麒麟立志伝⑫
エルセリア歴X56年。
ブルーコーストを奪取した王国軍ではあったが、その後は大陸中央部における局地戦が激化したため、主力をそちらにも向けなければならず、南部からの進攻ルートは半ば頓挫してしまった。
KIRIN達もしばらく中央部の戦いに参加していたが、徐々に膠着状態の様相を呈してきたため、その後の契約更新は行わず、別の戦場を求め探し歩いた。
KIRIN達もしばらく中央部の戦いに参加していたが、徐々に膠着状態の様相を呈してきたため、その後の契約更新は行わず、別の戦場を求め探し歩いた。
流れ着いたのは大陸北部、聖地レフィリア。
ここ十数年の軍事改革において、常備軍を持つまでに至った教団であったが、やはり練度においては他国に劣るためか、未だ主力は莫大な資金をもってかき集めた傭兵であった。
前教皇”びってん”は退任し、現在は皇王ジェイコブがその座についている。
前教皇”びってん”は退任し、現在は皇王ジェイコブがその座についている。
「ようこそおいで下さいました。大聖堂をご案内いたしましょう。」
そう言って傭兵団を案内してくれたのは、"ミヨリ"という女性であった。
彼女も枢機卿の地位を持つ高官であるはずだが、なぜ彼女が直接一行の案内をしていたのかは分からない。
彼女も枢機卿の地位を持つ高官であるはずだが、なぜ彼女が直接一行の案内をしていたのかは分からない。
レフィリア大聖堂、そこは別世界である。
敬虔な修道女たちは、彼女たちの信仰の主である聖女レフィリアを讃える歌を歌い、中央には、そのレフィリア神と思われる像が慈悲深く微笑んでいる。
ステンドグラスを通して西日が床に宗教画を描き、全ての者の心を落ち着かせた。
敬虔な修道女たちは、彼女たちの信仰の主である聖女レフィリアを讃える歌を歌い、中央には、そのレフィリア神と思われる像が慈悲深く微笑んでいる。
ステンドグラスを通して西日が床に宗教画を描き、全ての者の心を落ち着かせた。
「素敵な場所でしょう。」
ミヨリがつぶやいた。
景色に心を奪われていた傭兵たちが、我を振り返り、皆一様に答える。
景色に心を奪われていた傭兵たちが、我を振り返り、皆一様に答える。
「ここは聖女レフィリアの生まれた地として、彼女の慈悲深さを讃える場所なのです。
世界中の敬虔な信徒たちが、その至純な信仰心をもって訪れる場所。
この地を必要とするものの為に、正統教義は守られなくてはならないのです。
私たちの力で。」
世界中の敬虔な信徒たちが、その至純な信仰心をもって訪れる場所。
この地を必要とするものの為に、正統教義は守られなくてはならないのです。
私たちの力で。」
そういったミヨリの表情は先ほどとはうって変わった、厳しいものだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――グラフォート黒騎士団領の国境付近、アーライル。
未だ境界線で小競り合いの続く聖軍と黒騎士団両国のあいだにさらなる衝撃が走る事件が起こった。
黒騎士団の国境警備軍が、教団の前教皇”びってん”と名乗る人物の身柄を確保したのである…。
黒騎士団の国境警備軍が、教団の前教皇”びってん”と名乗る人物の身柄を確保したのである…。
びってんは絶望していた。
彼は自らが正しい行いをしているものと信じていた。
国際的な批判を受けた常備軍の編成も、力を持たない教団の権威を守る護国の聖剣とするためであった。
国際的な批判を受けた常備軍の編成も、力を持たない教団の権威を守る護国の聖剣とするためであった。
しかし、現実はどうであろうか。
腐敗した上層部のクーデターにより、対外関係の悪化による責任を取らされ、教皇の座を降りるハメとなったが、それはまだ覚悟があってのこと。
だが、彼の影響力を恐れた皇王は、暗殺者まで差し向けてくるではないか。
さらに、苦心の末に編成した聖軍は、今や連中の気に食わないヤツを消すための玩具同然である。
腐敗した上層部のクーデターにより、対外関係の悪化による責任を取らされ、教皇の座を降りるハメとなったが、それはまだ覚悟があってのこと。
だが、彼の影響力を恐れた皇王は、暗殺者まで差し向けてくるではないか。
さらに、苦心の末に編成した聖軍は、今や連中の気に食わないヤツを消すための玩具同然である。
改革で、敬虔な正統教義が守られるはずが…。
自分の愛した教団は、自らが蒔いた種で腐ってしまった……。
自分の愛した教団は、自らが蒔いた種で腐ってしまった……。
彼は自問自答を続ける中で、一つの結論に至る。
「正統教義は、政治とは切り離して独立させねば、真の至純な信仰を得られない。
……腐敗しきった教団を潰そう。それが私にできる贖罪。」
……腐敗しきった教団を潰そう。それが私にできる贖罪。」
彼が危険を冒して黒騎士団に赴いたのは、外圧でもって教団を変えるためだったのである。
麒麟立志伝⑫ (6/23 11:08)
文章:KIRIN
文章:KIRIN