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異世界BASARA-45 - (2008/03/21 (金) 22:35:04) のソース
#navi(異世界BASARA) 異世界BASARA-45 幸村がゴーレムの腕に叩き潰される少し前。 酒場の1階は修羅場と化していた。 玄関から現れた傭兵の一隊が、酒を飲んでいたワルド達を襲ったのである。 一同は大理石で作られたテーブルの足を折り、それを盾にして矢から身を守っていた。 「しええぇっ!い、いいか若造!わしの前後左右と、ついでに頭上も守るのじゃ!!」 「どれか1つぐらい自分で何とかしてくれ!」 浴びせ掛けられる矢の攻撃をテーブルで防ぎながら、ギーシュと氏政は言い合っている。 こんな状況でも口喧嘩する2人はある意味大したものである。 「キュルケ殿、あいつ等キュルケ殿との戦い方に慣れているぞ」 「そうね、ちょっとマズイかも」 利家の言う通り、傭兵達はメイジとの戦いに手馴れているようだった。 先ず、1度、2度の応酬で魔法の射程を見極め、その 範囲外から矢を射かけてくる。 そして立ち上がり、魔法を唱えようとした所へすかさず矢を放ってくるのだ。 「連中は我々に魔法を使わせ、精神力が切れた所に突撃するつもりだな」 ワルドは髭を弄りながら言った。 「さて、どうしたものか……」 「ええい忠勝は何をしておる!!何故来んのじゃ!!」 氏政がタバサに向かって喚き散らす。 タバサは本から目を離さず、「分からない」と呟いた。 実は、忠勝もフーケのゴーレムには気づいていた。 「!!」グオオォン!プルル!! 切り立った崖の上からゴーレムを見つけた忠勝は右手を真っ直ぐ伸ばす。 すると、地面に亀裂が走り、轟音と共に巨大な槍が飛び出してきた。 いや、槍というよりはドリルに近い代物である。 『機巧槍 黒王』…… あらゆる物質を貫き通す鋼鉄の巨大槍。 本田忠勝しか扱えず、止まろうとしたトンボが真っ二つどころか粉々になった槍である。 「……!」ガシィン!! 忠勝は黒王を握ると、フーケのゴーレム目掛けて飛び立った。 黒王の穂先をゴーレムに向け、忠勝は上空から急降下する。 ビュオオオオオォォ!!! だが突如竜巻が起こり、空中の忠勝に襲い掛かってきた。 「!!??」ギギ、ボシュルル!! 衝撃により、忠勝はバランスを失って岩の壁面に激突する。 忠勝は竜巻が飛んできた方に目を向けた。すると…… 仮面を被った3人の男がこちらを見ていた。 一方、酒場ではキュルケ達が身動き取れずにいた。 キュルケ以外にも他の貴族の客達がカウンターの下で隠れて震えている。 しかし店の主人はたまったものではない。 いきなり自分の店を滅茶苦茶にされてしまい、遂に我慢の限界に達してしまった。 「お前等わしの店が何をし……」 店の主人が立ち上がって叫ぼうとした。丁度その時であった。 「ぐあああぁぁぁぁぁっ!!」 「ほげぇっ!!」 天井を突き破って男が落ちてきた。 店の主人は落ちてきた男の下敷きになり、短い悲鳴を上げて地面に倒れた。 「ユキムラ?ユキムラじゃない!?」 「あだだ……これは一体、何の騒ぎにござるか?」 そう、落ちてきたのは2階でゴーレムの腕に叩き伏せられた幸村だった。 彼はそのまま床を突き抜け、1階まで落ちてきたのである。 一足遅れて、ルイズが2階から降りてきた。 「[[ルイズ!]]良かった、無事だったんだね」 ワルドが安堵の息を漏らした。 と、ルイズは今しがた天井から落ちてきたであろう幸村を見つけた。 「おおルイズ殿!ご無事で何よりであります!」 「生きていたのね……馬鹿、潰されちゃったかと思ったじゃない!」 ルイズはピンピンしている幸村を見て怒鳴る。 だが、心の内では生きていて安心していた。 「いいか諸君」 と、忠勝を除く全員が揃ったのを確認したワルドが低い声で言った。 「このような任務は半数が目的地に辿り着ければ成功とされる」 こんな状況でも本を読んでいたタバサが、本を閉じてワルドの方を向いた。自分、キュルケ、ギーシュを指差して「囮」と呟いた。 それからタバサはワルドとルイズを指して「桟橋へ」と言った。 「時間は?」 「今すぐ」 ワルドが尋ねると、タバサは短くそう言った。 「聞いての通りだ、裏口へ向かうぞ」 「で、でも……」 ルイズはまだ訳が分からないという顔をしている。 するとキュルケがその赤い髪をかきあげながら言った。 「いいから早く行きなさい。勘違いしないでよルイズ、あなたの為に囮になるわけじゃないから」 タバサもルイズ達を見て「言って」と促した。 「じゃあおっぱじめますか。ギーシュ、ちょっと頼みたいんだけど」 傭兵達の動きをテーブルの影から見ながら、キュルケは振り返ってギーシュに命令…… しようとした。 「あら?」 ギーシュと、氏政の姿がいつの間にか消えていた。 ワルドはぴったりとドアに身を寄せ、向こうの様子を探っている。 「誰もいないようだな」 ドアを開け、3人はラ・ロシェールの街へと躍り出た。 「桟橋はこっちだ」 ワルドが先頭を行き、ルイズが続く。幸村が殿を務める。 「待つのじゃ!」 その筈だったが、さらに幸村の後ろから年老いた声がした。 「氏政殿、囮を受け持ったのではなかったか!?」 現れたのは、残る筈だった北条氏政。 「や、やぁ」 その背後からさらにギーシュが顔をだす。 「何で付いて来たのよ。自分達の役目分かってる?」 「僕は止めたんだよ?だけどウジマサが勝手に……」 「お主等だけに手柄を渡してたまるか!わしが手柄をたてるんじゃぁ~!」 「仕方ない、彼等も連れて行こう。桟橋へ急ぐぞ」 結局、ギーシュと氏政も連れて行くことにした。 月が照らす中、5つの影法師が遠く、低く延びた。 その頃、忠勝は仮面を被った3人の謎の男と対峙していた。 「……………」オオオォォォン… 「「「……………」」」 双方一言も喋らず、お互いに出方を伺う。 先に動いたのは男達だった。 それぞれが呪文を唱え、杖を忠勝に向けて振るうと、その杖から風の刃……「エア・カッター」が放たれる。 「!!」キュィーン!! 素早く攻撃を察知した忠勝は「起動形態」から「防御形態」に移行。 盾を肩に装着し、風の刃を防いだ。 攻撃を防がれた仮面の男達は飛び上がる。 上空から2人が青白く光った杖を振り上げ、忠勝に向かって振り下ろした。 黒王を振り上げ、その杖を防ぐ。 忠勝の槍と、仮面の男達の杖がぶつかり合い、火花が飛び散った。 だが鍔迫り合いの最中、残った1人が呪文「ウィンド・ブレイク」を完成させてそれを放った。 杖を振り下ろしていた2人はすぐさま飛び退く。 「!?……」ウィィー!ギュルギュルギュル!! 至近距離で受けた忠勝の巨体は吹き飛び、岩の壁面に激突した。 土埃が巻き上がり、岩がボロボロと崩れ落ちていく。 仮面の3人は杖を降ろさず、警戒しながら近づいて行った。 と、土埃の中から忠勝が凄まじい速さで飛び出してきた。 突撃する騎馬兵のように黒王を構え、高速で突進して行く。 そのあまりのスピードに1人は反応が遅れて避ける事が出来なかった。 仮面の男に忠勝の槍が直撃し、消滅する。 残った2人が舌打ちすると、杖から竜巻を放った。 忠勝は再び「起動形態」に変形し、そのまま空中に飛び立った。 しかし、放たれた竜巻は蛇のように伸び、飛んでいる忠勝を追尾する。 忠勝は追いかけてくる竜巻を体を回転させて躱す。 だがそれでも駄目であった。一度避けたものの、再び方向を変えて向かってくるのだ。 「……!…!!」ガガ、コオォォォォ!! 忠勝は高速で飛んでくる竜巻を何度も飛行しながら左右、上下にと避け続ける。 ところが、次に見た光景に目を見開いた。 今まで2つだった竜巻が分裂し、一気に8つに増え、速度がさらに上がったのである。 負けじと忠勝もバーニアを噴射させて距離を取ろうとする。 しかし1つの竜巻が忠勝の背中に命中した。その衝撃で忠勝の動きが遅れる。 その隙に残り7つが一斉にぶち当たった。 竜巻はまるで蜘蛛の糸のように絡め取り、忠勝の体を覆い隠して上空で爆発した。 しばらくして風が晴れ、忠勝が落下していくのが仮面の男の目に入る。 忠勝を倒したと考えた2人は杖を下ろし、傭兵達が囲っている酒場に目を向ける。 だがあと少しで地面に激突するという時 忠勝の背中が光り輝いた。 自分達の背後から突如聞こえた爆音に、仮面の男は振り返った。 見ると、倒したと思った忠勝が「起動形態」となって迫ってきている。 いや、よく見ると肩には盾が装着されており、「防御形態」にもなっているではないか。 「…!?…」グオオオォォ!? 忠勝自身、自分の体の変化に戸惑っていた。 本来、体に負担をかけ過ぎないように形態変化は1つしか出来ない。 今の自分は2つの形態を同時に展開していた。 しかし、体に痛みがあったり、動きに問題は出ていない。 自分の背中が眩く光った事が関係しているのかと忠勝は考えた。 「…!……」ルオォォン!! だが忠勝はその疑問を考えるのを止め、自分の敵を睨みつけた。 今やるべきはあの2人を倒し、自分の主の元に駆けつける事だ。 仮面の男は突進してくる忠勝に向かって呪文を唱える。空気の鉄槌「エア・[[ハンマー]]」だ。 エア・ハンマーは命中した。が、防御形態の忠勝は気にも止めず、さらにスピードを上げる。 次に忠勝は中腰になり、肩の盾でタックルした。 「「ぐほぉっ!!」」 あまりの速さに避けきれず、2人の男は衝撃で空中に舞い上がった。 だが忠勝の攻撃はまだ終わらない。さらに背中から長い筒状の物が飛び出す。 そしてフライの呪文で態勢を立て直そうとした2人の眼前に向けられる。それは大砲の砲身であった。 「攻撃形態」 背中から大砲を取り出し、遠距離の敵に砲撃を行う攻撃に特化した形態である。 これで忠勝は3つの形態を同時に展開した事になった。 「!!!」ガシャン!!キュイイーッ!! 忠勝は吹き飛んだ仮面の男に対し、砲弾を発射した。 至近距離で発射された砲弾は外れることなく2人に直撃し、高熱の火炎と爆風によって四散した。 「……………」ドスン…プルルル 背中の光がどんどん弱くなり、消えていく。 すると、自分の意志とは関係なく通常形態に戻ってしまった。 敵を倒した忠勝は、酒場の方を見る。 何時の間にか巨大なゴーレムの姿は無くなっていた。 忠勝は槍を握り締め、主の元へと急行した。 #navi(異世界BASARA)