水揚げ後の旦那は、これまた偉く大人気だった。
素直で純粋、希望を出せばどんな事でも懸命に相手してくれるってんだから、一般市民の皆々様には垂涎もののお話だよね。
以下、その一般市民様のお声。
「うぉぉぉ!若ぇぇえ!!萌ええぇぇ!!」
「あの乳に挟みたい!ってか挟まれたいぃぃ!!」
「絶対領域で圧死してぇぇえ!!」
「わっふるわっふるぅぅ!!!」
こんな感じで格子の前は、未だかつてない程の大賑わい。
旦那も旦那で、意味も分からず愛想振りまくもんだから、益々熱狂的支持者が増えていくばかり。
いやー、花魁以上の人気に妬んでるとか、そんなんじゃないよ?
なんつーか…大事に育ててきた花を他人に手折られる様な…そんな気持ち?
いや、この日が来るのは分かりきってた事なんだけどね…
なんか…切ない。
素直で純粋、希望を出せばどんな事でも懸命に相手してくれるってんだから、一般市民の皆々様には垂涎もののお話だよね。
以下、その一般市民様のお声。
「うぉぉぉ!若ぇぇえ!!萌ええぇぇ!!」
「あの乳に挟みたい!ってか挟まれたいぃぃ!!」
「絶対領域で圧死してぇぇえ!!」
「わっふるわっふるぅぅ!!!」
こんな感じで格子の前は、未だかつてない程の大賑わい。
旦那も旦那で、意味も分からず愛想振りまくもんだから、益々熱狂的支持者が増えていくばかり。
いやー、花魁以上の人気に妬んでるとか、そんなんじゃないよ?
なんつーか…大事に育ててきた花を他人に手折られる様な…そんな気持ち?
いや、この日が来るのは分かりきってた事なんだけどね…
なんか…切ない。
「はぁ~…」
「何度目の溜め息ですか政宗様」
隣に控える小十郎に、そう言われるまで、自分で溜め息を吐いていた事にさえ気付いていなかった。
確かに、今日片付けなければならない政務さえ、思うように進まない程気も漫ろだった。
「いや、こうしてる間にもあいつが他の男にと思うとだなぁ…オイ、仕事増やすんじゃねぇ、ソコ」
「増やしている訳ではございません。通常の政務の範囲内でございます」
机の上に新たな書類を増やされて、抗議の声を上げるものの、ぴしゃりと言い放たれる。
「私を使いっ走りにする程、気に掛けていらっしゃる娘であれば、いっそお囲いなさいませ」
山程積み上がっている書類を淡々と整理しながら、表情一つ変えずに、この女はまたとんでもない事を言い出す。
これは、アレだ。顕如んとこに使いに出したのを怒ってんな…。
「私としては、政宗様の貴重なご子息を孕む側室が、一人でも増える事は大歓迎でございますが?」
棘を含んだ物言いに、「子供を産まない女に現を抜かしている暇があるなら、早く跡取りを作れ」と言う小十郎の本音が聞こえてくる。
「あいつにはそんな、後継者争いとか…似合わねぇよ」
似合う似合わないの問題ではないのだろうが。
骨肉の争いは、熾烈で、とても苦しい。
あんな猪突猛進型単純人間には、そんな想いは、して欲しくない。
「こんな中途半端な野郎に請け出されても、あいつには迷惑なだけだろうな」
幸村には幸村なりの、戦う理由があるだろう。
そいつをとやかく言うのは、COOLじゃねぇ。
小十郎は、暫し押し黙って聞いていた。
いつもそうだ。この女は、常に"俺にとって何が最善か"を考えて言葉を選ぶ。
「分かっていらっしゃるのであれば…」
伏せられた瞳が、一瞬だけ震えた様に見えた。
「まずは政務に身を入れて下さいませ。江戸でのいざこざも、片付いてはおらぬのですよ」
先程の揺らぎは気のせいだったのか、いつも通りの手厳しい回答が返ってくる。
隣に控える小十郎に、そう言われるまで、自分で溜め息を吐いていた事にさえ気付いていなかった。
確かに、今日片付けなければならない政務さえ、思うように進まない程気も漫ろだった。
「いや、こうしてる間にもあいつが他の男にと思うとだなぁ…オイ、仕事増やすんじゃねぇ、ソコ」
「増やしている訳ではございません。通常の政務の範囲内でございます」
机の上に新たな書類を増やされて、抗議の声を上げるものの、ぴしゃりと言い放たれる。
「私を使いっ走りにする程、気に掛けていらっしゃる娘であれば、いっそお囲いなさいませ」
山程積み上がっている書類を淡々と整理しながら、表情一つ変えずに、この女はまたとんでもない事を言い出す。
これは、アレだ。顕如んとこに使いに出したのを怒ってんな…。
「私としては、政宗様の貴重なご子息を孕む側室が、一人でも増える事は大歓迎でございますが?」
棘を含んだ物言いに、「子供を産まない女に現を抜かしている暇があるなら、早く跡取りを作れ」と言う小十郎の本音が聞こえてくる。
「あいつにはそんな、後継者争いとか…似合わねぇよ」
似合う似合わないの問題ではないのだろうが。
骨肉の争いは、熾烈で、とても苦しい。
あんな猪突猛進型単純人間には、そんな想いは、して欲しくない。
「こんな中途半端な野郎に請け出されても、あいつには迷惑なだけだろうな」
幸村には幸村なりの、戦う理由があるだろう。
そいつをとやかく言うのは、COOLじゃねぇ。
小十郎は、暫し押し黙って聞いていた。
いつもそうだ。この女は、常に"俺にとって何が最善か"を考えて言葉を選ぶ。
「分かっていらっしゃるのであれば…」
伏せられた瞳が、一瞬だけ震えた様に見えた。
「まずは政務に身を入れて下さいませ。江戸でのいざこざも、片付いてはおらぬのですよ」
先程の揺らぎは気のせいだったのか、いつも通りの手厳しい回答が返ってくる。




