不思議の国のアリス

登録日:2025/07/04 Fri 00:00:00
更新日:2025/07/14 Mon 11:50:21
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"WE ARE All MAD HERE.(ここじゃあみーんなどうかしちまってるのさ。)


不思議の国のアリス』(原題:Alice's Adventures in Wonderland)とは、イギリスの作家・数学者のルイス・キャロルことチャールズ・ラトゥイッジ・ドジソン(以下「ドジソン」とする)が発表した児童文学作品である。


概要

1865年7月4日刊行*1
作者についての詳細は個別項目を参照されたい。

原型は、ドジソンが文も挿絵も自ら手書(描)きした『地下の国のアリス』(原題:Alice's Adventures under Ground)。
これは1862年7月4日に、ドジソンが当時勤めていたオックスフォード大学クライストチャーチ寮のリデル寮長の3人娘や同僚のダックワースと一緒にボート遊びに出かけた際、リデル家の次女アリス・プレザンス・リデルからせがまれ話して聞かせた即興の物語を加筆もして本にまとめ、1864年に完成を見たものである。

『地下の〜』は、当初あくまでアリスだけに捧げられた作品だった*2
だが、ドジソンが知人の小説家に原稿を見せたところ、彼だけでなくその家族からも絶賛された。
それがきっかけで商業出版に踏み切ることになり、エピソードの大幅な削除と追加、挿絵を手がけた画家サー・ジョン・テニエルとの軋轢などを経つつも世に出た結果、たちまち大ヒットを記録した。
日本には刊行から数十年後に紹介され、あの芥川龍之介も翻訳を手掛けている。

続編にして最終作は、1871年刊行の『鏡の国のアリス』(原題:Through the Looking-glass and What Alice Found There)。
その他、『不思議の〜』の内容をより年少の子供向けにした『おとぎのアリス』(原題:Nursery Alice)も1889年に発表された。


特徴

発表当時のイギリスの子供向けの話には教訓が付き物だった。
しかし、親から見れば教育によろしくたって、当のほとんどの子供達にはつまらないものでしかなかったのは言うまでもない。

そこへきて本作は、教訓などというものから解き放たれているばかりかそれをパロディ化してのけているし、そして例えば随所に盛り込まれた言葉遊びなどのユーモアに溢れていて、ナンセンスでハチャメチャな世界での冒険がテーマ。
そんな斬新さは当然驚きと熱狂をもって迎えられ、こんにちでも「聖書やシェイクスピア作品の次くらいに世界各地の言語に翻訳されている」とも言われるほどの人気を博し続けており、不朽の名作のひとつと言えるだろう。

なお、作中には後に「かばん語」と呼ばれる混成語を始めとした言葉遊びが随所に仕掛けられている。
そのため、翻訳家は如何にそのニュアンスを含めて訳するか、腐心する羽目になるのである。

あらすじ

ある昼下がりのことでした。
アリスは姉と川辺で過ごしていたときに退屈を覚え始めていたところ、眼鏡をかけチョッキを着、懐中時計を手に人語を話すウサギが横を駆け抜けて行ったではありませんか!
好奇心にかられて思わずその後を追ったアリスが迷い込んだのは――そう、不思議の国(ワンダーランド)だったのです。


登場キャラクター

  • アリス

Curiouser and curiouser!(てこへん、てこへん!)

主人公の少女。ファミリーネームは不明。
年齢は『不思議の〜』では言及が無いが、『鏡の〜』では7歳半と推測できる記述が見られる。
服装はこの時代における中流階級の子女に定番の出で立ちであるエプロンドレス(ピナフォア)にストラップシューズ。
ダイナという名のを飼っているが『不思議の〜』には話に出るだけで、直接登場するのは『鏡の〜』のみ。

礼儀正しく慎重に振る舞おうとはしつつも、根は年相応に好奇心旺盛で向こう見ず。
普段から、一人二役を演じて何か行動するのが好きだったりする風変わりな面も持つ。
しかしおかしな世界でも「自分」を保ち続け、おかしなことにはおかしいと物申せるある種の強さも併せ持つ。
思いがけず迷い込んだワンダーランドで、体が伸び縮みしたり奇天烈な面々に出会ったり死刑宣告をされたり……と、様々な体験をすることに。

なお特徴的なアリスの格好であるが、ドジソンの想定では衣装は「その時代の少女の一般的な服装」であるらしい。
だがこの作品が有名になりすぎて「金髪+青系ドレス+エプロン」がアリスのテンプレートとなったのはある意味では皮肉と言えるだろうか。

  • 白ウサギ
擬人化されたウサギ
初登場シーンでは「遅刻だ! 遅刻だ!」とアリスのそばを慌てて通り過ぎていく。
チョッキを着込み、ボケットには懐中時計が収まっている。
またワンダーランドに屋敷を構えており、後述するビルのほかメアリアンという名前のメイド*3を使っていて、アリスをそう呼ぶ場面もある。
終盤ではタルトを盗んだ者を裁く裁判の開廷を告げている。

アリスのでできたに流されてやって来た動物達。
濡れた体を乾かすべく「ぐるぐるレース」をみんなでしたあと、ネズミはアリスにせがまれ何故犬や猫が怖いのかという「尾話(おはなし)」を聞かせる*4*5
しかし、アリスがよりによって飼い猫の自慢をうっかりしてしまったせいで……。

なお、このシーンに登場する鳥類について、ドードーはドジソン自身*6、アヒルは同僚のダックワース、インコとワシの子はアリス以外のリデル姉妹(ロリーナ、イーディス)の投影とする説もある。

  • トカゲのビル
白ウサギに仕える使用人、もとい使用トカゲ。
やはり擬人化されていて使用人用の服に身を包み二足歩行する。
屋敷に侵入したアリスを主人の命を受けて追い出そうとするも、体を大きくする扇の効果で屋敷からはみ出した彼女に蹴飛ばされてしまった。
裁判の場面でも、陪審員として登場するが、石板に記載するための石筆を持っておらず、自分の爪で代用しようとした結果、そのキーキー音でアリスを悩ませた。

  • 子犬
読んで字のごとく。
不思議の国にいる動物としては珍しく人語を話さない、いたって普通の存在。

  • イモムシおじさん
キノコの上で水タバコを吸うイモムシ。
アリスが“~ you know.(ですよね?)と締める度に、I DON'T know,(知らん)と応えるぶっきらぼうさ。
だが、アリスに「体が伸び縮みするキノコ」の扱いについて教えてくれる。

  • 公爵夫人
名前は不明で醜悪な顔貌を持つ。チシャ猫の飼い主でもある。
抱きかかえている赤ん坊 ブタ が泣きわめく中平然とアリスと話すなど、やはりどこかおかしい。
なお、アリスで首を刎ねるといえば後述のハートの女王が有名だが、実は、公爵夫人の方が先に首を刎ねようとしている。
アリス「You see the earth takes twenty-four hours to turn round on its axis(地球が一周するには24時間かかり、おのおの…)
公爵婦人「Talking of axes(おのと言ったかい), chop off her head!(この子の首をお刎ね!)

なお、後に女王の城でも登場。
クロッケーに招待されていたが、アリスがお茶会に行っていた間に不興を買って投獄されていた模様。

  • 料理人
公爵夫人に仕える料理番の女。名前は不明。
仏頂面のままスープにコショウをこれでもかと振りかけまくりアリスにくしゃみを起こさせ、挙げ句手当たり次第に色々なものをぶん投げる。
後にタルトを盗んだ者を裁く裁判に証人として出廷した。

  • チシャ猫
訳によっては「チェシャ猫」とも。
公爵夫人に飼われている不思議な猫。ただし実は飼い主と会話する場面は無い。

体の一部だけを出現させたり消失させたりする能力を持ち神出鬼没で、口元だけを残してそれ以外の部分は消えるという「猫無しのニヤニヤ笑い」なる珍奇な芸当(?)も披露する。
アリスに帽子屋達のもとへ続く道を示したほか、ハートの女王の前にも現れる。

なお、項目冒頭のセリフは彼(?)のもの。

To begin with, a dog's not mad. You grant that?(まずだね、犬はイカれていない。それはいい?)

Well, then, you see, a dog growls when it's angry, and wags its tail when it's pleased.(となると、だ。犬は怒ると唸って、嬉しいと尻尾を振る)
Now I growl when I'm pleased, and wag my tail when I'm angry.(さて一方、私は嬉しいと唸って、怒ると尻尾を振る)

Therefore I'm mad.(だから私はイカれてるのさ)

イギリスのチェシャー州はチーズの名産地であることからその分ネズミも多く、好物のネズミを見かけて猫がニンマリ笑うという意味のイディオム“grin like a Cheshire cat”をもとにしているとされる。

  • 帽子屋3月ウサギヤマネ

Why is a raven like a writing-desk ?(大ガラスと書き物机が似ているのはなーんでだ?)

「おかしなお茶会」に出席している面々。
帽子屋は「いかれ帽子屋(マッドハッター)」と訳されることもあるが、原作中では“Mad Hatter”と呼ばれたことは無い。
March hare(3月ウサギ)”はそのまま「マーチヘア」とされることもある。
Dormouse(ヤマネ)”もその通りヤマネなのだが、これも直読みして「ドゥーマウス」と訳されることがある他、その様子から「眠りネズミ」と訳されることもある。

彼らもまた後にタルトを盗んだ者を裁く裁判に証人として出廷するも、ろくな証言が出来ないのだった。

おかしな存在として登場することになったのは、帽子屋は当時革なめしに水銀を使っていたせいで水銀中毒にかかりその影響で奇妙な振る舞いを見せる者が多く、そこから発生した「as mad as a hatter」(帽子屋のように気が狂っている)というイディオムから。
また、3月ウサギは「mad as a March hare」(3月の野ウサギのように気が変だ)というイディオムから。
その他、当時はヤマネをティーポットに入れて飼うのが(ドジソンが主な読者層と想定していた階級の子女の間で)流行していたため、その反映とされる。
実際、最後のシーンでは帽子屋と3月ウサギがヤマネをティーポットに押し込もうとしていた。

  • ハートの女王
非常に高圧的かつ短気。
そしてことあるごとに「こやつの首をお刎ね!」と命じる。

  • トランプ兵
ハートの女王の配下にある兵達で、その名の通り胴体はトランプ。バラの色塗りやクロッケーのゲート役などに駆り出されこき使われまくっている。
終盤では「あなたたちなんか、ただのトランプじゃない!」と言ったアリスに一斉に襲い掛かって……!?

  • ハートの王様
女王の陰に隠れがちだが、ちゃんと王様も登場している。
これまた女王の陰に隠れがちだが、裁判ではすぐに処刑を言い渡すなど、妻に負けず過激な面がある。
とはいえ、女王には頭が上がらないようだ…。

  • グリフォン偽ウミガメ
グリフォンは一般的にイメージされるそれ。
ハートの女王から偽ウミガメの話を聞くよう命じられたアリスを彼のもとへ案内する。
偽ウミガメは身体と前脚がウミガメ、頭と後脚、尻尾は仔ウシの姿をしたキメラ生物。
訳によっては「代用ウミガメ」「ウミガメフウ(風)」「ウミガメモドキ」とされたり、そのまま「モックタートル」とされることも。
これは、当時ウミガメのスープの海亀の代わりに仔牛肉を使用した“mock - turtle soup(代用のウミガメスープ)”というものがあった。
それをキャロルが“mock turtle - soup(代用ウミガメのスープ)”と解釈し、その原材料としてイメージしたもの。
"mock - turtle soup”は「海亀風のスープ」とも意訳できるため、そこから「mock turtle」を「ウミガメフウ」と訳した翻訳者もいる。

かつて「本物のウミガメ」だったころに通っていた学校の話をアリスに聞かせるが、その内容はやはりことごとく妙なものだった。
その後、3人はロブスターのカドリーユ踊りを踊ったり、偽ウミガメの歌を聞く。

Soo—oop of the e—e—evening(ゆぅぅぅべのスゥゥゥプゥゥゥゥ), Beautiful, beautiful Soup!(素敵な 素敵な ス―プ!)

  • アリスの姉
名前は不明*7
冒頭では「会話も絵も無い本」を読んでいたが、アリスはそれを覗き込んで「そんな本のどこが面白いのかしら」と疑問に思うのだった。
話の本筋にはほとんど関わらないが、本作は妹の見ていた夢の話を聞いたあと、その将来に思いを馳せる姉のモノローグで締めくくられる。


メディア化

映画、舞台、アニメ、絵本などが世界各地で多数制作されてきた。
ほか、カルチャーに与えた影響も計り知れないものがある。

映像化

  • ふしぎの国のアリス(1951年・アメリカ)
お馴染みウォルト・ディズニースタジオによるアニメ。映像化の中では最も有名だろう。
ちなみにこの作品の「ふしぎ」はひらがな表記が正しい。

ストーリーは概ね原作の流れをなぞっている。
ただし
    • 原作では『鏡の〜』にしか出ないディーとダム、喋る花々、セイウチ、大工、牡蠣の赤ちゃんなどが登場する一方、公爵夫人やグリフォンや偽ウミガメは出番をカットされる
    • 「何でもない日」に言及するのがハンプティダンプティではなく帽子屋達にされる
など、改変された箇所もいくつかある。

なお、原作の挿絵でアリスが着ているエプロンドレスは本来黄色に着色されているが、本作の影響か水色になっているものも一部見受けられる。

  • アリス(1988年・チェコスロバキア)
ヤン・シュヴァンクマイエルによる実写とストップモーションアニメの組み合わせによる映画。
原作から大幅にアレンジが利かせてあるだけでなく、登場する生き物達は非常にシュールかつグロテスク。

監督はティム・バートン、主人公はミア・ワシコウスカ演じるアリスだが、主演として扱われているのはマッドハッター役のジョニー・デップ。
19歳になって再びワンダーランドへ行ったアリスを待ち受けていたものとは……?

  • 不思議の国でアリスと-Dive in Wonderland-(2025年・日本)
日本のアニメ映画。監督は篠原俊哉。
アリスも登場するが(CVは「はたらく細胞」のマイカ・ピュ)、主人公は原菜乃華演じる現代の日本人女性・安曇野りせ。
なお、日本で映像化されるのは本作が初めて。


モチーフもしくはインスパイアされた作品

ゲーム

  • ハートの国のアリスシリーズ
QuinRose社開発の乙女ゲーム
通称『ハトアリ』。

f4samurai社開発のソーシャルゲーム
前述の『ふしぎの〜』からインスパイアされたキャラクター(ハートの女王やトランプ兵、チェシャ猫など)達が登場する。

  • アリス イン ナイトメア
エレクトロニック・アーツ発のホラーゲーム。
『不思議の〜』と『鏡の〜』の後日談という設定で、原作の世界観に忠実にというコンセプトで作られている。
が、とにかくダークで陰鬱でブラック
物語は家と両親を火災で失ったアリスが精神病院に収容されているところから開始され、そのせいか久しぶりに訪れたおとぎの国もすっかり歪んでしまっているなど凄惨たる有様である。が、原作へのリスペクトとクオリティの高さは十分でファンは多い。
続編の『アリスマッドネスリターンズ』に至っては生理的不快感を促す描写も盛りだくさん。

ワンダープラネット開発のソーシャルゲーム。
仮想空間(メタバース)ALICEを舞台に歴史上の人物や神話の神をモチーフにした人物やAIが登場する。
名前だけでなく世界観そのものにも不思議の国のアリスをモチーフにした要素が散りばめられている。
仮想空間ALICEでは商業や娯楽など様々な生活が営まれているが……

KMS開発の、古今東西の童話や神話をモチーフにしたブラウザゲーム。
メインストーリー「星々の失楽園編」第1部終盤に差し掛かったタイミングでワンダーランドを訪れる。
舞台となるオトギノクニの住民が突如凶暴化する事件を追う主人公一行は、ワンダーランドの英雄アリスの助力を得て調査を続けるが……。

サークル『イニミニマニモ?』、『寿司勇者トロ』氏が製作したエロ同人ゲーム
開幕から血でべったり濡れた通路で兎が人間の死体を食い荒らし、道を進めば死体と人骨が常に目に入る。
主人公はイカれ狂った世界で、愛するアリスを探し求める。
そして、このゲームの世界観はソウルシリーズに近いものだが、ところどころ宇宙人の匂いがする……。

童話は戦記だった。がコンセプトのゲームであり、不思議の国のアリスモチーフのキャラ「リトル・アリス」が登場。
言動のあちこちで変なエフェクトが巻き起こるだけでなく、毒を撒き散らしたり一撃必殺のビックリ箱で相手をふっ飛ばしたりとやりたい放題。
性格も天真爛漫で全てが楽しそうな少女となっている。
影の存在である「シャドウ・アリス」も登場。こちらはどうやらチェシャ猫がモデルらしく、蠱惑的な言動が魅力的である。
サポートカードとしてマッドハッター等も多く実装されている他、ボス枠としてジャバウォックも登場している。


不思議の国のアリスをモチーフとしたカテゴリ【M∀LICE】が登場。
童話だけでなくマルウェアやチェス、「3」の意向も組み込まれた独特の世界観となっている。
多数の罠カードで展開していき相手を押しつぶすカテゴリであるが、不思議な事に主人公の「アリス」をモチーフにしたカードは登場していない。
恐らくは彼女達を操るデュエリストがその役目を担っているのだろうか。


こちらも物語をモチーフにしたカード「アリス」が登場。
様々な伝承がごった煮している世界観ゆえにアリスも様々な場所や人と関わりを持っており、アカズキンや雪の女王、マルジー・スナークと言った別の物語のキャラと大きく関わる。
Ⅱの時は範囲内の味方ユニットに複数攻撃を付加する「ヘッジホッグシュート」が強力である他、ダークアリス、レッド・クイーンで組んだケニア(最高コスト)編成が称号にも関わるため良く使われた。
では自分の種族の種類により能力が上がる「バリエアップ」を持っていた…が、一応協力ゲームであるこのゲームにて完成が遅いというのは味方に対する負担が大きく、また完成したらしたでポイントを多く稼ぐということで基本的に味方には歓迎されなかった。
とはいえゲームシステムは敵も味方も踏み台にして上位を目指すコンセプトゆえに文句を言うほうがお門違いなのだが…。
ただやはり不服の方が多かったのか修正が入り幾分か条件が緩和された。

  • 歪みの国のアリス
サン電子のGセクション部が開発した、ガラケー向けテキストアドベンチャーゲーム。
放課後の学校で目が覚めた女子高生の「葛木亜莉子(かつらぎありこ)」が、灰色のフード付きローブを纏った不審者「チェシャ猫」と遭遇。
亜莉子を「アリス」と呼ぶチェシャ猫の「シロウサギを追いかけよう」という一言から、アリスの事が味覚的な意味でも大好きな者たちが住む、どこか歪んだ非現実的な世界に足を踏み入れていく。

漫画

望月淳著作の漫画。
物語の鍵となる異空間「アヴィス」に棲む怪生物「チェイン」は『不思議の~』及び『鏡の~』のキャラクターがモチーフとなっている。

麻生羽呂著作のデスゲーム漫画。
物語に登場する一部に『不思議の〜』のキャラクター名がもじられた登場人物と物語の鍵となる『げぇむ』と『国民』においてトランプの柄と人物たちの要素が織り込まれている。近年では世界観をテーマにした体験型アトラクションが作られたり、Netflixオリジナルで実写ドラマが配信されたりしており、シーズン1と2が配信され、シーズン3が現在制作されている。

皆川亮二著作の厨二漫画の金字塔能力バトル漫画。
能力を発現する核となる生命体「ARMS」に『不思議の~』及び『鏡の~』のキャラクター名が名付けられており、元となったキャラをモチーフにした形態に変形することができる。
また、その生命体誕生の要因となった少女の名前がアリスであるほか、ストーリーも原作を擦っている部分がある。

しかし本作は少年向け能力バトル漫画。原作にそんな要素は欠片しかないので発現する能力の方は著者のセンスが光るものとなっている。
具体的には、帽子屋(マッドハッター)はオゾン臭を纏いながら荷電粒子砲(ブリューナクの槍)をぶっ放し、三月兎(マーチ・ヘア)は光を屈折するナノマシンで光学迷彩しながら鋼鉄をも溶断するレーザー(バロールの魔眼)をぶっ放し、眠り鼠(ドーマウス)は全身からミサイルの如き爆発する針(魔弾タスラム)をぶっ放す。そんな感じ。
チェシャ(キャット)は空間操作で瞬間移動したりと比較的原作度合が高いがそこはやはり皆川作品。
例によって360°全方位防御不能回避困難な空間の断裂(魔剣アンサラー)をぶっ放す危険な化け猫となっている。

奇才グラント・モリソンの原作によるコミック(グラフィックノベル)。
ウォッチメン』、『バットマン:キリングジョーク』といった作品群に連なるダークな作風が特徴。心理学や神話、オカルトなど様々なテーマを複雑に織り交ぜており、「バットマン史上屈指の問題作」と評される。
本作を構成する大きなテーマの一つがルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』であり、物語は『不思議の国のアリス』からの引用で始まり、同じくアリスからの引用で幕を閉じる。

小説

  • 黒猫館の殺人
綾辻行人の代表作である『館シリーズ』の6作目。
記憶喪失の老人が持っていた手記に書かれてあった殺人事件の真相を追うミステリー小説。
作中にて語られる「どじすん」という単語が何を意味するのか理解することが、本作を象徴する大仕掛けのヒントになっている。

小林泰三による『メルヘン殺しシリーズ』の1作目。
夢と現実がリンクした殺人事件に主人公らが挑む、グロ描写が特徴的なミステリー小説。

  • 『アリス』シリーズ
中原涼のライトノベル。
アニヲタ的には天才てれびくん内のアニメ『アリスSOS』の原作と言ったほうがわかりやすいだろうか。
さまざまな国へとさらわれたアリスを追ってアリス萌え好きの少年と仲間たちが謎解きと冒険を繰り広げる。

楽曲

  • 公爵夫人の子守歌、ハートのジャックが有罪であることの証拠の歌、ウミガメスープ、他
いずれも谷山浩子の楽曲で、これら3曲は実際にアリス作中に登場する詩を邦訳した歌詞となっている。
氏はそれ以外にもアリスをモチーフにした楽曲を手掛けており、アルバム『月光シアター』にはそのような曲が多く収録されている。

  • ALICE
MY LITTLE LOVERの4thシングルで1996年のヒット曲。
同曲を収録したベストアルバムのライナーノーツにて『不思議の〜』がモチーフであることが明言されている。
思春期の性成熟と好奇心を当時一般に普及し始めたばかりのインターネットによる世界の広がりと絡め、不思議の国に迷い込んだアリスになぞらえた歌詞が特徴。


余談

  • 自分の体が小さくなったように感じたり、逆に周囲のものが大きく見えたりする現象を「不思議の国のアリス症候群」という。

  • イギリスのオックスフォードには専門のグッズ販売店「アリスショップ」がある。
    生前ドジソンやアリス・リデルも利用しているほか、『鏡の〜』の作中にはここをモデルとした店が登場している。

  • 本作発表当時の大英帝国君主だったヴィクトリア女王にもアリスという名前の王女がおり、後にヘッセン大公の妃となった。

  • 小児性愛嗜好の中で、日本の学校制度で言う小学生の年代を専門とする類型を「アリス・コンプレックス」と言う。「同人用語の基礎知識」によると1980年代時点で既に提唱されていた概念だが、初期の提唱者が誰であったかは不明。現在はそれらは全て「ロリータ・コンプレックス」で一纏めにされている。




追記・修正は、不思議の国へ行ったらお願いします。


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最終更新:2025年07月14日 11:50

*1 なお、項目作成日は刊行160周年の日である

*2 その後1886年には同作も商業出版されている。

*3 もっともヴィクトリア朝時代においてメアリアンとは「メイドという存在全般」を指す呼び方でもあったので固有名ではないかもしれない。

*4 「尾」「話」を意味する英単語がそれぞれ「tail」「tale」とほぼ同音であることによる言葉遊び。

*5 この場面のネズミのセリフは、本によっては現実のネズミの尾のように湾曲した配置で印刷されていることもある。

*6 ドジソンには吃音症があり、ファミリーネームを名乗る際「ド」でつっかえていたとされる。

*7 モデルとなったアリス・リデルの姉はロリーナ。