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虚無の使い魔と煉獄の虚神-10 - (2008/01/01 (火) 20:08:30) の1つ前との変更点

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その夜、身体は確かに重なり合っていた。 心も確かに重なったと思っていた。 そう、思い込んでいた。 【虚無の使い魔と煉獄の虚神】 アルビオン女王ティファニアの即位式は、近年まれに見る盛大なものになった。 ロマリア法皇を筆頭としてハルケギニア各国の指導者達が一堂に会するなど、そうある事では無い。 宮殿の大広間は荘厳な空気によって満たされていた。 天より降り注ぐのはステンドグラスに屈折させられた色とりどりの陽光達。 柔らかな明かりに照らされる貴族達の顔は、皆一様に厳めしい様子をしていた。 伝説では始祖ブリミルがアルビオンに降臨して最初にシティ・オブ・サウスゴーダを、 次にこのロンディニウム、その中心であるハヴィラント宮殿を建造したと伝えられる。 真偽の程はともかく、歴史と格式においてはロマリアの大聖堂を上回る宮殿だ。 6000年と言う時間が、広間に居る者達全ての上に深深と降り積もる。 蓄積された歴史。それが保持する想念と魂。 神聖さの皮を被るために作り上げられた大気は、逆に虚飾を剥ぎ取る効果を持っている物だ。 王侯たちの仮面に隠された警戒と欲望と策謀が、ステンドグラスの陰影のように諸侯の顔に浮かび上がっていた。 この戴冠はハルケギニアの未来を占う一手。 張り巡らされた欲得の意図が、蜘蛛の糸が獲物を捕えるが如くにじっと沈黙の中で待つ。 ここに有るのは、見かけとは裏腹の俗世の滓だけなのかもしれなかった。 張りつめた空気が揺らぐ。 足音も衣擦れの音さえも響く中、静々と現れるのは聖杖を手にしたアルビオン教会の司教達。 その司教達が複雑で退屈な儀式によって場を清めた後、壇上にロマリア法皇・エイジス三十二世が現れた。 端正な、端正すぎる美貌の若き法皇の唇から始祖への祈祷が零れ落ちる。 聖歌隊じみた清浄でありながら深く強く響く声による祈りの声。 満座の人間達から生み出されて篭っていた人の気と熱が、新春の風に吹かれたかのように掃われてゆく。 それこそが、若干20代の若輩がハルケギニアにおける至高の格式を誇るロマリアの玉座に収まった理由にも思えた。 「いよいよ戴冠ですわね、アンリエッタ」 「はい……ハルケギニアの歴史に刻まれる戴冠ですわ、母さま」 並み居る貴賓の中で、筆頭の座席に迎えられるのは王女アンリエッタとその母であるトリステイン大后マリアンヌ。 前王弟の妻とその娘であり、新女王の伯母と従妹ともなれば、この序列も当然であろう。 本来ならば大后を第一とし、王女は第二となるのが原則ではあるが、 順序が逆転してアンリエッタが第一座に腰掛けているのは、彼女の女王即位が近日中に内定しているからである。 その二人を、下座から面白く無さそうに見ているのはゲルマニア皇帝アルブレヒト三世だ。 好色漢として、そして同じくらい精力的かつ野心的な政治家として知られる皇帝だったが、今回はほぼ蚊帳の外である。 自国の貴族、ツェルプストーの一人娘も今回のアルビオン王政府逆転劇の英雄とされては居るが、 やはり並み居る伝説の再来を前にしては端役に過ぎないだろう。 そもそも、アルブレヒトにとって自国の大貴族などライバルに他ならない。 自分と共に列席したツェルプストー当主とその夫人の誇らしげな顔を見て、皇帝はこっそりと舌打ちした。 レコンキスタの脅威が晴らされたのは喜ばしいが、それに伴ないアンリエッタとの結婚が破棄になってしまった。 元々水面下での話し合いの末に決定された事で、まだ発表される前だったために、誰の名誉も傷付かなかったとは言え、 逃がした麗しき若鮎の味を想像するだに惜しい事をしたと思う。 それだけでも不機嫌になる要素は十分だと言うのに、その上更に腹立たしい事がゲルマニア皇帝には有った。 自分の席次が列席した3つの大国、当事国たるアルビオンと儀式を執り行うロマリアを除く三国の中で最下位だという事実。 国王本人でなく、名代の小娘を送り込んできたガリア。 ジョゼフ国王息女イザベラよりも下位の席に自分が置かれた事を、隠しもせずに苦々しく思うアルブレヒトであった。 尤も、蚊帳の外という意味ではガリアとて変わりは無い。 より正確には、おのずから望んで蚊帳から外に出たと言うべきか。 ジョゼフの指示により、イザベラはタバサとグレン・アザレイの戦果を謹んでアルビオンに譲渡した。 つまり、50隻の戦艦、5万の兵士を一瞬で打ち破った伝説を、アルビオンの力とする事を勧めたのである。 どうしても国力の低下を免れていないアルビオンにとっては垂涎の譲渡であった。 5万を打ち破る最強の風魔法は、アルビオンの領土を切り取ろうと望む野心家達を1人残らず封じ込める。 また、国内に少なからず残る反乱の火種を吹き消す風ともなろう。 それが、ガリアに対してとてつもなく大きな借りを作る事になってしまうとしても。 元々低姿勢だったアルビオンの外交筋が、更に慇懃になったとイザベラは単純に笑っている。 だが彼女の側に控えるグレンやタバサ、それにカステルモールは気付いていた。 ジョゼフは、タバサ達の首を自分の権力で刎ねられる位置に置いておく事を狙っていると。 その身柄を、地位をアルビオンに保障させるわけにはいかぬと、そのための策だと、彼等は知った上で乗った。 この優雅かつ壮麗な、1ヶ月以上にも渉る祝祭が終わる時。 それが、あるいは決戦の時になるかもしれないと、タバサは氷のように表情を変えぬ仮面の下で考えていた。 悲喜交々、様々な思惑が入り混じる仮面劇の舞台に、主演女優が入場する。 ざわめく満座の貴族達。 当然だろう。 たとえ事前に知っていたとしても、彼等の殆どが始めてティファニア女王の姿を見るのだから。 アルビオンの、いやハルケギニア初のエルフの血を引く女王の戴冠。 その衝撃を、アルビオン貴族は可能な限り効果的に利用した。 七色の羽根をあしらった純白のドレスに、王家を象徴する明るい紫のマント。 前髪を上げ、複雑に結い上げられた髪型は美しいかんばせとエルフの特徴である耳をこの上なく目立たせている。 豊か過ぎるバストが押し上げる胸元には王家の紋章。 手には特に儀式の時のみ用いられる、巨大な水晶のはまった古杖を握る。 その装いの全てが、ティファニアの彫像じみた美貌を最大限にまで飾り立てていた。 ざわめきは一瞬にして静寂に取って代わられる。 エルフに対する本能的な恐怖と、美貌に対する素直な感嘆。 その二律背反が、その場の誰からも言葉を奪ったのだ。 ゴクリと、誰かが息を呑む音がして―――それが余計に沈黙を強いる。 今なら、息を吐き出す音さえもこの大広間に響くような気がしたからだ。 圧倒的な静寂の中、ティファニアと、その隣に影のように従う女宰相マチルダ・オブ・サウスゴーダが静かに進む。 祭壇を前に膝をついた彼女を向かえるのは、ただ1人平静と微笑を崩さぬ教皇エイジス三十二世だ。 壁に直接彫刻され、錬金によって黄金に飾られている始祖像を背に、教皇の姿は伝説の聖者そのものにすら見える。 「汝、アルビオン王女ティファニア。 そなたは始祖ブリミルの御名の下、アルビオンの王としての責務に全霊をかける事を誓うか?」 「誓います」 「汝、アルビオン王女ティファニア。 そなたは始祖ブリミルとアルビオン王家の名の下、全ての国民の幸福を守るために杖を取ると誓うか?」 「誓います」 「汝、アルビオン王女ティファニア。 そなたは杖にかけて、王女としてメイジとして名誉と誇りと信仰を守り抜くと誓うか?」 「この杖にかけて」 「よろしい。ならば始祖と我が名、ロマリア法皇エイジスの名において、 アルビオン女王ティファニアに王権の継承と戴冠を認める」 膝をつきこうべを垂れるティファニアの頭上に、美しき法皇の手から冠がかぶせられた。 形式とは言え、この瞬間にティファニアは始祖ブリミルの血統であるとロマリアによって認められた事になる。 その正当性に異を唱える者は、ロマリアの権威に対して異を唱えるのど同等とされると云う事だ。 「心からの祝福を、神聖にして偉大なるブリミルの正しき後継者、私の兄弟よ」 だが、続けて発せられた言葉に、広間の貴族達がざわめく。 法皇の言葉は戯言では済まない。 公式の、しかもこれほど大規模な儀式の場で発せられた言葉の重みはアルビオン大陸そのものよりも重かろう。 それが「ブリミルの正しき後継者」にして「私の兄弟」などとは。 ありえない言葉に、各国の貴族達どころかアルビオン貴族でも中枢に居ない外様――今回の内乱で 日和見を決め込んでいた者――達もが驚愕に震えている。 その混乱はアルブレヒトにとっても同じだった。 これでは、ロマリアが、否ハルケギニア全土の教会がアルビオンを全面的に支持すると言っているようなものでは無いか。 ゲルマニア皇帝はせわしなく視線を泳がせ、そしてアンリエッタやガリアの小娘がまるで動揺していない事に気がついた。 思わず歯噛みする。 これが、知る者と知らぬ者を隔てる壁こそが、この席次の意味かと気がついたのだ。 数少ない動揺していない者、つまりこれから先の展開を知っている者達が、整然と動き始めた。 トリステイン第二位、王家に次ぐ権勢を誇る大貴族ヴァリエール家の席から、1人の娘が立ち上がる。 桃色の髪。鳶色の瞳。 小さな身体に一杯の誇りをみなぎらせた、ヴァリエールの精髄のような少女だ。 アルビオン様式の白いドレスを纏い、貴族の証たるマントはなぜだか付けていない。 育ちを感じさせる洗練された動作で、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールは祭壇へと歩む。 その途中、こちらも立ち上がっていたアンリエッタの前で膝をついたルイズに、マリアンヌ大后の手からマントが掛けられた。 更なる驚愕が満場に満ちる。 それはマリアンヌ自身が、自らのマントを外して少女に与えたからだ。 自身の王位継承権、トリステインの第二位たるそれを破棄し、少女を擁立するという意思表示に他ならない。 文句を言う者は居ないだろう。 ヴァリエールの直系ならば、それだけの血統と家格、そして権力は有している。 だが、そうそう有り得る事でも無いし、なぜこの場でという疑問も残った。 そんな困惑を置き去りに、ルイズは祭壇にたどり着き、女王ティファニアと法皇エイジスに並んで立つ。 「私は祝う。この喜ばしき日を。 偉大なる始祖の残したる奇跡、おおいなる力、虚無の系統の復活の日を。 そして運命に導かれ、この良き日良き場所にてその担い手が三人、こうして揃った事を!」 エイジスの宣言は、最初誰もが意味を飲み込めなかった。 やがてジワジワとその意味を理解し、人々は先程まで以上の激しい驚きの渦に投げ込まれることとなる。 アルビオン王家の逆転劇。 50の戦艦と5万の兵士を一瞬で沈め、8万の軍隊を突破して、数百リーグ離れた敵本拠を落とした奇跡。 反撃ののろしから勝利までわずか3日という、現代の神話。 いかなる強大な魔法がそれをおこしたのか。 他国の王侯貴族の誰もが知りたがった答えが、ここに明かされたのだ。 目の前で呪文が唱えられる。 聖句にも似た、誰もが初めて聞くルーンの連なり。 ルイズが唱えるそれは、幻影の魔法。 実物さながらの幻が、広間の天井にあの戦いの様子を映し出していた。 前方に8万の兵士。自軍はわずかに500人。 その先陣を駆けるのは、全裸の飛行魔導師と1人の剣士の背中だ。 誰もが上を見上げ、その迫真の映像に見入る中、ティファニアの「虚無」が心に直接語りかける。 (これは本当にあった戦いの記憶。私達を守って戦ってくれた使い魔の勇姿) 系統魔法にはない、精神を司る虚無魔法の初歩の初歩「念話」に驚く人々に、法王が告げた。 「紹介しましょう。我等が使い魔、伝説の神の盾と神の笛、そして名も無きもう一人を」 静かな、けれど良く通る声に人々はエイジスへと目を向け、その指差す天井へと再び目を向け――あっと声を上げた。 そこに開くのは空間の穴。 移動を司る虚無魔法の中級の下「移動の門」により、そこは宮殿の外と繋げられていたのだ。 「馬鹿な!? あれは我が公国の!?」 叫んだのはクルデンホルフ大公だろう。 蒼穹に見事な隊列を組んで空を舞うのは、大公国が誇る空中装甲騎士団の竜なのだから。 本来その主人の言う事しか聞かず、そもそも調教に時間がかかるドラゴン。 それをああも容易く見事に操るのは、伝説の神の笛ウィンダールヴに違いあるまい。 あらゆる獣を操るその力の前には、虎の子の竜騎士団も意味を成すまい。 まさか勝手にその証明のために使われるとは業腹な事だと、政敵の慌てぶりに少しだけ溜飲を下げたアルブレヒトであった。 そうこうする内にも、編隊から外れた二頭の竜と1人の男が降りてくる。 三人の虚無の使い手の左右に降り立った竜からは、白銀の鎧を纏った二人の騎士。 そして正面にはブーメランパンツ一丁でスキンへットの男が空中から降り立つ。 あらかじめ打ち合わせされていたのだろう。 数人の女官が現れて裸の男にガウンとシュバリエのマントを着せて体裁を整えた。 男とは、もちろん錬金大系魔導師・スピッツ・モード。 「あれが記すことさえはばかられる使い魔か」「確かにはばかられる」と、紳士淑女がひそひそと言い交す。 エイジス三十二世自身はそんな事は言っていないのだが、杖も持たずに空を舞う姿にはそう誤解させるだけの説得力があった。 ともかく、三人が降り立ったのと同時に天井の門は消え、広間は元の姿を取り戻す。 変化したのは、とても広間の入り口からは入らないはずの竜の巨体が二つ。 そして虚無の使い手達の前に跪く三人の使い魔達であった。 1人はロマリアを表す青と赤に聖なる白のペンタグラムが染め抜かれたマント。 メイジのそれに近い、白い軽装竜騎士の装束に身を包んだ神官・ジュリオ・チェザーレ。 1人はアルビオンを象徴する青に七色の羽根を意匠したシュバリエのマント。 ベルトを緩めれば即座に脱衣できるように工夫された仕立のガウンを着た魔導師・スピッツ・モード。 最後の一人は、トリステインとヴァリエール家の紋章が共に刺繍されたシュバリエのマント。 白銀の軽装鎧を身に纏い、伝説の剣デルフリンガーを背負った細身で長身の騎士。 鎧のために顔は窺えないが、美しい金髪がその隙間から覗いている。 「この三名を、今日この日より虚無の自由騎士に任じる。 すなわち、ただ虚無の使い手を守護することのみをその使命とし、いかなる国権・利害にも縛られぬシュバリエ。 彼等のその権利と義務を、アルビオン、トリステイン、そしてロマリアの名において認めるものとする」 どよめく貴族達。 そして同時に納得した。 たった一人で戦況を変える力。一騎当千どころか万の兵士に匹敵する戦力。 その保有によって国単位の軍事力を変化させる存在。 そんなものを、アルビオン一国、それどころかヴァリエール公爵家が単独で持つ危険性。 それを緩和するための自由騎士宣言だ。 他国の干渉を最小限にして国の建て直しに時間を費やしたいアルビオン。 大きすぎる力を持ったために、他の貴族から危険視される事を避けたいヴァリエール。 ヴァリエールを危険視しつつ、その力を自国に繋ぎ止めておきたいトリステイン。 虚無の力を束ねて聖地奪還を望む、しかし同じく聖地奪還を掲げたレコンキスタの反乱のせいで、 まだ実際に軍事的な行動としては動きを始めにくいロマリア法皇。 それぞれの思惑が重なった結果が、この虚無の使い手と使い魔の発表、その処遇なのだと。 戴冠の儀式は続く。 これから新女王は祝福の言葉を幾つも送られ、自身の決意を詩として始祖像に捧げねばならない。 その儀式を残して、ヴァリエールの娘は自らの使い魔に抱き上げられて場を辞した。 あくまでも、この式の主役はティファニアだからだと言う配慮であろう。 また、お姫様だっこで運ばれるルイズの姿に、あの二人は婚約でも交わしているのだろうと噂しあった。 そう、周囲の人々は思っている。 だが真実はまるで違うのだ。 退場する娘を見送る、ヴァリエール夫妻の苦々しい表情。 二人の側に控える、従来は身体が弱く公式の席には現れなかった次女の姿。 そして、この場には居ないヴァリエール家長女。 その全てが示す内幕を知っているテファとマチルダは、友人と言ってもよい少女を壇上から心配そうに見送るのだった。 「まったく……なんで私がこんなマネをしなきゃならないのかしら」 「……ごめんなさい、姉さま」 ドカッとソファに身を投げ出すように座った鎧の人物に、まるで覇気のないルイズが謝罪する。 ここはヴァリエール公爵家に用意された宮殿の一室。 魔法による聞き耳をたてる者が居ないのを確認して兜を外したのは、ルイズの姉エレオノールだった。 「いいわ。貴女が悪いわけでは無いもの。 なにより、こんな事になって一番キツいのはちびルイズだって事はよく判ってるわ」 「姉さま……」 「悪いのは逃げ出した貴女の使い魔よ。サイトと言ったかしら? その平民、見つけたら私もお父さまもタダじゃおかないわ―――って言うか殺す」 慣れない、重い鎧を外しながら、エレオノールが毒づく。 そう。 戴冠式を前にして、ガンダールヴは逃げ出してしまったのだ。 その事を隠すため、法皇とテファ、それにマチルダとアンリエッタやヴァリエール公爵が合議。 秘密を知る人間を最小にするため、伸長と体力と鑑みてエレオノールが偽サイトを演じる事になってしまったのだった。 ちなみに「胸が無いので男装に無理が無い」というのも選ばれた理由の一つなのも、エレオノールがカリカリしている理由である。 「やめて姉さま! サイトは悪くないわ! サイトを追い詰めたのは私なの。 それに、サイトに抱かれたのだって……私が望んだ事だもの」 が、それ以上に彼女を立腹させているのは、サイトがただ逃げただけでは無いと云う事だ。 エレオノールがまだ会った事も無い、その平民の使い魔は、こともあろうにルイズを傷物にしてから逃げ出したのである。 その事を愛娘から聞かされた時、公爵は使用人達に草の根分けても探し出せと命じようとして―――その一瞬後に押し黙った。 静かに、ただ静かに怒り狂う妻の迫力に圧倒されたのである。 伯爵夫人カリーナ、かつて「烈風カリン」の名で恐れられた母の怒りに、同行していた娘達も震え上がった。 その事が、幸いにも機密の漏洩を防ぐ結果となる。 アルビオン、トリステイン、そしてヴァリエール家が抱える信頼の置ける密偵が合議の末放たれ、姿をくらませたサイトを探す。 見つければ打ち首――と言うワケにはもういくまい。 たとえ代理を立てての儀式であったとしても、各国王侯の前でサイトには過ぎた地位が与えられたのだ。 「きっと色々あって混乱しちゃってるだけなんだわ。 サイトは絶対、私の所に戻ってきてくれるはずだもの」 それになにより、今の様子を見るにルイズが決して許すまい。 ならば一度魔法でボコボコにして、是が非でも娘の婿として迎える他あるまい。 それが、公爵の選んだ答えだった。 エレオノールもその選択には否は無い。 望むのは、サイトをボコる時には自分も絶対に参加しようと云う事ぐらいだ。 「なんでも良いから、とっとと帰ってきなさいよね……」 弱々しい妹を見るに忍びず、窓の外の高い高い空を見つめながら、エレオノールは疲れた声で呟くのだった。 さて、そうして遥か高空で知らない間に大変なことになっているサイト本人はどうしているかと言うと…… 女の所に居たりするのだった。
その夜、身体は確かに重なり合っていた。 心も確かに重なったと思っていた。 そう、思い込んでいた。 【[[虚無の使い魔と煉獄の虚神]]】 アルビオン女王ティファニアの即位式は、近年まれに見る盛大なものになった。 ロマリア法皇を筆頭としてハルケギニア各国の指導者達が一堂に会するなど、そうある事では無い。 宮殿の大広間は荘厳な空気によって満たされていた。 天より降り注ぐのはステンドグラスに屈折させられた色とりどりの陽光達。 柔らかな明かりに照らされる貴族達の顔は、皆一様に厳めしい様子をしていた。 伝説では始祖ブリミルがアルビオンに降臨して最初にシティ・オブ・サウスゴーダを、 次にこのロンディニウム、その中心であるハヴィラント宮殿を建造したと伝えられる。 真偽の程はともかく、歴史と格式においてはロマリアの大聖堂を上回る宮殿だ。 6000年と言う時間が、広間に居る者達全ての上に深深と降り積もる。 蓄積された歴史。それが保持する想念と魂。 神聖さの皮を被るために作り上げられた大気は、逆に虚飾を剥ぎ取る効果を持っている物だ。 王侯たちの仮面に隠された警戒と欲望と策謀が、ステンドグラスの陰影のように諸侯の顔に浮かび上がっていた。 この戴冠はハルケギニアの未来を占う一手。 張り巡らされた欲得の意図が、蜘蛛の糸が獲物を捕えるが如くにじっと沈黙の中で待つ。 ここに有るのは、見かけとは裏腹の俗世の滓だけなのかもしれなかった。 張りつめた空気が揺らぐ。 足音も衣擦れの音さえも響く中、静々と現れるのは聖杖を手にしたアルビオン教会の司教達。 その司教達が複雑で退屈な儀式によって場を清めた後、壇上にロマリア法皇・エイジス三十二世が現れた。 端正な、端正すぎる美貌の若き法皇の唇から始祖への祈祷が零れ落ちる。 聖歌隊じみた清浄でありながら深く強く響く声による祈りの声。 満座の人間達から生み出されて篭っていた人の気と熱が、新春の風に吹かれたかのように掃われてゆく。 それこそが、若干20代の若輩がハルケギニアにおける至高の格式を誇るロマリアの玉座に収まった理由にも思えた。 「いよいよ戴冠ですわね、アンリエッタ」 「はい……ハルケギニアの歴史に刻まれる戴冠ですわ、母さま」 並み居る貴賓の中で、筆頭の座席に迎えられるのは王女アンリエッタとその母であるトリステイン大后マリアンヌ。 前王弟の妻とその娘であり、新女王の伯母と従妹ともなれば、この序列も当然であろう。 本来ならば大后を第一とし、王女は第二となるのが原則ではあるが、 順序が逆転してアンリエッタが第一座に腰掛けているのは、彼女の女王即位が近日中に内定しているからである。 その二人を、下座から面白く無さそうに見ているのはゲルマニア皇帝アルブレヒト三世だ。 好色漢として、そして同じくらい精力的かつ野心的な政治家として知られる皇帝だったが、今回はほぼ蚊帳の外である。 自国の貴族、ツェルプストーの一人娘も今回のアルビオン王政府逆転劇の英雄とされては居るが、 やはり並み居る伝説の再来を前にしては端役に過ぎないだろう。 そもそも、アルブレヒトにとって自国の大貴族などライバルに他ならない。 自分と共に列席したツェルプストー当主とその夫人の誇らしげな顔を見て、皇帝はこっそりと舌打ちした。 レコンキスタの脅威が晴らされたのは喜ばしいが、それに伴ないアンリエッタとの結婚が破棄になってしまった。 元々水面下での話し合いの末に決定された事で、まだ発表される前だったために、誰の名誉も傷付かなかったとは言え、 逃がした麗しき若鮎の味を想像するだに惜しい事をしたと思う。 それだけでも不機嫌になる要素は十分だと言うのに、その上更に腹立たしい事がゲルマニア皇帝には有った。 自分の席次が列席した3つの大国、当事国たるアルビオンと儀式を執り行うロマリアを除く三国の中で最下位だという事実。 国王本人でなく、名代の小娘を送り込んできたガリア。 ジョゼフ国王息女イザベラよりも下位の席に自分が置かれた事を、隠しもせずに苦々しく思うアルブレヒトであった。 尤も、蚊帳の外という意味ではガリアとて変わりは無い。 より正確には、おのずから望んで蚊帳から外に出たと言うべきか。 ジョゼフの指示により、イザベラはタバサとグレン・アザレイの戦果を謹んでアルビオンに譲渡した。 つまり、50隻の戦艦、5万の兵士を一瞬で打ち破った伝説を、アルビオンの力とする事を勧めたのである。 どうしても国力の低下を免れていないアルビオンにとっては垂涎の譲渡であった。 5万を打ち破る最強の風魔法は、アルビオンの領土を切り取ろうと望む野心家達を1人残らず封じ込める。 また、国内に少なからず残る反乱の火種を吹き消す風ともなろう。 それが、ガリアに対してとてつもなく大きな借りを作る事になってしまうとしても。 元々低姿勢だったアルビオンの外交筋が、更に慇懃になったとイザベラは単純に笑っている。 だが彼女の側に控えるグレンやタバサ、それにカステルモールは気付いていた。 ジョゼフは、タバサ達の首を自分の権力で刎ねられる位置に置いておく事を狙っていると。 その身柄を、地位をアルビオンに保障させるわけにはいかぬと、そのための策だと、彼等は知った上で乗った。 この優雅かつ壮麗な、1ヶ月以上にも渉る祝祭が終わる時。 それが、あるいは決戦の時になるかもしれないと、タバサは氷のように表情を変えぬ仮面の下で考えていた。 悲喜交々、様々な思惑が入り混じる仮面劇の舞台に、主演女優が入場する。 ざわめく満座の貴族達。 当然だろう。 たとえ事前に知っていたとしても、彼等の殆どが始めてティファニア女王の姿を見るのだから。 アルビオンの、いやハルケギニア初のエルフの血を引く女王の戴冠。 その衝撃を、アルビオン貴族は可能な限り効果的に利用した。 七色の羽根をあしらった純白のドレスに、王家を象徴する明るい紫のマント。 前髪を上げ、複雑に結い上げられた髪型は美しいかんばせとエルフの特徴である耳をこの上なく目立たせている。 豊か過ぎるバストが押し上げる胸元には王家の紋章。 手には特に儀式の時のみ用いられる、巨大な水晶のはまった古杖を握る。 その装いの全てが、ティファニアの彫像じみた美貌を最大限にまで飾り立てていた。 ざわめきは一瞬にして静寂に取って代わられる。 エルフに対する本能的な恐怖と、美貌に対する素直な感嘆。 その二律背反が、その場の誰からも言葉を奪ったのだ。 ゴクリと、誰かが息を呑む音がして―――それが余計に沈黙を強いる。 今なら、息を吐き出す音さえもこの大広間に響くような気がしたからだ。 圧倒的な静寂の中、ティファニアと、その隣に影のように従う女宰相マチルダ・オブ・サウスゴーダが静かに進む。 祭壇を前に膝をついた彼女を向かえるのは、ただ1人平静と微笑を崩さぬ教皇エイジス三十二世だ。 壁に直接彫刻され、錬金によって黄金に飾られている始祖像を背に、教皇の姿は伝説の聖者そのものにすら見える。 「汝、アルビオン王女ティファニア。 そなたは始祖ブリミルの御名の下、アルビオンの王としての責務に全霊をかける事を誓うか?」 「誓います」 「汝、アルビオン王女ティファニア。 そなたは始祖ブリミルとアルビオン王家の名の下、全ての国民の幸福を守るために杖を取ると誓うか?」 「誓います」 「汝、アルビオン王女ティファニア。 そなたは杖にかけて、王女としてメイジとして名誉と誇りと信仰を守り抜くと誓うか?」 「この杖にかけて」 「よろしい。ならば始祖と我が名、ロマリア法皇エイジスの名において、 アルビオン女王ティファニアに王権の継承と戴冠を認める」 膝をつきこうべを垂れるティファニアの頭上に、美しき法皇の手から冠がかぶせられた。 形式とは言え、この瞬間にティファニアは始祖ブリミルの血統であるとロマリアによって認められた事になる。 その正当性に異を唱える者は、ロマリアの権威に対して異を唱えるのど同等とされると云う事だ。 「心からの祝福を、神聖にして偉大なるブリミルの正しき後継者、私の兄弟よ」 だが、続けて発せられた言葉に、広間の貴族達がざわめく。 法皇の言葉は戯言では済まない。 公式の、しかもこれほど大規模な儀式の場で発せられた言葉の重みはアルビオン大陸そのものよりも重かろう。 それが「ブリミルの正しき後継者」にして「私の兄弟」などとは。 ありえない言葉に、各国の貴族達どころかアルビオン貴族でも中枢に居ない外様――今回の内乱で 日和見を決め込んでいた者――達もが驚愕に震えている。 その混乱はアルブレヒトにとっても同じだった。 これでは、ロマリアが、否ハルケギニア全土の教会がアルビオンを全面的に支持すると言っているようなものでは無いか。 ゲルマニア皇帝はせわしなく視線を泳がせ、そしてアンリエッタやガリアの小娘がまるで動揺していない事に気がついた。 思わず歯噛みする。 これが、知る者と知らぬ者を隔てる壁こそが、この席次の意味かと気がついたのだ。 数少ない動揺していない者、つまりこれから先の展開を知っている者達が、整然と動き始めた。 トリステイン第二位、王家に次ぐ権勢を誇る大貴族ヴァリエール家の席から、1人の娘が立ち上がる。 桃色の髪。鳶色の瞳。 小さな身体に一杯の誇りをみなぎらせた、ヴァリエールの精髄のような少女だ。 アルビオン様式の白いドレスを纏い、貴族の証たるマントはなぜだか付けていない。 育ちを感じさせる洗練された動作で、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールは祭壇へと歩む。 その途中、こちらも立ち上がっていたアンリエッタの前で膝をついたルイズに、マリアンヌ大后の手からマントが掛けられた。 更なる驚愕が満場に満ちる。 それはマリアンヌ自身が、自らのマントを外して少女に与えたからだ。 自身の王位継承権、トリステインの第二位たるそれを破棄し、少女を擁立するという意思表示に他ならない。 文句を言う者は居ないだろう。 ヴァリエールの直系ならば、それだけの血統と家格、そして権力は有している。 だが、そうそう有り得る事でも無いし、なぜこの場でという疑問も残った。 そんな困惑を置き去りに、ルイズは祭壇にたどり着き、女王ティファニアと法皇エイジスに並んで立つ。 「私は祝う。この喜ばしき日を。 偉大なる始祖の残したる奇跡、おおいなる力、虚無の系統の復活の日を。 そして運命に導かれ、この良き日良き場所にてその担い手が三人、こうして揃った事を!」 エイジスの宣言は、最初誰もが意味を飲み込めなかった。 やがてジワジワとその意味を理解し、人々は先程まで以上の激しい驚きの渦に投げ込まれることとなる。 アルビオン王家の逆転劇。 50の戦艦と5万の兵士を一瞬で沈め、8万の軍隊を突破して、数百リーグ離れた敵本拠を落とした奇跡。 反撃ののろしから勝利までわずか3日という、現代の神話。 いかなる強大な魔法がそれをおこしたのか。 他国の王侯貴族の誰もが知りたがった答えが、ここに明かされたのだ。 目の前で呪文が唱えられる。 聖句にも似た、誰もが初めて聞くルーンの連なり。 ルイズが唱えるそれは、幻影の魔法。 実物さながらの幻が、広間の天井にあの戦いの様子を映し出していた。 前方に8万の兵士。自軍はわずかに500人。 その先陣を駆けるのは、全裸の飛行魔導師と1人の剣士の背中だ。 誰もが上を見上げ、その迫真の映像に見入る中、ティファニアの「虚無」が心に直接語りかける。 (これは本当にあった戦いの記憶。私達を守って戦ってくれた使い魔の勇姿) 系統魔法にはない、精神を司る虚無魔法の初歩の初歩「念話」に驚く人々に、法王が告げた。 「紹介しましょう。我等が使い魔、伝説の神の盾と神の笛、そして名も無きもう一人を」 静かな、けれど良く通る声に人々はエイジスへと目を向け、その指差す天井へと再び目を向け――あっと声を上げた。 そこに開くのは空間の穴。 移動を司る虚無魔法の中級の下「移動の門」により、そこは宮殿の外と繋げられていたのだ。 「馬鹿な!? あれは我が公国の!?」 叫んだのはクルデンホルフ大公だろう。 蒼穹に見事な隊列を組んで空を舞うのは、大公国が誇る空中装甲騎士団の竜なのだから。 本来その主人の言う事しか聞かず、そもそも調教に時間がかかるドラゴン。 それをああも容易く見事に操るのは、伝説の神の笛ウィンダールヴに違いあるまい。 あらゆる獣を操るその力の前には、虎の子の竜騎士団も意味を成すまい。 まさか勝手にその証明のために使われるとは業腹な事だと、政敵の慌てぶりに少しだけ溜飲を下げたアルブレヒトであった。 そうこうする内にも、編隊から外れた二頭の竜と1人の男が降りてくる。 三人の虚無の使い手の左右に降り立った竜からは、白銀の鎧を纏った二人の騎士。 そして正面にはブーメランパンツ一丁でスキンへットの男が空中から降り立つ。 あらかじめ打ち合わせされていたのだろう。 数人の女官が現れて裸の男にガウンとシュバリエのマントを着せて体裁を整えた。 男とは、もちろん錬金大系魔導師・スピッツ・モード。 「あれが記すことさえはばかられる使い魔か」「確かにはばかられる」と、紳士淑女がひそひそと言い交す。 エイジス三十二世自身はそんな事は言っていないのだが、杖も持たずに空を舞う姿にはそう誤解させるだけの説得力があった。 ともかく、三人が降り立ったのと同時に天井の門は消え、広間は元の姿を取り戻す。 変化したのは、とても広間の入り口からは入らないはずの竜の巨体が二つ。 そして虚無の使い手達の前に跪く三人の使い魔達であった。 1人はロマリアを表す青と赤に聖なる白のペンタグラムが染め抜かれたマント。 メイジのそれに近い、白い軽装竜騎士の装束に身を包んだ神官・ジュリオ・チェザーレ。 1人はアルビオンを象徴する青に七色の羽根を意匠したシュバリエのマント。 ベルトを緩めれば即座に脱衣できるように工夫された仕立のガウンを着た魔導師・スピッツ・モード。 最後の一人は、トリステインとヴァリエール家の紋章が共に刺繍されたシュバリエのマント。 白銀の軽装鎧を身に纏い、伝説の剣デルフリンガーを背負った細身で長身の騎士。 鎧のために顔は窺えないが、美しい金髪がその隙間から覗いている。 「この三名を、今日この日より虚無の自由騎士に任じる。 すなわち、ただ虚無の使い手を守護することのみをその使命とし、いかなる国権・利害にも縛られぬシュバリエ。 彼等のその権利と義務を、アルビオン、トリステイン、そしてロマリアの名において認めるものとする」 どよめく貴族達。 そして同時に納得した。 たった一人で戦況を変える力。一騎当千どころか万の兵士に匹敵する戦力。 その保有によって国単位の軍事力を変化させる存在。 そんなものを、アルビオン一国、それどころかヴァリエール公爵家が単独で持つ危険性。 それを緩和するための自由騎士宣言だ。 他国の干渉を最小限にして国の建て直しに時間を費やしたいアルビオン。 大きすぎる力を持ったために、他の貴族から危険視される事を避けたいヴァリエール。 ヴァリエールを危険視しつつ、その力を自国に繋ぎ止めておきたいトリステイン。 虚無の力を束ねて聖地奪還を望む、しかし同じく聖地奪還を掲げたレコンキスタの反乱のせいで、 まだ実際に軍事的な行動としては動きを始めにくいロマリア法皇。 それぞれの思惑が重なった結果が、この虚無の使い手と使い魔の発表、その処遇なのだと。 戴冠の儀式は続く。 これから新女王は祝福の言葉を幾つも送られ、自身の決意を詩として始祖像に捧げねばならない。 その儀式を残して、ヴァリエールの娘は自らの使い魔に抱き上げられて場を辞した。 あくまでも、この式の主役はティファニアだからだと言う配慮であろう。 また、お姫様だっこで運ばれるルイズの姿に、あの二人は婚約でも交わしているのだろうと噂しあった。 そう、周囲の人々は思っている。 だが真実はまるで違うのだ。 退場する娘を見送る、ヴァリエール夫妻の苦々しい表情。 二人の側に控える、従来は身体が弱く公式の席には現れなかった次女の姿。 そして、この場には居ないヴァリエール家長女。 その全てが示す内幕を知っているテファとマチルダは、友人と言ってもよい少女を壇上から心配そうに見送るのだった。 「まったく……なんで私がこんなマネをしなきゃならないのかしら」 「……ごめんなさい、姉さま」 ドカッとソファに身を投げ出すように座った鎧の人物に、まるで覇気のないルイズが謝罪する。 ここはヴァリエール公爵家に用意された宮殿の一室。 魔法による聞き耳をたてる者が居ないのを確認して兜を外したのは、ルイズの姉エレオノールだった。 「いいわ。貴女が悪いわけでは無いもの。 なにより、こんな事になって一番キツいのはちびルイズだって事はよく判ってるわ」 「姉さま……」 「悪いのは逃げ出した貴女の使い魔よ。サイトと言ったかしら? その平民、見つけたら私もお父さまもタダじゃおかないわ―――って言うか殺す」 慣れない、重い鎧を外しながら、エレオノールが毒づく。 そう。 戴冠式を前にして、ガンダールヴは逃げ出してしまったのだ。 その事を隠すため、法皇とテファ、それにマチルダとアンリエッタやヴァリエール公爵が合議。 秘密を知る人間を最小にするため、伸長と体力と鑑みてエレオノールが偽サイトを演じる事になってしまったのだった。 ちなみに「胸が無いので男装に無理が無い」というのも選ばれた理由の一つなのも、エレオノールがカリカリしている理由である。 「やめて姉さま! サイトは悪くないわ! サイトを追い詰めたのは私なの。 それに、サイトに抱かれたのだって……私が望んだ事だもの」 が、それ以上に彼女を立腹させているのは、サイトがただ逃げただけでは無いと云う事だ。 エレオノールがまだ会った事も無い、その平民の使い魔は、こともあろうにルイズを傷物にしてから逃げ出したのである。 その事を愛娘から聞かされた時、公爵は使用人達に草の根分けても探し出せと命じようとして―――その一瞬後に押し黙った。 静かに、ただ静かに怒り狂う妻の迫力に圧倒されたのである。 伯爵夫人カリーナ、かつて「烈風カリン」の名で恐れられた母の怒りに、同行していた娘達も震え上がった。 その事が、幸いにも機密の漏洩を防ぐ結果となる。 アルビオン、トリステイン、そしてヴァリエール家が抱える信頼の置ける密偵が合議の末放たれ、姿をくらませたサイトを探す。 見つければ打ち首――と言うワケにはもういくまい。 たとえ代理を立てての儀式であったとしても、各国王侯の前でサイトには過ぎた地位が与えられたのだ。 「きっと色々あって混乱しちゃってるだけなんだわ。 サイトは絶対、私の所に戻ってきてくれるはずだもの」 それになにより、今の様子を見るにルイズが決して許すまい。 ならば一度魔法でボコボコにして、是が非でも娘の婿として迎える他あるまい。 それが、公爵の選んだ答えだった。 エレオノールもその選択には否は無い。 望むのは、サイトをボコる時には自分も絶対に参加しようと云う事ぐらいだ。 「なんでも良いから、とっとと帰ってきなさいよね……」 弱々しい妹を見るに忍びず、窓の外の高い高い空を見つめながら、エレオノールは疲れた声で呟くのだった。 さて、そうして遥か高空で知らない間に大変なことになっているサイト本人はどうしているかと言うと…… 女の所に居たりするのだった。

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