「……――――!!!」
あの時の、武田の若武者……主の好敵手でもある、真田幸村の言葉を思い出して、ひやり、と腹の底を冷やした。
『佐助が、偵察先から戻って来ぬのです』
いつもは真っ直ぐにこちらを見詰めて、明朗にはっきりと、見ていて気持ちの良い話し方をするこの青年が、
あの時は俯きながら、搾り出すような声で話していた。
あの時は俯きながら、搾り出すような声で話していた。
『三日は掛かると、申していたのです、けれど、今日で十日になり申すが、何の音沙汰もありませぬ』
見れば、固く握り締められた彼の拳は、震えていた。
――幸村の言葉を、小十郎は、頭から冷や水を被せられたような、まさにそんな心地で聞いていた。
――幸村の言葉を、小十郎は、頭から冷や水を被せられたような、まさにそんな心地で聞いていた。
長い事、会ってないだろう、と、ふと主君である政宗に言われたのだ。
それに小十郎は、いえ、時々あっちの方からこっそり訪ねて来るので、とそう答えたのだが、それが逆に政宗を怒らせた。
男が女を通わせるなんてCoolじゃねぇ、普通通うのは男の方だろうが。
などなど政宗の恋愛観を語られた挙句、少し暇をやるから甲斐のHoneyに会って来い、などと命ぜられたのである。
自分が居なくなれば政務が滞る事は目に見えていたので、勿論固辞したのだが、
何、俺一人でも少しの間なら何とかなる、と政宗は小十郎の言を聞き入れず、結局小十郎は甲斐へ来る事になってしまった。
の、だが。
女のくせに女らしくも、はたまたくのいちらしくもないあの忍の姿は、どこにもなく。
どうしたのかと幸村に話しを聞きに行ったら、
……これだ。
それに小十郎は、いえ、時々あっちの方からこっそり訪ねて来るので、とそう答えたのだが、それが逆に政宗を怒らせた。
男が女を通わせるなんてCoolじゃねぇ、普通通うのは男の方だろうが。
などなど政宗の恋愛観を語られた挙句、少し暇をやるから甲斐のHoneyに会って来い、などと命ぜられたのである。
自分が居なくなれば政務が滞る事は目に見えていたので、勿論固辞したのだが、
何、俺一人でも少しの間なら何とかなる、と政宗は小十郎の言を聞き入れず、結局小十郎は甲斐へ来る事になってしまった。
の、だが。
女のくせに女らしくも、はたまたくのいちらしくもないあの忍の姿は、どこにもなく。
どうしたのかと幸村に話しを聞きに行ったら、
……これだ。
即ち、佐助は偵察先で何かへまをして、囚われた、あるいは殺されたかもしれないと。
『どこに』
気付けば、口は勝手に問うていた。
『アイツはどこに……誰のところに忍んだ、真田』
幸村は、ぎり、と音がしそうなほどに奥歯を噛み締めていたが、やがて苦々しげに、告げた。
『大和の国、信貴山城の』
――――松永久秀。
聞いたその名に、吐き気すら覚えた。