「俺もヤキが回ったぜ。ふたりの……ひとりの女性とブス一匹、満足に扱え
ないなんてな」
政宗と元親の泣き顔を思い出した小十郎は、自嘲気味に呟いた。
ないなんてな」
政宗と元親の泣き顔を思い出した小十郎は、自嘲気味に呟いた。
その時、
「ハァッ!」
聞き覚えのある掛け声と馬の嘶きが、小十郎の背後から迫って来た。
僅かに顔を動かして後ろを見ると、政宗が愛馬にムチを入れながら、成実や
その他伊達の精鋭を引き連れ、自分の横へと並んで来たのだ。
「政宗様…」
「遅くなってすまねぇ、小十郎。行くぞ!」
「…はっ!」
若干、隻眼が赤く腫れていたが、奥州筆頭としての表情に戻った政宗を、小
十郎は誇らしげに見やると、自分もまた馬にムチを入れ、上体を僅かに前傾
させた。
僅かに顔を動かして後ろを見ると、政宗が愛馬にムチを入れながら、成実や
その他伊達の精鋭を引き連れ、自分の横へと並んで来たのだ。
「政宗様…」
「遅くなってすまねぇ、小十郎。行くぞ!」
「…はっ!」
若干、隻眼が赤く腫れていたが、奥州筆頭としての表情に戻った政宗を、小
十郎は誇らしげに見やると、自分もまた馬にムチを入れ、上体を僅かに前傾
させた。
「相手間違えんなよ、バカが」
水月(鳩尾)に拳を叩き込んで黙らせた元親は、そのまま悶絶している悪漢
を蹴り飛ばした。
地に引っくり返る部下に目もくれず、山賊の首領は、異形の大女を、全身舐
め回すように凝視していた。
水月(鳩尾)に拳を叩き込んで黙らせた元親は、そのまま悶絶している悪漢
を蹴り飛ばした。
地に引っくり返る部下に目もくれず、山賊の首領は、異形の大女を、全身舐
め回すように凝視していた。
あの時。
異常な気配を感じ取った元親は、軍勢にしては貧相な、だが野盗としては充
分な規模の悪漢たちと対峙した。
胸や腰回りなど、急所をはじめ大切な箇所はガードしているものの、それで
も通常より露出の多い服装をしている元親の姿を認めるや否や、山賊たちは
欲望もむき出しに襲い掛かって来たのだ。
しかし、そこは伊達に『鬼』の名を持つ元親ではない。
日頃溜まっていた鬱積を晴らす意味も含めて、襲撃して来た者全員を、瞬殺
とも呼べる勢いで叩きのめしたのである。
異常な気配を感じ取った元親は、軍勢にしては貧相な、だが野盗としては充
分な規模の悪漢たちと対峙した。
胸や腰回りなど、急所をはじめ大切な箇所はガードしているものの、それで
も通常より露出の多い服装をしている元親の姿を認めるや否や、山賊たちは
欲望もむき出しに襲い掛かって来たのだ。
しかし、そこは伊達に『鬼』の名を持つ元親ではない。
日頃溜まっていた鬱積を晴らす意味も含めて、襲撃して来た者全員を、瞬殺
とも呼べる勢いで叩きのめしたのである。
「やっぱ俺、戦いってヤツが好きだわ」
鍛錬以外では、久々に手にした武器の感触を心地良く覚えながら、元親は瞳
を輝かせた。
しかし、戦場とは勝手が違うとはいえ、流石にたったひとりでこれだけの人
数を相手にするのは、骨が折れる。
すると、まるでそれを見透かしていたかのように、それまで後ろに控えてい
た首領の男は、鎖の先端に大振りな鉄球をつけた武器を手に、元親に歩み寄
ってきた。
を輝かせた。
しかし、戦場とは勝手が違うとはいえ、流石にたったひとりでこれだけの人
数を相手にするのは、骨が折れる。
すると、まるでそれを見透かしていたかのように、それまで後ろに控えてい
た首領の男は、鎖の先端に大振りな鉄球をつけた武器を手に、元親に歩み寄
ってきた。
「ここいら辺じゃ見かけねぇ顔だな、おネェちゃん。何モンだ?」
「貴様らに、名乗る名前はない!……なんて、言ってみるか?」
「何でぇそりゃ」
「さあな。……取りあえず『若年層完璧置いてけ堀』なのだけは、確かなよ
うだぜ」
「貴様らに、名乗る名前はない!……なんて、言ってみるか?」
「何でぇそりゃ」
「さあな。……取りあえず『若年層完璧置いてけ堀』なのだけは、確かなよ
うだぜ」
碇槍を担ぎ直しながら、元親は乱れ始めた呼吸を悟られまい、と努めて平淡
に返した。
に返した。




