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  • Fatal fuly―Mark of the zero―-03の編集履歴ソース
「Fatal fuly―Mark of the zero―-03」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

Fatal fuly―Mark of the zero―-03 - (2008/12/02 (火) 01:01:11) のソース

#navi(Fatal fuly―Mark of the zero―)

 春風が吹く。
 所々に咲いた花が、森の香りとあいまって男の鼻を心地よくくすぐった。
 木々の間から注がれる木漏れ日は、起きたての、まだ眠気の残る体に活力を呼び起こし、一日の始まりを知らせてくれる。
 小さな木造の小屋の外、白いぴっちりとしたシャツにジーンズという、ハルケギニアでは珍しい格好をした男がゆっくりと、大きな背伸びをした。

「OK! 今日もいい一日が始まりそうだ!」


 男はテリーと名乗り、暫く前にふらりと小屋にやってきた――と子供たちは思っている。
 実際のところを言えば、この孤児院もどきの姉であり、母のような存在であるティファニアによって呼び出された使い魔なのだが。
 そんなテリーの一日は子供たちを起こすことで始まる。
 手違いで呼び出してしまったというテファに対し、もとより根無し草だと笑って、暫くここに滞在することに決めてからは
 孤児院の手伝いをしているのである。
 といっても、母のようなやさしさなど持ち合わせてはいない。
 182サント、81kgの大柄といえる男の方法は、まず子供たちの寝ている布団を全て剥ぎ取る事から始まるのだ。

「HEY! 朝だぜ、飯を食って今日も元気に一日をはじめるんだ!」
「テリー……まだ眠い……」

 既に慣れっこなのか、布団を剥ぎ取られても、しがみつきながら子供たちは抗議の声を上げる。
 子供というものは繊細だが、同様に順応性も高いものだ。
 この異邦人に対しても既に二週間を過ごせば家族同然にすごしてしまう。
 もっとも、それはこの子供たちが全員孤児であるという共通点と
 この男の持つ、気さくな、まるで動物のような雰囲気の賜物だろう。

「オーライ、じゃあこの春の贈り物は俺が独り占めしちまってもいいのかな?」

 そういってテリーは目をこする子供たちに向け、腰に下げた袋からおもむろにりんごを一つ取り出してかじりついた。
 シャクリと音が鳴り、果汁が飛び散り、ふんわりと甘い匂いが小屋の中に漂う。
 その音と匂いに、子供たちがぱちりと目を大きく開く。
 みればテリーは既にりんごを殆ど食べ終え、そろそろりんごが芯だけになってしまいそうだった。

「おっと、お目覚めのご様子だな。
 だが残念だ、もう一個ほど食べちまうぜ」

 そういって更に袋からりんごを取り出そうとしたとき

「かかれっ、これ以上奴の横暴を許すなーっ!」
「おおーっ!」
「ヘイ、Come on!」

 子供たちが飛び掛ってくるのをみて、テリーが小屋の外に飛び出した。
 既に外ではテファが朝食の準備を進めている。

「はいはい、起きたら顔を洗ってきてね」

     ※

 朝食を食べ終えれば、居候の身となっているテリーは薪割りに精を出す。
 ガスや水道といったインフラが整っていない小屋だから、全ては木々によって賄わなければならない。
 ただ、これが思いのほか重労働だったようで、薪割りではなく、枝を拾ってきて今までは燃料として使用していたようである。
 テリーがきてからはそのような心配事はまるっきりなくなった――というより、異常そのものであった。
 何せこの男、拳を地面に打ち付ければ不思議な力で木をなぎ倒し、集中すれば拳で木を真っ二つに砕いてしまうのである。
 また、子供たちが戯れに木片を上空へ投げれば、空中で一回転して踵落としを決め、木を岩に打ち付けて割ってしまう。
 そんな変わった曲芸まで見せるのである。
 この曲芸が見たいがために、重労働のために少し嫌がっていた子供たちもテリーの仕事を手伝うようになった。
 重い木も、数人で引っ張れば容易く引きずれるのである。

「Rock you!」

 倒れていた木を子供たちが引っ張り、それに対してテリーが拳を地面に打ちつけ、何かが丸太にぶつかる。
 すると不思議なことに、すさまじい衝撃を受けたように、木に裂け目が走っていくのである。
 パワーウェイブとテリーが呼ぶため、子供たちもそれを真似して木に拳を打ち付けたりして、怪我をする姿を最近よく見るようになった。
 その度にまずは飯を一杯食べて体を作らないとなと大きく笑うものだから、子供たちの好き嫌いが少しずつ治って来ているようだった。
 それに、どんな食べ物でも美味そうに食べる人物がいれば好奇心が少しでもある者なら食べたくなるのが人の性というものだ。

     ※

 ――よく食べ、よく学び、よく動き、よく眠る。
 これが子供の仕事だとはよくいわれるが、別にのんびりとした生活の中でなら、大人がそれを実践していたとしても不思議ではない。
 昼飯を食べ、しばらくの間はシエスタの時間である。
 といったところで、トリステインの魔法学院で働いているメイドのことではない。
 要するに午睡のことである。
 ハンモックを木々の間につるせば、春風と木漏れ日の布団をかぶった極上のベッドの出来上がりである。
 乗っかった時こそギシギシと音をたて、如何にも頼りなさそうだが、どっこい、ある程度までしなってしまえば、テリーの重量を完全に預けても尚、余裕を持つほどに木の強度はばっちりだった。
 すぐに寝られるのは野生児として大事な事の一つだ。
 そんな主張を持つテリーは、ハンモックにぶら下がって体勢が安定したのを確認した瞬間、小さなあくびをしたかと思えば、すんなりと寝息をたてはじめてしまった。
 ゆったりとした時間の中、まどろんでいると、不意に声をかけられた。
 それが獣の声や、単なる子供の騒ぎ声なら少しは気分を害されたかもしれないが、鈴のようなというありきたりな表現ですんなりと型にはまる美少女の声だとするなら、この男にとって気分を害するものではない。

「どうしたんだ、テファ」
「その……」

 テファの顔色はあまりいいとはいえない。
 悩み事なのだろうとテリーがハンモックから降り、話を聞いてみると、何でも先日仲間になったばかりの一人の子供が中々心を開いてくれないというのだ。


「私も、がんばってるんだけど、どうしても男の子だと……」
「……ふぅん、オーケイ。任せときな、テファ」

 テリーが大きな手でわしゃりとテファの頭を撫でる。
 それはテファにとって、失った父親のようでもあり――だが、この男の前で泣き顔はふさわしくないと、暖かくなる両目を必死に瞑って耐えた。
 その様子を見るテリーにとって、それは辛く、自身の子供時代を思い出し――

(……全く、ここには昔の俺とアンディ、そして……ロックが多すぎる)

     ※ 

 その男の子は、厳密には貴族の子供という訳ではなかった。
 貴族に取り立てられた騎士の子供、とでもいおうか。
 その貴族が謀反の兆しありとの事で取り潰しになり、自然、男の子も家も取り潰しになってしまったのである。
 昔は憧れを抱いていたのだろう父親もいなくなり、すさんだ顔をしながらここに引き取られた。
 通常の孤児院ではなじめないからである。
 貴族になりかけた子供は相応にプライドが高く、かといってひねくれていては子供と馴染もうとしない。
 ここでも男の子は一人きりであったし、皆と離れて川辺で一人水面を見つめていた。

「暗い顔だな」
「……ほっといてよ」

 その横にどっかりとすわるテリー。
 だが子供は話そうともせず、そのまま腰を上げてどこかへ行こうとした。
 テリーはそれを無理に引きとめようとせず、肩をすくめて見送る事にした。


 翌日もテリーは極力その男の子の近くへ行った。
 二日目は避けられようともついていくことにして、三日目は終始べったりとしてみる事にした。
 男の子にとってうざったい事この上ないが、テリーはことあるごとに皆との遊びに誘うのだ。
 五日目になってとうとう諦めたのか、男の子がテリーに対して、なんでここまでやるのかとたずねた。
 するとテリーは、

「……お前さんの顔が、いつか復讐でもやらかしそうだからさ」

 男の子はどきりとした。
 それは常々男の子が思っていた事だったからだ。
 ――そして、テリーがこの孤児院において、一番気にかけている、マチルダという女性に対する事でもあった。
 復讐を考える。その原因は多々あるだろう。
 だが、幼い頃から孤児として育ち、復讐に人生の大半を捧げた事のあるテリーにとって、過去を見るようなこの場での生活は
 思いのほか、辛いことも思い出してしまうのだ。

「悪いとは言わないさ。けど、きっと今は他に目を向けてもいい。
 他に目を向けてみて、それでも復讐しかないんなら――その時こそ、やるべきだ」

 俺は生憎と、他に目を向ける余裕をもてなかったけれどもな、と。
 テリーは少し悲しげに笑って男の子の頭を撫でた。

「それでも納得できないなら、そうだな。
 まず強くなってみることだ。
 皆と遊ぶのは手加減を覚えられるし、足腰も鍛えられる。
 一人で川をみてるだけじゃ、復讐だって成し遂げられないぜ」

 ――五日目の話は、それで終わった。

     ※

 少しして、テファから喜ぶべき報告が来た。
 暫くの間旅に出ていた、孤児院にとって姉とも呼ぶべきマチルダが帰ってくるというのだ。
 テリーが気にかけていた女性でもあるが、何よりまずは家族が帰ってくることを喜ぶべきだろう。
 明日にも帰ってくることの事なので、皆は手分けしてご馳走を作ることにした。
 といっても、街に買いに行くようなお金はないし、それではご馳走と呼べる気がしないというのが、この孤児院である。
 山菜や魚を皆で手分けして取ってきて、普段より豪華な食卓にしようというのが決定した。
 川なら比較的安全だろうが、山はやはり危険がつきものである。
 テリーは山側についていく事にし、例の男の子を誘った。
 渋々ではあるがついていく男の子に、他の子もようやく仲間が増えたと喜ぶ様子が見えた。
 しかし散り散りに走っていく子供についていくには、いかに鍛え上げられたテリーの肉体といえど厳しいものがある。

「おぉい。あまり走り回るなよ!」

 といったところで聞くような子供たちなら何も問題は無い。
 テリーが気にしていた男の子も、グループに入り込んで山菜を取っているようだからある程度安心はしていたのだが。
 見れば、グループに誘われるうちに、男の子の顔にも少し歪ながら微笑が見えるようだ。
 これなら安心だろう。
 女の子が家族している以上、あまり無茶な事もしないだろうと思い、テリーは石に腰掛けて少し休むことにした。
 煙草は嫌いだったし、この世界にはパイプくらいしか存在しないが、こういう時に一息つく奴らは本当に美味そうな顔をする。
 それが羨ましいと思わないでもないが、まぁ、自分には酒で十分に過ぎるだろう。ただし、最近は腹が気になっているせいでなかなかやらないが。
 しかし元の世界にいた弟は生真面目で、酒は嗜むが煙草は嗜まない。
 ライバルというべき元ムエタイチャンプは、昔はやっていたらしいが、体を壊しては元も子もないと、今はきっぱりやめている。
 幸か不幸か、テリーの周りには煙草を好んで吸う男たちがいなかったのだ。

(そういえば、一人だけ背中に禁煙マークをつけた奴もいたっけな)

 それでいて煙草を吸う腐れ縁の男が一人はいた。
 そんなことを考えていると、息を切らしながら山道を登ってくる少女の姿をテリーは見つけた。
 テファがお弁当を抱えてやってきたのだ。
 気がつけば太陽は頂点にあるし、腹時計はぐぅぐぅと空腹を主張している。
 テリーは笑いながら子供たちに呼びかけ、昼食だと伝えた。
 昼食は簡単なサンドウィッチで、手作りの味がひしひしと感じられる。
 川にいった子供たちには既に昼食を届け、小屋に戻って下ごしらえの準備をしているのだという。
 どうやら川辺チームは大漁に恵まれたようだとテリーが笑うと、負けるもんかと子供たちが奮起した。
 テリーがトマトとベーコンを挟んだサンドウィッチを平らげ、子供たちも腹一杯になった様子で寝転ぶと、テファが笑ってデザートを取ってくると腰をあげた。
 ついていこうかとテリーが言うと、秘密の場所なので、皆にも内緒だと口に手を当てて微笑んだ。
 そういわれちゃ仕方が無いと、テリーが見送る。
 弁当箱を片付けながら、子供たちが手にいれた収穫を見せ合う。
 テリーには山菜の名前はわからなかったし、それがどのような味で、どのような美味さなのかも知らない。
 だが、それらを見る子供たちの目は輝いていたし、想像で話す料理の事は、テリーの味覚を刺激するのに十分だった。

「オーケイ! 皆で豪勢なパーティーにしようじゃないか!」

 テリーがそう宣言して立ち上がった瞬間――森に悲鳴が響いた。

     ※

 真っ先に飛び出したのはテリーと、男の子だった。
 そこにいたのは、あまりのことで魔法を使うことも出来なかったのか、腰を抜かして失神するテファと、三メイルはありそうな巨大な熊の姿だった。
 秘密の場所だといったそこは、同時のクマの餌場でもあったのだ。
 気づけば、男の子が真っ先に足元の木の棒を手に取り、クマに立ち向かっていった。
 ――それは、恐らく、父親から受け継いだ騎士の血。
 だが、ここでは無謀でしかなかった。
 正面からではなく、跳ね除けるようなクマの裏拳を顔面に受け、男の子が吹き飛ばされる。
 しかし、それでも何とか立ち上がろうとする。
 クマはそれを有害と認めたのか、男の子をまず処理することに決めたようだ。
 ゆっくりと男の子を向き、口をあける。
 不味い、とテリーは直感した。
 このクマは、単なるクマではない。
 人の味を知っているクマだと理解する。
 単なる野生のクマならばそれでいい。追い返すだけで、人を襲おうとはしないだろう。
 だが、人の味を知っているのなら、これは最早悪魔と同様だ。
 テリーが駆ける。

「Burning!」

 その右拳に青白い光をまとい、クマへとその拳を突き出しながら突進する。
 両手を上げていたクマのわき腹に拳が突き刺さる。
 だがその程度でクマの分厚い皮と、筋肉、脂肪を貫ける訳がない。
 十分な衝撃を与え切れなかったと痛感するテリーに、クマの横なぎの一撃が襲い掛かる。
 慌てて体を滑らせるテリーだが、風圧を感じたときには、爪が目をかすっていた。
 不味い。
 テリーが慌てる。
 テリーはかつて、元の世界では全米の英雄とまで言われた男である。
 クマの一匹や二匹ならば他愛なく倒せる実力は持っているのだ。
 だが、下手に追い込めばクマは失神するテファや男の子を踏み潰していくだろう。
 下手に周りをぶち壊す技は使えず、その遠慮から右目の瞼を爪と風圧で切られてしまった。
 瞑りたくはないが、右目が開く気配は見えない。

「Rock You!」

 だがそれでも、と。
 テリーが拳を地面に打ち付ける。
 パワーウェイブ。
 気の波が大地を伝い、クマへと走る。
 未知の衝撃に体を振るわせるクマだが、その体力を持ってテリーへと突進をかけた。
 だが既にテリーは次の行動へと移っている。
 既に言葉を吐く余裕はない。
 歯を食いしばった裏拳、ひじ打ちからショルダータックルをクマの顔面へと叩き込む。
 人体であれば容易に吹き飛ぶ衝撃。
 しかし、クマに対しては鼻っ面に対してのひるませる一撃でしかない。
 決めるならば人体を破壊するような一撃でなければ、野生動物には通用しない。
 虎殺し、熊殺し。
 極めた武道家が進む道がそれであるというのは、彼らが人間を超越した存在であるからなのだ。
 だが、このクマを相手にするのに、そのような大技を放つ隙は早々見つけられるものではない。

「Crash!」

 だがそれでも、自らを奮起させるためにと再び言葉を吐き出し、肩からぶつかっていく。
 本来であれば、それはその後に膝蹴りにて相手の体を浮き上げさせ、更に拳で殴りつけ、地面へと叩き落すという大技。
 しかしクマの重量に対して、それは容易に成し得る事ではなかった。
 出来ないことはないだろう。
 だがそれは、万全の体勢での事だ。
 瞼から滴る血。それがタックルの目測を僅かに誤らせ、相手の体勢を崩すに至らない。
 このまま膝蹴りへと持ち込んだところで、浮き上がらせる程の事は無く、逆に跳ね返され、致命的な隙を見せるだけだろう。

「ぐぁっ!」

 だが、ひるむ。
 好機。
 逆に体を押し上げられなかったことが、反動を生み、テリーとクマとの間を少し離していた。
 ――今。
 テリーの直感がそう判断する。
 瞬間、テリーの体がまるで風に包まれたかのような錯覚を、もし見るのもがいたなら感じただろう。
 パワーゲイザー。
 そう呼ばれるテリーの切り札は、拳を力強く地面に叩きつけ、パワーウェイブとは比べ物にならぬほどの気の奔流を生み出す奥義である。
 クマの目が光る。
 テリーが一瞬、それを何かと考え――答えはすぐに知れた。
 蹴りとんだクマの体躯は、テリーの予想以上の速さで間合いを詰めてきたのだ。
 このままではパワーゲイザーの行動である、拳を大地に打ち付けるという動作が完遂できない。
 しくじった――痛感する。
 だが、

「テリィィィィ!」

 男の子の声が響く。
 クマに弾き飛ばされ、頭から血を流しながらも、手に木の棒を構えてクマに突進する。
 ああ、なんとも――テリーの口に笑みが浮かぶ。
 決死の騎士の木剣はクマの目に突き刺さる。
 奇しくもそれは先ほどテリーがクマに切られたのと同じ右目で、クマが予想外の衝撃に体を竦め――

「Are you OK?」

 テリーが語りかける。
 本来は別の技を放つときに相手に語りかける文句。
 だが、それでもここはこの言葉を送るのが相応しいだろう。

「Go Bang!!」

 テリーの拳が大地に打ち付けられ、ファイアーボールを何乗かにしたとも思える気の間欠泉が、クマの体を吹き飛ばしていく――

     ※

「ふぅっ……!」

 テリーが一息つき、座り込んで倒したクマの姿を見る。
 クマは既に絶命し、仰向けに倒れている。
 本来、テリーやロックが扱う気とは、受けを知らぬ無機物や人体などは、容易く破壊するほどのものなのである。
 まがりなりにもバーンナックルやパワーウェイブといった技をクマが受け切れたのは、テファや男の子がいたことへの遠慮や
 その肉体、そして、クマが大自然そのもの存在であるということだろうか。
 可哀想だが、人の味を知ったクマは何時人里に下りて襲い掛かってくるかわからない。
 せめてもの供養だと、テリーは今日の晩餐の食材とすることに決めた。
 ふと隣を見ると、男の子が体を小さく震わせている。
 テリーは小さく笑い、その頭に手を置いた。

「ナイスファイト。小さな騎士様。
 助かったぜ」

 わしゃわしゃと、その頭を撫でる。
 男の子は黙って何も答えないが、その顔が赤く染まっているのが見て取れた。
 もうこの子は大丈夫だろう。きっと己が拙い言葉を尽くす必要は無いはずだ。強く育っていくに違いない。
 もぞりと動いて、ようやくテファが目を覚ました様子で、頭を抑えている。
 大丈夫かとテリーがテファに語りかけ、顛末を語って聞かせると、少しだけ悲しげな顔をした。
 何事でも、動物の命を奪ったことが辛いのだろう。
 それも仕方ないことか、と、テリーが頭をかいた。
 だが、不意に後ろを向き、厳しい顔をする。がさりと物音がしたのだ。
 テファと男の子の体が固まるのを見て、ファイティングポーズを取る。しかし、そこから現れたのは小さな小さな子供のクマだった。
 すんすんと鼻を鳴らし、絶命したクマに体をすりつけてある。
 ――テリーとテファが事情を理解した。
 そして、悲しげな表情でテリーが拳を握る。
 親を失った小熊は生きていくことが出来ない。
 人であれば寄り添って生きていけるそれも、野生ではどうしようもないのだ。
 だが、それをそっと制止する手があった。
 テファである。

「おい、テファ。いったい何を……」

 テファはそれに答えず、ゆっくりと小熊に歩み寄り、何事かつぶやいた。
 暫く小熊は呆けたようになったが、更にテファが何事かを呟くと、今度はテファに体を摺り寄せてきたのだ。
 そして、テリーのほうをみてにこりと微笑むと

「……人だって、寄り添って暮らしていけるんですもの。
 クマだって、やさしくなれないはずはないですよ」

 ああ、と。
 テリーは気が抜かれたようになった。
 なるほど、これは力強い。
 この子は、自分にも、そして〝あの街〟に居た狼たちが持っていないものを持っている。
 テリーが小熊の頭を撫でる。
 グローブに隠され、よくはわからなかったが、柔らかく右手が輝き、小熊がその手を舐め、テリーの頬を舐めた。

「おいおい、随分人懐っこいクマだな!
 ……オーケイ。ならさっさと小屋に戻ろうぜ。
 マチルダの帰還祝いと、騎士様の就任祝い、それに、新しい家族の歓迎会と、忙しくなるからな!」

 テリーは小屋に向かって歩き出す。

(親を殺し、その子をまた育てる。皮肉なもんだ。
 どうやら俺は、とことんまっとうな子供を持つ事が出来ないらしい。
 ロック。お前は、今何をしている?
 ……案外、お前に必要だったのは、この小屋だったのかもな)

 その思いは、しかし遠くトリステインの空の下には、暫くの間――届くことがなかった。

「ふぅぅぅぅ……はぁぁぁ……」

 朝もやに包まれた魔法学院の中庭に、ロックの深い呼吸音が響く。
 新鮮な空気を胸いっぱいに取り込み、気を充実させる。じわりと熱を帯び始めた身体から淡い光が立ち昇り、ロックの周囲のもやが晴れていく。
 瞑っていた目を見開いた瞬間、彼の拳が唸りを上げた。風を切リ裂いたその勢いのままに、続けざまの裏拳、抉り込む様なフック、ローキック、膝、後ろ回し蹴り、アッパー、突き上げる肘。
 流麗なコンビネーションアーツだが、ただそれだけであればどうという程の物ではない。恐るべきは単純にその速度にある。もしこれが人相手に放たれたモノだったら。
 対峙した相手は、自分が何をされたかも分からぬ間に、その意識を断絶させてしまうだろう。
 感覚すら追い付かせぬ超高速の連撃。しかし、ここから更に――

「――――ッ!」

 突き出しかけた両手を、ロックは慌てて引き戻した。その先に灯っているのは、連撃の間に練り込まれた圧倒的なまでの気の塊。
 本来ならばこれを打ち込み、ようやく一つの技が完成する。

 ――――デッドリーレイブ。

 自分でも知らぬ内に習得した技の一つだ。
 そして、それは最大の奥義でもあった。
 
「はぁっ……はぁっ……」

 シャドウではあるが、出し切ってしまうのは躊躇われた。
 自らに受け継がれた忌むべき血の力に拠る技である。そして、使用後の反動は殊更に大きい。早朝のトレーニングの締めにと試しては見たものの、安定などする筈も無かった。
 やり場を無くした気が暴れ狂うのを堪え、ロックはその手を大きく振るい上げる。
 宙に放たれ、気はロックの背中に大きな羽根を作り上げた。

「どこまでも、足掻いてやる」

 血の疼きと共に、左手がやけに熱く感じられていた。

 ルイズと城下町へと出かけた翌日。
 それを期に、ロックの起床時間は常のそれよりも早いものとなっていた。
 先の行動からも分かるとおり、腑抜けていた自分を戒める為、トレーニングの時間を増やす必要性を感じたからだ。
 考えても見れば、カインとの一戦以来、まともなトレーニングをしていなかった気がする。
 ロックは先日の恩人からの一言を思い返していた。

『狼はくつろいでても牙を研ぐのは忘れちゃダメね』

 自分を狼と形容した人間は初めてではない。
 しかし、このハルケギニアで、まして初見の人間に言われたのだ。何かしら、因果というものを考えるのは無理からぬ話だった。
 じっと掌を見つめる。
 拳を握り込めば、はめられたお気に入りのドライバーグローブがぎちぎちと音を立てた。

「ふぁ……何やってんのロック?」
「ああ、ルイズ。おはよう」

 藁葺きのベッドに腰掛けていたロックに声をかけたのは、今彼がいる部屋の主であるルイズだった。
 起き抜けな為か間の伸びた声で言うと、ルイズは大きく欠伸をしてその目を擦った。
 むにゃむにゃと口を動かし、おぼつかない足取りで立ち上がりベッドから降りたルイズを、ロックが慌てて支える。

「おいおい、そんなふらふらしてたらこけちまうぜ」
「んー、そんなどじじゃないわよ……」

 格好が格好だけに、ロックの視線はルイズを捉えてはいない。
 多少の慣れがあるとはいえ、寝起きの女性を扱うのには細心の注意がロックには必要だった。
 その事を悟っているルイズは、突き飛ばすようにしてロックから身体を離すと、普段どおりの不機嫌そうな声でこう漏らした。

「着替える」

 その言葉の意味する所はもうここでの生活で学んでいる。
 ロックは早足で部屋の戸まで向かう。この後、着替えたルイズを伴って食堂に向かうのが常だ。
 さて、今日の献立はどうしようか、と考えながら部屋の外へと出るロックへ、ルイズの声が被せられた。

「ベーコンエッグサンド。スープとサラダは何時も通り。ああ、卵はサニーサイドアップがいいわね」

 欠伸を噛み殺して言うルイズに、扉を閉める間際にロックはこう返した。

「オーケー。とびっきり美味いのを作ってやるよ」

     ※

 朝食の際、使い魔が堂々と主人と席を共にするという姿に、つい先日まではあからさまな侮蔑の視線を浴びせかけられていたルイズだったが、今ではその視線の色が変化を帯びていた。
 使い魔がギトーを倒したという事実が、畏怖を呼んでいるのだ。
 その上、周囲とは違う朝食メニューを口にするルイズとロックの二人はアルヴィーズの食堂の中、特別に浮いた存在となっている。

「ちょっとロック、あんたのサンド、わたしのよりベーコン二枚多くない?」
「食う量の差って奴考えろよ。それに作ったのは俺だろ」
「むぅー。何か納得がいかないわ」

 ロックお手製のサンドウィッチを頬張りながら、ルイズが言う。
 ほっぺたがパンパンなのは、果たしてサンドで口いっぱいになっているのか、空気で膨らませているのか、判断はつかない。
 ロックはそれに対してへへっと笑い、大口を開けてサンドにかぶりついた。口の中でレタスが弾け、トマトの旨みとベーコンの肉汁が渾然一体となって広がる。特製のドレッシングはいつもと配合を変えてみたのだが、大正解だったようだ。

「…………」

 ふと、ルイズの恨めしそうな視線が刺さっているのに気付いたロックは、座っている椅子を数サント程下げてたじろいだ。

「その食べ方。卑しいわね。そう、昨日は狼だなんて言われてたけど……犬ね。ご主人様を敬わない、卑しい犬よ」
「なっ、ちょっとベーコン少なかったくらいでそこまで言うかよ!」

 たまにこういうちょっとした事から、いさかいが始まるのは、ある意味で仲が近づいた証拠なのだろう。
 しかし、貴族が食事中にする様な行いでないのは確実であり、周りからの視線が三白眼に変わる。最も、見るだけであからさまな行動に出る者がいるはずもなかった。

「うるさい! 食い意地の張った馬鹿犬!」
「犬の上に馬鹿だって? 第一使い魔ってのは名目上って事に落ち着いてるだろ!」
「意識くらいはしなさいよね!」
「人を犬呼ばわりする奴にってか? 冗談キツイぜ」
「そう、じゃあ、屋根のない部屋で寝るのがお好み?」
「生憎野宿には慣れててね」
「むぅー……」

 今度は確実に、パンパンに張った頬に詰まっているのは空気だろう。顔も真っ赤だ。
 そのルイズの様子を見て、犬と呼ばれた溜飲を少し下げたロックは、再びサンドを口にしようとした時、不意に今まで感じた事の無い感触を腕に覚えた。

「そのくらいにしたらどう? お・ふ・た・り・さ・ん」

 甘い声がロックの耳に響いた。

 意識はしないようにしていたのだ。そう、何故かと言われれば答えは一つだ。
 目のやり場に困る。
 ロックは錆びた機械の様に、ぎぎぎと首を回すと、そこには豊満な胸に挟まれた己の腕が。

「ダーリンったら、つれないんだもん。折角隣に座ってるのに、ちっともこっち向いてくれないし」
「な、なな、何やってんのよツェルプストー……」
「何って、ちょっとしたスキンシップじゃない」
「それにだ、だだ、ダーリン?」

 かちこちに固まったロックの腕を取っているのは、ルイズの仇敵とも呼べる相手である、キュルケ・ツェルプストーその人だった。
 彼女はロックが召喚されてからと言うもの、過剰なスキンシップをロックに求めてきていた。まぁ、実質はからかってるというのが正しい様な、今まではそんな程度の物だったが……。
 ただし、どう言った訳か今日に至ってはどこか様子が違う。

「そう、あの時の背中……あたしの中に生まれた恋の熱に気付いてしまったのよ」
「……同じ事言って、どれだけ男をとっかえひっかえしてきたのって話だわ……」
「この恋は本物よぉ」
「それも同じ」

 憮然とした態度で話すルイズとは違い、キュルケはとろんとした眼つきでロックの腕を取りながら、その顔を擦り付けたりなどしている。当然、ルイズにとって面白くない光景だ。
 当のロックはというと、先ほどのルイズ以上に顔を真っ赤にして、どうしていいのか分からないといった風情で、ルイズは頭を抱えるしかなかった。
 折角のサンドウィッチも、ふつふつと湧き上がる怒りのせいか砂を噛んだような味だ。

「コラ! ロック! でれでれしない!」

 ようやく放たれたルイズの叱責に、ロックは丸まっていた背をびしっと伸ばした。

「きゃっ」
「あっ」

 唐突な行動に声を上げたキュルケに、勢い付いていたロックの動きが再び滞りを見せる。
 加速度的に上昇しているのはルイズの苛立ちばかりだった。
 先ほどのロック以上の大口を無理やり開けて、サンドにかぶりつく。怒りが何周かすると、何故か味がやけに鮮明に感じられた。

(美味しい……むかつく……)

 そんなルイズを尻目に、おずおずと腕をキュルケの胸の谷間から引き抜くと、ロックはそれを空いていた手で支えながら、俯き加減に真っ赤な顔で呟いた。

「そ、その、俺そういうのよくわかんねぇし……っていうか、悪いけどその服装で近づくのやめてくんないかな……」

 ルイズの言葉ではないが、ある意味で今のロックは犬であった。
 正確に例えるならば、子犬と言った所か。
 これは今のキュルケにとってはむしろ逆効果というものだった。

「可愛いっ」
「へっ、あっ、だからやめてくれって! ルイズー! 助けてくれよー!」
「~~~~~ッ! 知らないッ!」

 飛び掛る様にして抱きついてきたキュルケに半ばパニック状態に陥ったロックを見て、ルイズは朝食を凄まじい勢いで掻き込んで言う。目にするのも我慢ならないといった面持ちか。
 最後にスープの入った皿をコップの如く傾けて、ぶはぁっと一息。
 乱暴に口元を拭ったルイズは、人差し指をロックに突きつけた。

「朝食終わり! さっさと授業の準備にかかるわよ!」

 そして、相手の反応を待たずに大股でずかずかと食堂から出て行くルイズ。
 もうすでにしっちゃかめっちゃかという言葉しか浮かばないロックは、頭を抱えたくなったが、がっちりキュルケに腕を固められているのに気付き、蚊の鳴くような声で言うのだった。

「……テリーの言った通り、ハイスクールくらいには通ってたほうが良かったかな」

 一旦損ねられたルイズの機嫌が簡単に治らない事は知っている。
 それならばと、ロックは考えた。
 腹が満たされれば人間考え方も柔らかくなる。それが美味であれば尚更だ。
 絶対の自信を持って出せるメニューを思い巡らせて、一つの結論に至った。

(自分の一番好きな物を作るべきだよな……)

 ふむ、と頷いてからロックは言う。

「ところで……そろそろ離れてくんないかな」
「だぁめ」
「…………」

     ※

「厨房貸してもらいたいんだけど」

 いつもの決まり文句を言いながらロックが現れたのは、普段よりも一時間は早い時刻の事であった。
 ディナーの用意の為、厨房ではコックが忙しなく調理にとりかかっている中、現場の指揮を行っていたマルトーがその姿を認め、不思議そうに首を傾げた。
 今までに見たロックの料理は、手間暇をあまりかけない簡単な物が多い。故に、こんな時間に現れるというのはマルトーにとっては予想外である。

「空いてる場所なら好きに使ってかまわないぜ」
「サンキュー」

 これもまた恒例のやり取りなのだが、マルトーの視線はジャケットの袖をまくって料理の準備をしようとしているロックへと、鋭く向けられた。
 ハルケギニアではあまり見ない類の物を作るロックへの興味は尽きない。一料理人として、未知の味への探究心をくすぐられるのだ。

「今日は何を作るんだい? ちょいと時間がかかる代物ってか?」

 そう尋ねたマルトーに、ロックは食材の籠を漁りながら答える。

「久しぶりにジャンバラヤが食いたくなってさ。まぁ、うちのお姫さんのご機嫌取りもあるけどな」
「お前も苦労してんだなぁ……って、ジャンバラヤ?」
「ああ、名前だけじゃどんなのか分からないか……」

 元いた世界でも、ジャンバラヤと言うだけではどの様な料理かピンと来ないと言われる事がままあった。ましてやここでは。

「今日のまかないは決まってんのか?」
「いや、まだだな」
「それじゃ、ついでだから俺がやるよ」
「そのジャンバラヤってのを食わせてくれるってのかい」
「ああ。多少量を増やした方が、やりやすいしな」
「そいつは楽しみだ」

 にやりと笑ってマルトーが言う。しかし、その目は笑っていない。
 レシピを増やすチャンスだ。味を盗ませてもらおうか、と腹の内で呟いて、調理にとりかかったロックを注視する。

「~~♪」

 耳慣れぬリズムで鼻歌を歌いながら調理するロックの手際には淀みが無い。
 毎度の事ながら思うが、使い魔なんぞよりも料理人としてここで働いて欲しいなどとマルトーは考えてしまう。
 簡単な作業をこなす様を見るだけでも、一流であるマルトーにはロックがプロに引けをとらぬ腕前であると理解できるのだ。
 具材を炒め、味を付け、煮る。調理の基本の工程だが、出来上がる料理は自分の知らぬ物だろう。
 じっくりとそれを鑑賞したくはあったのだが、実際の所ディナーの準備が忙しい為一部始終を眺める事はできなかった。
 生徒達への食事の準備が完了し、配膳に向かったメイド達が帰ってきたのと、ロックの料理が完成したのはほぼ同時であった。
 
「今日はロックさんの料理なんですね」

 目を輝かせて言ったのは、学院付きメイドのシエスタだ。ハルケギニアでは物珍しい料理を作るロックのまかないを楽しみにしている、数多い厨房の面子の一人である。

「これ、俺の好物なんでさ。ちょっと張り切っちまった」

 照れ笑いを浮かべながら、面々に料理の盛られた皿を配っていくロック。
 炒め、煮込まれた米、野菜、肉の香りが如何にも食欲をそそる一品だ。
 真っ先にそれを口にしたマルトーが、むぅ、と唸り声を上げた。

「……あなどれねぇ」

 そんな呟きを誰が聞きとがめる事もなく、厨房の皆はロックのジャンバラヤに舌鼓を打ちながら好評をする。
 むむむ、とマルトーは更に唸り声を大きくした。

「やっぱりこいつは、料理人になるべきだぜ……」

 密やかに笑うマルトーの視線を背に受け、ロックはびくっとその身を震わせた。

「…………? な、何か寒気が……」
「どうかなさったんですか? ロックさん」
「ああ、いや、別になんてこたぁねぇよ」
「そう、ですか。あ、これすごく美味しいですよ!」
「ありがとな。俺はルイズのところで一緒に食って来るよ、じゃあな」
「ふ、ふふふふふ」

 ロックとシエスタのやり取りを眺めながら、スプーンを動かしつつ、マルトーは静かに笑うのであった。

     ※

「はふー」

 満足気な息を吐いてベッドに倒れこみ、ルイズは少しばかり膨らんだ腹を擦った。
 ロックの料理が美味しいのは分かっていたが、今日のジャンバラヤとやらは格別のものだった。
 お代わりを要求した時のロックの笑顔を受けて、何故かその日感じていたイライラが晴れた気がするのは、彼がきっと特別な物を作り、自らに謝罪の意思を示したのだとルイズは思っておく事にしている。
 藁葺きのベッドに腰を下ろしたロックは、今日一日の疲れを自ら肩をほぐす事で癒していた。

「疲れるなぁ」

 何気ない呟き。
 そんな一声を聞いて、ルイズはふと気になっていたことを口にしようと思った。

「そう言えば、ロックって本当は何をしてた人なの?」

 ベッドから上半身を起こして言うルイズに、ロックは小首を傾げた。
 何をしていたか、と問われると明確な返答に詰まる自分がいた。その事に思わず苦笑いが漏れ、ロックの脳裏には今まで過ごしてきた毎日が浮かぶ。
 自分の目標を考えていくと、答えは一つに絞られた。

「格闘家、かな?」
「何それ」
「あー、やっぱ馴染みはないか」

 指先で額をこりこりと掻きながらロックが続ける。

「この拳一本で世の中を生きていくって事さ。ま、駆け出しのルーキー、なんて言われちまってるけどな」

 ロックの言葉を受け、ルイズはギトーや先日の暴漢達との戦いを思い出していた。

「……野蛮ね」
「そいつは重々承知さ、でも、戦っている瞬間が、一番自分が自分らしく身近に感じるんだよ」

 照れ笑いを浮かべながら話すロックに、複雑な感情が浮かぶのをルイズは抑え切れなかった。
 歳の頃が似ているだけに、こういう風に考えるロックの背中が遠く見えたりもする。
 使い魔という一番身近な存在としているだけに、それが寂しいような、

「俺は、本当はこんな力が欲しくなかったって、そんな風に思う時があったんだ」

 思わぬ言葉にえっ、と、ルイズが声を上げる。

「まだガキの頃の話さ。俺の力は、血は、受け継ぎたくて受け継いだ物じゃなかった。馬鹿だよな。そんな事、自分で選べるもんじゃねぇってのに」
「…………」
「ある日、飯を食ってる最中に言われたんだ。テリーっていう、俺の父親代わりの奴なんだけど」

 そこまで言うと、ロックは部屋のランタンの炎に目を向けながら、そこから過去を眺めた。
 ホットドッグを二人、原っぱで食べた、あの日を。

『それ、美味いか? ロック』
『え? いきなりどうしたのさ、テリー』
『いや、悩んでるように見えたから、な』
『よくわかんないよ』
『飯が美味いって事はさ、それだけで生きてるって事なんだ』
『難しい話?』
『そうじゃない。ただ、あるがままを受け入れる事、そして、そこから何かを引き出す事』
『……』
『お前の力は決して悪い物なんかじゃない。もう少し広く物を見ろよ。自分で自分を抑え付けてりゃ、楽しくなんてないぜ?』
『んー、テリー、回りくどい言い方して、俺を困らせてないか?』
『はっはっは! お前は歳の割に頭が回るから、こっちこそ困るぜ』
『はは、あはははは!』
『おっと、そっちのフライドポテトを食わないなら、俺がもらっちまうぞー』
『やめなよテリー。子供から飯取るなんて、意地汚いぜ。狼じゃなくて、野良犬じゃん』
『こいつは一本取られたな!』

 そんな、ありふれた日常をルイズに話す。
 そしてロックは更に続けた。

「俺は、ルイズが自分に無い物の為に頑張ってるのを、短い間だけど見てる。その姿が、どうしても自分と重なっててさ。今になって、テ

リーの言葉が理解できた気がするんだ」
「ロック……」

 ルイズの心に形容しがたい物が浮かび始めていた。こんな風な話を誰かとしたのは、姉であるカトレアとくらいだろうか。
 自分を認めてもらう事、それがルイズにとってのまず第一の目標である。

「誰かと違ってもいい。もっと自分を受け入れたい。そう、思うよ。まだ、難しいけどな」

 春のトリステイン。
 柔らかい双月が、二人の姿を静かに照らしていた。

#navi(Fatal fuly―Mark of the zero―)
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