めぐりあいバトロワ

41話 めぐりあいバトロワ

放送が終わった。
17人死んでいるらしい。禁止エリアが六つ指定された。
でも正直、知り合いなんていないし、禁止エリアも現在私こと君塚沙也と石川さんがいる場所ではないので、
余り気になる所は無い。

「17人も死んでんのかよ……」

石川さんは死んだ人数に愕然としている。
流石にこんな時に行為をせがむ程私はKYでは無い。
でも相も変わらず石川さんは私に欲情してはくれない。
自分で言うのも何だけど、こんな巨乳でスタイル抜群しかもロリ顔の美少女に欲情しないなんて。
諦めたくない、諦めたくない。
私の身体で欲情してくれないなんて。
私の唯一の取り柄なのに。
この取り柄が認められないならもうどうしたら。

「……沙也?」
「……あ? な、何?」
「いや、俯いていたからよ、大丈夫か?」
「う、うん」

もしかしたら石川さんは放送の事で自分が俯いているのだと思ったかもしれない。
違うんだよ、本当は違うんだよ。ああ、ごめんなさい石川さん。
何だろう自分がどんどん嫌な奴に思えてきた。
取り敢えず、今いる町の西はほとんど禁止エリアになってしまうらしいから、
北の町に向かってみようと言う事になった。
特に目ぼしい行き先も無いのだけれど。

この殺し合い、いつ死ぬか分からない。
正直、私の人生はろくなものじゃない、と思っている。
小さい頃に親に捨てられて、叔母さん夫婦が保護者になったけど、あの人達は私の事は、
余り関わりたく無いんだろうね。授業参観も運動会も、卒業式も入学式も来てくれないし、
授業料とか給食費とか、今一人で暮らしてる生活費とかは払ってくれるけど。
まあ自分も身体売って稼いでいるから、金くれてもあまりありがたみが無いんだよ。
身体を売るのはお金のためだけじゃない。
抱かれてる時、あたたかいから。
抱きしめられてる時、突かれる時、中にびゅって出される時、顔や身体にかけられてる時、あったかいの。すごく。
そのあたたかさを感じてる時が、私はとても幸福になれる。
もっとあたたかく、もっと幸福を味わいたくて、キモチヨクテ、私はそのために何でもした。
不良達のたまり場やホームレスの小屋に行って、マワしてもらったり。
自分のえっちな写真を自分の携帯の番号やメアド、住所と一緒にネットで公開したり。
全裸で街を歩き回ったり。変な人に監禁されたり外国に売られそうにもなったっけ。
身体だけは、大人だったから、おっぱいも大きかったから、男達は簡単に欲望を私にぶちまけた。
無理矢理ヤられるの、すっごく好きになっちゃった。
妊娠した事だってある、もちろん堕ろした。秘密裏にやってくれる場所を知っている。
でも、反動で凄く寂しい時は、手首をちょっと切ったりする。
首をちょっとだけ吊ったりする。
お薬を一杯飲む。
お酒を一杯飲む。
ちょっとたのしくなる。
……。
……。
私はきっとおかしい。私はもしかしなくても異常なのだろう。
どうしてこんな風になったんだろう、誰が悪いの?
私を捨てた実の両親? 私に無関心な叔母夫婦? それとも、私?
……。
……。
いまかんがえてもしょうがないか。

銃声が聞こえた。

「えっ」

思わず私は声を漏らす。
隣にいた石川さんの胸の辺りから赤い物が噴き出して、石川さんは前のめりに倒れ込んだ。
もしかしなくても撃たれたのは分かった。
多分、もう死んだ。
死んでなくても胸の辺りを撃たれたのなら私にはどうしようもない。
私は駆け出した。

もう一発銃声が聞こえ、私の耳元を何かが掠める。

「ひぃっ……!」

ただひたすらに走り続ける。
さもなければ死ぬ。
私はまだ死にたくない、こんな所で死ぬのは嫌だ。
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。

死にたくない―――――!!!


目の前に誰かがいる、え?

銃を向っ

あ。

う、あ―――――――――――


◆◆◆


自分の方に走ってきた灰色猫少女に、手にしたモーゼルシュネルフォイヤーの掃射を浴びせ、
あっさりとその命を、彼、青猫獣人少年石清水成道は奪った。
猫少女は驚きと恐怖の混じった表情のまま、息絶えていた。

「ふひゅー、お見事成道君!」
「ソフィア……」

SVT-40自動小銃を携えた兎の女性、ソフィアが成道の元へ駆け寄る。

「私も一人殺したよ、褒めて褒めてー」
「おーよしよし」

ソフィアの頭を撫でる成道。
但しこれはただのじゃれあい、小芝居のようなものなのだが。

森にて遭遇し殺し合いに乗っている者同士同盟を組んだ二人は、第一回放送直前に森を抜けた。
そして放送後、獲物を探してうろついていた時、二人の参加者――人間の青年と猫少女――を発見し、
二人で挟み撃ちにするように襲撃を仕掛けた。
結果は見事に成功。互いに一人ずつ獲物を仕留める。

「もう少しこの辺探してみるか」
「そうだねぇ」

殺害した二人の持ち物を漁り、ソフィアが青年の持ち物からブッチャーナイフ、
成道が猫少女の持ち物から自転車のチェーンを入手する。
その後、成道とソフィアはしばらく南部市街地で、禁止エリアを避けつつ獲物を探す事にした。


◆◆◆


「おいおい、銃声だよな今の……」

放送後、市街地を一人歩いていた長野高正は突如響いた銃声に驚く。
しかも銃声はそれ程離れていない場所からのようだった。
近くで戦闘があったのだろう。
つまり殺し合いに乗っている人物が非常に近くにいる可能性が高い。
高正の脳裏に第一回放送前に殺された自分の同級生、宮永正子の死に様が蘇る。
銃で撃ち殺された無残な死体となった正子の姿が。

自分はあんな風になりたくない。

「この辺りからはさっさと離れた方が良いかな……」

高正は南部市街地を抜けて北部市街地方面へ行く事にした。


【石川信泰  死亡】
【君塚沙也  死亡】
【残り29人】


【F-5/市街地/午前】
【石清水成道】
[状態]健康
[装備]モーゼルM712シュネルフォイヤー(0/20)
[持物]基本支給品一式、モーゼルM712シュネルフォイヤー予備弾倉(5)、特殊警棒、自転車のチェーン
[思考]
基本:死にたくはないので、殺し合いに乗る。
1:ソフィアと同盟。最後の二人になったらソフィアとやり合い優勝者を決める。
2:南部市街地で禁止エリアに注意しつつ、しばらく参加者の捜索。
[備考]
※南遊里の名前と容姿を記憶しました。

【ソフィア】
[状態]健康
[装備]SVT-40(7/10)
[持物]基本支給品一式、SVT-40の弾倉(3)、ブッチャーナイフ
[思考]
基本:優勝狙い。
1:成道と同盟。最後の二人になったら成道とやり合い優勝者を決める。
2:南部市街地で禁止エリアに注意しつつ、しばらく参加者の捜索。


【F-5/市街地/午前】
【長野高正】
[状態]健康
[装備]火掻き棒
[持物]基本支給品一式
[思考]
基本:生き残る。
1:北部市街地へ向かう。
[備考]
※ヘレン・オルガの容姿のみ記憶しました。
※ソフィア、石清水成道からは離れた場所にいます。



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021:淫らなのにも理由はある 君塚沙也 死亡
021:淫らなのにも理由はある 石川信泰 死亡
023:過程とかそういうのは吹っ飛ばしたい ソフィア 048:思い出した時にはもう手後れ←よくある事
023:過程とかそういうのは吹っ飛ばしたい 石清水成道 048:思い出した時にはもう手後れ←よくある事
016:残影 長野高正 057:叶えられない欲求
最終更新:2013年04月08日 23:43