玄関をくぐると、中は外から見て取れるよりも、凄惨な状態となっていた。
敵味方入り乱れて倒れ、呻き、咽返る程の血の臭いも立ち上る。
旦那は、無事なんだろうか。
玄関広間は足の踏み場もなかった。
そこを通り越し、中庭へ面する廊下へと躍り出る。
目を凝らし、ぐるりとコの字型に建てられた廓の、向こう二階の様子を伺った。
旦那の部屋は二階の一番奥だった。加えてあの性格から考えて、さっさと逃げ出してるなんてありえない。
数人の、倒れている人影が見えるが、元親達の奮闘により、二階の被害は一階程酷くはないようだった。
なんとかして、この混乱に乗じて連れ出さないと。上手く行けば、このまま大門の外へ逃げる事も可能かもしれない。
玄関間から上がれる二階への階段を目指そうと、踵を返した時だった。
「遊女だ!遊女を捕らえろ!奴は女郎へ化けているぞ!!」
背後で、こちらを向いて吠えている数人の声が聞こえる。
ヤバイ、と思った次の瞬間には、もう俺の手首は捕らえられていた。
「離せよ!」
振り解こうともがくも、腕を後ろに回されて、ぎりりと締め上げられる。
敵味方入り乱れて倒れ、呻き、咽返る程の血の臭いも立ち上る。
旦那は、無事なんだろうか。
玄関広間は足の踏み場もなかった。
そこを通り越し、中庭へ面する廊下へと躍り出る。
目を凝らし、ぐるりとコの字型に建てられた廓の、向こう二階の様子を伺った。
旦那の部屋は二階の一番奥だった。加えてあの性格から考えて、さっさと逃げ出してるなんてありえない。
数人の、倒れている人影が見えるが、元親達の奮闘により、二階の被害は一階程酷くはないようだった。
なんとかして、この混乱に乗じて連れ出さないと。上手く行けば、このまま大門の外へ逃げる事も可能かもしれない。
玄関間から上がれる二階への階段を目指そうと、踵を返した時だった。
「遊女だ!遊女を捕らえろ!奴は女郎へ化けているぞ!!」
背後で、こちらを向いて吠えている数人の声が聞こえる。
ヤバイ、と思った次の瞬間には、もう俺の手首は捕らえられていた。
「離せよ!」
振り解こうともがくも、腕を後ろに回されて、ぎりりと締め上げられる。
「待たれよ!!!」
不意に上階から、凛と通る声が響き渡った。
誰しもが、どよどよと響めきながらも、動きを止めて、そちらを振り向く。
「我こそは真田昌幸が嫡子、真田源二郎信繁なり!!」
静まり返った建物に、武将も顔負けの名乗りが轟く。
見上げれば、中庭から吹き抜けとなっている二階廊下、旦那の姿が見て取れた。
倒れる足軽に片足かけて、その手には、恐らく客の武士から奪ったのであろう、長脇差を両方に一本ずつ。
裸に纏う一枚の襦袢が、強い風に弾かれるようにばさばさと靡く。
浴びるような返り血を纏ってさえ、艶かしいと感じた。地上に降り立った鬼神を思った。
知らないうちに、頬を一筋伝うものがあった。
あぁ俺、泣いてんの?
生を取り戻したかのように刀を振るう旦那の姿を見て?
俺の住む世界から、離れていく旦那を感じ取って?
それとも、これを失う喪失感を予感して?
理由もよく分かんなかった。
ただただ、止め処なく目から水が零れ落ちていた。
「放て!!」
足軽大将の掛ける号令と共に、弓隊がその引き絞った弦を離す。
「ばっか!んな身を乗り出してたら良い的だろ!?」
前後して慶次が、手摺りに乗り出す旦那をそこから引きずり落とした。
すんでのところで、雨霰と飛ぶ矢が彼らの頭上を通り越していく。
「二階だ!二階へ廻れ!!」
「行かすんじゃねぇ、野郎共!!」
事情も知らない筈の若い衆達が、元親の号令で旦那を守る為に加勢してくれる。
どいつもこいつも馬鹿ばっかりだよ。
家を守る為だけに戦ってりゃ良いのにさ。
誰しもが、どよどよと響めきながらも、動きを止めて、そちらを振り向く。
「我こそは真田昌幸が嫡子、真田源二郎信繁なり!!」
静まり返った建物に、武将も顔負けの名乗りが轟く。
見上げれば、中庭から吹き抜けとなっている二階廊下、旦那の姿が見て取れた。
倒れる足軽に片足かけて、その手には、恐らく客の武士から奪ったのであろう、長脇差を両方に一本ずつ。
裸に纏う一枚の襦袢が、強い風に弾かれるようにばさばさと靡く。
浴びるような返り血を纏ってさえ、艶かしいと感じた。地上に降り立った鬼神を思った。
知らないうちに、頬を一筋伝うものがあった。
あぁ俺、泣いてんの?
生を取り戻したかのように刀を振るう旦那の姿を見て?
俺の住む世界から、離れていく旦那を感じ取って?
それとも、これを失う喪失感を予感して?
理由もよく分かんなかった。
ただただ、止め処なく目から水が零れ落ちていた。
「放て!!」
足軽大将の掛ける号令と共に、弓隊がその引き絞った弦を離す。
「ばっか!んな身を乗り出してたら良い的だろ!?」
前後して慶次が、手摺りに乗り出す旦那をそこから引きずり落とした。
すんでのところで、雨霰と飛ぶ矢が彼らの頭上を通り越していく。
「二階だ!二階へ廻れ!!」
「行かすんじゃねぇ、野郎共!!」
事情も知らない筈の若い衆達が、元親の号令で旦那を守る為に加勢してくれる。
どいつもこいつも馬鹿ばっかりだよ。
家を守る為だけに戦ってりゃ良いのにさ。




