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ソーサリー・ゼロ第二部-1 - (2008/03/10 (月) 11:09:38) のソース
#center{&color(green){[[前ページ>ソーサリー・ゼロ-19]] / [[表紙へ戻る>ソーサリー・ゼロ]] / [[次ページ>ソーサリー・ゼロ第二部-2]]}} ---- 一 トリステイン魔法学院。未来の支配階級たる少年少女たちを育て上げる伝統ある学び舎――そして君の当座の居場所。 この学院は、天に突きつけられた巨大な指を思わせる本塔とその周囲に配置された四つの塔。そして男女別の寄宿舎や倉庫、厩舎などのさまざまな付属施設からなる。 君はいま、四つの塔のうちのひとつである≪風の塔≫のなかの一室、広々とした教室のなかに居て、『ご主人様』である貴族の少女、ルイズの隣の席に座り、自前の羽ペンと羊皮紙で黙々とメモをとっている。 講師をつとめる魔法使いは≪疾風のギトー≫と名乗る、黒く長い髪と青白い肌が目立つ、ひどく鬱屈とした男だ。 ギトーは、自らが得意とする≪風≫系統の魔法こそ最強であるという持論を展開し、聞き取りづらい声で長広舌を振るっている。 話に興味の湧かぬ君は羽ペンを持つ手を休め、ここ数日のあいだ、頭を悩ませている様々な事柄について考える。 死んだはずの月大蛇と土大蛇の出現から一週間以上が経過したが、君が危惧していた、残りの大蛇が自身と仲間の復讐を果たすべく 学院に来襲するような事態は、いまだ起こっていない。 張り詰めていた緊張の糸をゆるめつつある君だが、七大蛇が君の前に現れぬということは、より悪い事態の前触れではないのかという考えも捨てきれない。 七大蛇は、君に対する復讐よりもずっと重要な陰謀――このハルケギニア全土を揺るがすほどの、恐るべき邪悪な計画を練っているのではなかろうか? そして、カーカバードからこのハルケギニアへとやって来たのは、君や七大蛇だけではない。 オスマン学院長や教師のコルベールによれば、未知の種の幻獣や亜人を目撃したという報告が、トリステイン王国全土から 毎日のように寄せられているそうだが、その怪物どもはいずれも、あの暗黒の大地からの来訪者なのだ。 スナタ猫、スカンク熊、火狐といった猛獣だけではなく、オーク(ハルケギニアにも同名の怪物が存在するが、ずっと大柄らしい)やゴブリン、 黒エルフ、鳥人といった人間型種族までが、このトリステインの地に出没しているのだ。 悪意に満ちた何者かが、トリステイン王国に混乱をもたらすため次々と怪物どもを召喚し、あちらこちらにばらまいているではとも考えたが、 それではあまりにも効率が悪い。 やはり、次々と≪門≫が現れてはすぐに消えるという、およそありえぬほどに奇妙な自然現象なのだろうか? そのような≪門≫のひとつが眼前に現れてくれれば、簡単に帰ることができると考える君だが、≪門≫は一方通行かもしれぬと思い直す。 それに、行き先がイルクララ湖の真ん中や、ザメン高地の断崖だったならば、たちまち死んでしまうことだろう。 ぼんやりとそのようなことを考える君を、ルイズがちらちらと横目で見る。 視線に気づいて向き直ると、彼女はあわてて目を逸らす。 ルイズになにか用かと尋ねようとした瞬間、教室の扉が開き、派手な長衣をまとった金髪の男が入ってくる。一七八へ。 一七八 教室に現れた男をよく見てみると、それがコルベールであることに気づく。 禿あがった頭を金色のかつらで覆い、装飾だらけの長衣をまとったその姿は、普段の物静かな彼とは似ても似つかぬものであり、滑稽でさえある。 いつもの倍も不機嫌な顔をして抗議するギトーをよそに、コルベールは本日の授業はすべて中止であると告げる。 「本日はこのトリステイン魔法学院にとって、記念すべき日であります。畏れ多くも、先の国王陛下の忘れ形見、トリステインの麗しき誇り、 アンリエッタ姫殿下が当学院に行啓なされます」 異邦人である君にはなんの感慨も湧かぬことだが、大半がトリステインの貴族である教師や生徒たちにとって、これは一大事であるらしい。 生徒たちはざわめき、ルイズもぴんと背筋を伸ばしてコルベールの話を聞いている。 王女の歓迎式典の準備のために授業は中止となり、生徒たちは正装で門に整列せよとの旨を伝えたコルベールは、 「それでは、くれぐれも姫殿下の前で粗相のないように! 身だしなみには万全を期すること!」と話を締めくくる。 それを聞いた君は、笑いをこらえる。 あの道化た扮装が、彼の言う『万全』だとは! 寄宿舎の自室に戻ったルイズは早速、服装を整えるが、寝起きのときのように君の手を借りようとすることはない。 君は、なにか自分がやることはあるのかとルイズに尋ねるが、 「平民や使い魔まで、生徒と一緒に並ぶ必要はないわよ。そもそも、ボロ服姿のあんたなんかを姫さまの前に出せるわけないでしょ」という答えが返ってくる。 この少女も少しは丸くなったと思っていた君だが、考えが甘かったようだ。 ルイズから『自由行動・ただし歓迎式典の邪魔にならぬように』と言いつけられた君は、どこで時間を潰そうかと考える。 どこへ行く? マルトー料理長の居るであろう調理場・二二五へ ≪使い魔≫たちが主人の帰りを待つ中庭・五九へ 歓迎式典を見物できる見晴らしのいい場所を探す・三六へ 五九 広場には種々雑多な獣や怪物が居て、寝転がったり、その辺をうろついたり、それぞれが思い思いの方法で主人の帰りを待っている。 君にとっては、何度見てもなじめぬ異様な光景だ。 ≪使い魔≫は、主人に命令されぬ限り人間に危害を加えることはないとわかってはいるのだが、無意識のうちに、怪物どもを刺激せぬよう ひっそりと忍び足で動いてしまう。 かつてトレパニの洞窟で闘ったものと同じくらい凶暴そうなマンティコアの、もの問いたげな視線を避け、空に浮かぶ血走った目玉にぶつからぬよう、首をすくめる。 ここに来たのは失敗だったと考え広場を離れようとするが、他の≪使い魔≫たちから距離をとって広場の端にうずくまる青く巨大な姿を目にし、ふと足を止める。 あの青い鱗と大きな翼をもつ竜は確か、タバサの≪使い魔≫であり、名はシルフィードといったはずだ。 フーケの一件以来見かけなかったが、どうやら普段は自由に大空を飛び回っているため、あまり人目につくことがないらしい。 この広場で羽根を休めているところを、君は偶然にも目撃したようだ。 君はこの竜に近づいてみてもいいし(二五四へ)、わざわざ危険を冒さずこの場を離れてもいい(二九一へ)。 二五四 君の足音――ほとんど立てなかったはずなのだが――に気づいた竜は、長い首をもたげてじっと見つめてくる。 その大きな瞳はあきらかに冷血の爬虫類のものではなく、どちらかといえば犬や馬など、人間のよき友として飼い馴らされた獣を連想させる。 竜の瞳の輝きには、秘められた知性さえ感じられる。 君は、なにか竜の興味を惹くような物はないかと背嚢をさぐるか(三二〇へ)? やはりこの場を離れるか(二九一へ)? それとも術を使うか? HOW・四五六へ LOW・三五一へ MAG・三七五へ YAP・四七〇へ JIG・三三八へ ---- #center{&color(green){[[前ページ>ソーサリー・ゼロ-19]] / [[表紙へ戻る>ソーサリー・ゼロ]] / [[次ページ>ソーサリー・ゼロ第二部-2]]}}