「──元親!」
「ぁ…」
ぼやけた元親の視界には、自分を囲むように見下ろしている者達の姿が映し
出されていた。
隻眼を涙で濡らせている政宗と、まるで思いつめたような表情で自分を見つ
めているのは。
「政宗…どうして……」
「元親!良かった…良かった……!」
先程とは違う涙で顔をクシャクシャにしながら、政宗は元親に抱きついた。
未だ状況を飲み込めていない元親は、無意識に政宗の身体を抱き返しなが
ら、今では、自分から完全に背を向けている小十郎を一瞥する。
「あの…」
「……あまり政宗様に、心配をかけるな」
「……」
小十郎の科白に、元親は表情を曇らせると、やがて静かに政宗の身体を離した。
「元親…?」
いつになく真剣な面持ちの元親を見て、政宗は首を傾げる。
「ぁ…」
ぼやけた元親の視界には、自分を囲むように見下ろしている者達の姿が映し
出されていた。
隻眼を涙で濡らせている政宗と、まるで思いつめたような表情で自分を見つ
めているのは。
「政宗…どうして……」
「元親!良かった…良かった……!」
先程とは違う涙で顔をクシャクシャにしながら、政宗は元親に抱きついた。
未だ状況を飲み込めていない元親は、無意識に政宗の身体を抱き返しなが
ら、今では、自分から完全に背を向けている小十郎を一瞥する。
「あの…」
「……あまり政宗様に、心配をかけるな」
「……」
小十郎の科白に、元親は表情を曇らせると、やがて静かに政宗の身体を離した。
「元親…?」
いつになく真剣な面持ちの元親を見て、政宗は首を傾げる。
「……ゴメン」
「え…?」
「俺…お前から役目を貰ってたのに、何一つ満足にこなせなかった……」
「え…?」
「俺…お前から役目を貰ってたのに、何一つ満足にこなせなかった……」
それどころか、武将でも兵士でもないならず者達と一戦交えた後で、情けな
くも倒れてしまったのだ。
きっと政宗は、帰りの遅い自分を心配して、迎えに来てくれたのだろう。
そう考えた元親は、自分の不甲斐なさにきゅ、と唇を噛み締めた。
くも倒れてしまったのだ。
きっと政宗は、帰りの遅い自分を心配して、迎えに来てくれたのだろう。
そう考えた元親は、自分の不甲斐なさにきゅ、と唇を噛み締めた。
「俺、何とか頑張りたかったけど…お前の役に立ちたいって思ってたけど…や
っぱ、ダメだ。俺……お前に客将だなんて呼ばれる資格ねぇ。もうこれ以上、
お前に迷惑かけらんねぇ。だから……」
「な…元親!?それは違…!」
っぱ、ダメだ。俺……お前に客将だなんて呼ばれる資格ねぇ。もうこれ以上、
お前に迷惑かけらんねぇ。だから……」
「な…元親!?それは違…!」
謝るのはむしろ自分の方で、元親は何も悪くない。
しかし、憔悴しきった元親の顔に、政宗は胸が締め付けられて、何も言えなく
なってしまった。
「ゴメン、政宗…本当にゴメン……」
「元親…」
「もう…俺…四国に……」
すっかり意気消沈してしまっている元親が、最後の言葉を告げようとした刹
那。
しかし、憔悴しきった元親の顔に、政宗は胸が締め付けられて、何も言えなく
なってしまった。
「ゴメン、政宗…本当にゴメン……」
「元親…」
「もう…俺…四国に……」
すっかり意気消沈してしまっている元親が、最後の言葉を告げようとした刹
那。
「待ってくれ、筆頭!」
人ごみを掻き分けながら、数人の精鋭が、物凄い勢いで政宗達の前に跪いて
来た。
それが朝、元親の視察に同行させた者達だと判ると、政宗は彼らへと視線を
移す。
「悪いのは俺達なんです!本当は、俺達がその人を、わざと独りにさせちま
ったんです!」
「何…?テメェら、やっぱり……!」
「…勿論、処分は覚悟の上です。腹を切れと言われれば、その通りにします」
「だけど…どうか、どうかその人だけは……!」
「ぇ…?」
額を地に擦り付けながら懇願してくる精鋭たちに、思わず元親も顔を上げる。
「今までごめんよ…アンタが何も言わないの良い事に、俺達…さんざん酷
ぇ事してきちまった」
「今日だって、心細そうにしてたアンタを、俺らのつまんねぇ意地から、置き
去りにするような真似……」
「アンタは、筆頭を…奥州を賊から守る為に、戦ってくれたっていうのに……」
来た。
それが朝、元親の視察に同行させた者達だと判ると、政宗は彼らへと視線を
移す。
「悪いのは俺達なんです!本当は、俺達がその人を、わざと独りにさせちま
ったんです!」
「何…?テメェら、やっぱり……!」
「…勿論、処分は覚悟の上です。腹を切れと言われれば、その通りにします」
「だけど…どうか、どうかその人だけは……!」
「ぇ…?」
額を地に擦り付けながら懇願してくる精鋭たちに、思わず元親も顔を上げる。
「今までごめんよ…アンタが何も言わないの良い事に、俺達…さんざん酷
ぇ事してきちまった」
「今日だって、心細そうにしてたアンタを、俺らのつまんねぇ意地から、置き
去りにするような真似……」
「アンタは、筆頭を…奥州を賊から守る為に、戦ってくれたっていうのに……」
その内に、彼らだけでなく周囲からも、元親を、このまま奥州に留まらせて欲
しい旨を告げる精鋭達の声が、辺り一帯に響き渡った。
困惑気味に彼らを見渡している元親と、無意識に口元を綻ばせている政宗の前
に、小十郎が近付いてくる。
しい旨を告げる精鋭達の声が、辺り一帯に響き渡った。
困惑気味に彼らを見渡している元親と、無意識に口元を綻ばせている政宗の前
に、小十郎が近付いてくる。
「…此度の件に関しては、コイツの、奥州一帯の地形に対する認識力を把握し
ないまま、政宗様に何も進言せずにいた小十郎にも、責任がございます。どう
か、寛大な御処置を」
ないまま、政宗様に何も進言せずにいた小十郎にも、責任がございます。どう
か、寛大な御処置を」
真相はともかく、周囲の手前もあってか、あえてそのような物言いをする小十郎
に、政宗は頷くと、元親に向き直りながら彼女の手を取った。
に、政宗は頷くと、元親に向き直りながら彼女の手を取った。




