「ぎゃぁ!」
悲痛な断末魔と共に、後ろ手に拘束されていた俺の腕が解放された。
「大丈夫か佐助!」
崩れ落ちそうになる俺を、支えてくれた腕は元親のものだった。
「元親…」
「あぁん?」
それを支えにして立ち上がり、決意を込めた表情で前を見つめれば、元親が怪訝そうな顔を見せた。
「伊達の殿様呼んできて」
彼ならば、この騒ぎに終止符を打ってくれるかもしれない。
それは微かな願いだった。
伊達が出てくれば、武田の力は抑えられる希望はある。
しかし、下手をすれば勢力間の諍いに発展しかねないそんな状況に、竜の旦那がたった一人の女の為に出てくるかどうか。
これは賭けに等しかった。
「その必要はねぇぜ」
背後から聞こえた声は、元親のものではなかった。
同時に聞こえた馬の嘶きに驚いて振り向けば、そこに居たのは、愛用の白馬に跨った、伊達政宗その人。
俺も元親も、声も出せずに驚愕していると、馬に乗ったまま、竜の旦那は俺達を見下ろして言った。ちょ、ここ屋内。
「使いはもう貰ったぜ。お前んとこの毛利とか言う奴からな」
あいつはあいつで、俺よりもずっと早くに状況を察知して、一足先に賭けに出てたってのか。
賭けには勝ったぜ毛利。後は竜の旦那がどう動いてくれるか、だ。
竜の旦那は、顔を上げて周囲の状況を把握したようだった。
「まさか騒動の中心があいつ自身だとは思わなかったが…な」
未だ勢い衰えぬ武田の濁流の、目指すその先で刀を振るう旦那を見て、竜の旦那は苦い表情をした。
「旦那は…幸村は、真田家の末裔だ」
言った俺の言葉に、竜の旦那は、驚いた様子も見せなかった。
ただそれを事実として受け止め、冷静に物事を推し量っているようだった。
戦国の世を駆け上ってきた、当主の器ってやつを感じた。
事態を薄々感じ取っていた、元親も別段驚いた様子は見せなかった。
ただ、そうか、と言って納得していた。
「忘八!」
「あ?」
竜の旦那が元親を呼ぶ。
突如声を掛けられて、元親ははじかれた様に馬上の旦那を見上げた。
「手順はすっ飛ばすが、勘弁しろよ!」
言って、何かが詰まった重そうな麻袋を懐から取り出し、元親の足元へ放り投げた。
じゃらり、と袋の中で硬い物が擦れ合う音がする。
「幸村は俺が身請けする」
はっとして見上げれば、またなんて良い顔してんだろうねこの人は。
いっつも、他者を寄せ付けない孤高の独眼竜、みたいな顔してるくせに、旦那の前ではこんな顔してんのか。
「そいつは手付金代わりだ。悪ぃが足んねぇ分は仙台城まで取り立てに来てくれ」
いくらでも払ってやる、そんな意味合いを受けた。
「旦那を…頼む」
搾り出したような声でそう告げれば、竜の旦那は口の端を上げて「当たり前だ」みたいな顔をした。
「火を放てーっ!!」
唐突に、楼館の奥から無情な号令が上がった。
悲痛な断末魔と共に、後ろ手に拘束されていた俺の腕が解放された。
「大丈夫か佐助!」
崩れ落ちそうになる俺を、支えてくれた腕は元親のものだった。
「元親…」
「あぁん?」
それを支えにして立ち上がり、決意を込めた表情で前を見つめれば、元親が怪訝そうな顔を見せた。
「伊達の殿様呼んできて」
彼ならば、この騒ぎに終止符を打ってくれるかもしれない。
それは微かな願いだった。
伊達が出てくれば、武田の力は抑えられる希望はある。
しかし、下手をすれば勢力間の諍いに発展しかねないそんな状況に、竜の旦那がたった一人の女の為に出てくるかどうか。
これは賭けに等しかった。
「その必要はねぇぜ」
背後から聞こえた声は、元親のものではなかった。
同時に聞こえた馬の嘶きに驚いて振り向けば、そこに居たのは、愛用の白馬に跨った、伊達政宗その人。
俺も元親も、声も出せずに驚愕していると、馬に乗ったまま、竜の旦那は俺達を見下ろして言った。ちょ、ここ屋内。
「使いはもう貰ったぜ。お前んとこの毛利とか言う奴からな」
あいつはあいつで、俺よりもずっと早くに状況を察知して、一足先に賭けに出てたってのか。
賭けには勝ったぜ毛利。後は竜の旦那がどう動いてくれるか、だ。
竜の旦那は、顔を上げて周囲の状況を把握したようだった。
「まさか騒動の中心があいつ自身だとは思わなかったが…な」
未だ勢い衰えぬ武田の濁流の、目指すその先で刀を振るう旦那を見て、竜の旦那は苦い表情をした。
「旦那は…幸村は、真田家の末裔だ」
言った俺の言葉に、竜の旦那は、驚いた様子も見せなかった。
ただそれを事実として受け止め、冷静に物事を推し量っているようだった。
戦国の世を駆け上ってきた、当主の器ってやつを感じた。
事態を薄々感じ取っていた、元親も別段驚いた様子は見せなかった。
ただ、そうか、と言って納得していた。
「忘八!」
「あ?」
竜の旦那が元親を呼ぶ。
突如声を掛けられて、元親ははじかれた様に馬上の旦那を見上げた。
「手順はすっ飛ばすが、勘弁しろよ!」
言って、何かが詰まった重そうな麻袋を懐から取り出し、元親の足元へ放り投げた。
じゃらり、と袋の中で硬い物が擦れ合う音がする。
「幸村は俺が身請けする」
はっとして見上げれば、またなんて良い顔してんだろうねこの人は。
いっつも、他者を寄せ付けない孤高の独眼竜、みたいな顔してるくせに、旦那の前ではこんな顔してんのか。
「そいつは手付金代わりだ。悪ぃが足んねぇ分は仙台城まで取り立てに来てくれ」
いくらでも払ってやる、そんな意味合いを受けた。
「旦那を…頼む」
搾り出したような声でそう告げれば、竜の旦那は口の端を上げて「当たり前だ」みたいな顔をした。
「火を放てーっ!!」
唐突に、楼館の奥から無情な号令が上がった。




