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令和8年5月29日:防災気象情報の改正について

令和8年防災気象情報の改正について



※時間がない方及び防災初心者は「令和8年改正後の内容」、「令和8年改正前との変更点」、「令和8年改正前からの全体的な改善点」の3つの項目だけ読んでいただければ今回の改正の内容と目的、そして今後どの情報が発表された時に避難行動を開始すればいいのかが大体わかるのではないかと思います。
※簡略版スライドもそれに応じた内容としております。
※なお、ここに出てこない大雪警報や雷注意報などは今回の改正では特に変更はありません。
※また、システム改修の関係上、気象庁システム側では5月28日午後に情報提供が開始となります。
それに伴い、28日は気象庁ホームページ上で警報注意報の確認ができない時間帯が出てきます。詳細なスケジュールは 気象庁ニュースリリース(PDF) をご確認ください。




これまでの防災気象情報・避難情報のあゆみ




平成25年(2013年)8月30日以前の状況がこちらです。
情報自体が少なく、情報系統としても非常にシンプルな状態ではありました。
また、土砂災害警戒情報の導入や指定河川洪水予報を改善するなど、一部の改善は進んでいました。
※なお、ここでいう警戒区域とは災害対策基本法の第63条により市区町村長によって設定される法定罰を伴う強制退去及び立ち入り禁止区域のことです。
実質的に避難指示の上位と言えますが、法的拘束力が伴う強い設定であるため、設定のハードルが避難指示までに比べてかなり高いものとなります。


しかし、2011年に相次いで発生した大型災害の際、警報の重大性や切迫性がわかりにくいとの声があがりました。
重大性や切迫性がわかりにくいということは、実際の避難につながりにくい、という大きな問題を抱えることになります。
また、この当時から気象災害の激化が指摘されており、それらに対する対策がハード面*1だけでなく、ソフト面でも求められていました。
これを契機に避難情報及び防災気象情報の抜本的な改正が進められることとなり、この流れは現在に至るまでに続いています。
この時点では特別警報の導入及び、今後の気象警戒レベル(仮称) の導入が進められることとなりました。


平成25年(2013年)5月30日。この日の改正気象業務法および改正国土交通省設置法により、特別警報について新たに導入が決まり、その年の8月30日より運用が始まりました。(このスライドでは実際の運用開始日に合わせて8月30日改正としています)
この時、新たに大雨・暴風・高潮・波浪・大雪・暴風雪の6種類の特別警報が導入されました。


気象特別警報とは水害・雪害・風害・高潮害などの重大な気象災害が起こるおそれが著しく大きい場合に気象庁が発表する情報になります。
警報の発表基準をはるかに超える規模で起きるような甚大な被害が発生する恐れがあり、最大級の警戒をする必要がある場合に適用されることとなります。
特別警報が発表されるときは、経験したことのないような異常な現象が起きうる状況で、かつそれまでの数十年間災害の経験が無い地域でも災害の可能性が高まっている状況にあるのです。
この特別警報が発表された状態では避難行動を開始することによってかえって災害に巻き込まれる可能性もあります。今自分が置かれている状況を把握し、避難所への避難に限らず、最大限身の安全を守る行動を直ちに行うようにしましょう。


その後、今でいうキキクルの導入や避難情報の名称改善、早期警戒情報の開始などの改善が図られてきました。
また、今後防災気象情報及び避難情報を結びるけるカギとなる警戒レベルの運用が開始されることになるのです。


令和元年(2019年)5月29日、警戒レベル導入時の状況がこちらです。


とはいえ、相変わらず避難勧告と避難指示の違い、あるいは高齢者避難のタイミングが明確では無い、レベル5相当情報である災害発生情報は災害の発生を確認しないと発表できないなどという避難情報関連の不明確さが残っており、また、レベルの色付けに関しても敷網の方への配慮が不十分になっているなど、レベル運用面での課題もあったことから、さらに改善を行い今(令和8年(2026年)5月29日改正前)に至ります。


これが現在(令和8年(2026年)5月29日改正前)における状況を整理したものです。


内容としては2枚前のスライドで指摘されていた各問題点に対応する形であり、この状態でおおよそ4年程気象防災情報と避難情報が運用されてきたことになります。


これをまとめた公的資料が こちら になります。


令和8年改正の経緯




※持論を含みます……。


避難情報についてはここまででかなりわかりやすい方向へ改定を行ってきましたが、防災気象情報、いわゆる警報類についてはどうでしょう。


防災気象情報についてはいろいろとごちゃごちゃとしてしまい、結果的にややこしいさを感じる部分が残ってしまっていました。


「シンプルでわかりやすい防災気象情報の再構築」は、検討会の資料で出てきた言葉です。
これを目標に今回、防災気象情報の再構築が行われています。


令和8年改正後の内容




防災気象情報の改正後(令和8年(2026年)5月29日以降) の防災気象情報(警報類) 及び避難情報を整理したものです。


ほとんど同じ内容ですが、気象庁の資料が こちら になります。


令和8年改正前との変更点




これから、改正前との変更点を整理していきます。画像は 気象庁資料 から一部引用しています。


改正のポイント一つ目は、警報などの情報の前に「警戒レベル」がつくようになったことです。
後述しますが、この警戒レベルをしっかり覚えていれば、どのレベルの情報が来たときにどう行動すればいいのか、すぐに理解できるようになります。


改正のポイント二つ目は、大雨災害の警報類が整理されることです。
洪水予報の指定河川に関しては、河川氾濫の警報が洪水予報に一本化されることになり、気象警報類と同じ名称に統一されます。
レベル5相当の情報は氾濫発生情報から氾濫特別警報に改められます(後述)。


大雨災害の警報類の再編に関してまとめたものがこちらになります。
レベル3相当情報(各警報、氾濫警戒情報)を例にとると「大雨警報(土砂災害)」が「土砂災害警報」に、「大雨警報(浸水害)」は「大雨警報」に、先ほど説明した通り「氾濫警戒情報」は「氾濫警報」に、そして「洪水警報」は洪水予報の指定河川は「氾濫警戒情報」に統合、それ以外に関しては「大雨警報」に統合されることとなります。


先ほども軽く触れましたが、指定河川の洪水予報について、レベル5相当の情報は氾濫発生情報から氾濫特別警報に改められます。
これまでは氾濫が発生して初めてレベル5相当の情報である「氾濫発生情報」が出されていたのですが、新たな警戒レベル5相当情報として「氾濫特別警報」を設けることで、河川の氾濫が実際に発生する前に最大級の呼びかけが可能となっています。


改正のポイント三つめは、新たなレベル4相当情報である「危険警報」の新設です。
おおまかに警報と特別警報の間に出てくる情報として理解しておきましょう。
なお、「土砂災害危険警報」は実質的に「土砂災害警戒情報」から、「氾濫危険警報」は「氾濫危険情報」からそれぞれ名前を変えることで他に合わせる格好となります。
ちなみに、政府はレベル4までの全員避難を呼び掛けているため、避難の目安として危険警報を活用することができます。


改正のポイント四つめは、高潮関係の警報類が一斉に整理されることです。
高潮の警報類が警戒レベル、ようは危険度に応じた情報に整理されることになります。
これによって、高潮警報類の基準値が変更されますが、一部の海岸では波の打ち上げ高も加味したより精度の高い情報が開始されます。


その他の改正ですが、これまで「気象情報」として気象庁本庁や管区気象台、地域気象台などが発表していた各種情報を大きく「気象防災速報」及び「気象解説情報」の2種類に分類して提供を行います。
主に「防災気象速報」は緊急性が高い、突発的な気象情報*2などが、「気象解説情報」は継続的、あるいは今後の気象情報を解説する情報*3などが当てはまります。
※脚注内は ウェザーニュースさんの解説 より引用

なお、このスライド内で解説しきれなかった改正・改善については気象庁のPDFでご確認ください。(すべて このページ から閲覧できるPDFへの直リンクとなります。なお、多少専門的な内容も含みます)


令和8年改正前からの全体的な改善点




全体的な改善点としてはまず、レベルを用いた横並び、あるいは事象ごとの縦並びの関係が整理されて、情報の系統が非常にすっきりしました。
今までの防災気象情報で内容を理解していた人は少し慣れるまでに時間はかかりそうですが、逆にこれまで理解していなかった人は多少とっつきやすくなるかもしれません。


参考:気象庁PDF「新たな防災気象情報に関する説明資料(わかりやすい版)」1枚目
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/keiho-update2026/pdf/info2026_s_flyer.pdf


そして、全体的な改善点として大きいのはレベル4相当の情報を「危険警報」として整理することにより、警報類などの気象情報を目安として避難のタイミングがわかりやすくなるということです。
言い換えると、災害の発生が想定される地域にお住まいの方を中心に、「レベル4 危険警報」の発表を高齢者等を除く避難の目安として活用することができるようになります。
なお、高齢者等に関しては「レベル3 警報」が避難の目安となります。


参考:気象庁PDF「新たな防災気象情報に関する説明資料(わかりやすい版)」2枚目
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/keiho-update2026/pdf/info2026_s_flyer.pdf


また、その他の改善点ですが、土砂災害警報類の基準値が変更になることによって、急激ながけ崩れなどの危険性もある程度表現できるようになりました。
また、これまでの気象情報についても、緊急性があるのか、今後の備えの為の情報なのか、ということが一目で分かるようになります。


今後の課題・疑問点



以下、個人的な愚痴もかなり含まれます……。
あくまでも私Zey個人のの率直な感想なので、賛否両論あると思います。


行政側としては、主に体力の問題なのか、やる気やその自治体が定めた優先順位の問題なのか、防災に対する意識や体制、取り組み方にかなり差があると感じます。(スライド中の熱海市の例なんかは本当に言語道断レベルですが、多くの自治体に対して特にその差を感じるシーンを次のスライドとその次のスライドで提示します)
田舎の方は主に体力(財政・人員など) の問題ですが、首都圏や一部地方都市の都心部、その周辺市町村に対する人口偏重(人が一気に流入すること) で防災インフラの整備が追い付いていないといった問題もあります。
場合によっては国や都道府県のフォロー、あるいは気象防災アドバイザー制度の積極的な活用、さらには今後増加が見込まれる防災行政対応も見据えた更なる市町村合併が必要なのではないでしょうか。


あなたの住む自治体、このような避難情報の出し方になっていませんか?
※ここだけ「 いらすとや 」の画像素材を用いています。


少し掘り下げますが、避難情報の出し方に関しても自治体によって大きく異なります。
先ほどイラストで提示したように「何でもかんでも市町村内全域に避難指示を出す」ような市町村がまだまだたくさんあるのが実情です。
このような出し方を繰り返してしまうと、本来避難指示が必要でないような地域にまで避難指示を出してしまうことが常態化し、「無駄な避難」がそれだけ発生しやすくなります。
「無駄な避難」が繰り返されてしまうと、「今回も大丈夫なのでは」「避難指示が出たところで信用できない」といった空気が出来てしまい、本当にいざというときに避難しない人が増えていくという状況に陥る可能性があります。
こういう現象を「オオカミ少年効果」と言いますが、ただでさえ避難指示の段階でも警戒区域*4内でさえ災害が発生しないことも多いのに、警戒区域の外にまで避難指示を出してしまうと、そういった状況に陥りやすくなりますし、そういった状況が本当に危険な地域の住民にまでフィードバックされてしまい、「同調性バイアス*5」などによる更なる悪循環を生みだしてしまう可能性まであります。
このような状態をいまだ放置している自治体は数多くあるのが実情です。
また、長くなったため軽く流しますが、例えば「××市の土砂災害警戒区域」に対する避難指示という文面もよく見かけますが、これは土砂災害警戒区域にお住まいの方に、自分の家が土砂災害警戒区域に含まれることを周知出来て初めて効果を発揮する文言になります。
周知が出来ていた場合は問題ないのですが、周知できていなかった場合は避難対象者が自らが避難しなければならないのか理解できないということが起こりえます。


結局のところ、根本的な問題は過疎自治体の体力不足、人口急増自治体の防災インフラ不足が同時に発生しているという現状です。
(個人的には極端な首都圏や一部の地方都市への人口偏重は防災上からも好ましくないという考えではありますが、過疎化や過密化の防止というテーマは防災の話から大きくそれるので、ここでは控えさせていただきます)
その自治体に生きる人たちの命を守るということはその自治体の最重要項目の一つであるべきであり、このような状況が継続するのは好ましくありませんし、ましてややる気の問題などで後回しにしていることなどあってはならないはずです。
ひとつ前のスライドの話に関しては、避難指示の範囲についてマニュアル化を行うことである程度は済んでしまう話ですが、それすら行われていないということは、その程度の事すら国や都道府県から周知徹底が図れていないという事情も垣間見える次第です。


改めて考えてほしいのは、災害に対する生存権というのは住む場所に関わりなくすべての国民、市区町村民(外国人定住者含め) に対して等しく保証されるべき権利であり、自治体の都合で左右されるようなことはあってはならないはずなのです。
(違法滞在問題などいろいろありますが、それはひとまずここでは考えないでください)
そういった事態に直結しかねない問題なのに、国を含めた行政全体がこの現状を放置している(あるいはある程度是正しようと取り組んでいるとしても、効果が出ていない) というのも見過ごせない事実なのです。




話を変えて、次は気象庁側の問題に移ります。
確かに高潮関係の情報は整理されたといえますが、急に警報類の基準が変わることなどによって、現場では混乱が生じるのは間違いないでしょう。
関係される方々に対し、周知徹底が必要と言えそうです。


危険警報に関しても一つだけ言わせてください。
ぱっと見「危険警報」と「特別警報」どちらがより危ない状況なのか、字面で判断できるでしょうか?
レベルを頭に付与することで問題を最小化できたとは思いますが、細かいながら、こう言ったネーミングにも気を付けてほしいところです。


その警戒レベルについても課題が残ります。
数字で表現するというのは危険度をすぐに理解するための助けになることは間違いないことだと思われます。
ただし、8枚目のスライドで説明した通り、今後防災気象情報についてはレベルのみの運用を目指すとあります。
しかし、警戒レベルと避難情報をリンクさせるためにはそれ相応の防災情報教育が必要となるはずです。


ここまでくるともはや持論全開なのですが、警戒レベル自体ここ8年そこそこで出てきた概念であり、まだまだ一般に浸透しているといい難く、例えば子どもに対して教育を行うにしても家庭の場、教育の場、いずれもそれを明確に教えることができる人材はほとんどいません。
そこで、まず義務教育レベルで防災専門の講師(気象庁職員やそれこそ地域防災アドバイザー等) を招き、定期的な防災教育を行っていくことは必要でしょう。
その上で、義務教育を終えた人たちに対しても、高校、大学、企業、あるいは自治体、各種マスメディアなどなど、発信力を持つ人たちが連帯し、あらゆる手段を使って周知徹底を図るべきだと考えます。(最近だと自転車の罰則に関する厳罰化がありましたが……あちらも、何が違反なのか、一般に浸透しているとはいいがたいです)
自転車の罰則の件に関してもそうですが、今回の防災気象情報の根本的改革、言い換えれば「自分の命を守るための情報の改善」という本件についても、そもそも日本に住む大多数の人たちにそれほど興味を持たれていないということ自体が大問題だと考えています。
しかし、そこだけは全てを行政や政府のせいにしてはいけません。情報に触れる機会が少ない、という不満は私もありますが、自らの命を守るための行動や努力は、自分自身によって行われたものが一番自分に返ってくるものですし、逆もまたそうなのです。生きるための努力を行うことは、生きていく以上、常に必要なはずなのです。


脚注及び参考サイト










最後に




なにぶん安全管理は ある種の層には面白くもなく、子供の夢にも出てきませんし 大人が懐かしがることもない。
――株式会社石井マーク( @ishiimark_sign )
After all, safety management is something that certain groups find unpleasant; it’s not something children dream of doing when they grow up, nor is it something adults reminisce about fondly.(Translated by Zey)



最終更新:2026年05月18日 23:59
添付ファイル

*1 護岸工事や遊水池整備など災害対策関連の土木工事や、避難所の整備、自治体における非常用物資の備蓄など。

*2 線状降水帯をはじめとした具体的な極端現象が発生、または発生しつつあるという情報。

*3 現在及び今後の気象状況等を網羅的に伝える情報。

*4 ここでは災害対策基本法第63条を根拠として市町村長が非常時に設定する警戒区域ではなく、土砂災害警戒区域や浸水想定区域など、その災害における想定被害地域。ハザードマップで確認できる。

*5 簡単に言えば、周りと違う行動をとりづらくなる心理効果。例「私の知り合いはみんな避難指示が出ても避難していない。私だけ避難するのも馬鹿馬鹿しい」