Fenrir フェンリル

ヴァナ・ディール出身の霊獣。別名、星月の導き。星月の魔法力を駆使して運命を操作する「月詠み」の能力で知られる。
一万年前の古代戦争でクリューと共闘し、ソ・ジヤの要塞化に協力した。
終戦直後にエシャンタールの依頼に応えて月詠みを行い「世界の終わりに来る者」が誕生する時と地を一万年後のタブナジア半島に定めた。
また220年にはリミララの依頼でも月詠みを行い、ウィンダスの220年から864年までの繁栄と以降の滅亡を定めたが、滅亡を拒んだカラハバルハによって命を狙われ、862年に殺害された。
しかしカラハバルハの目的はあくまでも滅びを定めた月詠みだけを無効化させる事だったため、884年にカラハバルハは自身と一体化する形でフェンリルを蘇生させた。
フェンリルはそこで改めて月詠みを行い、今度はウィンダスの再起だけを定め、その未来について詠む事はしなかった。
現在は、22年間に及ぶ自身の不在で荒廃してしまったサルタバルタの復興に取り組んでいる。
詳しい来歴は不明だがおそらく狼のモンスターとして生まれたと思われる。真世界がヴァナ・ディールへと零落したのちに高い霊格を積み上げ、神に比肩する獣「霊獣」となった。
しかしこの霊格とはヴァナ・ディールにおいてのみ有効なものであり、真世界では消失してしまう性質があるため、
一万年前にヴァナ・ディールの真世界化を企てたジラートと霊獣は対立し、激しい戦争を繰り広げた。
霊獣は、同じくジラートと対立関係にあったクリューの代表者セルテウスに同盟を請われ、次のような契約を条件に了承した。
その内容とは「セルテウスが人類合体の中核を担う『世界の終わりに来る者』を倒せなければ、霊獣は全人類を滅ぼす事でその合体を阻止して良い」というものであった。
もし人類が合体して男神プロマシアと化せば、霊獣は歯が立たなくなり、真世界化が確実なものとなるため、フェンリルらはその合体を何よりも恐れていた。

古代戦争終結

戦争末期、ジラートは霊獣とクリューの攻撃を掻い潜ってクリスタルラインの接続を終え、神の扉計画の最終段階を発動させた。
ヴァナ・ディールは急速に真世界化を始めるも、バハムートがクリスタルラインに飛び込み、自らの肉体を栓としてエネルギー流の遮断を図ったために真世界化は中断され、
神都アル・タユ一帯だけが時空点転移し、ヴァナ・ディールよりは高次だが真世界よりは低次である異次元世界「ルモリア」に放逐されるという中途半端な結果に終わった。
しかしそれでもアル・タユ市民は充分な高次元化の煽りを受けて次々と合体を始め、「世界の終わり来る者」即ち「プロマシアの器」へと変化した。
セルテウスはプロマシアの器に戦いを挑んだが、力及ばず返り討ちにされたため、
同じく「世界の終わりに来る者」の打倒を目指していたイブノイルは、直接戦闘による撃破はもはや不可能と判断し、自らの命と引き換えにプロマシアの器を封印した。
その直後、ヴァナ・ディールではクリューがヴァズのアークを爆破したために巨大なエネルギー爆発「メルト・ブロー」が起こり、ジラート文明は崩壊。古代戦争は終結した。
生き残ったエルドナーシュら僅かばかりのジラートは、荒廃した世界の自然回復を期待してデルクフの塔で長い休眠に入り、
一方クリューはエシャンタールに率いられて、荒廃を免れた土地を捜す放浪の旅に出た。

月詠み

ほどなくしてサルタバルタを訪れたエシャンタールは、そこを縄張りとしていたフェンリルに出会い、世界の行く末について話し合った。
フェンリルは「世界の終わりに来る者」の輪廻転生を予測し、人類はいずれまた男神への回帰を欲してバハムートに滅ぼされるだろうと語ったが、
エシャンタールは反論し、不老不死を得た自分ならば「世界の終わりに来る者」が再臨しようとも倒す事ができる主張した。
そして戦いの準備を整えるために「世界の終わりに来る者」が次いつどこに生まれるのか分かるよう運命を操作して欲しいとフェンリルに懇願した。
エシャンタールの不老不死という宿痾に同情したフェンリルはこれを了承し、一万年後のタブナジアに次なる「世界の終わりに来る者」が生まれ落ちるよう定めた。

時は大きく流れ一万年後の220年、初代星の神子リミララが満月の泉でフェンリルと邂逅した。
高い魔法力を持つリミララはフェンリルと互角に渡り合い、月読みを要請してウィンダスの繁栄を約束させた。
しかしリミララは最後の最後でタルタルが宿す「虚ろなる闇:怯懦」の呼び声に負けて、繁栄の果ての滅亡を心の中で願ってしまう。
(虚ろなる闇は「こんな悪感情を抱えて生きるくらいなら死んだ方がマシである」と往々にして人間を誘惑し、リミララはその誘いに一瞬とはいえ屈してしまった。)
その僅かな破滅願望はしっかりと拾い上げられ、結果220年からの繁栄と864年の滅亡が月読みによって定められた。

ウィンダスクエスト〔S〕

それを良しとしなかったカラハバルハは、この滅亡の月詠みを破棄させるべく、862年にフェンリルの殺害を企てた。
しかしフェンリルはサルタバルタに降り注ぐ星月の魔法力をも司っているため、
フェンリルを殺せばたとえ月詠みを破棄させられてもサルタバルタの荒廃は必至であり、ゆくゆくはウィンダスの滅亡を招いてしまう。
カラハバルハはそれも回避するため、一旦フェンリルを殺害して月詠みを破棄させた上で、改めて蘇生させるという手段を模索し、
人間と霊獣が一心同体に融合する「完全召喚」なる魔法を考案。
折しもウィンダスに攻め寄せていたヤグード教団軍を迎え撃つ形でフェンリルを完全召喚した。
フェンリルはカラハバルハの強大な魔力と、小さき体ながらも怯懦に立ち向かう強き意志に敬意を払い、彼を認めて融合を果たした。

「なるほど……これが人の定めに抗う力か……。神子よ、怯える必要はない。恐れる必要はない。
 導きの光なき闇夜が来るが、決して歩みを止めてはならぬ。歩みを照らす光はないが、光なくとも道はあるのだ。」

フェンリルとカラハバルハはヤグード教団軍を殲滅し、教団の本拠地オズトロヤ城にまで進軍。
そこで力尽きるまで暴れ回ると、ペリィ・ヴァシャイが放った「光の弓」に自ら貫かれて絶命した。
カラハバルハの死を嘆き悲しんだ星の神子は、満月の泉にてカラハバルハの復活と助力を願い、泉に残っていたフェンリルの残滓がこれを聞き入れ、それが約20年後の彼の復活に力を貸した。

ウィンダスミッション

884年、カラハバルハは計画通りフェンリルと共に蘇生した。
そのために用いた手段は通称「手の院の禁術」と呼ばれるもので、「故人が生前製作した魔法人形を再起動させると故人も息を吹き返す」という魔法理論に基づいており、
カラハバルハ製の魔法人形「ジョーカー」の再起動をスターオニオンズ団が成し遂げてくれたために実現した出来事であった。
カラハバルハとフェンリルは団員達に感謝し、星の神子と共に満月の泉で改めて月詠みを行った。
神子の今度の願いは、フェンリルの完全復活、そしてウィンダスの新たなる黎明であった。
フェンリルはこれを了承し、未来を人の手に委ね、今度は発展も滅亡も定める事はなかった。

一つの生命体として活動を再開したフェンリルとカラハバルハは、現在サルタバルタの魔法力回復に向けて積極的に取り組んでいる。


【覚書】

  • FF6で初登場した召喚獣。能力はシリーズ毎にまちまちだが満月と共に出現する事だけは共通しており、本作では月との繋がりが特に深く描かれた形となった。
  • 霊獣の中では人間に対して中立的な立場を取っており、滅ぼしにかかるわけでもなく、かといって積極的に助けるわけでもない姿勢だったが、カラハバルハと同化した事で明確に協力的な存在となった。
  • PCが召喚できるフェンリルの分霊はおよそ成人男性の倍程度の体長だが、カラハバルハが完全召喚した本体は非常に巨大であり、片足でデーモン族を踏み潰せる程のサイズであった。


【アクション】

【ムーンリットチャージ】

星月の力を溜めてから突撃、強烈な頭突きを見舞う。
外見通りの打属性であり、収縮の連携属性も持っている。また追加効果に暗闇がある点も見逃せない。修得レベルが5と低く、召喚士が最初に覚えるフェンリルの技である。
moonlit charge とは「月光の突撃」の意。

【エクリプスバイト】

大きな顎を活かして三回噛み付く。
実は本作においてフェンリルは最大の攻撃力を誇る召喚獣なのだが、一番の大技であるこのエクリプスバイトのD値が低いばかりにその攻撃力を活かしきれているとは言いがたく、
結果的に削りではイフリートやガルーダに大きく水を開けられている状態であった。
しかし2013年11月5日のバージョンアップでアストラルパッセージが、2014年10月7日のバージョンアップでアポジーが、
そして2014年11月10日のバージョンアップにてエクリプスバイトに重力・切断の連携属性が追加された事で、湾曲・闇連携を何度も繰り返せるようになり、驚異的な瞬間火力を手に入れた。
具体的には「アポジー → クレセントファング → エクリプスバイト(湾曲)→ アストラルパッセージ → エクリプスバイト(闇)→
クレセントファング → エクリプスバイト(湾曲)→ エクリプスバイト(闇)→ クレセントファング → エクリプスバイト(湾曲)→ エクリプスバイト(闇)→ ルナーベイ(MB)」の手順となる。
ecliptic bite とは「食の噛み付き」の意。この場合の食とは、ある天体が他の天体の陰に入る現象を指している。
北欧神話では狼スコルが太陽を飲み込む事で日食が起こり、狼ハティが月を飲み込む事で月食が起こるとされているため、それに因んだ技名であると考えられる。

【ルナークライ】

高らかに咆哮する。
フェンリルが多数有する咆哮技の一つで、標的の命中率と回避率を下げる。月齢で数値が上下し、最小値は1で最大値は31。
Lunar Cry とは「月の鳴き声」の意。

【上弦の唸り】

同じく咆哮するが、ルナークライとはエフェクトの色が若干異なる。
STR・DEX・VIT・AGI・INT・MND・CHRを上昇させる強化技。数値は月齢で上下し、最小値は1で最大値は7である。
数字としては控えめすぎると言わざるをえないが、一度に七つものステータス変化を付与するため、ディスペル対策のデコイとして用いられる事がある。
英語版では ecliptic growl 表記で「食の唸り」の意。

【ヘヴンズハウル】

同じく咆哮するが、口元が発光したり、渦巻き模様が発生したりと妖しいエフェクトが印象的な技。
月齢が上弦の月、十日夜、十三夜、満月、十六夜、居待月の時にはエンドレインを、
下弦の月、二十日余月、二十六夜、新月、三日月、七日月の時にはエンアスピルを付与する。
またそれぞれ満月、新月の時に最大の効力を発揮する。
2011年12月15日のバージョンアップで追加された技で、他の咆哮技が軒並み同じ鳴き声を使用しているのに対し、ヘヴンズハウルはそれを少し加工した甲高い鳴き声を使用している。
英語版では heavenward howl 表記で「天に向かう咆哮」の意。

【ルナーベイ】

咆哮し、三日月から無数の流星群を降らせた後、とどめに一際大きい隕石を落下させる。
2010年6月22日のバージョンアップで追加された技で、標的に闇ダメージを与える。
概ね神獣の特修履行三振り分の威力があり、更に新月時に最大のダメージが出るようになっている。
lunar bay とは「月の吠え声」の意。

【ハウリングムーン】

満月と共に咆哮するフェンリルの究極履行。広範囲の標的に闇ダメージを与える。
FF6では分身を、FF7ではバーサク+ヘイスト+攻撃力アップを付与する強化技であったが、本作では究極履行としての立場からダメージ技となった。
一般的に召喚獣を相手に戦うBFではスタンが通じないために、どんな究極履行も甘んじて受けるしかないのだが、
唯一フェンリル戦ではスタンが有効なので、Lv75キャップ時代はHP50%で来るハウリングムーンを止める事が重要であった。
howling moon とは「咆哮する月」の意。

ソ・ジヤの最下層にあるフェンリルの扉。奥にはフェンリルの力を蓄えた魔導器が設置されている。
一万年前の戦争時にクリューはソ・ジヤを要塞化し、霊獣から授かった魔力をそこに蓄えて必要に応じて使用した。
ソ・ジヤは全部で六つの区画に分かれており、それぞれが別の魔導器を受け持っている。
ボスディン氷河(I-7)の入口はバハムート、(G-9)の入口はフェニックス、(H-8)の入口はディアボロス、(H-10)の入口はフェンリル、(J-8)の入口はカーバンクルの魔導器に通じている。
北西にある(F-7)の入口は魔導器ではなく今は亡きヴァズのアークに通じていたが、現在その通路は虚ろなる闇に飲まれてプロミヴォン-ヴァズとなっている。
プロマシアミッションにおいてテンゼンは魔導器を起動してフェンリルに意見を求めようとしたが、
当時フェンリルは死亡しており蘇生もまだ行われていなかったため、弱々しい残留思念が一万年前の月詠みについての情報を伝えるのが精一杯であった。
最終更新:2015年04月14日 07:32