「あ、政宗」
「──何?」
「──何?」
元親の言葉どおり、庭の門を抜けてこちらにやって来たのは、作務衣に
身を包んだ政宗だった。
小十郎に微笑みかけた政宗だったが、彼の隣にいる元親の姿を見つける
と、一瞬だけその顔から表情を消した。
身を包んだ政宗だった。
小十郎に微笑みかけた政宗だったが、彼の隣にいる元親の姿を見つける
と、一瞬だけその顔から表情を消した。
「……ふたりとも、どうしたんだ?」
「え?ああ、えーっと…そうだ、お前との稽古の後で、腹減ったから『片
倉さん』の野菜を分けて貰おうと思って。そしたら、分けてやる代わり
に手伝えって言われて…」
「……そっか…」
「それよりも政宗様、ご用意は出来たのですか?」
「…ああ。後は肝心の野菜を運んでもらうだけだ」
「用意って、何のだよ?」
興味津々で尋ねてくる元親の無邪気な表情に、政宗は、再び顔を綻ばせる。
「小十郎の畑から、結構な胡瓜と白菜が出来ただろ?漬物にしようと
思ってな」
「漬物!?」
「そうだ。元親、お前漬物好きか?」
「大好きだ!」
「そりゃ良かった。今回は浅漬けにするから、すぐに食べられるぞ?」
「やった!楽しみ!」
「……はしゃいでないで、テメェも手伝え。どうせ出来上がったら、そ
のムダにデカい図体で、人一倍食うんだろうが」
「え?ああ、えーっと…そうだ、お前との稽古の後で、腹減ったから『片
倉さん』の野菜を分けて貰おうと思って。そしたら、分けてやる代わり
に手伝えって言われて…」
「……そっか…」
「それよりも政宗様、ご用意は出来たのですか?」
「…ああ。後は肝心の野菜を運んでもらうだけだ」
「用意って、何のだよ?」
興味津々で尋ねてくる元親の無邪気な表情に、政宗は、再び顔を綻ばせる。
「小十郎の畑から、結構な胡瓜と白菜が出来ただろ?漬物にしようと
思ってな」
「漬物!?」
「そうだ。元親、お前漬物好きか?」
「大好きだ!」
「そりゃ良かった。今回は浅漬けにするから、すぐに食べられるぞ?」
「やった!楽しみ!」
「……はしゃいでないで、テメェも手伝え。どうせ出来上がったら、そ
のムダにデカい図体で、人一倍食うんだろうが」
元親につられてニッコリと笑っている政宗に、もう少しで見とれそうに
なっていた小十郎は、慌てて我に返ると、元親に野菜の入ったカゴを押
し付けた。
「…小十郎。白菜はともかく、胡瓜ってもっと量なかったか?」
「え!?そ、それは……」
「それが意外と、虫食いも多かったもので。こいつにやった数本を含め
ても、そんなものですよ」
「……」
涼しい顔で政宗に答える小十郎を、元親はまじまじと見つめる。
ひょっとして、今この男は、自分の事を庇ってくれたのだろうか。
なっていた小十郎は、慌てて我に返ると、元親に野菜の入ったカゴを押
し付けた。
「…小十郎。白菜はともかく、胡瓜ってもっと量なかったか?」
「え!?そ、それは……」
「それが意外と、虫食いも多かったもので。こいつにやった数本を含め
ても、そんなものですよ」
「……」
涼しい顔で政宗に答える小十郎を、元親はまじまじと見つめる。
ひょっとして、今この男は、自分の事を庇ってくれたのだろうか。
「おら、ブス。よそ見してねぇで、ちゃんと運べ。野菜にキズが付いち
まったら、政宗様の漬物が台無しになる」
まったら、政宗様の漬物が台無しになる」
──前言撤回。
ギリギリと歯を鳴らせながら、元親はカゴいっぱいに詰め込まれた野菜
を、ふらつきながらも背負い続ける。
「大丈夫か、元親?半分貸せ。俺も持つから」
「政宗様は、お支度をお願い致します。あまりこのブ…こやつを甘やか
さぬよう」
「だけど…」
「貴方に、このような野良仕事はさせられません。どうぞ、小十郎たち
にお任せ下さい」
「政宗ならともかく、俺はテメェにここまでされる謂れはねぇぞ!?」
「黙れドブス。……バラされてぇのか?」
「……くっそおぉぉ~~!」
「あ、コラ!もっと慎重に運ばねぇか!」
ギリギリと歯を鳴らせながら、元親はカゴいっぱいに詰め込まれた野菜
を、ふらつきながらも背負い続ける。
「大丈夫か、元親?半分貸せ。俺も持つから」
「政宗様は、お支度をお願い致します。あまりこのブ…こやつを甘やか
さぬよう」
「だけど…」
「貴方に、このような野良仕事はさせられません。どうぞ、小十郎たち
にお任せ下さい」
「政宗ならともかく、俺はテメェにここまでされる謂れはねぇぞ!?」
「黙れドブス。……バラされてぇのか?」
「……くっそおぉぉ~~!」
「あ、コラ!もっと慎重に運ばねぇか!」
ヤケクソ気味に野菜を担いで、早足に去っていった元親を、農具の束を
抱えた小十郎が、追いかける。
抱えた小十郎が、追いかける。
そんなふたりの背を見送りながら、ひとり残された政宗は、理不尽な感
情に、唇を噛み締めていた。
情に、唇を噛み締めていた。




