SF百科図鑑
オクティヴィア・バトラー「夕べと夜と朝と」
最終更新:
匿名ユーザー
2001年
2/24
バトラー「夕べと朝と夜と」★★★★1/2
すばらしい作家だね。「血をわけた子供」「ことばのひびき」に比べるとややプロットが単純な分、評価を下げたが、それでもこのアイデアの見事さと描写のショッキングさは流石。人間性と文明の恥部に容赦なく分け入る冷徹な視線と、叙情的なほどに静謐な文体。特に、自己や他者への攻撃欲求に駆られる奇病というアイデアは、遺伝病や精神病に対する社会の視線、患者たちがそのような社会で生きて行く意味(病気に限らず、あらゆるマイノリティの物語として読むことができる)を、SF特有の拡張的に摘出して視覚化する手法によって見事に問いかけている。まだ短編3つを読んだだけだが、この3作だけでもこの作家がシリアスな方向性を持ったSF作家の中では最大の惑星であることを如実に立証している。
「我が愛しき娘たちよ」1000円で購入。でも買ったとたんになくなってたやつが見つかるか、再版されたりするんだよなあ。あと、大宮信光「SFの冒険」900円の格安で入手。いずれも(略)。あとは「ゼノサイド」だ。
今後の予定は、「バッファロー」と「銀河帝国2、3」「ファウンデーションの彼方」を読んだ後、「我が愛しき」、そして「ダウンビロウ」、これらと平行して「ザンジバル」でしょうな。その後、いよいよ待望の90年代。