ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1712 ちぇんたちの伝言
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何処までも続く青空、何処までも続く緑の大地。
見渡せば、遙か彼方に蒼と緑の交わる水平線が広がっていた。
そこには何もない。誰もいない。
けれど、伝えなければならない大切な伝言が確かにあった。
それなのに、ちぇんの躯はもはや限界を迎えていた。
だからこそ、この役目は次の世代へと託される。
見渡せば、遙か彼方に蒼と緑の交わる水平線が広がっていた。
そこには何もない。誰もいない。
けれど、伝えなければならない大切な伝言が確かにあった。
それなのに、ちぇんの躯はもはや限界を迎えていた。
だからこそ、この役目は次の世代へと託される。
「ごはんさんは、くささんがいっぱいあるからしんぱいないよー。てんとさんのつくりかたはおぼえ
たねー? あめさんがふってきたら、てんとさんでおひさまがかえってくるまでかくれててねー。よ
るもだよー」
たねー? あめさんがふってきたら、てんとさんでおひさまがかえってくるまでかくれててねー。よ
るもだよー」
足下にすり寄る六匹の仔に頬を寄せながら、涙を呑んで最後の言葉を伝える。
「おかあさんは、ここまでなんだよー。わかってねー? さいごにちびたちへおたべなさいをするか
らねー、たべてよー」
らねー、たべてよー」
わんわん泣き始める仔の涙を舐め取りながら、自身も滂沱の涙を流す。
だが笑顔は崩さない。
だが笑顔は崩さない。
「なかないでねー……? ちびたちにたべてもらえば、おかあさんのおもいも うけついでもらえる
んだよー。わかるねー?」
んだよー。わかるねー?」
これが最後なのだから、
「たのんだよー……さぁ、おたべなさい――」
せめて、笑顔でお別れを――
※ ※ ※ ※ ※ ※
ちぇんたちの伝言
※ ※ ※ ※ ※ ※
ちぇんたちの伝言
※ ※ ※ ※ ※ ※
泣きながら母親を平らげた六匹の仔ちぇんらは、大量の滋養を得て大きく成長していた。生まれた
てでありながら、親の三分の一くらいはあるだろう。
食べ終えたその日は悲しみと食べ過ぎで眠ってしまったが、目覚めた頃には急成長した躯も馴染ん
でいた。別れの悲しみも、未だ心の底に疼く痛みがあるけれど耐えられないほどではなくなった。
空は快晴。
旅立つには丁度良い日和だ。
てでありながら、親の三分の一くらいはあるだろう。
食べ終えたその日は悲しみと食べ過ぎで眠ってしまったが、目覚めた頃には急成長した躯も馴染ん
でいた。別れの悲しみも、未だ心の底に疼く痛みがあるけれど耐えられないほどではなくなった。
空は快晴。
旅立つには丁度良い日和だ。
「ちぇんたちはこっちにいくんだねー」
「それじゃ、ちぇんたちはこっちにいくよー」
「ちぇんたちはこっちなんだねー、わかるよー」
「それじゃ、ちぇんたちはこっちにいくよー」
「ちぇんたちはこっちなんだねー、わかるよー」
ちぇんたちは二匹一組になって別れた。
これも親の言いつけの一つ。
皆で固まって移動していては誰かに出会う可能性が低い。しかし、独りきりでは寂しすぎる。
親と別れ、姉妹と別れ、二人きりとなってちぇんたちは進む。
再会の可能性はない。
新たな出会いの可能性も、限りなく低い。
道標のない草原をただ、前へ。
しかし仔が成体となり、老いの衰えを意識し始めた頃になっても誰かと出会うことはなかった。
これも親の言いつけの一つ。
皆で固まって移動していては誰かに出会う可能性が低い。しかし、独りきりでは寂しすぎる。
親と別れ、姉妹と別れ、二人きりとなってちぇんたちは進む。
再会の可能性はない。
新たな出会いの可能性も、限りなく低い。
道標のない草原をただ、前へ。
しかし仔が成体となり、老いの衰えを意識し始めた頃になっても誰かと出会うことはなかった。
「ちぇん……わかるねー?」
「……わかってるよー」
「……わかってるよー」
背の高い草を抜かずにまとめ、天辺を捻って括れば夜露を凌ぐ簡易のテントが完成する。
二匹のちぇんはそっと頬を合わせると、静かに、やがて激しく頬をすり合わせる。
二匹のちぇんはそっと頬を合わせると、静かに、やがて激しく頬をすり合わせる。
「すーりーすーりー……すっきりーっ!!」
二匹の唱和と共に、片方のちぇんの額から緑色の茎が伸びてゆく。
茎には瞬く間に実が生ってゆく。
一つ、二つ……ゆっくりのちぇんには『たくさん』としか数えることは出来なかったが、生った実
は合計六つ。
今はまだ髪も飾りも無いが、それはやがて親と同じちぇんとなるゆっくりの原型。
茎には瞬く間に実が生ってゆく。
一つ、二つ……ゆっくりのちぇんには『たくさん』としか数えることは出来なかったが、生った実
は合計六つ。
今はまだ髪も飾りも無いが、それはやがて親と同じちぇんとなるゆっくりの原型。
「かわいいねぇ……わかるよー」
「かわいいよー……わかるよー」
「かわいいよー……わかるよー」
慈愛に満ちた目で我が子を見つめる二匹のちぇん。
暫くして、父となったちぇんは自らの飾りを脱ぐとテントの内に敷いた。その上に母となったちぇ
んがゆっくりと座る。
父ちぇんが母子を覆うようにテントを調整している間、母ちぇんはその姿をじっと追いかけていた。
少し離れた場所から刈り取った草まで使って、念入りに母ちぇんは覆い隠された。
やがて、草をかき分けて父ちぇんがテントに入ってきた。自分が入ってきた穴を元に戻し、母ちぇ
んに、そして己の仔に向き直る。
その姿は、傷付き、汚れ、飾りまで無いのだけれど、とてもゆっくりしているように見えた。
暫くして、父となったちぇんは自らの飾りを脱ぐとテントの内に敷いた。その上に母となったちぇ
んがゆっくりと座る。
父ちぇんが母子を覆うようにテントを調整している間、母ちぇんはその姿をじっと追いかけていた。
少し離れた場所から刈り取った草まで使って、念入りに母ちぇんは覆い隠された。
やがて、草をかき分けて父ちぇんがテントに入ってきた。自分が入ってきた穴を元に戻し、母ちぇ
んに、そして己の仔に向き直る。
その姿は、傷付き、汚れ、飾りまで無いのだけれど、とてもゆっくりしているように見えた。
「……ちぇん、ちびたちをたのむんだよー?」
「……ゆっく……わかるよぉ……」
「ゆっくりしていってね、ちぇん……ちびたち……」
「……ゆっく……わかるよぉ……」
「ゆっくりしていってね、ちぇん……ちびたち……」
涙ぐみ母ちぇんに小さく笑いかけ、静かな笑顔のまま、父ちぇんは目を閉じた。
「さぁ、おたべなさい――」
「ゆっくりしていってね……ゆぐ……っふぅゆ、ゆっぐりじでいっでねぇ、ちぇえええええん!!」
「ゆっくりしていってね……ゆぐ……っふぅゆ、ゆっぐりじでいっでねぇ、ちぇえええええん!!」
生まれてから今日まで、どんなときでも共に歩んできた父ちぇんに、母ちぇんは慟哭を以て別れを
告げる。
泣いて泣いて、泣き疲れるまで泣いた。
一頻り泣いた母ちぇんは、仔を育むために『おたべなさい』をした父ちぇんに口を付けた。
父母の餡を滋養として、仔らはすくすくと育っていった。
そしてこの仔らが生まれ落ちた時には、母ちぇんは仔に役割を託して自らも『おたべなさい』をす
るのだ。
そうやって、ちぇんたちの役割と思いは受け継がれてゆく。
告げる。
泣いて泣いて、泣き疲れるまで泣いた。
一頻り泣いた母ちぇんは、仔を育むために『おたべなさい』をした父ちぇんに口を付けた。
父母の餡を滋養として、仔らはすくすくと育っていった。
そしてこの仔らが生まれ落ちた時には、母ちぇんは仔に役割を託して自らも『おたべなさい』をす
るのだ。
そうやって、ちぇんたちの役割と思いは受け継がれてゆく。
※
そして数世代、十数世代、もしかしたら百を超える世代を経て、一匹のちぇんが無限に続くかと思
われた広大な草原を抜け出した。
ちぇんは駆ける。
自らに託された始まりの意志と、数多のちぇんたちの思いとを胸に全力でそこに居た『誰か』へと
駆けた。
その誰かは突然現れたゆっくりに驚くこともせず、ただ不思議そうな顔で緊張の面持ちのちぇんに
声をかけた。
われた広大な草原を抜け出した。
ちぇんは駆ける。
自らに託された始まりの意志と、数多のちぇんたちの思いとを胸に全力でそこに居た『誰か』へと
駆けた。
その誰かは突然現れたゆっくりに驚くこともせず、ただ不思議そうな顔で緊張の面持ちのちぇんに
声をかけた。
「こんな草原にゆっくりが居たのか。何か用かい?」
ちぇんは静かに深呼吸をして浮き立つ心を落ち着け、そして託された思いを口にした。
「わからないよー?」

挿絵:めーりんあき