ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1131 Can ゆー defend? 後編
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書いた人 ヤリまむあき
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『Can ゆー defend? 後編』
一、
地面に染み付いた黒い餡子となった子れいむ。
生前の愛らしい姿は土と混ざり、何処がどの部位だったか、最早皮以外区別がつかない。
まりさの耳には、子れいむのゆっくりできたおうた、そして死ぬ寸前の濁った声が残っていた。
(なんで? おちびちゃんのおうたはとってもかんどうできたのに、なんでにんげんさんはおちびちゃんをあんなひどいめにあわせたの?
どうしておちびちゃんがころされなきゃいけないの?)
どうしてあのおうたが少年達の心を揺さぶらなかったのか。
まりさなりに考えた結果、結論を出した。
「わかったよ……」
「分かった? 何が?」
顔を上げたまりさの顔は、理不尽に心優しい我が子を奪われた憎しみに染まっていた。
憎しみで相手が殺せたら、と思っているであろう。
「……にんげんさんたちは、どうしようもないげすなんだね!!」
「ゲス?」
「にんげんさんは、あんなにゆっくりしてたかわいいおちびちゃんがうたったとってもじょうずなおうたをきいたのに、もうひとりのおちびちゃんをはなしてくれなかったよ!! ありすにあやまらなかったよ!!
それどころかおちびちゃんのおくちをちぎって、おちびちゃんがおうたをうたえないようにして、こ、ころしちゃったんだよ!!
これがげすじゃなかったらいったいなんなのぉおおおおお!? どうみたってげすでしょぉおおおおおお!!!」
興奮しているせいで大変聞き取りにくい話だったが、内容を整理するとこういうことだ。
良心の呵責があるならば、あんなに感動的な歌を聴いておいて悔い改めない筈が無い。
すぐさま子れいむの要求を呑み、これまで一家や群れの仲間達に対しての罪を謝罪するのが当然だ。
それなのに少年達は、寛大にも彼等を許そうとした子れいむを惨殺した。
これが鬼畜の所業でなかったら一体なんだと言うのか。
一応、話の筋が通っていないというわけではない。
「ふうん、そんなこと考えてたんだ」
「わかったらおちびちゃんをかえしてよぉおおおおお!! できないでしょ!? ゆっくりはね、しんじゃったらずっとゆっくりしたままなんだよ!?
おちびちゃんでもそんなことしってるのに、にんげんさんはわからなかったのぉおおお!?」
「れいむがぽんぽんをいためてうんだのにぃいいいい!!」
「れいみゅのおうたはすごかったんだよ!! あのおうたがもうきけにゃいなんて、しぇかいのそんしつだよ!!」
「ゆぇえええええええええん! おにぇーちゃぁああああん!!」
まりさ一家が拙いながらも死んだ子れいむの命の尊さを少年達に訴えかける。
人間にとってまりさ達ゆっくりの命など、羽のように軽いということにまだ気がついていないのだろうか。
「いや、俺達だって知ってたけど」
「しってておちびちゃんをころしたの!? だったら、にんげんさんはくずだよ!! あくまだよ!! ゆっくりでなしだよ!!」
「当然だ、ゆっくりじゃないからな」
少年達は、命が一度失われたら二度と戻らないことを理解していた。
理解してやったというなら、彼等は救いようの無い極悪人だ。
許してはおけない、しかし、先程自分の攻撃がまったく少年達に通用しなかった事を考えると、どうしても彼等に制裁を加えることに対し二の足を踏んでしまう。
そうなっては無駄死にだ。
(ごめんね、おちびちゃん。まもるっていったのに……。おちびちゃんのかたきもとれないまりさは、だめなおとうさんだよ……)
こうなっては、できるだけ下手に出て残りの家族だけでも守るしかない。
腹に据えかねても、まりさは彼等に勝てないのだから。
「に、にんげんさん。まりさたちのだいじなかわいいかわいいおちびちゃんをころしたことは、ゆるしたくないけどゆるしてあげるよ」
「まりさ!?」
れいむがまりさの言葉に驚き声を荒げる。
「れいむはだまっててね! ……まりさだって、ほんとはこんなげすゆるしたくないけど、みんなをまもるためなんだよ!!」
「ゆぅ……」
全身の震えからまりさの苦渋が見て取れる。
屈辱や憎悪を押さえ込み、奥歯を噛み締めていた。
「だから、だからもうまりさたちにかまわないでほしいよ!! まりさたちは、ここでゆっくりしてただけなんだよ!!
むしさんやおはなさんをたべて、しずかにくらしてただけだったんだよ!! にんげんさんにめいわくなんてかけてなかったよ!!」
事実上の敗北宣言だった。
「おとーしゃん、こんなのってないよ……」
子まりさは少年の掌の中で悔し涙を流す。
その感触は握っていた少年を不快にさせ、ほんの少しまた力が込められた。
「ゆぎいいいいいい!!」
「おちびちゃん!! まりさは、まりさたちにひどいことしないでっていったよ!!
ゆるしたくないけどゆるしてあげるっていったよ!! だからさっさとおちびちゃんをはなしてね!!」
まりさ達からすれば認め難い条件を呑んでやるというのに、なぜこの人間達はまだおちびちゃんを解放しないのだろう。
そういう肝心な所で上から目線な態度が更に状況を悪化させているのに、それを止めようとしない。
「クロボウシ、お前の話には間違いがある。一つは、あのチビ赤リボンのおうたとやらが騒音だということを理解していないことだ」
別の少年が赤ゆ達に近づき、傍にいたれいむが反応できないほどの速度で彼女達を奪い去る。
気がついた時には、赤ちゃん達は少年の手の中にいた。
「「おしょりゃをとんでりゅみちゃい!!」」
「「おしょりゃをとんでりゅみちゃい!! ……ここきょわいよぉおおお!! おろしちぇええええ!!」」
急に高所に持ち上げられて視線の高さ驚き、状況も理解できず暢気に喜んでいる赤れいむ二匹に怯える赤まりさ二匹、危機感は赤まりさの方が強いようだ。
「あかちゃぁああああん!!」
「れいむのあかちゃんかえせぇえええええ!!」
これで子供達全員がゆん質にされてしまった。
それより、子れいむのおうたが雑音だというのはどういうことか。
ゆっくりしていない人間は芸術に対する感覚すら狂ってしまっているのかもしれない。
「あんなものが歌なら、それこそ鳥の鳴き声の方がましだぜ」
「にんげんさんのおみみはくさってるの!?」
まりさは子れいむの名誉のために少年に反論する。
あれは、確かにゆっくりできたおうただったのだから。
「じゃあ、お前等が言う上手な歌の基準はなんだ?」
「かわいいおちびちゃんがうたったおうたがへたなはずないでしょ!! とりさんなんかといっしょにしないでね!!!」
それはまりさ達にとっての確定事項。
多少親馬鹿の贔屓目もあるが、ゆっくりにとって自分達がゆっくりした生活をしているということは存在意義にも関わることで、おうたはいわば“文化”なのだから。
時々聞こえる鳥さんのおうたは、五月蝿いだけでちっともゆっくりできない。
「おもいっきり身内贔屓じゃん。それを言うなら、お前等ナマクビマンジュウごときが出す雑音と歌を混同するなよ」
少年は赤れいむの一匹の左右のもみあげをつまみ、振り子のように揺らし始める。
前後への運動を加えらることで赤れいむのもみあげには自身の全体重が掛かるが、双方のもみあげを掴んでいるので負荷は分散されすぐに千切れるほどではなく、長く悲鳴と痛みに耐える表情を楽しめる。
主にれいむ種とぱちゅりー種に使われる緩めの虐待方法だ。
「いぢゃいいいいいいっ!! れーみ゛ゅのもみあげしゃんちぎれちゃぅううううう!!! おにぇがいだからはにゃしちぇえええええ!!!」
「手、離してやってもいいけどさ。そしたらお前落ちるぞ? 痛いぞ? それでもいいって言うんなら離してやるけど」
赤れいむは尻をぷりんぷりんと振って痛がる。
自慢のゆっくりしたもみあげは、今や己を苦しめる枷となっているのだ。
そして、言われたように少年の手から落ちたらどうなるだろうか?
(ちにちゃくにゃい!! れーみゅはおにぇーちゃんみちゃいにちにちゃくにゃいよ!!)
姉のように、ぐしゃぐしゃに潰れてしまうのだろう。
赤れいむも己の危機に気がつき、少年に命乞いをする。
「はにゃさにゃいでぇえええええ!! おちたりゃれーみゅちんじゃうよぉおおお!!」
「ほほう、ならばもっと強く、落ちないように引っ張ってやろう」
ぐいっ、とさらにもみあげが引っ張られる。
髪の根元が何本か抜ける感触がした。
「ゆびぃいいいいい!!」
「おお、いい声だ。お前、お姉ちゃんなんかよりよっぽど歌上手いんじゃね? 俺等はこっちの方が好みだぞ」
赤れいむの悲鳴は、少年達にとっての音楽。
少なくともおうたのような雑音より楽しめることは間違いない。
「いたがってるよ!! やめてあげてね!!!」
「あかちゃんがないてるでしょぉおおおおお!! それのどこがおうたなのぉおおおおお!?」
まりさとれいむの訴えは通じない。
やがて、耐久力の限界に達したもみあげが遂に音を立てて両方とも千切れた。
「ゆ゛ぅううっ!!!」
赤れいむは宙を舞う感覚を一瞬味わい、柔らかい背中から地面に落ちた。
ぺしゃっ、という軽い音だが、赤れいむにとっては体内の餡子が全て吐き出されそうなほどの衝撃である。
その口の端からは黒い餡子が流れ始めた。
子れいむのもみあげを持った少年は、まるでゴミのようにそれらを放り捨てる。
「あかちゃぁああああんっ!!! なおってね!! ゆっくりしないでなおってね!!」
まだ赤れいむには息がある、手遅れではない。
今度こそ可愛い子供を死なせるものか。
「れいむはあかちゃんをぺーろぺーろしてなおしてあげてね!! まりさはそっとあかちゃんをひっくりかえすよ!!」
「わかったよ!!」
少年達はまりさ達の行動を阻みはしない。
無力なゆっくりがどこまで希望を捨てずにいられるか楽しんでいるのだ。
それゆえまりさとれいむだけはあえて捕獲しておらず、自由に動けるようにしている。
一応ゆん質がいるのだから無謀な行動はしないだろうし、逃げたら逃げたで楽しめるのだ。
「まりさのあかちゃん!!! まりさがたすけてあげるからね!!!」
まりさ達には家族愛という概念があるのか、子供を見捨てるようなことはせずひたすら傷ついた赤ちゃんを助けようとしている。
親としてはそれでいいのかもしれないが、さっさと見捨てて逃げ出して、また新しい子供を作った方が生存率が高い。
どうしようもなく貧弱なナマモノとしては、自分達の能力を弁えていない間違った生き方だ。
「おちょー、しゃ、れーみゅ、いちゃい……」
「あかちゃん!! いたいのいたいのとんでけー、だよ!!!」
「ぺーろぺーろ!!! あかちゃんのせなかさんはゆっくりしてね!!!」
もみあげを失い、すっかりゆっくりできない風貌になった赤れいむ。
そんな子にも変わらぬ愛情を示すまりさ達。
「間違い二つ目。お前等ちっとも可愛くないから」
「ふざけたこといわないでね!! まりさとれいむのおちびちゃんたちはみんなかわいいんだよ!!!」
「ふーん。なら、今そこに転がってる汚いのは本当に可愛いのか?」
「「ゆっ!?」」
少年の問いに即答できなかったまりさとれいむ。
確かに、今の赤れいむはぼろぼろでとても可愛いとは言えない。
もみあげはなく、飾りも汚れてしまっている。
だがここで即座に否定しないということは、少年の言葉を認めてしまっているのと同義。
「……れーみゅ、きゃわいくにゃいにょ? ……れーみゅ、いらにゃいこにゃにょ?」
赤れいむは何も言わない両親に縋るような瞳を向ける。
ここで自分の存在を認められなかったらどうしようと、その瞳は不安で涙に濡れていた。
「そ、そんなことないよ!! ま、まりさのあかちゃんがかわいくないなんてことないよ!!」
「も、もみあげさんがなくてゆっくりできなくなっちゃったけど、それでもれいむのあかちゃんなんだよ!!」
「俺は、こいつが可愛いかどうかを聞いたんだ。もう一回聞くぞ、本当に可愛いのか?」
両親は必死に少ない語彙の中から言葉を捜し、場を取り繕おうとする。
だが、少年は灰色の回答を許さなかった。
あくまでも今の赤れいむが可愛いかそうでないかということだけを尋ねる。
「ゆぅ……」
「可愛くないとは言いたくない、けど、どう見ても可愛いとは言えないんだな。
よかったな、ちび赤リボン。お前が可愛くないことはお前のお父さん達のお墨付きだぞ。自分が可愛くない事が分かっただろ? そんなお前は、生きる価値が無いんだよ。りきゃいできりゅ?」
ストレートな悪意はそのまま赤れいむへの害となり、未熟な精神を傷つけた。
大好きな両親に自分の存在を肯定してもらえず、瞳からは生気が失われる。
生きようとする意志が感じられなくなり、
「あかちゃぁあああん!! おねんねしちゃだめだよ!! いまおねんねすると、ずっとゆっくりしちゃうんだよぉおおお!?」
赤れいむはゆっくりと瞼を閉じていく。
眠くてしょうがないのだ。
それに、さっきから背中から熱い何かが漏れ出していた。
「まりさ!!! おちびちゃんのあんこさんがとまってくれないよおおお!!!」
たたでさえ薄い赤ゆの皮は、衝撃ですっかり脆くなっていた。
そんな部分を懸命に舐めたらどうなるか、れいむは我が子を救おうと必死だったのだろうが、それは赤れいむの命を縮めるだけだった。
唾液が皮をふやけさせ、舌は皮を破ってしまったのである。
「れーみゅ、おねんね、しゅるにぇ……」
少しの間寝息を立てた後、赤れいむは静かに逝った。
その死に顔は、本来自分を優しく包み込んでくれる筈の両親から否定されたことによる諦観がはっきりと現れていた。
二、
赤れいむが死んだことを認められないまりさとれいむは、その亡骸の前で呆然としていた。
「こいつ等自分で子供に止め刺してやんの!」
「可哀想だねー」
何を言う、赤ちゃんに大怪我をさせたのはお前達じゃないか。
あんなに痛そうに泣いて、もみあげだってお前達が奪ったんじゃないか。
「ゆがぁあああああああああっ!! あかちゃんがしんだのはにんげんさんたちのせいでしょぉおおお!?
まりさとれいむは、あかちゃんをたすけようとしただけだったのに!!」
肉体的な死因は主に少年達によるものだが、赤れいむが真に絶望したのは両親からの否定だったことをあくまでも理解しようとしない。
もう少し思い知らせてやる前に希望を与えてやろうと、少年達は子まりさを解放することにした。
「ほれ」
「ゆ? おとーしゃぁああああん! おかあしゃぁああああん! まりしゃこわかったよぉおおお!!」
そっと地面に降ろされた子まりさは、振り返ると両親の元に跳ねていった。
よほど怖かったのだろう。
「おちびちゃん! よしよし、よくがまんしたね!」
「おとーしゃん、れいみゅが、まりしゃのいもうとがぁああああ!!」
子れいむと赤れいむの死を悼む子まりさは、れいむのもみあげに撫でられながら嗚咽を漏らす。
自慢の俊足が敗れ、二人の妹達は殺されてしまった。
でも、絶対に人間には敵わないのだ。
純粋なスピードだけなら負けないのに。
「おい、小さいクロボウシ。ゲームをしよう」
「ま、まりしゃになんのようなにょ?」
「お前、俊足が自慢なんだってなぁ? だったらご自慢のスピードでこいつを助けてみろよ」
少年達の一人が子まりさを指名する。
その指先には、一緒に追いかけっこをして遊んだ妹の赤まりさが握られていた。
「おにぇーちゃぁあああん!! まりちゃをたちゅけちぇにぇえええええええ!!!」
「いもうとをいじめないでにぇ!! まりしゃにできることならするから、はやくたすけてあげてにぇ!!」
「まあまあ、話を聞けよ。ルールは簡単だ、こいつを落とす。それをお前が受け止めればこいつは返してやる。
でも、落ちる前にお前が受け止められなかったらそのまま地面に激突。単純だろ?」
子まりさは今度こそ自分の土俵で勝負できると思った。
なるほど、これなら勝敗を決めるのは純粋にスピードのみでそこに何らかの不正が介入する余地は無い。
人間の恐ろしいほどの力だって関係ないのだ、勝つ可能性は充分にある。
でも、もし間に合わなかったら妹は死んでしまうのではないか?
「ちなみに、勝負から逃げたらこいつはすぐ潰す。ゆっくりと、じわじわ苦しめて潰す」
「ゆぴぃ!?」
子まりさの逡巡を見抜いたかのようなタイミングで少年が話を続ける。
赤まりさは明確な処刑宣告に悲鳴を上げ、それが子まりさに決断をさせた。
「わかったよ! まりしゃ、やるよ!! にんげんしゃんにかっていもうとをとりもどすよ!!」
「そうこなっくっちゃ」
「おちびちゃん! まりさがかわるよ!!」
「駄目駄目、親の介入は禁止」
見かねたまりさが代わりに勝負を受けようとするが、それは不可能である。
これは、子まりさ自身が持つ“俊足”に対する自信をぶち壊すための遊び(ゲーム)なのだから。
「いいか、この線の後ろからスタートしろ」
「わかったよ!」
少年は地面にバットで一本の線を引き、スタートラインを作る。
そこと赤まりさの落下点と思われる場所はそう距離があるわけではなく、そんなに無茶な条件ではないと感じられた。
「俺が腕を振り上げたらスタートしていいぞ」
「かんたんだにぇ! にんげんしゃんに、こんどこそまりしゃのしゅんそくのしんかをみせてあげるよ!!」
子まりさは自信満々で、赤まりさにも笑顔を振り撒く。
「もうちょっとまっててにぇ! おねーちゃんのおぼうしさんでやさしくうけとめてあげりゅよ!!」
「ゆゆーん! おにぇーちゃんありがちょー!!」
赤まりさは大好きな姉に全幅の信頼を向け、自分が助かると疑ってすらいない。
「おちびちゃんならできるよ!」
「がんばってね! れいむたちがついてるよ!!」
まりさとれいむも、ゲームの条件が酷い物ではないと思ったのか、子まりさに全て任せる事にしたらしい。
自分達がしゃしゃり出て人間の機嫌を損ねたらいけないと判断したようだ。
「それじゃ、いくぞ」
少年が腕をゆっくりと振り被って赤まりさを自分の頭上まで持ち上げようとする。
赤まりさは先程よりさらに高くなった視界から見える世界に驚くが、これも姉が自分を助けてくれるまでの辛抱だと思って楽しむことにしたようだ。
(しゅっごくたかいにぇ!!)
またスタートでの加速のために身体を曲げていた子まりさも、妹達をこ全ての方法で助け出してみせる、と考えていた。
自分が勝ったら人間さんは悔しがる筈、その後に挑発すれば、自分に有利なこのゲームを継続させる事ができる、と。
「ゆぅっ……!」
遂に少年の腕が頂上に達する。
それがスタートの合図となり、ほぼ同時に子まりさは走り出した。
フライングではなく、ほぼ完璧なスタート。
このまま順調に行けば、赤まりさが落ちてくる前に落下予測地点へと先回りできて悠々と妹を受け止められる。
だが、
「大地にっ、還れぇえええええええっ!!!」
「おしょりゃびゅっ!?」
少年は全力で赤まりさを握った腕を振り下ろし、彼女を落下予測地点へと寸分の狂いもなく投げた。
それは、もう投げるどころか叩きつけると言った方が正しかっただろう。
ゆっくり程度の反応速度では追いつくことすら許されず、赤まりさは地面に餡子色の花を咲かせ、数テンポ遅れてそこに到達した姉の顔にべったりと中身を付着させた。
風圧で、赤まりさのものだった帽子がやや離れた場所に落ちる。
「綺麗に弾けたな」
「ゆ? ま、まりしゃのいもうとは……?」
確かに妹は少年の手から離れた、それは分かっている。
なら、ここにいなくてはいけない赤まりさは一体何処に消えてしまったのか。
子まりさはきょろきょろと前後左右にせわしなく顔を向ける。
それは、赤まりさが潰れた瞬間を視認してしまったことを誤魔化す為の虚しい行為であった。
「あ、あかぢゃんがぁあああああ!?」
「ひどいぃいいいいい!! またしんじゃったよぉおおおおお!!!」
後ろから見守っていたまりさとれいむは、三匹めの我が子が殺されたことを嘆く。
両親の言葉を聞いた子まりさも、赤まりさが死んだことをようやく認めた。
「まりしゃは、しゅんそくで……。はやくて……。いもうともたすけて……」
自分の俊足は、肝心な時に何の役にも立たなかった。
なら、こんなあんよに何の意味があるのだろう。
妹一人すら救えない、こんなあんよに。
「何が俊足だよ。全然駄目じゃん」
「……ゆぐっ」
「そんなスピードでよく助けるだとか守るとか言えたもんだ、笑わせる」
「ゆぇええええええん!!!」
恥も外聞もなく、子まりさは泣き叫んだ。
信じていたものが、誇りが、思い上がりが打ち砕かれ、後には何も残らない。
「そんな役立たずな足は……」
「ゆえっ?」
少年の一人が子まりさを摘み上げると、そのあんよと顔の境目にハサミの刃を滑らせる。
「ゆひぃっ!!」
冷たい金属の感触は無機質な恐怖感を与えるものだった。
その刃にはクリームがついていてべとべとしており、子まりさの前にも誰かゆっくりがゆっくりできない目に遭わされたのだろうと分かってしまった。
そして、勢い良く刃は子まりさのあんよを切断する。
「ゆ゛ぎゃぁああああああっ!!!」
ざくっ、と小気味良い音がした後には、子まりさのあんよは体から離れていた。
「まりじゃの、まりじゃのがもじかのようなびぎゃぐがぁあああああ!!!」
己の命とお飾りと、同じくらい大切なあんよ。
それは永遠に子まりさから奪われた。
「いらないよなぁ?」
あんよは地面に投げ捨てられると、少年に踏まれ執拗なまでに磨り潰される。
よほどゆっくり風情に速さが足りないと侮辱されたことが頭にきたのだろう。
「まりざゆずりではんざむなおちびぢゃんの、ずまーどなあんよぐぅぁあああああ!!!」
「どぼじでごんなごどずるのぉおおおおお!?」
「勝負に負けたから罰ゲーム」
「そんなごどぎいでないよぉおおお!?」
「そりゃそうだ、今初めて言ったんだから」
両親の相手はほどほどに切り上げ、子まりさの餡子が零れ落ちないように地面に降ろす。
その際に、中身が直に地面と接触するような置き方をし、子まりさに苦痛を与える。
「い゛っ! い゛っ!!」
人間で言うなら、腰から下を切り落とされて臓器が露出したものを何の手当ても受けず、雑菌だらけの地面に置かれると言った方がその痛みの程度が伝わりやすいだろうか。
気が狂いそうな痛みが断続的に続き、今にも体を揺すって暴れたくなる衝動を必死に抑える子まりさ。
中身が失われたら、それは己の死に繋がることを本能的に分かっているのだろうか。
「でかいのに忠告するぞ。そいつ、下手に動かすと死ぬから」
「「ゆ゛うっ!?」」
まさに子まりさへと駆け出す寸前だった両親は、少年の忠告を聞いて思い止まる。
さっき赤れいむを過失によって死なせてしまったばかりなのだ。
「じゃあどうすれば……」
「放っておけば?」
自分がしておいて実に無責任なことを言う。
しかし、子まりさを少しでも長く現世に留めておきたいならば放っておく事が一番だった。
ゆっくりの治療などではかえってずっとゆっくりさせてしまうことになりかねないからだ。
ただ、それが本当に子まりさへの愛情になるかは疑問が残る。
一刻も早く楽にしてあげたほうが良いのかもしれない。
「そうそう、間違い三つ目。お前等、俺達に迷惑掛けてないって言ったな?」
「そ、そうだよ!! なのにどうしてこんな」
「生きてるだけで迷惑なんだよ。俺達だけじゃなくて、この地球上の生き物皆にとって」
「「ゆゆゆっ!?」」
それを言うなら人間もある意味ゆっくりと同じ部類に分類されるかもしれない。
だが幼い少年達は、まるで何処かの国のように彼等だけの理屈を強引にまりさ達へと押し付ける。
「そうだ、今俺達地球防衛軍ごっこやってるんだよな」
「うん。やっぱりこいつ等駆除するのって、地球の為になるんだね」
「善は急げだ、他のも手っ取り早く始末しよう」
のた打ち回って苦しむ子まりさを尻目に、少年達は淡々と“遊び”の続きの為の準備を始めた。
三、
五体満足な子供達は、赤れいむと赤まりさが一匹ずつ。
少年達は二匹を見比べると、赤れいむをチョイスした。
「赤リボンにしよう。さっきの奴の雑音がまだ耳に残っててすっげーむかつくから」
「どうちてぇえええええ!?」
子れいむの渾身のおうたは、赤れいむに八つ当たりの矛先を向けさせてしまった。
とんでもないとばっちりである。
「きゃわいいれーみゅがこまってりゅんだよぉおおお!!! おちょーしゃんもおかーしゃんもどーちてたちゅけてくれにゃいにょぉおおお!?」
他力本願だが、無力な赤ゆにとって両親はこの場で唯一頼れる存在なのだ。
姉達の内一人は死に、もう一人はかろうじて生きてはいるが動けない状態とどうしようもない。
「おねがいです!! れいむににたおちびちゃんはもう、そのあかちゃんしかいないんですぅううう!!! だからころさないでくださいぃいいい!!!」
自分に似た可愛い娘はもう赤れいむしかいない。
必死で何度も土下座をするれいむ。
上から目線だった言葉遣いも敬語になり、今までとは違う。
「分かったよ。殺さなきゃいいんだな?」
「はい! ありがどうございまずぅううう!!!」
「何勘違いしてやがる」
「ゆ?」
少年は正義の味方というより悪人らしい笑顔を浮かべると、赤れいむを持って近くに生えている木まで近付く。
「にゃにしゅるにょ!?」
「お前のお母さんが泣いて頼むもんだから、死刑だけは勘弁してやるよ」
丁度良い細さの枝を探し当てると、
「奥義、百舌鳥の早贄!!!」
「えげぇえええええっ!!!」
赤れいむの口を枝が貫く。
少年が強引に赤れいむを枝に突き通したのだ。
傷ついたのは口と、貫通した背中の傷だけなので餡子は漏れず、すぐに死に至ることはない。
モズは獲物を食べもせず木の枝に突き刺したままにすることがあるという。
この光景はまさしくそれに近いものがあるだろう。
もっとも、残酷さはそれを軽く上回っているが。
「一瞬で殺してやることもできたんだけどな、お前のお母さんが余計なこと言うから」
「れ、れいむのせいなの!?」
「ああ、可哀想に」
棒読みで少年がれいむを非難する。
「れ、れいむはあかちゃんを……」
「次はクロボウシな」
悲嘆に暮れるれいむを無視し、最後の赤ちゃんが標的にされた。
「もう、やめでぇえええ!!!」
「嫌だね」
もう何度懇願しただろう、まりさの願いはまたも黙殺される。
赤まりさは、夫婦にとっての最後の希望なのだ。
唯一五体満足で、少年達が思い止まればこれからもゆっくりできる可能性がある。
子まりさはあんよをうしなってもう動けないし、木の枝に縫いとめられて奇妙なオブジェと化した赤れいむはもう助からない。
だから、この赤ちゃんだけは……!
「痛いことはしない、でも、じわじわ苦しめてやる」
「ひゃみぇひぇひぇ! ひゃいひゃひょおひゅひ!!」
(やめちぇにぇ! まりちゃのおくち!!)
チューブのようなものを咥えさせられ喚く赤まりさ。
抵抗していると、チューブの中から苦い液体が放出された。
形容し難い味が口内いっぱいに広がっていく。
(にぎゃいぃいいい!!! まじゅいぃいいい!!! こりぇどくはいっちぇりゅ!!!)
甘味を好むゆっくりの味覚にとって絶対に受け付けない味。
いや、およそ生きとし生けるものにとって、その味を好む物は存在しないだろう。
(こんにゃまじゅいもにょまりちゃにのましゃりゅなんちぇ!!)
文句を言ってやろうと口を開けようとすると、違和感を感じる。
(ゆ!? ゆゆ? ゆゆゆ!?)
どうやっても口が開かないのだ。
「成功したか」
赤まりさが口に入れられたもの、それは瞬間接着剤。
口が小さい赤ゆに対してならそんなに多くの量を消費せず、容易に口腔を接着できるのだ。
これで、赤まりさは一生口を開く事ができなくなった。
それは、食事もできないということであり、死を意味する。
「ほれ」
「あかちゃん!!」
まりさの目の前に赤まりさが返還されるがうんともすんとも言わず、ただ涙を流し続けるだけだった。
「あかちゃん! しゃべれないの!?」
こくり、と体を前に倒す赤まりさ。
我が子達に待ち受ける暗い運命に、まりさは呻いた。
四、
これで、今生きているまりさの子供達の中で無事な者は誰一人いなくなった。
「よくも……」
落ち込んでいるまりさの耳に、これまでに一度も聞いた事が無い程低いれいむの声が聞こえた。
「よくも、れいむのかわいいかわいいおちびちゃんたちをぉおおおおおおっ!!!」
れいむが少年達に向けて特攻していたのだ。
人間に勝てないことはこれまでのことで分かっている、しかし理性を感情が上回ったのだ。
憎しみが導くままに、歯を剥き出しにして少しでも彼等に手傷を負わせてやろうとしたのだ。
おちびちゃん達の苦しみを、少しでも!
こんなゲスにおちびちゃん達は理不尽に殺されて、傷つけられたんだ!
「だめだよ……」
まりさは、この次に起こる事を半ば予想していた。
「まって……」
少年がバットを流れるような動作で構えて、れいむが地面を蹴って飛び上がった。
「おねがいだから……」
少年の上半身が捻られ、バットがれいむ目掛けて襲い掛かる。
「やめてぇえええっ!!!」
それは、どちらに向かっての言葉だったのだろうか。
愛するれいむか、はたまた憎き少年か。
いずれにせよ手遅れだった。
「げべぇええええええっ!!!」
吸い込まれるように、れいむの体に少年のバットが直撃した。
上顎から上は衝撃で吹き飛び、後方にいたまりさと赤まりさに餡子や皮がまるでシャワーのように降りかかる。
勢いを失って落ちた下顎はしばらく舌をびくびくと痙攣させていたが、やがてその動きも止まった。
「れいむぅうううううううううううっ!!!」
たった今れいむを撲殺した少年は額を拭う仕草をして、
「正当防衛だからな」
と言った。
まりさは、結局家族を誰一人守れなかったのだ。
「あ……。ゆぁあっ……!」
呆然としている間に帽子が奪われ、ハサミで切り刻まれる。
「これで、お前はもうゆっくりできない」
「……して」
「え?」
「まりさを、まりさたちをころしてください……」
家族を誰一人守れない父親は、存在価値が無いのだ。
子まりさ、赤まりさ、赤れいむも長くはあるまい。
寧ろ、もう生きていたくないのだ。
早くあの世に行ってまた家族で皆仲良く暮らしたい。
今のまりさの願いはそれだけだった。
「どうする?」
「ん~」
少年達は考えながら時計を見て、
「却下」
それだけを告げた。
「……なんで? にんげんさんなら、まりさたちをころすなんてかんたんでしょ!?」
頼みもしないのに散々まりさ達を傷つけて殺したくせに!
「もう疲れた」
「それに、自分から殺してって言われたから萎えた」
「ていうか、飽きた」
「腹減ったし」
子供は飽きっぽいのだ。
勝手な理由で行動し、勝手な理由でそれを止める、自由気儘な存在。
その行動の対象が、今回偶々まりさ達一家やその所属していた群れだっただけの話。
ゆっくりにはどうしようもない、天災みたいなものだ。
「じゃーな」
「生きてたらまた会おうぜ」
「元気でなー」
「楽しかったぜ」
遊ぶだけ遊ぶと、少年達は足早に立ち去って行った。
彼らは家に戻り、暖かい夕食を食べて心地良い疲れと共に熟睡することだろう。
「……ゆ、ゆがぁああああああああああああああああああああああああっ!!!」
後には、ほんの少し前までとてもゆっくりしていたまりさ一家の成れの果てが残された。
五、
緩慢な動作でまりさは動き始めた。
「おちびちゃん……」
子まりさは、蟻に群がられていた。
自慢の俊足もあんよが失われていては逃げられず、餡子が漏れないように体を僅かに揺らすしか抵抗手段はない。
それなのに、蟻は小さい体を生かして地表から直接子まりさの体内に潜り込んで餡子を奪っていくのだ。
「ありざんやめでぇえええ!! まりじゃのあんごもっでがないでぇえええっ!!」
普段は遊び感覚で獲物としていた蟻、そんな矮小な存在に、今自分が捕食されようとしている。
「もうありざんたべまぜん!! だからやめでぇええええ!!!」
内側から侵食される恐怖を味わう子まりさを、まりさは救う事ができない。
子まりさ目当ての夥しい数の蟻から、赤まりさを守ることで手一杯だったのだ。
「おとーじゃんだじゅけでぇえええ!! なんでたじゅげでぐれないのぉおおお!! おがーじゃあああん!! れいみゅぅううう!!」
もう意識が混濁して喚き散らすことしかできず、子まりさは蟻達の栄養となるしかなかった。
真っ黒な塊と化し、声さえ出せなくなりながらも死ぬまでには翌日までかかり、貪られ続けたのである。
「ごめんね……」
赤れいむは、夕暮れ近くになってやってきたカラスにその身を啄ばまれていた。
何でも食べるカラスにとって赤ゆっくりはご馳走である。
「からすさんはおちびちゃんをたべないでね!! ぷくぅううううううっ!!!」
痛む体に鞭打って威嚇をするが、地面から見上げるだけでは当然カラスに太刀打ちできず、赤れいむがカラスの胃に収まるのを黙って見ているだけだった。
「……」
赤まりさを口に入れて巣の中に帰り、眠りにつく。
ご飯を食べる気分ではなかったし、食事ができない赤まりさの前で一人だけ夕食をとるのは憚られたからだ。
そうすれば、今日の事は悪夢で、目が覚めればまたゆっくりした家族の顔があるのだと儚い希望を抱きながら。
六、
目が覚めたまりさはおうちの中を見渡すと、そこには赤まりさしかいなかった。
現実は厳しく、夢ならばどんなによかったか。
「おはようあかちゃん……」
「……」
赤まりさは返事ができなかったが、目線を返す。
やはり食事をしていないから弱っているようだ。
「おとうさんは、だれかいきてるゆっくりがいないかみてくるよ。いいこにしててね」
「……」
外に出ると、昨日の惨劇の爪痕が色濃く残っていた。
れいむと子供達の死体は捕食されて幾らか減ってはいたが、それでも凄惨な光景だった。
「ゆ、ゆげぇえええっ!!!」
まりさはあまりの気分の悪さに餡子を吐き出し、荒い呼吸をする。
ありすの死体も、虫が集って直視できない状態になっていた。
その場から逃げ出すように急いで広場へと向かう。
「みんな、いない……」
そこも似たような有様で、息をしているゆっくりは一匹もいなかった。
比較的まともな形で死んでいるものはまだ良い方だったぐらいだ。
「……」
ありすのおうちだったところにも足を運んでみたが、やはりそこにも絶望しか残っていなかった。
ぱちゅりーは死んでいて、その付近には、彼女とありすの一粒種になる予定だった筈の赤ちゃんらしき死体が転がっているだけ。
これで、まりさの知り合いは皆死んでしまった事になる。
「ただいま……」
とぼとぼとおうちに帰ると、赤まりさは目を閉じていた。
「あかちゃん、おねむなの?」
舌で舐めると、こてん、と転がったまま微動だにしない。
「あかちゃん? おとうさんだよ?」
呼びかけても一向に起きない。
赤まりさは、餓死したのだ。
「みんな、しんじゃったよ……」
おうちは、相変わらず立派だった。
でも、大切な物は。
「れいむも、おちびちゃんたちも、ゆっくりぷれいすもなくなっちゃったよ」
家族や群れのゆっくりした仲間がいてこそのゆっくりプレイス。
「まりさは、なにもまもれなかったよ。やくそくしたのに、まもれなかったよ……。まりさは、まりさは……」
広くなったおうちの中で、まりさの呟きだけが何時までも聞こえていた。
七、
一方、まりさ一家を悲しみが襲った日、家に帰った少年の一人は用意されていた夕食を母親と食べていた。
「今日お父さん遅くなんの?」
「そうみたいね」
「今日はな、俺、地球を守ってたんだぜ」
「この子は訳分からないこと言って……」
溜め息をつく母親に、誤解されないよう分かりやすく説明する。
「えーと、地球防衛軍ごっこだよ。森入ってゆっくり殺して遊んでたんだ」
「何だ、いつもと似たようなことしてただけじゃないの。また大袈裟な」
人間にとって、このようなことは日常茶飯事なのであった。
餡庫始まってもう一年になるんですね。
この道に興味持って半年未満の自分ですが、おめでとう、とだけ言わせて貰います。
ふたば系ゆっくりいじめ保管庫見たら売春婦4に新しい挿絵が!
儚いあき様、有難うございます!!
Can ゆー defend? 中編の子れいむのマクロスの奴パクったおうた、あれ自分で口ずさみながらチェックして書いてたんですが、親に聞かれて恥かいたのは黒歴史。
ヤリまむあきでした。
書いたもの
ふたば系ゆっくりいじめ 703 ゆー具
ふたば系ゆっくりいじめ 708 売ゆん婦
ふたば系ゆっくりいじめ 717 売ゆん婦2
ふたば系ゆっくりいじめ 723 売ゆん婦3
ふたば系ゆっくりいじめ 730 ゆー具 鬼畜眼鏡編
ふたば系ゆっくりいじめ 772 情けはゆっくりの為ならず
ふたば系ゆっくりいじめ 798 売ゆん婦4
ふたば系ゆっくりいじめ 867 Can ゆー defend? 前編
ふたば系ゆっくりいじめ 960 Can ゆー defend? 中編
ふたば系ゆっくりいじめ 962 他ゆん事
『Can ゆー defend? 後編』
一、
地面に染み付いた黒い餡子となった子れいむ。
生前の愛らしい姿は土と混ざり、何処がどの部位だったか、最早皮以外区別がつかない。
まりさの耳には、子れいむのゆっくりできたおうた、そして死ぬ寸前の濁った声が残っていた。
(なんで? おちびちゃんのおうたはとってもかんどうできたのに、なんでにんげんさんはおちびちゃんをあんなひどいめにあわせたの?
どうしておちびちゃんがころされなきゃいけないの?)
どうしてあのおうたが少年達の心を揺さぶらなかったのか。
まりさなりに考えた結果、結論を出した。
「わかったよ……」
「分かった? 何が?」
顔を上げたまりさの顔は、理不尽に心優しい我が子を奪われた憎しみに染まっていた。
憎しみで相手が殺せたら、と思っているであろう。
「……にんげんさんたちは、どうしようもないげすなんだね!!」
「ゲス?」
「にんげんさんは、あんなにゆっくりしてたかわいいおちびちゃんがうたったとってもじょうずなおうたをきいたのに、もうひとりのおちびちゃんをはなしてくれなかったよ!! ありすにあやまらなかったよ!!
それどころかおちびちゃんのおくちをちぎって、おちびちゃんがおうたをうたえないようにして、こ、ころしちゃったんだよ!!
これがげすじゃなかったらいったいなんなのぉおおおおお!? どうみたってげすでしょぉおおおおおお!!!」
興奮しているせいで大変聞き取りにくい話だったが、内容を整理するとこういうことだ。
良心の呵責があるならば、あんなに感動的な歌を聴いておいて悔い改めない筈が無い。
すぐさま子れいむの要求を呑み、これまで一家や群れの仲間達に対しての罪を謝罪するのが当然だ。
それなのに少年達は、寛大にも彼等を許そうとした子れいむを惨殺した。
これが鬼畜の所業でなかったら一体なんだと言うのか。
一応、話の筋が通っていないというわけではない。
「ふうん、そんなこと考えてたんだ」
「わかったらおちびちゃんをかえしてよぉおおおおお!! できないでしょ!? ゆっくりはね、しんじゃったらずっとゆっくりしたままなんだよ!?
おちびちゃんでもそんなことしってるのに、にんげんさんはわからなかったのぉおおお!?」
「れいむがぽんぽんをいためてうんだのにぃいいいい!!」
「れいみゅのおうたはすごかったんだよ!! あのおうたがもうきけにゃいなんて、しぇかいのそんしつだよ!!」
「ゆぇえええええええええん! おにぇーちゃぁああああん!!」
まりさ一家が拙いながらも死んだ子れいむの命の尊さを少年達に訴えかける。
人間にとってまりさ達ゆっくりの命など、羽のように軽いということにまだ気がついていないのだろうか。
「いや、俺達だって知ってたけど」
「しってておちびちゃんをころしたの!? だったら、にんげんさんはくずだよ!! あくまだよ!! ゆっくりでなしだよ!!」
「当然だ、ゆっくりじゃないからな」
少年達は、命が一度失われたら二度と戻らないことを理解していた。
理解してやったというなら、彼等は救いようの無い極悪人だ。
許してはおけない、しかし、先程自分の攻撃がまったく少年達に通用しなかった事を考えると、どうしても彼等に制裁を加えることに対し二の足を踏んでしまう。
そうなっては無駄死にだ。
(ごめんね、おちびちゃん。まもるっていったのに……。おちびちゃんのかたきもとれないまりさは、だめなおとうさんだよ……)
こうなっては、できるだけ下手に出て残りの家族だけでも守るしかない。
腹に据えかねても、まりさは彼等に勝てないのだから。
「に、にんげんさん。まりさたちのだいじなかわいいかわいいおちびちゃんをころしたことは、ゆるしたくないけどゆるしてあげるよ」
「まりさ!?」
れいむがまりさの言葉に驚き声を荒げる。
「れいむはだまっててね! ……まりさだって、ほんとはこんなげすゆるしたくないけど、みんなをまもるためなんだよ!!」
「ゆぅ……」
全身の震えからまりさの苦渋が見て取れる。
屈辱や憎悪を押さえ込み、奥歯を噛み締めていた。
「だから、だからもうまりさたちにかまわないでほしいよ!! まりさたちは、ここでゆっくりしてただけなんだよ!!
むしさんやおはなさんをたべて、しずかにくらしてただけだったんだよ!! にんげんさんにめいわくなんてかけてなかったよ!!」
事実上の敗北宣言だった。
「おとーしゃん、こんなのってないよ……」
子まりさは少年の掌の中で悔し涙を流す。
その感触は握っていた少年を不快にさせ、ほんの少しまた力が込められた。
「ゆぎいいいいいい!!」
「おちびちゃん!! まりさは、まりさたちにひどいことしないでっていったよ!!
ゆるしたくないけどゆるしてあげるっていったよ!! だからさっさとおちびちゃんをはなしてね!!」
まりさ達からすれば認め難い条件を呑んでやるというのに、なぜこの人間達はまだおちびちゃんを解放しないのだろう。
そういう肝心な所で上から目線な態度が更に状況を悪化させているのに、それを止めようとしない。
「クロボウシ、お前の話には間違いがある。一つは、あのチビ赤リボンのおうたとやらが騒音だということを理解していないことだ」
別の少年が赤ゆ達に近づき、傍にいたれいむが反応できないほどの速度で彼女達を奪い去る。
気がついた時には、赤ちゃん達は少年の手の中にいた。
「「おしょりゃをとんでりゅみちゃい!!」」
「「おしょりゃをとんでりゅみちゃい!! ……ここきょわいよぉおおお!! おろしちぇええええ!!」」
急に高所に持ち上げられて視線の高さ驚き、状況も理解できず暢気に喜んでいる赤れいむ二匹に怯える赤まりさ二匹、危機感は赤まりさの方が強いようだ。
「あかちゃぁああああん!!」
「れいむのあかちゃんかえせぇえええええ!!」
これで子供達全員がゆん質にされてしまった。
それより、子れいむのおうたが雑音だというのはどういうことか。
ゆっくりしていない人間は芸術に対する感覚すら狂ってしまっているのかもしれない。
「あんなものが歌なら、それこそ鳥の鳴き声の方がましだぜ」
「にんげんさんのおみみはくさってるの!?」
まりさは子れいむの名誉のために少年に反論する。
あれは、確かにゆっくりできたおうただったのだから。
「じゃあ、お前等が言う上手な歌の基準はなんだ?」
「かわいいおちびちゃんがうたったおうたがへたなはずないでしょ!! とりさんなんかといっしょにしないでね!!!」
それはまりさ達にとっての確定事項。
多少親馬鹿の贔屓目もあるが、ゆっくりにとって自分達がゆっくりした生活をしているということは存在意義にも関わることで、おうたはいわば“文化”なのだから。
時々聞こえる鳥さんのおうたは、五月蝿いだけでちっともゆっくりできない。
「おもいっきり身内贔屓じゃん。それを言うなら、お前等ナマクビマンジュウごときが出す雑音と歌を混同するなよ」
少年は赤れいむの一匹の左右のもみあげをつまみ、振り子のように揺らし始める。
前後への運動を加えらることで赤れいむのもみあげには自身の全体重が掛かるが、双方のもみあげを掴んでいるので負荷は分散されすぐに千切れるほどではなく、長く悲鳴と痛みに耐える表情を楽しめる。
主にれいむ種とぱちゅりー種に使われる緩めの虐待方法だ。
「いぢゃいいいいいいっ!! れーみ゛ゅのもみあげしゃんちぎれちゃぅううううう!!! おにぇがいだからはにゃしちぇえええええ!!!」
「手、離してやってもいいけどさ。そしたらお前落ちるぞ? 痛いぞ? それでもいいって言うんなら離してやるけど」
赤れいむは尻をぷりんぷりんと振って痛がる。
自慢のゆっくりしたもみあげは、今や己を苦しめる枷となっているのだ。
そして、言われたように少年の手から落ちたらどうなるだろうか?
(ちにちゃくにゃい!! れーみゅはおにぇーちゃんみちゃいにちにちゃくにゃいよ!!)
姉のように、ぐしゃぐしゃに潰れてしまうのだろう。
赤れいむも己の危機に気がつき、少年に命乞いをする。
「はにゃさにゃいでぇえええええ!! おちたりゃれーみゅちんじゃうよぉおおお!!」
「ほほう、ならばもっと強く、落ちないように引っ張ってやろう」
ぐいっ、とさらにもみあげが引っ張られる。
髪の根元が何本か抜ける感触がした。
「ゆびぃいいいいい!!」
「おお、いい声だ。お前、お姉ちゃんなんかよりよっぽど歌上手いんじゃね? 俺等はこっちの方が好みだぞ」
赤れいむの悲鳴は、少年達にとっての音楽。
少なくともおうたのような雑音より楽しめることは間違いない。
「いたがってるよ!! やめてあげてね!!!」
「あかちゃんがないてるでしょぉおおおおお!! それのどこがおうたなのぉおおおおお!?」
まりさとれいむの訴えは通じない。
やがて、耐久力の限界に達したもみあげが遂に音を立てて両方とも千切れた。
「ゆ゛ぅううっ!!!」
赤れいむは宙を舞う感覚を一瞬味わい、柔らかい背中から地面に落ちた。
ぺしゃっ、という軽い音だが、赤れいむにとっては体内の餡子が全て吐き出されそうなほどの衝撃である。
その口の端からは黒い餡子が流れ始めた。
子れいむのもみあげを持った少年は、まるでゴミのようにそれらを放り捨てる。
「あかちゃぁああああんっ!!! なおってね!! ゆっくりしないでなおってね!!」
まだ赤れいむには息がある、手遅れではない。
今度こそ可愛い子供を死なせるものか。
「れいむはあかちゃんをぺーろぺーろしてなおしてあげてね!! まりさはそっとあかちゃんをひっくりかえすよ!!」
「わかったよ!!」
少年達はまりさ達の行動を阻みはしない。
無力なゆっくりがどこまで希望を捨てずにいられるか楽しんでいるのだ。
それゆえまりさとれいむだけはあえて捕獲しておらず、自由に動けるようにしている。
一応ゆん質がいるのだから無謀な行動はしないだろうし、逃げたら逃げたで楽しめるのだ。
「まりさのあかちゃん!!! まりさがたすけてあげるからね!!!」
まりさ達には家族愛という概念があるのか、子供を見捨てるようなことはせずひたすら傷ついた赤ちゃんを助けようとしている。
親としてはそれでいいのかもしれないが、さっさと見捨てて逃げ出して、また新しい子供を作った方が生存率が高い。
どうしようもなく貧弱なナマモノとしては、自分達の能力を弁えていない間違った生き方だ。
「おちょー、しゃ、れーみゅ、いちゃい……」
「あかちゃん!! いたいのいたいのとんでけー、だよ!!!」
「ぺーろぺーろ!!! あかちゃんのせなかさんはゆっくりしてね!!!」
もみあげを失い、すっかりゆっくりできない風貌になった赤れいむ。
そんな子にも変わらぬ愛情を示すまりさ達。
「間違い二つ目。お前等ちっとも可愛くないから」
「ふざけたこといわないでね!! まりさとれいむのおちびちゃんたちはみんなかわいいんだよ!!!」
「ふーん。なら、今そこに転がってる汚いのは本当に可愛いのか?」
「「ゆっ!?」」
少年の問いに即答できなかったまりさとれいむ。
確かに、今の赤れいむはぼろぼろでとても可愛いとは言えない。
もみあげはなく、飾りも汚れてしまっている。
だがここで即座に否定しないということは、少年の言葉を認めてしまっているのと同義。
「……れーみゅ、きゃわいくにゃいにょ? ……れーみゅ、いらにゃいこにゃにょ?」
赤れいむは何も言わない両親に縋るような瞳を向ける。
ここで自分の存在を認められなかったらどうしようと、その瞳は不安で涙に濡れていた。
「そ、そんなことないよ!! ま、まりさのあかちゃんがかわいくないなんてことないよ!!」
「も、もみあげさんがなくてゆっくりできなくなっちゃったけど、それでもれいむのあかちゃんなんだよ!!」
「俺は、こいつが可愛いかどうかを聞いたんだ。もう一回聞くぞ、本当に可愛いのか?」
両親は必死に少ない語彙の中から言葉を捜し、場を取り繕おうとする。
だが、少年は灰色の回答を許さなかった。
あくまでも今の赤れいむが可愛いかそうでないかということだけを尋ねる。
「ゆぅ……」
「可愛くないとは言いたくない、けど、どう見ても可愛いとは言えないんだな。
よかったな、ちび赤リボン。お前が可愛くないことはお前のお父さん達のお墨付きだぞ。自分が可愛くない事が分かっただろ? そんなお前は、生きる価値が無いんだよ。りきゃいできりゅ?」
ストレートな悪意はそのまま赤れいむへの害となり、未熟な精神を傷つけた。
大好きな両親に自分の存在を肯定してもらえず、瞳からは生気が失われる。
生きようとする意志が感じられなくなり、
「あかちゃぁあああん!! おねんねしちゃだめだよ!! いまおねんねすると、ずっとゆっくりしちゃうんだよぉおおお!?」
赤れいむはゆっくりと瞼を閉じていく。
眠くてしょうがないのだ。
それに、さっきから背中から熱い何かが漏れ出していた。
「まりさ!!! おちびちゃんのあんこさんがとまってくれないよおおお!!!」
たたでさえ薄い赤ゆの皮は、衝撃ですっかり脆くなっていた。
そんな部分を懸命に舐めたらどうなるか、れいむは我が子を救おうと必死だったのだろうが、それは赤れいむの命を縮めるだけだった。
唾液が皮をふやけさせ、舌は皮を破ってしまったのである。
「れーみゅ、おねんね、しゅるにぇ……」
少しの間寝息を立てた後、赤れいむは静かに逝った。
その死に顔は、本来自分を優しく包み込んでくれる筈の両親から否定されたことによる諦観がはっきりと現れていた。
二、
赤れいむが死んだことを認められないまりさとれいむは、その亡骸の前で呆然としていた。
「こいつ等自分で子供に止め刺してやんの!」
「可哀想だねー」
何を言う、赤ちゃんに大怪我をさせたのはお前達じゃないか。
あんなに痛そうに泣いて、もみあげだってお前達が奪ったんじゃないか。
「ゆがぁあああああああああっ!! あかちゃんがしんだのはにんげんさんたちのせいでしょぉおおお!?
まりさとれいむは、あかちゃんをたすけようとしただけだったのに!!」
肉体的な死因は主に少年達によるものだが、赤れいむが真に絶望したのは両親からの否定だったことをあくまでも理解しようとしない。
もう少し思い知らせてやる前に希望を与えてやろうと、少年達は子まりさを解放することにした。
「ほれ」
「ゆ? おとーしゃぁああああん! おかあしゃぁああああん! まりしゃこわかったよぉおおお!!」
そっと地面に降ろされた子まりさは、振り返ると両親の元に跳ねていった。
よほど怖かったのだろう。
「おちびちゃん! よしよし、よくがまんしたね!」
「おとーしゃん、れいみゅが、まりしゃのいもうとがぁああああ!!」
子れいむと赤れいむの死を悼む子まりさは、れいむのもみあげに撫でられながら嗚咽を漏らす。
自慢の俊足が敗れ、二人の妹達は殺されてしまった。
でも、絶対に人間には敵わないのだ。
純粋なスピードだけなら負けないのに。
「おい、小さいクロボウシ。ゲームをしよう」
「ま、まりしゃになんのようなにょ?」
「お前、俊足が自慢なんだってなぁ? だったらご自慢のスピードでこいつを助けてみろよ」
少年達の一人が子まりさを指名する。
その指先には、一緒に追いかけっこをして遊んだ妹の赤まりさが握られていた。
「おにぇーちゃぁあああん!! まりちゃをたちゅけちぇにぇえええええええ!!!」
「いもうとをいじめないでにぇ!! まりしゃにできることならするから、はやくたすけてあげてにぇ!!」
「まあまあ、話を聞けよ。ルールは簡単だ、こいつを落とす。それをお前が受け止めればこいつは返してやる。
でも、落ちる前にお前が受け止められなかったらそのまま地面に激突。単純だろ?」
子まりさは今度こそ自分の土俵で勝負できると思った。
なるほど、これなら勝敗を決めるのは純粋にスピードのみでそこに何らかの不正が介入する余地は無い。
人間の恐ろしいほどの力だって関係ないのだ、勝つ可能性は充分にある。
でも、もし間に合わなかったら妹は死んでしまうのではないか?
「ちなみに、勝負から逃げたらこいつはすぐ潰す。ゆっくりと、じわじわ苦しめて潰す」
「ゆぴぃ!?」
子まりさの逡巡を見抜いたかのようなタイミングで少年が話を続ける。
赤まりさは明確な処刑宣告に悲鳴を上げ、それが子まりさに決断をさせた。
「わかったよ! まりしゃ、やるよ!! にんげんしゃんにかっていもうとをとりもどすよ!!」
「そうこなっくっちゃ」
「おちびちゃん! まりさがかわるよ!!」
「駄目駄目、親の介入は禁止」
見かねたまりさが代わりに勝負を受けようとするが、それは不可能である。
これは、子まりさ自身が持つ“俊足”に対する自信をぶち壊すための遊び(ゲーム)なのだから。
「いいか、この線の後ろからスタートしろ」
「わかったよ!」
少年は地面にバットで一本の線を引き、スタートラインを作る。
そこと赤まりさの落下点と思われる場所はそう距離があるわけではなく、そんなに無茶な条件ではないと感じられた。
「俺が腕を振り上げたらスタートしていいぞ」
「かんたんだにぇ! にんげんしゃんに、こんどこそまりしゃのしゅんそくのしんかをみせてあげるよ!!」
子まりさは自信満々で、赤まりさにも笑顔を振り撒く。
「もうちょっとまっててにぇ! おねーちゃんのおぼうしさんでやさしくうけとめてあげりゅよ!!」
「ゆゆーん! おにぇーちゃんありがちょー!!」
赤まりさは大好きな姉に全幅の信頼を向け、自分が助かると疑ってすらいない。
「おちびちゃんならできるよ!」
「がんばってね! れいむたちがついてるよ!!」
まりさとれいむも、ゲームの条件が酷い物ではないと思ったのか、子まりさに全て任せる事にしたらしい。
自分達がしゃしゃり出て人間の機嫌を損ねたらいけないと判断したようだ。
「それじゃ、いくぞ」
少年が腕をゆっくりと振り被って赤まりさを自分の頭上まで持ち上げようとする。
赤まりさは先程よりさらに高くなった視界から見える世界に驚くが、これも姉が自分を助けてくれるまでの辛抱だと思って楽しむことにしたようだ。
(しゅっごくたかいにぇ!!)
またスタートでの加速のために身体を曲げていた子まりさも、妹達をこ全ての方法で助け出してみせる、と考えていた。
自分が勝ったら人間さんは悔しがる筈、その後に挑発すれば、自分に有利なこのゲームを継続させる事ができる、と。
「ゆぅっ……!」
遂に少年の腕が頂上に達する。
それがスタートの合図となり、ほぼ同時に子まりさは走り出した。
フライングではなく、ほぼ完璧なスタート。
このまま順調に行けば、赤まりさが落ちてくる前に落下予測地点へと先回りできて悠々と妹を受け止められる。
だが、
「大地にっ、還れぇえええええええっ!!!」
「おしょりゃびゅっ!?」
少年は全力で赤まりさを握った腕を振り下ろし、彼女を落下予測地点へと寸分の狂いもなく投げた。
それは、もう投げるどころか叩きつけると言った方が正しかっただろう。
ゆっくり程度の反応速度では追いつくことすら許されず、赤まりさは地面に餡子色の花を咲かせ、数テンポ遅れてそこに到達した姉の顔にべったりと中身を付着させた。
風圧で、赤まりさのものだった帽子がやや離れた場所に落ちる。
「綺麗に弾けたな」
「ゆ? ま、まりしゃのいもうとは……?」
確かに妹は少年の手から離れた、それは分かっている。
なら、ここにいなくてはいけない赤まりさは一体何処に消えてしまったのか。
子まりさはきょろきょろと前後左右にせわしなく顔を向ける。
それは、赤まりさが潰れた瞬間を視認してしまったことを誤魔化す為の虚しい行為であった。
「あ、あかぢゃんがぁあああああ!?」
「ひどいぃいいいいい!! またしんじゃったよぉおおおおお!!!」
後ろから見守っていたまりさとれいむは、三匹めの我が子が殺されたことを嘆く。
両親の言葉を聞いた子まりさも、赤まりさが死んだことをようやく認めた。
「まりしゃは、しゅんそくで……。はやくて……。いもうともたすけて……」
自分の俊足は、肝心な時に何の役にも立たなかった。
なら、こんなあんよに何の意味があるのだろう。
妹一人すら救えない、こんなあんよに。
「何が俊足だよ。全然駄目じゃん」
「……ゆぐっ」
「そんなスピードでよく助けるだとか守るとか言えたもんだ、笑わせる」
「ゆぇええええええん!!!」
恥も外聞もなく、子まりさは泣き叫んだ。
信じていたものが、誇りが、思い上がりが打ち砕かれ、後には何も残らない。
「そんな役立たずな足は……」
「ゆえっ?」
少年の一人が子まりさを摘み上げると、そのあんよと顔の境目にハサミの刃を滑らせる。
「ゆひぃっ!!」
冷たい金属の感触は無機質な恐怖感を与えるものだった。
その刃にはクリームがついていてべとべとしており、子まりさの前にも誰かゆっくりがゆっくりできない目に遭わされたのだろうと分かってしまった。
そして、勢い良く刃は子まりさのあんよを切断する。
「ゆ゛ぎゃぁああああああっ!!!」
ざくっ、と小気味良い音がした後には、子まりさのあんよは体から離れていた。
「まりじゃの、まりじゃのがもじかのようなびぎゃぐがぁあああああ!!!」
己の命とお飾りと、同じくらい大切なあんよ。
それは永遠に子まりさから奪われた。
「いらないよなぁ?」
あんよは地面に投げ捨てられると、少年に踏まれ執拗なまでに磨り潰される。
よほどゆっくり風情に速さが足りないと侮辱されたことが頭にきたのだろう。
「まりざゆずりではんざむなおちびぢゃんの、ずまーどなあんよぐぅぁあああああ!!!」
「どぼじでごんなごどずるのぉおおおおお!?」
「勝負に負けたから罰ゲーム」
「そんなごどぎいでないよぉおおお!?」
「そりゃそうだ、今初めて言ったんだから」
両親の相手はほどほどに切り上げ、子まりさの餡子が零れ落ちないように地面に降ろす。
その際に、中身が直に地面と接触するような置き方をし、子まりさに苦痛を与える。
「い゛っ! い゛っ!!」
人間で言うなら、腰から下を切り落とされて臓器が露出したものを何の手当ても受けず、雑菌だらけの地面に置かれると言った方がその痛みの程度が伝わりやすいだろうか。
気が狂いそうな痛みが断続的に続き、今にも体を揺すって暴れたくなる衝動を必死に抑える子まりさ。
中身が失われたら、それは己の死に繋がることを本能的に分かっているのだろうか。
「でかいのに忠告するぞ。そいつ、下手に動かすと死ぬから」
「「ゆ゛うっ!?」」
まさに子まりさへと駆け出す寸前だった両親は、少年の忠告を聞いて思い止まる。
さっき赤れいむを過失によって死なせてしまったばかりなのだ。
「じゃあどうすれば……」
「放っておけば?」
自分がしておいて実に無責任なことを言う。
しかし、子まりさを少しでも長く現世に留めておきたいならば放っておく事が一番だった。
ゆっくりの治療などではかえってずっとゆっくりさせてしまうことになりかねないからだ。
ただ、それが本当に子まりさへの愛情になるかは疑問が残る。
一刻も早く楽にしてあげたほうが良いのかもしれない。
「そうそう、間違い三つ目。お前等、俺達に迷惑掛けてないって言ったな?」
「そ、そうだよ!! なのにどうしてこんな」
「生きてるだけで迷惑なんだよ。俺達だけじゃなくて、この地球上の生き物皆にとって」
「「ゆゆゆっ!?」」
それを言うなら人間もある意味ゆっくりと同じ部類に分類されるかもしれない。
だが幼い少年達は、まるで何処かの国のように彼等だけの理屈を強引にまりさ達へと押し付ける。
「そうだ、今俺達地球防衛軍ごっこやってるんだよな」
「うん。やっぱりこいつ等駆除するのって、地球の為になるんだね」
「善は急げだ、他のも手っ取り早く始末しよう」
のた打ち回って苦しむ子まりさを尻目に、少年達は淡々と“遊び”の続きの為の準備を始めた。
三、
五体満足な子供達は、赤れいむと赤まりさが一匹ずつ。
少年達は二匹を見比べると、赤れいむをチョイスした。
「赤リボンにしよう。さっきの奴の雑音がまだ耳に残っててすっげーむかつくから」
「どうちてぇえええええ!?」
子れいむの渾身のおうたは、赤れいむに八つ当たりの矛先を向けさせてしまった。
とんでもないとばっちりである。
「きゃわいいれーみゅがこまってりゅんだよぉおおお!!! おちょーしゃんもおかーしゃんもどーちてたちゅけてくれにゃいにょぉおおお!?」
他力本願だが、無力な赤ゆにとって両親はこの場で唯一頼れる存在なのだ。
姉達の内一人は死に、もう一人はかろうじて生きてはいるが動けない状態とどうしようもない。
「おねがいです!! れいむににたおちびちゃんはもう、そのあかちゃんしかいないんですぅううう!!! だからころさないでくださいぃいいい!!!」
自分に似た可愛い娘はもう赤れいむしかいない。
必死で何度も土下座をするれいむ。
上から目線だった言葉遣いも敬語になり、今までとは違う。
「分かったよ。殺さなきゃいいんだな?」
「はい! ありがどうございまずぅううう!!!」
「何勘違いしてやがる」
「ゆ?」
少年は正義の味方というより悪人らしい笑顔を浮かべると、赤れいむを持って近くに生えている木まで近付く。
「にゃにしゅるにょ!?」
「お前のお母さんが泣いて頼むもんだから、死刑だけは勘弁してやるよ」
丁度良い細さの枝を探し当てると、
「奥義、百舌鳥の早贄!!!」
「えげぇえええええっ!!!」
赤れいむの口を枝が貫く。
少年が強引に赤れいむを枝に突き通したのだ。
傷ついたのは口と、貫通した背中の傷だけなので餡子は漏れず、すぐに死に至ることはない。
モズは獲物を食べもせず木の枝に突き刺したままにすることがあるという。
この光景はまさしくそれに近いものがあるだろう。
もっとも、残酷さはそれを軽く上回っているが。
「一瞬で殺してやることもできたんだけどな、お前のお母さんが余計なこと言うから」
「れ、れいむのせいなの!?」
「ああ、可哀想に」
棒読みで少年がれいむを非難する。
「れ、れいむはあかちゃんを……」
「次はクロボウシな」
悲嘆に暮れるれいむを無視し、最後の赤ちゃんが標的にされた。
「もう、やめでぇえええ!!!」
「嫌だね」
もう何度懇願しただろう、まりさの願いはまたも黙殺される。
赤まりさは、夫婦にとっての最後の希望なのだ。
唯一五体満足で、少年達が思い止まればこれからもゆっくりできる可能性がある。
子まりさはあんよをうしなってもう動けないし、木の枝に縫いとめられて奇妙なオブジェと化した赤れいむはもう助からない。
だから、この赤ちゃんだけは……!
「痛いことはしない、でも、じわじわ苦しめてやる」
「ひゃみぇひぇひぇ! ひゃいひゃひょおひゅひ!!」
(やめちぇにぇ! まりちゃのおくち!!)
チューブのようなものを咥えさせられ喚く赤まりさ。
抵抗していると、チューブの中から苦い液体が放出された。
形容し難い味が口内いっぱいに広がっていく。
(にぎゃいぃいいい!!! まじゅいぃいいい!!! こりぇどくはいっちぇりゅ!!!)
甘味を好むゆっくりの味覚にとって絶対に受け付けない味。
いや、およそ生きとし生けるものにとって、その味を好む物は存在しないだろう。
(こんにゃまじゅいもにょまりちゃにのましゃりゅなんちぇ!!)
文句を言ってやろうと口を開けようとすると、違和感を感じる。
(ゆ!? ゆゆ? ゆゆゆ!?)
どうやっても口が開かないのだ。
「成功したか」
赤まりさが口に入れられたもの、それは瞬間接着剤。
口が小さい赤ゆに対してならそんなに多くの量を消費せず、容易に口腔を接着できるのだ。
これで、赤まりさは一生口を開く事ができなくなった。
それは、食事もできないということであり、死を意味する。
「ほれ」
「あかちゃん!!」
まりさの目の前に赤まりさが返還されるがうんともすんとも言わず、ただ涙を流し続けるだけだった。
「あかちゃん! しゃべれないの!?」
こくり、と体を前に倒す赤まりさ。
我が子達に待ち受ける暗い運命に、まりさは呻いた。
四、
これで、今生きているまりさの子供達の中で無事な者は誰一人いなくなった。
「よくも……」
落ち込んでいるまりさの耳に、これまでに一度も聞いた事が無い程低いれいむの声が聞こえた。
「よくも、れいむのかわいいかわいいおちびちゃんたちをぉおおおおおおっ!!!」
れいむが少年達に向けて特攻していたのだ。
人間に勝てないことはこれまでのことで分かっている、しかし理性を感情が上回ったのだ。
憎しみが導くままに、歯を剥き出しにして少しでも彼等に手傷を負わせてやろうとしたのだ。
おちびちゃん達の苦しみを、少しでも!
こんなゲスにおちびちゃん達は理不尽に殺されて、傷つけられたんだ!
「だめだよ……」
まりさは、この次に起こる事を半ば予想していた。
「まって……」
少年がバットを流れるような動作で構えて、れいむが地面を蹴って飛び上がった。
「おねがいだから……」
少年の上半身が捻られ、バットがれいむ目掛けて襲い掛かる。
「やめてぇえええっ!!!」
それは、どちらに向かっての言葉だったのだろうか。
愛するれいむか、はたまた憎き少年か。
いずれにせよ手遅れだった。
「げべぇええええええっ!!!」
吸い込まれるように、れいむの体に少年のバットが直撃した。
上顎から上は衝撃で吹き飛び、後方にいたまりさと赤まりさに餡子や皮がまるでシャワーのように降りかかる。
勢いを失って落ちた下顎はしばらく舌をびくびくと痙攣させていたが、やがてその動きも止まった。
「れいむぅうううううううううううっ!!!」
たった今れいむを撲殺した少年は額を拭う仕草をして、
「正当防衛だからな」
と言った。
まりさは、結局家族を誰一人守れなかったのだ。
「あ……。ゆぁあっ……!」
呆然としている間に帽子が奪われ、ハサミで切り刻まれる。
「これで、お前はもうゆっくりできない」
「……して」
「え?」
「まりさを、まりさたちをころしてください……」
家族を誰一人守れない父親は、存在価値が無いのだ。
子まりさ、赤まりさ、赤れいむも長くはあるまい。
寧ろ、もう生きていたくないのだ。
早くあの世に行ってまた家族で皆仲良く暮らしたい。
今のまりさの願いはそれだけだった。
「どうする?」
「ん~」
少年達は考えながら時計を見て、
「却下」
それだけを告げた。
「……なんで? にんげんさんなら、まりさたちをころすなんてかんたんでしょ!?」
頼みもしないのに散々まりさ達を傷つけて殺したくせに!
「もう疲れた」
「それに、自分から殺してって言われたから萎えた」
「ていうか、飽きた」
「腹減ったし」
子供は飽きっぽいのだ。
勝手な理由で行動し、勝手な理由でそれを止める、自由気儘な存在。
その行動の対象が、今回偶々まりさ達一家やその所属していた群れだっただけの話。
ゆっくりにはどうしようもない、天災みたいなものだ。
「じゃーな」
「生きてたらまた会おうぜ」
「元気でなー」
「楽しかったぜ」
遊ぶだけ遊ぶと、少年達は足早に立ち去って行った。
彼らは家に戻り、暖かい夕食を食べて心地良い疲れと共に熟睡することだろう。
「……ゆ、ゆがぁああああああああああああああああああああああああっ!!!」
後には、ほんの少し前までとてもゆっくりしていたまりさ一家の成れの果てが残された。
五、
緩慢な動作でまりさは動き始めた。
「おちびちゃん……」
子まりさは、蟻に群がられていた。
自慢の俊足もあんよが失われていては逃げられず、餡子が漏れないように体を僅かに揺らすしか抵抗手段はない。
それなのに、蟻は小さい体を生かして地表から直接子まりさの体内に潜り込んで餡子を奪っていくのだ。
「ありざんやめでぇえええ!! まりじゃのあんごもっでがないでぇえええっ!!」
普段は遊び感覚で獲物としていた蟻、そんな矮小な存在に、今自分が捕食されようとしている。
「もうありざんたべまぜん!! だからやめでぇええええ!!!」
内側から侵食される恐怖を味わう子まりさを、まりさは救う事ができない。
子まりさ目当ての夥しい数の蟻から、赤まりさを守ることで手一杯だったのだ。
「おとーじゃんだじゅけでぇえええ!! なんでたじゅげでぐれないのぉおおお!! おがーじゃあああん!! れいみゅぅううう!!」
もう意識が混濁して喚き散らすことしかできず、子まりさは蟻達の栄養となるしかなかった。
真っ黒な塊と化し、声さえ出せなくなりながらも死ぬまでには翌日までかかり、貪られ続けたのである。
「ごめんね……」
赤れいむは、夕暮れ近くになってやってきたカラスにその身を啄ばまれていた。
何でも食べるカラスにとって赤ゆっくりはご馳走である。
「からすさんはおちびちゃんをたべないでね!! ぷくぅううううううっ!!!」
痛む体に鞭打って威嚇をするが、地面から見上げるだけでは当然カラスに太刀打ちできず、赤れいむがカラスの胃に収まるのを黙って見ているだけだった。
「……」
赤まりさを口に入れて巣の中に帰り、眠りにつく。
ご飯を食べる気分ではなかったし、食事ができない赤まりさの前で一人だけ夕食をとるのは憚られたからだ。
そうすれば、今日の事は悪夢で、目が覚めればまたゆっくりした家族の顔があるのだと儚い希望を抱きながら。
六、
目が覚めたまりさはおうちの中を見渡すと、そこには赤まりさしかいなかった。
現実は厳しく、夢ならばどんなによかったか。
「おはようあかちゃん……」
「……」
赤まりさは返事ができなかったが、目線を返す。
やはり食事をしていないから弱っているようだ。
「おとうさんは、だれかいきてるゆっくりがいないかみてくるよ。いいこにしててね」
「……」
外に出ると、昨日の惨劇の爪痕が色濃く残っていた。
れいむと子供達の死体は捕食されて幾らか減ってはいたが、それでも凄惨な光景だった。
「ゆ、ゆげぇえええっ!!!」
まりさはあまりの気分の悪さに餡子を吐き出し、荒い呼吸をする。
ありすの死体も、虫が集って直視できない状態になっていた。
その場から逃げ出すように急いで広場へと向かう。
「みんな、いない……」
そこも似たような有様で、息をしているゆっくりは一匹もいなかった。
比較的まともな形で死んでいるものはまだ良い方だったぐらいだ。
「……」
ありすのおうちだったところにも足を運んでみたが、やはりそこにも絶望しか残っていなかった。
ぱちゅりーは死んでいて、その付近には、彼女とありすの一粒種になる予定だった筈の赤ちゃんらしき死体が転がっているだけ。
これで、まりさの知り合いは皆死んでしまった事になる。
「ただいま……」
とぼとぼとおうちに帰ると、赤まりさは目を閉じていた。
「あかちゃん、おねむなの?」
舌で舐めると、こてん、と転がったまま微動だにしない。
「あかちゃん? おとうさんだよ?」
呼びかけても一向に起きない。
赤まりさは、餓死したのだ。
「みんな、しんじゃったよ……」
おうちは、相変わらず立派だった。
でも、大切な物は。
「れいむも、おちびちゃんたちも、ゆっくりぷれいすもなくなっちゃったよ」
家族や群れのゆっくりした仲間がいてこそのゆっくりプレイス。
「まりさは、なにもまもれなかったよ。やくそくしたのに、まもれなかったよ……。まりさは、まりさは……」
広くなったおうちの中で、まりさの呟きだけが何時までも聞こえていた。
七、
一方、まりさ一家を悲しみが襲った日、家に帰った少年の一人は用意されていた夕食を母親と食べていた。
「今日お父さん遅くなんの?」
「そうみたいね」
「今日はな、俺、地球を守ってたんだぜ」
「この子は訳分からないこと言って……」
溜め息をつく母親に、誤解されないよう分かりやすく説明する。
「えーと、地球防衛軍ごっこだよ。森入ってゆっくり殺して遊んでたんだ」
「何だ、いつもと似たようなことしてただけじゃないの。また大袈裟な」
人間にとって、このようなことは日常茶飯事なのであった。
餡庫始まってもう一年になるんですね。
この道に興味持って半年未満の自分ですが、おめでとう、とだけ言わせて貰います。
ふたば系ゆっくりいじめ保管庫見たら売春婦4に新しい挿絵が!
儚いあき様、有難うございます!!
Can ゆー defend? 中編の子れいむのマクロスの奴パクったおうた、あれ自分で口ずさみながらチェックして書いてたんですが、親に聞かれて恥かいたのは黒歴史。
ヤリまむあきでした。