これは研究助手である私、■■■■の日記。
6冊目




■■年■月■日

新しい日記に筆をつけることは、なんだか新鮮な気持ちだ。
これで6冊目となる私の日記は まあ書き慣れない私としてはよく続いたほうだと思っている。

今日もあの博士と一緒の実験だ。
今回は新型一軸回転操舵機の実験だ。
なにが変わったのかは分からないが、博士は自慢げだったな。
あとで訊いておこう。 それでは行ってきます。


帰ってきた。
結果は散々だった。
以前の回転機も相当なものだったが、改良されていると思ったら、
ただ重量がまして、なおかつ不良動作が増えていた。
回転が不安定になった回転機は放熱処理が追いつかず、オーバーヒートで燃えてしまった。
博士は唸ってそのまま自室に引きこもるわ、せっかくの回転機が燃えカスになる前に総出で消火に務めるわ、もう大忙し。
いつか爆発でもおきなければよいが・・・。
今日は疲れたので早めに眠りにつく。



■■年■月■日

今日は朝の日記は無い。
なぜなら昨日のドタバタで朝起きるのが遅れたのだ。

今日も昨日と同じことの繰り返し。
実験だ。
回転機に熱処理防御膜を取り付けての作動だ。
昨日はなんでつけていなかったのだろうか。

今回の作動実験5回の内、2回成功した。
そう3回は失敗したのだ。

一回目は初期点火の時点で作動せず、
二回目は初期動作はクリアしたものの、突然軸がブレ、異音を発し、固定装置から脱落してしまった。
三回目は固定装置を強化してからの点火、順調に回った。成功。
四回目もクリア。初期点火から回転率を上げての2時間連続稼働にも耐えた。
五回目、爆発した。 2時間稼働からの冷却はきちんと行われていたのか、と博士が怒鳴っていたが そりゃもう
冷却は万全、手で触っても平気な温度帯まで放熱してから作動したさ、 もう知らない。
 ・・・初期点火した後、腹に響く音がした。防御膜は真っ黒に焦げ付き、内部の回転機の一部は粉末状になって防御膜の底に溜まっていた。




■■年■月■日

今日は休みだ!!!
さあ何しようか!
あのサボりぐせの在る■■■博士の行方を捜さないで済むのはとても気が楽だ。
シフト制を甘受しよう。他の同僚には申し訳ない気持ちがするが、今日はのんびり買い物に行くことにする。
では 行ってきます。



ふう ただいま
何事もなく、充実した買い物だった。
今日買った物は
 W.R食品のWRバーを大量(計8箱)と、新刊が出ていた雑誌と、休日用の服3点。
W.R食品にはいつもお世話になっている。忙しい日でもこれさえ在れば食事は済ませられる。
大量に買ったのは研究室の休憩所に置くためだ。皆、ろくに食べていない気がする。
差し入れと言ったら喜ぶかな。
次に雑誌だ 研究に没頭する毎日。外からの情報は忙しさからか、遅れ気味だと思う。
こういう雑誌でも貴重な情報源の一つだ。

そしてなによりも今日は気に入った服が買えたのが一番嬉しい。
研究助手というのは着るものと言ったら真っ白に毎度漂白する白衣と、動きやすく素肌が露出しない作業着。
ああ、最近は作動実験も多いので研究員全員が白衣の下に保護スーツを着込んで作業していたな、■■■博士を除いて。
ともかく着飾る職場ではないことは確かだ。

明日はまた研究所に行く。 憂鬱で夜更かしでもしてみたいが、今日は寝ることにする。


W.R食品、W.Rバー。 [[名蟻技術研究機関]]内で出回っている食品部。 
設立して間もない頃は衛生環境が悪かったため設けられた。最先端加工食品を取り扱う。 
味はどれも悪くはない。



■■年■月■日

今日は自室に閉じ込められた。
珍しいことに地下基地の上の海中に謎の船舶が通ったそうだ。
発見されないように 各エネルギー作動装置は電源を抑えられ、消音モードに入るので外は真っ暗。
部屋はなるべく明かりが漏れないように窓などはすべて閉め切りだ。
もちろん大きな音を立てる事も、騒ぐことも禁止されている。

まあ、閉じ込められたとはいうものの、理由を申請して現在地を報告し続ければどこに行ってもいいのだが、
別に行くところもないので昨日買った雑誌を読んで暇つぶしをすることにする。
他の部屋は誰かを呼んで声を控えておしゃべりをしたりしてるようだが、残念ながら私にはそういう仲の人が居ない。ええ
、寂しくはないぞ!一人日記に向き合うだけだけども

 今頃戦闘員達は完全装備で控室に居ることだろう。まったくご苦労様である。 中には休日の人も居たことだろうに・・・。

ステルス基地である名技研ではあるものの、すべての対策を講じてこそのステルス性能のようだ。



■■年■月■日

やっと自室から出れた。
久々の外の空気は循環器がフル稼働しているため、とても清潔で気持ちが良かった。
結局、あの船舶は何だったのだろうか。
めったに基地海上を通る船は居ないものだが、防術機か?それとも同業者か。
なんにしろ、■■■博士が研究結果を見たくってうろちょろしてそうな気がするから今日は早めに研究室へ向かう。
では 行ってきます。






■■年■月■日


数日空いた。
ここ数日間、ずっと取り調べを受けていた。
なぜなら、つい隣の研究部で機関が定める規定を無視した機体が製造されていたようだ。
その機体が発見とともに脱走。今も行方不明なのだそうだ。

まったく、いくらこちらの■■■研究主任が変な方だからといって、その研究助手達全員も調べあげる事はないんじゃないかな。
あちらも仕事なのだが・・・

脱走した機体と言うのはどういうものなのだろうか。自立AIで自己保存プログラムが働いたのだろうか。
まあ規定違反の機体は解体処理されるかもしれないが。
協定違反か、なんの違反したのだろうか。 まさか無作為に攻撃してこないだろうか。
念のためにボディアーマーを研究室から借りておこう。 そこまでの道のりは無防備だが・・・


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最終更新:2017年04月10日 22:31