STEALTH & Aegis :2-3 ストレンジャーズ(3)
馬で3時間の道のりをほんの数分で辿り着いた後、エディは城下町郊外の森林にて1人サイトとルイズの買い物が終わるのを待つ事となった。
外見はともかく、ぱっと見鳥でもドラゴンでもない何かが羽ばたく事も無く城下町の上空を旋回していれば目立つ。かなり目立つ。
最新型大出力スクラムエンジンの発するエンジン音の大きさも半端無い。
何せ垂直に離陸する際にギリギリの最低出力で行っても、ルイズの爆発魔法並みに学院の敷地全体に響き渡る程だ。
外見はともかく、ぱっと見鳥でもドラゴンでもない何かが羽ばたく事も無く城下町の上空を旋回していれば目立つ。かなり目立つ。
最新型大出力スクラムエンジンの発するエンジン音の大きさも半端無い。
何せ垂直に離陸する際にギリギリの最低出力で行っても、ルイズの爆発魔法並みに学院の敷地全体に響き渡る程だ。
そんな感じで上空を旋回していれば十中八九、城の方からマンティコア隊など国の中枢の警護を任されている軍隊がスクランブル発進する事間違い無し。
なのでエディはポツンと1機、人気のあまり無い森の中の空き地で何時とも知れない少年少女の帰りを待っている。
なのでエディはポツンと1機、人気のあまり無い森の中の空き地で何時とも知れない少年少女の帰りを待っている。
…データの統合の結果、この場合の女性の買い物は長時間かかる事間違いなしと結論。
ここ最近、超高性能な人工知能としての能力を少し無駄な方向に向けている気がしないでもない。
そんなこんなでエディが置いて行かれてから30分ほど経った頃、センサーが学院の方から飛来してくる物体の存在を探知。
照合してみると、何度か見かけた事のある生徒の使い魔の1匹らしい竜が1匹。そしてその背中に女生徒が2人。
照合してみると、何度か見かけた事のある生徒の使い魔の1匹らしい竜が1匹。そしてその背中に女生徒が2人。
光学映像の解析の結果、女生徒2人はマントの色と声紋からルイズの同級生だという結果が出た。
炎のような赤毛を持つ、プレイメイトみたいな扇情的なスタイルな褐色の少女と、彼女とは全てが正反対の特徴を持った青髪の眼鏡をかけた少女。
炎のような赤毛を持つ、プレイメイトみたいな扇情的なスタイルな褐色の少女と、彼女とは全てが正反対の特徴を持った青髪の眼鏡をかけた少女。
少女と竜は、エディの居る空き地へと降り立った。
「コレ、ルイズとダーリンが乗ってたもう1つの使い魔よね?」
褐色の少女がエディを見てそう漏らす。
青髪の少女は黙って頷いて肯定。2mを超える長い杖で小道を指差すと、サイトの履いたスニーカーの特徴的な足跡が残っていた。
青髪の少女は黙って頷いて肯定。2mを超える長い杖で小道を指差すと、サイトの履いたスニーカーの特徴的な足跡が残っていた。
「ここから歩いて、城下町に」
「みたいね。でも城下町って結構広いし、今日は虚無の曜日だから人も多いみたいじゃない?
あーもう、ダーリン達がどの店に行ったのかさえ分かればまだ探しようがあるのに!こうなったらまたシルフィードに乗って空から探そうかしら」
「みたいね。でも城下町って結構広いし、今日は虚無の曜日だから人も多いみたいじゃない?
あーもう、ダーリン達がどの店に行ったのかさえ分かればまだ探しようがあるのに!こうなったらまたシルフィードに乗って空から探そうかしら」
『ダーリン』とは、ニュアンスからしておそらくサイトの事だろう。
「サイトとミス・ルイズに何か御用でしょうか?」
外部スピーカーをオンにしてエディは聞いてみた。
褐色の少女が驚いてエディの方を振り向いて、青色の少女も表情は変わらなかったものの、一瞬だけびくりと震える。
褐色の少女が驚いてエディの方を振り向いて、青色の少女も表情は変わらなかったものの、一瞬だけびくりと震える。
―――瞬間的な脈拍の乱れと血圧の変化を感知。
エディにいきなり話しかけたので驚かせてしまったようだ。彼女達はエディが喋る場面を見た事が無かったらしい。
特に青髪の少女。無表情のままでも指が真っ白になるまで杖を握り締めている点から、驚かされるのは苦手なのだろうか?
特に青髪の少女。無表情のままでも指が真っ白になるまで杖を握り締めている点から、驚かされるのは苦手なのだろうか?
エディには生物学的な『口』が存在していない為、どこからともなく声が聞こえてくる様に感じるのも原因の1つだが。
「すいません、驚かせてしまったようですね。
私の名はエディ。あなた方のおっしゃるダーリンことサイトと同じく、現在の所属はミス・ルイズの使い魔という位置づけのUCAVです」
「……驚いたわね。もしかしてこれって韻竜かしら?」
「違う――――むしろ、ガーゴイルに近いと思う」
私の名はエディ。あなた方のおっしゃるダーリンことサイトと同じく、現在の所属はミス・ルイズの使い魔という位置づけのUCAVです」
「……驚いたわね。もしかしてこれって韻竜かしら?」
「違う――――むしろ、ガーゴイルに近いと思う」
ガーゴイル。
エディやサイトの居た世界ではガーゴイルは主に翼を持ったグロテスクな怪物の石像などを指すのだが、少女の口ぶりからはこの世界ではまだ別種の存在のように聞こえた。
ルイズ達が戻ってきたら聞いてみよう。そう記憶領域の片隅に記録しておく。
エディやサイトの居た世界ではガーゴイルは主に翼を持ったグロテスクな怪物の石像などを指すのだが、少女の口ぶりからはこの世界ではまだ別種の存在のように聞こえた。
ルイズ達が戻ってきたら聞いてみよう。そう記憶領域の片隅に記録しておく。
「ホント変わったのばっかり召喚してくれるわね、あの子ってば。
それで、エディって言ったかしら?ダーリン達がどの店に行ったのか知ってるなら教えて欲しいんだけど」
「ピエモンの秘薬屋の近くの武器屋にむかうと言ってましたよ。その後の予定は言ってはいませんでしたけど」
それで、エディって言ったかしら?ダーリン達がどの店に行ったのか知ってるなら教えて欲しいんだけど」
「ピエモンの秘薬屋の近くの武器屋にむかうと言ってましたよ。その後の予定は言ってはいませんでしたけど」
そう聞くやいなや、褐色の少女は乗ってきた竜に飛び乗った。
「タバサ、行きましょう!早くダーリン達に追いつかなきゃ!」
『タバサ』―――状況からして青髪の少女の名と判断。人物データを更新、保存。
そのタバサと呼ばれた少女はさっきから興味深げにエディをじっと見つめていた。だが友人の少女に再度急かされると、どこか残念そうに最初よりも約5mm肩を落として渋々竜の背に乗る。
そのまま飛び去ってからも、姿が捉えきれなくなるまで青髪の少女はじっとこちらの方を見つめ続けていたのを、エディはしっかりとセンサーに捉えていた。
ついでに2人が乗っていた竜も、どういう訳かしきりにこっちの方にキョロキョロ首をめぐらせていた理由は分からなかったが。
そのタバサと呼ばれた少女はさっきから興味深げにエディをじっと見つめていた。だが友人の少女に再度急かされると、どこか残念そうに最初よりも約5mm肩を落として渋々竜の背に乗る。
そのまま飛び去ってからも、姿が捉えきれなくなるまで青髪の少女はじっとこちらの方を見つめ続けていたのを、エディはしっかりとセンサーに捉えていた。
ついでに2人が乗っていた竜も、どういう訳かしきりにこっちの方にキョロキョロ首をめぐらせていた理由は分からなかったが。
―――これが、サイトの出身地の言い回しで言う『後ろ髪を引かれる』の事ですか。
また1つ、エディは学習した。
ちょっとどうでもいい方向へ。
「しっかしおでれーたね。まさか俺みたいに喋る奴でこんな速く飛ぶ奴がいるたーね」
「私としてはむしろ、あなたの様にそのような状態で知能を有するものが存在している方が驚きです」
「私としてはむしろ、あなたの様にそのような状態で知能を有するものが存在している方が驚きです」
帰りの機内の中、響くのは男性の声が2つ。
しかし機内に収まっている人影はサイトとルイズだけ。他に人の姿も無ければ、もう1人は入れるようなスペースも無し。
しかし機内に収まっている人影はサイトとルイズだけ。他に人の姿も無ければ、もう1人は入れるようなスペースも無し。
―――そう、『人』は居ない。
声の主は、座席のすぐ横の隙間に突っ込まれた1振りの剣からである。
剣の名はデルフリンガー。
ルイズの説明によれば、魔法によって命を吹き込まれた意思を持つ剣である『インテリジェンスソード』との事。
この世界には他にも無機物でありながら魔法によって意思を持つインテリジェンスアイテムが存在すると聞いた。
ルイズの説明によれば、魔法によって命を吹き込まれた意思を持つ剣である『インテリジェンスソード』との事。
この世界には他にも無機物でありながら魔法によって意思を持つインテリジェンスアイテムが存在すると聞いた。
興味深い。とても興味深い。
膨大な金や時間をかけて天文学的に複雑な理論と科学技術を駆使して創られた人工知能であるエディ。
元々は単なる剣でありながら『魔法』というエディの人工知能でも正確に解析できない概念を駆使して創られたデルフリンガー。
まさしく、対極の存在だ。
デルフリンガーを解析してみても、出てくるのは『unknown』の結果だけ…剣そのものがブラックボックスの塊である。
詳細な情報をルイズに要求してみたが、生憎返ってきた内容は的を得ないものばかり。
インテリジェンスアイテムの存在というものは結構広く知られているが、どんな風に生み出されるのかは詳しくは伝わってないとの事。
詳細な情報をルイズに要求してみたが、生憎返ってきた内容は的を得ないものばかり。
インテリジェンスアイテムの存在というものは結構広く知られているが、どんな風に生み出されるのかは詳しくは伝わってないとの事。
学院へと戻ったらコルベールに聞いてみよう。最近は夜もしょっちゅうエディの元へとやって来るので丁度良い。
………結局、その日はコルベールがエディの元を訪れる事は無かった。
否、訪れる事ができなかった。
―――――その日、魔法学院は襲撃を受けた。