「あっぱれじゃ」
なにが天晴れなのか、突然現れたこやつは先ほどから我の前で踊り狂っている。
「ほれ、毛利の、風流でおじゃろ?」
細腰を見せつけるかのように間近に迫ってきて、顔面に塗りたくった白粉の香が鼻を掠める。
「我は舞などに興味ない」
「何じゃ、そなたは麿の高貴なお尻に興味があるおじゃ?」
「……下劣な!」これが女子とは頭が痛くなるような物言いに、語尾を荒げる。
「冗談の通じぬ男よの。興が冷めたおじゃ」
「興など端からないわ」「ひ、ひどいでおじゃる……」
「何じゃ、そなたは麿の高貴なお尻に興味があるおじゃ?」
「……下劣な!」これが女子とは頭が痛くなるような物言いに、語尾を荒げる。
「冗談の通じぬ男よの。興が冷めたおじゃ」
「興など端からないわ」「ひ、ひどいでおじゃる……」
扇で顔を隠してよよよ、と崩れるように横座りをする姿に頭が痛くなってくる。
露出の少ない装いの中、ちらりとのぞく項は艶っぽいと言えなくもない。
露出の少ない装いの中、ちらりとのぞく項は艶っぽいと言えなくもない。
「……貴様、中国くんだりまできたのは何用ぞ」
最初に聞くべきであった。 物見遊山で訪ねるような地じゃない。
「麿に逢いたいかと思ってのう!」
扇を口元にあて、先ほどまでの嘆きが嘘のようにしゃあしゃあとぬかす。
何故我がこやつに逢いたいと思わねばならぬのか。あまりの返答に言葉を返せない。
先の戦で、我は桶狭間にて今川義元を破った。今川と格好以外は似ても似つかぬ、影武者と言うにもおこがましい者どもで溢れかえっていた。
当然、我の勝利に終わった。敗者に再び会う必要がどこにある。
何故我がこやつに逢いたいと思わねばならぬのか。あまりの返答に言葉を返せない。
先の戦で、我は桶狭間にて今川義元を破った。今川と格好以外は似ても似つかぬ、影武者と言うにもおこがましい者どもで溢れかえっていた。
当然、我の勝利に終わった。敗者に再び会う必要がどこにある。
「麿を一目で本物と見破ったのはそなただけぞよ。そのように一途に想われるのに、悪い気はしないおじゃ」
あれを見破れない者がどこにいるのか教えてほしい。それよりも……
「誰が、いつ、誰を想ったというのだ!」
「斯様に素直でないところもまた女心を擽るものよのう」
「斯様に素直でないところもまた女心を擽るものよのう」
我に腕を絡ませてきた。白粉が更にきつく香ってくる。振り払おうとするが、より強い力でしがみついて離れない。
意外にも豊かな胸の感触を腕に感じる。
意外にも豊かな胸の感触を腕に感じる。
「照れずともよいでおじゃる。麿は分かっているぞよ」
「は、離せ……!」
「そなたは麿しか目に入っていない様子。それほどなら、嫁になってやらんでもないでおじゃる……」
「は、離せ……!」
「そなたは麿しか目に入っていない様子。それほどなら、嫁になってやらんでもないでおじゃる……」
そう言って潤んだ目で見つめてきたとき、こやつが一生つきまとうつもりなのを悟った。
け、計算してないぞ……!
け、計算してないぞ……!