ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4203 てーと野良と長雨 前編
最終更新:
Bot(ページ名リンク)
-
view
『てーと野良と長雨 前編』 68KB
愛で 虐待 現代 独自設定 野良が雨に苦しむお話
愛で 虐待 現代 独自設定 野良が雨に苦しむお話
※ご注意を
- 前作『anko4095 てーとまりしゃ』『anko4099 てーとまりしゃとれいみゅのおとーさん』
- 『anko4122 てーありしゅのおかーさん』の完全な続きになります。
- 前作までの設定をそのまま使っているので、読んでいただかないと話が意味不明です。
- 最後の最後まで愛でられる希少種がでてきます。優遇どころの話ではないです。
- 愛でられるゆっくりは作者に都合がいいほとんどオリキャラのようになっております。
- 飼いゆっくりを愛称で呼びます。
- 作者にとって非常に都合がいい設定を垂れ流すシーンがあります。
- 大した落ち度のないゆっくりが不幸な目にあいます。
- 鬼意惨に恋人がいます。
- 鬼意惨達の野良に対する性格が悪いです。
- これでも注意書きが足らないかもしれません。
以上、少しでも嫌悪感を抱かれましたら、読まれると不快な思いさせてしまうかもしれません。
てーは雨が好きだ。
天気予報の言うとおり、ここ数日間は雨が続いていた。
そんな雨の中、歌いながら歩く一人と一匹。
天気予報の言うとおり、ここ数日間は雨が続いていた。
そんな雨の中、歌いながら歩く一人と一匹。
「あい~とぉゆうき」
「と~誇りを持ぉって~戦うよぉ~」
レインコート姿のてーと手を繋いで歩く饅殺男。
ハシャぐ様子からは雨に対する恐怖は微塵も感じられない。
ハシャぐ様子からは雨に対する恐怖は微塵も感じられない。
「だでぃ、そのうたちがうー」
「ははは、わりぃわりぃ。こっちのヒーローも好きでね」
そう答える饅殺男も上機嫌だ。
雨は良い。
こうして降っている間は野良にからまれずにすむし、野良自体の数も減るだろう。
雨を楽しむてーのレインコートに落ちる雨音のリズムも心地よい。
雨は良い。
こうして降っている間は野良にからまれずにすむし、野良自体の数も減るだろう。
雨を楽しむてーのレインコートに落ちる雨音のリズムも心地よい。
「こらこら。水溜りぴょんぴょんは禁止」
「えー」
「他の人にかかっちゃうだろう?
ていうかダディにもかかっちゃったつーの」
ていうかダディにもかかっちゃったつーの」
注意はしたが、あの顔では納得していないだろう。
見た限り人はいない。誰か来たら止めさせればいいだろう。
饅殺男がそんなふうに考えていると、予想外の存在が飛び出してきた。
見た限り人はいない。誰か来たら止めさせればいいだろう。
饅殺男がそんなふうに考えていると、予想外の存在が飛び出してきた。
「れいみゅだっておしょとであしょぶよっ!!!」
「うぉっ!?」
「あ、れいみゅだ!」
立ち並ぶ建物の間。
人間には小さいその隙間から一匹の赤ゆっくりが飛び出して来た。
雨の中、脆弱な赤れいみゅが飛び出したということは。
人間には小さいその隙間から一匹の赤ゆっくりが飛び出して来た。
雨の中、脆弱な赤れいみゅが飛び出したということは。
「いちゃいぃぃぃ!あめしゃんやめてぇぇぇぇっ!!」
当然雨の冷たさを知ることになる。
その冷たさが痛みとなってれいみゅの身体を責める。
その冷たさが痛みとなってれいみゅの身体を責める。
「やめちえぇぇっっ!!ちゅめたいよぉぉっ!いちゃぅ!いちゃいぅ!」
れいみゅはもがくうちに、幸運にも饅殺男の足元まで転がってきたため、傘によって一時的に雨を逃れる。
「にゃんでれいみゅにはいじわりゅすりゅのぉおおおおお!!
そっちのこにはやさしくしてりゅのにぃいいいい!!!!!
れいみゅはきゃわいいんだよぉおお!!おちびちゃんにゃんだよぉお!!」
そっちのこにはやさしくしてりゅのにぃいいいい!!!!!
れいみゅはきゃわいいんだよぉおお!!おちびちゃんにゃんだよぉお!!」
一瞬饅殺男は自分に言われたのかと思ったが、れいみゅの向いている方向を見て気づく。
こいつ雨に文句言ってる、と。
こいつ雨に文句言ってる、と。
「ふこうへいじゃよぉお!!!れいみゅもあそびちゃいにょにぃいいいい!!
いちゃいちゃいしにゃいでよぉおおっっ!!」
いちゃいちゃいしにゃいでよぉおおっっ!!」
つまりこの赤ゆっくりはてーを見て、外に出ても大丈夫だと勘違いしたのだ。
親と思われるれいむも出てきた。もちろん屋根のある所までだが。
親と思われるれいむも出てきた。もちろん屋根のある所までだが。
「おちびちゃん!なにしてるのぉぉっ!!!」
「おきゃあしゃぁああん!!げしゅなあめしゃんがいじわりゅすりゅぅ!!」
「おそといっちゃだめっていったでしょぉっ!!
かえってきなさいぃっ!!
あめさんはゆっくりできないよぉおお!!」
かえってきなさいぃっ!!
あめさんはゆっくりできないよぉおお!!」
「だってだってあにょこはゆっくりしてるよぉ?
ひとりだけゆっくりするなんてずるいよぉおおおおお!!」
ひとりだけゆっくりするなんてずるいよぉおおおおお!!」
『あの子』とれいみゅに言われたてーはキョトンとしている。
当然だ、饅殺男にも理解できない。
れいむの様子から見て、雨の危険は教えられていただろうに。
やはり自己愛が餡子の原動力と言う話は本当らしい。
当然だ、饅殺男にも理解できない。
れいむの様子から見て、雨の危険は教えられていただろうに。
やはり自己愛が餡子の原動力と言う話は本当らしい。
『他のゆっくりが雨さんと遊んでいる。じゃあれいみゅだって遊ぶよ!』
とか考えたのだろう。
生存本能は先祖の餡子に置いてきたのだろうか?
生存本能は先祖の餡子に置いてきたのだろうか?
「にんげんさんにちかづいちゃだめっていったでしょぉおお?
あのこは“かいゆっくり”なんだよぉおお!?
ゆっくりしないでおうちかえってきなさぃぃ!」
あのこは“かいゆっくり”なんだよぉおお!?
ゆっくりしないでおうちかえってきなさぃぃ!」
「へぇ……」
「やぢゃぁあぁぁつ!!れいみゅもあそびゅんだよぉぉっ!!」
饅殺男はまた少し驚かされた。
親のほうは人間の恐ろしさと飼いゆっくりについても知っているらしい。
これならわざわざ潰す必要はないだろう。
親のほうは人間の恐ろしさと飼いゆっくりについても知っているらしい。
これならわざわざ潰す必要はないだろう。
「しょこのにんげぇん!にゃにしちぇりゅにょぉっ!?
れいみゅがいたがっちぇりゅんだよっ!さっさとたすけりょぉぉ!」
れいみゅがいたがっちぇりゅんだよっ!さっさとたすけりょぉぉ!」
今さら饅殺男の存在に気づいたのだろうか。
世の中を自分の餡子よりも甘い存在だと信じるれいみゅが、命令してくる。
もちろん饅殺男に取り合う気は無い。
隣にいるてーの手を引っ張る。
世の中を自分の餡子よりも甘い存在だと信じるれいみゅが、命令してくる。
もちろん饅殺男に取り合う気は無い。
隣にいるてーの手を引っ張る。
「てー?いくぞー」
「うい!」
「……そのお返事はマミィの前では禁止な」
「うい!」
「ゆぅ!?にゃにむししちぇりゅにょ?おみみしゃんがくさっちぇるにょ?
おお、あわりぇだにぇ!ゆっくりしちぇにゃいねっ!
でもれいみゅはかんだいだからおまえをどれいにしちぇ――――」
おお、あわりぇだにぇ!ゆっくりしちぇにゃいねっ!
でもれいみゅはかんだいだからおまえをどれいにしちぇ――――」
てーが野良をちゃんと無視した事を褒めながら歩き出す饅殺男。
当然傘は一緒に移動するため、れいみゅの頭上から消える。
当然傘は一緒に移動するため、れいみゅの頭上から消える。
「きいてりゅにょかどりぇいぃぃ!ぐずはきらっ、ゆひぃ!?
ちゅめちゃ!いちゃぁ!どぼちであめしゃんがいるにょぉぉっ!?
やめちぇぇぇl!!!」
ちゅめちゃ!いちゃぁ!どぼちであめしゃんがいるにょぉぉっ!?
やめちぇぇぇl!!!」
またしても雨にさらされるれいみゅ。
逃げようとして、あんよをガムシャラに動かす。
逃げようとして、あんよをガムシャラに動かす。
「いちゃぁっ!!あんよしゃんいちゃぃ!」
当然弱った皮で無理をすれば簡単に破ける。
「ゆわぁああああああああ!
おちびちゃんっ!おちびちゃん!がんばってぴょんぴょんしてぇっ!!」
おちびちゃんっ!おちびちゃん!がんばってぴょんぴょんしてぇっ!!」
「にゃんでぇええ、にゃんでぇうごかないのぉおおおおおお!!
ヒィっ!いちゃぃぃぃ!!」
ヒィっ!いちゃぃぃぃ!!」
これでもうれいみゅの運命は決まった。
親れいむも叫んでいるがそれだけだ。
中途半端に賢いために、自分では助けることは出来ないのがわかってしまう。
親れいむも叫んでいるがそれだけだ。
中途半端に賢いために、自分では助けることは出来ないのがわかってしまう。
「にんげんさんっ!おねがいしますぅ!
れいむのおちびちゃんをたすけてくださぃ!!!」
れいむのおちびちゃんをたすけてくださぃ!!!」
だから饅殺男に懇願する。
ゆっくりと一緒にいる人間なら、きっと助けてくれると思ったのだろう。
そう思うのも無理もないが、残念ながら勘違いだ。
そもそも、饅殺男とてーはとっくに歩き出している。
ゆっくりと一緒にいる人間なら、きっと助けてくれると思ったのだろう。
そう思うのも無理もないが、残念ながら勘違いだ。
そもそも、饅殺男とてーはとっくに歩き出している。
「ゆゆっ!?
どぉうしていっちゃぁうのぉおおおおおおおっっ!!
まってぇえええええ!!まってくださいぃいい!!
このままじゃれいみゅのおちびちゃんがしんじゃうんですぅぅ!!」
どぉうしていっちゃぁうのぉおおおおおおおっっ!!
まってぇえええええ!!まってくださいぃいい!!
このままじゃれいみゅのおちびちゃんがしんじゃうんですぅぅ!!」
「いちゃあああああああああああああ!!
やめっ!あめしゃああああ!ごめんにゃしゃ!
ゆぎぃ!あぎぃいいいいいいいいいいいいいいい!!」
やめっ!あめしゃああああ!ごめんにゃしゃ!
ゆぎぃ!あぎぃいいいいいいいいいいいいいいい!!」
軽く後ろを振り返りながら饅殺男は思う。
雨は良い、騒ぐ饅頭の声もかき消してくれる。
雨は良い、騒ぐ饅頭の声もかき消してくれる。
「あびゅぅ!ゆびゅぅ!いびぃ!びぃぃ……ぎぃい!!」
「いやぁあああ!れいむのかわいいおちびちゃんがぁあ……」
残ったのは雨粒にその身を蹂躙されるたびに痙攣するれいみゅ。
そして必死に、おちびちゃんの救助を願うれいむ。
そして必死に、おちびちゃんの救助を願うれいむ。
「ほらほら、わざわざ水溜り行っちゃだめだって」
「はーい!」
パシャンと音を立て、てーが履く長靴が水溜りを軽く散らす。
続いてれいむの絶叫が響く、どうやられいみゅの命も散ったらしい。
続いてれいむの絶叫が響く、どうやられいみゅの命も散ったらしい。
直接雨に当たることによって死ぬゆっくりは確かに多い。
だが同じくらい雨によって引き起こされる、いわば二次災害によって死ぬゆっくりがいる。
だが同じくらい雨によって引き起こされる、いわば二次災害によって死ぬゆっくりがいる。
「しゃむぃよぉっ、おかぁぁぁしゃんっしゃむぃよぉぉっ!」
「もういやなのじぇえ!!まりしゃおうちかえりゅのじぇっ!!」
「おちびちゃん!おちびちゃんもうちょっとがんばってね!
もうすぐあめさんはどっかいくからね!!」
もうすぐあめさんはどっかいくからね!!」
空が雲に覆われ雨が降る事を予告しているのに、それが分からないゆっくり。
元気でやんちゃなおちびちゃんにせがまれお散歩した結果。
予定通り雨が降り出し、おうちに帰れなくなった。
元気でやんちゃなおちびちゃんにせがまれお散歩した結果。
予定通り雨が降り出し、おうちに帰れなくなった。
「まりしゃはゆっくりかえるのじぇ……ゆいしょ、ゆいしょ。
――――どぅじであめしゃんがここにもいるのじぇぇえぇえっ!?
ゆっくりしないでどくのじぇぇ!めいれいなのじぇぇっ!
ゆっぴゃあああ!!!ぴちゃぴちゃうるしゃいのじぇぇえええええっl!!」
――――どぅじであめしゃんがここにもいるのじぇぇえぇえっ!?
ゆっくりしないでどくのじぇぇ!めいれいなのじぇぇっ!
ゆっぴゃあああ!!!ぴちゃぴちゃうるしゃいのじぇぇえええええっl!!」
「おちびちゃん!そっちいったらあぶないよっ!!」
何とか公園内のベンチとテーブルに小さな屋根のついた休憩所に逃げた。
雨がすぐに止むなら助かったと言えるだろう。
雨がすぐに止むなら助かったと言えるだろう。
「しゃむぃぃ、ごはんしゃんたべちゃぃぃ、ゆぅぅゆぅぅぅ!」
「お、おうちにかえればたくさんたべれるのぜっ!!
だから、もうすこしだけがまんするのぜぇ!」
だから、もうすこしだけがまんするのぜぇ!」
雨はもう数時間は降り続けている。
そのおかげで、赤ゆっくりたちにとって耐え難い寒さと空腹が襲う。
必死で両親が慰めるも、言葉だけではどうしようもない。
そのおかげで、赤ゆっくりたちにとって耐え難い寒さと空腹が襲う。
必死で両親が慰めるも、言葉だけではどうしようもない。
「ゆぅぅ、どうしよぉぉ。どうしよぉぉぅ」
普段からは考えられないほど情けない声を出す親まりさ。
助けを求めて辺りを見回していた。
助けを求めて辺りを見回していた。
「でさ、てー。明日も雨かもしれないぞ?」
「えー、れいむおねーちゃんとあそぶのに。
だでぃ、あめやだよー」
だでぃ、あめやだよー」
「うーん、さすがにダディも雨はどうしようもないなぁ」
人間に例えると、氾濫した川の中洲にいるまりさ達家族。
そんな一家の目にはどう映ったのだろうか。
雨の中を平然と歩き、楽しそうに人間と話しているゆっくりの姿は。
そんな一家の目にはどう映ったのだろうか。
雨の中を平然と歩き、楽しそうに人間と話しているゆっくりの姿は。
「ど、どういうことなのぜ!
ちょっとまつのぜぇっ!!」
ちょっとまつのぜぇっ!!」
「しゅごぃのじぇぇっ!!!
あめしゃんのなかでもへいきなのじぇっ!?」
あめしゃんのなかでもへいきなのじぇっ!?」
頭に浮かんだものをそのまま発言してしまうゆっくり。
親まりさは理解できない疑問に対する怒りを、子まりしゃは素直に感動しながら。
親まりさは理解できない疑問に対する怒りを、子まりしゃは素直に感動しながら。
「……でもあめのおさんぽはたのしいよ!」
「よしよし。そうだなー、てーが今日の病院でいい子にしてたら明日は晴れるんじゃないか?」
だがまりさ達への反応は無かった。
全身を見たこと無いお飾りで覆うゆっくりとは目があったはずなのに。
怒りでまりさの餡子が外の寒さを忘れるほど一瞬で沸騰する。
全身を見たこと無いお飾りで覆うゆっくりとは目があったはずなのに。
怒りでまりさの餡子が外の寒さを忘れるほど一瞬で沸騰する。
「むしするなぁぁぁぁぁっ!!!
まりさたちがこまってるんだぞぉぉぉぉぉっ!!」
まりさたちがこまってるんだぞぉぉぉぉぉっ!!」
「しゃむぃよぉぉぉ」
おちびちゃんが悲しんでいるのを見たくせに無視するなんて。
なんてゆっくりしてないゆっくりなんだ。
見たところまだ幼いゆっくりのようだが、“どうつきさん”みたいだから正確にはわからない。
――――もしかして幼い故にまりさ達の状況がわからないのだろうか。
なんてゆっくりしてないゆっくりなんだ。
見たところまだ幼いゆっくりのようだが、“どうつきさん”みたいだから正確にはわからない。
――――もしかして幼い故にまりさ達の状況がわからないのだろうか。
「もういいからゆっくりしないでこっちにこいっ!
――――ゆっ?
な、なんではなれていくのぉぉっ!?
まてぇっ!にげるなぁっっ!!!
――――ゆっ?
な、なんではなれていくのぉぉっ!?
まてぇっ!にげるなぁっっ!!!
まりさが大声で近づくよう要求する頃には、もう人間に連れられたゆっくりは遠ざかっていた。
そもそも饅殺男とてーは一度も足を止めていない。
広い広い公園を通るほうが近いから来ただけだ。
そもそも饅殺男とてーは一度も足を止めていない。
広い広い公園を通るほうが近いから来ただけだ。
「まりさのはなしをきけぇぇぇっっ!!!!」
「れいむのだーりんはつよいんだよぉっ!
いうこときかないとせいさいするよぉっ!」
いうこときかないとせいさいするよぉっ!」
あっという間に見えなくなってしまった。
これでは声は届かない、実際は届いても結果は同じだが。
これでは声は届かない、実際は届いても結果は同じだが。
「あああああああああっ!!
にげちゃったのぜぇ!!。
くそっ!いくらまりさがつよすぎるからってぇっ!
おくびょうものっ!!こわがりぃっ!」
にげちゃったのぜぇ!!。
くそっ!いくらまりさがつよすぎるからってぇっ!
おくびょうものっ!!こわがりぃっ!」
「まりさぁ、どうするのぉ?」
強すぎるのも困り者だ。
せっかくの脱出手段が逃げてしまった。
あのおちびの奴隷の人間をどうにかして奪って、おうちに連れて行かせようと思ったのに。
せっかくの脱出手段が逃げてしまった。
あのおちびの奴隷の人間をどうにかして奪って、おうちに連れて行かせようと思ったのに。
「おとーしゃんぅ、おかーしゃんっ!れいみゅぅ!もうやぢゃぁぁぁっ!!」
「しゃむいのぜぇええ!ゆぅ!かぜしゃんはどっかいくのじぇぇ!
ゆぅぅ!?なんであめしゃんまでくるのじぇぇええ!!
きょわいぃのじぇぇっ!!!」
ゆぅぅ!?なんであめしゃんまでくるのじぇぇええ!!
きょわいぃのじぇぇっ!!!」
だが今は目の前に最大の危機が迫っている。
おちびちゃんはもう限界だし、せっかくのチャンスもどこかへいってしまった。
おちびちゃんはもう限界だし、せっかくのチャンスもどこかへいってしまった。
「ゆぅう、でもあのゆっくりはおちびちゃんのくせにあめさんのなかでもゆっくりしてたのぜ」
そうだ、そこが疑問なのだ。
人間は卑怯な手を使っているため、雨も平気なのだろう。
でもあのゆっくりは――――そういえば何だか白い“もやもやさん”のお飾りをつけていた。
それも体全体を覆うように。
人間は卑怯な手を使っているため、雨も平気なのだろう。
でもあのゆっくりは――――そういえば何だか白い“もやもやさん”のお飾りをつけていた。
それも体全体を覆うように。
「わかったのぜぇ!!!
あのおかざりなのぜ!!!あれであめさんのなかでもゆっくりしてたのぜ!!」
あのおかざりなのぜ!!!あれであめさんのなかでもゆっくりしてたのぜ!!」
「ゆゆっ!!すごいよまりさぁっ!てんさいだよぉっ!!!!」
まるで生還出来たかのように喜ぶ夫婦。
未だに雨は降り続き、少しずつ風も強くなってきているのに。
しかし、褒められるほど増長するゆっくり。
未だに雨は降り続き、少しずつ風も強くなってきているのに。
しかし、褒められるほど増長するゆっくり。
「まりさのおぼうしさんがあんなおかざりにまけるはずないのぜぇ!
だからまりさならあめさんもへいきなのぜ!」
だからまりさならあめさんもへいきなのぜ!」
「すごすぎるよ!まりさぁ!」
「おとーしゃんかっこいいのじぇ!!」
そうだ、なぜこんな簡単なことに気づかなかったのか。
自分のお帽子ならこんな雨、ぜんぜん怖くないじゃないか。
あんなおちびちゃんがつけていたお飾りより、自分のものが劣っているハズが無いのだから。
自分のお帽子ならこんな雨、ぜんぜん怖くないじゃないか。
あんなおちびちゃんがつけていたお飾りより、自分のものが劣っているハズが無いのだから。
「ゆぇぇぇ……おにゃかしゅいちゃよぉお……。
たべちゃいぃい!むーしゃむーしゃしちゃぃよ!」
たべちゃいぃい!むーしゃむーしゃしちゃぃよ!」
「ゆぅ!!まってるのぜおちびぃ!!
おとーさんがすぐにごはんさんをもってくるのぜぇぇ!!」
おとーさんがすぐにごはんさんをもってくるのぜぇぇ!!」
過剰な自身から“だぜ”口調となったまりさが屋根の庇護から飛び出す。
これくらいの小雨なら、まりさ種のお帽子が傘として機能する。
あくまで短時間だけなら。
これくらいの小雨なら、まりさ種のお帽子が傘として機能する。
あくまで短時間だけなら。
「ゆっ!やっぱりぜんぜんへいきなのぜぇっ!
まりさはあめさんすらもちょうえつしたのぜぇぇっ!
さいきょうなのぜぇぇぇぇっ!!!!」
まりさはあめさんすらもちょうえつしたのぜぇぇっ!
さいきょうなのぜぇぇぇぇっ!!!!」
「まりさぁ!れいむ、れいむうれしいよぉ!」
番の頼もしい姿にれいむは涙を流す。
「いってくるのぜ!おちび!あとちょっとだけがまんするのぜぇ!!」
勇ましく飛び跳ねていくまりさ。
ぴょん、ぴょん、ぴょん、ボチャン!バシャ!パシャ!ぴょん、ぺちゃ、ぴちゃ、グシャ。
「――――ゆぇ?」
わずか十回。
それが今回まりさに許された跳躍回数だった。
途中水溜りに入ったのがいけなかった、致命的なダメージ受けたあんよは耐え切れずその役目を終えた。
それが今回まりさに許された跳躍回数だった。
途中水溜りに入ったのがいけなかった、致命的なダメージ受けたあんよは耐え切れずその役目を終えた。
「あ、ゆぇ?ゆぁ、どうして、ど、え?
ま、えぁ、あんよさん?あ、え、ゆっくり、うご、うごいてね?」
ま、えぁ、あんよさん?あ、え、ゆっくり、うご、うごいてね?」
自分の目に映るあんよの惨状に言葉がおかしくなるまりさ。
“だぜ”口調も引っ込む。
“だぜ”口調も引っ込む。
「あ、あ、あああああああああああああああああ!!!
いだいぃぃっ!!!どぼじであんよさんがぁあ!!」
いだいぃぃっ!!!どぼじであんよさんがぁあ!!」
遅れて痛みが中枢餡に届く。
雨音をかき消すようなまりさの絶叫が響く。
雨音をかき消すようなまりさの絶叫が響く。
「まりさ?どうしたのぉっ!?
あああああああっ!まりさのあんよさんやぶれてるよぉぉっ!!」
あああああああっ!まりさのあんよさんやぶれてるよぉぉっ!!」
たいして距離を稼げなかったために、番からもおちびちゃんからもまりさの惨めな姿がよく見えている。
「いたいぃ!つめたいぃぃっ!!
ゆぐぅ!!あめさんやめてぇっ!!こないでぇぇぇぇっ!!」
ゆぐぅ!!あめさんやめてぇっ!!こないでぇぇぇぇっ!!」
体を激しく動かせば、帽子ではカバーしきれない部分が生まれる。
しかし番から自身のあんよの現状を、克明に告げられたまりさはパニックになっている。
しかし番から自身のあんよの現状を、克明に告げられたまりさはパニックになっている。
「れいむぅ!たすけてぇ!こわいよぉっ!!
あんよさんいたいのぉおおおお!!うごかないのぉ!
つめたいぃぃ!!たすけてえぇ!」
あんよさんいたいのぉおおおお!!うごかないのぉ!
つめたいぃぃ!!たすけてえぇ!」
結局こうなるのだ。
家族を助けるために動いたハズなのに、家族に助けを請う。
家族を助けるために動いたハズなのに、家族に助けを請う。
「ゆぇええ!?む、むりだよぉぉっっ!!れいむじゃあめさんにはかてないよぉ!」
数秒前は家族の守護神、いまやおちびちゃんより頼りないまりさ。
そんなまりさの転落を目の前で見て、誰が外に飛び出そうなんて思えるだろうか。
そんなまりさの転落を目の前で見て、誰が外に飛び出そうなんて思えるだろうか。
「おとぉしゃん!!がんばるのじぇっ!!まけちゃだめだじぇっ!!」
おちびちゃん達は残念ながら、現状を理解しきれていないらしい。
「いたぃよぉ……ゆっくりしたいよぉ……あめさんやめてぇ……」
痛くて冷たくて寒くてそして怖かった。
しーしーを漏らしていたが雨はそれさえも溶かした。
逃げたいのに体は動かない、自分が本当にゆっくりと雨に全てを奪われるのがわかる。
しーしーを漏らしていたが雨はそれさえも溶かした。
逃げたいのに体は動かない、自分が本当にゆっくりと雨に全てを奪われるのがわかる。
「たすけてぇ……おかーさんぅ……」
この後、まりさは自身が死ぬまで泣いて救いを求めた。
残された家族はまりさが死んだ後も泣き続けていた。
残された家族はまりさが死んだ後も泣き続けていた。
「ついたついた」
「んー?あっ!まみぃ!!」
饅殺男に抱かれていたてーが大声をあげる。
跳ね回って疲れたてーから抱き上げることを要求された饅殺男。
どうせそうなると思っていた。
濡れたレインコートを脱がし、ここまで運んで来た。
ゆっくり専門病院、通称“ゆっくりにっく”へと。
跳ね回って疲れたてーから抱き上げることを要求された饅殺男。
どうせそうなると思っていた。
濡れたレインコートを脱がし、ここまで運んで来た。
ゆっくり専門病院、通称“ゆっくりにっく”へと。
「なんかずいぶんいっぱいいっぱいね」
「片手でてーを支えつつ、濡らさないように絶妙に傘をコントロールして来た俺は、もっと褒められてもいいと思う」
「まみぃ!だっこ!」
「んー、おいでー」
そのまま先に着いていた虐子にてーを受け渡し、病院に入る。
「こんにちわー」
「はーい、こんにちわ」
「こんにちわ!」
「えーっとカード、カードっと」
受付にいるお姉さんに診察券を渡す。
コンビニくらいの大きさの病院。
広くは無いが待合室は清潔感に溢れ、雨が降る外と違い暖かい。
しかしせっかくの待合室だが、ここでは一度も待たされたことがない。
コンビニくらいの大きさの病院。
広くは無いが待合室は清潔感に溢れ、雨が降る外と違い暖かい。
しかしせっかくの待合室だが、ここでは一度も待たされたことがない。
「はい、じゃぁスグ先生の所にいってあげてください。
待ってましたから」
待ってましたから」
「はい」
「てーちゃん、こっち」
「うい!」
「――――饅殺男?後で話しあるから」
「い、いやちげーから」
ゆっくり専門の病院。
飼いゆっくりがここまで普及しているこの時代。
当然あってしかるべき施設として、早くから設立のために加工所は動いた。
しかし今やその名を知らぬものはいない大企業となった加工所でさえ、このプロジェクトは難航した。
そもそも医者がいない。
ゆっくり医療のエキスパート養成、これがまず第一の試練だった。
試行錯誤のすえに十数年を費やし、『餡医師免許』というものを確立させた。
やっとの思いで作った“ゆっくりにっく”
都心を中心に複数設立され、数ヶ月がたったころ。
職員達は第二の試練に気づいた。
患者――患畜という言い方は例の愛護団体から苦情が来たらしい――がいない。
そもそも相手はオレンジジュースをかけるだけで傷が治るような存在なのだ。
そのオレンジジュースすら効かない状態にまで陥ったゆっくりは、病院に着く前にほとんどが死んでしまう。
“ゆ下痢”や“カビ”などの病気は、人間によって食事を与えられ、栄養が十分ならまずこれらの病気にはかからない。
そして飼いゆっくりをこのような病気にかからせる人間は、わざわざ病院に連れてきたりするはずがない。
――――要するにヒマなのだ。これにはさすがの加工所もお手上げだった。
飼いゆっくりがここまで普及しているこの時代。
当然あってしかるべき施設として、早くから設立のために加工所は動いた。
しかし今やその名を知らぬものはいない大企業となった加工所でさえ、このプロジェクトは難航した。
そもそも医者がいない。
ゆっくり医療のエキスパート養成、これがまず第一の試練だった。
試行錯誤のすえに十数年を費やし、『餡医師免許』というものを確立させた。
やっとの思いで作った“ゆっくりにっく”
都心を中心に複数設立され、数ヶ月がたったころ。
職員達は第二の試練に気づいた。
患者――患畜という言い方は例の愛護団体から苦情が来たらしい――がいない。
そもそも相手はオレンジジュースをかけるだけで傷が治るような存在なのだ。
そのオレンジジュースすら効かない状態にまで陥ったゆっくりは、病院に着く前にほとんどが死んでしまう。
“ゆ下痢”や“カビ”などの病気は、人間によって食事を与えられ、栄養が十分ならまずこれらの病気にはかからない。
そして飼いゆっくりをこのような病気にかからせる人間は、わざわざ病院に連れてきたりするはずがない。
――――要するにヒマなのだ。これにはさすがの加工所もお手上げだった。
「よろしくお願いします」
「やぁ、よくきたね」
「こんにちわ!せんせー!」
「来てそうそうなんですが、今日も暇そうですね馬路出先生」
ゆっくり関係の本に混じって将棋の指南書が置いてある机の前に座る人物。
『馬路出 弥舞(まじでやぶ)』医師だ。
『馬路出 弥舞(まじでやぶ)』医師だ。
「それが一番の問題でね、患者がいないのは平和な証拠だとは言うが……。
それでは我々の存在意義が問われるよ」
それでは我々の存在意義が問われるよ」
「だからって堂々と目の前で将棋の本読んでるのはどうかと」
さすがの加工所も苦労して作った施設を遊ばせておくわけにはいかない。
本来なら、患者として連れてこられたゆっくりのデータを集めることも目的の一つだった。
本来なら、患者として連れてこられたゆっくりのデータを集めることも目的の一つだった。
「はっはっは、厳しいね。
まぁ、せっかく来てくれたんだから私も仕事をしよう。
――――ではてーくんはあちらで身体測定から頼むよ」
まぁ、せっかく来てくれたんだから私も仕事をしよう。
――――ではてーくんはあちらで身体測定から頼むよ」
「じゃあてーちゃんはこっちに来てくださいねー。
いつも通り、マミィさんもついててあげてください」
いつも通り、マミィさんもついててあげてください」
「すいません、ありがとうございます」
受付にいたお姉さんに案内され、てーと虐子は奥の部屋へ移動する。
これももう何度も繰り返された光景だ。
これももう何度も繰り返された光景だ。
「よしでは、饅殺男くんにはいつもの事を聞こうか。
――――てーちゃんはどうだい?」
――――てーちゃんはどうだい?」
少しでも患者を増やそうとした加工所は、飼いゆっくりの定期健診を呼びかけた。
そして特に謎が多く、データも少ない希少種の場合、その検診料は加工所負担。
そのため饅殺男とてーはちょくちょく、こうして検査のために病院を訪れている。
そして特に謎が多く、データも少ない希少種の場合、その検診料は加工所負担。
そのため饅殺男とてーはちょくちょく、こうして検査のために病院を訪れている。
「めっ!ちゃ!可愛いッス!」
「はっはっは、付け上がったれいむ種を見ている気分だね」
「どぼしてそんなことー……ってまぁ前回と変わってないですよ。
特に言うなら、最近ちゅっちゅを避けることくらいですかねぇ」
特に言うなら、最近ちゅっちゅを避けることくらいですかねぇ」
飼いゆっくり向けの商品市場は加工所の主戦場である。
ちょっとした悩みが大ヒット商品を生んだ、なんて話もある。
そのためゆっくりにっくでは、飼いゆっくりだけではなく、飼い主のカウセンリングもやっている。
あくまで“飼育上の”悩みについてだが。
ちょっとした悩みが大ヒット商品を生んだ、なんて話もある。
そのためゆっくりにっくでは、飼いゆっくりだけではなく、飼い主のカウセンリングもやっている。
あくまで“飼育上の”悩みについてだが。
「口臭が嫌なんだろうね、口内は清潔にしたまえよ?」
「……口汚いのは先生じゃないですか」
「はっはっは、厳しいね。
いや、実際ほんと暇でねぇ。
患者さんが来たのなんて三日ぶりだよ」
いや、実際ほんと暇でねぇ。
患者さんが来たのなんて三日ぶりだよ」
一応“殺ゆ剤”やオレンジジュースを超えるような薬の研究開発など、することはある。
何せゆっくりはそれこそ掃いて捨てるほどいる、これほど臨床試験のしやすい生き物はいまい。
何せゆっくりはそれこそ掃いて捨てるほどいる、これほど臨床試験のしやすい生き物はいまい。
「まぁ私だって一日中遊んでいるわけじゃないさ。
この間も駆除担当からもっと効率のよいものを要求されてねぇ。
都合よく饅頭だけを殺す、というのもなかなか難しい」
この間も駆除担当からもっと効率のよいものを要求されてねぇ。
都合よく饅頭だけを殺す、というのもなかなか難しい」
「そりゃ環境に害がなくてゆっくりだけ、なんてチートですよね。
――――っていうか研究って、どうやるんです?」
――――っていうか研究って、どうやるんです?」
「うん?試すのさ、手当たり次第にね。
そこの部屋で効きそうなものを実験体にかけるなり投与するなり」
そこの部屋で効きそうなものを実験体にかけるなり投与するなり」
「無駄に厚そうなドアかと思えばそういう……」
他とは明らかに違う、重そうなドアの向こうは研究室になっているらしい。
餡医療の発展のために、無数のゆっくりたちがその身を捧げているのだろう。
自発的にではないだろうが。
餡医療の発展のために、無数のゆっくりたちがその身を捧げているのだろう。
自発的にではないだろうが。
「なんか赤ゆっくりに見せたら即死しそうな光景が広がってそうですね」
「いやいや、普通だよ。そうだねぇ。
例えば今、野良ゆっくりが同属を食い殺すようになる薬を開発中なんだが」
例えば今、野良ゆっくりが同属を食い殺すようになる薬を開発中なんだが」
「うわぁお、過激ですね」
「これが難しくてね。なかなか“その気”になってくれない」
「ドアの向こうはやばそうですね」
得体の知れない薬を塗られ、飲まされる。
その結果、激痛に襲われる、餡子を吐き出す。
研究なので決して助けてはくれない。
その結果、激痛に襲われる、餡子を吐き出す。
研究なので決して助けてはくれない。
「いやぁ地獄って近くにあるものですね」
「はっはっは、そんなことは無いさ。
さぁ、饅殺男くん。てーくんの検査はいつも通り一時間はかかるだろう。
将棋でも指そうじゃないか」
さぁ、饅殺男くん。てーくんの検査はいつも通り一時間はかかるだろう。
将棋でも指そうじゃないか」
「またですか、俺この前だって飛車角落ちでボロ負けしたじゃないですか。
っていうかそんな素人の俺と指して楽しいんですか?」
っていうかそんな素人の俺と指して楽しいんですか?」
「私も素人だからいいんだよ、もちろん私は楽しんでやっているさ」
健康状態をみるために排泄餡――つまりうんうんやしーしーも調べる。
餡子の具合を見れば、だいたいの事がわかるのだ。
餡子の具合を見れば、だいたいの事がわかるのだ。
「まぁ先生がいいなら、いいですけど。
――――やっぱりちょっと相談したいこともあるんで」
――――やっぱりちょっと相談したいこともあるんで」
「かまわないさ、時間はいくらでもあるよ。
どうせ今日の来客は君達が最初で最後さ」
どうせ今日の来客は君達が最初で最後さ」
「それもどうなんですか」
検査結果が出るのは一週間後らしい。診察券の裏に日付が書いてある。
予約の必要なんてないのだろうが、形式上必要なことらしい。
予約の必要なんてないのだろうが、形式上必要なことらしい。
「なんか雨強くなったな」
「そろそろ晴れて欲しいね。
自転車使えないのがツライのよねー」
自転車使えないのがツライのよねー」
検査に疲れたてーはお決まりの虐子の腕の中で睡眠中。
慣れたもので少しくらい揺らそうがうるさかろうが目覚めない。
慣れたもので少しくらい揺らそうがうるさかろうが目覚めない。
「そういやさっきここらへんに――――いたいた」
「うわ、悲惨ね」
饅殺男が行く途中に見た、ゆっくりの一家が避難していた公園の休憩所。
そこには親れいむとまりしゃがいた。
そこには親れいむとまりしゃがいた。
「あれ、自信過剰っぽいまりさがいたはずなんだけど」
「これじゃない?」
虐子が指を指す方向に目を向けると、餡子にまみれたまりさ種の帽子が落ちていた。
と、キョロキョロと不安げに辺りを見ていたれいむと目が合った。
と、キョロキョロと不安げに辺りを見ていたれいむと目が合った。
「ああああっ!!!さっきのおちびちゃんをつれたにんげんさんっ!!
こっちにきてくださぃぃぃっ!!たすけてぇぇぇっっ!!」
こっちにきてくださぃぃぃっ!!たすけてぇぇぇっっ!!」
「あれ、すっげぇ卑屈になってる」
「ね」
先ほど饅殺男とてーが通ったときには、いかにも人間を見下している感じだったが。
「無視するか?」
「ちょっと気になるから見に行こ。タイムセールまでまだ時間あるし」
饅殺男と虐子が近づいていく。
「にんげんさぁぁんっ!おねがいしますぅぅ!れいむたちをたすけてくださぃぃっ!!」
二人が十分近づくなり頭を地に着け、土下座したれいむ。
夫のまりさが死んで数時間がたってやっと学んだのだ。
この状況は自分達だけでは解決できない。
夫のまりさが死んで数時間がたってやっと学んだのだ。
この状況は自分達だけでは解決できない。
「嫌です、ごめんなさい」
「ええええええええええええっっ!?」
まさか容赦なく断られるとは思わなかったのだろう。
まさに驚愕と言った表情を浮かべた顔を上げるれいむ。
れいむの必死に考えた“けいかくっ!”だと、
この時点でかわいそうなれいむ達を見た人間がゆっくりさせてくれるはずだったのに。
まさに驚愕と言った表情を浮かべた顔を上げるれいむ。
れいむの必死に考えた“けいかくっ!”だと、
この時点でかわいそうなれいむ達を見た人間がゆっくりさせてくれるはずだったのに。
「お、おねがいですぅぅぅ!!
もうれいむたちずっとここにいるんですぅっ!!
さむくてぇ!あめさんもはいってくるんですぅっ!!」
もうれいむたちずっとここにいるんですぅっ!!
さむくてぇ!あめさんもはいってくるんですぅっ!!」
「そうですか、大変ですね。頑張ってください」
眠るてーの頭を撫でながら、れいむ達を見ずに答える虐子。
おかしい、全然同情している気配がない。
おかしい、全然同情している気配がない。
「ゆぐぅぅ!うぅぅっ!
もうれいむはたくさんがんばったんですぅ!
すーりすーりしたけどぉぉっ!あったかくならなくてぇぇ!!
おちびちゃんもしんじゃったんですぅぅ!!」
もうれいむはたくさんがんばったんですぅ!
すーりすーりしたけどぉぉっ!あったかくならなくてぇぇ!!
おちびちゃんもしんじゃったんですぅぅ!!」
「かわいそうですね」
「こっちみてよぉぉぉぉ!!」
叫びながられいむは思った。
どういうことなんだ?
おちびちゃんが死んだことを伝えたんだぞ?
なんで人間は泣きながられいむ達を保護しないんだ?
どういうことなんだ?
おちびちゃんが死んだことを伝えたんだぞ?
なんで人間は泣きながられいむ達を保護しないんだ?
「ゆ、ゆぅぅ!ほらみて!
おちびちゃんこんなにあんこさんはいちゃったんですぅ!!
かわいそうでしょぉぉっ!!」
おちびちゃんこんなにあんこさんはいちゃったんですぅ!!
かわいそうでしょぉぉっ!!」
もみあげでおちびちゃんの死体を指すれいむ。
初めて人間がれいむの指示する方向を見た。
初めて人間がれいむの指示する方向を見た。
「見てくれって。
――――ちょっと転がした後があるじゃないですか。
臭いがキツイからってひどいことしますね」
――――ちょっと転がした後があるじゃないですか。
臭いがキツイからってひどいことしますね」
「ゆゆぅぅっ!!??」
ビクッっと身体を一回痙攣させるほど驚いたれいむ。
なぜバレたんだ!?。
死んでしまったおちびちゃんからとってもゆっくり出来ない臭いがするので、確かにしかたなく遠ざけた。
あまり触りたくないから、もみあげで転がして。
なぜバレたんだ!?。
死んでしまったおちびちゃんからとってもゆっくり出来ない臭いがするので、確かにしかたなく遠ざけた。
あまり触りたくないから、もみあげで転がして。
「だって、おちびちゃんが……」
「はいはい、どうでもいいです。もういいですか?」
「ゆゆぅ!?ま、まってねぇっ!!
まだこっちにおちびちゃんがいるんだよっ!?
とってもさむいさむいでかわいそうなんだよぉっ!」
まだこっちにおちびちゃんがいるんだよっ!?
とってもさむいさむいでかわいそうなんだよぉっ!」
そうれいむが言うと、その身体の影に隠れていたまりしゃが出てきた。
小刻みに揺れていて気持ち悪いと思っていたが、どうやら必死にまりしゃをすーりすーりしてたようだ。
小刻みに揺れていて気持ち悪いと思っていたが、どうやら必死にまりしゃをすーりすーりしてたようだ。
「しゃむぃのぜぇぇ。まりしゃゆっくりしたいぃぃぃ……」
どうだ。
その震える姿をみるだけで、れいむの全てを差し出してでも救いたくなるおちびちゃんだ。
そのおちびちゃんが泣きながら、寒さを訴えている。
さすがの人間もこれで――――。
その震える姿をみるだけで、れいむの全てを差し出してでも救いたくなるおちびちゃんだ。
そのおちびちゃんが泣きながら、寒さを訴えている。
さすがの人間もこれで――――。
「頑張ってゆっくりしてください」
「ゆえええええっ!?」
何も変わらなかった。
我慢できずに人間を問い詰める。
我慢できずに人間を問い詰める。
「おちびちゃんがこんなにないてるんだよぉぉっ!?
さむくてふるえちゃってるんだよぉぉっ!?
かわいそうだとおもわないのぉぉぉっ!?」
さむくてふるえちゃってるんだよぉぉっ!?
かわいそうだとおもわないのぉぉぉっ!?」
すると人間が少し考える仕草をする。
そして、れいむに質問してきた。
そして、れいむに質問してきた。
「寒いんですか?」
「ゆはっ?」
れいむが質問の内容を理解した瞬間、怒鳴り声が響いた。
「あたりまえでしょぉぉぉぉっ!!??
なにいってんのぉぉぉぉぉっ!!?
おちびちゃんがぶーるぶーるしちゃってるのがみえないのぉぉぉっ!?」
なにいってんのぉぉぉぉぉっ!!?
おちびちゃんがぶーるぶーるしちゃってるのがみえないのぉぉぉっ!?」
こっちは真剣にお願いしてやっているのに、茶化すような質問。
寒いのかだと?
寒いのかだと?
「私達は全然寒くないですよ?
ほら私のおちびちゃんなんて、ゆっくりスヤスヤしてますよ?」
ほら私のおちびちゃんなんて、ゆっくりスヤスヤしてますよ?」
「ゆ……い?」
見れば、人間の腕に抱かれながら確かに眠っているおちびがいた。
「な、なんでぇぇぇぇっ!?
こんなにさむいのにぃぃぃ!!」
こんなにさむいのにぃぃぃ!!」
「ずるいのじぇぇぇぇっ!!
まりしゃもゆっくりしたいのにぃぃぃ!!!」
まりしゃもゆっくりしたいのにぃぃぃ!!!」
寒い、誰がなんと言おう凍えるほど冷たい風が吹き付けているのだ。
寒いに決まっている。
だが、人間に抱えられるおちびがしあわせそうに眠っているのも事実だ。
寒いに決まっている。
だが、人間に抱えられるおちびがしあわせそうに眠っているのも事実だ。
「さあどうしてでしょう。
ともかく私達は寒くないので、あなた達の言ってることが解りません」
ともかく私達は寒くないので、あなた達の言ってることが解りません」
「ゆっぐぅぅ」
「やぢゃやぢゃぁああ!まりしゃもぬーくぬーくしたいぃぃぃ!!」
どういうことなんだ、寒くないはずがない。
あんな幼いゆっくりがれいむより我慢強い訳が無い。
――――そうだお飾りだ!
死んでしまった夫のまりさも気づいた、あの身体を覆うお飾り。
あれだ!
あんな幼いゆっくりがれいむより我慢強い訳が無い。
――――そうだお飾りだ!
死んでしまった夫のまりさも気づいた、あの身体を覆うお飾り。
あれだ!
「わかったよぉぉぉぉっ!!!
そのおかざりのおかげでさむくないんだよぉぉっ!!
れいむにはおみとおしだよぉぉぉぉぉっ!!!」
そのおかざりのおかげでさむくないんだよぉぉっ!!
れいむにはおみとおしだよぉぉぉぉぉっ!!!」
ビシッっとポーズを決め、もみあげで人間のおちびを指しながら宣言するれいむ。
「……ちょっとビックリしました。そこに気づくなんて。
まぁお飾りではなく服ですが。」
まぁお飾りではなく服ですが。」
人間が認めた!
れいむが勝ち誇る。
れいむが勝ち誇る。
「ゆっくりしたれいむはだまされないんだよぉぉっ!!」
「おかーしゃんすごぃぃのじぇぇぇっ!!」
母親の雰囲気がなんだかゆっくり出来そうだったので、便乗するまりしゃ。
それを見て更に調子に乗るのがゆっくりだ。
それを見て更に調子に乗るのがゆっくりだ。
「れいむたちだましたんだから、おわびにその“ふくさん”をちょうだいねっ!!!」
「ゆゆぅ!?まりしゃもらえるのじぇ!?
やったのじぇぇぇぇっ!!はやくするのじぇにんげんっ!!
これでさむいさむいはいなくなるのじぇぇぇっ!!」
やったのじぇぇぇぇっ!!はやくするのじぇにんげんっ!!
これでさむいさむいはいなくなるのじぇぇぇっ!!」
ゆっくりを欺いた罪は重い。これは彼女達にとっては常識だ。
「嫌です」
もちろんそんな理屈人間相手には通らない。
「はあっぁぁぁぁなんでぇぇぇぇ!?」
「なんでも何も、これは私のおちびちゃんのですので」
「やぢゃやぢゃやじゃあぁあぁぁあ!
まりしゃもうさむいさむいやじゃぁぁあぁっ!!
はやくあったかくなりたいのじぇぇぇぇっ!!!」
まりしゃもうさむいさむいやじゃぁぁあぁっ!!
はやくあったかくなりたいのじぇぇぇぇっ!!!」
このまりしゃの言うこともわからないでもない。
今急に寒くなったわけではない。
赤ゆっくりが死ぬような寒さの中、風に吹かれながら長時間耐えてきたのだ。
温もりを欲するのは当然だろう。
今急に寒くなったわけではない。
赤ゆっくりが死ぬような寒さの中、風に吹かれながら長時間耐えてきたのだ。
温もりを欲するのは当然だろう。
「ゆゆぅ!にんげ――」
「あなただって自分のおちびちゃんのお帽子あげたりしないですよね?
だから私だっておちびちゃんが着てるものあげるわけないじゃないですか」
だから私だっておちびちゃんが着てるものあげるわけないじゃないですか」
「ゆぐぅ……ぐぐぅぅぅ!!」
ゆっくりの身に着けているものへの執着心は異常だ。
自らの命と同一視しているといってもいい。
それゆえにれいむは、抗議することが出来なかった。
だが諦めきれない。おちびちゃんの悲痛な嘆きが聞こえているのだ。
自らの命と同一視しているといってもいい。
それゆえにれいむは、抗議することが出来なかった。
だが諦めきれない。おちびちゃんの悲痛な嘆きが聞こえているのだ。
「に、にんげんさんっ!!」
仕方ない、どうやらこの人間もゆっくりの偉大さが理解できないようだ。
こういうときは優れているコチラが折れてやるしかない。
れいむは寛大な心で、言い聞かせるように言った。
こういうときは優れているコチラが折れてやるしかない。
れいむは寛大な心で、言い聞かせるように言った。
「そのあったかい“ふくさん”をちょっとだけおちびちゃんにかしてあげてね?
おちびちゃんがぬーくぬーくして“しあわせー!”できたらちゃんとかえしてあげるからね?」
おちびちゃんがぬーくぬーくして“しあわせー!”できたらちゃんとかえしてあげるからね?」
最大の譲歩を丁寧に説明してやるれいむ。
お詫びとして差し出された物を返してやるというのだ。
これほどまでに寛大な処置ならさすがの人間も理解できるだろう。
お詫びとして差し出された物を返してやるというのだ。
これほどまでに寛大な処置ならさすがの人間も理解できるだろう。
「ブフっ!!」
それを聞いて今まで黙っていた饅殺男が吹き出した。
しかしれいむに貸してくれと頼まれた虐子は笑わない。
しかしれいむに貸してくれと頼まれた虐子は笑わない。
「嫌です」
ただ一言否定した。
「ゆゆぅっ!!
ど、どぼじでぇぇっ!?ちゃんと、ちゃんとかえすよぉぉっ!?」
ど、どぼじでぇぇっ!?ちゃんと、ちゃんとかえすよぉぉっ!?」
「信じられません」
「ゆぐぅぅぅぅぅ」
なんと断られてしまった。
焦るれいむ。
焦るれいむ。
「ほ、ほらおちびちゃんもちゃんときれいにつかうよね!?」
「ゆゆっ!?そうなのじぇぇぇ!!まりしゃだいじにするのじぇぇっ!
まりしゃのたからものにするよ!!」
まりしゃのたからものにするよ!!」
「ほら、にんげんさん!これならだいじょうぶだよねっ!?ねっ?」
自分の子供はまったく返す気が無いことを無視してれいむがせまる。
そもそもてーが着ている服は、サイズ的にまりしゃが着れる訳が無いが、気づかない。
そもそもてーが着ている服は、サイズ的にまりしゃが着れる訳が無いが、気づかない。
「嫌です」
「なんでぇぇぇぇぇっ!!
なにがきにくわないのぉぉっ!!」
なにがきにくわないのぉぉっ!!」
「ちょうだいよぉぉぉっ!!はやくぅぅ!!
やじぇぇぇえっ!ゆじぇぇぇええんっ!!」
やじぇぇぇえっ!ゆじぇぇぇええんっ!!」
身体をぶりゅんぶりゅん降って駄々をこねるまりしゃ。
そうやって涙で濡れた身体を地面に転がすから、さらに汚れる。
そうやって涙で濡れた身体を地面に転がすから、さらに汚れる。
「全部ですよ、全部嫌なんです。
そろそろいいですか?私達もおうちに帰らないといけないので」
そろそろいいですか?私達もおうちに帰らないといけないので」
さらに文句を言ってやろうとしていたが、れいむは思い出した。
おうち――そうだそもそもれいむ達の目的はおうちに帰ることだったんだ。
おうち――そうだそもそもれいむ達の目的はおうちに帰ることだったんだ。
「ま、まってね!れいむたちもおうちにかえりたいんだよっ!」
「まりしゃもぉぉっ!まりしゃもおうちかえるぅぅぅっ!!
もうあめしゃんやなのじぇぇぇっ!!!べっとしゃんですーやすーやしたいぃぃ!!」
もうあめしゃんやなのじぇぇぇっ!!!べっとしゃんですーやすーやしたいぃぃ!!」
「ええどうぞお帰りください」
そうだ、ついゆっくりできそうなお飾りに気をとられたがそんな場合じゃなかった。
「にんげんさんっ!れいむたちもおうちにつれってねっ!!
もうおちびちゃんもずっとずっとさむいさむいでがんばったんだよっ!!」
もうおちびちゃんもずっとずっとさむいさむいでがんばったんだよっ!!」
この際お飾りは諦めよう。れいむにとって最大限の譲歩だ。
だからさっさとれいむ達をおうちに連れて行ってくれ。
だが――――。
だからさっさとれいむ達をおうちに連れて行ってくれ。
だが――――。
「嫌ですよ」
すげなく断られた。
「はぁぁぁあああああああああ!?
なんでぇぇえぇっ!!?なにいってるのぉぉぉっ!?」
なんでぇぇえぇっ!!?なにいってるのぉぉぉっ!?」
「ゆじぇぇぇぇぇぇっんっ!!ゆじぇぇぇぇぇっんっ!」
おさげを振り乱し、泣き叫んでばかりのまりしゃも母親の怒りの声でさらに音量を上げる。
「れいむたちかえれないんだよぉぉぉぉっ!?
なんでわからないのぉぉぉぉぉっ!?」
なんでわからないのぉぉぉぉぉっ!?」
「理解りませんよ。帰れないのにどうして外に出たんですか?」
「そんなのあめさんがくるなんてわからないでしょぉぉぉっ!?」
「そうですか」
人間が頷いた。
「だったらそこで雨が止むまで待てばいいでしょう?」
「だからまってたらおちびちゃんがしんじゃったんだよぉぉっ!!
いまだってないてるでしょぉおぉぉっ!!
どうしてそこまでおばかさんなのぉぉぉっ!!」
いまだってないてるでしょぉおぉぉっ!!
どうしてそこまでおばかさんなのぉぉぉっ!!」
「知りませんよ」
れいむ達にもわかるほど風が強くなってきた。
「私からすれば雨が降っただけで死んでしまうのに、外に出たあなた達がおかしいんです」
「おちびちゃんがおさんぽしたかったんだよぉっ!?
しかたないでしょぉぉっ!?」
しかたないでしょぉぉっ!?」
ゆっくり出来るおちびちゃんのお願いは何よりも優先される。
そんなことも分からないのかこの人間は。
そんなことも分からないのかこの人間は。
「その結果おちびちゃんと夫が死んでしまったようですけど」
「それはぁぁぁっ!!おまえたちがたすけないからぁぁっ!!」
「助けるわけないじゃないですか。
あなた達野良ですよ」
あなた達野良ですよ」
「はぁぁぁぁぁっ!?」
れいむには意味が分からない。
どうしてそうなるのだ。
れいむ達が――ゆっくりがこんなところで死んでいいわけないじゃないか。
どうしてそうなるのだ。
れいむ達が――ゆっくりがこんなところで死んでいいわけないじゃないか。
「だじぇぇぇぇんっ!!ゆっぴぃぃぃぃ!!」
まりしゃも泣き声を更に強くする。
今までは自分が泣けば、すぐ両親がチヤホヤしてくれた。
今までは自分が泣けば、すぐ両親がチヤホヤしてくれた。
『どうしたの?かわいいおちびちゃん。なにをしてほしい?なんでもしてあげるよ?』
だが今はこれだけ泣いているのに何一つ自分の願いは叶わない。
ありえない、こんなのは間違っている。
ありえない、こんなのは間違っている。
「やじゃぁぁぁぁぁゆじゃぁぁぁっ!!」
「うぅぐぐぅぅぅぅ!!にんげんっっ!!
おぢびぢゃんがないでるだろぉぉっ!!!」
おぢびぢゃんがないでるだろぉぉっ!!!」
何も出来ない悔しさと、おちびの悲しむ姿を見せられ、自身も涙声で叫ぶ。
「そうですね。
どうしたんです?あやしてあげないんですか?」
どうしたんです?あやしてあげないんですか?」
「ゆがぁぁぁぁっ!!!!」
笑った、ここで人間が始めて笑顔見せた。
だが到底ゆっくり出来るような優しい笑みではない。
鈍いゆっくりでも、本当に助けてくれる気がないことを理解した。
だが到底ゆっくり出来るような優しい笑みではない。
鈍いゆっくりでも、本当に助けてくれる気がないことを理解した。
「ふんっ!もういいよっ!!もうたのまないよ!!
あとでみんなにばばぁはゆっくりできないっていっとくよ!
そっちのおちびちゃんもだからねっ!!!」
あとでみんなにばばぁはゆっくりできないっていっとくよ!
そっちのおちびちゃんもだからねっ!!!」
「ゆじぇぇぇえんっ!だじぇぇぇぇんっ!!」
言いながらチラチラと虐子を見るれいむ。
考え直すことを期待しているのだ。
考え直すことを期待しているのだ。
「はい、そうしてください」
「ほ、ほんとにいうよっ!?
に、にんげんにもいうからねっ!!」
に、にんげんにもいうからねっ!!」
「さようなら」
そういうと、じじぃと何かを話し本当に背を向け始めた。
もういい、こんなゲス人間じゃなくてもっとゆっくりした人間が――――。
あれ……そもそも自分達はどうしてこんなに寒いのを長時間耐えていたんだっけ?
もういい、こんなゲス人間じゃなくてもっとゆっくりした人間が――――。
あれ……そもそも自分達はどうしてこんなに寒いのを長時間耐えていたんだっけ?
「ゆ……?ゆぅーん」
れいむ達だけじゃどうしようもないから、人間の力を借りてやろうとして。
そうだ!それなのに人間が全然通らなかったんだ。
やっと通ったと思ったら、れいむ達を無視する。
それでれいむの話しを聞いてくれた初めての人間が今帰ろうとしているコイツらで――――。
そうだ!それなのに人間が全然通らなかったんだ。
やっと通ったと思ったら、れいむ達を無視する。
それでれいむの話しを聞いてくれた初めての人間が今帰ろうとしているコイツらで――――。
「ま、まってぇぇぇぇぇえっ!!まってくださぃぃぃぃ!!!!」
さすがの餡子脳でもこの人間達をこのまま帰らせてはまずい事に気づいた。
先ほどとは比べ物にならないほど大きな声で叫んだ。
人間が戻ってきた。
先ほどとは比べ物にならないほど大きな声で叫んだ。
人間が戻ってきた。
「まだ何かあるんですか……?」
「ごめんなさいぃぃ!!れいむがまちがってましたぁぁぁっ!!」
「はぁ、そうですか」
「ゆぁぁぁんっ!ゆあぁあああんぅぅ!!
やんやぁぁっ!!!」
やんやぁぁっ!!!」
れいむが謝罪する。
まりしゃの方は飽きもせずまだ転げまわって涙を撒き散らしている。
まるでそれが唯一の解決策のように。
まりしゃの方は飽きもせずまだ転げまわって涙を撒き散らしている。
まるでそれが唯一の解決策のように。
「すいませんでしたっ!!
れいむがなまいきでしたぁぁっ!!
おねがいですからおうちかえらせてくださいぃぃぃ!!」
れいむがなまいきでしたぁぁっ!!
おねがいですからおうちかえらせてくださいぃぃぃ!!」
もうなりふり構っていられなかった。
身体全体を振っての渾身のお願いだ、口だけのそれとはわけが違う。
だというのに。
身体全体を振っての渾身のお願いだ、口だけのそれとはわけが違う。
だというのに。
「嫌です」
「なんでぇなのぉぉっ!?
こんなにれいむがおねがいしてるでしょぉぉっ!?
やだぁぁぁっ!!もうやだぁぁぁあぁぁ!!!」
こんなにれいむがおねがいしてるでしょぉぉっ!?
やだぁぁぁっ!!もうやだぁぁぁあぁぁ!!!」
ついにれいむまであまりの理不尽に耐え切れず、まりしゃの様に駄々をこねだした。
赤ゆっくりと比べて数倍大きいため、見苦しさもひとしおだ。
チラリと時計を見た後、虐子が質問した。
赤ゆっくりと比べて数倍大きいため、見苦しさもひとしおだ。
チラリと時計を見た後、虐子が質問した。
「そもそもなんで私達が助けてくれると思ったんですか?」
「ゆっくりをたすけるのはあたりまえでしょぉぉぉっ!?
すべてのいきもののぎむでしょぉぉぉぉっ!?」
すべてのいきもののぎむでしょぉぉぉぉっ!?」
いきなり何を言い出すのかこの人間は。
ゆっくりを他の生物が尊重しなきゃいけないのは、おちびちゃんだって知ってることなのに。
ゆっくりを他の生物が尊重しなきゃいけないのは、おちびちゃんだって知ってることなのに。
「そんなわけないでしょう。
それならもっと早くあなた達はおうちに帰れたんじゃないですか?」
それならもっと早くあなた達はおうちに帰れたんじゃないですか?」
「そ、それは、ゆぅぅ、に、にんげんがげすだからでしょぉぉぉっ!?」
「じゃあ、そこの草は助けてくれましたか?地面はあなたをおうちまで運んでくれますか?
石はあなたにむーしゃむーしゃさせてくれます?
雨はあなた達に当たらないように気をつけて降ってくれましたか?」
石はあなたにむーしゃむーしゃさせてくれます?
雨はあなた達に当たらないように気をつけて降ってくれましたか?」
「ゆぐぅぅぅ……ゆうぅぅぅっ!!」
悔しいが言うとおりだ。れいむの家族が死に瀕しているのに、誰も助けてくれなかった。
「わかってくれました?みんながゆっくりを尊重するなんていうのは勘違いなんです」
「ぐぅぅうううううっ!そんなわけ、そんなわけないぃぃっ!!」
「じゃあどうしてあなた達はこんなにゆっくり出来てないんですか?」
「そ、それはぁぁっ、ゆぎぎぎぎぃぃ」
れいむの歯軋りの音が雨音とぶつかる。
悔しかった。
れいむの、いやゆっくりの常識を否定されていることが。
信じられるわけがない、そんなことがあってたまるか。
悔しかった。
れいむの、いやゆっくりの常識を否定されていることが。
信じられるわけがない、そんなことがあってたまるか。
「ゆぁぁぁっ!!
くささんっ!!れいむたちをたすけてねっ!!
おちびちゃんがさむいさむいだよっ!!ふとんさんをちょうだいねぇぇっ!!」
くささんっ!!れいむたちをたすけてねっ!!
おちびちゃんがさむいさむいだよっ!!ふとんさんをちょうだいねぇぇっ!!」
全力で周りの雑草に向かって叫ぶれいむ。
しかし、いくら待っても返ってくるのは雨音だけ。
しかし、いくら待っても返ってくるのは雨音だけ。
「おかーしゃん……?」
体液を撒き散らしていたまりしゃも、母親の行動に驚き泣くのをやめた。
「おちびちゃんもいっしょにおねがいしようねっ!!
げすにんげんはあたまがわるすぎるからねっ!
れいむたちのおねがいをきかないんだよっ!」
げすにんげんはあたまがわるすぎるからねっ!
れいむたちのおねがいをきかないんだよっ!」
「ゆゆっ!?」
キッっとするどく虐子をにらむまりしゃ。
「そうだったのじぇぇっ!!まっちゃくおろかなのじぇっ!
まりしゃしゃまがせっかくめいれいちてやってるのに。
わかったのじぇっ!まりしゃもおねがいしゅるよっ!」
まりしゃしゃまがせっかくめいれいちてやってるのに。
わかったのじぇっ!まりしゃもおねがいしゅるよっ!」
「さすがはれいむのおちびちゃんだねっ!!」
草はれいむ達に反応しなかったが、もとより草は自分達にむーしゃむーしゃされる存在だ。
こいつらの助けはほとんど期待していない。
こいつらの助けはほとんど期待していない。
「じめんさんっ!!おみずさんをさよならしてねっ!!
れいむたちおうちにかえりたいんだよっ!!
いつもみたいにぴょんぴょんさせてねっ!!」
れいむたちおうちにかえりたいんだよっ!!
いつもみたいにぴょんぴょんさせてねっ!!」
だから地面にお願いした。
いつもはれいむ達がその上をぴょんぴょん跳ねている。
だが今は水があって通れない、だから水をどけてくれ。
いつもはれいむ達がその上をぴょんぴょん跳ねている。
だが今は水があって通れない、だから水をどけてくれ。
「まりしゃもかえりたいのじぇ、ゆっくりこーろこーろしてあげるのじぇ?」
おちびちゃんもお尻をフリフリ、可愛らしくお願いする。
「ねっ?じめんさん、わかるよね?
……ゆぅ?まだおみずさんあるよ?
はやくどっかにやってねっ!すぐでいいよ!」
……ゆぅ?まだおみずさんあるよ?
はやくどっかにやってねっ!すぐでいいよ!」
れいむの頭の中では、まさに映画『十戒』のワンシーンのように、
地面の水分が左右に別れていき一本の道が出来ることを想像していた。
地面の水分が左右に別れていき一本の道が出来ることを想像していた。
「ゆゆぅ?どうしたの?はやくしてねっ?
あんまりおそいとれいむおこるよ!?」
あんまりおそいとれいむおこるよ!?」
「まりしゃをおこらすとゆっくりできないのじぇ!
まりしゃのぷくーはありさんもこわがらせたことがあるのじぇっ!」
まりしゃのぷくーはありさんもこわがらせたことがあるのじぇっ!」
ゆゆーんと胸を張るまりしゃ。
しかし残念ながら身体を膨らませようが、ゆっくりという種の偉大さを地面に語ろうが、
瞬時に雨水が乾くことなどありえない。
しかし残念ながら身体を膨らませようが、ゆっくりという種の偉大さを地面に語ろうが、
瞬時に雨水が乾くことなどありえない。
「ゆぅぅっ!!きいてるのっ!!いいかげんにしてねっ!!
おうちかえりたいっていってるでしょぉっ!?
れいむはしんぐるまざーなんだよっ!?わからないのっ!?」
おうちかえりたいっていってるでしょぉっ!?
れいむはしんぐるまざーなんだよっ!?わからないのっ!?」
ついに怒り出した。
だが変わったことといえば、風が強まったことだろうか。
屋根があるとはいえ、壁のない野外の簡素な休憩所にも雨が届き始める。
だが変わったことといえば、風が強まったことだろうか。
屋根があるとはいえ、壁のない野外の簡素な休憩所にも雨が届き始める。
「あああっ!もうっ!いいよっ!わかったよっ!
じめんさんはゆっくりできないよっ!!
もうにどといっしょにゆっくりしてあげないよっ!!」
じめんさんはゆっくりできないよっ!!
もうにどといっしょにゆっくりしてあげないよっ!!」
「ふふん!まりしゃもにどとぴょんぴょんしてあげにゃいのじぇっ!?
ゆふふ、あやまってもおそいじぇ?しぇいじぇいこうかいするといいじぇ!」
ゆふふ、あやまってもおそいじぇ?しぇいじぇいこうかいするといいじぇ!」
まだ他にもれいむの奴隷たるものは“たくさん”いるのだ。
こんな地面なんかにいつまでも固執する必要はない。
こんな地面なんかにいつまでも固執する必要はない。
「かぜさんっ!あったかくなってねっ!!
いっぱいぽーかぽーかしてねっ!たくさんだよっ!」
いっぱいぽーかぽーかしてねっ!たくさんだよっ!」
「ゆゆっ!そうなのじぇ!さっきからさむすぎるのじぇっ!
まりしゃもっとあったかいほうがゆっくりできるのじぇっ!」
まりしゃもっとあったかいほうがゆっくりできるのじぇっ!」
ヒューという小さな風音に合わせて命令するれいむとまりしゃ。
雑草、地面、風と命令を重ねるごとに態度もでかくなっていく。
雑草、地面、風と命令を重ねるごとに態度もでかくなっていく。
「ちょっときいてるのぉぉっ!?
さむいっていってるでしょぉぉっ!?
ぬーくぬーくのかぜさんとこうたいしろぉぉっ!!」
さむいっていってるでしょぉぉっ!?
ぬーくぬーくのかぜさんとこうたいしろぉぉっ!!」
「ゆひぃぃぃしゃむいぃぃぃっ!!
にゃにしちぇるにょぉぉっ!!
さむいかぜしゃんはさっさとどっかいけぇぇえっ!!」
にゃにしちぇるにょぉぉっ!!
さむいかぜしゃんはさっさとどっかいけぇぇえっ!!」
人間ですら完全に支配することなど出来ない自然に、ゆっくりが適うはずもない。
ましてや従えることなど不可能だ。
ましてや従えることなど不可能だ。
「くっそうっ!くっそぅぅっ!!
おいっ!あめぇっ!!いつまでふってるきだぁぁぁっ!!
ゆっくりしすぎでしょぉぉっ!はやくきえろぉぉ!!」
おいっ!あめぇっ!!いつまでふってるきだぁぁぁっ!!
ゆっくりしすぎでしょぉぉっ!はやくきえろぉぉ!!」
「まりしゃのぷれいしゅにはいってくりゅなぁぁっ!!
ぷくぅぅぅぅぅっっ!!!
――――ゆぴぅ!ちゅめたい!
やめりゅのじぇっ!まりしゃにしゃわりゅなぁっ!
ゆやぁあぁっ!!おかーしゃあああんっ!!」
ぷくぅぅぅぅぅっっ!!!
――――ゆぴぅ!ちゅめたい!
やめりゅのじぇっ!まりしゃにしゃわりゅなぁっ!
ゆやぁあぁっ!!おかーしゃあああんっ!!」
とうとう雨が風に運ばれてまりしゃに触れた。
たった一滴の雨粒の冷たさに屈服するまりしゃ。
たった一滴の雨粒の冷たさに屈服するまりしゃ。
「おちびちゃんにさわるなげすぅぅ!!
くそあめぇぇっ!!どっかいけえぇぇっ!!」
くそあめぇぇっ!!どっかいけえぇぇっ!!」
怒鳴り声を上げながら身体を膨らませる、さらにもみあげを振り乱す。
おおよそれいむに考えられる威嚇行為を全て試すが、効果が得られない。
おおよそれいむに考えられる威嚇行為を全て試すが、効果が得られない。
「れいむおこってるんだよぉぉっ!?わからないのぉぉっ!!
ゆぴっ!あああああああっ!?
れいむにもこうげしたなぁぁぁ!?
せいさいするよぉぉおっ!!」
ゆぴっ!あああああああっ!?
れいむにもこうげしたなぁぁぁ!?
せいさいするよぉぉおっ!!」
制裁といいながらその汚い身体をテーブル下の中央へと避難させるれいむ。
いくら言っても雨は逃げない。
れいむは悔しさから砂糖水の涙を流す。
いくら言っても雨は逃げない。
れいむは悔しさから砂糖水の涙を流す。
「ゆがぁぁぁ!どぼじでぇぇぇ!!
なんでっ!なんでれいむたちのいうこときかないんだぁぁっ!!」
なんでっ!なんでれいむたちのいうこときかないんだぁぁっ!!」
「ゆじぇぁぁぁっ!もうやぢゃぁぁぁやぢゃぁあぁ!!
あめしゃんきらいぃぃ!!かぜしゃんゆっくりちてないのじぇぇぇっ!」
あめしゃんきらいぃぃ!!かぜしゃんゆっくりちてないのじぇぇぇっ!」
ボスンボスンとその場で跳ね怒りをあらわにするれいむを見て、
まりしゃも自分達の要求が何一つ叶わなかったのを悟ったらしい。
まりしゃも自分達の要求が何一つ叶わなかったのを悟ったらしい。
「ゆがっぁぁぁっ!くそぉぉぉおっ!!」
だれもれいむ達に従うものがいない。
奴隷にならない、れいむ達を助けない。寒い、お腹すいた、おちびちゃんが泣いている。
どうしよう、他に、他に何か、誰か、頼れる存在は。
こんなゲスどもとは違う、もっとゆっくりしたなにかはいないか――――。
――――そうだっ!
奴隷にならない、れいむ達を助けない。寒い、お腹すいた、おちびちゃんが泣いている。
どうしよう、他に、他に何か、誰か、頼れる存在は。
こんなゲスどもとは違う、もっとゆっくりしたなにかはいないか――――。
――――そうだっ!
「たいようさぁぁんっ!!たすけてぇぇぇぇっ!!!
おねがいですぅぅ!!れいむたちをみんながいじめるんですぅぅ!!
たすけてくださいぃぃ!!でてきてぇぇぇっ!!!」
おねがいですぅぅ!!れいむたちをみんながいじめるんですぅぅ!!
たすけてくださいぃぃ!!でてきてぇぇぇっ!!!」
そして最後の最後、正真正銘頼みの綱とされたのが太陽だった。
いつもれいむ達ゆっくりを照らしていた太陽、それが今はいない。
れみりゃ達からも守ってくれているし、お外も明るくしてくれている。
まさにゆっくり達のために存在する守護神。
いつもれいむ達ゆっくりを照らしていた太陽、それが今はいない。
れみりゃ達からも守ってくれているし、お外も明るくしてくれている。
まさにゆっくり達のために存在する守護神。
「たいようしゃあぁぁん!まりしゃもうしゃむいのやなのじぇぇぇっ!!
でてきちぇようぅ!はやくぅぅ!!たいようしゃぁぁん!!」
でてきちぇようぅ!はやくぅぅ!!たいようしゃぁぁん!!」
寒さを訴えるだけだったまりしゃも矛先を太陽に向ける。
幼いまりしゃでも知っている。
眩しく輝く自分達を守る暖かな存在を。
幼いまりしゃでも知っている。
眩しく輝く自分達を守る暖かな存在を。
「おねがいですぅぅ!こいつらをせいさいしてくださぃぃっ!!!
げすあめなんかにまけないでぇぇぇ!!がんばってぇぇ!!!
れいむおうえんするよぉぉっ!!たいようさあぁぁぁあんっ!!」
げすあめなんかにまけないでぇぇぇ!!がんばってぇぇ!!!
れいむおうえんするよぉぉっ!!たいようさあぁぁぁあんっ!!」
そうだ、いつだって太陽がいれば雨はいなかった。
つまり太陽さえ来てくれればこの状況から解放される、助かるのだ。
だかられいむの懇願にも熱が入る。
つまり太陽さえ来てくれればこの状況から解放される、助かるのだ。
だかられいむの懇願にも熱が入る。
「たいようさあぁぁんっ!れいむたちはここにいますぅぅ!!
ここだよぉぉっ!!みてぇぇぇっ!!みてねぇぇぇっ!!
いまとってもさむいですぅぅ!!はやくたすけてくださいぃぃ!!」
ここだよぉぉっ!!みてぇぇぇっ!!みてねぇぇぇっ!!
いまとってもさむいですぅぅ!!はやくたすけてくださいぃぃ!!」
当然ゆっくりに天候を操る力などないし、気が遠くなるほどの太陽までの距離を声が渡りきることはない。
だがそれがゆっくりには分からない。
だがそれがゆっくりには分からない。
「おねがいなのじぇぇぇっ!!はやくぅぅ!!はやくきちぇよぉぉぉっ!!
ゆっくっ……たいようしゃぁんっ!!ゆっくぅっ!!」
ゆっくっ……たいようしゃぁんっ!!ゆっくぅっ!!」
「もうれいむたちにはたいようさんしかいないんですぅぅ!!
おねがいですっ!!たいようさぁぁぁぁんっ!!」
おねがいですっ!!たいようさぁぁぁぁんっ!!」
そのために諦めきれずに声を出し続ける、頭を下げ続ける。
「だいようざぁん……どうじでぇっ……。
ゆっぐっ、ゆひっぐっ……だいようざんぅ」
ゆっぐっ、ゆひっぐっ……だいようざんぅ」
「ゆぴぇぇぇぇんっ!ゆじぇぇぇぇんっ!」
先に声に限界が来た。
叫びすぎておくちの中が痛い――――それなのに太陽が出ることはなかった。
叫びすぎておくちの中が痛い――――それなのに太陽が出ることはなかった。
「だいようざぁんぅ……ゆえぇっ、ゆえぇぇぇ……」
「気が済みましたか?」
雨雲に覆われた空を見ながら、恨みがましくつぶやくれいむに声を掛ける虐子。
手には饅殺男が買ってきたホットコーヒーが握られている。
濡れていないベンチにすわりながら、ゆっくり達の晴れ乞いを眺めていた。
手には饅殺男が買ってきたホットコーヒーが握られている。
濡れていないベンチにすわりながら、ゆっくり達の晴れ乞いを眺めていた。
「ゆっぐ、ゆゆっぐぅぇぇぇん」
「ゆっじぇぇぇ……ゆひぇぇぇん」
涙でベトベトになった身体を虐子の方へ向ける二匹。
「さすがにもう分かったでしょう?
あなた達は嫌われているんです」
あなた達は嫌われているんです」
「ゆあぁああああああああああああんっっ!!」
嫌われている。
その決定的な一言を聞いて、れいむが泣き崩れた。
ゆっくりは世界に愛されている。
そう信じていたのに。
その決定的な一言を聞いて、れいむが泣き崩れた。
ゆっくりは世界に愛されている。
そう信じていたのに。
「ゆっぐぅ、ひっくっ……」
「ゆじぇぇ……ゆええぇぇん」
急に孤独感が押し寄せてきた。味方がいない。
れいむ達を助けてくれる存在がいない、お話すらしてくれない。
だからもうお願いできる存在は――――。
れいむ達を助けてくれる存在がいない、お話すらしてくれない。
だからもうお願いできる存在は――――。
「ゆっすん、ゆっぐぅ……に、にんげんさぁん」
「嫌です」
「っ!ゆあああああんっ!!」
何で、どうしてこんなことになってしまったんだ。
世界はゆっくり中心で回っているはずなのに。
自分の子供の泣き声をBGMに、光を失ったれいむの瞳が虐子を見て、それから抱かれているてーを見つけた。
世界はゆっくり中心で回っているはずなのに。
自分の子供の泣き声をBGMに、光を失ったれいむの瞳が虐子を見て、それから抱かれているてーを見つけた。
「そうだよ……。
にんげんさんがゆっくりをきらいなら、そのおちびちゃんはなんなの……?
そのこもいじめるの……?」
にんげんさんがゆっくりをきらいなら、そのおちびちゃんはなんなの……?
そのこもいじめるの……?」
「おかしなこと言わないでください。
そんなこと絶対にしません」
そんなこと絶対にしません」
「なんでぇ…?なんでなのぉ……?
おなじゆっくりでしょぉ……?」
おなじゆっくりでしょぉ……?」
「全然違いますよ」
「ゆっくぅぅぅぅっ!」
まただ、また理解できない。
違うだって?どう見てもそのおちびちゃんはゆっくりじゃないか。
“どうつきさん”だろうがなんだろうが、れいむ達と同じゆっくりなのは一目見れば分かるのに。
違うだって?どう見てもそのおちびちゃんはゆっくりじゃないか。
“どうつきさん”だろうがなんだろうが、れいむ達と同じゆっくりなのは一目見れば分かるのに。
「この子は飼いゆっくりです。人間といつも一緒にいるんですよ。
だから人間にゆっくりさせてもらえるんです」
だから人間にゆっくりさせてもらえるんです」
「かいゆっくり、にんげんと……いっしょに……」
れいむもかいゆっくりを見たことがあったが、話したことはないし、詳しく知らなかった。
ただ夫のまりさが『あいつらはにんげんにこびをうっているみじめなゆっくり』と言っていたため、
れいむ自身も見下し、深く関わろうとしなかった。
ただ夫のまりさが『あいつらはにんげんにこびをうっているみじめなゆっくり』と言っていたため、
れいむ自身も見下し、深く関わろうとしなかった。
「あめさんでもへいきなのは、にんげんがいっしょだから……?」
「ええそうです。こうやって傘で守ってますし、さっきあなた達が欲しがったコートも私が用意しました」
「にんげんといっしょ……それだけで……」
結局事実は違ったらしい。
雨の中“すーやすーや”出来るのがどれほど恵まれているのか。
寒い中“ぬーくぬーく”出来るお飾りはどれほどの“しあわせー!”を与えてくれるだろうか。
ゆっくりであることは同じなのに、その違いが、人間と、人間なんかと一緒にいるかどうかなんて。
――――そんなの許せるわけがない!
雨の中“すーやすーや”出来るのがどれほど恵まれているのか。
寒い中“ぬーくぬーく”出来るお飾りはどれほどの“しあわせー!”を与えてくれるだろうか。
ゆっくりであることは同じなのに、その違いが、人間と、人間なんかと一緒にいるかどうかなんて。
――――そんなの許せるわけがない!
「ふざけるなぁぁぁぁあっ!!!なにさまのつもりなのぉぉぉっ!!
ゆっくりをっ!!ゆっくりをさべつするなんてぇぇ!!!
れいむたちもびょうどうにゆっくりさせるべきだろぉぉぉっ!!!
ゆがぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ゆっくりをっ!!ゆっくりをさべつするなんてぇぇ!!!
れいむたちもびょうどうにゆっくりさせるべきだろぉぉぉっ!!!
ゆがぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
痛む喉が自然に声を吐き出した。
人間と一緒にいるからゆっくり出来ているなんて。そんなの認められるか。
人間と一緒にいるからゆっくり出来ているなんて。そんなの認められるか。
「ん……まみぃ?」
れいむの怒りがやっと伝わったのか、人間が抱くおちびが目を覚ました。
すると目の前の人間がいきなり別人に変わった。
本当にれいむはそう思った。
すると目の前の人間がいきなり別人に変わった。
本当にれいむはそう思った。
「あらら。てーちゃん、起こしちゃったかな?ごめんねー」
「うぁー?まみぃ、ん~」
思わず怒りも忘れ、呆然とするれいむ。
目の前の人間の豹変っぷりはなんだ?
顔をちびに近づけ、機嫌を伺っているように見える。
目の前の人間の豹変っぷりはなんだ?
顔をちびに近づけ、機嫌を伺っているように見える。
「うるさかったよね、ごめんね。寒くない?大丈夫?」
「んーん、だいじょぶ!まだおそと?」
「そうだよー、もうちょっと寝ててもいいよー?」
まずれいむ達と会話していた時とは声が違う。
声色、調子、話すスピード、何もかもが違っている。
そして何より笑顔だ。
とてもいままでれいむ達に暴言を吐いていたとは思えない。
声色、調子、話すスピード、何もかもが違っている。
そして何より笑顔だ。
とてもいままでれいむ達に暴言を吐いていたとは思えない。
「お、おいにんげん……?」
本当にさっきまで話していた人間なのか?
「なんです?まだ何か?」
どうやら本物らしい、れいむを見る冷たい目と声と態度は先ほどと変わらない。
「えっと……」
あまりの驚きでれいむは自分が何を言おうとしていたか忘れてしまった。
それほど信じられない光景だった。
それほど信じられない光景だった。
「てーちゃんほらコレ。ちょっと熱いからゆっくり飲んでね」
「やったぁ!ありがと!まみぃ!」
虐子がミルクセーキの缶を開け、てーに渡す。
缶からは、甘い、とても甘ったるい臭いが漂っている。
それを敏感に感じ取ってしまうのがゆっくりである。
缶からは、甘い、とても甘ったるい臭いが漂っている。
それを敏感に感じ取ってしまうのがゆっくりである。
「あまあましゃんだぁぁぁぁぁっ!!それあまあましゃんでしょぉっ!
ぜったいしょうなんだじぇぇっ!!まりしゃも!
まりしゃものむよっ!!はやくちょうだいねっ!!!」
ぜったいしょうなんだじぇぇっ!!まりしゃも!
まりしゃものむよっ!!はやくちょうだいねっ!!!」
「お、おちびちゃん。――――にんげんっ!!」
まりしゃの様子にれいむが戸惑う。
れいむは分かっている、人間がおちびちゃんの分を用意する訳がない。
この人間がゲスなのは嫌と言うほど知った。
れいむは分かっている、人間がおちびちゃんの分を用意する訳がない。
この人間がゲスなのは嫌と言うほど知った。
「んっく、んっく。……まみぃものむ?あったかいよ!」
「ありがとー、でもマミィもちゃんとコーヒーあるから平気だよー」
『缶コーヒーのDOSS』のCMで有名なコーヒーを見せながら答える虐子。
「こうたい!こうたいなのじぇ!つぎまりしゃがごくごくするばんだじぇぇっ!!」
ピョンピョンと出来るだけ高く飛び、必死に呼びかけるまりしゃ。
だが両親から言われていることを守りてーは答えない。
幸せな飲み物を、母親に抱かれながらゆっくりと味わっている。
だが両親から言われていることを守りてーは答えない。
幸せな飲み物を、母親に抱かれながらゆっくりと味わっている。
「そんなにのんだらまりしゃのぶんがなくなっちゃうでしょぉぉっ!!
はやくまりしゃにわたしてよぉぉっ!!」
はやくまりしゃにわたしてよぉぉっ!!」
てーが缶に口をつけるたびにまりしゃが悲鳴を上げる。
さすがにれいむも黙っていられない。
それにこの幼いゆっくりなら従わせることが出来るだろう。
さすがにれいむも黙っていられない。
それにこの幼いゆっくりなら従わせることが出来るだろう。
「おいそこのげすちびぃっ!!!
さっさとれいむのおちびちゃんに――ゆぶぅっ!!」
さっさとれいむのおちびちゃんに――ゆぶぅっ!!」
「さすがにてーちゃんを脅迫するのは許しませんよ」
「まみぃかっこいー!」
後ろに三回転したところで虐子に蹴られたれいむがやっと止まる。
「いだぁぁぁあぁっ!いぃぃ!おかおいだぃぃぃ!!」
「おがーしゃあぁんっ!!ごわぃぃぃぃじぇぇぇ!!」
髪を振り乱してれいむが痛みを訴える。
「他の子の物を取ろうとするなんて野良は悪いやつだねー」
「うん、わるいやつ!あっ、だでぃーこっちきてっ!」
てーを地面に降ろし、虐子が泣き叫ぶ母子に近づいていく。
「なんでけったのぉぉっ!!にんげんにはなにもしでないでじょぉぉっ!!」
ぐちゃぐちゃになった顔でれいむが怒鳴る。
「まりしゃの“じゅーすさん”かえせぇぇっ!!
まりしゃものみたいっていったのじぇぇぇぇえっ!!!」
まりしゃものみたいっていったのじぇぇぇぇえっ!!!」
まりしゃの方はまだてーの持つ缶を見つめながら、自分に渡すように言っている。
「あの子は私の飼いゆっくりだといってませんでしたか?」
「ゆっぐぅぅぅ……」
そんなことは完全にれいむの頭から抜けていた。
そして笑うてーを見るれいむ。
ほんとになんなんだアイツは。
こんなに寒いのに笑っている、れいむ達がこんなにも困っているのに無視する。
それなのに、そんなゲスちびのくせにゆっくりしているなんて。
そして笑うてーを見るれいむ。
ほんとになんなんだアイツは。
こんなに寒いのに笑っている、れいむ達がこんなにも困っているのに無視する。
それなのに、そんなゲスちびのくせにゆっくりしているなんて。
「ゆぐぐぐぅぅ……」
悔しさがどんどんれいむの中で大きくなる。
人間なんかと一緒にいるゆっくりなんかが、れいむ達より幸せだなんて許せるわけがない。
認めない、絶対れいむ達のほうがゆっくりしているはずだ。
人間なんかと一緒にいるゆっくりなんかが、れいむ達より幸せだなんて許せるわけがない。
認めない、絶対れいむ達のほうがゆっくりしているはずだ。
「ゆぐぐぅぅぅ、アイツよりぃ、れいむのおちびちゃんのがゆっくりしてるよぉっ!!」
「ゆじぇぇっ!?おかーしゃんぅ?まりしゃはゆっくりしてるのじぇっ!」
「別に否定しませんよ、どうでもいいです。
ねぇー、てーちゃん」
ねぇー、てーちゃん」
「んー?」
振り返るてーはどうもよくわかっていないようだ。
「にんげんがひきょうなてで、そのおちびにあまあまをあげてるのはわかったよ!」
「あまあまっ!!そうなのじぇぇぇ!まりしゃのとったぁぁっ!!
あのこばっかりずるいぃぃぃっっ!!」
あのこばっかりずるいぃぃぃっっ!!」
「まってねおちびちゃんっ!!」
「ゆじぇぇ……?」
悔しいが確かに人間と一緒にいれば、れいむ達よりあまあまを食べることが出来るだろう。
だが人間である以上、絶対にれいむ達に勝てないものがある。
必ず悔しがらせてやる!
だが人間である以上、絶対にれいむ達に勝てないものがある。
必ず悔しがらせてやる!
「そのおちびはたしかにあまあまさんたべてるけど、おかーさんとすーりすーりできないんだよぉぉっ!」
「ゆゆぅぅ!!そうなのじぇぇぇっっ!!??
――――ゆっぴゅっぴゅっ!!!あわれなのじぇぇぇっ!!
おかーしゃんとすーりすーりできないなんて!」
――――ゆっぴゅっぴゅっ!!!あわれなのじぇぇぇっ!!
おかーしゃんとすーりすーりできないなんて!」
れいむはニヤリと笑う。
人間はずっと一緒にいると言った。
れいむは飼いゆっくりを何度か見たことがあるが、常に一匹だけだった。
つまり飼いゆっくりは家族と離されて、人間と暮らしているのだ!
なんというゆっくりした天才的な推理力だろうか!
人間はずっと一緒にいると言った。
れいむは飼いゆっくりを何度か見たことがあるが、常に一匹だけだった。
つまり飼いゆっくりは家族と離されて、人間と暮らしているのだ!
なんというゆっくりした天才的な推理力だろうか!
「そうだよおちびちゃんっ!!
このちびはおかーさんといっしょにくらせないんだよぉ!!」
このちびはおかーさんといっしょにくらせないんだよぉ!!」
れいむがニヤニヤと笑いながら、てーと虐子を交互に見る。
いくら人間と一緒にいるといっても、あんな幼いゆっくりが両親と会えないのはかなりの苦痛だろう。
いくら人間と一緒にいるといっても、あんな幼いゆっくりが両親と会えないのはかなりの苦痛だろう。
「ゆぷふぅっ!!
もしかしてぺーろぺーろもしてもらったことないのじぇ?
あわれしゅぎるのじぇぇっ!!ゆっじぇっじぇっ!!
おかーしゃんがいないなんてゆっくりしてないのじぇっ!!」
もしかしてぺーろぺーろもしてもらったことないのじぇ?
あわれしゅぎるのじぇぇっ!!ゆっじぇっじぇっ!!
おかーしゃんがいないなんてゆっくりしてないのじぇっ!!」
まりしゃも大いに自慢する。
なぜなら、自分より不幸なゆっくりを馬鹿にする行為は最高にゆっくり出来るから。
優越感、それはゆっくりにとってそのまま幸福感となる。
なぜなら、自分より不幸なゆっくりを馬鹿にする行為は最高にゆっくり出来るから。
優越感、それはゆっくりにとってそのまま幸福感となる。
「そうだよおちびちゃんっ!
あのちびはあわれなんだよっ!!ゆぷぷっ!!」
あのちびはあわれなんだよっ!!ゆぷぷっ!!」
ゆっくりは極端に孤独を嫌う。
金バッチでさえ、孤独に耐え切れず野良を招き入れる問題が多々あるくらいだ。
寒さも飢えも忘れるほど、興奮する汚い二匹。
これ以上無いほどの優越感に浸りながら踊るまりしゃとれいむに、てーが答えた。
金バッチでさえ、孤独に耐え切れず野良を招き入れる問題が多々あるくらいだ。
寒さも飢えも忘れるほど、興奮する汚い二匹。
これ以上無いほどの優越感に浸りながら踊るまりしゃとれいむに、てーが答えた。
「まみぃはまみぃだよ?」
虐子を指差しながら言う。
思わず返答してしまったのだろう。
何言っているの?とてーの表情に書いてあるようだ。
虐子も咎めない。
思わず返答してしまったのだろう。
何言っているの?とてーの表情に書いてあるようだ。
虐子も咎めない。
「はぁぁぁぁっっ!?それはにんげんでしょぉぉぉっ!
いまおかーさんのはなししてるんだよぉぉっ!りかいできるぅっ!?
おまえはおかーさんといっしょにいないでしょぉぉ!!」
いまおかーさんのはなししてるんだよぉぉっ!りかいできるぅっ!?
おまえはおかーさんといっしょにいないでしょぉぉ!!」
「ゆっきゃゆっゆっ!もしかしておかーしゃんをしらないのじぇっ!?
ゆぶひゃっひゃひゃ!あわれあわれなのじぇっ!!」
ゆぶひゃっひゃひゃ!あわれあわれなのじぇっ!!」
さらにテンションを上げて嘲笑するまりしゃ。
だがてーは怒りや悲しみではなく、疑問を強くにじませ答える。
だがてーは怒りや悲しみではなく、疑問を強くにじませ答える。
「まみぃいるよ?」
「はぁぁぁぁっ!?“まみぃ”?
わけわかんないこというなぁぁっっ!!この――」
わけわかんないこというなぁぁっっ!!この――」
「てーちゃん、野良達はもしかしてまみぃが見えないのかもね。
ヘンなヤツだねー」
ヘンなヤツだねー」
「うん……」
なんだが哀れむような顔をして、てーがれいむ達から身を引く。
さすがのれいむも違和感を感じる。
さすがのれいむも違和感を感じる。
「それはにんげんでしょ……?
おかーさんじゃないでしょ……?」
おかーさんじゃないでしょ……?」
一向に悔しがるでも悲しむでもなく、“まみぃ”と呼ぶ人間をまるで母親の様に言う。
れいむには理解できない。
当然だ。れいむは知らない。
実ゆっくりの状態で二人に買い取られたてーは、生みの親を一度も見たことが無い。
てーは生き物の出生の方法など知らないし、考えたことも無い。
少なくとも自分にとっての『母親』が側にいるのに、産みの親がいないと馬鹿にされても理解できない。
れいむには理解できない。
当然だ。れいむは知らない。
実ゆっくりの状態で二人に買い取られたてーは、生みの親を一度も見たことが無い。
てーは生き物の出生の方法など知らないし、考えたことも無い。
少なくとも自分にとっての『母親』が側にいるのに、産みの親がいないと馬鹿にされても理解できない。
「どうしてくやしがらないのじぇっっ!?
しっとしてるんだじぇ!?
がまんしたってばればれなのじぇぇっ!?」
しっとしてるんだじぇ!?
がまんしたってばればれなのじぇぇっ!?」
まりしゃもてーが自分を羨ましがり、泣いて母親がいないことを嘆くと思っていた。
なのに涙するどころか自分達を気味悪がっている。
なのに涙するどころか自分達を気味悪がっている。
「ふ、ふんっ!!ばかだからりかいできないみたいだねっ!
でもこれならどうかなっ!
おちびちゃん!いっぱいすーりすーりしようねっ!!」
でもこれならどうかなっ!
おちびちゃん!いっぱいすーりすーりしようねっ!!」
「ゆっ!ゆゆーんっ!すーりすーりなのじぇぇぇ……。
だじぇぇ……ゆっくりできるのじぇぇぇ」
だじぇぇ……ゆっくりできるのじぇぇぇ」
「ゆふっ!!すーりすーりもできないなんて、おかーさんじゃないね!
れいむがおしえてあげようか?ゆぷぷっ、うそだよっ!」
れいむがおしえてあげようか?ゆぷぷっ、うそだよっ!」
ゆっくり同士が身体をこすり合わせる“すりすり”
ゆっくりの重要なリラックス方法だ。
ゆっくりの重要なリラックス方法だ。
「ゆふっふんっ!
どう?うらやましい?でもおまえにはしてあげないよ!
だってれいむのおちびちゃんはおちびちゃんだけだからねっ!!」
どう?うらやましい?でもおまえにはしてあげないよ!
だってれいむのおちびちゃんはおちびちゃんだけだからねっ!!」
れいむが“すりすり”したまま横目でてーを見る。
もちろん調子に乗るという行為の限度を知らないまりしゃも自慢をやめない。
もちろん調子に乗るという行為の限度を知らないまりしゃも自慢をやめない。
「おかーしゃんのすーりすーりはせかいいちなのじぇぇっ!!
おまえはすーりすーりもしたことないのじぇぇ?」
おまえはすーりすーりもしたことないのじぇぇ?」
これだ。
これほどゆっくり出来る行為を間近で見せられればさすがに羨ましがるだろう。
そうしたらまりしゃのしーしーを飲めばすーりすーりしてやると騙してやろう。
これほどゆっくり出来る行為を間近で見せられればさすがに羨ましがるだろう。
そうしたらまりしゃのしーしーを飲めばすーりすーりしてやると騙してやろう。
「えー?てーもまみぃとだでぃといっつもすりすりしてるよ?」
「ゆはぁ?」
「はーいてーちゃん。
すりすり~、なでなで~、そしてぎゅぅ~」
すりすり~、なでなで~、そしてぎゅぅ~」
顔を摺り寄せられ、頭を撫でられ、そして抱きしめられるてー。
そのたびに顔綻ばせ、自身の幸福をれいむ達に教える。
そのたびに顔綻ばせ、自身の幸福をれいむ達に教える。
「ゆぅぅぅ、そ、そんなのはぜんぜん――」
「はーい、たかいたかーい!」
「ゆっゆぅぅっ!?」
「きゃぁぅ!わぁーい!」
虐子に高く抱え上げられ、喜ぶてー。
浮遊感を覚えるだけで『おそらをとんでるみたい!』と必ず言ってしまうゆっくり。
それはもちろん、浮遊感がとってもゆっくり出来るからだ。
浮遊感を覚えるだけで『おそらをとんでるみたい!』と必ず言ってしまうゆっくり。
それはもちろん、浮遊感がとってもゆっくり出来るからだ。
「ゆっゆぅぅ!じゅるぃっ!じゅるぃ!
まりしゃもぉっ!!まりしゃもとびちゃいぃぃっ!
つぎっ!つぎまりしゃねっ!まりしゃがとぶよ!」
まりしゃもぉっ!!まりしゃもとびちゃいぃぃっ!
つぎっ!つぎまりしゃねっ!まりしゃがとぶよ!」
数秒前の自分の計画とは逆に、てーを羨ましがるまりしゃ。
虐子に自分も上げてくれとねだる。
虐子に自分も上げてくれとねだる。
「嫌ですよ」
「どうぢでそんなごというのじぇぇぇぇっ!!
じゅるいよぉぉぉぉぉおぉっ!!!」
じゅるいよぉぉぉぉぉおぉっ!!!」
もちろん叶えてもらえるはずも無い。
「私のおちびちゃんはてーちゃんだけですので。
あなたもおかーさんに頼んだらどうです?」
あなたもおかーさんに頼んだらどうです?」
そういわれて気づいたまりしゃ、キラキラした目で母親のれいむを振り返る。
「おかーしゃん!まりしゃもっ!まりしゃもおそらをとびちゃいのじぇっ!
たかーいたかーいしちぇにぇ!」
たかーいたかーいしちぇにぇ!」
「ゆゆぅっ!?」
焦るのはれいむだ。急に言われても困る。
「ゆぅぅゆぅぅっ!!
む、むりだよぉ、おかーさんじゃおちびちゃんをたかーいたかーいできないよぉ」
む、むりだよぉ、おかーさんじゃおちびちゃんをたかーいたかーいできないよぉ」
「どうしてそんなこというのじぇぇぇぇぇっ!!
やぢゃああぁぁあ!やぢゃぁぁぁぁあぁ!!」
やぢゃああぁぁあ!やぢゃぁぁぁぁあぁ!!」
たしかにこのまりしゃは親から“たかいたかい”してもらったことがあるが、それは父親にだ。
帽子に自分の子供を乗せて、少しだけ跳ね上げ、受け止める。
赤ゆっくり程度なら受けきれる帽子があるからこそ出来るのだ。
れいむにはできない。
帽子に自分の子供を乗せて、少しだけ跳ね上げ、受け止める。
赤ゆっくり程度なら受けきれる帽子があるからこそ出来るのだ。
れいむにはできない。
「ゆゆぅん、ごめんねおちびちゃんぅ、あれはおとーさんにしか……」
父親――――そうだ。
「ゆゆっ!そんなことよりおちびちゃん!
あのちびにはおとーさんがいないんだよっ!
おちびちゃんのがゆっくりしてるよぉぉっ!!」
あのちびにはおとーさんがいないんだよっ!
おちびちゃんのがゆっくりしてるよぉぉっ!!」
「ゆぅ?そうなのじぇぇ?」
そうだ!
どうやら頭の悪いちびは、あの人間を母親だと思っているみたいだが、母親だけでは足りない。
れいむに言われて、まりしゃの単純な餡子脳が活性化する。
これで今度こそアイツを悔しがらせる事ができるぞ、と。
どうやら頭の悪いちびは、あの人間を母親だと思っているみたいだが、母親だけでは足りない。
れいむに言われて、まりしゃの単純な餡子脳が活性化する。
これで今度こそアイツを悔しがらせる事ができるぞ、と。
「まりしゃのおとーしゃんはかりのめいじんだったのじぇ!
そしてまりしゃをたすけるためにしんじゃったえいゆんなのじぇっ!
まりしゃはえいゆんのあんこさんをひいてるのじぇぇっ!!
おまえにはおとーさんなんていないからわからないのじぇ?
ゆっぴゅっぴゅ――――」
そしてまりしゃをたすけるためにしんじゃったえいゆんなのじぇっ!
まりしゃはえいゆんのあんこさんをひいてるのじぇぇっ!!
おまえにはおとーさんなんていないからわからないのじぇ?
ゆっぴゅっぴゅ――――」
「えー?だでぃそこにいるよ?だでぃ~!」
「ゆじぇ?」
てーが手を振る先を見るまりしゃとれいむ。
人間がもう一人座っていた。手を振り返している。
そういえば、さっきからチラチラと目に入ってはいた。。
今まで一言もしゃべらなかったおかげで、完全にれいむ達の意識から外れていた。
そいつが急に立ち上がる。
人間がもう一人座っていた。手を振り返している。
そういえば、さっきからチラチラと目に入ってはいた。。
今まで一言もしゃべらなかったおかげで、完全にれいむ達の意識から外れていた。
そいつが急に立ち上がる。
「はいはい、おとーさんですよー」
「っ!ゆがぁあああああああ!!!
にんげんがおとーさんのわけないだろぉぉぉっ!!」
にんげんがおとーさんのわけないだろぉぉぉっ!!」
れいむが吼える。
「ははっ、余計なお世話だよ。
――――おはようてー、おいで」
――――おはようてー、おいで」
「うんっ!」
そう言って今度は饅殺男がてーを抱き上げる。
「はんそくだよぉぉぉっ!!
にんげんをふたりもってるなんてはんそくだよぉぉっ!!」
にんげんをふたりもってるなんてはんそくだよぉぉっ!!」
「いやいや、意味解らないよ」
れいむが見た全ての飼いゆっくりは、必ず人間が一緒にいたが一人だけだった。
そのはずなのに。
そのはずなのに。
「じゅるいよぉぉぉっ!!どれいをふたつももってるのじぇぇぇっ!!
まりしゃもひとつほしいぃぃぃ!!!」
まりしゃもひとつほしいぃぃぃ!!!」
まりしゃは飼いゆっくりなど知らないが、
自分に持っていないものを、二つも持っているゆっくりを見て嫉妬心を抑えられるはずが無い。
自分に持っていないものを、二つも持っているゆっくりを見て嫉妬心を抑えられるはずが無い。
「おちびちゃん、こ、こんなゆっくりできないどれいはいらないよ」
「やぢゃやぢゃぁぁぁあ!!まりしゃもほしいぃぃ!!
あいつばっかりぃぃ!!たかーいたかーいまりしゃもしたいぃぃ!!
にんげんしゃぁぁん!まりしゃもぉぉっ!まりしゃもしてよぉおぉっ!!」
あいつばっかりぃぃ!!たかーいたかーいまりしゃもしたいぃぃ!!
にんげんしゃぁぁん!まりしゃもぉぉっ!まりしゃもしてよぉおぉっ!!」
『ゆっくり出来ない奴隷』とは言ったものの、れいむだって羨ましい。
寒さを防ぐ服、おいしそうな“じゅーすさん”そしてたかーいたかーい。
どれも全部れいむには用意できないものだ。
寒さを防ぐ服、おいしそうな“じゅーすさん”そしてたかーいたかーい。
どれも全部れいむには用意できないものだ。
「れいむだってぇぇぇっ!!れいむはぁぁ!!」
何か、何かないか、れいむが自慢できること。
「れ、れいむはおりょうりがじょうずなんだよぉぉぉぉっ!!
いもむしさんもぉ!おはなさんもおいしくできるんだよぉぉっ!!」
いもむしさんもぉ!おはなさんもおいしくできるんだよぉぉっ!!」
「何ですかいきなり?」
「おりょうりもしらないのぉぉぉっ!?
やったぁぁぁ!!れいむのかちだよぉぉおっ!!
おちびちゃあぁぁん!おかぁさんはかったよぉぉ!!」
やったぁぁぁ!!れいむのかちだよぉぉおっ!!
おちびちゃあぁぁん!おかぁさんはかったよぉぉ!!」
れいむの言う料理とは、ただはっぱに盛り付ける事を指す。
ともかく、自分基準で勝利を確信したれいむが、涎を撒き散らし歓喜を表現する。
ともかく、自分基準で勝利を確信したれいむが、涎を撒き散らし歓喜を表現する。
「おりょうりもできないんじゃ、おまえたちのごはんさんはとってもみじめなんだねぇぇっ!!
あわれだよぉぉおぉっ!!ゆっくりしてないよぉぉぉぉっ!!」
あわれだよぉぉおぉっ!!ゆっくりしてないよぉぉぉぉっ!!」
「――――付き合ってられませんね。
饅殺男、時間は?」
饅殺男、時間は?」
「んー、そろそろ行ってもいいくらいかな。
セール逃すと今夜のから揚げが無くなる」
セール逃すと今夜のから揚げが無くなる」
そうなると晩御飯のおかずは簡単なサラダだけになる。
確かに惨めかもしれない。
が、まりしゃの関心を引いたのはそこではない。
確かに惨めかもしれない。
が、まりしゃの関心を引いたのはそこではない。
「からあげしゃんっ!!いまからあげしゃんっていった!?
まりしゃもっ!まりしゃもたべちゃいよ!
ちょうだいっ!ちょうだぃ!」
まりしゃもっ!まりしゃもたべちゃいよ!
ちょうだいっ!ちょうだぃ!」
「今日の晩御飯っていったじゃないですか。
これから帰っておうちで作るんですよ」
これから帰っておうちで作るんですよ」
「お、おちびちゃん、こいつはりょうりできないんだよ?
ぜったいおいしくないよ!おかーさんのほうがぜったい――」
ぜったいおいしくないよ!おかーさんのほうがぜったい――」
「うるさいのじぇぇぇぇっ!!!」
れいむのおちびちゃんが怒鳴った。
人間とげすちびはさっきからわけのわからないことばかり言っている。
おちびちゃんが怒るもの当然だ。
――――でもなんでおちびちゃんはれいむのほう向いているんだろう。
人間とげすちびはさっきからわけのわからないことばかり言っている。
おちびちゃんが怒るもの当然だ。
――――でもなんでおちびちゃんはれいむのほう向いているんだろう。
「まりしゃをぜんぜんゆっくりさせてくれないくせにぃぃ!!
おまえなんかおかーしゃんじゃないのじぇげしゅぅぅぅ!!!」
おまえなんかおかーしゃんじゃないのじぇげしゅぅぅぅ!!!」
「ゆ……え?」
おちびちゃんが、れいむを見ながらぷくーしている。
何をしているんだろう。
それじゃぁまるでれいむを威嚇しているみたいじゃないか。
何をしているんだろう。
それじゃぁまるでれいむを威嚇しているみたいじゃないか。
「に、にんげんしゃんっ!!
まりしゃもにんげんしゃんのおちびちゃんになってあげるのじぇっ!!」
まりしゃもにんげんしゃんのおちびちゃんになってあげるのじぇっ!!」
「どぼじでぞんなごというのおちびちゃああああんっっ!!」
「おまえはだまるのじぇぇぇっ!!
ゆっふぅ?どうなのじぇにんげんしゃんっ!」
ゆっふぅ?どうなのじぇにんげんしゃんっ!」
もうまりしゃはれいむの方を見ていない。
虐子に向かってのーびのーびしたまま左右に身体を振り、自分を売り込んでいる。
虐子に向かってのーびのーびしたまま左右に身体を振り、自分を売り込んでいる。
「あしたあめでもいく?」
「いやーさすがになぁー」
「えー?」
てーを抱えた饅殺男は既に歩き出している。
「わかりました。いいですよ?
私の所までこれたら飼いゆっくりにしてあげます」
私の所までこれたら飼いゆっくりにしてあげます」
「やっちゃのじぇぇぇぇぇっ!!!
まりしゃはこれで“かちぐみしゃん”なのじぇぇっ!!」
まりしゃはこれで“かちぐみしゃん”なのじぇぇっ!!」
「おちびちゃぁぁんっ!!まってぇ!
おかーさんはれいむでしょぉぉぉっ!?」
おかーさんはれいむでしょぉぉぉっ!?」
「ゆぷぷっ!!しっとしてるのじぇ?
ゆきゃっきゃ!みじめなのじぇ!!」
ゆきゃっきゃ!みじめなのじぇ!!」
先ほどまで母親と呼んでいたれいむを嘲り笑うまりしゃ。
そしてフッっ!と虐子の方へ向き、お帽子を正す。
さぁ行こう、まりしゃの飼いゆっくりとしての幸福な日々への一歩を踏み出そう。
虐子に向かって“ぴょんぴょん”を開始した。
驚いたのはれいむだ。
そしてフッっ!と虐子の方へ向き、お帽子を正す。
さぁ行こう、まりしゃの飼いゆっくりとしての幸福な日々への一歩を踏み出そう。
虐子に向かって“ぴょんぴょん”を開始した。
驚いたのはれいむだ。
「おちびちゃぁぁんっ!!なにしてるのぉぉぉぉお!!!
あめさんにあたったらしんじゃうでしょぉぉぉっ!!!」
あめさんにあたったらしんじゃうでしょぉぉぉっ!!!」
れいむの言うことは事実だ。
まだ雨が降っている、風も強い。
だがまりしゃは自信満々に答えた。
まだ雨が降っている、風も強い。
だがまりしゃは自信満々に答えた。
「ゆっぴゃっぴゃ!!やっぱりおまえはおばかしゃんなのじぇぇぇぇ!!
まりしゃはかいゆっくりなんだじぇぇぇ!?
もうあめしゃんなんかにまけるわけないのじぇぇぇぇっ!!!!」
まりしゃはかいゆっくりなんだじぇぇぇ!?
もうあめしゃんなんかにまけるわけないのじぇぇぇぇっ!!!!」
そう、飼いゆっくりなら雨に濡れても大丈夫。
その証拠にほら。
こんなに跳ねてもちょっと冷たいだけで、冷たい、全然平気なんだけど、あんよが冷たい、痛い、冷たい。
その証拠にほら。
こんなに跳ねてもちょっと冷たいだけで、冷たい、全然平気なんだけど、あんよが冷たい、痛い、冷たい。
「ゆっ、ゆぅ!?あ、あれ?いちゃ、いちゃい!
にんげんしゃん!まりしゃいちゃいよっ!?
あめしゃんがいじわるすりゅよぉぉ!?ねぇ!にゃにしちぇるにょ!!」
にんげんしゃん!まりしゃいちゃいよっ!?
あめしゃんがいじわるすりゅよぉぉ!?ねぇ!にゃにしちぇるにょ!!」
冷たい。あんよが我慢できないほど冷たい。
全然ゆっくりできない。どんどんお帽子が重くなっていく。
たまらずまりしゃは虐子に助けを求める。
全然ゆっくりできない。どんどんお帽子が重くなっていく。
たまらずまりしゃは虐子に助けを求める。
「はい、ここまで来れませんでしたね。
ではさようなら」
ではさようなら」
しかし人間はまりしゃに背を向け、歩き出してしまった。
ちょっと待て、話が違う。
ちょっと待て、話が違う。
「まっちえぇぇ!!どこいのじぇぇぇ!!
まりしゃここだよぉぉ!!!――――あんよしゃんうごかにゃいぃ!!
にんげんしゃぁぁぁん!!まりしゃもだっこしてぇぇぇ!!!」
まりしゃここだよぉぉ!!!――――あんよしゃんうごかにゃいぃ!!
にんげんしゃぁぁぁん!!まりしゃもだっこしてぇぇぇ!!!」
どんどん小さくなっていく虐子の姿に叫ぶまりしゃ。
必死になればなるど声も大きくなるが、それでも届かない、耳ではなく心に。
必死になればなるど声も大きくなるが、それでも届かない、耳ではなく心に。
「なんでいっちゃうのじぇぇぇっ!!!
もどってぇぇぇ!!やじゃぁぁぁ!!
まりしゃをたしゅけるのじぇぇぇ!!!
まりしゃかいゆっくりでしょぉぉぉぉ!!」
もどってぇぇぇ!!やじゃぁぁぁ!!
まりしゃをたしゅけるのじぇぇぇ!!!
まりしゃかいゆっくりでしょぉぉぉぉ!!」
そしてついにその姿が見えなくなった。
「ああああっ!!ああああっ!!やじゃぁぁ!!
ちゅめたいぃぃぃ!!まりしゃいたいのやだじぇぇぇ!!」
ちゅめたいぃぃぃ!!まりしゃいたいのやだじぇぇぇ!!」
ついに帽子の防水性が失われ、あんよだけでなく頭から雨水が浸透していく。
自身にジワジワと水が染み込む恐怖がまりしゃを襲う。
だがもう人間はいない。さすがのまりしゃでもわかる。
このままじゃ死んでしまう。
自身にジワジワと水が染み込む恐怖がまりしゃを襲う。
だがもう人間はいない。さすがのまりしゃでもわかる。
このままじゃ死んでしまう。
「おかぁぁあしゃぁぁんっ!!ごめんにゃしゃいぃぃ!!
まりしゃわるいこだったのじぇぇぇえ!!
はんせいしたのじぇぇぇ!!たすけちえぇぇ!!!」
まりしゃわるいこだったのじぇぇぇえ!!
はんせいしたのじぇぇぇ!!たすけちえぇぇ!!!」
ころっと態度を変え、母親にすがるのだ。
なりふり構ってなんていられない。
とにかく助かりたい一心だった。
なりふり構ってなんていられない。
とにかく助かりたい一心だった。
「まりしゃいいこににゃりましゅぅぅ!!
ごめんにゃしゃいぃぃ!!たしゅけてくださぃぃ!!」
ごめんにゃしゃいぃぃ!!たしゅけてくださぃぃ!!」
「おちび……ちゃん……」
れいむは自分の子供に母親失格とされたことにショックは受けていたが、怒っていたわけではない。
おちびちゃんはまだまだ幼いのだ。人間に騙されてしまうのは仕方が無い。
そして今、おちびちゃんは再び自分を必要としてくれている。
おちびちゃんはまだまだ幼いのだ。人間に騙されてしまうのは仕方が無い。
そして今、おちびちゃんは再び自分を必要としてくれている。
「おちびちゃんっ!!まっててねっ!!いまたすけるよっ!!」
「おかーしゃあああんっ!!
ゆぇぇんっ!ありがちょぉぉぉっ!!!」
ゆぇぇんっ!ありがちょぉぉぉっ!!!」
あんよでタップリ水を吸ったまりしゃが、“ゆん生”初の母への感謝を述べる。
「いまいくよぉぉぉぉ!!!」
気合と共にれいむがまりしゃに向かおうとする。
おちびちゃんへの最短ルートを最速で通り、お口に入れて戻ってくる。
よし、完璧だ。これならいける。行こう。
おちびちゃんへの最短ルートを最速で通り、お口に入れて戻ってくる。
よし、完璧だ。これならいける。行こう。
「ゆっ、ゆぅぅ?あ、あれ?」
「おかーしゃぁぁん!!ちゅめたいよぉぉお!!」
れいむは全力で跳ねようとしているのに、なぜか身体が小刻みに震えていて動かない。
あんよさんもブルブルと震えている。
あんよさんもブルブルと震えている。
「はやくぅぅぅ!!たすけちぇぇぇ!!
もうちゅめたいのやだぁぁぁっ!!!」
もうちゅめたいのやだぁぁぁっ!!!」
おちびちゃんが泣いてる、早く助けなきゃいけない。
でも凍りついたようにあんよが動かない。
れいむのおくちから、歯と歯がぶつかるカチカチという音が聞こえる。
でも凍りついたようにあんよが動かない。
れいむのおくちから、歯と歯がぶつかるカチカチという音が聞こえる。
「ゆ、ゆがぁぁぁっ!いくよっ!れいむはおちびちゃんをたすけるよっ!!
たすけるんだよっ!!ぜったいたすかるんだよぉっ!!」
たすけるんだよっ!!ぜったいたすかるんだよぉっ!!」
叫んでも身体は動かない。
――――無理も無い話ではある。
少なくともれいむ自身はこの世で最強だと思っていた夫のまりさが、
雨に濡れただけで死んでしまったのをじっくりと見てしまったのだ。
そしていまも大事なおちびちゃんが、あんよがダメになり、
どれほどの苦痛を受けているかをれいむに実況している。
要するにトラウマになってしまっていた。
口ではどんなに強がっても、心は屈服している。
――――無理も無い話ではある。
少なくともれいむ自身はこの世で最強だと思っていた夫のまりさが、
雨に濡れただけで死んでしまったのをじっくりと見てしまったのだ。
そしていまも大事なおちびちゃんが、あんよがダメになり、
どれほどの苦痛を受けているかをれいむに実況している。
要するにトラウマになってしまっていた。
口ではどんなに強がっても、心は屈服している。
「おかぁぁしゃあああん!どうしてきてくれないのぉぉ!!
ごめんなしゃぃぃ!!もうぜったいわるぐちいいましぇんからぁぁ!!
まりしゃゆっくりしたこになるのじぇぇぇ!!」
ごめんなしゃぃぃ!!もうぜったいわるぐちいいましぇんからぁぁ!!
まりしゃゆっくりしたこになるのじぇぇぇ!!」
「だ、だいじょうぶだよっ!いくっ!いくよぉぉ!ほら、ほらぁぁ!!」
『ほらっ!』と言いつつ、動いているのは上体だけ、あんよは一向に進まない。
ただその場でグネグネと気味の悪いダンスを踊っているようにしか見えない。
そんなれいむを急かすように、強く風が吹いた。
れいむが雨に濡れる。
ただその場でグネグネと気味の悪いダンスを踊っているようにしか見えない。
そんなれいむを急かすように、強く風が吹いた。
れいむが雨に濡れる。
「ゆきょわぁあああああああああああっっ!!
こないでぇぇ!!!あめさんこないでぇぇぇ!!
れいむしにたくないぃぃぃぃ!!!!!!」
こないでぇぇ!!!あめさんこないでぇぇぇ!!
れいむしにたくないぃぃぃぃ!!!!!!」
少し濡れた。
たったそれだけで、おちびちゃんのために命をかけようとしていた母親は死んだ。
今いるのはしーしーを漏らし、涙を流しながら命乞いする醜いゆっくりだけ。
その体を屋根の中央まで避難させ、もみあげで目を覆いながら恐怖に震えている。
勿論、一秒でも早い救助を望んでいたまりしゃはしっかりとれいむを見ていた。
たったそれだけで、おちびちゃんのために命をかけようとしていた母親は死んだ。
今いるのはしーしーを漏らし、涙を流しながら命乞いする醜いゆっくりだけ。
その体を屋根の中央まで避難させ、もみあげで目を覆いながら恐怖に震えている。
勿論、一秒でも早い救助を望んでいたまりしゃはしっかりとれいむを見ていた。
「にゃんでぇぇぇ……にゃんでにげちゃうのじぇ……。
おかーしゃんぅ……まりしゃ、はんせいしたからぁぁ!
たすけてくださぃぃ!!」
おかーしゃんぅ……まりしゃ、はんせいしたからぁぁ!
たすけてくださぃぃ!!」
誰が見てもれいむはもう救助を待つ側だ。
しかし、まりしゃにはもう他に頼れる存在がいない。
だから母親を呼び続ける。
しかし、まりしゃにはもう他に頼れる存在がいない。
だから母親を呼び続ける。
「おかぁぁぁしゃんっ、おねがいでしゅ、たすけてぇ!
ゆっ、ゆぅぁ、まっくらだよぅ、なんでなのじぇ。
みえないのじぇぇ……きょわいぃよぉ……」
ゆっ、ゆぅぁ、まっくらだよぅ、なんでなのじぇ。
みえないのじぇぇ……きょわいぃよぉ……」
ついに雨水はまりしゃから目を奪った。
「ゆるしてくださいゆるしてくださいっ!れいむはゆっくりです、ゆっくりしたいですぅ!」
れいむの餡子脳からはもう、まりしゃの危機的状況についての記憶は消えたらしい。
今はもう、まりしゃもれいむも自分が助かることしか考えていない。
今はもう、まりしゃもれいむも自分が助かることしか考えていない。
「ゆじゅっ……ゆじぇっ……!!ゆっ!」
水を吸って口の周りの皮が重くなり、自力で口を開けなくなる。
すでにまぶたは目に張り付き、所々溶けている。
それでも必死に、頭では母親に助けを求めている。
すでにまぶたは目に張り付き、所々溶けている。
それでも必死に、頭では母親に助けを求めている。
「かぜさんびゅうびゅうやめてぇぇぇっっ!!
れいむはわるいことしてませんぅ!!!
こわいぃぃぃよぉぉぉっっ!!」
れいむはわるいことしてませんぅ!!!
こわいぃぃぃよぉぉぉっっ!!」
体は既にボロボロだが、耳はなく音を餡子で感じるゆっくり。
それゆえに、母親が自身を助ける気が無いことがまりしゃにもわかってしまう。
それゆえに、母親が自身を助ける気が無いことがまりしゃにもわかってしまう。
「ゆっ……っ……」
父親は死んでしまった。
人間はまりさをおいて逃げた。
おかーさんは助けてくれない。
じゃぁ、じゃぁ後誰か、誰がまりしゃを助けてくれるんだ?
おかしい、おかしいよ。ゆっくりは世界から愛されてるはずなのに。
頼るべき存在が見つからない。思い浮かばない。
人間はまりさをおいて逃げた。
おかーさんは助けてくれない。
じゃぁ、じゃぁ後誰か、誰がまりしゃを助けてくれるんだ?
おかしい、おかしいよ。ゆっくりは世界から愛されてるはずなのに。
頼るべき存在が見つからない。思い浮かばない。
「…………」
雨で体温を奪われ、体をじわじわと崩され、世界に絶望しながらまりしゃは死んだ。
「あめさんこないでっぇぇぇ!!
こないでくださいぃぃぃぃっ!!!」
こないでくださいぃぃぃぃっ!!!」
自分の子供の死には気づかず、ただ逃げ惑うれいむ。
「こっちにもあめさんいるぅぅぅ!!どうしてぇぇ!!
れいむはにげるよぉぉっ!!
なんでこっちにもいるのぉぉぉぉ!!!」
れいむはにげるよぉぉっ!!
なんでこっちにもいるのぉぉぉぉ!!!」
狭い屋根の下を必死に逃げるが、雨が止まない以上どの方向に進んでも同じだ。
「ゆはぁっ!ゆあああっ!!!」
ブンブン体を振り、逃げ道を探すがどこを見ても雨がある。
「ゆっくりぃ!ゆっくりぃ!!」
風がれいむを責めるように強く吹き付ける。
過剰に怖がり、しーしーを撒き散らしながらガムシャラに跳ね回る。
過剰に怖がり、しーしーを撒き散らしながらガムシャラに跳ね回る。
「ゆひっぃぃぃぃっ!!!――――ちゅべっ!!」
ボスンと音を立ててひっくり返ったれいむ。
何かを踏んで、滑ってしまった。
もしや水か!
あわててあんよを見る。とってもゆっくり出来ない臭いがするものがこびりついている。
そしてれいむが踏んだ地面には――――。
何かを踏んで、滑ってしまった。
もしや水か!
あわててあんよを見る。とってもゆっくり出来ない臭いがするものがこびりついている。
そしてれいむが踏んだ地面には――――。
「ゆぇ……あ?
おり……ぼんさん……?」
おり……ぼんさん……?」
れいむも付けているお飾りよりも数段小さい、とっても可愛いリボンが潰れていた。
まっくろな餡子がこびりついてるソレは、れいむによく似たおちびちゃんのもので。
それが潰れているということはれいむはおちびちゃんの死体を――――。
まっくろな餡子がこびりついてるソレは、れいむによく似たおちびちゃんのもので。
それが潰れているということはれいむはおちびちゃんの死体を――――。
「ゆあああああああああああぁああああああああああ!!
あああああああああああああああああああっっ!!!!」
あああああああああああああああああああっっ!!!!」
無茶苦茶に叫びながられいむは飛び出した。
体にこびりついた死臭を洗い流すように水溜りにつっこむ。
体にこびりついた死臭を洗い流すように水溜りにつっこむ。
「ゆああああああああぅ!!あああっ!!」
濡れるのもかまわずに、バシャバシャと暴れる。
死臭が取れない、おちびちゃんの死体を踏み潰した感触が消えない。
死臭が取れない、おちびちゃんの死体を踏み潰した感触が消えない。
「ゆああああああっ!ゆうぅあああああっっ!!」
錯乱しながらゴロゴロと雨の中転がるれいむ。
同じ失敗を何度も繰り返すのはゆっくりの専売特許だ。
――――プチュり。
同じ失敗を何度も繰り返すのはゆっくりの専売特許だ。
――――プチュり。
「ああああああっ!!ゆぅ……あぁぁ?」
今度は体で押しつぶした。
可愛い可愛い、小さなお帽子を。
可愛い可愛い、小さなお帽子を。
「ゆああああああああぁあああああっ!!
あああああああああああああああ!!!」
あああああああああああああああ!!!」
もともと水をすってグズグズになっていたまりしゃの死骸。
ぐちゃぐちゃになってれいむの体にまとわりついていた。
ぐちゃぐちゃになってれいむの体にまとわりついていた。
「ゆぶぇえええええっ!!ゆぶぶへぇぇえええっ!!!」
冷たさと、痛みと、悪臭に責めたてられ、大量の餡子を吐き出す。
「ゆぼぉぉぉおぉっ!!ゆぶぅ!げふぅ!!」
助けて、助けて、誰か、可哀想なれいむを助けてください。
そう願うたびに、虐子の言った言葉がれいむの中でよみがえる。
そう願うたびに、虐子の言った言葉がれいむの中でよみがえる。
『ゆっくりは嫌われている』
れいむを苛める雨も風も、救ってくれない地面も木も、
みんなみんなれいむを見ながらあの人間のように笑っている。
みんなみんなれいむを見ながらあの人間のように笑っている。
「ゆぶぇぇっ…………」
死の間際になってやっと、自分達が考えるほどこの世界は優しくないことに気づいたれいむ。
気づく代償は家族全員の命だった。
ざぁざぁと勢いを増した雨は、れいむ一家の死体を綺麗に洗い流してくれるだろう。
雨が降り続く、ただ上から下に。
気づく代償は家族全員の命だった。
ざぁざぁと勢いを増した雨は、れいむ一家の死体を綺麗に洗い流してくれるだろう。
雨が降り続く、ただ上から下に。
「思ったより混んでなかったわね」
「な」
「みーんなーのたーめぇにー」
食材の入った袋ぶら下げて歩く饅殺男。
レインコートを着たてーは歌いながら、今度は水溜りを避けている。
それを見ながら虐子は考える。
レインコートを着たてーは歌いながら、今度は水溜りを避けている。
それを見ながら虐子は考える。
「てーちゃん帰ったらすぐお風呂だよ?」
「はーい!」
『ゆっくりをたすけるのはすべてのいきもののぎむでしょぉぉっ!!』
馬鹿げた話だと思う。
野良ゆっくりなんて、愛護団体すら見捨てた存在なのだ。
あの団体ほど野良と飼いゆっくりを別の生き物として扱っているものは無いだろう。
馬鹿げた話だと思う。
野良ゆっくりなんて、愛護団体すら見捨てた存在なのだ。
あの団体ほど野良と飼いゆっくりを別の生き物として扱っているものは無いだろう。
『優秀なバッチゆっくりに愛を!』
そう言って、バッチゆっくりの不当な扱いには噛み付いてくるが、野良を誰がどう扱おうとノータッチ。
まぁ“ゆ害”なんて言葉が定着した現代では、賢いやり方だとは思う。
まぁ“ゆ害”なんて言葉が定着した現代では、賢いやり方だとは思う。
「おっ、晴れマークついてる。
てー!明日晴れるってさ」
てー!明日晴れるってさ」
「やったー!」
ケイタイで明日の天気を確認していた饅殺男が言う。
長く止んでは降ることを繰り返した雨も、今日で最後らしい。
野良にとっては喜ぶべきことなのだろう。
道に転がっている、外で雨に降られたゆっくりの成れの果てを見ながら考える。
警戒することも、抵抗することも、人間相手よりよっぽど困難だろう。
野良からしたら、雨ほど恐ろしい存在も無い。
長く止んでは降ることを繰り返した雨も、今日で最後らしい。
野良にとっては喜ぶべきことなのだろう。
道に転がっている、外で雨に降られたゆっくりの成れの果てを見ながら考える。
警戒することも、抵抗することも、人間相手よりよっぽど困難だろう。
野良からしたら、雨ほど恐ろしい存在も無い。
「あんま走んな、転ぶぞー」
「うい!」
饅殺男が注意しても、てーちゃんは落ち着かない。
それもしょうがないか。
てーちゃんは雨が好きなのだから。
それもしょうがないか。
てーちゃんは雨が好きなのだから。
お読みいただきありがとうございます。
よろしければぜひ、このまま後編もお楽しみください。
よろしければぜひ、このまま後編もお楽しみください。