「うおやかたさむあああああああ!」
「ゆきむるああああああああああ!」
「………はあ」
「ゆきむるああああああああああ!」
「………はあ」
武田の領土…甲斐の空に、気合の入った暑苦しい声が響く。
佐助は暑苦しいのが嫌いだった。
佐助は暑苦しいのが嫌いだった。
男だらけの道場で、お面被って他人に成りすましてボコボコに殴られるのは、カッコ悪いし割りに合わないから嫌いだ。
必死こいて汗かいてぜいぜい息切らして、溶岩が流れる特設道場で修行とか、特に嫌いだった。
…大将と旦那が「こういう事」が大好きだから、勿論口が裂けても言えないが。
必死こいて汗かいてぜいぜい息切らして、溶岩が流れる特設道場で修行とか、特に嫌いだった。
…大将と旦那が「こういう事」が大好きだから、勿論口が裂けても言えないが。
しかし、暑苦しいしうるさい。何とかならないだろうか、この二人。
特に、このいつまで続くのかわからない互いを呼び合う掛け合い。
特に、このいつまで続くのかわからない互いを呼び合う掛け合い。
いい加減聞き過ぎて、佐助の相棒の烏がこの二人の掛け合いを覚えてしまった。
先日任務中に、かすがとばったり出くわして、ちょっと小競り合いをする羽目になったのだが
「オヤカタサマァ・ユキムルァ・サスケェキアイジャアアァ」を連呼する烏がツボにはまったのか、
かすがは「笑い過ぎてお腹が痛い」と早々に撤退してしまった。
「オヤカタサマァ・ユキムルァ・サスケェキアイジャアアァ」を連呼する烏がツボにはまったのか、
かすがは「笑い過ぎてお腹が痛い」と早々に撤退してしまった。
嗚呼…闇色の烏につかまり滑空するイカしてる俺様を返してくれ…
「サムアアアアアア!」
「ルアアアアアアア!」
「ルアアアアアアア!」
…って、旦那と大将…まだやってるよ。
もうほっといて帰りたい。
もうほっといて帰りたい。
佐助は小さくため息をついた。
いつもなら、二人を置いてさっさと帰る所だが、今日は来客がある。
先日の豊臣戦で、武田でもちょっとした話題になっている北条家当主だ。
いつもなら、二人を置いてさっさと帰る所だが、今日は来客がある。
先日の豊臣戦で、武田でもちょっとした話題になっている北条家当主だ。
今日来るのは、白いお姫様と、風魔…の二人の筈。
あとはお供の忍が少々。
あとはお供の忍が少々。
主賓のお二人には、離れの客間に泊まって貰うんだけど、白いお姫様に
「かかる費用は出すから、お供の忍にも部屋を用意してやって欲しい」って頼まれちゃったから、俺様部屋の準備の指示に大忙し。
だって、一応「お客様」だから、そんな粗末な部屋あてがえないっしょ。
まったく…忍なんて、その辺の木の上でも十分だってのに。
「かかる費用は出すから、お供の忍にも部屋を用意してやって欲しい」って頼まれちゃったから、俺様部屋の準備の指示に大忙し。
だって、一応「お客様」だから、そんな粗末な部屋あてがえないっしょ。
まったく…忍なんて、その辺の木の上でも十分だってのに。
忍達も「姫様、我々にはお構いなく」って言ってるのに
「何を申す。此度はそなたたちの労を労う意味でも同行させておるのじゃぞ。野宿などさせてなるか。」
と、頑として聞かない。…あ、ウチに寄ったのは慰安旅行のついでですか。
風魔も相変わらず何も言わないし、何かこういう事は、お姫様の管轄になってるのかね。
お姫様は、部下を随分大事にしているみたいだった。
先の小田原城陥落の時に、古株の家臣から身内から何まで失ってしまった事もあるし、思う所があるのだろう。
「何を申す。此度はそなたたちの労を労う意味でも同行させておるのじゃぞ。野宿などさせてなるか。」
と、頑として聞かない。…あ、ウチに寄ったのは慰安旅行のついでですか。
風魔も相変わらず何も言わないし、何かこういう事は、お姫様の管轄になってるのかね。
お姫様は、部下を随分大事にしているみたいだった。
先の小田原城陥落の時に、古株の家臣から身内から何まで失ってしまった事もあるし、思う所があるのだろう。
…きっと給料もいいんだろうなあ…ちょっと羨ましいかも。
噂では、小田原城の忍の多くは、風魔者らしい。
ただ、不思議な事に、決まった活動拠点も持たず、常に流れ流れてあちこち旅して回る風魔衆が
何故か殆ど城を離れようとせず、増えるばかりだという。
ただ、不思議な事に、決まった活動拠点も持たず、常に流れ流れてあちこち旅して回る風魔衆が
何故か殆ど城を離れようとせず、増えるばかりだという。
…元は、風魔小太郎が呼び寄せたんだろうけど、居心地よくて、みんな居ついたんだろうね。
現在、小田原城は風魔衆の住処となりつつある。いーのかなー。
おかげで、普通の城よりタチが悪過ぎて、潜入とか怖くてとてもできない。
だから、小田原城関連の話は、噂でしか知らないんだけどさ。
それでも、噂だけ取ってみても、兵や忍にとって、とーってもいい所だって言うのはよーくわかる。
真田の旦那にも、姫様の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいねー、こっそり。
現在、小田原城は風魔衆の住処となりつつある。いーのかなー。
おかげで、普通の城よりタチが悪過ぎて、潜入とか怖くてとてもできない。
だから、小田原城関連の話は、噂でしか知らないんだけどさ。
それでも、噂だけ取ってみても、兵や忍にとって、とーってもいい所だって言うのはよーくわかる。
真田の旦那にも、姫様の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいねー、こっそり。




