長曾我部元親が尻に火傷を負って三日が立っている。
あの日あれから毛利元就は明智光秀に長曾我部元親を休ませるように提案した。
火傷のことは、生意気なことを言ったので仕置きをしたと伝えてある。
明智光秀はそれを聞きながらくすくすと笑っていた。
何故笑うのかを元就が問いただせば、
光秀は、「あなたが可愛らしいからですよ」と、微笑んで、
元就の顎に手をかけてその唇に口付けた。
口の中に舌が割り込んできても、さして何を思うわけでもない。
それが三日前のことだった。
牢の扉は開けてある。
昔、銀色はそうやってそこから逃げおおせたが、
火傷を負った上に縛られている今の元親は、一人では逃げることはできないだろう。
開いた扉から兵達がかわるがわるやってくる。
許し無く彼女に触れることを禁じてはいたものの、
目を盗んで穴をくぐりたがるならずものというのはどこにでもいるものだった。
今日も長曾我部元親には白濁した体液が注がれているのだろう。
ひょっとしたら、今まさにこの時も。
あの日あれから毛利元就は明智光秀に長曾我部元親を休ませるように提案した。
火傷のことは、生意気なことを言ったので仕置きをしたと伝えてある。
明智光秀はそれを聞きながらくすくすと笑っていた。
何故笑うのかを元就が問いただせば、
光秀は、「あなたが可愛らしいからですよ」と、微笑んで、
元就の顎に手をかけてその唇に口付けた。
口の中に舌が割り込んできても、さして何を思うわけでもない。
それが三日前のことだった。
牢の扉は開けてある。
昔、銀色はそうやってそこから逃げおおせたが、
火傷を負った上に縛られている今の元親は、一人では逃げることはできないだろう。
開いた扉から兵達がかわるがわるやってくる。
許し無く彼女に触れることを禁じてはいたものの、
目を盗んで穴をくぐりたがるならずものというのはどこにでもいるものだった。
今日も長曾我部元親には白濁した体液が注がれているのだろう。
ひょっとしたら、今まさにこの時も。
呑気なものだ、と、毛利元就は思う。
大手門の方から悲鳴と怒号が聞こえてくる。
敵襲だ。
相手は誰だか分かっている。
敵襲だ。
相手は誰だか分かっている。
光秀は天守閣の屋根の上にいた。
元就は彼女の隣にいた。
山崎で負けた日から、そこが毛利元就の定位置だった。
元就は彼女の隣にいた。
山崎で負けた日から、そこが毛利元就の定位置だった。
「戦ですよ」
相変わらず、くすくすと笑いながら光秀は歌うように言った。
「ああ…いい…この血の香り、苦しみの声、素晴らしい」
「慌てぬのか」
「何故です?」
「奇襲ぞ」
「いずれこうなることはわかっていました。
奥州の独眼竜、それにしても思ったよりも随分早い。
陸路では考えられません。
おかしな話です。
長曾我部の船は全て押さえていたというのに…
誰が手引きしたのでしょうかねえ」
奥州の独眼竜、それにしても思ったよりも随分早い。
陸路では考えられません。
おかしな話です。
長曾我部の船は全て押さえていたというのに…
誰が手引きしたのでしょうかねえ」
そう言って光秀は、元就を覗き込んで、またくすくすと笑った。
「長曾我部の船は奥州には向かっておらぬ」
「いつまでとぼけるつもりですか?
船を持っているのは長曾我部だけではないでしょう」
船を持っているのは長曾我部だけではないでしょう」
「何が言いたい」
「あなたが謀反をはたらいたと、言いたいのですよ。
毛利の船でここまで伊達を運んだでしょう。
かわいい人だ。
私が気付いてないとでも思っていたのですか?
…さあ、そこをどいて下さい。私は宴に行かなくては」
毛利の船でここまで伊達を運んだでしょう。
かわいい人だ。
私が気付いてないとでも思っていたのですか?
…さあ、そこをどいて下さい。私は宴に行かなくては」
風が吹いた。
それは光秀の髪をたなびかせた。
美しい、と、毛利元就は思った。
それは光秀の髪をたなびかせた。
美しい、と、毛利元就は思った。
「どいて下さい、と、言っているのです。殺しますよ」
ああ、美しい。
あんなにも美しくきらめいている。
あんなにも美しくきらめいている。
しかしこのような美しいものを見ても特に心が昂ぶることもなくなってしまったのだ。
もう、すっかり麻痺してしまった。
この銀色を初めて美しいと思った時がいつだったかも忘れている。
もう、すっかり麻痺してしまった。
この銀色を初めて美しいと思った時がいつだったかも忘れている。
「このあたりでそろそろ終わりとせぬか、明智光秀。
もう、よいであろう。
我の命は天王山で敗北した時よりそなたのもの、そなたの望むものを与えてやろう」
もう、よいであろう。
我の命は天王山で敗北した時よりそなたのもの、そなたの望むものを与えてやろう」
元就は輪刀を構えた。
「私の望むもの?」
「死を」
明智光秀は、きょとんと、元就を見つめ、それからくすくすと笑い、それは哄笑に変わった。
「ああ、やはりあなたはわかっている。
流石私の見込んだ方だ。
しかしまだ私は死ぬ訳にはいかないのです。
足りないのですよ。
死も、悲鳴も、血も、なにもかも、私はまだ満足していません。
そこをどいて下さい」
流石私の見込んだ方だ。
しかしまだ私は死ぬ訳にはいかないのです。
足りないのですよ。
死も、悲鳴も、血も、なにもかも、私はまだ満足していません。
そこをどいて下さい」
光秀は大鎌を抜いた。




