりさの帽子も当然、その運命を共にすることになる。
シュボゥ・・・
「ゆぴぃぃいい!!まりしゃのおぼうち『じゅっ』ゆぴぃぃぃ!!」
1つ違うことと言えば、赤まりさのあんよは余りにも薄すぎ、火を踏み消すこともできなかった事だけ。
「おきゃあしゃぁぁん!まりしゃのおぼうち!おぼうちぃぃー!」
「ゆ・・・ぎ・・・おぢびじゃ・・・」
まりさのあんよは、赤まりさの叫びに突き動かされながらも、わずかに這い進むことしかできなかった。
燃え上がる赤まりさのお帽子、かつてお帽子だった黒い紐までたどり着くことは、ついにできなかったのであった。
「ゆぁぁーん!まりしゃのおぼうちがぁぁ!!ゆぁぁーん!!」
「ど・・・ぢで・・・」
そして、最後までお兄さんからの返答は帰ってくることがなかった。
それから30分後、まりさ親子は、先ほどまりさがゲスゆっくり達に襲われた場所に持ってこられ、
その場に放置されたのであった。
「おきゃーしゃん・・・」
「・・・なに、・・おちびちゃん・・・」
「・・・どうしちぇ・・・」
「・・・・・・。」
まりさには、自分がなぜ奴隷である人間さんに、こんな酷い目にあわさせられるのか、未だに理解できなかった。
ただ一つ確かな事は、まりさ親子があの人間さんによって、
今なお周囲に放置されたままうめき続けるゲスゆっくり達と、平等に扱われたという事だけであった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
あれから川沿いの木の根元で一夜明かしたまりさ親子。
お帽子を失った喪失感を埋めるため、まりさは牛丼容器、赤まりさは卵の殻をかぶっているが、
正直言って慰めにもならなかった。
この頃になるとまりさも、赤まりさの献身的なぺーろぺーろでどうにか歩ける程度に回復していた。
しかし、一息ついて見ると体に力が入らない。
まりさは、家出して以降一度も食事をとれていないことに気付いた。
「ゆぅぅ・・・おちびちゃん、まりさはごはんをとってくるのぜ・・・ここでまっとくのぜ。」
「ゆぅ、ゆっくちりきゃいしちゃよ。」
実のところ、赤まりさはとっくに飢えの限界を越えており、
夜の間は木の周囲に生えていたコケや雑草をむーしゃむーしゃして食いつないでいた。
まりさにとっては不本意であろうが、赤まりさの舌は親より遥かに野生向きに矯正されつつあったのだ。
一方、そんなことは知らないまりさは、なんとか(自分基準で)ゆっくりした食べ物を探しに、
再び畑の方へとやって来ていた。
昨日の一件で、人間さんに下手に頼ると危険であることを叩きこまれたまりさ。
そうなってくると、まりさが知っている食べ物で、この周囲に確実にあることが分かっているものは、
一つしかなかった。
畑のお野菜である。
畑と言っても、まりさがゲス達と出会ったあたりの畑は、現在収穫済みで野菜が見当たらない。
そんなわけで少し遠くまであんよを運んでいると、明らかにゆっくり達のものと思われる怒声が聞こえてきた。
お帽子が無い今、他のゆっくりに出会いたくないまりさは、草むらに身を隠しつつ近づいてみる。
視線の先には、体高3mを超えるドスまりさがいた。
その周囲には、100匹は越えるであろう成体ゆっくりと、さらに数倍の数の子・赤ゆっくりがいる。
そして、群れに対面しているのは、一匹の胴付きのうかりんであった。
「お野菜さんを独り占めするゆうかりんは、ドスがせいっさいするよ!!」
「せいっさいするよ!!」×500
「ゆぅぅ~困ったわ。ゆうかは、独り占めなんて・・・」
「独り占めしないって言うなら、お野菜さんをちょうだいね!全部でいいよ!!」
「ぜんぶでいいよ!!」×500
「しょうがないわ・・・ドス、みんなもゆうかについてきて。」
「ゆわーい!おやしゃいしゃん、むーちゃむーちゃできりゅにぇ!」
「わきゃるよー!」
「ゆっくち!ゆっくち!」
どうやら、ドスの群れの交渉は成功したようであった。
まりさも、本来ならばあの群れについていきたいところではあったが、
お帽子が無い以上群れに紛れ込むのは難しい。
しょうがないので、とりあえずお野菜を置いてある場所を探るのと、
もし何個かお野菜を落として行ってくれたらそれを拾って帰ろうということで、まりさも群れの後をそっとつけていった。
のうかりんに連れられて畑の中の道を進むドス一行。
一行はやがて、そこそこの広さがある貯水池に通りがかった。
「このあたりでいいわ。」
のうかりんが、ふと立ち止まる。
「ゆ?お野菜さんが無いよ?早くお野菜さんをちょうだいね!」
「ちょーだいね!!」×500
だが、ドスの質問に対する返答は無く、のうかりんは、サッと右手を上げた。
そして、その合図と同時に、ドスの帽子がふわりっと宙に浮かびあがった。
「ゆぁぁ~!ドスのおぼうし!戻ってね!降りてきてね!!」
宙をひらひらと舞うドスの巨大なお帽子。
それは、風のせいなどではなかった。
注意深く周囲を見れば、ドス一行のはるか後方に、釣竿を手に持ったのうかりんがいるのが分かるはずだ。
手品のタネは簡単なモノだ。
ドスのお帽子を釣り針でひっかけて、釣り上げてやったわけである。
ドスのお帽子は、そのままドスからつかず離れずでヒラヒラと舞い続け、貯水池の真ん中に立てられた杭にひっかけられた。
「よかったよ。ドスのお帽子帰って来てね。」
だが、ドスとて所詮は饅頭だ。
ちょっとした雨くらいなら耐えられても、長時間水につかれば当然ふやける。
池の真ん中まで来て、帽子を杭から外している間に、程よくドスのあんよはふやけきっていた。
「どぼじであるげないのぉぉぉおおお!!」
あんよがふやけきり、気付いた時には方向転換すら出来なくなっていたドス。
のうかりん達にとっては、全てがいつも通りの作業である。
「どうしてまわりに、さくさんがあるのぉぉぉおお!?」×500
いつの間にか数匹ののうかりんが音も無く駆けつけて、折りたたみ式の柵で群れのゆっくり達を囲い込んでいる。
子・赤ゆっくりは柵の間を通り抜けられるが、そのさらに周囲を目の細かい網で囲いこんで、逃げられないようにしている。
明らかに成体と子ゆっくり以下を振るい分けする意図があった。
「ゆぁぁあああ!!やめてね!ゆうかりん!ドスに変な事しないでね!!」
ドスも当然、そのまま貯水池の中で溶かし殺したりはしない。
水を汚染されると厄介だ。
のうかりんは魚屋が使う胴付き長靴をはいて、ドスパークを受けないよう、ドスの後方から近づく。
「ゆぎゃぁぁあああああ!!ゆうかりん!!何ずるのぉぉおおお!!?」
そしてそのまま、特大のケーキナイフを使っての、ドスの後頭部から解体作業が始まった。
「ゆぎゃぁぁぁあああああ!!!どずのあんごさん、どらないでぇぇぇえええ!!」
ドスは後頭部を切り開かれ、餡子を10cm角のブロックにされて取りだされていく。
その作業速度は、手慣れている事もあり、人間のゆっくり解体職人並みにスムーズだ。
切り出された餡子は、バケツリレーの要領で貯水池の外まで運ばれると、猫車につめかえられ、肥料置き場に運ばれていく。
「ゆ・・・びゅ・・・ぎ・・・・・・」
ドスは、それから10分と経たないうちに意識を失い、30分後にはこの世から姿を消した。
「おーい。のうかりん。お仕事の調子はどうだ?」
「L田さん。ドスの処理は終わりました。他も大と小で分別終わってます。」
「うんうん。相変わらず手際いいねー。そんじゃ、大は肥料ね。小はのうかりん達のおやつにしていいから。」
「ゆーん!」×15
「あ、それじゃ、一番働いてくれたのうかりんには先にご褒美ね。」
「ゆぁ・・・ふぁん・・・まだおひるれしゅよぉ・・・」
「たまには、みんなの前ってのも・・・いいだろう?」
「ゆはぁん・・・」
「ゆぴぃぃぃいいい!!ゆっくちたしゅけちぇ~!」
「はいはーい。ゆうか達が美味しく食べてあげるからね~!」
「ゆぁぁ~ん、ゆっくちさせちぇ~!」
「やめてね!おちびちゃんがいやがってるよ!」
「安心してね。おちびちゃん達の苦しむ姿は見ずに済むから。」
「やべ『ぐしゃっ!』びぇ・・・」
まりさは、目の前の光景に戦慄していた。
自分が弱い事など自覚していないまりさでも、さすがにドスとの力の差位は理解している。
そのドスが、目の前で為すすべなく解体されていった。
また、自分と同程度の体格の成体ゆっくり達が、のうかりんに手も足も(?)出ずに餡子ペーストに変えられていく。
そして、その地獄絵図を作っているのうかりん達を指揮しているのは・・・まりさが奴隷と思っていた人間さんであった。
しばしの間放心状態だったまりさは、無意識のうちに体を揺らしてしまった。
その、草むらを揺する音がした次の瞬間、人間さんに激しく愛撫されていたのうかりんの右手から、閃光が走った。
しゅっ!!
「ゆっ!?」
しゅこんっ!!
閃光は、そのまま30mほど離れた茂みに潜んでいたまりさのお下げをかすめた。
まりさがぎこちなく後ろを振り向くと、
まりさの後方には、引きちぎられたお下げを貫き地面に突き立った鎌があった。
「まだ野良が隠れてるわ!!」ピッピーー!!
笛の合図とともに、周囲の畑から各々農具を手にしたのうかりん達が包囲に走る。
その動きは、統率された軍隊そのものであった。
「ゆぁぁぁああああ!!!」
まりさは、それでも何とか逃げ切ることに成功した。
群れに同行せず、一匹だけだったのが良かったのであろう。
ただし、その逃亡劇は、土と汚物にまみれ、泥水をすすり、一晩中眠ることも許されない悲惨なものではあったが。
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めーりんお姉さんの家を離れて数日しか経っていないが、すでにまりさは満身創痍、当初の余裕は完全に失われていた。
まりさは、食事も取れず、体は泥だらけ、お帽子もお下げも失い、
同行しなかったおかげでなんとか被害を免れた赤まりさ以外は、無事な部分などかけらほども残されていなかった。
これも赤まりさが、賢く周囲の草や木の枝を集めて即席の隠れ家を作ったり、
自主的に雑草などを食べてくれていたからこそではあったが。
「ゆぅぅ・・・このままじゃ、ゆっくりできないのぜ・・・」
「おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇにぇ。いもむししゃんたべりゅ?」
「ゆぇぇ・・・おかーさんはえんりょするのぜ・・・。」
ともあれ、このままでは赤まりさはともかく、まりさはゆっくり出来なくなるのも時間の問題であった。
もはや、まりさに選択の余地は残されていなかった。
まりさの選ぶべき道は2つだけ、めーりんお姉さんのおうちに帰るか、最初に拾ってくれた人間さんのおうちに飼ってもらうか。
・・・まりさは、人間さんのところへ向かうことにした。
めーりんお姉さんのところへ帰りたくなかったわけではない。
ただ、自転車でここまで連れてこられてしまったため、道がはっきりとわかるのが、
拾ってくれた人間さんのおうちだけだったのである。
まりさは、赤まりさを再び木の根元に残して、人間さんのおうちへ向かった。
思えば人間さんのおうちでは、わずか2日前にれいむにもにんっしんさせている。
もしもそれ以上おちびちゃんがいらないと言われたら・・・おちびちゃんには悪いが、
まりさはこれ以上野良生活には耐えられないと思っていた。
あのおちびちゃんなら、きっとひとりでも野生の世界で強く生きていける、そんな都合のいい事を考えていた。
要するに、最悪の場合は赤まりさを捨て、自分だけで飼ってもらおうと考えていたのである。
ガラガラガラッ!
人間さんが玄関から出てきた。
「お、おにいさん・・・」
「・・・・・・。」
だが、人間さんは、目の前にいるまりさを完全に無視した。
「お、お、おにいさん!まりさだよぉ。ゆっぐぢぢでねぇ。すーりすー・・・」
まりさが足にすり寄っても、その足をそっとどかすばかり。
一切反応は帰ってこなかった。
「やっばりがっでぐだざぃぃ・・・おねがいじばずぅ。」
通り道のど真ん中で土下座すると、人間さんは右足のインサイドをまりさの左頬につけ、
サッカーボールを扱うように、そっと横にずらした。
邪魔な『モノ』をどかすと、人間さんは何事もなかったように、すたすたと歩いていく。
「どぼぢでぇぇぇええ!!」
まだ諦めないまりさが、もう一度人間さんの前に立ちふさがろうとしたとき、人間さんと目があった。
その目には、怒り、憎悪、嫌悪など存在せず、それどころか、邪魔だとか、面倒くさいというような表情も浮かんでいなかった。
ただ、自分にとって無価値な、たとえば道の真ん中に石ころが転がっている、そういうものを見る目であった。
「ゆ・・・ゆ。ゆぁ・・・ゆぅ。」
まりさは、その視線に昨日のお兄さんや、農家以上の恐怖を感じ、とっさに道の脇によけた。
結局人間さんは、まりさの方を一度も振り替えることなく、駅への道を歩いて行ったのであった。
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人間さんに飼ってもらえなかった日、
まりさには、困難はわかっていても、もはや他に選択肢は無くなった。
まりさは・・・めーりんお姉さんのおうちに帰ることを決心したのであった。
「ついたのぜ・・・」
「おきゃーしゃん!ここに、おきゃーしゃんのほんとのおうちがありゅの?」
「そうなのぜ・・・でも、つかれたのぜ・・・」
「しょうだにぇ!ゆっくちきょうはやすもうにぇ!!ゆっくち!ゆっくち!」
「ゆぇぇ・・・なんでそんなにげんきなのぜぇ・・・」
川沿いの道を歩くこと数日後、まりさはお姉さんと暮らしていた町の境界線にあたる、川の河川敷にたどり着いていた。
まりさも見憶えのある景色に喜んだが、町中とはいえ道を熟知している訳でもなく、これからは町中を探索する日々が始まる。
とりあえず、まりさは河川敷に落ちていた、雨に濡れたのであろうへにゃへにゃのダンボールを見つけ、
これでおうちを作って、今後の行動拠点とすることにした。
だが、弱っている時には何をやっても上手くはいかないものである。
「むきゅぅん。そのはこさんは、ぱちぇたちがいただいていくわ!むきゅ。」
「ゆぅぅ・・・これは、まりさたちがさきにみつけたのぜ・・・」
「わからないよー。まりさがもってるのをちぇんたちがみつけたから、それはちぇんたちのなんだねー。」
ここで再びゲス野良に出会ってしまった。
ゲスぱちゅりーを筆頭に、ゲスれいむとゲスちぇん。
頭もガラも悪そうな連中だが、今のまりさでは当然敵いそうにない。
まりさが油断していたのも無理はなかった。
町に入ってからは、お帽子が無いことでゆっくり出来ない視線を受けてはいたものの、
激しいイジメや攻撃は受けなかったからだ。
町では飾りのないゆっくりなど珍しくないことが原因ではあったのだが、
このゲス達、町で数代を過ごした町ゆっくりではなく、森から都会を目指してやってきた駄ゆっくり達である。
このゲス達としても、当面の宿が無いため、必死であったとも言えるのだが。
「だいたい、おかざりもないゆっくりが、れいむたちのおうちをひとりじめするなんて、ゆっくりできないよ!」
ぼよんっ!
ゲスれいむの体当たりが、食糧不足でヘロヘロのまりさに直撃する。
「やべでぇぇぇえ!!」
「おきゃーしゃんをゆっくちしゃしぇちぇー!」
「むきゅーん。ぱちぇたちにたてつくと、おちびちゃんでもようしゃしないわよ?」
ぐしゃり!
「ゆぴぃぃぃぃ!やめちぇぇぇえええ!!」
「おぢびぢゃぁぁあああん!!」
こちらはすっかり野生に慣れて栄養状態は良い赤まりさであったが、成体との体力差はいかんともしがたかった。
あっさりと赤まりさを踏みつけると、どんどん圧力を強めるゲスぱちゅりー。
目玉が飛び出しかけ、口元からは餡子の混じった泡を吹き始める。
まりさもちぇんとれいむにまむまむとあにゃるを蹂躙され、身動きが取れない。
せっかく町までたどり着いたというのに、絶体絶命の状況に叩きおとされてしまった。
と、その時、赤まりさを押しつぶそうとしているぱちゅりーの後方から、抑制のきいた声が掛けられた。
「・・・チビ殺しはゆっくり出来ないみょん。」
そこには、まりさがこれまで見たこともない、これ以上ないと言うほどゆっくりしていないゆっくりが居た。
それは、お帽子の無いまりさ親子以上にゆっくりしていない風貌の、一匹のみょんであった。
顔面をすりおろしでもしたかのように、上下の唇が完全に削り取られ、前歯が丸見えになっている。
全身は細かい傷だらけだが、銀色の髪と黒いリボンだけは傷一つなく、気味が悪いほどに滑らかに手入れされていた。
額にはひらがなで『げす』と書かれており、まりさと同じく、人間の手による暴力を受けたのであろうことだけは見てとれる。
みょんは話を続ける。
「この町ではおうちもごはんも早いもの勝ちみょん。とっとと返して失せるみょん。」
みょんの話は嘘ではない。
元々資源の限られる町野良社会では、奪い合いを本気でやってしまうと結局誰もゆっくり出来なくなってしまう。
それを防ぐために、町野良の中では、狩り場(ゴミ捨て場)を独占したり、
誰かが一度手に入れた物を盗んだり、
あるいはおうちを強奪したりする事は御法度なのだ。
しかし、豊富な資源の中で奔放に育ったゲスに通じるような理屈ではない。
「むきゅぅぅ、ゆっくりできないみょんはしぬがいいわ!」
そう言うが早いか、先をとがらせた棒を口にくわえるゲス3匹。
だが、3匹がみょんに突進しようとした瞬間、
しゅこっ!!
閃光が走った。
次の瞬間、ゲス3匹は水平に、3枚づつにスライスされ、達磨落としのように崩れ落ちた。
まりさには、一瞬何かが光った以外、何も見えなかった。
ただ、みょんが舌を器用に使って、銀色に光る刃物らしき物を飲み込むのを見て、
アレでゲスをバラバラに切り裂いたのであろうことを察した。
みょんが、茫然としているまりさ親子に声を掛ける。
「おまえ、飼いゆっくりだったみょん?」
「ゆ、わかるのぜ?」
「ふぬけたかおだから、すぐにわかるみょん。」
「・・・ゆぅぅぅぅぅうう!?」
「どうせ、飼い主に逆らって捨てられたか、調子に乗って家出でもしたみょん。」
「ゆっぎっぎ・・・」
図星だ。まりさはなにも言い返せない。
「ふぅ。親がバカだと子供が苦労するみょん。」
その言葉は、妙に実感がこめられていた。
だが、赤まりさの声がその言葉をかき消す。
「おかーしゃんにひどいこといわにゃいでにぇ!!」
「ゆ!?おちびちゃん・・・」
「みょ~ん。・・・べろり!」
「ゆぴぃぃぃぃい!!きょわいぃぃぃいい!!」
「ゆわぁぁ!おちびちゃんになにするのぜぇ!?」
みょんの、通常のゆっくりの5割増しで長い舌で、顔面を舐められた瞬間、激しく泣き出し失禁する赤まりさ。
さっきまで怖い目にあってたかと思えば、今はそれ以上に恐ろしげなゆっくりに対面しているのだ。
緊張の限界だったのであろう。
「無理すんなみょん。」
「ゆぴぅ・・・ゆぅ・・・。」
赤まりさが泣きやむと、それを合図にしたかのように、小雨が降り始める。
バラバラにされたさっきの野良達も、空模様が不安だったからこそ、ダンボール一枚のためにあせっていたのだ。
「雨だみょん。どうせそんなダンボールじゃもたないみょん。ついてくるみょん。」
「ゆ、ゆぅ・・・。」
みょんに連れられてやってきたのは、川にかかっている橋の下だった。
「さあ、入るみょん。」
「ゆわぁ・・・しゅごーい!」
それは、橋の下でも特に死角になる、橋と道路の境界あたりに横穴を掘り、
さらにベニヤ板に草やツタを絡めた跳ね上げ扉をつけたおうちだった。
ぱっと見人間でも気付かないであろう。
「さっさと奥に来いみょん。雨さんが止むまではおいといてやるみょん。」
「ゆわ~。ゆっくちしちぇるにぇ~!」
室内を見てまりさ親子はさらに驚かされた。
人間さんの家には当然及ぶところもない。
しかし、そのおうちは、ゆっくりが自分で作ったものとしては信じられないほど見事なものであった。
入り口はやや狭く造られているが、奥は成体ゆっくり数匹がはいっても余裕があるほどの広い空間。
床には河原の丸い石を敷き詰め、その上に、天日で干したのであろう柔らかい草が敷かれている。
平たい石のテーブルや、木の皮や草を編んで作ったベッド、貯蔵食糧もバライティ豊かで、床に埋めた鍋には水もためられている。
彩のつもりか、光もはいらない室内にも関わらず、水をためた牛乳瓶には花が一輪飾ってある。
それは、まりさの野良ゆっくり観からはかけ離れた、非常に文化的な生活であった。
「それでも食っとけみょん。」
まりさが渡されたのは、まだ封を切って間もないメロンパン。
どうやって集めたのか、みょんのおうちの中には、人間でなければ手に入らないはずの食料も豊富にあった。
「そっちのチビには草を混ぜろみょん。そのまま食わすと舌がバカになるみょん。」
「ゆぅ・・ゆ。」
「むーちゃむーちゃ、ち、ち、ちあわちぇー!」
「むーしゃ、むーしゃ・・・しあわせ・・・ゆぅぅぅぅぅ。」
「おとなのクセに泣くなみょん。だから捨てられゆっくりはメンドくせーみょん。」
まりさは、泣き続けた。
このメロンパンは、まりさが家出をしてから数日間で、初めて食べたまともな食事だったのである。
しかもそれを与えてくれたのは、これまでまりさが見下し続け、汚いゴミ達程度にしか思っていなかった野良ゆっくり、
その中でもさらに飛びぬけてゆっくりしていない、この異形のみょんだったのだ。
それに、まりさがロクに食料も取ってこれない間でも、
まりさが苦くて食べられないような雑草を文句ひとつ言わずに食べて生きていたおちびちゃん。
おそらくもう一方の親の、ゲスありすの野生生活力だけを上手く引き継いでくれたのであろう。
まりさは、この中で、自分だけが誰かに頼らないと生きていけないゆっくりであることを悟らされたのであった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
まりさは、自分の窮状について、過去の経緯と合わせてみょんに全てを打ち明けた。
みょんの方は、聞けば聞くほど面倒くさそうな表情になっていったが、
赤まりさの方に妙に懐かれてしまったため、しぶしぶ最低限の協力をしてくれることになった。
とはいっても、一緒にお姉さんのおうちを探してくれる、などという都合のいい話は無い。
それは、まりさがお姉さんのおうちを見つけるまでの間、足手まといになるであろう赤まりさを預かってくれる、
というだけの話であった。
「こっちもイチイチ、アホなゆっくりの面倒なんて見てられないみょん。」
「ゆぅぅ、だからって、ウチにわざわざ連れてこないでほしいよ。」
「そういうなみょん。親はともかく、子供をみすみす死なせるのは夢見が悪いみょん。」
「ゆぅ~。しょうがないよ。みょんの頼みじゃ断れないよ。」
「大助かりだみょん。」
みょんがまりさ親子を連れてきたのは、町野良ゆっくりの孤児院、通称『ほいくえん』だ。
名前は微妙に間違えているが、機能は間違いなく孤児院なので、特に問題は無い。
みょんは、親切は自分の柄じゃないと言って、『ほいくえん』の園長、保育まりさに口利きだけして、
さっさと去っていってしまった。
やはり、厄介事はゴメンだということなのであろう。
「そんなわけで、しょうがないからおちびちゃんだけは、ココで預かってあげるよ。まりさはさっさと飼い主さんを探して来てね!」
「ゆぅぅ、ゆっくりおねがいするのぜ・・・。」
「・・・と、言いたいところだけど、タダで引き受けるわけにはいかないよ。」
「ゆっ!?でも、まりさはなんにもあげられないのぜ・・・」
「ゆふん。大丈夫だよ。まりさにでもできることをしてもらうだけだよ。それで、おちびちゃんも面倒見てあげるよ。」
「ゆぅぅ~・・・。」
保育まりさのいうところでは、要するにほいくえんで預かっているおちびちゃん達の授業に、
親子で参加して欲しい、という事であった。
その内容までは、結局教えてもらえなかったが、どうせまりさに選択の余地はなかった。
「ゆほんっ!おちびちゃん達!今日は特別授業だよ!」
「ゆっくちりかいしゅるよ!!」×200
「このまりさを見てね!!どう思う!ちぇん!」
「わきゃらないよー。おぼうしがにゃいんだよー。」
「ゆぅぅぅ・・・」
「ありす!」
「とっちぇもよごれてて、おはだもがさがさにぇ!ときゃいはじゃにゃいわ!」
「ゆぁ、ぁ、・・・」
「そうだね!とってもゆっくりしてないね!それはね!このまりさが、捨てられゆっくりだからだよ!」
「しゅてられ?」「ゆっくち?」
「『捨てられゆっくり』だよ!自分じゃ何にも出来なくて、人間さんにごはんも、うんうんの片づけも、ぜーんぶやってもらって、
それでも感謝しないで威張ってばっかりで、人間さんに見捨てられた、とってもゆっくりしてないゆっくりなんだよ!」
「ゆぅ・ぎぃ・・・」
「おきゃーしゃん・・・ゆっくちしちぇにぇ。」
保育まりさの口元には、陰湿な笑みが浮かんでいた。
何のことは無い。
保育まりさは、赤ゆっくり達への教育、という名目の元、
元飼いゆっくりであるまりさを、しかも自分の子供の前で、思いきりいたぶってやりたかっただけだったのだ。
「恩知らずで、何にも出来ないクセにいい気になってるゆっくりは、こんなにゆっくり出来なくなるんだよ!
おちびちゃん達も、こんな風になりたくなかったら、がんばって立派なゆっくりに育ってね!」
「おきゃーしゃん・・・」
まりさはそんな保育まりさに対して、何一つ言い返す事が出来なかった。
そして、そんなまりさに対して、保育まりさすら予想していなかった、さらなる追い打ちが掛けられる。
それは、孤児ゆっくり達から発せられた。
「おにぇーしゃん。」
「ゆぅ、う、ゆぅ?なんなのぜ?」
「おにぇーしゃん、ゆっくちしちぇにぇ。」
「ゆ・・・ゆぅ。」
「おにぇーしゃんも、がんばっちぇ、ゆっくちしちぇにぇ!」
「おにぇーしゃんも、きっとときゃいはににゃれるわ!」
「むきゅ!おねーしゃんも、きっといつか、ゆっくちできりゅわ!」
「しょーだにぇ!ゆっくち!ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」
「わきゃるよー。ちぇんもおうえんしゅるよー。」
「みょんもおうえんしゅるみょーん!」
・・・・・・。
それは、かつてまりさが、汚らしく、みすぼらしいと見下していた野良ゆっくりの中でも、
特に不幸な者たちであろう、両親を亡くした孤児ゆっくり達からの励ましの言葉であった。
孤児ゆっくり達は、純粋な善意だけからその言葉を発したのであろう。
しかし・・・それは、まりさが野良まで含めた、町のあらゆるゆっくりの中で、
もっともみすぼらしく、無能で、ゆっくりしていないゆっくりであることをハッキリと指し示されたも同然だった。
「おきゃーしゃん・・・ゆっくちしちぇー。」
まりさは、赤まりさの声もどこか別の世界の音にしか聞こえなかった。
このとき、まりさを形作っていた中身の無い自信、希望、生きてきた喜び、そういった物は、
跡かたもなく崩れ去ったのであった。
そして、まりさはほいくえんに赤まりさを預けると、もはや探す意味を見失いつつあるお姉さんのおうちを目指して、
ゆっくりと探索の旅を再開したのであった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
あれから数日後の深夜。
まりさは、飢えと疲れと失望の中、ゴミ捨て場で力尽きようとしていた。
夜間に積み上げられた生ごみの山の中で、薄れゆく意識の中、まりさは思う。
なぜ、自分はあんなに自信満々だったのか。
なぜ、自分は家出してしまったのか。
なぜ、自分はお姉さんにあんなに偉そうな態度をとっていたのか。
だが、まりさの中に、答えが浮かんでくることは無い。
当然だ。
まりさの持っていた自信に、そもそも中身や根拠など、かけらほどもなかったのだから。
赤まりさの事、そして、自分がれいむに宿した顔も知らない赤ゆっくり達の事も思い出す。
きっと、これでよかったのだ。
自分のような無能で、無意味な饅頭に育てられ、不幸な生涯を送るくらいなら、
あの頼りがいのある保育まりさやれいむに育てられる方がいいだろう。
それは、ある意味で正解だった。
事実、このときほいくえんでは赤まりさの出来の良さに保育まりさは驚いていたところだし、
れいむが生んだ赤ゆっくり達は、コンポスト、と呼ばれながらも何不自由ない生活を送っている。
そして、まりさは目を閉じ、結局自分が一番ゆっくりしていなかった事を気付き、
後悔しながら深い眠りへとついたのであった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「ということがあってね・・・」
「ホント、よく生きて戻ってきたものねー。」
ここは、虹浦町内にあるイタリアンレストラン。
仲良くランチを取りながら話に華を咲かせているのは、
湯栗学園の名物教師、美鈴先生と優宇河先生だ。
そのテーブルには、美鈴先生の飼いゆっくり3匹と、優宇河先生の飼いゆっくり2匹もいる。
「ええ。髪の毛の、お帽子に隠れる場所に目印代わりのアクセサリーつけてたからよかったわ。」
「ホント、ゴミ捨て場で見つかるなんて、一歩間違えれば収集されて一貫の終わりじゃない。」
「そのゴミ捨て場の電柱に、『迷子ゆっくり捜してます!』て張り紙してたのがよかったのよ。なんでもやってみるもんねー。」
まりさはつくづく運が良いゆっくりだった。
めーりん先生は、あの後簡単にあきらめず、捜索願いと張り紙、聞き込みまでして必死に探してくれていたのだ。
まさか、町からそうとうに離れた農村地域まで行っているとは思っていなかったが。
「ほら、まりさ。ゆうか先生も捜すの手伝ってくれたのよー。お礼言いなさい!」
「ゆ・・・ゆっくちありが・ょ・・・ゆぅ。」
まりさはペットキャリーバッグの奥でコソコソと身を隠しながら、
人みしりの激しい人間のように、申し訳なさそうにお礼を言う。
そこに、かつての図に乗ったゆっくりの姿は無かった。
「出勤のたびに捨てないで、ひとりにしないでって泣き喚くのよ。うれしくもあるんだけど。
夜ひとりでおトイレにもいけなくてねぇ、お漏らしが直らないのよ~。」
「ゆぁぁ~ん!ゆっくちごめんにゃしゃいぃぃ!しゅてないでぇ!ゆっくちしちぇぇぇ!!」
しかも、ショックが利きすぎたのか、若干幼児退行してしまった。
まあ、これも可愛くはある。
「そういう意味では、どっかで作ってきたおちびちゃんの方が、ずーっといい子なんだけどねぇ。」
「その割には不満そうだけど?」
「お利口すぎるのよ・・・」
「ゆっくちちちぇにぇ!ゆっくち!ゆっくち!」
「あら可愛い。」
「好き嫌い言わないし、むやみにワガママ言ったり暴れたりしないし・・・野良ゆっくりに子育ての腕で負けたかと思うとねぇ。」
「ふーん。(あんたに子育てで負けるようじゃ、親はやっていけないと思うけど。)」
「それにしても、野良ってそんなに大変なのかしら?ゆうかのトコのまりさ達も、元野良だっけ?」
「そうなんだけど・・・まりさ達はどう?野良に戻りたいとか思ったことあ・・・」
優宇河先生が振り返ると元野良のまりさ姉妹は、顔色を赤、青、と目まぐるしく変化させ、
最終的に土色になった挙句、餡子の泡を吹き始めていた。
「もっちょ・・・ゆっぐぢ・・・・・・」
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ・・・」
「捨てないから!大丈夫だから帰ってきてぇぇぇ!!」
「ふーん。野良って大変なのねぇ。」
「ところで美鈴。」
「ん?なあに?」
「反省したって言ってた割に、そっちのまりさはどうなってんのよ。」
「えーと・・・」
「まりさはとってもえらいのらじぇ!!みんなまりさにひれふすがいいらじぇ!!」
ぽよん!ぽよん!!
「ゆぁぁ。ゆっくりしてないまりさだよぉ。」
「そ、そんなにひどくぶつかられたら・・・すっきりー!」
テーブルの上のグラスや花瓶、優宇河先生の飼いまりさ達に体当たりをしながら、
言いたい放題のらじぇまりさ。
めーりん先生の躾は、またしても失敗していた。
「ホント。どうすんのよ。」
「えーと・・・また、野良にしつけ直してもらうとか?」
「ホンキ?」
「うーん・・・」
※おまけ
ちなみにらじぇまりさは、この後学校のコンポストに居る元野良まりさにしつけ直してもらいました。
いうことを良く聞くいい子になりましたが、今では熱心なコンポスト様信者です。
「まりさはとってもわるいこでしたのじぇ!
これからは、おねえさんと、まりさおねーさんと、こんぽすとさまのおしえをまもって、きよくただしくいきていくのじぇ!
こんぽすとさまのおしえはすばらしいのじぇ!こんぽすとさまのおしえはぜったいなのじぇ!
ああ、こんぽすとさま!わがいのち、このあんこいってきにいたるまで・・・」
「どうしよ、ゆうか。ウチのまりさが変な呪文唱えるようになっちゃったんだけど・・・」
「ま、前よりはちゃんと言うこと聞くようになったんだし、いいんじゃない?」
「いや、そりゃそうだけど・・・ねぇ。」
餡小話掲載作品
ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり
ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言
ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿
ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態
ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生
ふたば系ゆっくりいじめ 628 ゆきのなか
ふたば系ゆっくりいじめ 662 野良ゆっくりがやってきた
ふたば系ゆっくりいじめ 678 飼われいむはおちびちゃんが欲しい
ふたば系ゆっくりいじめ 753 原点に戻ってみる
ふたば系ゆっくりいじめ 762 秋の実り
『町れいむ一家の四季』シリーズ 前日談
ふたば系ゆっくりいじめ 522 とてもゆっくりしたおうち
『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど)
春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ
春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね
春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ)
春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ)
春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ)
春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道
夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね
夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ)
夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 734 未成ゆん(おまけ)
夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ)
夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ)
夏-1-6. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ)
夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね
夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還
秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ
秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね
冬-1. ふたば系ゆっくりいじめ 490 ゆっくりしたハロウィンさん
『町れいむ一家の四季』シリーズ 後日談
ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光
ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭
ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ
ふたば系ゆっくりいじめ 409 町ゆっくりの食料事情
ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ)
本作品
とはいっても前作は読まなくても問題ないと思います
・本作で出てくるのうかりんは、全員媚薬を飲まされてローターを入れられています
そんなそぶりを見せずに働くのうかりんに萌えて下さい
『家出まりさの反省』
D.O
「はぁ・・・、困ったわ。」
人通りの多い町中で特大の溜息をついているのは、
湯栗町に校舎を構える学校、湯栗学園小等部の英語教師、美鈴先生だ。あだ名はめーりん先生。
彼女の溜息の原因は、小5の頃にはDカップを超えていた、この大きな胸が邪魔で邪魔で・・・
というわけではなく、右手に提げているペットキャリーバッグ、その中にいる、彼女の飼いゆっくりだ。
「ゆぅん!さっさとだして、あまあまよこすんだぜ!このくそばばぁ!!」
「あーあ。なんでこんなになっちゃったんだろ・・・。」
このまりさだが、無論元からこんな態度だったではなかった。
ゆっくりには定評のある虹浦町でも最大手のゆっくりショップで買ってきた、正真正銘の銀バッジ赤まりさだったのである。
元気過ぎる点はあったものの、人懐っこく素直で可愛かったまりさ。それがなぜ?
彼女とまりさの出会いは今から2か月ほど前にさかのぼる。
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「あぁ~・・・うらやましいわぁ。」
ここは湯栗学園の敷地内にある合宿所・・・のはずが、なぜか職員寮になってしまった建物。
めーりん先生は、その窓のカーテンの隙間から、中にいる人影を熱心にのぞきこんでいた。
視線の先の人物は、学校管理を任される公務ゆっくり、ゆうかりんとふらんちゃん以外で、
唯一この職員寮に住んでいる家庭科教師・優宇河先生だ。
教師内では最年少に近い二人、年の差も一年、バストサイズではめーりん先生がやや優勢。
密かに学園内の人気を二分しているライバル、とめーりん先生が一方的に思い込んでいる相手だったりする。
ちなみに生徒からはそれぞれ『めーりんちゃん』、『優宇河先生』と呼ばれている。
『優宇河先生、さようなら!』
『めーりん、じゃーなー!』
などとあいさつされるたび、めーりん先生は自分の方が生徒と仲良くなれていると思っていたようだが、
両者のキャラクターやら受ける尊敬の度合やらの違いは、これだけでもわかってもらえると思う。
脱線してしまったが、そんな彼女が今羨ましがっているのは、
優宇河先生がぺにぺにを指で弾いて遊んでいる、2匹のまりさについてであった。
「ああ、ゆっくりってあんなに可愛かったのね。
ゆうかりんやふらんちゃんが特別優秀だと思ってたけど、あのまりさ達なんて、拾ってきたって言ってたわ。
生徒たちより言うことよく聞くし、素直でいい子なのよねぇ。ああー、私も欲しわぁ。」
と、いうわけで、その日の夕方ゆっくりショップに駆け込んだめーりん先生は、
くりくりとした瞳のとてもきれいな赤まりさを、給料の1割をはたいて購入したのであった。
「おにぇーしゃんがまりしゃのかいぬししゃんなのじぇ!?ゆっくりおねがいしましゅのじぇ!」
「きゃー!やっぱりかわいいわー!よろしくね、まりさ。」
「・・・ぇすので、銀バッジと言っても、大きくなるまではきちんと躾を・・・あの、聞いてます?」
めーりん先生は、思い違いをしていた。
ゆうかりんやふらんちゃんは特別優秀な上に厳しい訓練と選別を受けてきた、一流の公務ゆっくりなわけだが、
まりさ達にしても生粋の野良としての経験と、その厳しい世界で代々生き延びた賢明さを併せ持った、これまた特別製であったのだ。
加えて言うと、優宇河先生との指導者としての個性の違いにも気づいていなかった。
そして現在。
めーりん先生がすっかり成長したまりさを連れてきたのは、まりさを購入したゆっくりショップである。
「くそばばぁ!とっととだすのぜ!いたいおもいしないとわからないのぜ!?」
「という感じで・・・。」
「いやー、またずいぶんと調子に乗らせましたね。ウチで販売した中じゃ、ちょっと珍しいくらいですよ。」
まりさのお帽子にかつてつけられていた銀バッジはもうない。
銀バッジ登録の更新試験に落ちてしまったためだ。
バッジのあった場所にはうっすらと傷がある以外、なにも存在しない。
「・・・それで、お値段なんですけど。」
「えー、この状態から銀バッジの再調教となりますと、2週間で15万3千円になります。」
「うぇっ!嘘ぉ!」
「赤ゆっくりをゼロから調教するなら、大した手間ではないんですが、もう成体ですしねぇ。
一度人間をなめてしまうと、よほどのトラウマを植え付けないと元の関係は築けないんですよ。」
「いや、だからってこの金額は・・・。」
「それに、調教師だって再調教を専門とする者は少なくて。
相当高度な虐た・・・調教技術がないと心身に、目に見えるような傷を残すこともありますし。
調教を受けるゆっくりの可愛さと命を保証するための、必要な経費だと思ってください。」
「うーーーーん・・・。ちょっと考えます。」
「・・・弱った。いくらなんでも教員がポンと出せる金額じゃないわ。」
「すぴぃー、すぴぴぃー!ゆっくりさせろぉ・・・」
「寝言もゆっくりしてないわね。」
金の問題はもちろんあるが、だからと言ってこのまま放置するわけにもいかなかった。
実は昨日も、食事の用意を少し遅れただけで、授業計画やら教科書解説書やらをうんうんまみれにされたのだ。
その前は携帯電話を浴槽に放り込まれ、、さらに前は優宇河先生の生着替え写真に歯形をつけられた。
「らじぇ・・・らじぇ・・・」
「ん・・・ああ、ウチのまりさにもこんな時期があったわねぇ。・・・らじぇまりさ、5万・・・?」
ゆっくりショップのショーウィンドウには、気の優しそうな赤ゆっくり、しかも帽子に輝くのはキラキラの金バッジだ。
今のまりさより値段は張るが、再調教代ほどではなく、ましてこれから起こるであろう悪行による損害額も考えるとややお得。
そもそもめーりん先生は、ゆっくりに対して癒しを求めていたので、
ゲスまりさからの被害はこれ以上ごめんこうむるところだった。
めーりん先生の頭にはこの時、いくつかの選択肢が浮かんだ。
1.躾失敗の責任は果たすべき。まりさ再調教に15万払う。
2.ゲス化したまりさはこの際諦める。ゲスまりさは保健所行きにして、らじぇまりさ購入。
3.もうゆっくりは飼わない。ゲスまりさはおいしく料理の素材にする。
4.いっそ胴付きとかの賢い希少種を購入してみる
・・・・・・。
めーりん先生は、結局どれも選べず、一番やっかいな道を選んでしまった。
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めーりんお姉さんの選んだ道、それは、まりさは飼いつつ、らじぇまりさも購入、という物であった。
とりあえず、ゲス化したまりさの方は自分でしっかり教育しなおすとして、
自分の癒しのために、らじぇまりさを購入。
らじぇまりさの素直な行動を見本にしてもらって、まりさにも反省してもらおうと言う計画でもあった。
そんなもの、上手く行きっこないのだが・・・
これに面白くないのはまりさである。
「らじぇ!らじぇ!」
「ほーら、いい子ねー!あまあまあげるからね!」
「らじぇ!!」
「(ゆぎぃぃぃぃ・・・あまあまはぜんぶまりさのなのにぃぃいぃ!!)」
「はーい!ボールさん投げるから、取ってくるのよー!『ぽーい!』」
「らじぇ!らじぇ!」
お姉さんが放り投げたピンポン玉を、ぽにょぽにょと跳ねて追いかけるらじぇまりさ。
その前に、まりさが立ちはだかる。
「ゆぎぃぃいいい!!このぼーるさんは、まりさのおもちゃなのぜぇぇええ!!」
「らじぇぇぇ!?」
「こらっ!まりさ!オモチャを独り占めしちゃだめでしょ!!」
「なんでそんなこというのぜぇぇえええ!?」
夜寝る時も、これまではまりさの定位置だった、めーりんお姉さんの胸元にはらじぇまりさがいる。
「そこはまりさのすーやすーやぷれいすなのぜ!!さっさとどくのぜぇぇ!!」
「らじぇぇぇ!?らじぇ・・・」
「こらっ!!まりさはお姉さんなんだから、自分のベッドで寝なさい!」
「ゆぎぃぃぃぃいいいい!!」
これまで、自分の言う事を聞く奴隷だったお姉さんが、今では新入りの赤まりさの奴隷になってしまった。
しかも、自分だけのあまあまも、自分だけのおもちゃも、自分だけのゆっくりプレイスも、全部侵略されていく。
まりさの中に蓄積されていく不満、不安。
そしてある日、そんな生活はついに破局を迎えたのであった。
パリンッ!!
「ゆぴぃぃぃぃいいい!!」
「ゆゆっ!?なんなのぜ!?」
らじぇまりさが子ゆっくりサイズにまで成長した頃、その事件は起こった。
らじぇまりさが、花瓶を倒して割ってしまい、その破片であんよを切ってしまったのである。
らじぇまりさも赤ゆっくりの頃はさほど行動的でもなかったが、子ゆっくりまで育った事で、
家の中全体を歩き回れるほどの体力もつき、好奇心もそれに合わせて大きくなっていっていた。
ゆっくりの飼い主が一番怪我に気をつけなければいけない時期である。
行動範囲が広がったことではしゃぎまわる子ゆっくりは、家の中の家具でも物でも、何でもいじりまわす。
その危険性を一つ一つ教えてやり、危ない目に合わないように教育することは、飼い主の重要な仕事の一つなのだ。
「らじぇぇぇぇ・・・いぢゃいのじぇぇぇ・・・」
「ゆわぁぁ。いたそうなのぜぇ。ぺーろぺーろ。」
日頃の恨みはともかく置いておき、傷をなめてやるまりさ。
そこに、騒ぎを聞いためーりんお姉さんが駆けつけてきた。
「うわっ!まりさ、何やってるの!」
「ゆゆっ!?このちびが、かびんさんをわったのぜ!けがしてるのぜ!」
割れた花瓶、あんよを切ったらじぇまりさ、側にいるまりさ・・・
残念ながら、めーりんお姉さんの出した結論は、まりさにとって最悪の物であった。
「嘘ついちゃだめでしょ!!まりさはおねえさんなのに、おちびちゃんのせいにするの!?」
「・・・ゆぎぃぃいいいい!!なんでしんじないのぜぇぇえええ!!」
自業自得ではあるが、少々酷な仕打ちではあった。
そしてこのめーりんお姉さんの態度は、不満をため込んでいたまりさに対して、最後のひと押しとなってしまったのであった。
「ゆぎぃぃぃいいい!!!もうがまんできないのぜぇぇええ!!」
「まりさ!?」
「どれいのばばぁがどんなにあやまっても、もうゆるさないのぜぇええ!!もうにどとかおもみたくないのぜぇぇええ!!」
「ちょっ・・・まりさ!!」
まりさはそう叫ぶと、たまたま半開きにしてあった、庭に面した窓から外に飛び出していった。
ちなみに、不用意に窓を開け放しておかないのは、ゆっくりのみならずペットの飼い主の基本的な注意点である。
「まりさ、待って・・・!!」
めーりんお姉さんも庭に飛び出したが、
まりさはすでに、庭の生け垣の隙間から外に飛び出しており、姿を完全に消していた。
周囲を見渡しても、まりさの気配はすでにない。
「・・・どうしよ・・・」
こうして、まりさはめーりんお姉さんを見放し、自分は自由な外の世界へと羽ばたいていくことにしたのであった。
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まりさは、おうちを飛び出すと、好奇心の赴くままに町中を練り歩いた。
これまでペットキャリーバッグの中から見ていた景色。
それが今では自分のあんよの届く場所にあるのだ。
それにしても、と思う。
「ゆふーん。まりさがいちばんゆっくりしてるのぜ!どいつもこいつもゆっくりしてないのぜ!」
町中は、ゆっくりで溢れていた。
電柱の影に、裏通りに、ビルの隙間に、どこを向いても、どこの行っても視界にゆっくりが存在しないことは無い。
だが、その一匹として、まりさのゆっくりっぷりにかなうものはいなかった。
薄汚れたリボン、虫や草のクズがついたお帽子、あんよは黒ずみ肌は黒ずみ汚れている。
生まれたての赤ゆっくりですら、まりさの清潔さにはかなわないであろう。
まりさは、それが飼い主の保護と努力によるものであることを気付いてはいない。
町中を歩いているうちに、小さな広場にたどり着く。
そこにもまた、ゆっくり出来ていない野良ありすの一団がいた。
「みゅほぉぉ!!みゅほぉぉぉ!!」
「おちびちゃん!それじゃあとかいはになれないわよ!!」
「ゆぅん。むぢゅかしいわぁ。」
「よくみててね!・・・むほぉぉぉぉおおおお!!!」
「しゅ、しゅごいわ・・・おにぇーしゃん、とってもとかいはにぇ・・・」
「(なにやってるのぜ・・・きもちわるいのぜ。)」
一方、都会派教育中のありす達もまりさに気がつく。
「ゆぅ、あのまりしゃ、とってもとかいはにぇ!しゅっきりしちゃいわ!!」
「・・・だめよ。あのまりさはゆっくりできないわ。」
「ゆぅぅ?どうしちぇ?」
「あのまりさ、きれいすぎるわ・・・きっと『すてられゆっくり』よ!」
「ゆぅぅぅ?」
「うふふ。おちびちゃんにも、そのうちわかるわ。でも、これだけはおぼえておいてね。
『すてられゆっくり』は、とってもゆっくりできないのよ。」
「わきゃらにゃいわぁ・・・」
その会話は、まりさの耳(?)にも届いている。
「ゆっくりしてない『のら』が、なにいってるのぜ!へんなこといってたら、ゆっくりできなくしてやるのぜ!!」
「ゆぁぁあああん!ゆっくちできにゃいわぁぁ!!」
「おちびちゃん、もういきましょう。ゆっくりできなくなるわよ。」
都会派ありすは赤ありすを連れて広場を去りながらも、まりさの方をチラリ、と一瞥した。
都会派ありすだけではなく、野良の成体ゆっくりは皆知っている。
飼いゆっくりは、野良とは比較にならないほど清潔な肌と飾りを持っていることを。
だが、飼い主を連れずに町を歩いている、飾りにバッジをつけていないゆっくりは、『捨てられゆっくり』であることを。
『捨てられゆっくり』は、初めのうちは美ゆっくりだが、無能で、ゲスで、人間さんにもゆっくりにも迷惑ばかりかける。
下手に近づくと、自分達だってロクな目に合わない。
だから野良ゆっくりは、『捨てられゆっくり』からなるべく距離を取り、無視するようになったということを。
まりさはそんなことなど、うかがい知るはずもない。
先ほどまでありす達がぺにぺにをしごいていた土管の上で日向ぼっこをしながら、
新しい奴隷になる人間を探さなければ、などとぼんやり考えていた。
まりさは、運がよいゆっくりだったのであろう。
本来はまずあり得ないほどの希少なチャンスが、この、昼寝中のまりさの元に転がり込んできたのであった。
「お、野良にしちゃ、キレイなゆっくりだな。」
「ゆぅん!とってもゆっくりしてるね!!」
「すーや、すーや・・・ゆゆっ!?なんなのぜ!」
突然日陰になったのを不審に思って目を開けると、まりさの前には一匹のれいむを連れた、
眠そうな顔をした人間さんが立っていた。
「お前、野良?」
「ゆゆっ!?まりさをそこらののらといっしょにすんななのぜ!!」
「ふーん?まあ、どうでもいいか。バッジ無えし。」
「なにいってるのぜ?」
「いやな、ウチのれいむが一匹じゃ寂しいってな。お前、このれいむと結婚するなら飼ってやるけど。どうだ。」
「れいむも・・・かっこいいまりさと、ずっとゆっくりしたいよぉ。」
「・・・・・・。(ゆぅぅ、まぬけそうなにんげんさんなのぜ。このれいむもばかそうなのぜ。ちょうどよかったのぜ。)」
「・・・ダメならいいや。じゃあな。」
「ま、まつのぜ!ゆふん!そんなにまりさをかいたかったら、かわせてやってもいいのぜ。」
「ゆっくりー!まりさ、ずっとゆっくりしようね!」
「ゆん!なかなかゆっくりしたれいむだから、とくべつにすっきりしてやってもいいのぜ。」
「・・・なんでもいいや。んじゃ、俺の家に行くぞ。」
こうしてまりさは、野良生活に堕ちない最後のチャンスを手に入れたのであった。
「ゆぅぅ~!とってもはやくてきもちいいのぜ~。」
自転車に乗せられて、人間さんの家までの快適な旅を終えたまりさは、
広大な畑の端にある林に囲まれた、古風な木造家屋の庭に案内された。
庭はゆっくりにとってはなかなか広く、草は短く刈り込まれ、庭の柵の向こうには林も広がっている。
まりさも先祖をたどれば、森や山の中で生活していたゆっくりである。
自然に近い環境に囲まれ、何やら胸躍る物を感じていた。
「ゆふぅぅうん!とってもゆっくりしてるのぜ~!きにいったのぜ!」
「そうか。なら良かった。んじゃ、れいむと仲良くやってくれ。」
なんだかんだ言っても、新生活に不安のあったまりさであったが、
あまりにもすんなり事が運んだので、増長するのも早かった。
「ゆぅ~ん、まりさ。すーり、すーり。」
「ゆへぇぇ!いいからとっととまむまむをむけるのぜぇ!『ぼよぉぉおん!』」
「『ごろんっ』ゆぅ!?もっとゆっくりしてぇ!」
「しったこっちゃないのぜ!まりさのぺにぺにをおみまいしてやるのぜぇ!!」
ずぼぉっ!ずっぽずっぽずっぽずっぽ・・・
「ゆぁーん、いだいぃぃぃい!らんぼうすぎるよぉ。もっと、ゆっぐりぃ!」
「ゆっふっ!ゆっゆっゆっゆっゆっゆっすっきりぃぃぃいいい!」
「ずっぎりぃぃ。」
まりさにとっても初体験である。
れいむは野良程薄汚れていなかったこともあり、まりさから見てもそこそこ美ゆっくりだった。
かねてから興味のあった『すっきりー』の味は、なかなか満足できた。
ともあれ、これで初すっきりーも終え、まりさとれいむは立派なつがい(笑)。
まりさも晴れて飼いゆっくりに復帰である。
「ひどいよまりさ・・・」
「ゆふぅ。ひとしごとおわっておなかがすいたのぜ。にんげんさん、とっととごはんをもってくるんだぜ!」
まりさは、奴隷である人間さんに、当然の権利としてご飯を要求する。
だが、人間さんの態度は、まりさの望むものではなかった。
「その辺のを適当に食え。」
「ゆゆ!?なにいってるのぜ。ゆっくりふーどさんなんて、どこにもないのぜ。」
「草があるだろ。」
「な・・・なにいってるのぜぇぇ!くささんはごはんじゃないのぜ!
ふーどさんがないならけーきさんでもいいのぜ!はやくもってくるのぜ、くそじじぃ!」
「ゆぅ。なにいってるの?おにーさんにあやまってね。くささんはおいしいよ。むーしゃむーしゃ。」
伴侶のれいむは、当然と言うようにそこらの雑草をむしゃむしゃ食っている。
「ゆぎぃぃぃいい!もういいのぜ!はやくおうちにいれるのぜ!べっどですーやすーやするのぜ!」
「そこに家ならあるだろ。」
「な・・・なにいってるのぜぇ!これはごみばこさんなのぜ!くさくてきたないのぜ!」
「ひ、ひどいよまりさ!おにーさんがれいむにくれた、ゆっくりできるおうちだよ!
それに、れいむがいっしょうけんめいおそうじしたんだよ!ゆっくりあやまってね!」
伴侶のれいむは何の違和感も持たずに、
まりさが以前住んでいためーりんお姉さんのおうちでは生ゴミ用のポリバケツとして使われていた、
文字通りのポリバケツの中にモソモソと潜り込む。
まりさの態度に、人間さんの表情も曇る。
人間さんにとってゆっくりと言えば、文句を言わずに生ゴミを食べ、
花壇用の肥料としてうんうんを生産するコンポストなのだから、それも当然だろう。
この時点ですでにまりさは、人間さんにとって有益な『コンポスト』から、必要のない『モノ』になり下がっていた。
「・・・いいよ別に。文句があるなら勝手に出ていけば。」
「ゆふん!まったく、ばかなじじぃとゆっくりしてないごみれいむのほうが、このおうちからでていくのぜ!
ゆっくりしたまりささまが、とくべつにこのおうちをつかってやるのぜ!」
だが、まりさは、その人間さんの空気の変化に気付かない。
当然と言わんばかりに人間のおうち明け渡しを要求する。
以前の飼い主であるお姉さんの時は、カッとなって自分からおうちを出ていってしまったが、
考えてみれば、まりさがおうちから出ていくというのはおかしいのだ。
「ふーん・・・。れいむ、どうやら一緒に暮らすのは無理そうだが。」
「ゆぅぅぅぅ・・・ゆっくりできないまりさだよぉ。」
「おぼうしかえしてね!まりさのおぼうし・・・ゆぁぁああ!!おぼうしなげないでぇぇぇえ!!」
「子供は大事に使ってやる。二度と帰ってくんなよ。じゃあな。」
ぽーい・・・
「おぼうしさん、ゆっぐりおりでぎでぇぇぇぇ・・・・・・」
まりさがおうち強奪宣言をして2分後、人間さんはまりさのお帽子を取り上げ、フリスビーの要領で畑に放り投げた。
そして、まりさがお帽子にたどり着いた頃には、人間さんのおうちの玄関は固く閉ざされていたのであった。
それは、まりさが、今度こそ本当の意味で『捨てられゆっくり』になった瞬間であった。
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だが、まりさは人間さんのおうちの玄関が閉ざされたことを確認する機会はなかった。
なぜなら、まりさがお帽子に追いついた、作物も収穫済みの畑のど真ん中で、
ちょうど森から下りて来たのであろうゲスゆっくりの集団に鉢合わせしていたからである。
「いいからだしてるわぁ。」
「おぼうしもぴかぴかだよー。」
「ちょうどたまってたみょん。」
集団は、ゲスありす、ゲスちぇん、ゲスみょん。
その視線は、いずれもまりさを品定めするように、お飾りからあんよまで舐め回すように動いている。
「な、なんなのぜ!まりささまにたてつくきなのぜ?」
だが、まりさの虚勢など何の意味も持たなかった。
「ゆっぎ『わかるよー』はなすのぜぇ!はな『うごいたら、いたいいたいだみょん。』ゆっぎゅぅぅ・・・。」
背後からありすとちぇんに抑えつけられ、みょんには鼻先(?)に棒を突き付けられた。
これまで甘い世界で言うことをなんでも聞く人間さんに守られていたまりさの抵抗など、
有能無能問わず、野生に生きるゆっくりにとって何の意味も持たなかった。
そして、
「むほぉ。きれいなまむまむねぇ。ありすがとかいはのあいをあげるわぁ!」
「ゆっへっへぇ、わかるよー。ちぇんたちにものこしてねー。」
「たっぷりかわいがってやるみょーん。」
「やべでぇぇぇええ『ずぷっ!』ゆぴぃぃぃいいいい!!」
「むほぉぉぉぉおおお!!とってもとかいはな、まむまむねぇぇえええ!!ずっぎりいいい!!」
「ゆひぃぃぃ!ずっぎりぃぃぃぃ・・・」
「とってもとかいはなすっきりーだったわ!まりさったらとってもいんらんね!」
「まりさのばーじんがぁぁ・・・ゆぁぁ・・・」
こうしてまりさの、まむまむによる初すっきりーは、まりさ自身がれいむに対して行ったのと同様、
ムードとは無縁の物となった。
そして、望まぬすっきりーにより、にんっしんしたまりさは瞬く間にボテ腹になる。
「ゆぅぅ・・・まりさのおちびちゃん・・・」
だが、れいぱーによるれいぽぅが、この程度で終わるはずもない。
「むほぉぉおお!!2かいめよぉぉぉおお!!」
「や、やべでぇぇぇええ!!おぢびぢゃん、ゆっぐりぢぢゃうぅぅぅううう!!」
どすっ!!
「むほびゅぅっ!!」
そのとき、ありすの側頭部に突然衝撃が走った。
衝撃により吹き飛ばされたありすは、まりさのまむまむにぺにぺにを残して、
2メートルほど先まで転がり、失われたぺにぺにの付け根を眺めて茫然としている。
そこには一人のお兄さんがいた。
人間から見れば、とてもお兄さんとは言えない。
おそらく50代ではあろう、頭髪がすっかりはげ上がり、
無精ひげがうっすらと伸びる顔には深いしわが刻まれている。
服装もスーツがすっかりくたびれて、猫背気味の姿勢と合わせて疲れたような印象を受ける。
お兄さんは、丸見えになったありすのあんよに容赦なくつま先蹴りを浴びせる。
ドスッドスッドスッドスッドスッドスッ!
「ゆぴぇ!び!ぴゅ!ぶ!びゅ!びっ!」
しゃべらせる暇も与えず、しかも殺してしまわないように蹴り続ける。
3分ほどひたすら蹴る音と、ありすの『げびゅっ!』という叫び声だけが響き続けた。
お兄さんの足が止まった頃には、微かにうめき震えるボロ饅頭となったありす。
レイプを邪魔されたと思ったらこの有様で、何が起きているのか理解できずに、残る2匹のゲスはそれを茫然と見ていた。
そして、それは明らかな失敗であった・・・
お兄さんはありすの処置を終えて2匹の方を振り向くと、
「ゆ・・・ゆっくりしていってねー・・・」
「ゆっくりしてみょーん・・・」
表情一つ変えることなく、
残り2匹にもありすと同じ仕打ちを与えたのであった。
「びゅ・・・ぴぅ・・・・・・」
10分後、あんよをぐしゃぐしゃに蹴り潰された3匹のゲスが、まりさの目の前に転がされていた。
お兄さんは、虫の息の饅頭達から飾りを取ると、両手でぐしゃぐしゃと丸め、靴にこびりついた餡子をふき取り、
ゲスありすの元ぺにぺにの傷跡にねじ込んで、まりさの方を振り返った。
「あ・・・ありがとうなのぜ、おにいさん・・・。」
お兄さんと呼ばれたオッサンは、表情一つ浮かべずまりさを眺めていたが、
やがてまりさを両手で抱えると、一言も発することなく自分の家へと帰って行ったのであった。
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「ゆぅ~・・・こわかったのぜぇ・・・。」
お兄さんのおうちの地下は、広さ8畳ほど、打ちっぱなしコンクリートの壁と床で、天井には照明1つ、
机が一台あるだけの、簡素な部屋であった。
「でも、やっぱりまりさはえらばれたゆっくりなのぜ!」
お兄さんは、まりさが手も足も(?)出なかったゲス達をボロ饅頭に変えてしまった恐ろしい人間さんだったが、
まりさを助けてくれたということは、どうやらまりさの奴隷希望ということらしい。
「ゆっくりできないすっきりーだったけど・・・おちびちゃん・・・」
すっかり大きくなってしまった自分のお腹を眺めるまりさ。
まりさは父親になることが望みであったので、2重の意味でショックだったが、
そうは言っても、にんっしんした以上、おちびちゃんに罪は無い。
まりさは自分が腹を痛めて産む以上、おちびちゃんをゆっくりと育てる決心をしていた。
このあたり、まりさは飼いゆっくりとして品種改良された、良餡のゆっくりではあった。
「ゆぁぁぁ、おぢびぢゃん、うばれるぅぅぅうううう!!」
それから2時間後。
早くもまりさは産気づいた。
通常であれば、にんっしん期間の短い植物型出産でも数日はかかるのだが、
れいぽぅされた場合極端ににんっしん期間が短くなるという性質がゆっくりにはある。
望まぬすっきりーによって異物と判断された精子餡を、一刻も早く体外に出そうとする防衛機能によるものと言われているが、
実際のところはよくわかっていない。
「ゆっぎっぎっぎっぎぃぃぃぃいいい!!ゆっぐぢうまれでねぇぇえええ!!ゆっ!」
しゅぽーん!べしょっ!!
「ゆ、ゆ、ゆぅ、・・・ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」
「ゆぅぅぅううう!!ゆっぐぢぢでいっでねぇぇ!!」
こうして、胎生にんっしんにしては早すぎる出産ではあったが、
新しい命、一匹の赤まりさが誕生したのであった。
「ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!!ゆっくち!ゆっくち!」
「すーり、すーり!しあわせー!」
「しゅーりしゅーり!ちあわちぇー!」
ぎいっ・・・。
「「ゆゆっ?」」
そのときちょうどよく、お兄さんが部屋に入ってきた。
「おにーさん!まりさのおちびちゃんがうまれたのぜ!おいわいにあまあまをもってくるのぜ!たくさんでいいのぜ!」
「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」
だが、お兄さんの返事は無かった。
返事の代わりにまりさ親子に向けられたのは、お兄さんの両手。
その両手は、そっとまりさ親子のお帽子を掴むと、しゅぽんっと頭からお帽子を奪った。
「ゆ・・・くち?」
「ゆ!?やめるのぜ!まりさとおちびちゃんのおぼうし・・・」
返事は無い。
お兄さんは、机の上に赤まりさのお帽子を置くと、まりさの大きなお帽子を両手で持ち、
・・・びりっびりびり・・・
その黒く美しく輝くお帽子を、真っ二つに引き裂いた。
「ゆっ?ゆっ、ゆっ・・・ゆぁぁあああああ!!おぼうじがぁぁあああ!!」
・・・びりっ・・・
真っ二つに裂かれたお帽子は、さらに縦に引き裂かれ、4本になる。
「ゆぁぁあああ!!」
・・・びりっ・・・びりっ・・・
4本に裂かれたお帽子は、さらに縦に引き裂かれ、8本、16本の短冊になっていった。
「ゆっ・・・ぎ・・・」
「ゆぁーん、おきゃーしゃんのおぼうちー。」
まりさの目の前に置かれたのは、もはやお帽子であったかどうかもわからない、短冊状の黒い布。
ついさっきまでゆっくりしていた、まりさの黒く輝くお帽子は、永遠にその姿を失ったのであった。
「おぼうし・・・ゆっぐぢ・・・」
まりさは必死で組み立て、元の形にしようとするが、当然治るはずはない。
そして・・・
「ゆぁーん!まりしゃのおぼうち、ゆっくちさせちぇー!」
・・・びりびりびり・・・びりびり・・びり・・・・
赤まりさのお帽子も、まりさのお帽子と同じ運命をたどった。
「おぼうしさん、ゆっぐぢ・・・ゆっぐ・・」
「ぺーりょ、ぺーりょ・・・どうしちぇ・・・」
必死で組み立て直し、ぺーろぺーろしてくっつけようとがんばっても、
そんな方法で破れたお帽子が元に戻るはずもなく、はらりと崩れ、元の黒い紐になる。
お兄さんは、そんなまりさ達の姿を机に腰掛けてしばらく眺めていたが、
やがて腰を上げ、まりさ達の元に戻ってきた。
「じじぃ・・・ゆっぐぢ、おぼうじ・・・もどにもどぜぇ・・・」
「ゆぁーん、ゆっくちさせちぇー。」
その声を聞き入れたのか、お兄さんは、まずまりさのお帽子だった黒い紐をまとめて拾い上げる。
だが、その後とった行動は、まりさが奴隷に命令した通りのものではなかった。
・・・しゅるっ・・ぎゅっ!・・・しゅる・・・
「な、・・・なにしてるのぜ?」
まりさの目の前で、黒い紐の束は先端同士を結び付けられ、一本の細長い紐になっていった。
「そんなのいいから、さっさともとにもどすのぜぇぇええ!!」
ぽよん、ぽよん、とお兄さんの足に体当たりするが、全く反応は無い。
やがてまりさのお帽子が一本の長い紐に変わり、赤まりさのお帽子も、同じく一本の長い紐になった。
「ゆぅぅ・・どうしちぇ・・・」
「ゆがぁぁあああ!!もどにもどぜぇぇええ!!」
ぽよんっ!ぽよんっ!
そして、お兄さんの足に体当たりするまりさと、ひたすら泣き続ける赤まりさの目の前で、
まりさの帽子であった紐の先端に、ライターで火がつけられた。
「ゆびゃぁぁああああ!!ゆっぐぢぎえでね!ゆっぐぢぎえでぇぇええ!!」
とっさにあんよで火を踏み、もみ消すまりさ。
じゅっ!!
「ゆびぃっ!!」
火は消えたが、あんよの一部は焼け、饅頭皮の焦げるにおいが部屋に広がる。
そして、火が消えた次の瞬間には、帽子紐の反対側の先端に、ライターで火がつけられていた。
じゅぅ!「ゆぴぃっ!」じゅっ!「ゆぁぁっ!!」じゅぅ!「ゆぎぃぃ!!」
一方の先端の火を踏み消すたびに、反対側の先端に火がつけられる。
あんよはみるみる焼け焦げていき、歩行能力は失われていく。
そして、まりさがもはや這うことしか出来なくなった頃、まりさのお帽子を材料とした長い紐は、
床に一筋残された煤以外、跡かたもなく焼き尽くされたのであった。
「ゆ・・・あ・・・まり、さの・・・おぼうぢ・・・」
そして、赤まりさの帽子も当然、その運命を共にすることになる。
シュボゥ・・・
「ゆぴぃぃいい!!まりしゃのおぼうち『じゅっ』ゆぴぃぃぃ!!」
1つ違うことと言えば、赤まりさのあんよは余りにも薄すぎ、火を踏み消すこともできなかった事だけ。
「おきゃあしゃぁぁん!まりしゃのおぼうち!おぼうちぃぃー!」
「ゆ・・・ぎ・・・おぢびじゃ・・・」
まりさのあんよは、赤まりさの叫びに突き動かされながらも、わずかに這い進むことしかできなかった。
燃え上がる赤まりさのお帽子、かつてお帽子だった黒い紐までたどり着くことは、ついにできなかったのであった。
「ゆぁぁーん!まりしゃのおぼうちがぁぁ!!ゆぁぁーん!!」
「ど・・・ぢで・・・」
そして、最後までお兄さんからの返答は帰ってくることがなかった。
それから30分後、まりさ親子は、先ほどまりさがゲスゆっくり達に襲われた場所に持ってこられ、
その場に放置されたのであった。
「おきゃーしゃん・・・」
「・・・なに、・・おちびちゃん・・・」
「・・・どうしちぇ・・・」
「・・・・・・。」
まりさには、自分がなぜ奴隷である人間さんに、こんな酷い目にあわさせられるのか、未だに理解できなかった。
ただ一つ確かな事は、まりさ親子があの人間さんによって、
今なお周囲に放置されたままうめき続けるゲスゆっくり達と、平等に扱われたという事だけであった。
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あれから川沿いの木の根元で一夜明かしたまりさ親子。
お帽子を失った喪失感を埋めるため、まりさは牛丼容器、赤まりさは卵の殻をかぶっているが、
正直言って慰めにもならなかった。
この頃になるとまりさも、赤まりさの献身的なぺーろぺーろでどうにか歩ける程度に回復していた。
しかし、一息ついて見ると体に力が入らない。
まりさは、家出して以降一度も食事をとれていないことに気付いた。
「ゆぅぅ・・・おちびちゃん、まりさはごはんをとってくるのぜ・・・ここでまっとくのぜ。」
「ゆぅ、ゆっくちりきゃいしちゃよ。」
実のところ、赤まりさはとっくに飢えの限界を越えており、
夜の間は木の周囲に生えていたコケや雑草をむーしゃむーしゃして食いつないでいた。
まりさにとっては不本意であろうが、赤まりさの舌は親より遥かに野生向きに矯正されつつあったのだ。
一方、そんなことは知らないまりさは、なんとか(自分基準で)ゆっくりした食べ物を探しに、
再び畑の方へとやって来ていた。
昨日の一件で、人間さんに下手に頼ると危険であることを叩きこまれたまりさ。
そうなってくると、まりさが知っている食べ物で、この周囲に確実にあることが分かっているものは、
一つしかなかった。
畑のお野菜である。
畑と言っても、まりさがゲス達と出会ったあたりの畑は、現在収穫済みで野菜が見当たらない。
そんなわけで少し遠くまであんよを運んでいると、明らかにゆっくり達のものと思われる怒声が聞こえてきた。
お帽子が無い今、他のゆっくりに出会いたくないまりさは、草むらに身を隠しつつ近づいてみる。
視線の先には、体高3mを超えるドスまりさがいた。
その周囲には、100匹は越えるであろう成体ゆっくりと、さらに数倍の数の子・赤ゆっくりがいる。
そして、群れに対面しているのは、一匹の胴付きのうかりんであった。
「お野菜さんを独り占めするゆうかりんは、ドスがせいっさいするよ!!」
「せいっさいするよ!!」×500
「ゆぅぅ~困ったわ。ゆうかは、独り占めなんて・・・」
「独り占めしないって言うなら、お野菜さんをちょうだいね!全部でいいよ!!」
「ぜんぶでいいよ!!」×500
「しょうがないわ・・・ドス、みんなもゆうかについてきて。」
「ゆわーい!おやしゃいしゃん、むーちゃむーちゃできりゅにぇ!」
「わきゃるよー!」
「ゆっくち!ゆっくち!」
どうやら、ドスの群れの交渉は成功したようであった。
まりさも、本来ならばあの群れについていきたいところではあったが、
お帽子が無い以上群れに紛れ込むのは難しい。
しょうがないので、とりあえずお野菜を置いてある場所を探るのと、
もし何個かお野菜を落として行ってくれたらそれを拾って帰ろうということで、まりさも群れの後をそっとつけていった。
のうかりんに連れられて畑の中の道を進むドス一行。
一行はやがて、そこそこの広さがある貯水池に通りがかった。
「このあたりでいいわ。」
のうかりんが、ふと立ち止まる。
「ゆ?お野菜さんが無いよ?早くお野菜さんをちょうだいね!」
「ちょーだいね!!」×500
だが、ドスの質問に対する返答は無く、のうかりんは、サッと右手を上げた。
そして、その合図と同時に、ドスの帽子がふわりっと宙に浮かびあがった。
「ゆぁぁ~!ドスのおぼうし!戻ってね!降りてきてね!!」
宙をひらひらと舞うドスの巨大なお帽子。
それは、風のせいなどではなかった。
注意深く周囲を見れば、ドス一行のはるか後方に、釣竿を手に持ったのうかりんがいるのが分かるはずだ。
手品のタネは簡単なモノだ。
ドスのお帽子を釣り針でひっかけて、釣り上げてやったわけである。
ドスのお帽子は、そのままドスからつかず離れずでヒラヒラと舞い続け、貯水池の真ん中に立てられた杭にひっかけられた。
「よかったよ。ドスのお帽子帰って来てね。」
だが、ドスとて所詮は饅頭だ。
ちょっとした雨くらいなら耐えられても、長時間水につかれば当然ふやける。
池の真ん中まで来て、帽子を杭から外している間に、程よくドスのあんよはふやけきっていた。
「どぼじであるげないのぉぉぉおおお!!」
あんよがふやけきり、気付いた時には方向転換すら出来なくなっていたドス。
のうかりん達にとっては、全てがいつも通りの作業である。
「どうしてまわりに、さくさんがあるのぉぉぉおお!?」×500
いつの間にか数匹ののうかりんが音も無く駆けつけて、折りたたみ式の柵で群れのゆっくり達を囲い込んでいる。
子・赤ゆっくりは柵の間を通り抜けられるが、そのさらに周囲を目の細かい網で囲いこんで、逃げられないようにしている。
明らかに成体と子ゆっくり以下を振るい分けする意図があった。
「ゆぁぁあああ!!やめてね!ゆうかりん!ドスに変な事しないでね!!」
ドスも当然、そのまま貯水池の中で溶かし殺したりはしない。
水を汚染されると厄介だ。
のうかりんは魚屋が使う胴付き長靴をはいて、ドスパークを受けないよう、ドスの後方から近づく。
「ゆぎゃぁぁあああああ!!ゆうかりん!!何ずるのぉぉおおお!!?」
そしてそのまま、特大のケーキナイフを使っての、ドスの後頭部から解体作業が始まった。
「ゆぎゃぁぁぁあああああ!!!どずのあんごさん、どらないでぇぇぇえええ!!」
ドスは後頭部を切り開かれ、餡子を10cm角のブロックにされて取りだされていく。
その作業速度は、手慣れている事もあり、人間のゆっくり解体職人並みにスムーズだ。
切り出された餡子は、バケツリレーの要領で貯水池の外まで運ばれると、猫車につめかえられ、肥料置き場に運ばれていく。
「ゆ・・・びゅ・・・ぎ・・・・・・」
ドスは、それから10分と経たないうちに意識を失い、30分後にはこの世から姿を消した。
「おーい。のうかりん。お仕事の調子はどうだ?」
「L田さん。ドスの処理は終わりました。他も大と小で分別終わってます。」
「うんうん。相変わらず手際いいねー。そんじゃ、大は肥料ね。小はのうかりん達のおやつにしていいから。」
「ゆーん!」×15
「あ、それじゃ、一番働いてくれたのうかりんには先にご褒美ね。」
「ゆぁ・・・ふぁん・・・まだおひるれしゅよぉ・・・」
「たまには、みんなの前ってのも・・・いいだろう?」
「ゆはぁん・・・」
「ゆぴぃぃぃいいい!!ゆっくちたしゅけちぇ~!」
「はいはーい。ゆうか達が美味しく食べてあげるからね~!」
「ゆぁぁ~ん、ゆっくちさせちぇ~!」
「やめてね!おちびちゃんがいやがってるよ!」
「安心してね。おちびちゃん達の苦しむ姿は見ずに済むから。」
「やべ『ぐしゃっ!』びぇ・・・」
まりさは、目の前の光景に戦慄していた。
自分が弱い事など自覚していないまりさでも、さすがにドスとの力の差位は理解している。
そのドスが、目の前で為すすべなく解体されていった。
また、自分と同程度の体格の成体ゆっくり達が、のうかりんに手も足も(?)出ずに餡子ペーストに変えられていく。
そして、その地獄絵図を作っているのうかりん達を指揮しているのは・・・まりさが奴隷と思っていた人間さんであった。
しばしの間放心状態だったまりさは、無意識のうちに体を揺らしてしまった。
その、草むらを揺する音がした次の瞬間、人間さんに激しく愛撫されていたのうかりんの右手から、閃光が走った。
しゅっ!!
「ゆっ!?」
しゅこんっ!!
閃光は、そのまま30mほど離れた茂みに潜んでいたまりさのお下げをかすめた。
まりさがぎこちなく後ろを振り向くと、
まりさの後方には、引きちぎられたお下げを貫き地面に突き立った鎌があった。
「まだ野良が隠れてるわ!!」ピッピーー!!
笛の合図とともに、周囲の畑から各々農具を手にしたのうかりん達が包囲に走る。
その動きは、統率された軍隊そのものであった。
「ゆぁぁぁああああ!!!」
まりさは、それでも何とか逃げ切ることに成功した。
群れに同行せず、一匹だけだったのが良かったのであろう。
ただし、その逃亡劇は、土と汚物にまみれ、泥水をすすり、一晩中眠ることも許されない悲惨なものではあったが。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
めーりんお姉さんの家を離れて数日しか経っていないが、すでにまりさは満身創痍、当初の余裕は完全に失われていた。
まりさは、食事も取れず、体は泥だらけ、お帽子もお下げも失い、
同行しなかったおかげでなんとか被害を免れた赤まりさ以外は、無事な部分などかけらほども残されていなかった。
これも赤まりさが、賢く周囲の草や木の枝を集めて即席の隠れ家を作ったり、
自主的に雑草などを食べてくれていたからこそではあったが。
「ゆぅぅ・・・このままじゃ、ゆっくりできないのぜ・・・」
「おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇにぇ。いもむししゃんたべりゅ?」
「ゆぇぇ・・・おかーさんはえんりょするのぜ・・・。」
ともあれ、このままでは赤まりさはともかく、まりさはゆっくり出来なくなるのも時間の問題であった。
もはや、まりさに選択の余地は残されていなかった。
まりさの選ぶべき道は2つだけ、めーりんお姉さんのおうちに帰るか、最初に拾ってくれた人間さんのおうちに飼ってもらうか。
・・・まりさは、人間さんのところへ向かうことにした。
めーりんお姉さんのところへ帰りたくなかったわけではない。
ただ、自転車でここまで連れてこられてしまったため、道がはっきりとわかるのが、
拾ってくれた人間さんのおうちだけだったのである。
まりさは、赤まりさを再び木の根元に残して、人間さんのおうちへ向かった。
思えば人間さんのおうちでは、わずか2日前にれいむにもにんっしんさせている。
もしもそれ以上おちびちゃんがいらないと言われたら・・・おちびちゃんには悪いが、
まりさはこれ以上野良生活には耐えられないと思っていた。
あのおちびちゃんなら、きっとひとりでも野生の世界で強く生きていける、そんな都合のいい事を考えていた。
要するに、最悪の場合は赤まりさを捨て、自分だけで飼ってもらおうと考えていたのである。
ガラガラガラッ!
人間さんが玄関から出てきた。
「お、おにいさん・・・」
「・・・・・・。」
だが、人間さんは、目の前にいるまりさを完全に無視した。
「お、お、おにいさん!まりさだよぉ。ゆっぐぢぢでねぇ。すーりすー・・・」
まりさが足にすり寄っても、その足をそっとどかすばかり。
一切反応は帰ってこなかった。
「やっばりがっでぐだざぃぃ・・・おねがいじばずぅ。」
通り道のど真ん中で土下座すると、人間さんは右足のインサイドをまりさの左頬につけ、
サッカーボールを扱うように、そっと横にずらした。
邪魔な『モノ』をどかすと、人間さんは何事もなかったように、すたすたと歩いていく。
「どぼぢでぇぇぇええ!!」
まだ諦めないまりさが、もう一度人間さんの前に立ちふさがろうとしたとき、人間さんと目があった。
その目には、怒り、憎悪、嫌悪など存在せず、それどころか、邪魔だとか、面倒くさいというような表情も浮かんでいなかった。
ただ、自分にとって無価値な、たとえば道の真ん中に石ころが転がっている、そういうものを見る目であった。
「ゆ・・・ゆ。ゆぁ・・・ゆぅ。」
まりさは、その視線に昨日のお兄さんや、農家以上の恐怖を感じ、とっさに道の脇によけた。
結局人間さんは、まりさの方を一度も振り替えることなく、駅への道を歩いて行ったのであった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
人間さんに飼ってもらえなかった日、
まりさには、困難はわかっていても、もはや他に選択肢は無くなった。
まりさは・・・めーりんお姉さんのおうちに帰ることを決心したのであった。
「ついたのぜ・・・」
「おきゃーしゃん!ここに、おきゃーしゃんのほんとのおうちがありゅの?」
「そうなのぜ・・・でも、つかれたのぜ・・・」
「しょうだにぇ!ゆっくちきょうはやすもうにぇ!!ゆっくち!ゆっくち!」
「ゆぇぇ・・・なんでそんなにげんきなのぜぇ・・・」
川沿いの道を歩くこと数日後、まりさはお姉さんと暮らしていた町の境界線にあたる、川の河川敷にたどり着いていた。
まりさも見憶えのある景色に喜んだが、町中とはいえ道を熟知している訳でもなく、これからは町中を探索する日々が始まる。
とりあえず、まりさは河川敷に落ちていた、雨に濡れたのであろうへにゃへにゃのダンボールを見つけ、
これでおうちを作って、今後の行動拠点とすることにした。
だが、弱っている時には何をやっても上手くはいかないものである。
「むきゅぅん。そのはこさんは、ぱちぇたちがいただいていくわ!むきゅ。」
「ゆぅぅ・・・これは、まりさたちがさきにみつけたのぜ・・・」
「わからないよー。まりさがもってるのをちぇんたちがみつけたから、それはちぇんたちのなんだねー。」
ここで再びゲス野良に出会ってしまった。
ゲスぱちゅりーを筆頭に、ゲスれいむとゲスちぇん。
頭もガラも悪そうな連中だが、今のまりさでは当然敵いそうにない。
まりさが油断していたのも無理はなかった。
町に入ってからは、お帽子が無いことでゆっくり出来ない視線を受けてはいたものの、
激しいイジメや攻撃は受けなかったからだ。
町では飾りのないゆっくりなど珍しくないことが原因ではあったのだが、
このゲス達、町で数代を過ごした町ゆっくりではなく、森から都会を目指してやってきた駄ゆっくり達である。
このゲス達としても、当面の宿が無いため、必死であったとも言えるのだが。
「だいたい、おかざりもないゆっくりが、れいむたちのおうちをひとりじめするなんて、ゆっくりできないよ!」
ぼよんっ!
ゲスれいむの体当たりが、食糧不足でヘロヘロのまりさに直撃する。
「やべでぇぇぇえ!!」
「おきゃーしゃんをゆっくちしゃしぇちぇー!」
「むきゅーん。ぱちぇたちにたてつくと、おちびちゃんでもようしゃしないわよ?」
ぐしゃり!
「ゆぴぃぃぃぃ!やめちぇぇぇえええ!!」
「おぢびぢゃぁぁあああん!!」
こちらはすっかり野生に慣れて栄養状態は良い赤まりさであったが、成体との体力差はいかんともしがたかった。
あっさりと赤まりさを踏みつけると、どんどん圧力を強めるゲスぱちゅりー。
目玉が飛び出しかけ、口元からは餡子の混じった泡を吹き始める。
まりさもちぇんとれいむにまむまむとあにゃるを蹂躙され、身動きが取れない。
せっかく町までたどり着いたというのに、絶体絶命の状況に叩きおとされてしまった。
と、その時、赤まりさを押しつぶそうとしているぱちゅりーの後方から、抑制のきいた声が掛けられた。
「・・・チビ殺しはゆっくり出来ないみょん。」
そこには、まりさがこれまで見たこともない、これ以上ないと言うほどゆっくりしていないゆっくりが居た。
それは、お帽子の無いまりさ親子以上にゆっくりしていない風貌の、一匹のみょんであった。
顔面をすりおろしでもしたかのように、上下の唇が完全に削り取られ、前歯が丸見えになっている。
全身は細かい傷だらけだが、銀色の髪と黒いリボンだけは傷一つなく、気味が悪いほどに滑らかに手入れされていた。
額にはひらがなで『げす』と書かれており、まりさと同じく、人間の手による暴力を受けたのであろうことだけは見てとれる。
みょんは話を続ける。
「この町ではおうちもごはんも早いもの勝ちみょん。とっとと返して失せるみょん。」
みょんの話は嘘ではない。
元々資源の限られる町野良社会では、奪い合いを本気でやってしまうと結局誰もゆっくり出来なくなってしまう。
それを防ぐために、町野良の中では、狩り場(ゴミ捨て場)を独占したり、
誰かが一度手に入れた物を盗んだり、
あるいはおうちを強奪したりする事は御法度なのだ。
しかし、豊富な資源の中で奔放に育ったゲスに通じるような理屈ではない。
「むきゅぅぅ、ゆっくりできないみょんはしぬがいいわ!」
そう言うが早いか、先をとがらせた棒を口にくわえるゲス3匹。
だが、3匹がみょんに突進しようとした瞬間、
しゅこっ!!
閃光が走った。
次の瞬間、ゲス3匹は水平に、3枚づつにスライスされ、達磨落としのように崩れ落ちた。
まりさには、一瞬何かが光った以外、何も見えなかった。
ただ、みょんが舌を器用に使って、銀色に光る刃物らしき物を飲み込むのを見て、
アレでゲスをバラバラに切り裂いたのであろうことを察した。
みょんが、茫然としているまりさ親子に声を掛ける。
「おまえ、飼いゆっくりだったみょん?」
「ゆ、わかるのぜ?」
「ふぬけたかおだから、すぐにわかるみょん。」
「・・・ゆぅぅぅぅぅうう!?」
「どうせ、飼い主に逆らって捨てられたか、調子に乗って家出でもしたみょん。」
「ゆっぎっぎ・・・」
図星だ。まりさはなにも言い返せない。
「ふぅ。親がバカだと子供が苦労するみょん。」
その言葉は、妙に実感がこめられていた。
だが、赤まりさの声がその言葉をかき消す。
「おかーしゃんにひどいこといわにゃいでにぇ!!」
「ゆ!?おちびちゃん・・・」
「みょ~ん。・・・べろり!」
「ゆぴぃぃぃぃい!!きょわいぃぃぃいい!!」
「ゆわぁぁ!おちびちゃんになにするのぜぇ!?」
みょんの、通常のゆっくりの5割増しで長い舌で、顔面を舐められた瞬間、激しく泣き出し失禁する赤まりさ。
さっきまで怖い目にあってたかと思えば、今はそれ以上に恐ろしげなゆっくりに対面しているのだ。
緊張の限界だったのであろう。
「無理すんなみょん。」
「ゆぴぅ・・・ゆぅ・・・。」
赤まりさが泣きやむと、それを合図にしたかのように、小雨が降り始める。
バラバラにされたさっきの野良達も、空模様が不安だったからこそ、ダンボール一枚のためにあせっていたのだ。
「雨だみょん。どうせそんなダンボールじゃもたないみょん。ついてくるみょん。」
「ゆ、ゆぅ・・・。」
みょんに連れられてやってきたのは、川にかかっている橋の下だった。
「さあ、入るみょん。」
「ゆわぁ・・・しゅごーい!」
それは、橋の下でも特に死角になる、橋と道路の境界あたりに横穴を掘り、
さらにベニヤ板に草やツタを絡めた跳ね上げ扉をつけたおうちだった。
ぱっと見人間でも気付かないであろう。
「さっさと奥に来いみょん。雨さんが止むまではおいといてやるみょん。」
「ゆわ~。ゆっくちしちぇるにぇ~!」
室内を見てまりさ親子はさらに驚かされた。
人間さんの家には当然及ぶところもない。
しかし、そのおうちは、ゆっくりが自分で作ったものとしては信じられないほど見事なものであった。
入り口はやや狭く造られているが、奥は成体ゆっくり数匹がはいっても余裕があるほどの広い空間。
床には河原の丸い石を敷き詰め、その上に、天日で干したのであろう柔らかい草が敷かれている。
平たい石のテーブルや、木の皮や草を編んで作ったベッド、貯蔵食糧もバライティ豊かで、床に埋めた鍋には水もためられている。
彩のつもりか、光もはいらない室内にも関わらず、水をためた牛乳瓶には花が一輪飾ってある。
それは、まりさの野良ゆっくり観からはかけ離れた、非常に文化的な生活であった。
「それでも食っとけみょん。」
まりさが渡されたのは、まだ封を切って間もないメロンパン。
どうやって集めたのか、みょんのおうちの中には、人間でなければ手に入らないはずの食料も豊富にあった。
「そっちのチビには草を混ぜろみょん。そのまま食わすと舌がバカになるみょん。」
「ゆぅ・・ゆ。」
「むーちゃむーちゃ、ち、ち、ちあわちぇー!」
「むーしゃ、むーしゃ・・・しあわせ・・・ゆぅぅぅぅぅ。」
「おとなのクセに泣くなみょん。だから捨てられゆっくりはメンドくせーみょん。」
まりさは、泣き続けた。
このメロンパンは、まりさが家出をしてから数日間で、初めて食べたまともな食事だったのである。
しかもそれを与えてくれたのは、これまでまりさが見下し続け、汚いゴミ達程度にしか思っていなかった野良ゆっくり、
その中でもさらに飛びぬけてゆっくりしていない、この異形のみょんだったのだ。
それに、まりさがロクに食料も取ってこれない間でも、
まりさが苦くて食べられないような雑草を文句ひとつ言わずに食べて生きていたおちびちゃん。
おそらくもう一方の親の、ゲスありすの野生生活力だけを上手く引き継いでくれたのであろう。
まりさは、この中で、自分だけが誰かに頼らないと生きていけないゆっくりであることを悟らされたのであった。
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まりさは、自分の窮状について、過去の経緯と合わせてみょんに全てを打ち明けた。
みょんの方は、聞けば聞くほど面倒くさそうな表情になっていったが、
赤まりさの方に妙に懐かれてしまったため、しぶしぶ最低限の協力をしてくれることになった。
とはいっても、一緒にお姉さんのおうちを探してくれる、などという都合のいい話は無い。
それは、まりさがお姉さんのおうちを見つけるまでの間、足手まといになるであろう赤まりさを預かってくれる、
というだけの話であった。
「こっちもイチイチ、アホなゆっくりの面倒なんて見てられないみょん。」
「ゆぅぅ、だからって、ウチにわざわざ連れてこないでほしいよ。」
「そういうなみょん。親はともかく、子供をみすみす死なせるのは夢見が悪いみょん。」
「ゆぅ~。しょうがないよ。みょんの頼みじゃ断れないよ。」
「大助かりだみょん。」
みょんがまりさ親子を連れてきたのは、町野良ゆっくりの孤児院、通称『ほいくえん』だ。
名前は微妙に間違えているが、機能は間違いなく孤児院なので、特に問題は無い。
みょんは、親切は自分の柄じゃないと言って、『ほいくえん』の園長、保育まりさに口利きだけして、
さっさと去っていってしまった。
やはり、厄介事はゴメンだということなのであろう。
「そんなわけで、しょうがないからおちびちゃんだけは、ココで預かってあげるよ。まりさはさっさと飼い主さんを探して来てね!」
「ゆぅぅ、ゆっくりおねがいするのぜ・・・。」
「・・・と、言いたいところだけど、タダで引き受けるわけにはいかないよ。」
「ゆっ!?でも、まりさはなんにもあげられないのぜ・・・」
「ゆふん。大丈夫だよ。まりさにでもできることをしてもらうだけだよ。それで、おちびちゃんも面倒見てあげるよ。」
「ゆぅぅ~・・・。」
保育まりさのいうところでは、要するにほいくえんで預かっているおちびちゃん達の授業に、
親子で参加して欲しい、という事であった。
その内容までは、結局教えてもらえなかったが、どうせまりさに選択の余地はなかった。
「ゆほんっ!おちびちゃん達!今日は特別授業だよ!」
「ゆっくちりかいしゅるよ!!」×200
「このまりさを見てね!!どう思う!ちぇん!」
「わきゃらないよー。おぼうしがにゃいんだよー。」
「ゆぅぅぅ・・・」
「ありす!」
「とっちぇもよごれてて、おはだもがさがさにぇ!ときゃいはじゃにゃいわ!」
「ゆぁ、ぁ、・・・」
「そうだね!とってもゆっくりしてないね!それはね!このまりさが、捨てられゆっくりだからだよ!」
「しゅてられ?」「ゆっくち?」
「『捨てられゆっくり』だよ!自分じゃ何にも出来なくて、人間さんにごはんも、うんうんの片づけも、ぜーんぶやってもらって、
それでも感謝しないで威張ってばっかりで、人間さんに見捨てられた、とってもゆっくりしてないゆっくりなんだよ!」
「ゆぅ・ぎぃ・・・」
「おきゃーしゃん・・・ゆっくちしちぇにぇ。」
保育まりさの口元には、陰湿な笑みが浮かんでいた。
何のことは無い。
保育まりさは、赤ゆっくり達への教育、という名目の元、
元飼いゆっくりであるまりさを、しかも自分の子供の前で、思いきりいたぶってやりたかっただけだったのだ。
「恩知らずで、何にも出来ないクセにいい気になってるゆっくりは、こんなにゆっくり出来なくなるんだよ!
おちびちゃん達も、こんな風になりたくなかったら、がんばって立派なゆっくりに育ってね!」
「おきゃーしゃん・・・」
まりさはそんな保育まりさに対して、何一つ言い返す事が出来なかった。
そして、そんなまりさに対して、保育まりさすら予想していなかった、さらなる追い打ちが掛けられる。
それは、孤児ゆっくり達から発せられた。
「おにぇーしゃん。」
「ゆぅ、う、ゆぅ?なんなのぜ?」
「おにぇーしゃん、ゆっくちしちぇにぇ。」
「ゆ・・・ゆぅ。」
「おにぇーしゃんも、がんばっちぇ、ゆっくちしちぇにぇ!」
「おにぇーしゃんも、きっとときゃいはににゃれるわ!」
「むきゅ!おねーしゃんも、きっといつか、ゆっくちできりゅわ!」
「しょーだにぇ!ゆっくち!ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」
「わきゃるよー。ちぇんもおうえんしゅるよー。」
「みょんもおうえんしゅるみょーん!」
・・・・・・。
それは、かつてまりさが、汚らしく、みすぼらしいと見下していた野良ゆっくりの中でも、
特に不幸な者たちであろう、両親を亡くした孤児ゆっくり達からの励ましの言葉であった。
孤児ゆっくり達は、純粋な善意だけからその言葉を発したのであろう。
しかし・・・それは、まりさが野良まで含めた、町のあらゆるゆっくりの中で、
もっともみすぼらしく、無能で、ゆっくりしていないゆっくりであることをハッキリと指し示されたも同然だった。
「おきゃーしゃん・・・ゆっくちしちぇー。」
まりさは、赤まりさの声もどこか別の世界の音にしか聞こえなかった。
このとき、まりさを形作っていた中身の無い自信、希望、生きてきた喜び、そういった物は、
跡かたもなく崩れ去ったのであった。
そして、まりさはほいくえんに赤まりさを預けると、もはや探す意味を見失いつつあるお姉さんのおうちを目指して、
ゆっくりと探索の旅を再開したのであった。
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あれから数日後の深夜。
まりさは、飢えと疲れと失望の中、ゴミ捨て場で力尽きようとしていた。
夜間に積み上げられた生ごみの山の中で、薄れゆく意識の中、まりさは思う。
なぜ、自分はあんなに自信満々だったのか。
なぜ、自分は家出してしまったのか。
なぜ、自分はお姉さんにあんなに偉そうな態度をとっていたのか。
だが、まりさの中に、答えが浮かんでくることは無い。
当然だ。
まりさの持っていた自信に、そもそも中身や根拠など、かけらほどもなかったのだから。
赤まりさの事、そして、自分がれいむに宿した顔も知らない赤ゆっくり達の事も思い出す。
きっと、これでよかったのだ。
自分のような無能で、無意味な饅頭に育てられ、不幸な生涯を送るくらいなら、
あの頼りがいのある保育まりさやれいむに育てられる方がいいだろう。
それは、ある意味で正解だった。
事実、このときほいくえんでは赤まりさの出来の良さに保育まりさは驚いていたところだし、
れいむが生んだ赤ゆっくり達は、コンポスト、と呼ばれながらも何不自由ない生活を送っている。
そして、まりさは目を閉じ、結局自分が一番ゆっくりしていなかった事を気付き、
後悔しながら深い眠りへとついたのであった。
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「ということがあってね・・・」
「ホント、よく生きて戻ってきたものねー。」
ここは、虹浦町内にあるイタリアンレストラン。
仲良くランチを取りながら話に華を咲かせているのは、
湯栗学園の名物教師、美鈴先生と優宇河先生だ。
そのテーブルには、美鈴先生の飼いゆっくり3匹と、優宇河先生の飼いゆっくり2匹もいる。
「ええ。髪の毛の、お帽子に隠れる場所に目印代わりのアクセサリーつけてたからよかったわ。」
「ホント、ゴミ捨て場で見つかるなんて、一歩間違えれば収集されて一貫の終わりじゃない。」
「そのゴミ捨て場の電柱に、『迷子ゆっくり捜してます!』て張り紙してたのがよかったのよ。なんでもやってみるもんねー。」
まりさはつくづく運が良いゆっくりだった。
めーりん先生は、あの後簡単にあきらめず、捜索願いと張り紙、聞き込みまでして必死に探してくれていたのだ。
まさか、町からそうとうに離れた農村地域まで行っているとは思っていなかったが。
「ほら、まりさ。ゆうか先生も捜すの手伝ってくれたのよー。お礼言いなさい!」
「ゆ・・・ゆっくちありが・ょ・・・ゆぅ。」
まりさはペットキャリーバッグの奥でコソコソと身を隠しながら、
人みしりの激しい人間のように、申し訳なさそうにお礼を言う。
そこに、かつての図に乗ったゆっくりの姿は無かった。
「出勤のたびに捨てないで、ひとりにしないでって泣き喚くのよ。うれしくもあるんだけど。
夜ひとりでおトイレにもいけなくてねぇ、お漏らしが直らないのよ~。」
「ゆぁぁ~ん!ゆっくちごめんにゃしゃいぃぃ!しゅてないでぇ!ゆっくちしちぇぇぇ!!」
しかも、ショックが利きすぎたのか、若干幼児退行してしまった。
まあ、これも可愛くはある。
「そういう意味では、どっかで作ってきたおちびちゃんの方が、ずーっといい子なんだけどねぇ。」
「その割には不満そうだけど?」
「お利口すぎるのよ・・・」
「ゆっくちちちぇにぇ!ゆっくち!ゆっくち!」
「あら可愛い。」
「好き嫌い言わないし、むやみにワガママ言ったり暴れたりしないし・・・野良ゆっくりに子育ての腕で負けたかと思うとねぇ。」
「ふーん。(あんたに子育てで負けるようじゃ、親はやっていけないと思うけど。)」
「それにしても、野良ってそんなに大変なのかしら?ゆうかのトコのまりさ達も、元野良だっけ?」
「そうなんだけど・・・まりさ達はどう?野良に戻りたいとか思ったことあ・・・」
優宇河先生が振り返ると元野良のまりさ姉妹は、顔色を赤、青、と目まぐるしく変化させ、
最終的に土色になった挙句、餡子の泡を吹き始めていた。
「もっちょ・・・ゆっぐぢ・・・・・・」
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ・・・」
「捨てないから!大丈夫だから帰ってきてぇぇぇ!!」
「ふーん。野良って大変なのねぇ。」
「ところで美鈴。」
「ん?なあに?」
「反省したって言ってた割に、そっちのまりさはどうなってんのよ。」
「えーと・・・」
「まりさはとってもえらいのらじぇ!!みんなまりさにひれふすがいいらじぇ!!」
ぽよん!ぽよん!!
「ゆぁぁ。ゆっくりしてないまりさだよぉ。」
「そ、そんなにひどくぶつかられたら・・・すっきりー!」
テーブルの上のグラスや花瓶、優宇河先生の飼いまりさ達に体当たりをしながら、
言いたい放題のらじぇまりさ。
めーりん先生の躾は、またしても失敗していた。
「ホント。どうすんのよ。」
「えーと・・・また、野良にしつけ直してもらうとか?」
「ホンキ?」
「うーん・・・」
※おまけ
ちなみにらじぇまりさは、この後学校のコンポストに居る元野良まりさにしつけ直してもらいました。
いうことを良く聞くいい子になりましたが、今では熱心なコンポスト様信者です。
「まりさはとってもわるいこでしたのじぇ!
これからは、おねえさんと、まりさおねーさんと、こんぽすとさまのおしえをまもって、きよくただしくいきていくのじぇ!
こんぽすとさまのおしえはすばらしいのじぇ!こんぽすとさまのおしえはぜったいなのじぇ!
ああ、こんぽすとさま!わがいのち、このあんこいってきにいたるまで・・・」
「どうしよ、ゆうか。ウチのまりさが変な呪文唱えるようになっちゃったんだけど・・・」
「ま、前よりはちゃんと言うこと聞くようになったんだし、いいんじゃない?」
「いや、そりゃそうだけど・・・ねぇ。」
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