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虚無の使い魔と煉獄の虚神-9 - (2007/11/25 (日) 12:33:20) のソース

その戴冠式は前代未聞と噂され、ハルケギニアの歴史にも長く残る事となった。 
始祖より伝わる3つの玉座の一つ、アルビオン王家の冠を戴くのは少女ティファニア。 
尖ったエルフの耳をもつ、異相の王女である。 

電光石火の勢いでハヴィランド宮殿を陥落させ、主立ったレコン・キスタ上層部を捕縛した王党派が、王権の復活を宣言してから一週間。 
わずかな期間の間に、レコン・キスタはほぼその軍門に下っていた。 
5万の兵士を擁した艦隊を全滅させ、8万を超える兵士を中央突破で破った武勇。 
ありえない速度での司令部撃破によって、反乱軍上層部の殆どが一網打尽で縄についた。 
レコン・キスタ内部を飛び交うの噂には、それを成した伝説の存在が常に付いて回っている。 
伝説の虚無を操る始祖の継承者と、それを守る最強の『神の盾』。 
転移魔法による進軍をしていたため、本拠地から遠く離れた土地で日干しになっていた主力部隊は元より、アルビオン各地に散らばっていた部隊は恐れをなして次々に投降する。 
特にガンダールヴの鬼神の如き戦いぶりを、戦艦を撃ち落す虚無の魔法を見た主力軍の兵士が抱かされた恐怖は深く強い。 
実際の被害は全軍の十分の一にも満たなかったが、王軍の生み出した戦果と勇名、特にその先陣であるサイトへの畏怖を刻まれたレコン・キスタに、組織的な反撃をする余力は無かったのである。 
既に主だった指揮官は捕縛され、賞罰の徹底と国軍の再編成が急ピッチで進められていた。 

反乱軍という位置付けで敗戦を迎えたレコン・キスタ将兵の不安は、当然ながら大きかった。 
王軍によって意図的に流された風説には、全員が斬首、あるいは家族にすら累が及ぶとするものも有ったのだから。 
だが、不安が最高潮に高まった彼等へと発表された処分は、常識を疑うほどの温情的な処置だった。 
反乱軍貴族のうち、指導者格は領地財産没収の上でアルビオン追放。 
無領の下級貴族は免職の上で再度の仕官を望む者は平等にとりたてる。 
平民は特に積極的に反乱に加担、先導をした者を除いて、全員を無罪放免。 
希望者は降格の後、引き続き国軍兵士として仕える事を許すという破格のものだ。 
それはティファニアが温情処置を望んだ事と、あまりにも反乱軍の数が多く国軍の数が少なかった事から採られた異例の措置だったが、結果として復活した王家は将兵達から歓呼を持って迎えられる事となった。 

その中で発表された新国王の即位は、すべての国民から驚きをもって迎えられる事となる。 
王家の血とエルフの血を、二つながらに持つ少女。 
しかもその少女こそが、始祖ブリミルに連なる系譜の正当な証たる『虚無』を操ると言うのだ。 
圧政者たるレコン・キスタからの解放。 
正当なる血脈。 
少数で多勢を打ち破った、伝説級の実績。 
それらをもってしても、万民を納得させる戴冠とはなるまい。 
そう予想しながらもティファニアを擁立した貴族達の予想は、驚きをもって覆される。 
それはロマリア教皇、聖エイジス32世の戴冠式出席の報によってであった。 

そも王権とは始祖ブリミルの名によって神から与えられるものである。 
ために、時に成り上がりの蛮族と誹られるゲルマニアにおいてさえ、皇帝の戴冠を行うのは聖職者の役割であった。 
その点は、始祖を始まりとするアルビオン王家ならばなおの事。 
敬虔なとは言えないものの、祭壇に祈りを捧げる事も知っているティファニアは、逃亡時代に世話になった修道院の院長に話を通して、その伝手で戴冠式をおこなってくれる司祭を見つけるつもりだった。
だが、その儀式を教皇直々に執り行ってくれるという。 
それはもちろん、純粋な信仰の発露やアルビオン王家への好意というワケではなく、始祖の正統の証『虚無』の使い手である新女王をとりまく様々な政治的判断と妥協、そして思惑ゆえの事なのだろうが…… 

ともかく、その事実はティファニアの正統性を主張する錦の御旗となる。 
各国の王もその意向を無視するわけにはいかず、ゲルマニアやトリステインからはその代表が、ガリアからも大使が到着した。 
いずれ玉座に座り女王となるのでは無いかと噂される王女アンリエッタ。 
ゲルマニアの至尊の王冠を戴く皇帝、アルブレヒト三世。 
唯一国王が欠席となったガリアからは王ジョゼフの一子、王女イザベラが。 
それぞれの国が誇る最新の戦列艦とその護衛を引き連れて、ハルケギニア王権の担い手達が王都ロンディニウムに集う。 
錚々たる列席者に、歓迎は内戦で疲弊したアルビオンにかなう最上級の用意がなされ、王都はお祭騒ぎに包まれた。 

街には時ならぬ市場が建ち、内戦に疲弊していた住民達の顔にも笑顔が戻った。 
商魂たくましい商人達が浮遊大陸の方々から集まって、珍しい商品を露店に幾つも広げて見せる。 
物々しく兵士が巡回する街角を子供達や着飾った女達がさざめきながら行き交う。 
街角で旅芸人が歌を披露すれば、道化が踊り、街娘が男達の手をとって踊り出す。 
ロンディニウムのそこかしこで「女王陛下万歳!」の叫びが上った。 
それは本当に女王の即位を祝う声ではなく、戦争という抑圧から開放された衆愚の無責任な叫びだが、それでもエルフの血を引くティファニアの即位を心底嫌悪してはいないという、その現われではあった。 
そんな大騒ぎの中の戴冠式3日前。
国賓として宮殿へと訪れたアンリエッタに、ルイズは再会したのであった。 

「お久しゅうございます、姫様」 

毛足の長い赤絨毯に膝をつき、ルイズは深々と頭を下げる。 
驚くほど広く天井の高い部屋を、魔法の明りとクリスタルを組み合わせたシャンデリアが照らしている。 
その輝きにも負けない気品を持った生まれながらの王族の少女は、水晶のついた王家の杖を手に堂々と立っていた。 
アンリエッタの隣に控えるのは宰相マザリーニ卿。 
背後をルイズは名前も知らないヒポグリフ隊の隊長と近衛騎士達が直立不動で固めている。 

「姫様におかれましては御身おかわり無く、まことにお喜び申し上げます」 

平静な声が口から滑り落ちる。 
ルイズの声の調子に単なる貴族の子女以上の何かを感じたのか、マザリーニ卿のみがわずかに眉を動かした。 
ルイズはアルビオン王政府から借りた、ごく薄い桃色の礼服を身につけてアンリエッタを迎えている。 
桃色の髪が映える衣装によって、ルイズの生まれ持った気品が普段以上に強調されて、一種の風格にまで高まっている程だ。 
その指に光るのは水のルビー。 
不思議な感覚だった。 
幼い頃共に遊んだとは言え、自分にとって最も敬愛する王女アンリエッタを前にして、ルイズは平静な気持ちを維持している。 
しかも辣腕で知られる枢機卿や屈強な魔法衛視隊の歴々までもが控えるその正面で、堂々としていられるのだから。 
そう。ルイズは今から戦うつもりだった。 
それは槍の替わりに意思を、魔法の替わりに言葉を交わす、けれど命を賭けた戦いである。 
自分と、そして己が使い魔の命を賭けた戦い。 
なぜかマントをつけていないルイズの姿を見て不思議そうにしながら、アンリエッタは親友の手をとって立ち上がらせる。 

「まぁルイズったら……まだあれから10日しか経っていないわ。 
 けれどあまりにも色々な事があったから、つい長い時間が過ぎたと勘違いしてしまうのね。 
 お願いよ、私の大切なおともだち。 
 どうかこの10日間になにがおこったのか、私に話して聞かせてちょうだいな?」 

顔をあげたルイズの瞳を正面から見つめて、アンリエッタはそう言った。 
その潤んだ瞳には、ウェールズ皇太子がどうなったのかを聞きたいという感情が浮かんでいる。 
親愛なる王女の望みを汲み取ったルイズは、王宮の一室に与えられた自分の部屋へとアンリエッタを案内する。 

「では姫様、こちらへ。わたくしが見聞きした全てを、お話させていただきます」 

それは部外者には聞かれたくないという意思表示。 
王女の目配せを受け取って、マザリーニ枢機卿を含めた全員が部屋で待つ。 
どうせ魔法なりの手段で盗み聞きはされるのだろうが、それはアンリエッタの立場上言っても仕方の無い事だろう。 
慣れた様子で宮殿付きのメイドにお茶を淹れさせたルイズは、アンリエッタと向かい合って椅子に座る。 
用事を済ませば静々と退出する、教育の行き届いたメイドが樫材の扉の向こうへと姿を消した。 
それからルイズは、アンリエッタに向かって日が沈むまで語った。 
伝説と伝説と伝説に彩られ、異世界の魔法が乱舞する10日間の記憶の全てを。 

【[[虚無の使い魔と煉獄の虚神]]】 

虚無の使い手とは、歴史上・信仰上の問題として決して無視できない重みを持っている。 
古い時代と比べれば始祖への尊敬など薄れてしまった、聖職者すら信仰を見失いがちな現代においても、決して軽視は出来ない伝説だ。 
それが表ざたにされずに隠されているのならともかく、新女王がその担い手であると発表されればなおの事。 
まして、伝説の虚無が一軍を破るほどの実質的な「戦力」であるとなれば、各国の王とて無視はできまい。 
事実、それによってアルビオン王家は起死回生を果たし、ロマリア教皇すらも動いたのだから。 

だからこそ、ルイズとサイトの立場は微妙だった。 
その存在と力は既に風説となってアルビオンは元より他国にまで流布している。 
それどころか、5万の空軍を壊滅させたのも、虚無とその使い魔の仕業だと噂されているのだ。 
無かった事には出来ないだろう。 
一国の軍隊に比肩しうる伝説の存在が三人。 
1人はアルビオンの女王であり、2人はトリステインの貴族とその使い魔。 
異邦の魔法を操る錬金大系の魔導師がアルビオンに居て、神の如き力を振るう相似の魔導師はガリアのメイジの使い魔だ。 
更に、死者たる大系魔導師達を操る謎の第三勢力。 
戦いをひっくり返す事も出来る未知の戦力の分散と集中は、為政者にとって決して見過ごせるものではあるまい。 

既にアルビオン王政府はヒラガ・サイトとグレン・アザレイに爵位と領地の授与を打診している。 
王党復活に特に尽力の有った二人を、自国の貴族として迎え入れると言うのだ。 
それどころか、ルイズとタバサ、それにギーシュやキュルケに対しても同様の叙勲を申し出ている。 
ただし、各国の貴族としての立場を鑑みて、それぞれの実家や国家に了解を得てから、という話にはなっているのだが。 
他の三人がどうするのか、ルイズには分からない。 
領地継承の目が無い三男であるギーシュにとっては渡りに船だろうし、断る事はあまり考えにくい。 
キュルケは確か一人娘だったとは思うが、ゲルマニア貴族が勢力拡大のチャンスを棒に振るかどうかは五分だろう。 
タバサの立場は更に微妙だ。 
彼女の実家がどのような家系かは知らないが、あからさまな偽名を名乗って留学してきたガリア貴族で、しかもトライアングルクラスの実力者となれば只者ではあるまい。 
その上、あのグレン・アザレイの主人となれば、無能で知られるガリア王とて放任すると云う事は考えられなかった。 

そしてルイズとサイト。 
二人を系譜の面から考えれば、その戦力はトリステインが保有するのが筋となる。 
しかしサイトはあくまでルイズと個人の契約によって結び付けられているワケだし、ルイズの実家ヴァリエール家とて、一つ事あれば反旗を翻して王軍と伍す気概と実力は持っている大貴族。 
国際的な視点、そして国内の火種として考えても、ルイズの存在は微妙に過ぎる。 
だからと言ってアルビオンに二人の下駄を預けて済ませるには、あまりにも危険で魅力的過ぎる武器なのだった。 

つまるところ、ルイズ達はうっかり救国の英雄となってしまったため、軍事バランスのコントロールという国際間ゲームのカードに否応無くされてしまっているのが現状なのだ。 
アルビオン首脳部はあくまで貴族としての信義から恩賞を与えたいと言っているが、それもテファとモードと言う強力なカードを二枚、既に手中にしている安心感からの発言であることは否めまい。 
また、彼等は自分達が与える爵位等を各国が拒否した場合、それと同等の栄誉を与えるべしとの圧力もかけていた。 
つまり、グレンやサイト、そしてルイズを我が物としようと言うのなら、それ相応の格を与えて遇せよと言うのだ。 

かくして、戴冠式を控えた3日間の宮廷は、きらびやかな見た目とは裏腹に、多大な緊張感を孕んだ外交戦の舞台となっているのだった。 

笑顔でもって各国の客人をもてなしながら、様々なカードを切る事に余念が無いアルビオン。 
新女王ティファニアが座る玉座の隣で指揮を執るのは、宰相に抜擢されたマチルタ・オブ・サウスゴータその人である。 
世事と交渉に長けて世慣れた彼女は、盗賊時代に集めた貴族の醜聞すら利用して、既に頭角を現し始めていた。 
反乱貴族から巻き上げた潤沢な資金と、美貌の辣腕宰相の姿に、新生アルビオンは一筋縄では行かぬと[[政治屋]]達は噂しあう。 

一方、タバサとグレンを当然のように侍らせるのはガリア王女イザベラ。 
王宮の一角にて国許から連れて来た使用人達を使って豪華の極みのような生活をしているものの、あまり派手に姿を現すことも無く、傍観者ぶった態度で静観を決め込んでいる。 
その沈黙から他国に侮られる面もあったが、グレンという最強の鬼札を手にしている状況にアルビオンの警戒は深まっていた。 

法王本人までもが出張ってきたロマリアは、しかしガリア同様の沈黙を守っている。 
美貌の青年、聖エイジス32世は不思議な微笑みの下に本意を隠したまま、ただ水面下で「始祖の恵児たる虚無の担い手に、相応の敬意を払うべし」との意思を伝えるのみ。 
ただ、その忠実な配下である各国の司祭達を通して、秘密裏に働きかけがあったとも無かったとも噂されていた。 

ある意味で最も蚊帳の外に居るのがゲルマニア皇帝であろう。 
大貴族であるツェルプストーの判断には、皇帝であっても横槍の口出しはできにくい。 
実の娘の参加した騒ぎに、一大事と駆けつけたツェルプストー当主が居る現状では尚更だろう。 
それに、英雄の1人とは言えキュルケは端役に過ぎないのだから旨味は少ない。 
その上、レコン・キスタの脅威が去ったため、手の平を返したトリステインによってアンリエッタとの婚約は立ち消えになった。 
結局、国政から開放されたのを幸いと食べて呑んで狩りや遠乗りの話しに花を咲かせる、ただのヨッパライ貴族のオヤジと化した皇帝陛下であったという。 

そして最後の一国トリステインは、決断を迫られていた。 
最大の焦点はサラガ・サイトの処遇。 
平民だが、伝説の存在であるガンダールヴの彼を貴族として叙するべきか否か。 
その決断しだいでは、アルビオンが彼を自国の貴族として迎えるだろう。 
虚無の担い手とその使い魔は一組だとも考えられるが、それならばアルビオン女王ティファニアがガンダールヴを従えてもかまわないのだから。 

いや、ヒラガ・サイトの処遇に注目しているのはトリステイン一国では無い。 
アルビオンは元より、ロマリア法王もガリア国王も、息を潜めて事態の推移を注視している。 
8万の大群を先陣にて貫き穿つ『神の盾』にして『アルビオンの槍』。 
4大国の要人達から注目される少年はけれど―――暗い部屋の中で独り沈み込んでいた。 


赤と青の月明かりが、分厚いカーテンの隙間から差し込む。 
この広い部屋にある明かりはそれだけだ。 
サイトが一声かければ、隣室に控えたメイドが蜜蝋のロウソクに火を灯して現われるはずだった。 
蜀台やランプを用意し、豪勢な食事を持ち込み、浴びるほどの酒や招かれている芸人や楽士を呼んでくる事も出来るだろう。 
けれど、サイトは暗い部屋の隅で床に座り込んで、ただ膝を抱えるのみである。 

暗闇の中で、サイトはじっと手を見る。 
その手の中に残るのは、巨大な鎚と槍を投げた感触。 
高揚しきっていたあの戦いの最中では気がつかなかったが、今は小刻みにその手が震えている。 
自分は人を殺したのだ。 
自分の手で、自分の意思で、自分と同じ人間を殺したのだ。 

ギーシュのゴーレムやワルドの遍在を切り捨てるのとは意味が違う。 
水の秘術で動かされていた死者を斬ったのとも意味が違う。 
裏切り者のワルドの腕を落とした時でさえ……もしも殺していたら、平静で居られた自信は無い。 
それは、人殺しを罪悪とする平和な日本で育った少年には重過ぎる事実だった。 
回転する巨大な鉄槌に飲み込まれて挽肉になった兵士と軍馬。 
電柱よりも巨大な槍に貫かれて串刺しになったメイジ。 
その命を奪った感触は手の中に残っていなくても、込み上げてくる嫌悪感は止める事ができなかった。 

「母ちゃん……父ちゃん……」 

アンタ達の息子は人殺しになっちまったよと、サイトは小さく呟いた。 
それは少年の知る社会の常識において、許されないような怪物になったという意味なのだ。 
どうでもいいような学校での毎日だとか。 
どうでもいいような日曜日の過ごし方だとか。 
母親の味噌汁の味だとか、新聞を読みながら屁をこくような父親との団欒だとか。 
そんなどうでもいい、けれど掛け替えのない日々に、殺人者になったサイトはもうきっと戻れない。 
俯いたまま、下唇をきゅっと噛む。 
そうやって我慢しようとしたのに、せつなくて涙が溢れるのを止められなかった。 

「…………サイト」 

ほんの半月で聞き慣れた優しい声に、真っ暗な部屋へと目を上げれば、そこに桃色の髪の少女が立っていた。 
ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエール。 
サイトのご主人様の姿は、闇の中にあってなお輝くように美しかった。 

「ルイズ?」 
「ごめんねサイト……私のせいで……私のために、そんな風に傷付いて……」 

泣き出しそうな潤んだ瞳。 
細く頼り無い体を罪悪感に絡み獲られられながら、けれどルイズの頬はどこか上気したように朱に染まっている。 
膝をつき、サイトを抱きしめたルイズの身体からは、甘い少女の香りと女の鼓動が伝わってきた。 

「大丈夫だから。アンタは私の使い魔だもの。だから、サイトの罪は私のものよ。 
 死んでまで操られていたかわいそうな魔導師を斬ったのも私が命令したから。 
 たくさんの兵隊に向かっていったのも私がそう望んだから。 
 魔法で増えたワルドに向かっていってくれたのも私のためだもの。 
 サイトは悪い事なんてなにもしていないわ。 
 貴方の罪は私から生まれたものだから、全部私が引き受ける。 
 貴方の痛みは私の責任で生まれるものだから、全部私が引き受ける。 
 だからサイト。貴方を罪深くして、貴方を痛くするのは私だけよ?」 

少女の瞳が熱くゆらめく。 
愛でもって全ての罪を浄化する慈母のように。愛でもって全てを奪いつくす娼婦のように。 
ガンダールヴ・サイトという存在が各国の要人達から注視されている現在に在って、ルイズはサイトに自分だけのナイトで居て欲しいと望んでいた。 
誰かに、例えばティファニアに奪われたくない。 
離れ離れになるのも絶対に嫌だ。 
それはある意味で、ボタンの掛け違いのような偶然によって生まれた感情だったかもしれない。 

サイトが本来の、もっとお調子者で年相応にスケベな一面を見せていたら、今ほど抵抗無く惚れ込む事は無かっただろう。 
けれど幸か不幸か、グレン・アザレイの存在がサイトから余裕を無くさせ、結果として本来よりも幾分か慎重で苦悩する少年へとサイトを成長させていた。 

ワルドの裏切りからもう少し時間を置く事が出来れば、ルイズももう少し冷静になれただろう。 
けれど嵐のような事態の推移が、そのための時間を少女から奪い取った。 
間髪入れずに目の前に晒された『虚無の担い手』という自身の価値が、少女により強く負担を与えた事も影響しているだろう。 
だから不安定な少女は求めた。 
強く、優しく、自分のためだけに戦ってくれるナイトを。 

「ねえサイト。私は貴方と一緒に居るわ。 
 そのためにトリステインを、ヴァリエールを捨ててもかまわない。 
 誓って。貴方だけが私を捕まえて、貴方だけが私を痛くするんだって。 
 そうしたら貴方の罪も罰も痛みもすべて、私だけが引き受けてあげるから」 

少女は告げる。少年がどの陣営に連れて行かれる事になろうと、自分はそれに同行するのだと。 
それは甘やかな堕落の蜜。 
そこに縋ればあらゆる罪から逃れる事ができるだろう。 
サイトの手がルイズの抱擁に答えようと持ち上がり……そして力無く落ちた。 

それは、それだけは出来ない事だった。 
自分の罪を使い魔と主人という関係性に縋ってルイズに押し付けるなど、男として出来る事では無い。 
それ以上に、サイトには目標があったのだ。 
倒すべき、いつか戦うべき目標。 
5万の人間を一瞬で滅ぼし、その虐殺を虐殺であると受け入れた神に似た男。 
自分自身の罪をルイズに押し付けるような男が、その前に立つことなど出来ないだろう。 

だからサイトは泣いた。ただどうにもならない事に泣いた。 
その涙を、愛しそうにキスで拭うルイズ。 
誰よりも近くに居ながら、二人の心は誰よりもすれ違っている。 
けれどその日。 
二人の身体だけはベッドの中で重なるのだった。 


雲が高い。 
ここはハルケギニアから遠く離れたコンクリートとアスファルトで固められた世界。 
排気ガスの充満する空を割いて、ギラギラと輝く真夏の太陽が地上を照らす。 
反射熱で大気は炙られ、陽炎のように視界を歪めていた。 
そんな灼熱の東京で、ほんのわずかに見える小さな緑地の中に、その施設は建っている。 
神社でありながら、いかなる宗教でも無いとされるその施設の名は靖国神社。 
戦争によって没した死者を英霊として祭る、巨大な慰霊碑。 
その境内に、1人の男が立っていた。 

一見して西洋人とわかる男の姿は、この場所では奇異かと言えばそうでも無い。 
あまり知られていないが、靖国神社には戦没した西洋人の御魂も祭られているため、ここを訪れる外国人も皆無では無い。 
だが、その男のいでたちは、やはり奇異だと言わねばならないだろう。 
突き刺すような日差しを無視した、まるで男自身が逃げ水であるかのような印象を与える白いスーツ。 
白い帽子の下には、道化を連想させるうさんくさい笑顔。 
なにより奇異を感じさせるのは、右目を覆う銀の眼帯の存在だ。 
彼を不思議そうに見る、境内を掃除した帰りの老人は知るまい。 
この男が、東京を核爆弾で滅ぼそうとしているテロリストの協力者だなどとは。 
大きな黒い目を不思議そうに眇める、老人の孫らしい少年も知るまい。 
この男が、百年以上の時を日本の歴史と共に過ごした『悪い魔法使い』である事など。 
男の名は王子護ハウゼン。 
自身の感覚を起点に世界を認識した形に変える完全大系の魔導師にして『マジシャン』の異名を持つ魔人である。 

だが王子護はその時、ただ静かに眠る魂に哀悼の意を捧げていた。 
彼が日本という国に現われて百年。 
政府の裏の顔に携わる時間も長かった男は、軍人の指導教官という立場だった時代もある。 
もっとも生徒は異世界から追放された犯罪者達であり、彼等の乗る飛行機には片道分だけの燃料しか積まれていなかったが。 
つまるところ、特攻隊のパイロットの養成が王子護ハウゼンの仕事だったのだ。 
だから此処には彼の教え子も奉られている。 
他の多くの刻印魔導師には別の、専任係官や犯罪魔導師も共に埋葬されている寺があるのだが、日本という国家を守るために南海で散った彼等の御霊だけはこの靖国に眠るとされたのだ。 
本当にこの地が核によって更地になるかもしれないからと一度だけ手を合わせに来たのは、長すぎる時間を生きる怪物の中に残った、わずかばかりの人間性の表れだろうか。 

炎天下の境内に立ち尽くすハウゼンは、じっと靖国本殿へ視線を向けたままでいる。 
その中に有るのは整然と並べられた無数の木札。 
そこには一枚一枚に1人ずつ、戦没者の名前が余さず記されている。 
ここにあるのはこの札と魂、それにわずかな遺品のみで、遺体や骨は一切無い。 
そもそも死体が残るような死に方をした者など、あの悲惨な戦争に駆り出された魔導師の中には1人も居なかったのだから。 
だが、だからこそこの靖国という形こそが、魔法世界の中で唯一神無き地、奇跡に見放された世界と言われる地球で、罪人として命を落とした魔法使い達の死を弔うのに、あるいは相応しいのかもしれないと王子護は皮肉気に思う。 
その皮肉な笑顔を崩さぬまま、無数の札の中から一つ一つ教え子の名を読み取っていく王子護。 
高位魔導師である彼にとって、悪鬼による魔法消去さえ受けなければ境内からでもその全てを読む事に支障は無いのだ。 
その中の一つを目にした時、ふと魔法使いの視線が止まった。 
書かれているのは教え子の名では無い。 

「シラヌイ……キミは本当に死んだんデスかね?」 

『不知火』と呼ばれたその男は、公館において刻印魔導師を統率する専任係官の1人だった。 
スローターデーモンと恐れられ、魔導師を死地に追いやる悪鬼の中の悪鬼。 
魔法も使えず特殊な能力も無く、しかし極まった剣の技で不知火の如く眼前から消え失せ、相手がそうと気づかぬ内に殺害したという。 
その技の冴えは、当代で最強と噂される『鬼火』のそれにも匹敵するか。 
魔法を使えず、感知も出来ず、治療魔術の恩恵も受けられないがゆえに、この世界の戦闘技術は奇形的な鬼子となった。 
その限界を極めた、一匹の剣鬼。 

で、ありながら、不知火は刻印魔導師だけを特攻機に乗せて戦場へ送る事に反対した。 
そして専任係官は刻印魔導師を管理監督する者だと言って、自らもゼロ戦に乗り込み―――当然の如く帰還しなかったのだ。 
だが、王子護は不知火が死んだとは感じていない。 
自身も選任係官として公館の歴史と共に歩んできたその中で、最も死ぬ姿が想像出来なかった男が彼だ。 
認識によって世界を書き換える魔法使いにすら、死を空想できない戦鬼。 
太平洋で戦死したとして木札一枚奉られているのが彼の知る不知火だとは、王子護には思えなかった。 

「ササキ・タケオ……そう言えばキミはそんな名前でしたっけネ、シラヌイ」 

数十年ぶりに同僚の本名を確認するように呟いて、王子護はきびすを返した。 
感傷はここまで。
この先は『仕事』を十全に片付けねばならない。 
周囲の視線が途切れる瞬間、王子護は転移魔法を発動させた。 
目の前の空気の揺らぎを空間の歪みと認識して、そこに無理矢理転移の扉を作り出したのだ。 
不知火のように消え失せる白スーツの魔法使い。 
後にはただ、セミの鳴き声と真夏の日差しだけが降り注いでいた。 


そんな、真昼の東京から遥か次元を隔てて離れたハルケギニアの夜。 
二つの月が照らす水面は、美しい赤と青の月光に染まる。 
地球の月よりも位置が近いのか、あるいは惑星そのものが大きいのか。 
この世界で満月の夜は、夜半を過ぎて街の明かりが消えた時間でも十分に明るい。 
フラフラと水面の月を覗く少女の顔もはっきりと見えるぐらいに。 

まだ若い、綺麗な顔立ちをした娘だった。 
笑顔を見せれば誰もが好感を抱くだろうその顔は、しかし今は絶望の色に染められている。 
大切な何かを失った表情だった。 
失いすぎて、なにもかもを見失った表情だった。 
悲しみが、苦しみが深すぎて、自分自身のありかさえ見失い―――彼女は目の前の河に身を投げた。 

大きな水音が夜陰を裂く。 
水を吸った衣服は瞬時に重苦しい拘束具になり、このまま沈めばわずかな時間で少女の命は失われるだろう。 
だが、冷たい水に身体を絡めとられ、意思が決した自分の死に肉体が従おうとしたその時、強烈な恐怖が生存本能を呼び起こした。 
死にたくない。生きたい。 
自殺のために飛び込んでいながら、少女は死を恐れてもがく。 
喉に流れ込む川水を吐き出し、酸素を求めて浮上すべく手足をめっくらぽうに振り回した。 
死ぬのは嫌だ。そう、本当は死にたくなんて無かった。 
辛い思いもした。大切なたった一人の父親を亡くした。だけど死にたくない。死ねない。 
父を自殺においやった、あの憎い貴族がのうのうと生きているのに、死ねるものか。 
狂おしく生を望む必死の形相に、怒りと憎しみの色が加わる。 
と、その身体がフワリと浮力を得た。 
誰かが河に飛び込み、溺れている自分を抱きかかえてくれたのだと少女が気付いた時には、その逞しい腕で河原に引き上げられていた。 

強く咳き込んで肺に侵入しかかっていた水を吐き出す少女。 
その咳は、いつのまにか嗚咽へと代わっていく。 
ずぶ濡れになった頬を涙がこぼれ落ちる。 
悔しかった。悲しかった。 
なによりも大切な人を亡くして絶望しながら、それでも生を望む浅ましさが。 
だれよりも大事な人を死に追いやられながら、復讐も出来ない無力さが。 

幸せだったのに。母親を早くに亡くして、父親と二人だけで暮らしてきたけれど、自分達は幸せだったのに。 
誰に迷惑をかけるわけでもなく、ただ平穏に暮らしていた。 
街の片隅でごく普通の居酒屋を営んでいた父と、ちょっと引っ込み思案なウエイトレスだった自分。 
父が腕を振るった料理が評判で、近所の家族連れなども多く訪れたこじんまりとした店。 
酔っ払うといつも歌声を披露する昔楽団員だったというオジサンや、会うたびに飴玉をくれたお爺さんが常連だった。 
親子の小さな生活は、たった1人の貴族の、ほんの気まぐれで壊される。 

半年前、たまたま徴税官のチュレンヌという貴族の不興を買った父の店は、ありえない額の税金を掛けられて潰されたのだ。 
役人によって差し押さえられた店の前で親子は途方にくれた。 
正当な手続きなど行われていない。 
文句を言っても聞いてもらえない。 
それどころか、店の前を通りかかったチュレンヌに縋りついて直訴した親子の目の前で、徴税官はとりまきに命じて無数の攻撃魔法を店へと放たせたのである。
それは圧倒的な、平民などにはどうしようもないメイジの力。 
何もかもを奪われ、恐ろしい力を見せ付けられ、父は心身を病んだ。 
病に倒れ、日がな一日床についたまま呆けたように壁を見つめるだけの父。 
変わり果ててしまった、料理が上手くて、働き者で、いつも笑顔だった大好きな父親。 
その父が、昨日首を吊って死んだ。 
賃仕事から夕方遅くに帰宅した娘の目の前で、バラック小屋の柱からぶら下がった父親の足が揺れる。 
カーテンも無い窓から差し込む夕日で真っ赤に染まったその光景を見て、少女は全てが終わったのだと知ったのだ。 

嗚咽が慟哭に変わり、少女は喉も千切れよとばかりに泣きじゃくった。 
彼女を水中から引き上げた太く逞しい腕は、ただ静かに肩を抱いてくれている。 
分厚い胸板。温かい体温。それと、河に跳び込んだせいで流れてしまった微かな香水の残り香。 
散々泣いて泣き疲れて、見上げた顔には見覚えがあった。 
撫で付けた黒髪と割れた顎。 
いまはベットリと顔に張り付いてしまっている、瀟洒な口髭と顎髭。 

「どうやら落ち着いたみたいね、ジャンヌちゃん?」 

体格に似合わないオカマ言葉の優しい声。 
穏やかそうなつぶらな瞳の中年男性は、少女の小さな幸せだった店と同じ通りで酒場を営んでいる人物だった。 

「スカロンさん……」 
「もうっ、びっくりしたわよ。貴女を探してたら、こんな所で溺れてるんだもの!」 

なぜ探していたのかは言われなくても知れた。 
父の死体が見つかって、その場に居なかった自分を心配した知り合いの大人達が探して回ってくれたのだろう。 
そう思ってみれば、何処かからおーいだとか、見つかったかーだとか言う声が聞こえる。 
スカロンは「見つけたわよー」と大きな声で叫んでから少女、ジャンヌを抱き上げた。 

「大丈夫だから。苦しい日も悲しい日もあるけれど、生きていればきっと良い日は来るから。 
 諦めちゃダメよ。絶望しちゃダメよ。なにより、貴族の横暴なんかに負けちゃダメ。 
 神様は見ていらっしゃるもの。悪い人にはきっと天罰が下るわよ」 

優しい声が耳元に響く。 
ポンポンと背中を叩く大きな手に、ジャンヌは元気だった頃の父親を思い出してまた泣き出してしまった。 
泣いたままの少女を『魅惑の妖精亭』へと連れて帰るスカロン。 
それからジェシカに付き添われて身体を拭いてもらい、桶に張った温かな湯で身体を洗ってもらった。 
優しさが疲れ切った心と身体に染みこんでくる。 
「ウチに来ると良いよ。私達と家族になろう?」と言われながら、ジェシカのベッドで並んで眠るジャンヌ。 
その一瞬前、大きなコウモリかカラスが飛び立ったような変な幻を見て、少女は重いまぶたを閉じるのだった。 


大きなコウモリかカラスが舞い降りた。 
徴税官チュレンヌは二つの月の光の下で、目の前に影が降り立った時にそう感じた。 
いや、違う。 
魔獣幻獣が跋扈するハルケギニアにとて、人ほども大きなカラスやコウモリなどそうは居ない。 
ましてやトリステインの首都トリスタニアという大都会に、そんな未開の怪物など現われるはずが無いのだ。 

「人間!?」 

誰何の声をあげれば、思った通りにソレは人間であった。 
ただ黒いマントを身に付けているために、カラスやコウモリの類に見えたのだ。 

「何者だ貴様!?」 
「このお方を徴税官チュレンヌ様と知って行く手を阻むか?」 

周囲のとりまきが詰問口調の声をあげる。 
今の今まで街の酒場でタダ酒を飲んでいた男達は、気が大きくなっていた。 
だから逆に、注意力や判断力は最低中の最低にまで低下している。 
男はマントこそ付けていたが杖は持っていなかったので侮ったのだ。 
その腰に一振りの曲った大剣を提げている事も気が付かずに。 
目深に被った奇妙な形の帽子のツバの下の眼光が、尋常な物では無い事も気付かずに。 

「もちろんチュレンヌ様と知っててトオセンボしてるわよん。 
 アンタが悪徳徴税官で、どうしようも無い下衆って事もね。 
 でもタダ酒たかる程度ならまぁ見逃すかと思ってたのよ? 
 その程度の小悪党、貴族に限らず何処にでも居るもの。 
 だけど―――アンタのせいで人死にが出たとあっちゃあ捨ててはおけないわ。 
 たとえ王女殿下と始祖ブリミルが見逃しても、アタシのご先祖様が許さないのよ!!」 

男の……それとも女なのか、やたら野太い声だが女言葉の口上に、チュレンヌのとりまきは嘲笑と共に杖を構えようとして――― 
首が落ちた。 
一瞬で5人のメイジが、抵抗も出来ずに真紅の飛沫を上げる噴水と化す。 
呆然とする仲間達。 
目の前のマントの男が不知火のように消え失せたかと思った次の瞬間、抜く手も見せずに振るわれた異国調の剣で切り殺されたのだと理解出来ただろうか。 
限界まで研ぎ上げられた技量はまさに魔法の領域。 
おそらく痛みも感じる隙無く死んだ5人がぐらりと揺れて倒れるよりも前に、更に3人が斬殺される。 
ここに至ってようやく漆で朱に塗られた鞘をカラリと石畳の上に投げ捨てて、八艘の形に剣……否、カタナを構える男。 
長さは子供の身の丈ほどもある刀は、俗に胴田貫と呼ばれる大物。 
特に朱鞘のソレは鎧すら断ち切ると言われ、カブトワリの異名をもって知られる大太刀である。 
豪腕でもってその刀を軽々と振り回す怪人は、低い声でたった一人生き残ったチュレンヌに向かって滔々と宣告する。 

「護国の戦鬼ササキタケオの遺志によりて、無辜の人々を脅かす犯罪魔導師を狩らん。 
―――アンタはやりすぎたのよ、死んであの娘の父親に謝りなさい」 
「ヒッ!?」 

慌てた徴税官チュレンヌの舌が回転する。 
だが、男の動きはメイジが呪文をつむぐよりもなお高速だった。 
魔法を持たず、治癒魔法の恩恵も受けられぬ平民だからこその鍛え上げられた四肢。 
そこから生み出される決死の意を伴った剣の業は、奇形的とも言えるだろう。 
人が言葉を発するよりもなお速いという、まさに迅雷の剣閃。 
ある種の論理体系にて編まれた足の運び、腰の捻り、一刀を振り抜く腕の動き。 
その全てが一体となった刀は、白光となってチュレンヌを袈裟に切り裂いた。 
呪文を唱えるための肺と、生きるための心臓、そして杖を握った腕を一瞬で切断されて、徴税官は単なる肉の塊と化す。 

8人分の血溜まりの上にビシャリと音をたてて転がる男の上半身。 
見開いた目が、自分を殺した剣鬼の姿をうつろに写す。 
死の間際に気がついただろうか。自分を殺した男が、何度もタダ酒を飲んだ酒場のオカマ店主だという事に。 
そしてもう一つ。 
黒に見えたマントは年代を経て返り血を浴びたため黒ずんでいるだけで、元々はカーキ色だった事に。 

剣鬼が身に纏うのは、襟に少尉の階級章が縫い付けられた大日本帝国海軍の外套。 
第二次大戦中の南海にて消えた公館の専任係官、スローターデーモン佐々木武雄の遺品であった。



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