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光秀×濃姫(不倫モノ)5

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 夜が明ける前に帰ります、と言った男は、濃姫の腹に撒き散らした体液を
きれいに拭って、彼女の着物をととのえた。男が来る前の状態にもどされていく己の姿を、
濃姫はぼんやり眺める。
「光秀」
「なんでしょう?」
 少しかすれた声で呼ぶ。すぐに返事は耳にとどいたが、光秀は濃姫と目をあわせずに
着物をととのえていた。ひょっとすると光秀は濃姫のほうに視線をやっていたのかも
しれないけれど、彼の髪の毛が邪魔して目元が見えなかった。光秀の長い髪の毛は、
このようなとき不便である。
「……なんでも、ないわ」
 出かかった言葉を呑みこんで、目を閉じた。その間も着物をととのえる音は聞こえていた。
「それでは帰蝶。私はこれで」
 しばらくすると音は止み、光秀の声が聞こえてきた。
「次の満月の夜、またお会いしましょう」
 濃姫が目を開けると、光秀はもう部屋から出ていた。彼の後姿はゆっくり闇に
入り込んでいって、ついには消えた。あまりに滑らかに消えていったものだから、
あの男の正体は霧や陽炎なのかも、などと濃姫は考えてしまった。
 次の満月が待ち遠しい、とも、ずっと来なければいいのに、とも思った。
相手はどう思っているのか知らないけれど、「また」と言っていた。
 胸が騒ぐ理由をわざと掘り下げず、濃姫は寝具にもぐりこんだ。考えないほうが
楽だという場合もある。もう童ではない彼女は、そう心得ている。

 次の満月の夜、ふたりは本能寺で対峙した。

おわり
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