※この小説の世界は本来の防術世界とは異なります※

+ 第00話
第00話「プロローグ」
幾たびの戦争でずっと最前線で戦い続けていた戦闘メカ「防術機」。しかし、戦争を乗り越え、平和となったこの世界にそのようなものはもう必要なく、ただ廃れていくだけだと思われた。しかし、「AIGIS」という団体がそれを一般用に改良し、販売した。他の企業も同様のことを行い、それに搭乗し戦う、「TDMファイト」が発展した。いまやTDMファイトは全世界を熱狂させる一大スポーツとなっている。そんな競技に夢を抱く一人の男がいた――――。

+ 第01話
第01話「父」
俺が初めてTDMファイトを見たのは七歳の時だった。そのときのことはとても鮮明に覚えている。漂う硝煙の匂いも気にせず、ただその戦いを見ていた。弾ける弾、燃える鉄、鳴り響く駆動音。そのすべてに魅了された。いつしか俺は防術機で戦う事を夢みていた。
試合が終わった後、父は俺に言った。「あんな風に戦ってみたいか?」 「うん!」俺は即答した。
帰った後、父は俺に一機の防術機を見せてくれた。全体的に傷が目立つ。まあ、その時の俺にはそんなこと分からず、ただ「スゲー...」と思っていたんだが。父は言った。「こいつはもう俺には必要ない...もう一度聞くけど本当に乗りたいのか?」「うん!」俺はまたも即答した。それから父は俺に乗り方とかを教えてくれた。父の教え方はとてもうまかった。まるで今まで幾つもの戦場を潜り抜けてきた人のように。二年後、父は外国へ単身赴任することになった。その時父は俺に「教えられる事はすべて教えた、後はどう生かすかだぞ」と言った。
そんな父の言葉を信じ、今地元唯一TDM部があると言われている増蔵高校の門前に立っている。

+ 第02話
第02話「始動」
俺の名前は「古鷹 雄一 (フルタカ ユウイチ)」、増蔵高校一年だ。増蔵高校とは、エリアJP 霧雨特区に位置する全校生徒42,000人を誇る高校だ。俺の学校生活はまだ2日目、つまりまだピカピカの一年生って訳だ。んで、今日は待ちに待ったイベント「部活動紹介」がある日だ!この高校は150を超える部活があり部活動紹介だけでも一大イベントになるらしい。ベターな野球部からマイナーなカバディ部、挙げ句の果てにはアルマジロ部など訳の分からない部活もある。その中でも俺は"TDM部"に入部しようと思っている。いや、入る。その為にこの高校に入ったようなもんだ。
???「よう、雄一。入学おめでとう!」
雄一「オマエモナ-」
朝一番からふざけたことを抜かしたコイツは俺のただ1人のメカ仲間、「加山 涼太 (カヤマ リョウタ)」。俺はメカに乗りたい派だが、涼太は弄りたい派、俺と一緒にTDM部にメカニックとして入る予定である。
涼太「あー、朝から放課後までずっと座って説明を聞くのは辛いだろうなー...」
雄一「この高校でそれを言うか?色んな部活があって面白いだろ?」
涼太「いやいやいや」
雄一「いやいやいや」
いつものふざけた会話をしつつ、体育館に向かう。道中、部活の勧誘員がとても多かったが、俺は一切を無視して突っ切った。
雄一「着いたかー。それにしてもでかいな...」
涼太「そりゃこんなマンモス校なんだから、こんだけでかいのが必要だよ」
雄一「だからってここまで必要無いだろ?」
涼太「これでも敷地の12分の1だし、多少はね?」
無駄に広い敷地を持ってるのも増蔵高校の特色である。
先生「はーい、番号順に並んでー並ばなかったら愛の補習が待ってるぞ〜」
涼太「んじゃ待たな〜」
雄一「おう」
並びおわり、座ると即座に茶道部の紹介が始まった。
涼太「電脳世界部の紹介凄かったな〜、紹介の為のAIを作ってくるなんてなぁ」
飯を食いながら涼太が言った。
雄一「質問にも全て答えてたしよく出来てたな」
涼太「バラしてみてえなぁ〜、っとTDM部の紹介っていつだったっけ?」
雄一「昼休憩終わってすぐ、グラウンドでだ」
涼太「グラウンド...か...何するんだろうな?」
雄一「機体紹介とかじゃないか?そんな模擬戦とかやったら危ないだろ?」
涼太「だよなー!模擬戦なんてないよなー!」
雄一&涼太「HAHAHAHA!!!!」
グラウンドに着いた俺達を待ってたのは、硝煙と銃声と火花だった。
涼太「おー、あれはブラスタのフルバーニアンタイプかー。あのブースター見たことないなー、独自モデルか?だとしたら良く出来てるな、うん。んで相手の機体は...ありゃガバナーか。鈍臭えなぁ〜。お、ブラスタFBがガバナーをとっついたぞ!ガバナーまだ耐えてるな、流石の防御力だ。うおっガバナーがビーム出したぞ!あんな武器搭載されてないはずだ!?まさか改造モデルか!これは熱くなって来たぞー!ブラスタFBの武装も全部カタログにないな、まさかのオーダーメイドか?ライフルに射凸ブレード付けるなんて常人の発想じゃないが...うん、速度と武装が良くあってる、パイロットは真面目なタイプなんだろうなー。それに比べてガバナーのパイロットは大雑把だな、武器がエイムしなくてもいいものばかりだ。おい、雄一〜プロの目から見るとどうだ〜?」
雄一「言いたいこと全部言われたぜ。」
涼太「それにしても模擬戦をやるとはなー。まあ説明するよりこっちの方が宣伝としては効果抜群だろうけどね」
雄一「そうだな...あ、ガバナーが機能停止した。ブラスタの高速型が刺したらしい」
涼太「やるねぇ」
試合が終わった後スピーカーを通して、
「「「TDM部をよろしくお願いしまーーーす!!」」」 「おい、声でかいぞ部長」
と勧誘の言葉が述べられた。
先生「んじゃ明日は部活体験入部だから、体操服で登校しんさいねぇ〜」
生徒「はーい」
ホームルームが終わり、帰宅の途についた。涼太は電脳世界部に突入したらしい。
今日は濃い一日だった。演劇部のSF版浦島太郎がまだ記憶にこびりついている。
それにしても、あんな間近で試合を見るのは今回で2回目だ。やはり、迫力があって面白い。部活が楽しみだ!

+ 第03話
第03話「入部」
古鷹雄一の朝は早い。まず、午前5時に起きた後に軽くジョギングする。そのあと、「セドナエリス」の整備をする。これは、四年間欠かさず続けてきたことだ。ふと、肩装甲を見てみるとこう書いてあった。「ΔυσνομίαⅨ」。
雄一「なんだコレ...?」
いや、なんだこれ。今まで気づかなかった。不思議に思いながら、武器の整備を始める。
まず、ライフル。連射性能はそこそこだが、精度が良い。どんな局面でも対応できる頼れる得物だ。どこのメーカーで作られたものかは分からない。薄れた文字で「Y・・-・6」と書かれている。部品が壊れては父がどこからか代用品を持って来ていた。
んで次はブレード、ライフルの下部に付いている。これもメーカーが分かっていない。こいつの凄いところは切れ味がずーっと落ちていない所だ。父が「超合金だからね」と言っていたが本当なのだろうか。
次はミサイルコンテナ。中身は空だ。ミサイルは高いからしょうがない。
次に各関節とスラスターの点検を始める。
うん、異常は無い。
これが終わると時刻は大体7時くらいになる。朝飯を食いに台所に向かい、食った後に学校に行く。
涼太「よう、雄一」
雄一「おはよう、涼太」
涼太「んじゃ、行きますか...」
雄一「で?場所は?」
涼太「...分からん」
雄一「デスヨネ−」
あれから一時間程探したが、何処にもTDM部は無かった。無駄に広いんだよこの高校。そんなことを愚痴りながら探索していると
???「その動き...TDM部を探しているね?」
背後から突然話しかけられた。
雄一&涼太「ファッ!?」
???「あれ、違ったかな?」
元気そうな女が言う。
???「おい部長。アンタの勘はあてにならないとあれほど言っただろう。すまない、このドジが迷惑かけたみたいだな」
勤勉そうな眼鏡をかけた男が言う。
雄一「あの、俺達TDM部に入りたいんですけど、部室ってどこにあるんですか?」
???「な!?」
???「ほーらクソ眼鏡、私の勘は当たってたでしょ?」
???「チッ...まあいい、案内しよう」
???「ここがTDM部だ。あんまり動くなよ、部品が吹き飛ぶ」
雄一&涼太「おおー...」
そこは中々に広く、設備も中々に整っていた。だが、ガレージには2機しか機体が入っておらず、持て余してるようだった。
???「そういえば自己紹介がまだだったね。私はTDM部部長の"山口美咲(ヤマグチ ミサキ)"。そんであっちのクソメガネが"長谷川康太(ハセガワ コウタ)"。あともう一人いるんだけど...今は居ないみたいね。んじゃ貴方達の名前を聞かせてくれるかな?」
雄一「僕は"古鷹雄一"です。で、あっちのブラスタを舐め回すように見てるど変態が"加山涼太"です」
涼太「メカニック希望でーす!」
いつも以上にチャラい声で言う。
美咲「メカニック希望ね〜。2人いたら整備も早くなるし助かるわ〜」
そう言った時だった。
???「君今メカニック希望って言った!?言ったよね!?言ったことにする!!TDM部メカニックにヨウコソォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
ガバナーの下から這い出てきたナニカが言う。これには流石の涼太も驚いたようで、すぐさま逃げた。
美咲「京子!居るんだったら居るって言ってよ〜」
京子「めんごめんご〜。で、そこの君はメカニック希望って言ったよね!」
部長の言うことをサラッと聞き流して食い気味に聞く。
涼太「そうですけど...」
引き気味に答える。
京子「ふふーん...君には素質があるよぉ...名前は?」
涼太「加山涼太です」
京子「りょーちゃんね!オーケーメモリー!」
涼太が助けを呼ぶような目でこちらを見ていたがあえて無視することにした。
???「おー、今日はやけに騒がしいじゃあないか」
コーヒーを持った若い男性が感心したように言う。
美咲「海流先生!今年は2人入ってくれるみたいですよ!」
海流「おーおー、嬉しいね。君達名前は?」
雄一「僕は古鷹雄一です。そして、あちらで死んだような顔をしているのが加山です」
海流「あいつか...おい千石、そこまでにしとけー」
京子「はーい...」
海流「さて、立ち話もなんだから、座って話でもしようか」
この部で生きていけるか不安になった。

+ 番外編1
「ただいまより、第14回のテストを開始します。」
無機質なアナウンスがコックピットの中を駆け巡る。これまで、幾つの命を冒涜したのだろうか。全て、自分の為にやっていたことだ。だが、それは許されないことであり、忘れてはならないこと。だが、我はその運命から逃れている。
「エネルギー100%、準備完了です。」
「コネクター接続。網膜投影開始。」
人を、何人もの人を殺してきた。友人さえも、家族さえも。全ては自分の地位の為のことだった。
「マーキス様、いつでもどうぞ。」
私はテストを開始するように促した。
「"オルドエネルギー"、注入開始。」
冷たい目、凍りついた表情筋。ついには自分の顔さえも忘れてしまった。
「CAUTION Ord-Energy Regurgitation-CAUTION Ord-Energy Regurgitation.」
「ッ!?マーキス様、早くコックピットから離れてください!!」
コネクターから闇が迫ってくる。それは、今まで殺してきた者の怨念の様に思えた。ついに、死ぬのか。やがて、私の肉体は飲み込まれていった。

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最終更新:2017年12月28日 18:56