勝ったとかじゃねえっつぅの俺。
毛利はうんざりした視線をよこす。
「ここまで女々しいとはな…チェスト島津とは大違いぞ。鬼の名が泣くというものよ」
「なんで鬼島津がでてくんだよ」
「同じ鬼の名を冠してるだろうが」
ふん、と鼻であざ笑われる。
なんか知らないが、色々とあったらしい。
「あー……久しぶりに島津と飲みてぇな、って今はあの南蛮宗教のトコか……」
結構あの爺ちゃん好きなんだけどなあ、あの城行くのはヤなんだよなあと空を仰いだ。
毛利も釣られたように空を見上げた。
北の地の冬の海は鉛の色をしていて重苦しい。
そのくせ北の地の空は澄んで淡く、見惚れるような色合いをしている。
南のとろりと暖かな色合いと違う、凍えるような、だが硬質な石のように美しい色だ。
「元親。我から奪った……頭巾はどこにある?」
「へ?」
ぼんやり見とれていると、毛利が静かに声をかけてきた。
「本願寺けんにょ君の坊主頭巾だ。我から奪い取っただろう」
「………あ、ああ……あれか、金色の」
毛利は空を見つめたままで、元親も空を見上げたまま、上の空で答えた。
「どうにも見つからぬ」
「探したのかよ」
「無論。そのためにこの船に乗り込んだのだ」
元親は眉をすこし上げて、自分の胸ほどもない小さな顔を窺い見た。
一心に空を見ていた。
淡い色の瞳に空の、浅くて薄くて凍えるような空の色が映りこんで、見惚れるように綺麗だった。
「これだけ探しても見いだせぬ以上、身につけているものかと思ったが……元親?」
空色の瞳がちらりと元親をとらえる。見つめていたことがばれたかな、と何となく鉛色の海に視線を逃がした。
「あれかあ。前田の裸男がすげー羨ましがったからやっちまった」
とたんに毛利の眉間に凶悪なしわが寄る。
「貴様……あやつではあっという間にぼろ布と化すだろうが!」
あんなアホっぽくて似合わなくても大切だったんだなあと思う。
そんなモンなのかもしれない。他人から見て、どんな似合わなくっても。
棄てた方が良さそうなもんでも、そんなもん関係なくて大切だったりする。
「悪いな。今度頼んで来る」
毛利は凶悪な眉間のしわを幾分緩め、じっと元親を見た。
元親は見返す気にもなれずに鉛の海を見ていた。
こんな色の海でも、波頭は白い。
「全く……どのようにすれば気が晴れるというのだ。元親、海の素晴らしさを我に説きながら、
貴様自身は海上で気落ちするか。鬱陶しい男よ」
あれえ、と元親は首をかしげた。
「もしかして俺慰められてんの?」
直球で聞くとあっさり頷かれた。
「他の何に聞こえる」
「いや、毎日罵倒されてんなあと」
「仕方あるまい。褒めるところが見つからぬ。元親、そこまで後悔するのであれば仕切り直すか?」
細い手がさしのべられる。
あれー、ともう一回反対側に首を傾ける。そう言えば好かれてたんだっけ、と。
どうも普段のそぶりにそんな感情を窺わせないので、冗談のような気もするのだが。
「体張って慰めるって、元就男らしすぎねえか?」
「貴様が女々しいのだ」
ひどい。
元親は立ち上がり、差し出された腕ごと毛利を抱きしめる。
あんまり力を入れないように。
「ダメだろ」
やっぱりひんやりした体だった。元親は宥めるように薄い背中をごく軽く叩いてやる。
「……何がだ」
毛利はうんざりした視線をよこす。
「ここまで女々しいとはな…チェスト島津とは大違いぞ。鬼の名が泣くというものよ」
「なんで鬼島津がでてくんだよ」
「同じ鬼の名を冠してるだろうが」
ふん、と鼻であざ笑われる。
なんか知らないが、色々とあったらしい。
「あー……久しぶりに島津と飲みてぇな、って今はあの南蛮宗教のトコか……」
結構あの爺ちゃん好きなんだけどなあ、あの城行くのはヤなんだよなあと空を仰いだ。
毛利も釣られたように空を見上げた。
北の地の冬の海は鉛の色をしていて重苦しい。
そのくせ北の地の空は澄んで淡く、見惚れるような色合いをしている。
南のとろりと暖かな色合いと違う、凍えるような、だが硬質な石のように美しい色だ。
「元親。我から奪った……頭巾はどこにある?」
「へ?」
ぼんやり見とれていると、毛利が静かに声をかけてきた。
「本願寺けんにょ君の坊主頭巾だ。我から奪い取っただろう」
「………あ、ああ……あれか、金色の」
毛利は空を見つめたままで、元親も空を見上げたまま、上の空で答えた。
「どうにも見つからぬ」
「探したのかよ」
「無論。そのためにこの船に乗り込んだのだ」
元親は眉をすこし上げて、自分の胸ほどもない小さな顔を窺い見た。
一心に空を見ていた。
淡い色の瞳に空の、浅くて薄くて凍えるような空の色が映りこんで、見惚れるように綺麗だった。
「これだけ探しても見いだせぬ以上、身につけているものかと思ったが……元親?」
空色の瞳がちらりと元親をとらえる。見つめていたことがばれたかな、と何となく鉛色の海に視線を逃がした。
「あれかあ。前田の裸男がすげー羨ましがったからやっちまった」
とたんに毛利の眉間に凶悪なしわが寄る。
「貴様……あやつではあっという間にぼろ布と化すだろうが!」
あんなアホっぽくて似合わなくても大切だったんだなあと思う。
そんなモンなのかもしれない。他人から見て、どんな似合わなくっても。
棄てた方が良さそうなもんでも、そんなもん関係なくて大切だったりする。
「悪いな。今度頼んで来る」
毛利は凶悪な眉間のしわを幾分緩め、じっと元親を見た。
元親は見返す気にもなれずに鉛の海を見ていた。
こんな色の海でも、波頭は白い。
「全く……どのようにすれば気が晴れるというのだ。元親、海の素晴らしさを我に説きながら、
貴様自身は海上で気落ちするか。鬱陶しい男よ」
あれえ、と元親は首をかしげた。
「もしかして俺慰められてんの?」
直球で聞くとあっさり頷かれた。
「他の何に聞こえる」
「いや、毎日罵倒されてんなあと」
「仕方あるまい。褒めるところが見つからぬ。元親、そこまで後悔するのであれば仕切り直すか?」
細い手がさしのべられる。
あれー、ともう一回反対側に首を傾ける。そう言えば好かれてたんだっけ、と。
どうも普段のそぶりにそんな感情を窺わせないので、冗談のような気もするのだが。
「体張って慰めるって、元就男らしすぎねえか?」
「貴様が女々しいのだ」
ひどい。
元親は立ち上がり、差し出された腕ごと毛利を抱きしめる。
あんまり力を入れないように。
「ダメだろ」
やっぱりひんやりした体だった。元親は宥めるように薄い背中をごく軽く叩いてやる。
「……何がだ」




