ぺちぺちと頬をたたく冷たい感触に、家康ははっと目を開いた。
うっすらと夜明けの色に染まり始めた空を背に、忠勝が覗き込んでいる。
心配そうな目の色に、どうかしたかと呟きかけたところで記憶が蘇った。
「うわああ!」
妙に冷たい股間を気にしながら慌てて跳ね起きるが、半裸の幸村も、小憎たらしい忍びの姿も
すでにない。
ただ黎明の荒野に、冷えた風が吹き抜けるばかりだ。
「不覚!気を失うてしまったのか!なに忠勝、お前もか!?……いや、いい。あれはその、
ものすごかったからな」
最後の最後に幸村が、ものすごい叫びを上げたところまでは覚えている。だがその先は
まったくわからない。おそらく許容を超えた刺激と想像を絶する光景に、脳の回路が
急停止してしまったのだろう。
いま思えば、これこそがあの忍びの作戦だったのだ。
あの後、気を失った自分達を置いて、幸村をつれてまんまと逃げたのだろう。
忍びごときに騙されるとは、と臍をかむ。
しかもどれほど見回しても、武器が見つからない。先ほど霧中になってどこかへ投げてしまった
はずだが、もしやあれもとられてしまったのか。
何ということだ、武将が己の得物を無くすとは。
がっくりと荒野に膝をつき、うなだれる主の肩に、忠勝の武骨な手がそっと触れた。
ぐっと息を呑み、家康は涙に濡れた目で忠臣を見上げた。
「忠勝……わしは負けた。お前のおかげで戦には勝った。だがわしは負けたのだ、あの忍びに。
いやあの……巨乳に!」
家康のふっくらした頬の上を、はらはらと大粒の涙が流れていく。
うなだれる主従の上を、風が無常なまでの冷たさで流れていった。
うっすらと夜明けの色に染まり始めた空を背に、忠勝が覗き込んでいる。
心配そうな目の色に、どうかしたかと呟きかけたところで記憶が蘇った。
「うわああ!」
妙に冷たい股間を気にしながら慌てて跳ね起きるが、半裸の幸村も、小憎たらしい忍びの姿も
すでにない。
ただ黎明の荒野に、冷えた風が吹き抜けるばかりだ。
「不覚!気を失うてしまったのか!なに忠勝、お前もか!?……いや、いい。あれはその、
ものすごかったからな」
最後の最後に幸村が、ものすごい叫びを上げたところまでは覚えている。だがその先は
まったくわからない。おそらく許容を超えた刺激と想像を絶する光景に、脳の回路が
急停止してしまったのだろう。
いま思えば、これこそがあの忍びの作戦だったのだ。
あの後、気を失った自分達を置いて、幸村をつれてまんまと逃げたのだろう。
忍びごときに騙されるとは、と臍をかむ。
しかもどれほど見回しても、武器が見つからない。先ほど霧中になってどこかへ投げてしまった
はずだが、もしやあれもとられてしまったのか。
何ということだ、武将が己の得物を無くすとは。
がっくりと荒野に膝をつき、うなだれる主の肩に、忠勝の武骨な手がそっと触れた。
ぐっと息を呑み、家康は涙に濡れた目で忠臣を見上げた。
「忠勝……わしは負けた。お前のおかげで戦には勝った。だがわしは負けたのだ、あの忍びに。
いやあの……巨乳に!」
家康のふっくらした頬の上を、はらはらと大粒の涙が流れていく。
うなだれる主従の上を、風が無常なまでの冷たさで流れていった。
「何を泣く、三河の将よ!」
暁の風を逆に押しやるほどの大声が、未明の荒野に響き渡った。
ぎくっと顔を上げた家康の前に、忠勝がすばやく立ち上がる。
得物を構え、油断なく睨むその眼前、なだらかに広がる小高い丘の上に、一軍が姿を現した。
見紛うはずもない赤揃え。武田の軍にちがいない。
その先頭で周囲を睥睨しているのは、構えた巨大軍配を見ずとも、その身に纏った気だけでわかる、
武田信玄その人だ。
戦国最強の名のままに、勇将大軍ものともせずに立つ忠勝の足元で、家康も涙を拭うと
その一団を睨みつけた。
「なに用じゃ信玄公!負けたわしを笑いにきたのか!」
「これは異なことを!この戦、負けは武田と聞いたが?勝負は時の運、そういうこともあろうがな」
「戦ではないわ。わしはおなごとして、貴様のところのあの巨乳に、負けたのだ!」
震える声で言い捨て、ぐっと涙を耐える主をかばうように、忠勝が一歩前へ踏み出した。
眉を寄せてそんな二人を、特に家康の、鎧に隠れた胸元を見つめると、信玄はうむ、とうなずいた。
大きく一歩踏み出し、自分より丈高い忠勝をも恐れなく見返すと、信玄はまた一つ、大きく
うむ!とうなずいた。
暁の風を逆に押しやるほどの大声が、未明の荒野に響き渡った。
ぎくっと顔を上げた家康の前に、忠勝がすばやく立ち上がる。
得物を構え、油断なく睨むその眼前、なだらかに広がる小高い丘の上に、一軍が姿を現した。
見紛うはずもない赤揃え。武田の軍にちがいない。
その先頭で周囲を睥睨しているのは、構えた巨大軍配を見ずとも、その身に纏った気だけでわかる、
武田信玄その人だ。
戦国最強の名のままに、勇将大軍ものともせずに立つ忠勝の足元で、家康も涙を拭うと
その一団を睨みつけた。
「なに用じゃ信玄公!負けたわしを笑いにきたのか!」
「これは異なことを!この戦、負けは武田と聞いたが?勝負は時の運、そういうこともあろうがな」
「戦ではないわ。わしはおなごとして、貴様のところのあの巨乳に、負けたのだ!」
震える声で言い捨て、ぐっと涙を耐える主をかばうように、忠勝が一歩前へ踏み出した。
眉を寄せてそんな二人を、特に家康の、鎧に隠れた胸元を見つめると、信玄はうむ、とうなずいた。
大きく一歩踏み出し、自分より丈高い忠勝をも恐れなく見返すと、信玄はまた一つ、大きく
うむ!とうなずいた。
「ようわからんが、ようわかった!」
「適当抜かすな!家臣が家臣なら主も主じゃ!」
「聞けい三河の。確かに細かいことはわしは知らぬ。だがお主はいま、おなごとして巨乳に負けた、
といった。しかしそれは間違いよ」
突然の信玄の言葉に、家康はぽかんとその顔を見返した。忠勝も槍を構えながら、胡乱な目で
見返す。
父親のような目で二人を見つめ、信玄は手に持った巨大軍配をずんと地面に突き刺した。
「よいか。乳がでかい、小さい、それがなんじゃ。そんなことに迷う、それこそが小さきことよ」
皆も聞けい!と大音声、明け染めし雲の紫を貫き、天へと響くその声に、武田の軍中から応!と
揃えた声が上がった。
「適当抜かすな!家臣が家臣なら主も主じゃ!」
「聞けい三河の。確かに細かいことはわしは知らぬ。だがお主はいま、おなごとして巨乳に負けた、
といった。しかしそれは間違いよ」
突然の信玄の言葉に、家康はぽかんとその顔を見返した。忠勝も槍を構えながら、胡乱な目で
見返す。
父親のような目で二人を見つめ、信玄は手に持った巨大軍配をずんと地面に突き刺した。
「よいか。乳がでかい、小さい、それがなんじゃ。そんなことに迷う、それこそが小さきことよ」
皆も聞けい!と大音声、明け染めし雲の紫を貫き、天へと響くその声に、武田の軍中から応!と
揃えた声が上がった。
「よいか!小さかろうが大きかろうがそれがなんじゃ!釣鐘型にお椀型、巨乳貧乳手のひら大、
左右形違いに大きさ違い、谷間に垂れ間、柔らかろうが硬かろうが、そこになんの違いがあろう!?
おなごの乳はただ乳というだけで、どれもみな漏れなくすべからく、国の宝!
違うとするなら唯一つ、それが惚れた女のものであるか、否か!それだけじゃああ!」
左右形違いに大きさ違い、谷間に垂れ間、柔らかろうが硬かろうが、そこになんの違いがあろう!?
おなごの乳はただ乳というだけで、どれもみな漏れなくすべからく、国の宝!
違うとするなら唯一つ、それが惚れた女のものであるか、否か!それだけじゃああ!」
信玄の熱い激に、武田軍内より割れんばかりの咆哮が上がった。
誰も彼もが目を輝かせ、その言葉に腕を振り上げ、感涙に咽ぶ。
ちょうどそのとき東の果てから、金色の朝日が顔を出した。
灼熱の炎にも似たその光に照らされて、信玄の体が黄金色に燃え上がる。
炎を宿す拳が天を突く。吹き上がる熱気の前に、雲は消し飛び朝日もその歩みを止めた。
吹き抜ける朝の風に煽られて、見よやその勇姿、まさに天より下りし戦神覇王!
誰も彼もが目を輝かせ、その言葉に腕を振り上げ、感涙に咽ぶ。
ちょうどそのとき東の果てから、金色の朝日が顔を出した。
灼熱の炎にも似たその光に照らされて、信玄の体が黄金色に燃え上がる。
炎を宿す拳が天を突く。吹き上がる熱気の前に、雲は消し飛び朝日もその歩みを止めた。
吹き抜ける朝の風に煽られて、見よやその勇姿、まさに天より下りし戦神覇王!




