38話 ART OF LIFE
ジョン・ブラナー、
重本あいこ、
西見由妃の三人は放送後、町の方に向かって移動していた。
夜中からずっと、三人は民家で乱交に乱交を重ねていたが、
放送で死者が27人も出ている事を知り流石にそろそろ殺し合いを潰すための何らかの行動をした方が良いと考え、
取り敢えず人が多そうな町の方へ行き、首輪をどうにか出来そうな人を捜す事となった。
「……とは言ったもののそんな人いるのかどうか」
不安気な面持ちで言う由妃。
「いると信じなきゃ仕方無いよ由妃君。と言ってもこれも精神論なんだが」
「ま、まあ、まだ37人いる訳ですし……あ、私達抜くと34人か。
それに現在進行形で減っているかも……」
ジョンとあいこがそれぞれ自分の考えを言うがどれも由妃の安心材料にはならなかった。
「はあ、取り敢えず町に行けば何とかなるかな……?」
自分も希望的観測しかしていないな、と、由妃は思いながら、
ジョンとあいこと共に町を目指す。
三人はそれぞれ武装をしている。
由妃は自分の支給品である突撃銃ステアーAUG。
ジョンはトンファーバトン、あいこは長軸ドライバーを所持している。
武器としては由妃の物が一番優れていた、が、由妃はステアーAUGを使いこなせるかどうか微妙な所だと思っていた。
何しろ銃を撃った経験なんて無いのだから。
「ん……誰かいるぞ」
ジョンが前方に人を発見する。
それは間も無くあいこと由妃も確認する事となる。
どうやら人間の青年のようだった。手には散弾銃らしき物を持っている。
「どうします? まだ私達には気付いていないみたいですけど……話しかけてみますか?」
あいこが小声でジョンと由妃にどうするか訊く。
相手が殺し合いに乗っているのか乗っていないのかそれが問題だった。
「……」
その時青年が三人の方を向いた。
その青年の顔を見て三人は言葉を失う。
青年の目は焦点が定まっておらず、涎を垂らし、明らかに正気では無かった。
そして正気で無い物が散弾銃を持っている、それはかなり危険な事である事は三人共瞬時に理解する。
一刻も早く青年から逃げた方が良いとも。
だが。
ドォン!!
銃声が響く。
と同時にあいことジョンの身体が後ろに吹き飛ばされていた。
「え……」
由妃が倒れた二人に目をやると、二人共もがき苦しんでいた。
声にならない呻きを発し、腹や胸から大量の赤い液体が流れ出ている。
ドォン!!
「――――!」
次の瞬間には由妃もまた腹と胸、足に衝撃を感じ後ろに倒れた。
撃たれた、のだと、即座に由妃は理解した。
理解すると同時にステアーAUGを、由妃は青年に向けて発泡していた。
ダダダダダダッ!!
青年の身体に複数の穴が空き血液が吹き出し大地を赤く染める。
そのまま青年は崩れ落ち、動かなくなった。
「ゲホッ……あ、が……!」
最初は感じなかった灼熱のような激痛が、由妃を襲う。
持っていたステアーAUGを放り出し、傷口を押さえる由妃。
散弾をもろに食らってしまった。
ほぼ間違い無く、内臓が傷ついているだろう、血は止まる気配が無いしとても息苦しい。
「じょ、ジョン、さ……重本、さん?」
血反吐を吐きながらも、由妃は同行者二人に声を掛ける。
だが返事は無い。恐る恐る二人の方へ顔を向ける。
「あ……」
二人共血だまりを作って動かなくなっていた。
ジョンはうつ伏せになっていて顔が見えないがあいこは顔が見え、その目は半開きになったまま瞬き一つせず虚空を見詰めている。
もう生きていないのは良く見なくても分かった。分かってしまった。
そして、間も無く自分も二人同様、死ぬと言う事も。
「あ、ああ……いやだ……」
まだ死にたくない、もっと生きていたいと、由妃は心の底から願う。
だが、痛みは段々他の全ての感覚と共に薄れていき、視界も暗く、音も遠くなる。
朝の寒々しい空気が更に寒く感じるのは気のせいでは無いだろう。
知らぬうちに由妃の目からは涙が溢れる。
「し、し……死にたく、ない」
遠のいていく意識の中、由妃はあらん限りの力を振り絞り、その一言を発する。
だが、その声はもう大声と呼ぶには程遠く。
やがて声も出せなくなった由妃は、呼吸が止まり、その短い生涯を終えた。
【ジョン・ブラナー 死亡】
【重本あいこ 死亡】
【島田長常 死亡】
【西見由妃 死亡】
【残り31人】
◆◆◆
「何だよこれ……」
「酷いなぁ……」
四人の死体が転がる場所を通りかかったのは、
少年、
長沼陽平と、狼の少年、
舩田勝隆の二人。
血塗れとなった四人の男女の死体が転がる惨状を見て陽平と勝隆は気分が悪くなる。
「ああ、こう言うの見ると、殺し合いが進んでるんだって実感わくわ」
「今更かよ! さっき放送で27人死んだって言った時は大丈夫だったのかよ」
「ほら、やっぱり、聞くのと見るのとでは違うじゃん?」
「そりゃまあ……でもこれで分かっただろ? 家に引き籠もってオナってばかりじゃ駄目なんだよ勝隆」
「うん……」
陽平の鋭い一言にややトーンダウンする勝隆。
放送までずっと陽平と共に民家に引き籠もり、隙あらば自慰ばかりしていた勝隆は、
放送を聞いても湧かなかった殺し合いへの実感を、本物の死体を見る事により感じていた。
一応「いつ死ぬか分からない」といった程度には殺し合いの事を考えてはいたが。
自慰ばかりしていた理由もそこからであった。
「いつ死ぬか分からないから出来るだけ気持ち良くなっておく」と言う。
「分かった、陽平……俺もうあんまりオナらない事にするよ……」
「あんまりって事はちょっとはやるんだな?」
「……駄目?」
指摘する陽平に、目をウルウルとさせ耳を伏せ上目遣いで懇願するように尋ねる勝隆。
人によっては可愛いと感じるのだろうが、陽平はドン引きしただけだった。
「……程々にな」
ずっとこんな感じで哀願されても嫌なので、陽平は許可を出しざるを得なかった。
「ありがと陽平ー!」
「ぎゃああああ抱きつくな! やめろ! やめて下さいお願いします」
抱きついてくる勝隆をどうにか引き剥がす陽平。
その後二人は死体の周囲に散らばっていた主だった武装を回収してその場を後にした。
【朝/E-4/田園地帯】
【長沼陽平】
[状態]健康
[装備]???
[持物]基本支給品一式、???(1~2)、ステアーAUG(18/30)、ステアーAUGの弾倉(5)、
トンファーバトン、村田刀、M67破片手榴弾(1)
[思考]1:殺し合いはしたくない。
2:勝隆と行動。
3:殺し合いに乗っていない参加者を探す。
[備考]※勝隆が変態であると認識しました。
【舩田勝隆】
[状態]健康
[装備]???
[持物]基本支給品一式、???(1~2)、ベネリM1スーパー90(0/3)、12ゲージショットシェル(7)、
M67破片手榴弾(1)、災害個人用救急セット、長軸ドライバー
[思考]1:殺し合いをする気は無い。
2:陽平と行動。
3:適度に自慰をする、出来れば犯されたい。
4:殺し合いに乗っていない参加者を探す。
[備考]※性的な行動は控えようと考えています。やめようとはしません。
最終更新:2014年01月26日 20:46