WBGT

概要

WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度) または暑さ指数とは、熱中症を予防するために暑さの指標として1954年にアメリカで提案された指標である。単位は℃(度)。気温と同じくセルシウス度(摂氏度) で表されるが、気温とは違った値になる。
人体と外気との熱のやり取り(熱収支) に着目した値で、湿球温度、黒球温度、乾球温度の3つの値を使って計算している。

算出方法

概要の通り湿球温度(T_w)、黒球温度(T_g)、乾球温度(T_d)を使って求める。
湿球温度は普通の温度計の先端を湿ったガーゼでくるんだ湿球温度計を使って測定する。湿度が高ければ高いほど気温との差は小さくなる。逆に湿度が低いほど、水が多く蒸発していくため、気化熱で温度が奪われていくため、気温との差が大きくなる。
黒球温度は黒色に塗装された薄い銅板の球(中は空洞、直径約15cm)の中心に温度計を入れて観測する。 黒球の表面はほとんど反射しない塗料が塗られているので、日射が強ければ吸収するエネルギーが多くなり、温度は高くなる。暗闇の中であれば、気温とほぼ等しくなる。
乾球温度は普通の温度計でそのまま計った空気の温度であり、いわゆる気温である。

本来のWBGTはこの三つ(日射がない場合は二つ)の温度から算出する。

日射がある場合

WBGT[^\circ C]=0.7T_w + 0.2T_g + 0.1T_d

日射がない場合(屋内、および日照していない場合)

WBGT[^\circ C]=0.7T_w + 0.3T_g

乾湿計を使えば乾球温度と湿球温度の測定が可能である。
また、室内であれば黒球温度計の温度は乾球温度計の値とほぼ近似値であるため、このタイプの乾湿計があれば近似的にWBGTを求めることができる

黒球温度計は製品が見つけられなかったが、黒球単体の製品があったため、これを温度計に取り付けることで黒球温度を測定できる。

実際における計測方法

実際は室内においては気温と湿度の関係から求められることが多い。

屋外においても気温、湿度の他「全天日射量」や「平均風速」を使って実況推定値を求め、公開している。
その際の式を例示すると以下のようになる

0.735 * Ta + 0.0374 * RH + 0.00292 * Ta * RH + 7.619 * SR - 4.557 * SR^2 - 0.0572 * WS - 4.064

ここでTaは気温(℃)、RHは相対湿度(%)、SRは全天日射量(kW/m2)、WSは平均風速(m/s)である。
室内においては全天日射量と平均風速を無視できるため

0.735 * Ta + 0.0374 * RH + 0.00292 * Ta * RH - 4.064

とほぼこのような形で簡略化できる。
この式をもとに温度と湿度よりWBGTを求めた結果が下の図である。
あくまでも日射や発熱体がない室内における推定値によるため、使用の際は注意すること。

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また、一般的にはWBGTを測定するための商品がいくらか販売されている。

屋内用の一例

屋外用の一例

基本的に屋外用とした黒球式に関しては屋内でも使用はできるが、逆に屋内用は直接日射を考慮しないため、屋外では実際の値より低く出ることが多い。

指標としてのWBGT

環境省では暑さ指数としてWBGTを公表しており、WBGT値を次のように定義している。
また、WBGTが33度以上と予想される場合には、前日の17時と当日の5時に「熱中症警戒アラート」が気象庁と合同で発表される。熱中症警戒アラートが発表されたときはWBGTが最大で下記指針の「危険」数値を上回る値となるため、室内の温度を下げ、できるだけ外に出ないなどの具体的行動例が示され、熱中症に対する最大の警戒が呼び掛けられることとなる。

日常生活に関する指針
温度基準(WBGT[℃]) 注意すべき生活活動の目安 注意事項
危険(31以上) すべての生活活動でおこる危険性 高齢者においては安静状態でも熱中症などを発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。
厳重警戒(28~31)※1 すべての生活活動でおこる危険性 外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
警戒(25~28)※2 中等度以上の生活活動でおこる危険性 運動や激しい作業をする際は、定期的に充分に休息を取り入れる。
注意(25未満) 強い生活活動でおこる危険性 一般に危険性は少ないが、激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。
※1 28以上31未満、※2 25以上28未満を示す。

運動に関する指針
気温(参考) 暑さ指数(WBGT) 熱中症予防運動指針
35℃以上 31以上 運動は原則中止。特別の場合(※1)以外は運動を中止する。特に子どもの場合には中止すべき。
31~35℃ 28~31 厳重警戒(激しい運動は中止)。熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行う。暑さに弱い人(※2)は運動を軽減または中止。
28~31℃ 25~28 警戒(積極的に休憩)。熱中症の危険が増すので、積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分を補給する。激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。
24~28℃ 21~25 注意(積極的に水分補給)。熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。
24℃未満 21未満 ほぼ安全(適宜水分補給)。通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。
※1 特別の場合:医師・看護師・熱中症の対応について知識があり一次救命処置が実施できる者のいずれかを常駐させ、救護所の設置、及び救急搬送体制の対策を講じた場合に、涼しい屋内で運動する場合等のこと。
※2 暑さに弱い人:体力の低い人、肥満の人や暑さに慣れていない人など

出典

最終更新:2022年07月01日 22:26
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