元々あの女は片眼で光を見、片眼の中に闇を抱え込んでいた。
その闇を、増やすべきではなかったのかもしれない。
その闇を、増やすべきではなかったのかもしれない。
佐助は思うのだ。
何か、取り返しの付かないことをしでかしたのではないかと。ひどく気味の悪い生き物を産んだのではないかと。
何か、取り返しの付かないことをしでかしたのではないかと。ひどく気味の悪い生き物を産んだのではないかと。
ふ、と幸村が輿を気にした。
旦那、と呼び止める。あの中には異形がいる。見ちゃいけない。もう旦那が恋した女はこの世にいない。
呼んでいるのだ、と止める手を振り切り輿に向かう。衆目を浴びながらも無理に止める権限は、忍びにはない。
声が聞こえる。
旦那、と呼び止める。あの中には異形がいる。見ちゃいけない。もう旦那が恋した女はこの世にいない。
呼んでいるのだ、と止める手を振り切り輿に向かう。衆目を浴びながらも無理に止める権限は、忍びにはない。
声が聞こえる。
「幸村?」
甘く、饐えた毒が滲む声。
「……政宗」
車の御簾が上がる。
甘く、饐えた毒が滲む声。
「……政宗」
車の御簾が上がる。
ああ。
幸村の手に、輿の中からさしのべられた、禍々しいほど白い手が重なる。
行ってはいけない。見てはならない。
闇は見た物を引きずり込む。
幸村の手に、輿の中からさしのべられた、禍々しいほど白い手が重なる。
行ってはいけない。見てはならない。
闇は見た物を引きずり込む。
凍える風が山肌を駆け下りる。冬が来る。
佐助ED 深淵の目(EDリスト1/6)
上田城の虜/あとがき
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